(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015562
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B23K20/12 340
B23K20/12 310
B23K20/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118486
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近野 佑太郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 将弘
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA01
4E167AA06
4E167AA27
4E167BG03
4E167BG04
4E167BG06
4E167BG08
4E167BG09
4E167BG11
4E167BG12
4E167BG13
4E167BG25
4E167BG26
(57)【要約】
【課題】厚みの大きな被接合物を接合する場合に、接合時間の増加を抑制し得る、摩擦攪拌点接合装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ピン部材11と、ショルダ部材12と、回転駆動器57と、進退駆動器53と、ピン部材11及びショルダ部材12が、第1回転数で回転した状態で、被接合物60を第1押圧力で押圧するように、回転駆動器57及び進退駆動器53を駆動させる(A)と、(A)を実行した後に、ショルダ部材12が、回転した状態で、その先端が第1位置に圧入されるように、回転駆動器57及び進退駆動器53を駆動させる(B)と、を実行する、制御器51と、を備え、第1位置が、被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して46%以上の位置であり、ショルダ部材12は、第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている、摩擦攪拌点接合装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に形成されているピン部材と、
円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、
前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、
前記第1位置が、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、前記ショルダ部材は、前記第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている、摩擦攪拌点接合装置。
【請求項2】
前記ショルダ部材は、前記第1押圧力で前記被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている、請求項1に記載の摩擦攪拌点接合装置。
【請求項3】
円柱状に形成されているピン部材と、
円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、
前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、
前記ショルダ部材は、前記第1押圧力で前記被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている、摩擦攪拌点接合装置。
【請求項4】
前記第1位置が、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、前記ショルダ部材は、前記第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている、請求項3に記載の摩擦攪拌点接合装置。
【請求項5】
前記第1位置は、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して100%以下の位置である、請求項1~4のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合装置。
【請求項6】
円柱状に形成されているピン部材と、
円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、前記第1位置が、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、前記ショルダ部材は、前記第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている、摩擦攪拌点接合方法。
【請求項7】
前記ショルダ部材は、前記第1押圧力で前記被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている、請求項6に記載の摩擦攪拌点接合方法。
【請求項8】
円柱状に形成されているピン部材と、
円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、
前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、
前記ショルダ部材は、前記第1押圧力で前記被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている、摩擦攪拌点接合方法。
【請求項9】
前記第1位置が、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、前記ショルダ部材は、前記第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている、請求項8に記載の摩擦攪拌点接合方法。
【請求項10】
前記第1位置は、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して100%以下の位置である、請求項6~9のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、航空機等の輸送機器においては、金属材料を連結するときには、抵抗スポット溶接又はリベット接合が用いられていた。しかしながら、近年では、摩擦熱を利用して金属材料を接合する方法(摩擦攪拌点接合方法)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている摩擦攪拌点接合方法では、略円柱状のピン部材と、該ピン部材を内挿するための中空を有する略円筒状のショルダ部材と、が、被接合物を接合するために用いられていて、以下に示すように、ピン部材とショルダ部材(ツール)を作動(駆動)させる工具駆動部を制御している。
【0004】
すなわち、ピン部材の先端面の断面積をAp、ショルダ部材の先端面の断面積をAs、ピン部材が被接合物の表面から圧入したときの圧入深さをPp、ショルダ部材が被接合物の表面から圧入したときの圧入深さをPsとしたときに、Ap・Pp+As・Ps=Txで定義されるツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、工具駆動部を制御している。
【0005】
これにより、接合条件に応じて好適な精度で良好な接合品質を実現し得るとともに、内部空洞欠陥の発生を防止または抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本発明者等は、上記特許文献1に開示されている摩擦攪拌点接合方法であっても、ショルダ部材の圧入深さを大きくすると、圧入速度が小さくなり、接合時間がかかる場合があることを見出し、本発明を想到した。
【0008】
