(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155637
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20221006BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20221006BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 C
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058967
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】上山 義明
(72)【発明者】
【氏名】野木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 英昭
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 伸介
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル導体と外部電極との間での絶縁耐圧を高めることができるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品は、コイル軸Axの周りに延びる周回部を有するコイル導体25と、コイル導体のうち少なくとも周回部を覆う基体10と、基体に設けられコイル導体に接続された外部電極21、外部電極22と、を備える。基体は、コイル軸と交わり長辺及び短辺を含む第1面、第1面と対向し長辺よりも短い距離だけ第1面から離間している第2面、及び第1面と第2面とを接続する接続面を含む外表面(主面10a、10b、側面10c~10f)を有する。基体の外表面は、複数の金属磁性粒子を含み接続面の一部を占める本体部11と、コイル軸の周りの周方向の全長にわたって接続面の2の外部電極との間の本体部によって占められていない領域を占め、本体部よりも高い体積抵抗率を有する少なくとも一つの高抵抗部と12、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル軸の周りに延びる周回部を有するコイル導体と、
前記コイル軸と交わり長辺及び短辺を含む第1面、前記第1面と対向し前記長辺よりも短い距離だけ前記第1面から離間している第2面、及び前記第1面と前記第2面とを接続する接続面を含む外表面を有し、前記コイル導体のうち少なくとも前記周回部を覆う基体と、
前記第1面に設けられ前記コイル導体の一端に接続された第1外部電極と、
前記第2面に設けられ前記コイル導体の他端に接続された第2外部電極と、
を備え、
前記基体は、複数の金属磁性粒子を含み前記接続面の一部を占める本体部と、前記コイル軸の周りの周方向の全長にわたって前記接続面の前記第1外部電極と前記第2外部電極との間の前記本体部によって占められていない領域を占め、前記本体部よりも高い体積抵抗率を有する少なくとも一つの高抵抗部と、を有する、
コイル部品。
【請求項2】
前記周回部は、前記基体の前記接続面と対向する外周面を有し、
前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記接続面から前記周回部の前記外周面まで延在している、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記周回部の内側の領域にさらに延在している、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記接続面の前記第1外部電極と前記第2外部電極との間の領域の全体を占めている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記少なくとも一つの高抵抗部は、第1高抵抗部と、前記第1高抵抗部よりも前記第2面の近くに設けられた第2高抵抗部と、を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1外部電極は、第1めっき層を有し、
前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記第1外部電極に接するように配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第2外部電極は、第2めっき層を有し、
前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記第2外部電極に接するように配置されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記本体部に含まれる前記複数の金属磁性粒子の各々は、Feと、Si、Ti、及びZrのうちの少なくとも一つの元素と、を含み、
前記高抵抗部は、複数の他の金属磁性粒子を含み、
前記複数の他の金属磁性粒子の各々は、Feと、Si、Ti、及びZrのうちの少なくとも一つ元素と、を含み、
前記高抵抗部に含まれる前記複数の他の金属磁性粒子の各々におけるFeに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率は、前記本体部に含まれる前記複数の金属磁性粒子の各々におけるFeに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率よりも高い、
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記高抵抗部は、複数の他の金属磁性粒子を含み、
前記複数の他の金属磁性粒子の各々は、その表面に絶縁材料から成る絶縁膜を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記高抵抗部は、複数の他の金属磁性粒子を含み、
前記複数の他の金属磁性粒子の平均粒径は、前記本体部に含まれる複数の金属磁性粒子の平均粒径よりも小さい、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記高抵抗部の比透磁率は、前記本体部の比透磁率の10%以上である、
請求項1から10のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記高抵抗部の比透磁率は、前記本体部の比透磁率の10%よりも小さい、
請求項1から10のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のコイル部品を備える回路基板。
