(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155607
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】遠心脱水機及び汚泥脱水方法
(51)【国際特許分類】
B04B 1/20 20060101AFI20221006BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20221006BHJP
C02F 11/127 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B04B1/20 ZAB
B04B11/02
C02F11/127
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058917
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(71)【出願人】
【識別番号】505279215
【氏名又は名称】株式会社広島メタル&マシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名越 収二郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】松井 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 章裕
(72)【発明者】
【氏名】北風 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 宏治
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】上刎 正士
【テーマコード(参考)】
4D057
4D059
【Fターム(参考)】
4D057AA11
4D057AA12
4D057AA13
4D057AB01
4D057AC01
4D057AC06
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4D057CB05
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA03
4D059AA07
4D059BE38
4D059CB07
4D059EB01
(57)【要約】
【課題】スクリューフライトの摩耗を低減し、機内を満水状態で運転できる遠心脱水機及び汚泥脱水方法を提供する。
【解決手段】ケーキ排出隙間10の断面積が脱水室5の断面積の最大値の0.05~0.3倍で、分離水排出口12の越流頂が、コンベヤ円筒部の外面の位置に対して、半径方向内側に-15mmから半径方向外側に+15mmの範囲内にあり、脱水ケーキ排出口10の越流頂が、コンベヤ円筒部の外面の位置に対して、半径方向内側に0mmから-15mmの範囲内に位置し、スクリューフライト4のリード角αが5~9度である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転するボウルと、前記ボウルと同回転軸心廻りに差速をもって回転するコンベア軸部の外面にスクリューフライトを有するコンベアと、前記ボウルの回転軸心方向で前記ボウルの一側に設けた脱水ケーキ排出口と、前記ボウルの他側に設けた分離水排出口を備え、
前記ボウルは、内面が前記ボウルの回転軸心方向に伸びるボウル円筒部と、前記ボウル円筒部から前記脱水ケーキ排出口に向けて内面がテーパー状に狭まるボウル排出部を有し、
前記コンベア軸部は、外面が前記コンベアの回転軸心方向に伸びるコンベア円筒部と、前記ボウル排出部に対応して前記脱水ケーキ排出口に向けて外面がテーパー状に狭まるコンベア排出部を有し、
前記ボウル円筒部の内面とコンベア円筒部の外面の間にスラリーを保持する空間である脱水室を有し、前記ボウル排出部の内面と前記コンベア排出部の外面の間にケーキ排出隙間を有する構造をなす脱水機であって、
前記ボウルの半径方向に沿ったケーキ排出隙間の断面積が前記ボウルの半径方向に沿った前記脱水室の断面積の最大値の0.05~0.3倍であり、
前記ボウルの半径方向において前記コンベヤ円筒部の外面の位置に対し、前記ボウル円筒部の内面に最も近い前記分離水排出口の越流頂が、前記ボウルの半径方向内側に-15mmの位置から半径方向外側に+15mmの位置の範囲内にあり、
前記ボウルの半径方向において前記コンベヤ円筒部の外面の位置に対し、前記ボウル円筒部の内面に最も近い前記脱水ケーキ排出口の越流頂が、前記ボウルの半径方向内側に0mmから-15mmの範囲内に位置することを特徴とする遠心脱水機。