本発明は、複動式の摩擦攪拌点接合装置において、厚みの大きな被接合物を接合する場合に、接合時間が増加することを抑制し得る、摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る摩擦攪拌点接合装置は、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、前記第1位置が、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、前記ショルダ部材は、前記第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている。
【0010】
これにより、厚みの大きな被接合物を接合する場合であっても、ショルダ部材の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制し得る。
【0011】
また、本発明に係る摩擦攪拌点接合装置は、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、前記ショルダ部材は、前記第1押圧力で前記被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている。
【0012】
これにより、厚みの大きな被接合物を接合する場合であっても、ショルダ部材の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制し得る。
【0013】
また、本発明に係る摩擦攪拌点接合方法は、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、前記第1位置が、前記被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、前記ショルダ部材は、前記第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている。
【0014】
これにより、厚みの大きな被接合物を接合する場合であっても、ショルダ部材の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制し得る。
【0015】
また、本発明に係る摩擦攪拌点接合方法は、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、前記ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、前記ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、前記ピン部材及び前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記ピン部材及び前記ショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(A)と、前記(A)を実行した後に、前記ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、前記回転駆動器及び前記進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、前記ショルダ部材は、前記第1押圧力で前記被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている。
【0016】
これにより、厚みの大きな被接合物を接合する場合であっても、ショルダ部材の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制し得る。
【0017】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施形態の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法によれば、厚みの大きな被接合物を接合する場合であっても、ショルダ部材の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図4B】
図4Bは、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図5】
図5は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図6】
図6は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図7】
図7は、比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図8】
図8は、実施例1、実施例2、及び比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図9】
図9は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例2の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図10】
図10は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例2の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図11】
図11は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例3の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図12】
図12は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例4の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図13】
図13は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例3の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図14】
図14は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例4の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【
図15】
図15は、実施例1、実施例2、及び比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、摩擦攪拌点接合した被接合物の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置は、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、ピン部材及びショルダ部材を、ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、ピン部材及びショルダ部材を、それぞれ軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、制御器は、ピン部材及びショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(A)と、(A)を実行した後に、ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、第1位置が、被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、ショルダ部材は、第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている。
【0022】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置では、ショルダ部材が、第1押圧力で被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されていてもよい。
