(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155633
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】変性ジエン系ゴム、変性ジエン系ゴムの製造方法、及び、ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08C 19/00 20060101AFI20221006BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20221006BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221006BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221006BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08C19/00
C08L15/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058963
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智行
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC00W
4J002AC11X
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GN01
4J002GT00
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100HA37
4J100HC34
4J100HC38
(57)【要約】
【課題】補強用充填剤を含有するゴム組成物のゴム成分として用いたときに、優れた耐摩耗性を示す、ジエン系ゴム、その製造方法、及び、上記ジエン重合体を含有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】電子吸引構造を含む多環式炭化水素環、を有するジエン系ゴムであって、
上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位と炭素-炭素二重結合を主鎖中に有する繰り返し単位との合計に対する、上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位の割合が、0.05~5モル%である、変性ジエン系ゴム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子吸引構造を含む多環式炭化水素環、を有するジエン系ゴムであって、
前記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位と炭素-炭素二重結合を主鎖中に有する繰り返し単位との合計に対する、前記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位の割合が、0.05~5モル%である、変性ジエン系ゴム。
【請求項2】
前記多環式炭化水素環が、骨格中に前記電子吸引構造を含む、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
【請求項3】
前記多環式炭化水素環が、置換基として前記電子吸引構造を含む、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
【請求項4】
前記多環式炭化水素環が、骨格中に前記電子吸引構造を含み、置換基としても前記電子吸引構造を含む、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
【請求項5】
下記式(A)で表される重合体である、請求項1に記載の変性ジエン系ゴム。
【化1】
式(A)中、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。Zは、電子吸引構造を含む多環式炭化水素環を表す。m及びnは各繰り返し単位の割合(モル%)を表し、mは0.05~5モル%であり、m+nは100モル%である。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムが、イソプレン単位及びブタジエン単位からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の変性ジエン系ゴム。
【請求項7】
ジエン系ゴム100質量部と電子吸引構造を含む共役ジエン0.1~5質量部とを混合することで、請求項1~6のいずれか1項に記載の変性ジエン系ゴムを得る、変性ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項8】
ゴム成分100質量部とカーボンブラック10~150質量部とを含有し、
前記ゴム成分が、請求項1~6のいずれか1項に記載の変性ジエン系ゴムを20質量部以上含む、ゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部とシリカ10~150質量部とを含有し、
