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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155622
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】炎検知器用遮光カバー
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/12 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G08B17/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058951
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛之
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小町 淳
(72)【発明者】
【氏名】丸田 聡史
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA13
5C085BA35
5C085FA10
5C085FA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装着対象の炎検知器を保護しかつ誤検知を防止しつつ外形の異なる複数種類の炎検知器に対応する遮光カバーを提供する。
【解決手段】炎検知器に装着されて外部からの光が入らないように検知窓の前方を覆うための炎検知器用遮光カバー10おいて、炎検知器の筐体が遊挿可能な開口を各々有する第1嵌合用リング11A及び第2嵌合用リング11Bと、これらの嵌合用リングを所定の間隔をおいて平行に連結する連結板12a~12dと、第1嵌合用リング又は第2嵌合用リングの外側面に着脱可能に結合されて開口を閉塞する、不透明で剛性を有する材料で形成された遮光プレート14とを備える。遮光プレートの前面には、ハンドル15が設けられる。第1嵌合用リング及び第2嵌合用リングは、炎検知器に装着された際に筐体の所定部位と係合する係合部を備える。連結板の内側面は、筐体の外側面に接触して筐体の移動を押さえる板バネ17a~17dを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎が発する所定波長光を受光する検知用受光素子と、前記検知用受光素子および炎の検出回路を内蔵し前面側に前記検知用受光素子が臨む検知窓を有する筐体と、を備えた炎検知器に装着されて、外部からの光が入らないように前記検知窓の前方を覆うための炎検知器用遮光カバーであって、
前記筐体が遊挿可能な開口を各々有する第1嵌合用リングおよび第2嵌合用リングと、
前記第1嵌合用リングと前記第2嵌合用リングとを所定の間隔をおいて平行となるように連結する連結部材と、
前記第1嵌合用リングまたは前記第2嵌合用リングの外側面に着脱可能に結合されて、前記開口を閉塞する不透明で剛性を有する材料で形成された遮光プレートと、を備え、
前記遮光プレートの前面には取っ手となる部材が設けられ、
前記第1嵌合用リングおよび前記第2嵌合用リングには、炎検知器に装着された際に前記筐体の所定部位と係合する係合部が設けられ、
前記連結部材の内側面には前記筐体の外側面に接触して前記筐体の移動を押さえる固定手段が設けられていることを特徴とする炎検知器用遮光カバー。
【請求項2】
装着対象の前記炎検知器は前記検知窓の汚れを検知するための検知手段を備えており、
前記遮光プレートの後面には、炎検知器に装着された際に前記検知手段の検出光軸と交差する位置に遮光片が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炎検知器用遮光カバー。
【請求項3】
前記遮光プレートの後面であって前記遮光片の周囲には、環状をなすシール材が前記炎検知器の前面部材に接触可能な高さに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の炎検知器用遮光カバー。
【請求項4】
前記固定手段は、
装着対象の前記炎検知器の前記筐体の外側面に先端部が接触可能な一対の板バネと、
前記炎検知器に正しい位置で装着された際に前記筐体にある所定の突起物に当接する一対のストッパと、