【0023】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置は、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、ピン部材及びショルダ部材を、ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、ピン部材及びショルダ部材を、それぞれ軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、制御器は、ピン部材及びショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(A)と、(A)を実行した後に、ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、ショルダ部材は、第1押圧力で被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている。
【0024】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置では、第1位置が、被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、ショルダ部材は、第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されていてもよい。
【0025】
さらに、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置では、第1位置は、被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して100%以下の位置であってもよい。
【0026】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の運転方法は、摩擦攪拌点接合装置が、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、ピン部材及びショルダ部材を、ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、ピン部材及びショルダ部材を、それぞれ軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、制御器は、ピン部材及びショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(A)と、(A)を実行した後に、ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、第1位置が、被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、ショルダ部材は、第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている。
【0027】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の運転方法では、ショルダ部材が、第1押圧力で被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されていてもよい。
【0028】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の運転方法は、摩擦攪拌点接合装置が、円柱状に形成されているピン部材と、円筒状に形成され、ピン部材が内部に挿通されているショルダ部材と、ピン部材及びショルダ部材を、ピン部材の軸心に一致する軸線周りに回転させる回転駆動器と、ピン部材及びショルダ部材を、それぞれ軸線に沿って進退移動させる進退駆動器と、制御器と、を備え、制御器は、ピン部材及びショルダ部材が、予め設定されている所定の第1回転数で回転した状態で、被接合物を予め設定されている所定の第1押圧力で押圧するように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(A)と、(A)を実行した後に、ショルダ部材が、回転した状態で、その先端が予め設定されている所定の第1位置まで圧入されるように、回転駆動器及び進退駆動器を駆動させる(B)と、を実行するように構成され、ショルダ部材は、第1押圧力で被接合物を押圧した場合に、先端面の面圧が200.71~254.65MPaとなるように構成されている。
【0029】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の運転方法では、第1位置が、被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して46%以上の位置であり、ショルダ部材は、第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されていてもよい。
【0030】
さらに、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の運転方法では、第1位置が、被接合物の表面から、当該被接合物の厚みに対して100%以下の位置であってもよい。
【0031】
以下、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
[摩擦攪拌点接合装置の構成]
図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の概略構成を示す模式図である。なお、
図1においては、図における上下方向を摩擦攪拌点接合装置における上下方向として表している。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、ピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、進退駆動器53、クランプ部材13、裏当て支持部55、裏当て部材56、及び回転駆動器57を備えている。
【0034】
ピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、進退駆動器53、クランプ部材13、及び回転駆動器57は、C型ガン(C型フレーム)で構成される裏当て支持部55の上端に設けられている。また、裏当て支持部55の下端には、裏当て部材56が設けられている。ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13と、裏当て部材56と、は互いに対向する位置で裏当て支持部55に取り付けられている。なお、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13と、裏当て部材56と、の間には、被接合物60が配置される。
【0035】
ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、回転工具固定器521及びクランプ固定器522から構成される工具固定器52に固定されている。具体的には、ピン部材11及びショルダ部材12は、回転工具固定器521に固定されていて、クランプ部材13は、クランプ駆動器41を介して、クランプ固定器522に固定されている。そして、回転工具固定器521は、回転駆動器57を介して、クランプ固定器522に支持されている。なお、クランプ駆動器41は、スプリングにより構成されている。
【0036】
また、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、ピン駆動器531及びショルダ駆動器532から構成される進退駆動器53によって、上下方向に進退駆動される。
【0037】
ピン部材11は、円柱状に形成されていて、
図1には、詳細に図示されないが、回転工具固定器521により支持されている。また、ピン部材11は、回転駆動器57により、ピン部材11の軸心に一致する軸線Xr(回転軸)周りに回転し、ピン駆動器531により、矢印P1方向、すなわち軸線Xr方向(
図1では上下方向)に沿って、進退移動可能に構成されている。
【0038】
なお、ピン駆動器531としては、例えば、直動アクチュエータで構成されていてもよい。直動アクチュエータとしては、例えば、サーボモータとラックアンドピニオン、サーボモータとボールネジ、又はエアシリンダー等で構成されていてもよい。
【0039】