前記ゴム成分が、請求項1~6のいずれか1項に記載の変性ジエン系ゴムを20質量部以上含む、ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエン系ゴム、変性ジエン系ゴムの製造方法、及び、ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等に用いられるゴム組成物として、ジエン系ゴムと補強用充填剤(カーボンブラック、シリカ等)を含有するゴム組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、求められる安全レベルの向上に伴い、耐摩耗性のさらなる向上が求められている。
このようななか、本発明者らが特許文献1に記載のゴム組成物について検討したところ、今後さらに高まるであろう要求を考慮するとさらなる改善が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、補強用充填剤を含有するゴム組成物のゴム成分として用いたときに、優れた耐摩耗性を示す、ジエン系ゴム、その製造方法、及び、上記ジエン重合体を含有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、電子吸引構造を含む多環式炭化水素環を特定の割合で有するジエン系ゴムを用いることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) 電子吸引構造を含む多環式炭化水素環、を有するジエン系ゴムであって、
上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位と炭素-炭素二重結合を主鎖中に有する繰り返し単位との合計に対する、上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位の割合が、0.05~5モル%である、変性ジエン系ゴム。
(2) 上記多環式炭化水素環が、骨格中に上記電子吸引構造を含む、上記(1)に記載の変性ジエン系ゴム。
(3) 上記多環式炭化水素環が、置換基として上記電子吸引構造を含む、上記(1)に記載の変性ジエン系ゴム。
(4) 上記多環式炭化水素環が、骨格中に上記電子吸引構造を含み、置換基としても上記電子吸引構造を含む、上記(1)に記載の変性ジエン系ゴム。
(5) 後述する式(A)で表される重合体である、上記(1)に記載の変性ジエン系ゴム。
(6) 上記ジエン系ゴムが、イソプレン単位及びブタジエン単位からなる群より選択される少なくとも1種を有する、上記(1)~(5)のいずれかに記載の変性ジエン系ゴム。
(7) ジエン系ゴム100質量部と電子吸引構造を含む共役ジエン0.1~5質量部とを混合することで、上記(1)~(6)のいずれかに記載の変性ジエン系ゴムを得る、変性ジエン系ゴムの製造方法。
(8) ゴム成分100質量部とカーボンブラック10~150質量部とを含有し、
上記ゴム成分が、上記(1)~(6)のいずれかに記載の変性ジエン系ゴムを20質量部以上含む、ゴム組成物。
(9) ゴム成分100質量部とシリカ10~150質量部とを含有し、
上記ゴム成分が、上記(1)~(6)のいずれかに記載の変性ジエン系ゴムを20質量部以上含む、ゴム組成物。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、補強用充填剤を含有するゴム組成物のゴム成分として用いたときに、優れた耐摩耗性を示す、ジエン系ゴム、その製造方法、及び、上記ジエン重合体を含有するゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の変性ジエン系ゴム、その製造方法、及び、本発明のゴム組成物について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、本発明の変性ジエン系ゴムについて、「補強用充填剤を含有するゴム組成物に用いたときに優れた耐摩耗性及び耐熱老化性を示す」ことを「本発明の効果等が優れる」とも言う。
【0010】
[1]変性ジエン系ゴム
本発明の変性ジエン系ゴムは、
電子吸引構造を含む多環式炭化水素環(以下、「特定炭化水素環」とも言う)、を有するジエン系ゴムであって、
上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位と炭素-炭素二重結合を主鎖中に有する繰り返し単位との合計に対する、上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位の割合が、0.05~5モル%である、変性ジエン系ゴムである。
【0011】
本発明の変性ジエン系ゴムはこのような構成をとるため、上述した本発明の課題を解決することができるものと考えられる。その理由はおよそ以下のとおりと考えらえる。
補強用充填剤を含有するゴム組成物のゴム成分として本発明の変性ジエン系ゴムを用いた場合、本発明の変性ジエン系ゴムが有する特定炭化水素環の電子吸引構造は補強用充填剤と相互作用し、ゴム組成物中で補強用充填剤が凝集することを防ぎ、補強用充填剤の分散性を高めるものと考えられる。ここで、上記電子吸引構造は多環式炭化水素環に含まれているため、補強用充填剤と本発明の変性ジエン系ゴムとが相互作用する界面部分は極めて強靭な構造となる。結果として、補強用充填剤による補強効果が増し、極めて優れた耐摩耗性を発現するものと推測される。
【0012】
以下、本発明の変性ジエン系ゴムについて詳述する。
【0013】
[ジエン系ゴム]
本発明の変性ジエン系ゴムは変性されたジエン系ゴムである。
変性前のジエン系ゴム(ジエン系ゴムの骨格)としては特に制限されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。