により構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の炎検知器用遮光カバー。
【請求項5】
装着対象の前記炎検知器は、前記筐体の本体ケースと底壁側とを結合するネジが螺着される突出部分が前記筐体の外側面に形成されており、
前記係合部は、前記第1嵌合用リングと前記第2嵌合用リングのそれぞれの前記開口の縁部に部分的に内側へ膨出するように形成され、回転された際に前記突出部分の背面側に入り込んで係合可能な膨出部であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の炎検知器用遮光カバー。
【請求項6】
前記遮光プレートの前面には、炎検知器に装着された際に当該炎検知器の前記検知窓に対応する図柄が、正しい状態で装着された場合に前記検知窓と前記図柄とが合致する向きで表記されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の炎検知器用遮光カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎の検知を行う炎検知器の遮光カバーに関し、例えば炎や火花が発生するおそれがある工事や製鉄所等で一時的に火花を発生させる作業を行う際に炎検知器の検知機能を一時的に無効にするために使用する炎検知器用遮光カバーに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炎検知器が設置されている施設内において炎や火花が発生するおそれがある工事を行う場合、工事の作業中に発生した炎や火花を炎検知器が検知して誤って火災発生を報知するおそれがある。また、改装工事等のためにハツリ作業やサンダー作業など粉塵が発生する作業を行なう場合、発生した粉塵を煙感知器が検知するおそれがある。さらには、工事以外の環境であっても、例えば製鉄所において、溶接作業等の炎や火花を発生させる作業を行うことがあるが、このときに発生した炎や火花も炎検知器が検知して誤って火災発生を報知することも起こりうる。
そこで、工事開始前に周縁部にゴム輪を備えたビニール製カバーを、感知器に装着することが行われている。また、上記のようなカバーを、高所に設置されている感知器に脚立等を用いることなく装着できるようにするため、特許文献1に記載されている取り付け器具が提案されている。
【0003】
また、従来、工事の作業中に発生した炎や火花による火災検知器の誤検知を防止するための技術として、例えば特許文献2に記載されているような火災検知器カバーが提案されている。
特許文献2の火災検知器カバーは、シート状のカバー部材の全面に赤外線を遮断する遮光部を設けるとともに、カバー部材の表面に蓄光部と反射部を設け、火災検知器にカバーを取付ける手段としてカバー部材の開口部に口ゴム部を設け、蓄光部と反射部は面ファスナーによりカバー部材の表面に装着するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-16073号公報
【特許文献2】特開2020-194597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1や2に記載されているような周縁部にゴム輪(口ゴム)を備えたカバーを、感知器に装着することで、火災検知器の誤作動を防止することができる。
しかしながら、特許文献1に記載されているような周縁部に単にゴム輪を備えたカバーを使用した場合、工事終了後に火災検知器からカバーを取り外すのを忘れてしまうおそれがあるという課題がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載されている火災検知器カバーは、カバー部材の表面に蓄光部と反射部を設けているため、火災検知器にカバーが装着されているのを下方から確認することができる。しかし、工事対象の施設の面積が広く多数の火災検知器が設置されている場合、全エリアを巡回して確認しなければならず作業者の負担が大きい。また、カバーの表面に作業によって発生した粉塵が付着してしまうことがあり、その場合、カバーが装着されているのを下方から視認することが困難になり、見落としてしまうおそれがあるという課題がある。
【0007】
さらに、上記特許文献1や2に記載されているカバーは、柔軟性のあるシートで構成されているため、ハツリ作業で生じた破砕物が飛散した場合に感知器を破砕物から保護することができないとともに、誤検知防止のために装着する感知器が炎検知器の場合、樹脂製シートからなるカバーでは外部からの光を完全に遮断することができないため、確実に誤検知を防止することができないという課題がある。