ショルダ部材12は、中空を有する円筒状に形成されていて、回転工具固定器521により支持されている。ショルダ部材12の中空内には、ピン部材11が内挿されている。換言すると、ショルダ部材12は、ピン部材11の外周面を囲むように配置されている。
【0040】
また、ショルダ部材12は、回転駆動器57により、ピン部材11と同一の軸線Xr周りに回転し、ショルダ駆動器532により、矢印P2方向、すなわち軸線Xr方向に沿って進退移動可能に構成されている。
【0041】
なお、ショルダ駆動器532としては、例えば、直動アクチュエータで構成されていてもよい。直動アクチュエータとしては、例えば、サーボモータとラックアンドピニオン、サーボモータとボールネジ、又はエアシリンダー等で構成されていてもよい。
【0042】
このように、ピン部材11及びショルダ部材12(回転工具)は、本実施の形態ではいずれも同一の回転工具固定器521によって支持され、いずれも回転駆動器57により軸線Xr周りに一体的に回転する。さらに、ピン部材11及びショルダ部材12は、ピン駆動器531及びショルダ駆動器532により、それぞれ軸線Xr方向に沿って進退移動可能に構成されている。
【0043】
なお、本実施の形態1においては、ピン部材11は単独で進退移動可能であるとともに、ショルダ部材12の進退移動に伴っても進退移動可能となっているが、ピン部材11及びショルダ部材12がそれぞれ独立して進退移動可能に構成されてもよい。
【0044】
クランプ部材13は、ショルダ部材12と同様に、中空を有する円筒状に形成されていて、その軸心が軸線Xrと一致するように設けられている。クランプ部材13の中空内には、ショルダ部材12が内挿されている。
【0045】
すなわち、ピン部材11の外周面を囲むように、円筒状のショルダ部材12が配置されていて、ショルダ部材12の外周面を囲むように円筒状のクランプ部材13が配置されている。換言すれば、クランプ部材13、ショルダ部材12及びピン部材11が、それぞれ同軸心状の入れ子構造となっている。
【0046】
また、クランプ部材13は、被接合物60を一方の面(表面)から押圧するように構成されている。クランプ部材13は、上述したように、本実施の形態1においては、クランプ駆動器41を介してクランプ固定器522に支持されている。クランプ駆動器41は、クランプ部材13を裏当て部材56側に付勢するように構成されている。そして、クランプ部材13(クランプ駆動器41及びクランプ固定器522を含む)は、ショルダ駆動器532によって、矢印P3方向(矢印P1及び矢印P2と同方向)に進退可能に構成されている。
【0047】
なお、クランプ駆動器41は、本実施の形態1においては、スプリングで構成したが、これに限定されるものではない。クランプ駆動器41は、クランプ部材13に付勢を与えたり加圧力を与えたりする構成であればよく、例えば、ガス圧、油圧、サーボモータ等を用いた機構も好適に用いることができる。
【0048】
ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、それぞれ先端面11a、先端面12a、及び先端面13aを備えている。また、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13は、進退駆動器53により進退移動することで、先端面11a、先端面12a、及び先端面13aは、それぞれ、被接合物60の表面(被接合物60の被接合部)に当接し、被接合物60を押圧する。
【0049】
また、ショルダ部材12の先端面12aの直径が9.0mmである場合に、ピン部材11の先端面11aの直径は、圧入速度の低下を抑制する観点から、5.0mmより大きくてもよく、5.5mm以上であってもよい。また、ショルダ部材12の先端面12aの直径が9.0mmである場合に、ピン部材11の先端面11aの直径は、ショルダ部材12の破損を抑制する観点から、6.0mm以下であってもよい。
【0050】
換言すると、ショルダ部材12は、圧入速度の低下を抑制する観点から、その先端面12aの面積が、43.98mm2より小さくてもよく、39.86mm2以下であってもよい。また、ショルダ部材12は、当該ショルダ部材12の破損を抑制する観点から、35.34mm2以上であってもよい。
【0051】
裏当て部材56は、本実施の形態1においては、平板状の被接合物60の裏面を当接するように平坦な面(支持面56a)により、支持するように構成されている。裏当て部材56は、摩擦攪拌点接合を実施できるように被接合物60を適切に支持することができるものであれば、その構成は特に限定されない。裏当て部材56は、例えば、複数の種類の形状を有する裏当て部材56が別途準備され、被接合物60の種類に応じて、C型フレーム55から外して交換できるように構成されてもよい。
【0052】
被接合物60は、2枚の板状の第1部材61及び第2部材62を有する。第1部材61及び第2部材62としては、金属材料(例えば、アルミニウム、鋼等)、又は繊維強化プラスチック(例えば、炭素繊維強化プラスチック)で構成されていてもよい。また、第1部材61の厚み寸法は、第2部材62の厚み寸法以上であってもよい。
【0053】
なお、本実施の形態1においては、被接合物60を板状の第1部材61と板状の第2部材62で構成されている形態を採用したが、これに限定されず、被接合物60(第1部材61及び第2部材62)の形状は任意であり、例えば、直方体状であってもよく、円弧状に形成されていてもよい。また、被接合物60は、3つ以上の部材を有していてもよい。
【0054】
また、本実施の形態1におけるピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、進退駆動器53、クランプ部材13、裏当て支持部55、及び回転駆動器57の具体的な構成は、前述した構成に限定されず、広く摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。例えば、ピン駆動器531及びショルダ駆動器532は、摩擦攪拌接合の分野で公知のモータ及びギア機構等で構成されていてもよい。
【0055】
また、裏当て支持部55は、本実施の形態1においては、C型ガンで構成されているが、これに限定されない。裏当て支持部55は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13を進退移動可能に支持するとともに、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13に対向する位置に裏当て部材56を支持することができれば、どのように構成されていてもよい。
【0056】
また、本実施の形態1においては、クランプ部材13を備える構成を採用したが、これに限定されず、クランプ部材13を備えていない構成を採用してもよい。この場合、例えば、クランプ部材13は、必要に応じて裏当て支持部55から着脱可能に構成されていてもよい。
【0057】
さらに、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、摩擦攪拌点接合用ロボット装置(図示せず)に配設される形態を採用している。具体的には、裏当て支持部55が、ロボット装置のアームの先端に取り付けられている。
【0058】
このため、裏当て支持部55も摩擦攪拌点接合用ロボット装置に含まれるとみなすことができる。裏当て支持部55及びアームを含めて、摩擦攪拌点接合用ロボット装置の具体的な構成は特に限定されず、多関節ロボット等、摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。
【0059】
なお、摩擦攪拌点接合装置50(裏当て支持部55を含む)は、摩擦攪拌点接合用ロボット装置に適用される場合に限定されるものではなく、例えば、NC工作機械、大型のCフレーム、及びオートリベッター等の公知の加工用機器にも好適に適用することができる。
【0060】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、二対以上のロボットが、摩擦攪拌点接合装置50における裏当て部材56以外の部分と、裏当て部材56と、を正対させるように構成されていてもよい。さらに、摩擦攪拌点接合装置50は、被接合物60に対して安定して摩擦攪拌点接合を行うことが可能であれば、被接合物60を手持ち型にする形態を採用してもよく、ロボットを被接合物60のポジショナーとして用いる形態を採用してもよい。