上記ジエン系ゴムは、本発明の効果等がより優れる理由から、イソプレン単位及びブタジエン単位からなる群より選択される少なくとも1種を有するのが好ましく、イソプレン単位を有するのがより好ましい。
上記ジエン系ゴムは、本発明の効果等がより優れる理由から、イソプレンゴムであることが好ましい。
【0014】
[特定炭化水素環]
上述のとおり、本発明の変性ジエン系ゴムは、電子吸引構造を含む多環式炭化水素環(特定炭化水素環)を有するジエン系ゴムである。
特定炭化水素環は、その骨格中に電子吸引構造を含むのでも、置換基として電子吸引構造を含むのでも、骨格中に電子吸引構造を含むとともに置換基としても電子吸引構造を含むのでもよい。
特定炭化水素環は、本発明の効果等がより優れる理由から、置換基として電子吸引構造を含むのが好ましく、骨格中に電子吸引構造を含むとともに置換基としても電子吸引構造を含むのがより好ましい。
【0015】
〔電子吸引構造〕
上記電子吸引構造とは、電子吸引性の構造(基)である。
なお、本明細書において、電子吸引性の基とは、ハメットの置換基定数σp値が0よりも大きい基を指す。
ここで、ハメットの置換基定数σp値について説明する。ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために、1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編,「Lange’s and book of Chemistry」,第12版,1979年(McGraw-Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96~103頁,1979年(南光堂)に詳しい。なお、構造(基)が多価の基である場合には、1価の基(他の結合位置に水素原子が結合したもの)として電子吸引性の基であるか否か判断される。
【0016】
<骨格中の電子吸引構造>
特定炭化水素環が骨格中に電子吸引構造を含む場合の電子吸引構造としては、本発明の効果等がより優れる理由から、2価の電子吸引構造が好ましく、カルボニル基(-CO-)、オキシ基(-O-)、カルボニルオキシ基(-CO-O-基)がより好ましく、カルボニルオキシ基(-CO-O-基)がさらに好ましい。
【0017】
<置換基としての電子吸引構造>
特定炭化水素環が置換基として電子吸引構造を含む場合の電子吸引構造(電子吸引基)としては、本発明の効果等がより優れる理由から、酸基(特にカルボキシ基)、カルボン酸エステル基(R-O-CO-:Rは炭化水素基)、シアノ基、アミド基(-CO-NR2:Rは水素原子又は炭化水素基)、水酸基、アルコキシシリル基、アミノ基が好ましく、酸基がより好ましく、カルボキシ基がさらに好ましい。
上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0018】
〔多環式炭化水素環〕
上記多環式炭化水素環とは、多環の炭化水素環(橋掛け炭化水素)である。
上記炭化水素環は芳香族炭化水素環であっても脂肪族炭化水素環(脂環式)であってもよいが、本発明の効果等がより優れる理由から、脂肪族炭化水素環であることが好ましい。上記脂肪族炭化水素環は、飽和脂肪族炭化水素環であっても不飽和脂肪族炭化水素環であってもよいが、本発明の効果等がより優れる理由から、不飽和脂肪族炭化水素環であることが好ましい。すなわち、上記脂肪族炭化水素環は炭素-炭素二重結合を有するのが好ましい。上記多環式炭化水素環は、本発明の効果がより優れる理由から、ヘテロ原子を含んでいることが好ましい。
多環式炭化水素環を構成する炭化水素環の数は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2~10であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
多環式炭化水素環の具体例としては、ビシクロペンタン環、ビシクロオクタン環、ビシクロヘプタ-2-エン環、トリシクロオクタン環、ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、アダマンタン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
上述のとおり、特定炭化水素環は、骨格中に電子吸引構造を含むことがある。この場合、上記多環式炭化水素環の骨格中に電子吸引構造を含むことになる。
【0019】
[変性率]
本発明の変性ジエン系ゴムにおいて、上述した特定炭化水素環を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位X」とも言う)と、炭素-炭素二重結合(C=C)を主鎖中に有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位Y」とも言う)との合計に対する、繰り返し単位Xの割合(以下、「変性率」とも言う)は、0.05~5モル%である。
上記変性率は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~3モル%であることがより好ましく、0.2~1モル%であることがさらに好ましい。
【0020】
[好適な態様]
本発明の変性ジエン系ゴムは、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(A)で表される重合体であるのが好ましい。下記式(A)で表される重合体は、mが付いた方の繰り返し単位(上述した繰り返し単位Xに該当)とnが付いた方の繰り返し単位(上述した繰り返し単位Y)からなる重合体である。