そこで、カバー全体を金属製とすることが考えられるが、カバーを金属製にすると、使用したい検知器が複数種類ある場合に、同一のカバーで対応することが困難で、別々に大きさ等の異なるカバーを用意しなくてはならないという課題が生じることが分かった。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、装着対象の炎検知器を保護しかつ誤検知を防止しつつ外形の異なる複数種類の炎検知器に対応することができる炎検知器用遮光カバーを提供することにある。
本発明の他の目的は、炎検知器から取り外すのを忘れてしまうのを防止することができる炎検知器用遮光カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、
炎が発する所定波長光を受光する検知用受光素子と、前記検知用受光素子および炎の検出回路を内蔵し前面側に前記検知用受光素子が臨む検知窓を有する筐体と、を備えた炎検知器に装着されて、外部からの光が入らないように前記検知窓の前方を覆うための炎検知器用遮光カバーであって、
前記筐体が遊挿可能な開口を各々有する第1嵌合用リングおよび第2嵌合用リングと、
前記第1嵌合用リングと前記第2嵌合用リングとを所定の間隔をおいて平行となるように連結する連結部材と、
前記第1嵌合用リングまたは前記第2嵌合用リングの外側面に着脱可能に結合されて、前記開口を閉塞する不透明で剛性を有する材料で形成された遮光プレートと、を備え、
前記遮光プレートの前面には取っ手となる部材が設けられ、
前記第1嵌合用リングおよび前記第2嵌合用リングには、炎検知器に装着された際に前記筐体の所定部位と係合する係合部が設けられ、
前記連結部材の内側面には前記筐体の外側面に接触して前記筐体の移動を押さえる固定手段が設けられているように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する炎検知器用遮光カバーによれば、不透明で剛性を有し第1嵌合用リングまたは第2嵌合用リングの開口を閉塞する遮光プレートを備えるため、炎検知器に装着した際に検知窓を遮光プレートで覆うことができ、それによって装着対象の検知器を保護しかつ誤検知を防止することができる。
また、遮光プレートを第1嵌合用リングから第2嵌合用リングにまたはその逆に付け替えて180°向きを変えることによって、第1嵌合用リングまたは第2嵌合用リングのいずれかを炎検知器の筐体が開口に挿入されるようにして炎検知器に装着することができるため、外形の異なる複数種類の検知器に対応することができる。
さらに、遮光プレートに取っ手が設けられているため、遮光カバーを片手で操作することができるので、比較的容易に遮光カバーを炎検知器に装着することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、装着対象の前記炎検知器は前記検知窓の汚れを検知するための検知手段を備えており、
前記遮光プレートの後面には、炎検知器に装着された際に前記検知手段の検出光軸と交差する位置に遮光片が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、遮光プレートの後面に遮光片が設けられているため、炎検知器に本発明の遮光カバーが装着されると、炎検知器が備える検知窓の汚れを検知する機能が検知窓の汚れ検出信号を受信機へ送信するので、受信機側で炎検知器に遮光カバーが装着されているか否か判断できる。これによって、炎検知器からの遮光カバーの外し忘れを容易に見つけることができ、遮光カバーの外し忘れを防止することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記遮光プレートの後面であって前記遮光片の周囲には、環状をなすシール材が前記炎検知器の前面部材に接触可能な高さに形成されているように構成する。
かかる構成によれば、遮光プレートの後面に、炎検知器の前面部材に接触する環状のシール材が設けられているため、検知窓から内部へ外部の光が入るのをより確実に防止することができ、これによって工事の作業中に発生した炎や火花を炎検知器が検知して誤って火災発生を報知するのを回避することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記固定手段は、