【0061】
[摩擦攪拌点接合装置の制御構成]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50の制御構成について、
図2を参照しながら、具体的に説明する。
【0062】
図2は、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【0063】
図2に示すように、摩擦攪拌点接合装置50は、制御器51、記憶器31、入力器32、及び位置検出器33を備えている。
【0064】
制御器51は、摩擦攪拌点接合装置50を構成する各部材(各機器)を制御するように構成されている。具体的には、制御器51は、記憶器に記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、進退駆動器53を構成するピン駆動器531及びショルダ駆動器532と、回転駆動器57と、を制御する。
【0065】
これにより、ピン部材11及びショルダ部材12の進出移動又は後退移動の切り替え、進退移動時のピン部材11及びショルダ部材12における、先端位置の制御、移動速度、及び移動方向等を制御することができる。また、ピン部材11、ショルダ部材12及びクランプ部材13の被接合物60を押圧する押圧力を制御することができる。さらに、ピン部材11及びショルダ部材12の回転数を制御することができる。
【0066】
なお、制御器51は、集中制御する単独の制御器51によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御器51によって構成されていてもよい。また、制御器51は、マイクロコンピュータで構成されていてもよく、MPU、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等によって構成されていてもよい。
【0067】
また、制御器51は、摩擦攪拌点接合として、ISO18785に記載の内容(態様)を含むように、摩擦攪拌点接合装置50を構成する各部材(各機器)を制御してもよい。
【0068】
記憶器31は、基本プログラム、各種データを読み出し可能に記憶するものであり、記憶器31としては、公知のメモリ、ハードディスク等の記憶装置等で構成される。記憶器31は、単一である必要はなく、複数の記憶装置(例えば、ランダムアクセスメモリ及びハードディスクドライブ)として構成されてもよい。制御器51等がマイクロコンピュータで構成されている場合には、記憶器31の少なくとも一部がマイクロコンピュータの内部メモリとして構成されてもよいし、独立したメモリとして構成されてもよい。
【0069】
なお、記憶器31には、データが記憶され、制御器51以外からデータの読み出しが可能となっていてもよいし、制御器51等からデータの書き込みが可能になっていてもよいことはいうまでもない。
【0070】
入力器32は、制御器51に対して、摩擦攪拌点接合の制御に関する各種パラメータ、あるいはその他のデータ等を入力可能とするものであり、キーボード、タッチパネル、ボタンスイッチ群等の公知の入力装置で構成されている。本実施の形態1では、少なくとも、被接合物60の接合条件、例えば、被接合物60の厚み、材質等のデータが入力器32により入力可能となっている。
【0071】
位置検出器33は、ショルダ部材12の先端(先端面12a)の位置情報を検出して、検出した位置情報を制御器51に出力するように構成されている。位置検出器33としては、例えば、変位センサ、LVDT、エンコーダー等を用いてもよい。
【0072】
[摩擦攪拌点接合装置の動作(運転方法)]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50の動作について、
図3、
図4A、及び
図4Bを参照して具体的に説明する。なお、
図4A及び
図4Bにおいては、被接合物60として、第1部材61及び第2部材62を用い、これらを重ねて点接合にて連結する場合を例に挙げている。
【0073】
図3は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4A及び
図4Bは、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
【0074】
なお、
図4A及び
図4Bにおいては、摩擦攪拌点接合装置の一部を省略し、矢印rは、ピン部材11及びショルダ部材12の回転方向を示し、ブロック矢印Fは、第1部材61及び第2部材62に加えられる力の方向を示す。また、裏当て部材56からも第1部材61及び第2部材62に対して力が加えられているが、説明の便宜上、
図4A及び
図4Bには図示していない。さらに、ショルダ部材12には、ピン部材11及びクランプ部材13との区別を明確とするために、網掛けのハッチングを施している。
【0075】
まず、作業者(操作者)が、裏当て部材56の支持面56aに被接合物60を載置する。ついで、作業者が入力器32を操作して、制御器51に被接合物60の接合実行を入力する。なお、ロボットが、裏当て部材56の支持面56aに被接合物60を載置してもよい。
【0076】
すると、
図3に示すように、制御器51は、回転駆動器57を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を予め設定されている所定の第1回転数(例えば、200~3000rpm)で回転させる(ステップS101;
図4Aの工程(1)参照)。
【0077】
次に、制御器51は、進退駆動器53(ショルダ駆動器532)を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を回転させた状態で、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13を被接合物60に接近させ、ピン部材11の先端面11a、ショルダ部材12の先端面12a、及びクランプ部材13の先端面13a(
図4A及び
図4Bには図示せず)を被接合物60の表面60cに当接させる(ステップS102;
図4Aの工程(2)参照)。
【0078】
このとき、制御器51は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13が予め設定されている所定の第1押圧力(例えば、3kN~15kN)で被接合物60を押圧するように、進退駆動器53(ショルダ駆動器532)を制御する。
【0079】
これにより、クランプ部材134と裏当て部材56とで第1部材61及び第2部材62が挟み込まれ、クランプ駆動器41の収縮により、クランプ部材13が被接合物60の表面60c側に付勢され、クランプ力が発生する。
【0080】
また、この状態では、ピン部材11及びショルダ部材12共に進退移動しないので、被接合物60の表面60cを「予備加熱」することになる。これにより、第1部材61の当接領域における構成材料が摩擦により発熱することで軟化し、被接合物60の表面60c近傍に塑性流動部60aが生じる。
【0081】
次に、制御器51は、ピン部材11の先端面11aがショルダ部材12の先端面12aに対して没入するように、進退駆動器53を駆動する(ステップS103)。このとき、制御器51は、ピン部材11が被接合物60から離れるように、進退駆動器53(ピン駆動器531)を駆動してもよい。また、制御器51は、ショルダ部材12が被接合物60内に圧入されるように、進退駆動器53(ピン駆動器531)を駆動してもよい。
【0082】
次に、制御器51は、位置検出器33から、ショルダ部材12の先端部の位置情報を取得する(ステップS104)。ついで、制御器51は、ステップS104で取得したショルダ部材12の先端部の位置情報が、予め設定されている所定の第1位置まで到達したか否かを判定する(ステップS105)。
【0083】
ここで、第1位置は、予め実験等により設定することができ、第1部材61の表面(被接合物60の表面60c)を0%とし、第2部材62の支持面56aと当接する面を100%とした場合に、0%より大きく、かつ、100%以下の間で任意に設定される位置をいう。