【請求項2】
前記スクリューフライトのリード角が5~9度であることを特徴とする請求項1に記載の遠心脱水機。
【請求項3】
前記ボウルの半径方向において、前記スクリューフライトの羽根外周縁と前記ボウル円筒部の内面との間隔が、3mm以上、かつ前記ボウル円筒部の内面と前記コンベヤ円筒部の外面との間隔の0.1倍以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心脱水機。
【請求項4】
前記ボウルの内面に、前記ボウルの半径方向に3~6mmの高さを有する複数の線状突起が、回転軸心に沿った前記ボウルの長さ方向に形成されており、前記ボウルの半径方向において、前記線状突起と前記スクリューフライトの羽根外周縁の間隔が1~4mmであることを特徴とする請求項3に記載の遠心脱水機。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の遠心脱水機を用いて、有機物含有率が50質量%以上の有機汚泥を処理することを特徴とする汚泥脱水方法。
【請求項6】
前記ボウルに対して前記コンベアが毎分1~6回転の差速をもって回転することを特徴とする請求項5に記載の汚泥脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、し尿汚泥、消化汚泥、食品残渣汚泥、工場排水の浄化槽からの汚泥や、食品や飲料などの製造工程から発生する有機物を含むスラリーを遠心脱水する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心脱水機は、高速回転する円筒形状の外筒(ボウル)と、その内部に沈殿物(ケーキ)を出口方向に移動させるスクリューフライトを有するコンベアを備えた装置であり、ボウルに掛かる遠心力は約2000~3500G(Gは重力加速度)である。コンベアは、ボウルに対して毎分0.5~10回転の差速をもって回転している。
【0003】
このような遠心脱水機には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、外胴ボウルおよび内胴スクリュウを備えた遠心分離機で、汚泥を分離物と分離液に分離する遠心分離装置において、汚泥を前記遠心分離機に供給する汚泥供給設備、汚泥に高分子凝集剤を注入する高分子凝集剤注入設備、および汚泥に石炭灰を注入する石炭灰注入設備を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の有機物を多く含むスラリーを脱水処理する直胴式遠心脱水機では、コンベアの回転によりボウル内部の沈殿物(ケーキ)をスクリューフライトでケーキ排出口の方向に移動させる。ケーキには圧縮性があり、ケーキの脱水が進んだ脱水処理工程の後半では、スクリューフライトの羽根面にケーキが圧着することで、ケーキ排出が不安定になる虞がある。
【0006】
また、下水汚泥、し尿汚泥などの有機系汚泥の脱水処理では、土や砂(無機物)が混合していることから、スクリューフライトの羽根外周縁の先端の摩耗が大きく、摩耗に因るスクリューフライトの修繕頻度が多い。下水関連では、羽先寿命は20000時間以上が保証となっている。
【0007】
無機物は比重が大きいことから、ボウルの内面近傍に集積する。従って、スクリューフライトの羽根外周縁の先端の摩耗を低減するためには、スクリューフライトの羽根外周縁の先端をボウルの内面から3mm以上離すことが良い。
【0008】
しかし、スクリューフライトの羽根外周縁の先端をボウルの内面から離すと、汚泥ケーキの搬送が安定せず、ケーキ排出が不能になることや、排出する脱水ケーキの含水率が上昇する問題が起きる。この現象は、ケーキ排出部が隙間構造をなし、ケーキ排出に圧力を掛ける必要がある直胴式遠心脱水機で顕著である。
【0009】
また、デカンタ式や直胴式の遠心脱水機では、機内の満水位の50~80%の水位で運転している。デカンタ式の遠心脱水機では、脱水処理工程の後半でビーチ(ボウル傾斜部)上にケーキをかき上げることで脱水している。このため、ビーチが水に浸ると脱水不良が起きることから、満水運転が難しかった。
【0010】
また、直動式遠心脱水機において、満水状態で運転するためには、ケーキ排出部のケーキ排出口の位置をボウルの半径方向内側に高くする必要があり、遠心力に逆らってケーキをケーキ排出部まで移動させるために必要な力が大きくなる虞がある。
【0011】
また、水に浸かったケーキを搬送圧縮していくので、ケーキが滑りやすい形態である。この結果、汚泥ケーキの送りが安定せず、脱水した脱水ケーキのケーキ排出が不能になることや、脱水ケーキの含水率が増加する虞がある。