装着対象の炎検知器の前記筐体の外側面に先端部が接触可能な一対の板バネと、
前記炎検知器に正しい位置で装着された際に前記筐体にある所定の突起物に当接する一対のストッパと、により構成する。
かかる構成によれば、固定手段が一対の板バネとストッパとによって構成されているため、簡単な操作で遮光カバーを炎検知器の筐体に正しい位置に装着することができるとともに、炎検知器に装着した遮光カバーがずれたり脱落したりするのを抑制することができる。
【0014】
また、望ましくは、装着対象の前記炎検知器は、前記筐体の本体ケースと底壁側とを結合するネジが螺着される突出部分が前記筐体の外側面に形成されており、
前記係合部は、前記第1嵌合用リングと前記第2嵌合用リングのそれぞれの前記開口の縁部に部分的に内側へ膨出するように形成され、回転された際に前記突出部分の背面側に入り込んで係合可能な膨出部であるように構成する。
かかる構成によれば、炎検知器に装着した遮光カバーが脱落するのをより確実に防止することができる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記遮光プレートの前面には、炎検知器に装着された際に当該炎検知器の前記検知窓に対応する図柄が、正しい状態で装着された場合に前記検知窓と前記図柄とが合致する向きで表記されているようにする。
かかる構成によれば、遮光プレートの前面に表記されている図柄を、装着対象の炎検知器の検知窓に合致させるようにして取り付けることで、遮光カバーを炎検知器の筐体に対して容易かつ正確に装着することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る炎検知器用遮光カバーによれば、装着対象の炎検知器を保護しかつ誤検知を防止しつつ外形の異なる複数種類の炎検知器に対応することができる。また、炎検知器から遮光カバーを取り外すのを忘れてしまうのを防止することができる。さらに、片手で操作して比較的容易に遮光カバーを炎検知器に装着することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る炎検知器用遮光カバーの一実施形態を示すもので、(A)は遮光カバーを斜め前方から見た斜視図、(B)は遮光カバーを斜め後方から見た斜視図である。
図2】実施形態の遮光カバーを取り付けた炎検知器の斜視図で、(A)は遮光カバーを製品Aに取り付けた状態を示す斜視図、(B)は遮光カバーを製品Bに取り付けた状態を示す斜視図である。
図3】(A)は遮光カバーを製品Aに取り付ける場合の部品位置関係を示す斜視図、(B)は遮光カバーを製品Bに取り付ける場合の部品位置関係を示す斜視図である。
図4】2種類の炎検知器の例を示すもので、(A)は製品Aの正面図、(B)は製品Bの正面図である。
図5】遮光プレートの裏面に設けられている遮光部材の機能を説明するための図で、炎検知器の検知部の拡大断面図である。
図6】実施形態の遮光カバーを取り付ける作業手順を説明するための図で、(A)は遮光カバーを炎検知器に取り付ける前の状態を示す斜視図、(B)は遮光カバーを炎検知器に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る炎検知器用遮光カバー(以下、単に遮光カバーと記す)の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A)は遮光カバーを斜め前方から見た斜視図、図1(B)は(A)の遮光カバーを斜め後方から見た斜視図、図2図1の本実施形態の遮光カバーを仕様の異なる2種類の炎検知器にそれぞれ取り付けた状態を示す斜視図である。
なお、本実施形態の遮光カバー10が使用される炎検知器30では、図4に示すように、筐体内部に各々検出波長の異なる三つの赤外線センサ(例えば焦電素子)などからなる検知用受光素子31a,31b,31cが横並びで配設されており、以下の説明では、炎検知器30の検知用受光素子31a~31cが向く方向を正面側あるいは前方、反対側を背面側あるいは後方と呼ぶ。
【0019】
炎検知器30は、一般に、背面側を取付け面に向けた状態で建造物の壁面に直接あるいは角度調整器などを台座として固定設置され、正面前方の領域の炎を検出する。図2においては、炎検知器30は角度調整器40によって設置されている様子が示されている。かかる炎検知器は、検知対象のエリア内の複数の炎検知器を集中的に管理する図示しない受信機に配線により接続され、炎を検出すると、検出信号を受信機へ送信する。