【0021】
【0022】
上記式(A)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。Zは、電子吸引構造を含む多環式炭化水素環を表す。m及びnは各繰り返し単位の割合(モル%)を表し、mは0.05~5モル%であり、m+nは100モル%である。
【0023】
上述のとおり、上記式(A)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基の具体例は上述のとおりである。
上記R1~R4は、本発明の効果等がより優れる理由から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
上記R1及びR2は、本発明の効果等がより優れる理由から、一方が水素原子であり、他方がメチル基であることが好ましい。上記R3及びR4は、本発明の効果等がより優れる理由から、一方が水素原子であり、他方がメチル基であることが好ましい。
【0024】
上述のとおり、上記式(A)中、Zは、電子吸引構造を含む多環式炭化水素環を表し、上述した特定炭化水素環に該当する。Zは、R1が結合する炭素原子及びR2が結合する炭素原子とともに環を形成するものである。Zの具体例及び好適な態様は上述した特定炭化水素環と同じである。
【0025】
上述のとおり、上記式(A)中、m及びnは各繰り返し単位の割合(モル%)を表す。
上述のとおり、上記式(A)中、mは0.05~5モル%であり、m+nは100モル%である。上記mは、上述した変性率に該当し、その好適な範囲は上述した変性率と同じである。
【0026】
[分子量]
【0027】
〔重量平均分子量〕
本発明の変性ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000以上であることが好ましく、200,000~10,000,000であることがより好ましく、250,000~2,000,000であることがさらに好ましく、1,000,000以下であることが特に好ましく、500,000以下であることが最も好ましい。
【0028】
〔数平均分子量〕
本発明の変性ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、120,000~1,000,000であることがより好ましい。
〔測定方法〕
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0029】
[製造方法]
本発明の変性ジエン系ゴムの製造方法は特に制限されないが、得られる変性ジエン系ゴムについて本発明の効果等がより優れる理由から、ジエン系ゴム100質量部と電子吸引構造を含む共役ジエン(以下、「特定共役ジエン」とも言う)0.1~5質量部とを混合する方法(以下、「本発明の製造方法」とも言う)が好ましい。ジエン系ゴムと特定共役ジエンとを混合することで、ジエン系ゴムの主鎖中の炭素-炭素二重結合と特定共役ジエンとがディールス・アルダー反応により反応して、電子吸引構造を含む多環式炭化水素環を有するジエン系ゴムが得られる。
以下、「得られる変性ジエン系ゴムについて本発明の効果等がより優れる」ことを単に「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0030】
〔ジエン系ゴム〕
本発明の製造方法に用いられるジエン系ゴムの具体例及び好適な態様は、上述した変性ジエン系ゴムの変性前のジエン系ゴム(ジエン系ゴムの骨格)と同じである。
【0031】
〔特定共役ジエン〕
本発明の製造方法に用いられる特定共役ジエンは、電子吸引構造を含む共役ジエンである。
特定共役ジエンは、骨格中に電子吸引構造を含むのでも、置換基として電子吸引構造を含むのでも、骨格中に電子吸引構造を含むとともに置換基としても電子吸引構造を含むのでもよい。
特定炭化水素環は、本発明の効果等がより優れる理由から、置換基として電子吸引構造を含むのが好ましく、骨格中に電子吸引構造を含むとともに置換基としても電子吸引構造を含むのがより好ましい。
【0032】
<電子吸引構造>
上記特定共役ジエンに含まれる電子吸引構造の定義、具体例及び好適な態様は、上述した特定炭化水素環と同じである。
【0033】
<好適な態様>
上記特定共役ジエンは、本発明の効果等がより優れる理由から、ピロン又はその誘導体であることが好ましく、クマリン酸、クマリン酸エステル(特にクマリン酸メチル)であることが好ましい。
引構造であるカルボキシ基(-COOH)を含む共役ジエンである。
【0034】
〔混合比〕
上述のとおり、本発明の製造方法において、ジエン系ゴム100質量部と特定共役ジエン0.1~5質量部とを混合する。ジエン系ゴム100質量部に対する特定共役ジエンの割合(混合比)は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.2~3質量部であることが好ましく、0.3~2質量部であることがより好ましく、0.5~1質量部であることがさらに好ましい。
【0035】
[2]ゴム組成物
本発明のゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ゴム成分と補強用充填剤とを含有し、
上記ゴム成分100質量部が、上述した本発明の変性ジエン系ゴムを20質量部以上含み、