【0012】
従来機種では、機内のスラリー水位が低く、汚泥ケーキの搬送が容易であったので、スクリューフライトのピッチ(リード)やリード角の設定値には厳密な制限がなく、ピッチと回転差速との関係をケーキ搬送量にあつた値に制御するだけであり、これで問題が起きていなかった。
【0013】
しかし、デカンタ式に比べて、直胴式遠心脱水機では、スクリューフライトのピッチ(リード)が小さく、リード角が小さい場合には、ケーキがスクリューフライトの羽根面に固着し、また、ピッチ(リード)が大きく、リード角が大きい場合は、スクリューフライトの羽根面上でケーキが滑るので、リード角を適正に設定しないとうまく運転できない傾向にある。更に、満水運転において、またはスクリューフライトの羽根外周縁の先端をボウルの内面から離した場合は、運転が更に困難であった。
【0014】
この問題の解決には、直胴式遠心脱水機のスクリューコンベヤの施工状態と処理水排出ロとケーキ排出口の位置を適正化することが必要である。
【0015】
本発明は上記課題を解決するものであり、直胴式遠心脱水機で、スクリューフライトの羽根外周縁の先端の摩耗を低減し、機内のスラリー水位を上げて保有水量を増やし、ほぼ満水状態で運転し、処理能力を向上(20%程度)させることができる遠心脱水機及び汚泥脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る遠心脱水機は、一方向に高速回転するボウルと、前記ボウルと同回転軸心廻りに差速をもって回転するコンベア軸部の外面にスクリューフライトを有するコンベアと、前記ボウルの回転軸心方向で前記ボウルの一側に設けた脱水ケーキ排出口と、前記ボウルの他側に設けた分離水排出口を備え、前記ボウルは、内面が前記ボウルの回転軸心方向に伸びるボウル円筒部と、前記ボウル円筒部から前記脱水ケーキ排出口に向けて内面がテーパー状に狭まるボウル排出部を有し、前記コンベア軸部は、外面が前記コンベアの回転軸心方向に伸びるコンベア円筒部と、前記ボウル排出部に対応して前記脱水ケーキ排出口に向けて外面がテーパー状に狭まるコンベア排出部を有し、前記ボウル円筒部の内面とコンベア円筒部の外面の間にスラリーを保持する空間である脱水室を有し、前記ボウル排出部の内面と前記コンベア排出部の外面の間にケーキ排出隙間を有する構造をなす脱水機であって、前記ボウルの半径方向に沿ったケーキ排出隙間の断面積が前記ボウルの半径方向に沿った前記脱水室の断面積の最大値の0.05~0.3倍であり、前記ボウルの半径方向において前記コンベヤ円筒部の外面の位置に対し、前記ボウル円筒部の内面に最も近い前記分離水排出口の越流頂が、前記ボウルの半径方向内側に-15mmの位置から半径方向外側に+15mmの位置の範囲内にあり、前記ボウルの半径方向において前記コンベヤ円筒部の外面の位置に対し、前記ボウル円筒部の内面に最も近い前記脱水ケーキ排出口の越流頂が、前記ボウルの半径方向内側に0mmから-15mmの範囲内に位置することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る遠心脱水機において、前記スクリューフライトのリード角が5~9度であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る遠心脱水機において、前記ボウルの半径方向において、前記スクリューフライトの羽根外周縁と前記ボウル円筒部の内面との間隔が、3mm以上、かつ前記ボウル円筒部の内面と前記コンベヤ円筒部の外面との間隔の0.1倍以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る遠心脱水機において、前記ボウルの内面に、前記ボウルの半径方向に3~6mmの高さを有する複数の線状突起が、回転軸心に沿った前記ボウルの長さ方向に形成されており、前記ボウルの半径方向において、前記線状突起と前記スクリューフライトの羽根外周縁の間隔が1~4mmであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る汚泥脱水方法は、上記の何れか1項に記載の遠心脱水機を用いて、有機物含有率が50質量%以上の有機汚泥を処理することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る汚泥脱水方法において、前記ボウルに対して前記コンベアが毎分1~6回転の差速をもって回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係る遠心脱水機によれば、1.スクリューフライトのリード角を適正にする(5~9度)、2.