【請求項14】
請求項13の回路基板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、コイル部品、回路基板、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の基体の材料として、従来から様々な磁性材料が用いられている。インダクタなどのコイル部品用の磁性材料としてはフェライトが広く用いられている。フェライトは、透磁率が高いことからインダクタ用の磁性材料として適している。
【0003】
近年、電装部品等の様々な電子機器において回路に流れる電流が大きくなる傾向がある。例えば、DC-DCコンバータでは、インダクタに大電流が流される。このような大電流が流れる回路に使用されるインダクタの磁性基体の材料として、大電流でも磁気飽和が起こりにくい軟磁性材料が用いられる。例えば、特開2007-027354号公報(特許文献1)には、軟磁性材料から成る金属磁性粒子を含む磁性基体を有するインダクタが記載されている。この種の磁性基体において、金属磁性粒子の表面には絶縁材料から成る絶縁膜が形成され、金属磁性粒子同士はこの絶縁膜を介して互いに結合される。金属磁性粒子の表面に形成される絶縁膜は、ガラスや樹脂等の絶縁性に優れた絶縁材料から形成される。金属磁性粒子同士は、絶縁性の結着材により結合されることもある。
【0004】
従来のコイル部品においては、金属磁性粒子を含む基体の内部にコイル導体が埋め込まれており、このコイル導体の両端に一組の外部電極が接続されている。この一組の外部電極は、互いから電気的に絶縁される必要があるため、磁性基体の表面の互いから離間した位置に配置される。
【0005】
金属磁性粒子を含む磁性基体を有するコイル部品には、絶縁耐圧が低いという問題がある。具体的には、金属磁性粒子は導電性であるため、磁性基体の表面に設けられた一組の外部電極の間、及び、磁性基体の内部に埋め込まれたコイル導体と外部電極との間で絶縁破壊が発生しやすい。
【0006】
特開2020-053608号公報(特許文献2)に記載されているコイル部品においては、コイル導体と外部電極との間の絶縁耐圧を高めるために、直方体形状を有する基体の6面のうちコイル導体のコイル軸に交差し互いに対向する一組の面の各々に外部電極が設けられている。特許文献2に記載されているコイル部品では、コイル導体と外部電極との間の電位差を小さくすることができるので、コイル導体と外部電極との間での絶縁耐圧を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-027354号公報
【特許文献2】特開2020-053608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、従来、コイル導体と外部電極との間での絶縁耐圧を高めることができるコイル部品は知られているが、外部電極間での絶縁耐圧を高めるための技術は知られていない。外部電極同士の距離が近くなると、外部電極同士の絶縁耐圧の向上が特に重要な課題となる。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決又は緩和することである。より具体的な本発明の目的の一つは、外部電極間の絶縁耐圧を高めることができるコイル部品を提供することである。より具体的な本発明の目的の一つは、金属磁性粒子を含む基体に設けられた外部電極間での絶縁耐圧を高めることができるコイル部品を提供することである。
【0010】
本明細書に開示される発明の前記以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかになる。本明細書に開示される発明は、前記の課題に代えて又は前記の課題に加えて、本明細書の記載から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によるコイル部品は、コイル軸の周りに延びる周回部を有するコイル導体と、前記コイル導体のうち少なくとも前記周回部を覆う基体と、前記基体に設けられ前記コイル導体の一端に接続された第1外部電極と、前記基体に設けられ前記コイル導体の他端に接続された第2外部電極と、を備える。本発明の一態様において、前記基体は、前記コイル軸と交わり長辺及び短辺を含む第1面、前記第1面と対向し前記長辺よりも短い距離だけ前記第1面から離間している第2面、及び前記第1面と前記第2面とを接続する接続面を含む外表面を有する。本発明の一態様において、前記第1外部電極は、前記第1面に設けられ、前記第2外部電極は、前記第2面に設けられる。本発明の一態様において、前記基体の外表面は、複数の金属磁性粒子を含み前記接続面の一部を占める本体部と、前記コイル軸の周りの周方向の全長にわたって前記接続面の前記第1外部電極と前記第2外部電極との間の前記本体部によって占められていない領域を占め、前記本体部よりも高い体積抵抗率を有する少なくとも一つの高抵抗部と、を有する。
【0012】
本発明の一態様において、前記周回部は、前記基体の前記接続面と対向する外周面を有する。本発明の一態様において、前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記接続面から前記周回部の外周面まで延在している。
【0013】
本発明の一態様において、前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記周回部の内側の領域にさらに延在している。
【0014】
本発明の一態様において、前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記接続面の前記第1外部電極と前記第2外部電極との間の領域の全体を占めている。
【0015】
本発明の一態様において、前記少なくとも一つの高抵抗部は、第1高抵抗部と、前記第1高抵抗部よりも前記第2面の近くに設けられた第2高抵抗部と、を有する。
【0016】
本発明の一態様において、前記第1外部電極は、第1めっき層を有し、前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記第1外部電極に接するように配置されている。
【0017】
本発明の一態様において、前記第2外部電極は、第2めっき層を有し、前記少なくとも一つの高抵抗部は、前記第2外部電極に接するように配置されている。
【0018】
