(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155643
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20221006BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221006BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/0444
H01M8/04746
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058974
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】酒井 良次
(72)【発明者】
【氏名】井上 一秀
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓人
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC01
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB47
5H127DB04
5H127DB53
5H127DB63
5H127DB69
5H127DC18
5H127DC28
5H127DC44
(57)【要約】
【課題】燃料排ガスをカソード電極の入口側に供給する接続流路の開閉弁を開いて発電電圧が低下した場合であっても、発電電力の変化を防止可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】制御装置12は、燃料電池スタック16の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、発電電流指令値を、ブリード弁の開閉に拘わらず、発電電力指令値と電圧センサ92により取得された発電電圧に基づき(発電電流指令値=発電電力指令値÷発電電圧)として設定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムであって、
前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、
前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、
前記接続流路を開閉する開閉弁と、
前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置と、
前記燃料電池の発電電圧を取得する電圧取得器と、を備え、
前記制御装置は、
前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、
前記発電電流指令値を、発電電力指令値と前記電圧取得器により取得された前記発電電圧に基づき設定する
燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムであって、
前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、
前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、
前記接続流路を開閉する開閉弁と、
前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置と、
前記燃料電池の発電電圧を取得する電圧取得器と、を備え、
前記制御装置は、
前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、
前記開閉弁を閉弁させているときには、発電電力指令値に基づき発電電流指令値を設定する第1発電制御を行い、
前記開閉弁を開弁させるときには、前記発電電力指令値と前記発電電圧とに基づき前記発電電流指令値を設定する第2発電制御を行う
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記アノード電極に流通する前記燃料ガスの濃度を取得する燃料ガス濃度取得部をさらに備え、
前記制御装置は、
前記燃料ガス濃度取得部により取得されている前記燃料ガスの濃度が所定値以下の濃度になった場合、前記開閉弁を開弁する
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記アノード電極に流通する前記燃料ガスの濃度を取得する燃料ガス濃度取得部をさらに備え、
前記制御装置は、
前記燃料ガス濃度取得部により取得されている前記燃料ガスの濃度が所定値以下の濃度になった場合、前記開閉弁を開弁する前に、前記第1発電制御から前記第2発電制御に切り替える
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の一方の面にアノード電極が、他方の面にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体が、セパレータによって挟持されることにより、発電セル(単位セル)が構成される。
【0003】
通常、所定数の発電セルが積層されることにより、燃料電池スタックとして、例えば、燃料電池車両(燃料電池電気自動車)等に組み込まれる。
【0004】
この種の燃料電池では、燃料ガスの効率的な利用のために、燃料電池のアノード電極の出口側から排出される燃料排ガス(主に、反応に寄与しなかった燃料ガスと、カソード電極側から電解質膜を透過してくる窒素ガスとからなる。)をアノード電極の入口側から再びアノード電極内に循環させるように構成されている。
【0005】
このように構成した場合、アノード電極内での燃料ガスの濃度が低下する(燃料ガスが欠乏する)ことによる前記電解質膜の劣化、いわゆる膜劣化が懸念される。
この膜劣化の発生を抑制するため、例えば、特許文献1に記載されている技術を用いることができる。
【0006】
この技術では、燃料電池のアノード電極の出口側から排出される窒素ガスを含む燃料排ガスを、開閉弁付き接続流路の前記開閉弁を開弁して前記カソード電極の入口側に前記接続流路を介して戻しカソード電極に流通させる。この場合、前記カソード電極では、反応に寄与しなかった燃料ガスと外部から前記カソード電極に供給される酸化剤ガスとが触媒反応により反応して水が生成されると共に、生成された水と前記窒素ガスとをカソード電極の出口側から外部に排出するようにしている。
【0007】
これにより、アノード電極側での窒素ガスが増加することを原因とする、アノード電極内に流通する燃料ガスの濃度の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、前記接続流路の前記開閉弁を開弁しているとき、前記触媒反応によりカソード電極側の発電に寄与する酸化剤ガスが不足することを原因として前記発電セルの電圧が低下する。
【0010】
このため、発電電流指令値に基づき燃料電池の発電電流を制御している燃料電池システムでは、発電電力が低下してしまうという課題がある。