スクリューフライトの羽根外周縁の先端をボウルの内面から離す(3mm以上)、3.回転防止突起をつける、4.スラリー水位をコンベア円筒部の外面の近くに位置させる(±15mm)、すなわち、処理水排出口(ダム)の高さをコンベア円筒部の外面の位置に対して±15mmの範囲内に位置させ、ケーキ排出口をコンベア円筒部の外面の位置に対して0mm~+15mmの範囲内に位置させることにより、直胴式遠心脱水機で、スクリューフライトの羽根外周縁の先端の摩耗を低減し、機内のスラリー水位を上げて保有水量を増やし、ほぼ満水状態で運転し、処理能力を向上(20%程度)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る遠心脱水機を例示する図であり、ボウルの脱水処理に機能する部分が全長に渡ってスラリー水位以下に没し、ボウルの直径が一定であり、ケーキ排出側においてコンベア軸部の直径が拡大する遠心脱水機の断面図である
【
図4】同スクリューコンベアのスクリューフライトを示す模式図である。
【
図5】他の例示のスクリューコンベアの斜視図である。
【
図6】同スクリューコンベアのスクリューフライトを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態に係る遠心脱水機を説明する。本発明に係る遠心脱水機で脱水処理されるスラリーは、有機物を含むものであり、豆乳原料や、アルコール飲料原料の大豆、小麦、大麦等の懸濁液や、下水汚泥、し尿汚泥、消化汚泥などの有機系排水である。また、有機物含有率(強熱減量VTS)が50%以上の固形物を含むスラリーが対象であり、VTSが65%以上の場合は、より効果的になる。
【0025】
以下に、
図1、
図2を用いて本発明の実施の形態に係る直胴式遠心脱水機の構造を説明する。主な構成部品として、ボウル2とコンベア3がある。ボウル2は処理水(以下においてはスラリーと称する)を保持して、回転軸心廻りの一方向に高速回転し、ボウル2の内面に凝集物であるケーキ15が沈殿している。
【0026】
ボウル2は、回転軸心方向の一側に脱水ケーキ排出口11を有し、他側に分離水排出口12を備えており、ボウル2の内面が回転軸心方向に伸びるボウル円筒部21と、ボウル円筒部21から脱水ケーキ排出口11に向けて内面がテーパー状に狭まるボウル排出部22を有している。
【0027】
コンベア3は、ボウル2と同回転軸心廻りに差速をもって回転するコンベア軸部の外面にスクリューフライト4を有し、ボウル2の内部のケーキ15を搬送する。
【0028】
コンベア3のコンベア軸部は、外面がコンベア3の回転軸心方向に伸びて直径一定のコンベア円筒部31と、コンベア円筒部31から直径が漸次に拡大するコンベア圧縮部32と、ボウル排出部22に対応し、コンベア圧縮部32から脱水ケーキ排出口11に向けて直径が漸次に縮小するコンベア排出部33を有している。
【0029】
ボウル円筒部21の内面とコンベア円筒部31の外面の間にスラリーを保持する空間である脱水室5を有し、ボウル排出部22の内面とコンベア排出部33の外面の間にケーキ排出隙間10を有している。
【0030】
遠心脱水機は、
図1に記載されていないモーターの動力を回転軸1に伝えてボウル2が高速回転することで遠心力を発生させる。ボウル2にかかる遠心力は2000~4000G程度である。コンベア3には、
図1には記載されていない差速装置が接続されており、ボウル2とコンベア3は、毎分0.5~20回転程度の差速で回転している。
【0031】
更に、遠心脱水機は、コンベア円筒部31に同心状に配置したスラリー供給パイプ6と、コンベア円筒部31の内部に設置するスラリー供給室7と、脱水室5とスラリー供給室7を連通するスラリー供給口8を備えている。
【0032】
ボウル2の内面は脱水に有効な全長が機内スラリー13に浸かっている。
図1では、ボウル2はボウル円筒部21が全長に渡って同一直径であるが、ボウル2の内面が脱水に有効な全長に亘って機内スラリー13に浸っていれば、ボウル2は直径が一定でなく変化しても良い。
【0033】
コンベア円筒部31はスラリー供給口8の周辺で直径が一定であるが、コンベア円筒部31に続くコンベア圧縮部32が脱水ケーキ排出口11に向けて直径が漸次に拡大するテーパーとなっているので、脱水室5から排出されるケーキ15を圧縮する機能を有しており、本発明を最も効果的に実施することができる。
【0034】
スラリーは、スラリー供給パイプ6からスラリー供給室7に供給され、更にスラリー供給口8から脱水室5に流入する。
【0035】