本発明の一態様において、前記本体部に含まれる前記複数の金属磁性粒子の各々は、Feと、Si、Ti、及びZrのうちの少なくとも一つの元素と、を含む。本発明の一態様において、前記高抵抗部は、複数の他の金属磁性粒子を含む。本発明の一態様において、前記複数の他の金属磁性粒子の各々は、Feと、Si、Ti、及びZrのうちの少なくとも一つ元素と、を含む。本発明の一態様において、前記高抵抗部に含まれる前記複数の他の金属磁性粒子の各々におけるFeに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率は、前記本体部に含まれる前記複数の金属磁性粒子の各々におけるFeに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率よりも高い。
【0019】
本発明の一態様において、前記複数の他の金属磁性粒子の各々は、その表面に絶縁材料から成る絶縁膜を有する。
【0020】
本発明の一態様において、前記複数の他の金属磁性粒子の平均粒径は、前記本体部に含まれる複数の金属磁性粒子の平均粒径よりも小さい。
【0021】
本発明の一態様において、前記高抵抗部の比透磁率は、前記本体部の比透磁率の10%以上である。
【0022】
本発明の一態様において、前記高抵抗部の比透磁率は、前記本体部の比透磁率の10%よりも小さい。
【0023】
本発明の一態様による回路基板は、上記のいずれかのコイル部品を備える。
【0024】
本発明の一態様による電子機器は、上記の回路基板を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、外部電極間の絶縁耐圧を高めることができるコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図2a】コイル軸を通る平面によって切断した
図1のコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図2b】コイル軸に直交する平面によって切断した
図1のコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図3a】コイル軸を通る平面によって切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図3b】コイル軸に直交する平面によって切断した
図3aのコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図4a】コイル軸を通る平面によって切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図4b】コイル軸に直交する平面によって切断した
図4aのコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】コイル軸を通る平面によって切断した本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図7】コイル軸を通る平面によって切断した
図6のコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図9】コイル軸を通る平面によって切断した
図8のコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0028】
図1から
図3を参照して本発明の一実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図であり、
図2はコイル部品1を
図1のI-I線で切断した断面を示す模式的な断面図であり、
図3はコイル部品1を
図1のII-II線で切断した断面を示す模式的な断面図である。図示のように、コイル部品1は、基体10と、基体10に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。基体10は、磁性材料を含む。このため、本明細書では、基体10を磁性基体10と呼ぶことがある。
図1では、基体10を透過させて、基体10の内部に設けられたコイル導体25を図示している。
【0029】
本明細書においては、各図に示されている「L軸」、「W軸」、及び「T軸」を基準として各部材の配置、寸法、形状、及びその他の側面を説明することがある。本明細書においては、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とすることがある。「厚さ」方向を「高さ」方向と呼ぶこともある。L軸、W軸、及びT軸は、互いに直交している。
【0030】
コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、外部電極21とランド部3aとを接合し、また、外部電極22とランド部3bとを接続することで実装基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。図示の明瞭さのために、
図1以外では、実装基板2a、ランド部3a、3bの図示を省略している。
【0031】
コイル部品1は、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル及びこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1は、例えば、DC/DCコンバータに用いられるパワーインダクタであってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0032】
基体10は、磁性材料で構成され、概ね直方体形状を有する。本発明の一実施形態において、基体10は、L軸方向における寸法(長さ寸法)がW軸方向における寸法(幅寸法)W1及びT軸方向における寸法(高さ寸法)T1よりも大きくなるように構成されている。例えば、長さ寸法L1は、1.0mm~6.0mmの範囲にあり、幅寸法W1は0.5mm~4.5mmの範囲にあり、高さ寸法T1は0.5mm~4.5mmの範囲にある。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0033】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外表面が画定されている。第1主面10aと第2主面10bとはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10cと第2端面10dとはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成し、第1側面10eと第2側面10fとはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成している。上面10aと下面10bとの間は高さ寸法T1だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は幅寸法W1だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は長さ寸法L1だけ離間している。