【0084】
なお、圧入速度の低下を抑制する観点から、第1位置は、46.0%以上であってもよく、54.0%以上であってもよく、57.5%以上であってもよい。また、ショルダ部材12の破損を抑制する観点から、第1位置は、100.0%以下であってもよく、85.0%以下であってもよく、80.0%以下であってもよい。
【0085】
これにより、被接合物60の軟化部位は、上側の第1部材61から下側の第2部材62にまで及び、塑性流動部60aのボリュームが増加する。さらに、塑性流動部60aの軟化した材料はショルダ部材12により押し退けられ、ショルダ部材12の直下からピン部材11の直下に流動するので、ピン部材11は後退し、ショルダ部材12に対して浮き上がる(
図4Aの工程(3)参照)。
【0086】
制御器51は、ステップS104で取得したショルダ部材12の先端部の位置情報が、第1位置まで到達していないと判定した場合(ステップS105でNo)には、ステップS104に戻り、ステップS104で取得したショルダ部材12の先端部の位置情報が、第1位置まで到達したと判定するまで、ステップS104及びステップS105の処理を繰り返す。
【0087】
一方、制御器51は、ステップS104で取得したショルダ部材12の先端部の位置情報が、第1位置まで到達したと判定した場合(ステップS105でYes)には、ステップS106の処理を実行する。
【0088】
ステップS106では、制御器51は、ピン部材11が被接合物60に向かって進むように、進退駆動器53(ピン駆動器531)を駆動する、又は、制御器51は、ショルダ部材12が被接合物60から離れるように、進退駆動器53(ショルダ駆動器532)を駆動する。
【0089】
これにより、ピン部材11が徐々に第1部材61に向かって進み、ショルダ部材12が第1部材61から後退する(
図4Bの工程(4)参照)。このとき、塑性流動部60aの軟化した部分は、ピン部材11の直下からショルダ部材12の直下(ショルダ部材12の圧入により生じた凹部)に流動する。
【0090】
なお、制御器51は、ピン部材11の先端面11aが、第1位置に位置するように、進退駆動器53を制御してもよい。また、制御器51は、ピン部材11の先端面11aが、第2部材62内に到達するように、進退駆動器53を制御してもよく、ピン部材11の先端面11aが、第1部材61内に位置するように、進退駆動器53を制御してもよい。
【0091】
また、制御器51は、ステップS103及び/又はステップS106の処理において、ピン部材11の先端面11aの面積をAp、ショルダ部材12の先端面12aの面積をAsとし、ピン部材11の圧入深さをPp、ショルダ部材12の圧入深さをPsとしたときに、次の式(I)
Ap・Pp+As・Ps=Tx ・・・ (I)
で定義されるツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、進退駆動器53を制御することが好ましく、ツール平均位置Tx=0となるように、進退駆動器53を制御することがより好ましい。なお、ツール平均位置Txの絶対値を小さくする具体的な制御については、特許文献1に詳細に開示されているため、ここでは、その説明を省略する。
【0092】
次に、制御器51は、進退駆動器53を制御して、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを、互いに段差がほとんど生じない程度に合わせる(面一とする)(ステップS107;
図4Bの工程(5)参照)。これにより、被接合物60の表面60cが整形され、実質的な凹部が生じない程度の略平坦な面が得られる。
【0093】
次に、制御器51は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材13を被接合物60から離間するように、進退駆動器53を駆動させる(ステップS108)。ついで、制御器51は、回転駆動器57を制御して、ピン部材11及びショルダ部材12の回転を停止させ(ステップS109;
図4Bの工程(6)参照)、一連の摩擦攪拌点接合(被接合物60の接合工程)を終了させる。
【0094】
これにより、ピン部材11及びショルダ部材12の当接による回転(及び押圧)は第1部材61及び第2部材62に加えられなくなるので、第1部材61、第2部材62の双方に及ぶ塑性流動部60aでは、塑性流動が停止し、被接合部60bとなる。
【0095】
このように構成された、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50では、ショルダ部材12における被接合物60への圧入の目標位置である、第1位置が、被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して46%以上の位置である場合に、ショルダ部材12は、第1位置に到達するまでの圧入速度が、一定速度となるように構成されている。
【0096】
具体的には、ショルダ部材12の先端面12aの面積を小さくすることで、先端面12aの面圧を大きくしている。より詳細には、ショルダ部材12の先端面12aの面積を43.98mm2より小さくしている。なお、本実施の形態1においては、先端面12aの面積を39.86mm2以下、かつ、35.34mm2以上としている。
【0097】
これにより、後述する試験例に示すように、ショルダ部材12の回転速度が同じである場合、先端面12aの面積が小さい方が、ショルダ部材12の被接合物60への圧入速度を大きくすることができる。
【0098】
また、ショルダ部材12の先端面12aの面積を小さくすることは、換言すると、ピン部材11の先端面11aの面積(先端面11aの直径)を大きくすることである。これにより、ショルダ部材12の内方空間12b(
図4Aの工程(3)参照)の体積を大きくすることができる。
【0099】
このため、ショルダ部材12の圧入深さが大きくなった場合であっても、塑性流動部60aの軟化した材料が、ショルダ部材12の内方空間12b内に入り込みやすくなり、ショルダ部材12の被接合物60への圧入速度の低下を抑制する(圧入速度を一定にする)ことができる。
【0100】
したがって、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50では、厚みの大きな被接合物60を接合する場合であっても、ショルダ部材12の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制することができる。
【0101】
[試験例]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50による、被接合物60の接合試験について説明する。
【0102】
(実施例1)
実施例1として、ショルダ部材12の先端面12aの面積が、39.86mm2であり、ピン部材11の先端面11aの面積が、23.76mm2である、摩擦攪拌点接合装置50を用いて、被接合物60の接合試験を実行した。
【0103】
(実施例2)
実施例2として、ショルダ部材12の先端面12aの面積が、35.34mm2であり、ピン部材11の先端面11aの面積が、28.27mm2である、摩擦攪拌点接合装置50を用いて、被接合物60の接合試験を実行した。
【0104】
(比較例)
比較例として、ショルダ部材12の先端面12aの面積が、43.98mm2であり、ピン部材11の先端面11aの面積が、19.63mm2である、摩擦攪拌点接合装置50を用いて、被接合物60の接合試験を実行した。
【0105】
(試験例1)
第1部材61として、縦40mm、横125mm、厚さ2mmのアルミニウム板(A5052-O)を用い、第2部材62として、縦40mm、横125mm、厚さ2mmのアルミニウム板(A5052-O)を用いた。また、ピン部材11及びショルダ部材12の回転数である、第1回転数を1600rpmとし、ピン部材11及びショルダ部材12の押圧力である、第1押圧力を14000Nとした。
【0106】