脱水室5内の機内スラリー13は、遠心力によりボウル2の内面に張り付き、機内スラリー13中の固形物はボウル2の内面に沈殿してケーキ15を形成する。ケーキ15は、スクリューフライト4の回転により脱水ケーキ排出口11方向に搬送される。
【0036】
搬送に伴って脱水室5の内部で徐々に脱水が進んだケーキ15は、ケーキ排出部入口9からケーキ排出隙間10を通って脱水室5の末端に設置されている脱水ケーキ排出口11から機外に排出される。
【0037】
一方、固形物を除去された後の機内スラリー13中の水分は、脱水ケーキ排出口11の反対位置に設置されている分離水排出口12から排出される。なお、分離水排出口12は、円周方向に沿った2~6箇所に、回転中心について点対称に設置されている。
【0038】
本実施の形態に係る遠心脱水機では、脱水室5での脱水工程の後半時期にコンベア圧縮部32においてスクリューフライト4の押し出し力によりケーキ15を圧縮する。そして、更にケーキ排出隙間10の中に押し出すことで遠心力に加え圧縮力も活用してケーキ含水率を低下させる。
【0039】
そのために、ボウル2の半径方向に沿ったケーキ排出隙間10の断面積が、ボウル2の半径方向に沿った脱水室5の断面積の最大値の0.05~0.3倍である。
【0040】
ケーキ排出隙間10の内部では、スクリューフライト4に押される力でケーキ15が押し出されるが、更に遠心力によるケーキ15自身と機内スラリー13の押し出し圧もケーキ15の排出を補助する効果がある。
【0041】
スラリー水位14は、分離水排出口12の位置により決まる。このため、適正な脱水性能を得るために、ボウル2の半径方向においてコンベヤ円筒部31の外面の位置(図中cで示す)に対し、ボウル円筒部21の内面に最も近い分離水排出口12の越流頂の位置(図中aで示す)が、ボウル2の半径方向内側に-15mmの位置から半径方向外側に+15mmの位置の範囲内にある。
【0042】
分離水排出口12の越流頂の位置aがコンベア円筒部31の外面の位置cより半径方向内側にある構成は、配管等により分離水排出口12をボウル2の外部に配置する構造であるが、実現可能である。
【0043】
脱水ケーキ排出口11がスラリー水位14よりも半径方向外側にあり、機内スラリー13に浸漬する状態の場合、スラリーが脱水ケーキ排出口11から流出する問題が起きる。このため、ボウル2の半径方向においてコンベヤ円筒部31の外面の位置に対し、ボウル円筒部21の内面に最も近い脱水ケーキ排出口11の越流頂の位置(図中dで示す)が、ボウル2の半径方向内側に0mmから-15mmの範囲内に位置する。
【0044】
すなわち、スラリー水位14がコンベヤ円筒部31の外面に一致する満水位である状態で、脱水ケーキ排出口11はスラリー水位14と同じ、もしくはスラリー水位14よりもボウル2の半径方向内側に位置する。
【0045】
しかし、スラリー水位14が脱水ケーキ排出口11よりも半径方向外側にあり、脱水ケーキ排出口11から大きく離れている場合は、スラリー水位14の位置から脱水ケーキ排出口11までの距離が長くなって、ケーキ15がケーキ排出隙間10の中を搬送される際に遠心力に逆らって搬送する移動距離が大きくなることで排出抵抗が大きくなる。また、機内スラリー13の水圧による押し出し力が不足する。その結果、ケーキ排出が不安定になる問題が起きる。このため、この移動距離を15mm以内にする。
【0046】
さらに、
図3から
図6に示すように、コンベア3のスクリューフライト4は、リード角αが5~9度である。また、ボウル2の半径方向において、スクリューフライト4の羽根外周縁とボウル円筒部21の内面との間隔は、3mm以上、かつボウル円筒部21の内面とコンベヤ円筒部31の外面との間隔の0.1倍以下である。
【0047】
そして、ボウル2の内面には、ボウル2の半径方向に3~6mmの高さを有する複数の線状突起41が、回転軸心に沿ったボウル2の長さ方向に形成されている。ボウル2の半径方向において、線状突起41とスクリューフライト4の羽根外周縁の間隔は1~4mmである。
【0048】
以上のように、本実施の形態の直胴式遠心脱水機は、ボウル2の半径方向に沿った断面においてケーキ排出隙間10の断面積が、ボウル円筒部21の内面とコンベヤ円筒部31の外面との間の断面積の30%以下(5~30%)である。
【0049】
直胴式遠心脱水機のケーキ排出部は隙間構造であるため、有機物を含む汚泥はケーキ排出隙間10を通過するまでに、遠心力と圧密圧搾力をかけることが出来るので、汚泥の含水率を低減することが出来、VTS50~85%の汚泥の処理に適している。
【0050】
有機系の汚泥は圧縮性が高いので、ケーキ排出隙間10での圧縮力の影響を考慮してケーキを押し込む条件を厳密に設定する必要がある。VTS50%以上の場合、2000G以上の遠心力をかけると、コンベヤ3と共廻りして排出不良になりやすい。