図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2主面10bが基板2と対向するように配置されるので、第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。本明細書では、基体10の外表面のうち第1端面10cと第2端面10dとを接続する面を「接続面」と呼ぶことがある。図示の実施形態において、第1端面10cと第2端面10dとは、上面10a、下面10b、第1側面10e、及び第2側面10fによって接続されているので、上面10a、下面10b、第1側面10e、及び第2側面10fをまとめて「接続面」又は「基体10の接続面」と呼ぶことがある。
【0034】
上述のとおり、基体10の長さ寸法L1は高さ寸法T1よりも大きいので、第1端面10cを画定する各辺のうちL軸方向に延びる辺(すなわち、第1端面10cと上面10aとの間の稜線及び第1端面10cと下面10bとの間の稜線)が第1端面10cの長辺となり、T軸方向に延びる辺(すなわち、第1端面10cと第1側面10eとの間の稜線及び第1端面10cと第2側面10fとの間の稜線)が第1端面10cの短辺となる。図示の実施形態においては、基体10が六面体形状を有するため、正面視した(W軸方向から見た)第1端面10cの形状は、
図3に示されている基体10の断面形状と同一である。図示の実施形態においては、
図3に示されている基体10の断面を画定する4辺のうちL軸方向に延びる2辺が第1端面10cの長辺に対応し、T軸方向に延びる2辺が短辺に対応する。また、L軸方向がコイル部品1の長手方向となる。
【0035】
図示の実施形態において、基体10の各面10a~10fは平面として図示されているが、各面10a~10fは湾曲した面であってもよい。また、各面10a~10fは、隣接する面と直交するように図示されているが、各面10a~10fは隣接する面と直交していなくともよい。基体10の各頂点は丸みを帯びていてもよく、基体10の稜線(各面10a~10fのうち隣接する面の境界を示す線)は直線ではなく各面10a~10fの形状及び配置に応じて湾曲していてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、コイル導体25は、コイル軸Axの周りに螺旋状に延びる周回部25Aを有する。コイル導体25は、基体10の内部に配置される。基体10をW軸方向から見たときに、基体10のうち周回部25Aの内側にある領域をコア領域10Nと呼び、周回部25Aと基体10の外表面との間にある領域をマージン領域10Sと呼ぶ。一実施形態において、コイル導体25は、コイル軸Axが第1端面10cと交わるように配置される。コイル軸Axは、第2端面10dと交わってもよい。コイル導体25は、コイル軸Axが上面10a、下面10b、第1側面10e、及び第2側面10fのうちの少なくとも一つと平行となるように配置されてもよい。基体10内にコイル軸Axが基体10の第1端面10cと交わるようにコイル導体25を配置することにより、周回部25Aの寸法をコイル部品1の長手方向において大きくすることができる。したがって、所与の寸法を有する基体10において、コイル部品1のインダクタンスを大きくするとともに周回部25Aの内部にあるコア領域10Nでの磁気飽和を抑制することができる。
【0037】
本発明の一実施形態において、基体10の高さ寸法T1が幅寸法W1よりも大きくなるように基体10を構成することができる。これにより、周回部25Aの寸法をT軸方向においても大きくすることができる。したがって、所与の寸法を有する基体10において、コイル部品1のインダクタンスをさらに大きくするとともに周回部25Aの内部にあるコア領域10Nでの磁気飽和をさらに抑制することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、基体10は、本体部11と、高抵抗部12と、に区画される。高抵抗部12は、基体10のうち本体部11よりも高い体積抵抗率を有する部位である。各図には、本体部11と高抵抗部12との境界が示されているが、本発明が適用された実際のコイル部品の基体においては本体部11に相当する部位と高抵抗部に相当する部位との間の境界は視認できないこともある。高抵抗部12の体積抵抗率は、例えば、1×10
6Ω・cm以上であり好ましくは1×10
8Ω・cm以上である。基体10は、一又は複数の高抵抗部12を備えることができる。コイル部品1においては、基体10は、1つの高抵抗部12を備えている。本体部11は、基体10のうち高抵抗部12以外の領域を意味してもよい。基体10は、本体部11及び高抵抗部12以外の要素を含んでもよい。本体部11は、基体10の接続面の一部を占める。
図2に示されている実施形態においては、基体10の接続面のうちW軸方向における基体10の中央付近は高抵抗部12によって占められており、接続面のうち残部が本体部11によって占められている。高抵抗部12は、本体部11よりも高い体積抵抗率を呈するための材料から構成される。このため、基体10において高抵抗部12が占める割合が高くなると、コイル部品1の磁気的特性を劣化させる原因となり得る。例えば、基体10の接続面の全てが高抵抗部12によって占められていると、コイル部品1の磁気的特性を劣化させる原因になる。このため、基体10の接続面のうちの少なくとも一部は本体部11によって占められる。
【0039】
高抵抗部12の比透磁率は、本体部11の比透磁率の10%よりも小さくてもよい。これにより、高抵抗部12を磁気ギャップとして機能させ、コイル部品1における磁気飽和の発生を抑制することができる。高抵抗部12の比透磁率は、本体部11の比透磁率の10%以上であってもよい。これにより、高抵抗部12によるインダクタンスの低下を抑制することができる。高抵抗部12の比透磁率は、コイル部品1に要求される特性に応じて定められ得る。
【0040】
図示の実施形態において、高抵抗部12は、W軸方向において、外部電極21と外部電極22との間に設けられている。より具体的には、図示の実施形態において、高抵抗部12は、W軸方向においてビア導体V6と同じ位置に設けられている。高抵抗部12は、基体10の外表面の一部を構成している。すなわち、高抵抗部12は、基体10から外面に露出している。高抵抗部12は、コイル軸Axの周りの周方向の全長にわたって延伸している。高抵抗部12は、W軸方向において、基体10の接続面の外部電極21と外部電極22との間の領域の一部を占めている。