また、検知用受光素子の前方は例えばサファイアガラスのような透光材料からなる保護ガラスで覆われている。本明細書においては、この保護ガラスの開口部を検知窓と称する。また、本実施形態の遮光カバー10が使用される炎検知器30は、一対の発光素子と受光素子により検知窓の汚れを検知する機能を備えている。なお、このような機能を有する炎検知器は、例えば特開2001-283345号公報に記載されている。
【0020】
本実施形態の遮光カバー10は、図1に示すように、図2の炎検知器30の筐体よりも若干大きな円形の開口を有する第1嵌合用リング11Aと、第1嵌合用リング11Aの前面に前方へ向けて突出するように溶接等によって固着された4本の連結板12a~12dと、連結板12a~12dの前端に溶接等によって固着された円形の開口を有する第2嵌合用リング11Bと、第2嵌合用リング11Bにビス13a~13dによって着脱可能に固定された円板状の遮光プレート14と、遮光プレート14の前面に固着されたハンドル(取っ手)15と、を備えている。遮光プレート14は、不透明で剛性を有する材料で形成されている。
ここで、上記第1嵌合用リング11Aの開口と、第2嵌合用リング11Bの開口は、異なる大きさに設定されている。これは、遮光カバー10の前後の向きを変えるとともに、遮光プレート14を取り付ける嵌合用リングを切り替えることによって、筐体の外形の異なる2種類の炎検知器に対応することができるようにするためである。
【0021】
嵌合用リング11Aと11Bには、それぞれの開口に内側へ向けて膨出する複数個の膨出部11a,11bが所定の間隔をおいてそれぞれ形成されている。この膨出部11a,11bは炎検知器30の筐体の基部に設けられている半銃弾形をなす固定部の背面側に入り込んで遮光カバー10の抜け止めを行うためのものである。膨出部11a,11bの作用については後に改めて説明する。
なお、第1嵌合用リング11Aの上記連結板12a~12dの後端に対応する部位にもビス穴が形成されており、遮光プレート14はビス13a~13dを緩めることで第2嵌合用リング11Bから外し、第1嵌合用リング11Aの裏面側に接合してビス13a~13dで結合することができるように構成されている。
【0022】
具体的には、図3(A),(B)に示すように、遮光プレート14を外した状態で、符号Cで示すように、嵌合用リング11Aと11Bのいずれか一方が遮光プレート14と向き合うように遮光カバー10の本体枠を反転させることによって、遮光プレート14を嵌合用リング11Aまたは11Bに接合させてから、ビス13a~13dによって結合することにより使用状態となる。
そして、遮光プレート14を結合する嵌合用リングを11Aまたは11Bに切り替えることによって、図2の(A),(B)に示すように、使用する炎検知器30が2種類ある場合に対応することができる。なお、図2(A)に示す炎検知器30は耐圧防爆構造を有する防水型の製品、図2(B)に示す炎検知器30は耐圧防爆構造でない防塵防水型の製品である。
【0023】
また、上記第1嵌合用リング11Aの前面(遮光プレート14と対向する面)には、180°離れた位置に一対のストッパピン16a,16bが設けられている。図1(A)にはこのうち一方のストッパピン16aが示され、16bは遮光プレート14の陰になって見えていない。図1(B)に示すように、第2嵌合用リング11Bの内面にも、180°離れた位置に一対のストッパピン16c,16dが設けられている。
さらに、ストッパピン16a,16bと16c,16dとは、それぞれ表面に異なる色(例えば白と黒)が付されており、2種類の製品AまたはBのいずれかに遮光カバー10を使用する際に、遮光プレート14が嵌合用リング11Aまたは11Bのどちらについているか容易に識別できるようになっている。ストッパピン16a,16bと16c,16dの色を変える代わりに、板バネ17a,17bと17c,17dまたは嵌合用リング11Aと11Bの内側の表面の色を変えたり、A,B等の機器識別記号を表記したりするようにしても良い。
【0024】
一方、上記連結板12a~12dはその長さが、炎検知器30の筐体の高さとほぼ同一になるように設定されている。
上記連結板12a~12dのうち、対向する連結板12aと12cの外側面には、図1(B)に示すように、第1嵌合用リング11Aに近い側に一対の押さえ用の板バネ17a,17bが設けられ、第2嵌合用リング11B(図では遮光プレート14)に近い側に一対の押さえ用の板バネ17c,17dが設けられている。そして、これらの板バネ17a~17dは、先端が基部側よりも若干中央側に来るように形成されている。