なお、クランプ駆動器41として、スプリングを用い、当該スプリングの弾性力の反作用によって、上向きに5000Nの荷重がかかる。このため、被接合物60には、9000Nの荷重がかかり、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50では、ショルダ部材12の先端面12aに225.80MPaの荷重がかかる。同様に、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、ショルダ部材12の先端面12aに254.65MPaの荷重がかかる。
【0107】
〈試験結果1〉
上記試験例1の条件において、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に1.5、1.9、2.3、2.7、及び3.4mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、ショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0108】
同様に、上記試験例1の条件において、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に1.5、1.9、2.3、2.7、3.4、及び4.0mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、各接合試験におけるショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0109】
さらに、上記試験例1の条件において、比較例の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に1.5、1.9、2.3、及び2.7mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、各接合試験におけるショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0110】
図5は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
図6は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
図7は、比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【0111】
また、
図8は、実施例1、実施例2、及び比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例1の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。なお、
図8においては、第1位置を2.3mmと設定したときの結果である。
【0112】
さらに、
図15(A)は、実施例1、実施例2、及び比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、第1位置を2.7mmと設定して、試験例1の条件で摩擦攪拌点接合した被接合物の断面写真である。
【0113】
まず、
図8に示すように、比較例の摩擦攪拌点接合装置50に比して、ショルダ部材12の先端面12aの面積が小さい、実施例1、2の摩擦攪拌点接合装置50の方が、ショルダ部材12の被接合物60への圧入速度を大きくすることができることが示された。
【0114】
また、
図7に示すように、ショルダ部材12の圧入深さが大きくなった場合には、比較例の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置に到達するまでの時間がかかる。換言すると、比較例の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定にすることができない(圧入速度が小さくなる)。このため、被接合物60の接合時間がかかることが示された。
【0115】
一方、
図5及び
図6に示すように、ショルダ部材12の圧入深さが大きくなった場合であっても、実施例1及び実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができる。このため、比較例の摩擦攪拌点接合装置50
に比して、実施例1及び実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、接合時間が増加することを抑制することができることが示された。
【0116】
さらに、
図15(A)に示すように、比較例の摩擦攪拌点接合装置50では、接合した被接合物60は、被接合部における表面60cからの凹み量(表面60cと凹部の底面との間の距離;インデント量)が0.39mmとなった。
【0117】
一方、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50では、接合した被接合物60のインデント量が、0.25mmであり、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、接合した被接合物60のインデント量が、0.25mmであった。
【0118】
これらの結果について、発明者らは、比較例の摩擦攪拌点接合装置50では、ショルダ部材12の先端面12aが、第1位置に到達するまでの時間がかかるため、塑性流動した材料が、第1部材61と第2部材62との間に流れ込みやすくなる。このため、インデント量が、実施例1、2の摩擦攪拌点接合装置50で接合した場合に比して、大きくなったと推察している。
【0119】
(試験例2)
第1部材61として、縦40mm、横125mm、厚さ2mmのアルミニウム板(A5052-O)を用い、第2部材62として、縦40mm、横125mm、厚さ2mmのアルミニウム板(A5052-O)を用いた。また、ピン部材11及びショルダ部材12の回転数である、第1回転数を1600rpmとし、ピン部材11及びショルダ部材12の押圧力である、第1押圧力を13000Nとした。
【0120】
なお、クランプ駆動器41として、スプリングを用い、当該スプリングの弾性力の反作用によって、上向きに5000Nの荷重がかかる。このため、被接合物60には、8000Nの荷重がかかり、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50では、ショルダ部材12の先端面12aに200.71MPaの荷重がかかる。同様に、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、ショルダ部材12の先端面12aに226.35MPaの荷重がかかる。
【0121】
〈試験結果2〉
上記試験例2の条件において、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に2.7、及び3.4mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、ショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0122】
同様に、上記試験例2の条件において、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に2.7、3.4、及び4.0mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、各接合試験におけるショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0123】
図9は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例2の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
図10は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例2の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【0124】