図2に示されている実施形態においては、高抵抗部12は、基体10の接続面のうち本体部11によって示されている領域以外の領域を占めている。高抵抗部12の上記の構成及び配置により、外部電極21から出発してW軸方向に沿って基体10の外表面(接続面)を外部電極22に向かって進むと、必ず高抵抗部12を横断することになる。言い換えると、基体10の接続面において、外部電極21と外部電極22との間には高抵抗部12が介在している。高抵抗部12は、基体10の内部まで延伸していてもよい。言い換えると、高抵抗部12は、コイル軸Axを中心としコイル軸Axに直交する径方向において、基体10の外表面からコイル軸Axの間の任意の位置まで延伸していてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、基体10は、磁性材料から構成される。基体10用の磁性材料としては、例えば、軟磁性合金材料を用いることができる。基体10用の軟磁性金属材料として、例えば、(1)金属系のFeもしくはNi、(2)合金系のFe-Si-Cr、Fe-Si-AlもしくはFe-Ni、(3)非晶質のFe―Si-Cr-B-CもしくはFe-Si-B-Cr、(4)またはこれらの混合材料を用いることができる。基体10の材料となる軟磁性金属材料は、Siに代えて又はSiに加えて、Si及びZrの少なくとも一方を含んでいてもよい。基体10は、軟磁性金属材料から成る複数の金属磁性粒子から構成されてもよい。基体10に含まれる複数の金属磁性粒子の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。基体10に含まれる複数の金属磁性粒子の各々は、隣接する金属磁性粒子と絶縁膜を介して結合してもよい。絶縁膜は、金属磁性粒子の構成元素の酸化物を含んでもよいし、金属磁性粒子の構成元素以外の絶縁性の材料から形成されてもよい。一実施形態において、基体10用の磁性材料の比透磁率は、100以下である。基体10は、樹脂を含んでもよい。例えば、基体10は、軟磁性金属材料から成る金属磁性粒子同士を結合する樹脂製の結着材を含んでいてもよい。結着材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂からなる。結着材の材料として用いられる樹脂材料は、第1磁性材料よりも小さな透磁率を有する。結着材用の樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。
【0042】
高抵抗部12には、本体部11に含まれる金属磁性粒子と異なる種類の金属磁性粒子が含まれてもよい。例えば、高抵抗部12に含まれる金属磁性粒子の平均粒径は、本体部11に含まれる金属磁性粒子の平均粒径よりも小さい。本明細書における金属磁性粒子の「平均粒径」は、基体10をその厚さ方向(T軸方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により1000倍~2000倍の倍率で撮影した写真に基づいて粒度分布を求め、このようにして求められた粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM写真に基づいて求められた粒度分布の50%値(D50)を金属磁性粒子の平均粒径とすることができる。各金属磁性粒子の表面に絶縁性の絶縁膜を設けることにより、平均粒径が比較的小さな金属磁性粒子を含む高抵抗部12の体積抵抗率を、平均粒径が比較的大きな金属磁性粒子を含む本体部11の体積抵抗率より大きくすることができる。本体部11に含まれる複数の金属磁性粒子の平均粒径は、例えば、2~20μmとされ、高抵抗部12に含まれる複数の金属磁性粒子の平均粒径は、例えば、0.5~3μmとされる。
【0043】
本発明の一実施形態において、高抵抗部12のW軸方向における寸法は、高抵抗部12に含まれる複数の金属磁性粒子の平均粒径の3倍以上とされる。高抵抗部12に含まれる複数の金属磁性粒子の平均粒径が上述した0.5μmの場合には、高抵抗部12のW軸方向における寸法は、1.5μm以上とされる。
【0044】
高抵抗部12に含まれる金属磁性粒子の組成は、本体部11に含まれる金属磁性粒子の組成と異なっていてもよい。Feを含む金属磁性粒子の体積抵抗率は、Feに対するSi、Ti、又はZrの含有比率に応じて高くなる。本発明の一実施形態において、高抵抗部12に含まれる複数の金属磁性粒子の各々におけるFeに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率は、本体部11に含まれる複数の金属磁性粒子の各々におけるFeに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率よりも高い。例えば、高抵抗部12に含まれる複数の金属磁性粒子の各々において、Feに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率は例えば10%以上であり、本体部11に含まれる複数の金属磁性粒子の各々において、Feに対するSi、Ti、及びZrの合計の含有比率は、例えば10%より小さい。本明細書における金属磁性粒子における元素の含有比率は、熱処理後の基体10に含まれている金属磁性粒子における元素の含有比率を意味する。
【0045】
コイル導体25は、上記のとおり、その一端が第1端面10cから露出しており、第1端面10cから露出する部位において外部電極21と接続されている。また、コイル導体25は、その他端が第2端面10dから露出しており、第2端面10dから露出する部位において外部電極22と接続されている。よって、コイル導体25の周回部25Aは、基体10に埋め込まれている。言い換えると、周回部25Aは、基体10の外表面により覆われている。図示の実施形態において、コイル導体25は、その両端のみが基体10から露出しており、それ以外の部位は基体10内に設けられている。本発明の一実施形態において、コイル導体25の一端は、第1端面10cのうち下面10bよりも上面10aに近い位置において基体10の外部に露出し、コイル導体25の他端は、第2端面10dのうち下面10bよりも上面10aに近い位置において基体10の外部に露出している。
【0046】