また、板バネ17a,17bは第1嵌合用リング11Aと平行をなすように配設される一方、板バネ17c,17dは先端側が遮光プレート14(第2嵌合用リング11B)から離れるように傾斜して配設されている。
【0025】
上記のように構成している理由は、本実施形態の遮光カバー10を使用したい炎検知器として、耐圧防爆構造を有する防水型の製品とそうでない防塵防水型の製品とがあり、耐圧防爆型製品と防塵防水製品とでは、図4(A),(B)に示すように、炎検知器30の筐体基部の半銃弾形に膨出している固定部F1~F4の位置が異なっており、(A)の防爆型製品は固定部F1~F4が90°等間隔で設けられているのに対し、(B)の防塵防水製品は固定部F1-F2間とF1-F4間が異なる角度間隔で設けられているとともに、筐体の外形の大きさも異なっているためである。なお、固定部F1~F4は、筐体を構成するドーム状の検知器本体ケースの後端に、円板状の底壁を結合するためのビスの螺着部として設けられている。なお、符号36が付されているのは、前面カバープレートであり、中央に検知窓が臨む開口36aが設けられている。
【0026】
さらに、図1(A),(B)に示すように、板バネ17a~17dは、その先端が上記ストッパピン16a~16dから所定の距離だけ離れた位置に来るように設定されている。板バネ17a~17dの先端からストッパピン16a~16dまでの距離は、炎検知器30の筐体基部の半銃弾形をなす固定部F1~F4の幅に対応している。より正確には、板バネ17a~17dの先端からストッパピン16a~16dまでの距離は、炎検知器30の上記固定部F1~F4の幅よりも僅かに狭くなるように設定されている。
【0027】
一方、連結板12a~12dの内側面には、図1(B)に示すように、先端が炎検知器30の筐体の表面に当接した際に、炎検知器20の中心軸に遮光カバー10の中心軸が一致するように、位置決めするための位置決め用の当接ピン18a,18bが、各連結板に一対ずつ固着されている。当接ピン18aはすべて同一高さで、当接ピン18bもすべて同一高さであるが、当接ピン18aと18bは高さが異なっており、一方(18a)は2種類の炎検知器A,Bのうち製品Aの外形に対応して高さが設定され、他方(18b)は製品Bの外形に対応して高さが設定されている。
【0028】
また、上記遮光プレート14の裏面には、図1(B)に示すように、リング状をなすゴム製のシール材19が接着されているとともに、シール材19の中央に位置するように、一対の平行な遮光片20a,20bを有する遮光部材20が固着されている。シール材19の高さは嵌合用リング11A,11Bの高さ(厚み)よりも若干大きくなるように設定されており、これにより、図2に示すように、遮光カバー10を炎検知器30に被せた際に、シール材19が炎検知器30の前面カバープレートの周縁部に密着され、遮光プレート14と共に外部からの光を遮断し内側の受光素子31a~31cに入射するのを防止する。
【0029】
さらに、連結板12cの嵌合用リング11に近い部位には、一方(図では下方)の端部に開閉可能な引っ掛け用のスナップクリップリング21が連結されているボールチェーン22の他方(図では上方)の端部がビス(図示省略)によって結合されている。スナップクリップリング21は、例えば台座となる角度調整器40に設けられている係止穴に係合されることで、ボールチェーン22と共に遮光カバー10の脱落を防止する手段として機能する。なお、スナップクリップリング21は、単なるリングとし、このリングと角度調整器40に設けられている係止穴とを結束バンド等にて結合させるようにしても良い。角度調整器40は、炎検知器の検知窓が所望の方向を向くようにして設置するための治具である。なお、遮光カバー10を構成する部品(11~19)は、すべてステンレスなどの金属で形成されているが、一部の部品はプラスチックで形成しても良い。
【0030】
さらに、遮光プレート14の上面中央には、図1(A)に示すように、炎検知器30の検知窓部に対応した長円とその内側に並んで配設された3個の小円で検知用受光素子31a~31cを表わした図柄Wが印刷等によって表記されている。この表記によって、遮光カバー10を既設の炎検知器30に装着する際に、向きを一致させるための目印とすることで容易に装着作業を行うことができるようになっている。