上記補強用充填剤が、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含む、ゴム組成物である。
【0036】
[ゴム成分]
上述のとおり、本発明の組成物はゴム成分を含有する。
また、上記ゴム成分100質量部は、上述した本発明の変性ジエン系ゴムを20質量部以上含む。
【0037】
〔変性ジエン系ゴム〕
本発明の変性ジエン系ゴムについては上述のとおりである。
【0038】
<含有量>
本発明の組成物において、本発明の変性ジエン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上ある。本発明の変性ジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがさらに好ましい。ゴム成分100質量部に対する本発明の変性ジエン系ゴムの含有量の上限は特に制限されず、100質量部である。
【0039】
〔その他のゴム成分〕
上記ゴム成分は本発明の変性ジエン系ゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を含んでいてもよい。そのようなゴム成分の具体例は、上述した本発明の製造方法に用いられるジエン系ゴムと同じである。
【0040】
〔分子量〕
上記ゴム成分の分子量の好適な範囲は上述した変性ジエン系ゴムと同じである。
【0041】
[補強用充填剤]
上述のとおり、本発明の組成物は、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含む補強用充填剤を含有する。
上記補強用充填剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラック及びシリカの両方を含むのが好ましい。
【0042】
〔カーボンブラック〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、補強用充填剤としてカーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0043】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分(特に上述した本発明の変性ジエン系ゴム)100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、20~100質量部であることがより好ましい。
【0044】
〔シリカ〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、補強用充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0045】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積(以下、「CTAB吸着比表面積」を単に「CTAB」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、185m2/g以上であることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0046】
上記シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、194m2/g以上であることがより好ましい。
ここで、N2SAは、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0047】
シリカのCTAB吸着比表面積に対するシリカ窒素吸着比表面積の比(N2SA/CTAB)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.9~1.4であることが好ましい。
【0048】
本発明の組成物において、シリカの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分(特に上述した本発明の変性ジエン系ゴム)100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、20~100質量部であることがより好ましい。
【0049】
〔含有量〕
本発明の組成物において、補強用充填剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分(特に上述した本発明の変性ジエン系ゴム)100質量部に対して、10~300質量部であることが好ましく、20~200質量部であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物が2種以上の補強用充填剤を含有する場合、補強用充填剤の含有量は合計の含有量を意味する。
【0050】
[任意成分]
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤(促進剤)、加硫活性剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0051】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。特に、上述した補強用充填剤が少なくともシリカを含む場合、本発明の効果等がより優れる理由から、本発明の組成物はシランカップリング剤を含有するのが好ましい。
【0052】
シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0053】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0055】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<含有量>
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0057】
また、本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0058】
[用途]
本発明の組成物は、例えば、タイヤ、コンベアベルト、ホース、防振材、ゴムロール、鉄道車両の外幌等に好適に用いられる。特に、タイヤ(特にトレッド)に好適に用いられる。
【実施例0059】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
〔変性ジエン系ゴムの製造〕
以下のとおり、変性ジエン系ゴム1~2を製造した。
【0061】
<変性ジエン系ゴム1>
イソプレンゴム(Mw:120000)100質量部とクマリン酸(下記構造)1.03質量部とを混合機(ラボニーダー)を用いて混合した(140℃、10分間)。なお、クマリン酸は、骨格中に電子吸引構造であるカルボニルオキシ基(-CO-O-)を含み、置換基としても電子吸引構造であるカルボキシ基(-COOH)を含む共役ジエンであるため、上述した特定共役ジエンに該当する。
このようにして、変性イソプレンゴムを得た。得られた変性イソプレンゴムは下記式(a1)で表される。ここで、R1及びR2は、一方は水素原子を表し、他方はメチル基を表す。また、R3及びR4は、一方は水素原子を表し、他方はメチル基を表す。また、mは0.36モル%であり、m+nは100モル%である。得られた変性イソプレンゴムを変性ジエン系ゴム1とも言う。
【0062】
【0063】
【0064】
変性ジエン系ゴム1は、骨格中に電子吸引構造であるカルボニルオキシ基(-CO-O)-を含み、置換基としても電子吸引構造であるカルボキシ基(-COOH)を含む、多環式炭化水素環(上述した特定炭化水素環に該当)、を有するイソプレンゴムである。また、変性ジエン系ゴム1は、上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位である式(a1)中のmの添え字が付いた方の繰り返し単位(上述した繰り返し単位Xに該当)と炭素-炭素二重結合を主鎖中に有する繰り返し単位である式(a1)中のnの添え字が付いた方の繰り返し単位(上述した繰り返し単位Yに該当)とからなり、mの添え字が付いた方の繰り返し単位とnの添え字が付いた方の繰り返し単位との合計に対する、mの添え字が付いた方の繰り返し単位の割合(変性率)が、0.36モル%である。
したがって、変性ジエン系ゴム1は、上述した本発明の変性ジエン系ゴムに該当する。
【0065】
<変性ジエン系ゴム2>
クマリン酸の代わりにクマリン酸メチル(以下構造)1.13質量部を用いた点以外は変性ジエン系ゴム1と同様に手順に従って変性イソプレンゴムを得た。なお、クマリン酸メチルは、骨格中に電子吸引構造であるカルボニルオキシ基(-CO-O-)を含み、置換基としても電子吸引構造であるカルボン酸メチルエステル基(-COOCH3)を含む共役ジエンであるため、上述した特定共役ジエンに該当する。
得られた変性イソプレンゴムは下記式(a2)で表される。ここで、R1及びR2は、一方は水素原子を表し、他方はメチル基を表す。また、R3及びR4は、一方は水素原子を表し、他方はメチル基を表す。また、mは0.30モル%であり、m+nは100モル%である。得られた変性イソプレンゴムを変性ジエン系ゴム2とも言う。
【0066】
【0067】
【0068】
変性ジエン系ゴム2は、骨格中に電子吸引構造であるカルボニルオキシ基(-CO-O-)を含み、置換基としても電子吸引構造であるカルボン酸メチルエステル基(-COOCH3)を含む、多環式炭化水素環(上述した特定炭化水素環に該当)、を有するイソプレンゴムである。また、変性ジエン系ゴム2は、上記多環式炭化水素環を有する繰り返し単位である式(a2)中のmの添え字が付いた方の繰り返し単位(上述した繰り返し単位Xに該当)と炭素-炭素二重結合を主鎖中に有する繰り返し単位である式(a2)中のnの添え字が付いた方の繰り返し単位(上述した繰り返し単位Yに該当)とからなり、mの添え字が付いた方の繰り返し単位とnの添え字が付いた方の繰り返し単位との合計に対する、mの添え字が付いた方の繰り返し単位の割合(変性率)が、0.30モル%である。
したがって、変性ジエン系ゴム2は、上述した本発明の変性ジエン系ゴムに該当する。
【0069】
〔ゴム組成物の製造〕
下記表1~2の各成分を同表に示す組成(質量部)で混合した。
具体的には、まず、硫黄及び促進剤以外の成分を1.8Lの密閉型混合機で130℃の条件下で5分間混合し、マスターバッチを放出した。その後、上記マスターバッチに硫黄及び促進剤を加えてオープンロールを用いて80℃の条件下で混合して、各ゴム組成物を製造した。
【0070】
〔評価〕
得られた各ゴム組成物(未加硫)について以下の評価を行った。
【0071】
<硬度>
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で20分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6253-3に準拠し、60℃で硬度(タイプAデュロメータ硬さ)を評価した。結果を表1~2に示す。結果は、表1については比較例1の値を100とする指数で表し、表2については比較例2を100とする指数で表した。指数が大きいほど硬度が高いことを意味する。