図示の実施形態において、コイル導体25は、コイル軸Axの周りに延びる導体パターンC1~C8と、コイル軸Axに沿って延びるビア導体V1~V11と、を備えている。導体パターンC1~C8の各々は、コイル軸Axの周りの周方向に約1/2ターン(約180°)だけ延伸している。導体パターンC1~C8の各々は、隣接する導体パターンと、ビア導体V3~V9のうちの対応するビア導体によって接続されている。例えば、導体パターンC1は、隣接する導体パターンC2とビア導体V3を介して接続されている。ビア導体V2~V10は、導体パターンC1~C8の周方向における一方の端部に接続されている。例えば、導体パターンC1の一端にはビア導体V1が接続され、他端にはビア導体V2が接続されている。このようにして接続された導体パターンC1~C8及びビア導体V3~V9が、コイル軸Axの周りにスパイラル状に延びる周回部25Aを形成する。周回部25Aの一方の端部は、ビア導体V2、V1を介して外部電極21と接続されており、周回部25Aの一方の端部は、ビア導体V10、V11を介して外部電極22に接続されている。このように、ビア導体V1及びV2は、周回部25Aの一方の端部を外部電極21に接続する引出導体であり、ビア導体V10及びV11は、周回部25Aの他方の端部を外部電極22に接続する引出導体である。図示されている導体パターンC1~C8の形状及び配置は例示であり、本発明には図示されている以外に様々な形状の導体パターンを適用することができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、外部電極21は基体10の第1端面10cに設けられ、外部電極22は基体10の第2端面10dに設けられる。図示の実施形態にいて、外部電極21及び外部電極22はいずれも基体10の6つの外表面のうち5つと接するいわゆる5面電極の形状に形成されている。具体的には、外部電極21は、基体10の第1端面10cを覆う主電極部21aと、主電極部21aのL軸方向の負側の端部に接続されており基体10の第1側面10eに沿って延びる板状のフランジ部21bと、主電極部21aのL軸方向の正側の端部に接続されており基体10の第2側面10fに沿って延びる板状のフランジ部21cと、主電極部21aの下端に接続されており基体10の下面10bに沿って延びるフランジ部21dと、主電極部21aの上端に接続されており基体10の上面10aに沿って延びるフランジ部21eと、を備える。外部電極22は、基体10の第2端面10dを覆う主電極部22aと、主電極部22aのL軸方向の負側の端部に接続されており基体10の第1側面10eに沿って延びる板状のフランジ部22bと、主電極部22aのL軸方向の正側の端部に接続されており基体10の第2側面10fに沿って延びる板状のフランジ部22cと、主電極部22aの下端に接続されており基体10の下面10bに沿って延びるフランジ部22dと、主電極部22aの上端に接続されており基体10の上面10aに沿って延びるフランジ部22eと、を備える。図示されている外部電極21及び外部電極22の構成及び配置は例示であり、外部電極21及び外部電極22の構成及び配置は、請求項に記載の発明の趣旨と矛盾が無い限り適宜変更可能である。
【0048】
外部電極21及び外部電極22は、対応するフランジ部の先端同士が対向するように配置されている。例えば、
図2に明瞭に示されているように、外部電極21のフランジ部21dの先端(W軸方向における正側の端)と外部電極22のフランジ部22dの先端(W軸方向における負側の端)とが対向するように設けられている。外部電極21及び外部電極22は、W軸方向において、互いから距離W2だけ離間するように構成及び配置される。具体的には、
図2に示されているように、対応するフランジ部の先端同士のW軸方向における間隔がW2とされる。
【0049】
外部電極21は、フランジ部21b~21eのいずれかにおいてランド部3aと接続され、外部電極22は、フランジ部22b~22eのいずれかにおいてランド部3bと接続される。図示の実施形態においては、外部電極21は、フランジ部21dにおいてランド部3aと接続され、外部電極22は、フランジ部22dにおいてランド部3bと接続されている。
【0050】
外部電極21は、下地電極層とめっき層とを含む複数の層を有していてもよい。下地電極層は、基体10の表面に導電性ペーストを塗布し、この導電性ペーストに熱処理を行うことで形成されてもよい。この導電性ペーストは、Ag等の金属粒子を樹脂と混練して得られるペーストである。めっき層は、例えばニッケルめっき層である。めっき層は、下地電極層の表面に例えば電解めっき法により形成される。めっき層は、2層構造であってもよい。めっき層が2層構造の場合は、下地電極に接する第1めっき層がニッケルめっき層とされ、第1めっき層の上に形成される第2めっき層がスズめっき層とされてもよい。外部電極22は、外部電極21と同様に、下地電極層とめっき層とを含む複数の層を有していてもよい。外部電極21に関する説明は、矛盾がない限り外部電極22にも当てはまる。
【0051】
図示されている実施形態では、第1端面10c及び第2端面10dがそれぞれ外部電極21及び第2外部電極22によって覆われているため、コイル導体25に電流が流れるときにコイル軸Axに沿って基体10内を流れる磁束が第1端面10c又は第2端面10dから基体10の外部へ漏れることを抑制できる。これにより、コイル部品1のインダクタンスを向上させることができる。また、図示の実施形態において、コイル導体25の一端は、第1端面10cのうち下面10bよりも上面10aに近い位置において基体10の外部に露出し、コイル導体25の他端は、第2端面10dのうち下面10bよりも上面10aに近い位置において基体10の外部に露出しているから、周回部25Aの内部をコイル軸Axに沿って流れる磁束は、周回部25Aから流れ出た後にコイル導体25と下面10bとの間の領域よりもコイル導体25と上面10aとの間の領域により多く流れ込む。これにより、下面10bからの磁束の漏れをさらに抑制することができる。
【0052】
コイル部品1においては、基体10の外表面のうちの接続面において、外部電極21と外部電極22との間に高抵抗部12が介在しているので、外部電極21と外部電極22との間に基体10の接続面に沿ってリーク電流が流れることを抑制できる。
図2に示されているように、外部電極21と外部電極22とは、互いに対向するように配置されているフランジの先端間(例えば、フランジ部21dとフランジ部22dとの間)において最も接近するので、外部電極21と外部電極22との間で絶縁破壊が起こる場合には、基体10の接続面に沿って外部電極21と外部電極22との間にリーク電流が流れる。コイル部品1においては、基体10の外表面のうちの接続面における外部電極21と外部電極22との間の領域に高抵抗部12が介在しているので、外部電極21と外部電極22との間でのリーク電流の発生を抑制することができる。このため、コイル部品1においては、外部電極21と外部電極22との間の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0053】