また、遮光プレート14の上面の周縁部には、図2(B)に示すように、遮光カバー10を既設の炎検知器30に装着する際に回転させる方向(ロック方向)へ指示する矢印Y1(LOCK)と、遮光カバー10を炎検知器30から取り外す際に回転させる方向(開放方向)へ指示する矢印Y2(OPEN)とが表記されている。
【0031】
図5には、遮光プレート14の裏面に設けられている遮光部材20の機能を説明するための図が示されている。
図5に示すように、本実施形態の遮光カバー10が使用される炎検知器30の筐体の内部には、回路基板32上に、検知窓33の汚れ具合を検知するための試験用光源としてのLED34と、試験用受光素子(図3には示されていない)と、試験用受光素子からの信号に基づいて汚れを判定する判定回路を構成する素子が実装されている。試験用受光素子は、図示しない作動灯用のLEDの光を筐体の前方に放出するための光放出部材35に設けられている光導出部に対応して配設されている。また、回路基板32上には、上記のような試験用LED34と試験用受光素子との組がもう一つ設けられている。
【0032】
また、2つの試験用LEDは、試験用受光素子とほぼ180度離れた位置に傾斜した姿勢で配設されており、一方の試験用LED34から出射した光は、図5に破線で示すように、検知窓33を通過してから光放出部材35のテーパ面35aより入射し、導光部材を経由して対応する試験用受光素子へ入射する。この際、検知窓33が汚れていると、試験用受光素子へ到達する試験光の光量が減少するので、回路基板上の判定回路は、試験用受光素子の検出信号に基づいて検知窓33の汚れ具合を判定することができる。
なお、試験用受光素子には、試験用LEDが出射する光の波長を含む波長帯の光を検知するものが選択される。これにより、外部光のある場所に検知器が設置されている場合にも、検知窓33の汚れ具合を検知することができる。
【0033】
本実施形態の遮光カバー10における遮光部材20の遮光片20aと20bは、2組の試験用LED34と試験用受光素子に対応して設けられており、遮光カバー10が炎検知器30に装着されると、図5に示すように、遮光片20aが試験用LED34の光軸と交差する位置に臨んで試験用LED34からの光を遮断し、試験用受光素子に入射しないようになる。これにより、回路基板32上の判定回路は、窓部(窓ガラス)が汚れていると判断して、疑似的に汚れ検出信号を図示しない受信機へ送信し、受信機はその信号を受信して報知する。そのため、工事が終了しても、炎検知器30から汚れ検出信号を受信している場合には、遮光カバー10が外されていないと判断することができる。なお、窓部が汚れているか否かの判断は、例えば12時間毎に判断する等、特定の周期で行われるが、常時監視するようにしてもよい。
【0034】
次に、図6を用いて、本実施形態の遮光カバー10の炎検知器30への取付け、取り外し方法について説明する。
遮光カバー10の炎検知器30へ取り付ける際には、ハンドル15を把持して、図6(A)に示すように、遮光プレート14の表面の検知窓部を表わした図柄Wを、炎検知器30の検知窓部に合致させた角度で嵌合用リング11Aの開口に炎検知器30の筐体が入るように遮光カバー10を後方へ移動させる。
【0035】
すると、嵌合用リング11Aの開口の内縁の膨出部11a,11b(図1参照)は、炎検知器30の筐体の固定部F1~F4と角度的にずれているため、F1~F4に干渉することなく、遮光プレート14の裏面のシール材19が炎検知器30の前面カバープレート36の表面に接するまで差し込むことができる。そして、このとき、連結板12a~12dの内側の当接ピン18a,18bの先端が炎検知器30の筐体の表面に当接することで、遮光カバー10が安定した状態になる。
【0036】
また、この状態においては、嵌合用リング11Aの前面は炎検知器30の底壁裏面とほぼ同一平面上に位置している。そこで、ハンドル15を反時計回り方向へ回転させると、嵌合用リング11Aの開口の内縁の膨出部11a,11bが固定部F1~F4の背後に移動して、炎検知器30の底壁の裏面に接触し、遮光カバー10の前方への移動が阻止される。また、板バネ17a,17bの先端は、炎検知器30の筐体の固定部F1,F3を乗り越えて移動する。そして、乗り越えが完了する直前に固定部F1,F3がストッパピン16a,16bに当たって遮光カバー10が停止する。