【0072】
<耐摩耗性>
上述のとおり得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6264-1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗量を測定した。そして下記式から耐摩耗性指数を算出した。
結果を表1~2に示す。指数が大きいほど摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れることを意味する。
(表1)耐摩耗性指数=(比較例1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
(表2)耐摩耗性指数=(比較例2の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
【0073】
<緩和時間T2>
得られた各ゴム組成物(未加硫)0.3gを裁断し、トルエン溶剤に48時間浸漬し、充填剤に吸着していない、もしくはゲル化していないゴムを抽出することによりゲルを作成した。表1にゲル中のゴム量(バウンドラバー量)を示す。
バウンドラバー量=[(トルエン浸漬、乾燥後のサンプル質量)-(カーボンブラック又はシリカの質量)]/(ゴム成分質量)
得られたゲル中のゴム分子の緩和時間T2をパルスNMR(核磁気共鳴法)にて測定した。
ゴム組成物を直径9mmのNMR管に注入し、パルスNMRスペクトロメータMU-25(日本電子(株)製)を用いて、Solid Echo法およびHahn Echo法にて25℃下の緩和時間のスピン-スピン緩和時間(T2)を求めた。T2を測定する際の条件は、ゴム量が0.3g以上あれば、プロトンの信号が十分得られ測定精度が保証される。Solid Echo法の減衰曲線を2成分に分離した際、ワイブル係数2でフィッテイングした緩和時間T2の短い成分(表1に示す)はT2が数十μsとガラス状態に近く、充填剤に強く拘束されたゴムの緩和時間を表している。また、Hahn Echo法では、減衰曲線を2成分分離の際、それぞれ長い成分のワイブル係数は1で短い成分のワイブル係数は1~2でフィッテイングした。この時、長い成分(表1に示す)は比較的分子運動の高い末端鎖や絡み合いから遠い分子鎖であり、短い成分は網目鎖を示している。
【0074】
【0075】
【0076】
表1~2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・イソプレンゴム:変性ジエン系ゴム1~2の製造に用いたイソプレンゴムと同じイソプレンゴム(日本ゼオン社製 Nipol IR2200)(Mw:120000)
・変性ジエン系ゴム1~2:上述のとおり製造した変性ジエン系ゴム1~2
・カーボンブラック:HAF級カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN330、窒素吸着比表面積75m2/g
・シリカ:Zeosil 1165MP(Rhodia社製)CTAB吸着比表面積152m2/g
・シランカップリング剤:シランカップリング剤
・酸化亜鉛:亜鉛華3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日本油脂社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・促進剤NS:サンセラーNS-G(三新化学工業社製)
・促進剤CZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ-G、大内新興化学工業社製)
・促進剤DPG:1,3-ジフェニルグアニジン(ノクセラーDPG、大内新興化学工業社製)
【0077】
表1から分かるように、本発明の変性ジエン系ゴムを含有しない比較例1と比較して、本発明の変性ジエン系ゴムを含有する実施例1~2は、優れた耐摩耗性を示した。なかでも、電子吸引構造がカルボキシ基である実施例1は、より優れた耐摩耗性を示した。同様に、表2から分かるように、本発明の変性ジエン系ゴムを含有しない比較例2と比較して、本発明の変性ジエン系ゴムを含有する実施例3~4は、優れた耐摩耗性を示した。なかでも、電子吸引構造がカルボキシ基である実施例3は、より優れた耐摩耗性を示した。
【0078】
表1に示されるように、パルスNMRによる緩和時間T2の測定から、本発明の変性ジエン系ゴムを含有する実施例1~2は、本発明の変性ジエン系ゴムを含有しない比較例1と比較して、Solid echo法の緩和時間T2(短い成分)が短く、ゴム成分が充填剤に強く吸着していることが分かった。一方、本発明の変性ジエン系ゴムを含有する実施例1~2は、本発明の変性ジエン系ゴムを含有しない比較例1と比較して、Hahn echo法の緩和時間T2(長い成分)が長く、ゴム成分の網目鎖の運動性が高いことが分かった。
同様に、表2に示されるように、本発明の変性ジエン系ゴムを含有する実施例3~4は、本発明の変性ジエン系ゴムを含有しない比較例2と比較して、Solid echo法の緩和時間T2(短い成分)が短く、ゴム成分が充填剤に強く吸着していることが分かった。一方、本発明の変性ジエン系ゴムを含有する実施例3~4は、本発明の変性ジエン系ゴムを含有しない比較例2と比較して、Hahn echo法の緩和時間T2(長い成分)が長く、ゴム成分の網目鎖の運動性が高いことが分かった。