図9に示すように、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置を2.3mmと設定した場合、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。また、
図10に示すように、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置を4.0mmと設定した場合であっても、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0125】
このため、ショルダ部材12における先端面12aの面圧が、200.71~254.65MPaとなるように、ショルダ部材12を構成することで、摩擦攪拌点接合装置50は、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0126】
(試験例3)
第1部材61として、縦50mm、横150mm、厚さ3mmのアルミニウム板(A5052-O)を用い、第2部材62として、縦30mm、横100mm、厚さ1mmのアルミニウム板(A5052-O)を用いた。
【0127】
(試験例4)
第1部材61として、縦50mm、横150mm、厚さ3mmのアルミニウム板(A5052-O)を用い、第2部材62として、縦40mm、横125mm、厚さ2mmのアルミニウム板(A5052-O)を用いた。
【0128】
なお、試験例3、4ともに、被接合物60以外の条件は、試験例1と同じである。
【0129】
〈試験結果3〉
上記試験例3、4の条件において、実施例1の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に1.5、1.9、2.3、2.7、及び3.4mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、ショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0130】
同様に、上記試験例3、4の条件において、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50を用いて、ショルダ部材12の目標到達位置である、第1位置を被接合物60の表面60cから下方に1.5、1.9、2.3、2.7、3.4、及び4.0mmの位置に設定して、被接合物60の接合試験を実行し、各接合試験におけるショルダ部材12の先端面12aの位置をプロットした。
【0131】
図11は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例3の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
図12は、実施例1の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例4の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【0132】
また、
図13は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例3の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
図14は、実施例2の摩擦攪拌点接合装置を用いて、試験例4の条件で被接合物の接合試験を実行したときにおける、ショルダ部材の先端面の位置をプロットした結果である。
【0133】
さらに、
図15(B)は、実施例1、実施例2、及び比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、第1位置を2.7mmと設定して、試験例3の条件で摩擦攪拌点接合した被接合物の断面写真である。
図15(C)は、実施例1、実施例2、及び比較例の摩擦攪拌点接合装置を用いて、第1位置を2.7mmと設定して、試験例4の条件で摩擦攪拌点接合した被接合物の断面写真である。
【0134】
図11~
図14に示すように、実施例1、2の摩擦攪拌点接合装置50は、被接合物60(第1部材61及び/又は第2部材62)の厚みを変更しても、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0135】
また、
図11、13に示すように、実施例1、2の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置を2.3/4.0mmと設定した場合、すなわち、被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して57.5%の位置と設定した場合であっても、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0136】
さらに、
図12、14に示すように、実施例1、2の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置を2.3/5.0mmと設定した場合、すなわち、被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して46.0%の位置と設定した場合であっても、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0137】
同様に、
図13に示すように、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置を4.0/4.0mmと設定した場合、すなわち、被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して100%の位置と設定した場合であっても、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0138】
さらに、
図13に示すように、実施例2の摩擦攪拌点接合装置50では、第1位置を3.4/4.0mmと設定した場合、すなわち、被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して85.0%の位置と設定した場合であっても、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0139】
このため、第1位置を被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して46%以上の位置と設定しても、摩擦攪拌点接合装置50は、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0140】
また、第1位置を被接合物60の表面60cから、当該被接合物60の厚みに対して100%以下の位置と設定しても、摩擦攪拌点接合装置50は、第1位置に到達するまでの圧入速度を一定に保つことができることが示された。
【0141】
また、
図15(B)、(C)に示すように、実施例1、2の摩擦攪拌点接合装置50では、比較例の摩擦攪拌点接合装置50に比して、被接合物60のインデント量を小さくすることができることが示された。
【0142】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の形態を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の摩擦攪拌点接合装置及び摩擦攪拌点接合方法は、厚みの大きな被接合物を接合する場合であっても、ショルダ部材の圧入速度を一定にすることができ、接合時間が増加することを抑制し得るため、有用である。
【符号の説明】
【0144】
11 ピン部材
11a 先端面
12b 内方空間
12a 先端面
12 ショルダ部材
13 クランプ部材
13a 先端面
31 記憶器
32 入力器
33 位置検出器
41 クランプ駆動器
50 摩擦攪拌点接合装置
51 制御器
52 工具固定器
53 進退駆動器
55 裏当て支持部
56a 支持面
56 裏当て部材
57 回転駆動器
60 被接合物
60a 塑性流動部
60b 被接合部
60c 表面
61 第1部材
62 第2部材
521 回転工具固定器
522 クランプ固定器
531 ピン駆動器
532 ショルダ駆動器
Xr 軸線