続いて、本発明の一実施形態によるコイル部品1の製造方法の例について説明する。コイル部品1は、例えば、シート積層法により作製することができる。コイル部品1をシート積層法により作製する場合の具体的な手順について説明する。
【0054】
シート積層法によりコイル部品1を作製する場合には、まず、磁性材料からシート形状の磁性体シートを作製する。磁性体シートは複数枚作製される。磁性体シートは、その厚さ方向から見たときに、概ね長さ寸法L1の長辺と概ね高さ寸法T1の短辺とを有する長方形形状を呈するように形成される。磁性体シートは、例えば金属磁性粒子を樹脂と混練して得られたスラリーを成型金型に入れて所定の成形圧力を加えることで作製される。金属磁性粒子と混練される樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂が用いられ得る。
【0055】
次に、磁性体シートにビア導体V1~V11を配置するための貫通孔を形成する。ビア導体V6を配置するための貫通孔が形成される磁性体シートには、高抵抗部12を配置するためのリング状の貫通孔も形成される。次に、貫通孔が形成された磁性体シートにスクリーン印刷等の公知の手法により導体ペーストを塗布することにより、焼成後に導体パターンC1~C8となる未焼成導体パターンが形成される。このとき、導体ペーストが磁性体シートの貫通孔内に埋め込まれ、焼成後にビアV1~V11となる未焼成ビアが形成される。また、ビア導体V6となる未焼成ビア導体が埋め込まれた磁性シートに形成されているリング状の貫通孔には、金属磁性粒子を樹脂と混練して得られたスラリーが例えばスクリーン印刷により充填され、この貫通孔内に高抵抗部12の前駆体が形成される。このリング状の貫通孔に充填されるスラリーに含まれる金属磁性粒子の平均粒径は、磁性体シートの原料に含まれる金属磁性粒子の平均粒径より小さくともよい。
【0056】
次に、各々に複数の未焼成導体パターン、複数の未焼成ビアが、及び/又は複数の高抵抗部12の前駆体が形成された複数の磁性体シートを積層し、この積層された磁性体シートを熱圧着することにより積層体を形成する。次に、ダイシング機やレーザ加工機などの切断機を用いて当該本体積層体を所望のサイズに個片化することでチップ積層体が得られる。
【0057】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理する。チップ積層体への加熱処理は、例えば400℃~900℃で20分間~120分間行われる。これにより、内部にコイル導体25を有する基体10が形成される。この加熱処理により、高抵抗部12の前駆体から高抵抗部12が得られる。
【0058】
次に、加熱処理により得られた基体の表面に外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21は、基体10の第1端面10cに導電性ペーストを塗布して下地電極層を形成し、この下地電極層の表面に例えば電解めっき法によりめっき層を形成することで形成される。めっき層は、2層構造であってもよい。めっき層が2層構造の場合は、下地電極層に接する第1めっき層がニッケルめっき層とされ、第1めっき層の上に形成される第2めっき層がスズめっき層とされてもよい。
【0059】
以上の工程により、コイル部品1が得られる。以上のコイル部品1の製造方法において、磁性体シートの積層方向は、
図1~
図3のW軸方向である。つまり、複数の磁性体シートの各々は、TL面に沿って延びる板状のシートであり、この複数の磁性体シートがW軸方向に積層される。
【0060】
コイル部品1は、シート製法以外の当業者に知られている方法、例えば圧縮成形法、スラリービルド法、又は薄膜プロセス法により作製されてもよい。
【0061】
続いて、
図3a及び
図3bを参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品101について説明する。
図3a及び
図3bはそれぞれ、コイル部品101の断面図を示す。
図3aは、コイル軸Axを通る平面によって切断したコイル部品101の断面を示し、
図3bは、コイル軸Axと直交する平面によって切断したコイル部品101の断面を示す。コイル部品101は、高抵抗部12に代えて高抵抗部112を備える点で、コイル部品1と異なっている。
【0062】
図3a及び
図3bに示されているように、周回部25Aは、基体10の接続面(つまり、上面10a、下面10b、第1側面10e、及び第2側面10f)と対向する外周面を有する。高抵抗部112は、コイル軸Axを中心とする径方向において、基体10の接続面から周回部25Aの外周面まで延在している。高抵抗部112により、外部電極21と外部電極22との間に基体10の接続面よりもコイル軸Axを中心とする径方向の内側を通ってリーク電流が流れることを抑制できる。したがって、コイル部品101によれば、外部電極21と外部電極22との間の絶縁耐圧をさらに向上させることができる。
【0063】
続いて、
図4a及び
図4bを参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品201について説明する。
図4a及び
図4bはそれぞれ、コイル部品201の断面図を示す。
図4aは、コイル軸Axを通る平面によって切断したコイル部品201の断面を示し、
図4bは、コイル軸Axと直交する平面によって切断したコイル部品201の断面を示す。コイル部品201は、高抵抗部12に代えて高抵抗部212を備える点で、コイル部品1と異なっている。
【0064】
図4a及び
図4bに示されているように、高抵抗部212は、コイル軸Axを中心とする径方向において、基体10の接続面からコイル軸Axまで延在している。このため、高抵抗部212は、基体10のコア領域10Nの一部を占めている。
【0065】
高抵抗部212により、外部電極21と外部電極22との間に基体10のコア領域10Nを通ってリーク電流が流れることを抑制できる。例えば、外部電極21の主電極部21aと外部電極22の主電極部22aとの間にリーク電流が流れることを抑制できる。また、高抵抗部212の前駆体は、金属磁性粒子を樹脂と混練して得られたスラリーを圧縮してシートを作製し、このシートにビア導体V6を配置するための貫通孔を形成することによって、容易に作成することができる。つまり、シート積層法によりコイル部品201を作製する場合には、磁性体シートに高抵抗部212の前駆体を充填するための貫通孔を形成する必要がないので、コイル部品201は、コイル部品1と比べてより簡潔な製造プロセスにより作成可能である。