【0051】
機外ヘの固形物の排出は、ボウル2とコンベヤ3のスクリューフライト4との回転差、およびスクリューフライト4のピッチ(リード)Pによって決まるので、機内の固形物量の変動に対して、回転差を変更して含水率を一定にして機外に排出させる。
【0052】
しかし、
図3、
図4に示すように、スクリューフライト4のピッチPが小さすぎると、スクリューフライト4の羽根面積が増えて摩擦が増加するとともに、回転差を上げすぎて共廻りが発生する。一度供回りが発生すると機械を停止して洗浄しないと解消できない。
【0053】
図5、
図6に示すように、スクリューフライト4のピッチPが大きすぎると、ケーキの滑りが起きやすくなり、脱水ケーキの含水率を抑えないとケーキ排出ができなくなる。固形物の搬送距離を変化させて安定した固形物を排出することと共廻りが発生しないスクリューフライト4の条件の設定が重要である。
【0054】
VTSが50%以下の場合は、特にスクリューフライト4の羽根面ヘのケーキ粘着が大きく、リード角αが5°以下では、ケーキの搬送が停滞する。リード角αが大きい場合は、逆にケーキが滑って搬送が不安定になる。よって、リード角を5~9゜にすると最適である。
【0055】
一方、ボウル2の内面とスクリューフライト4の羽根外周縁の先端との隙問は、スクリューフライト4の先端の摩耗の観点から出来るだけ広い方が望ましい。有機系の汚泥の場合、汚泥中の無機物(シルトや砂分など)は比重が大きいために、ボウル2の内面に多く集積する。従って、スクリューフライト4の羽根外周縁の先端をボウル2の内面から離すことで先端の摩耗を減らせる。
【0056】
従来技術では、1~2mm前後の隙間であるが、本実施の形態では、3mm以上、脱水室5の半径方向の幅の0.1以下の間隔に設定することで、スクリューフライト4の摩耗を低減できる。ただし、スクリューフライト4の羽根外周縁の先端とボウル2の内面との隙間が広がり過ぎるとケーキが逆流するので、最適値は4~8mmである。
【0057】
さらに、スクリューフライト4の羽根外周縁の先端とボウル2の内面の間隔を3mm以上にするためには、リード角αが重要であり、5~8°が適値である。
【0058】
また、ケーキの回転方向ヘの滑りを抑制するために、ボウル2の内面に線状突起(バー)41を取り付けている。上記したように、線状突起41は、ボウル2の半径方向に3~6mmの高さを有し、ボウル2の周方向に等間隔で4~16本を設けている。ボウル2の半径方向において、線状突起41とスクリューフライト4の羽根外周縁の間隔は1~4mmである。
【0059】
ボウル2の内部でのスラリーの水深を大きくして、スラリー水位14をコンベア円筒部31の外面付近として(満水状態)処理することで、ケーキ層の厚みによる圧縮力を大きくすることができるので、脱水機の処理能力(m3/h)を向上できる。
【0060】
また、直胴式遠心脱水機では、保留水が多いが、機内の汚泥量も多いので、早い段階からケーキ密度が高まり、圧縮効果がかかる長さが延長されるために、かえって脱水ケーキの含水率が低下する。
【0061】
従来技術では、スラリー水位14は満水位の70%程度が一般的であった。本実施の形態の直胴式遠心脱水機では、満水運転の条件を満たすために、分離水排出口12のダム高さ(越流頂)をコンベヤ円筒部31の外面に対して±15mm以内とし、ケーキ非出口11の位置をコンベヤ円筒部31の外面に対して±15mm以内とし、スクリューフライト4のリード角αを5~9゜として大水深処理を行う。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、下水汚泥、し尿汚泥、消化汚泥、食品残澄汚泥、工場排水の浄化槽などからの汚泥や、食品や飲料などの製造工程から発生する有機物を含むスラリーの脱水に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 回転軸
2 ボウル
3 コンベア
4 スクリューフライト
5 脱水室
6 スラリー供給パイプ
7 スラリー供給室
8 スラリー供給口
9 ケーキ排出部入口
10 ケーキ排出隙間
11 脱水ケーキ排出口
12 分離水排出口
13 機内スラリー
14 スラリー水位
15 ケーキ
21 ボウル円筒部
22 ボウル排出部
31 コンベア円筒部
32 コンベア圧縮部
33 コンベア排出部
41 線状突起
a 分離水排出口12の越流頂の位置を示す点
c コンベア円筒部31の外面の位置を示す点
d 脱水ケーキ排出口11の越流頂の位置を示す点