これにより、図6(B)に示すように、固定部F1,F3が板バネ17a,17bとストッパピン16a,16bとの間に挟まれ、バネの力で遮光カバー10が炎検知器30の筐体と一体化される。その後、脱落防止手段としてのスナップクリップリング21を角度調整器40に設けられている係止穴に係合させて取付け作業が完了する。
【0037】
一方、図6(B)の状態から、遮光カバー10を外すには、先ずスナップクリップリング21を角度調整器40から外し、それからハンドル15を掴んで上記とは逆に時計回り方向へ回転させる。そして、板バネ17a,17bが炎検知器30の筐体の固定部F1,F3を乗り越えた位置で、遮光カバー10を手前に引き寄せる。これにより、遮光カバー10を炎検知器30の筐体から外すことができる。なお、図6に示されているのは耐圧防爆型の炎検知器であるが、耐圧防爆型でない炎検知器については、遮光プレート14を結合する嵌合用リングが11Bから11Aに代わるだけで、作業手順としては上記と同じであるので、説明は省略する。なお、遮光カバー10の取付け時において、スナップクリップリング21の角度調整器40への取付けは先に行ってもよい。また、遮光カバー10の取外し時において、スナップクリップリング21の角度調整器40からの取外しは後に行ってもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の遮光カバー10によれば、工具を使用することなく、片手で簡単に炎検知器30の筐体に装着したり外したりすることができる。そして、遮光カバー10を炎検知器30の筐体に装着すると、検知窓に外部から光が入らないようにすることができるとともに、遮光プレート14の内側の遮光片によって窓ガラスの汚れ検出用の光を遮断して、疑似的に汚れ検出信号を発生させることができるため、その信号が受信機へ送信されることによって、受信機側で遮光カバーの外し忘れを認知することができる。
さらに、一対の嵌合用リング11A,11Bおよび2組の板バネ17a,17bと17c,17dを備え、ハンドル15のある遮光プレート14を嵌合用リング11Aまたは11Bのいずれにも付け替えることができるので、筐体の大きさや形状が若干異なる2種類の製品のいずれにも使用することができる。そのため、2種類の炎検知器が混在して設置されている施設においても、1種類の遮光カバーで対応することができる。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、嵌合用リング11Aと11Bの開口内側に膨出部11a,11bを設け、この膨出部11a,11bを炎検知器30の筐体基部の固定部の後側に位置させることによって遮光カバー10が炎検知器30から外れないように構成しているが、嵌合用リング11Aと11Bに設けた突起を炎検知器30の筐体の凹みなど他の部位に係止して外れないようにしても良いし、遮光カバー10に磁石を設け、磁石の吸着力で遮光カバー10が炎検知器30から脱落しないように構成しても良い。
【0040】
また、上記実施形態では、遮光プレート14の内面に遮光用のリング状シール材19を設けているが、シール材19を設ける代わりに、連結板12a~12dの周囲を覆う非透明なスリーブを設けて遮光するようにしても良い。
さらに、上記実施形態では、開口の大きさや形状が異なる2つの嵌合用リング11Aと11Bを連結板12a~12dの両端にそれぞれ結合しているが、嵌合用リング11A,11Bと開口の大きさや形状が異なるさらに別の嵌合用リングを用意しておいて、嵌合用リング11Aまたは11Bと交換できるように構成してもよい。これにより、外形の異なる3種類以上の炎検知器に対応することができるようになる。
さらに、上記実施形態では、本発明を炎検知器に適用したものについて説明したが、本発明の一部の機能は、煙感知器や熱感知器など炎検知器以外の検知器にも利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 遮光カバー
11A,11B 嵌合用リング
11a,11b 膨出部
12a~12d 連結板
13a~13d ビス
14 遮光プレート
15 ハンドル
16a~16d ストッパピン
17a~17d 板バネ(固定手段)
18a,18b 当接ピン
19 シール材
20 遮光部材
20a,20b 遮光片
21 スナップクリップリング(脱落防止手段)
22 ボールチェーン(脱落防止手段)
30 炎検知器
31a,31b,31c 検知用受光素子
32 回路基板
33 検知窓
34 試験用LED
35 光放出部材
36 前面カバープレート(前面部材)
40 角度調整器
図1
図2
図3
図4
図5
図6