【0066】
図示されている実施形態においては、導体パターンC4と導体パターンC5との間に単一の高抵抗部212が配置されているが、コイル部品201は複数の高抵抗部212を備えてもよい。例えば、コイル部品201は、導体パターンC2と導体パターンC3との間に別の高抵抗部212を備えることができる。
【0067】
続いて、
図5を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品301について説明する。
図5は、コイル部品301の断面図を示す。
図5は、コイル軸Axを通る平面によって切断したコイル部品301の断面を示す。コイル部品301は、高抵抗部12に代えて高抵抗部312を備える点で、コイル部品1と異なっている。
【0068】
図5に示されているように、高抵抗部312は、基体10の接続面のうち外部電極21と外部電極22との間にある領域の全体を占めるように構成されている。つまり、高抵抗部312は、W軸方向において、フランジ部21b~21eの各々のW軸方向の正側の端部から、フランジ部22a~22eのうちの対応するフランジ部のW軸方向の負側の端部まで延在している。この場合、基体10の接続面の全ての領域は、高抵抗部312で占められる。コイル部品301において、基体10のうち本体部11の外表面の全体は、外部電極21、外部電極22、及び高抵抗部12によって覆われている。
【0069】
コイル部品301においては、基体10の接続面のうち外部電極21と外部電極22との間にある領域の全体が高抵抗部312によって占められているので、外部電極21と外部電極22との間に基体10の接続面に沿ってリーク電流が流れることをより確実に抑制できる。このため、コイル部品301においては、外部電極21と外部電極22との間の絶縁耐圧をさらに向上させることができる。
【0070】
続いて、
図6及び
図7を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品401について説明する。
図6は、コイル部品401の概略的な斜視図を示し、
図7は、
図6のコイル部品401をI-I線で切断した断面を示す。コイル部品401は、外部電極21に代えて外部電極121を備え、外部電極22に代えて外部電極122を備える点で、コイル部品201と異なっている。
【0071】
図6及び
図7に示されているように、外部電極121は、基体10の第1端面10cのみを覆っており、外部電極122は、基体10の第2端面10dのみを覆っている。図示の実施形態では、外部電極121は、基体10の第1端面10cの全面を覆っており、外部電極122は、基体10の第2端面10dの全面を覆っている。外部電極121は、基体10の第1端面10cの一部のみを覆ってもよいし、外部電極122は、基体10の第2端面10dの一部のみを覆ってもよい。外部電極121は、第1端面10cの下端まで延伸し、外部電極121は、その下端においてランド部3aと接続される。同様に、外部電極122は、第2端面10dの下端まで延伸し、外部電極122は、その下端においてランド部3bと接続される。
【0072】
コイル部品401のように、外部電極121が基体10の第1端面10cのみを覆っており、外部電極122が基体10の第2端面10dのみを覆っている場合には、外部電極121と外部電極122との間のリーク電流は、接続面だけでなく基体10の内部を流れやすい。コイル部品401においては、基体10の接続面からコイル軸Axまで延在する高抵抗部212により、基体10の内部(例えば、コア領域10N)を通ってリーク電流が流れることを抑制できる。
【0073】
続いて、
図8及び
図9を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品501について説明する。
図8は、コイル部品501の概略的な斜視図を示し、
図9は、
図8のコイル部品501をI-I線で切断した断面を示す。コイル部品501は、高抵抗部12に代えて高抵抗部512a及び高抵抗部512bを備える点で、コイル部品1と異なっている。
【0074】
図8及び
図9に示されているように、高抵抗部512aは、外部電極21に接するように設けられており、高抵抗部512bは、外部電極22に接するように設けられている。図示の実施形態において、高抵抗部512aは、その外表面の少なくとも一部においてフランジ部21b~21eの各々の内周面と接触し、高抵抗部512bは、その外表面の少なくとも一部においてフランジ部22b~22eの各々の基体10側の表面である内周面と接触している。本発明の少なくとも一つの実施形態において、高抵抗部512aは、外部電極21のフランジ部21b~21eのW軸方向正側の端部から、W軸方向の正側に向かって延びている。本発明の少なくとも一つの実施形態において、高抵抗部512bは、外部電極22のフランジ部22b~22eのW軸方向負側の端部から、W軸方向の負側に向かって延びている。
【0075】
コイル部品501においては、高抵抗部512a及び高抵抗部512bにより、外部電極21と外部電極22との基体10の接続面に沿ってリーク電流が流れることを抑制できる。また、外部電極21及び外部電極22の形成時に電解めっきを行う場合には、めっきが基体10の接続面にめっき層が広がることを抑制できる。めっきが外部電極21及び外部電極22の所定の位置から基体10の接続面に拡がると、外部電極21と外部電極22との間でショートが起こりやすくなる。このように、高抵抗部512a及び高抵抗部512bは、外部電極21と外部電極22との間の抵抗を高める機能に加えて、コイル部品1の製造工程においてめっきが基体10の接続面に拡がることを防止する機能を奏する。
【0076】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。
【0077】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0078】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0079】
1、101、201、301、401、501
10 基体
11 本体部
12、112、212、312、512a、512b 高抵抗部
21、22、121、122 外部電極
25コイル導体
Ax コイル軸