【0011】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、燃料排ガスをカソード電極の入口側に供給する接続流路の開閉弁を開いて発電電圧が低下した場合であっても、発電電力の変化を回避乃至抑制することを可能とする燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の一態様に係る燃料電池システムは、燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムであって、前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁と、前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置と、前記燃料電池の発電電圧を取得する電圧取得器と、とを備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、前記発電電流指令値を、発電電力指令値と前記電圧取得器により取得された発電電圧に基づき設定する。
【0013】
この発明の他の態様に係る燃料電池システムは、燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムであって、前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁と、前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置と、前記燃料電池の発電電圧を取得する電圧取得器と、とを備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、前記開閉弁を閉弁させているときには、発電電力指令値に基づき前記発電電流指令値を設定する第1発電制御を行い、前記開閉弁を開弁させるときには、前記発電電力指令値と前記発電電圧とに基づき前記発電電流指令値を設定する第2発電制御を行う。
【発明の効果】
【0014】
この発明の一態様によれば、開閉弁が開弁され燃料排ガスがカソード電極に流通されて燃料電値の発電電圧が低下した場合であっても、発電電圧の低下に基づき発電電流指令値が増加されるので、発電電力の変化を回避乃至抑制できる。この制御では、制御を変更しないので、制御を簡易化できる。
【0015】
この発明の他の態様によれば、発電中に、カソード電極側からアノード電極に透過する窒素ガスの影響によりアノード電極に流通する燃料ガスの濃度が低下して、燃料排ガス流路と酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路の開閉弁を開弁するときには、発電電力指令値と発電電圧とに基づき発電電流指令値を設定するようにしたので、アノード電極の燃料ガス濃度制御(燃料ガス濃度低下防止制御)を行っても燃料電池の発電電力が変化しない、あるいは変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施例に係る燃料電池システムが組み込まれた燃料電池車両の構成を示す模式的ブロック図である。
【
図2】
図2Aは、第1実施例に係る
図1中の制御装置の一機能の電流変換器の模式的ブロック図である。
図2Bは、第2実施例に係る
図1中の制御装置の他の一機能の電流変換器の模式的ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1中の燃料電池システム中に、電流の流れ及びガスの流れを矢線で描いたブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施例の動作説明に供されるフローチャートである。
【
図5】
図5は、ブリード弁の開閉とアノード流路中の水素濃度との対応関係を示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、ブリード弁の開閉に対する発電セル電圧の対応関係を示す説明図である。
【
図7】
図7は、第1実施例の一例の動作説明に供されるタイムチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施例の動作説明に供されるフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施例の一例の動作説明に供されるタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る燃料電池システムについて実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0018】
[第1実施例]
[構成]
図1は、第1実施例に係る燃料電池システム14が組み込まれた燃料電池車両10の構成を示す模式的ブロック図である。
【0019】
燃料電池車両10は、該燃料電池車両10全体を制御する制御装置12と、燃料電池システム14と、燃料電池システム14に電気的に接続される出力部20とから構成される。
【0020】
燃料電池システム14は、基本的には、燃料電池スタック(単に、燃料電池ともいう。)16と、水素タンク18と、酸化剤ガス系デバイス22と、燃料ガス系デバイス24とから構成される。
【0021】
酸化剤ガス系デバイス22には、エアポンプ26及び加湿器(HUM)28が含まれる。
燃料ガス系デバイス24には、インジェクタ(INJ)30、エジェクタ(EJT)32、及び気液分離器34が含まれる。
【0022】
燃料電池スタック16は、複数の発電セル40が積層される。発電セル40は、電解質膜・電極構造体44と、該電解質膜・電極構造体44を挟持するセパレータ45、46とを備える。
【0023】
電解質膜・電極構造体44は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜41と、前記固体高分子電解質膜41を挟持するカソード電極42及びアノード電極43とを備える。
【0024】
カソード電極42及びアノード電極43は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)を有する。白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子は、ガス拡散層の表面に一様に塗布されることにより、電極触媒層(図示せず)が形成される。電極触媒層は、固体高分子電解質膜41の両面に形成される。
【0025】
一方のセパレータ45の電解質膜・電極構造体44に向かう面には酸化剤ガス入口連通口116と酸化剤ガス出口連通口102とを連通するカソード流路(酸化剤ガス流路)47が形成される。
【0026】
他方のセパレータ46の電解質膜・電極構造体44に向かう面には、燃料ガス入口連通口146と燃料ガス出口連通口148とを連通するアノード流路(燃料ガス流路)48が形成される。
【0027】
アノード電極43では、燃料ガスが供給されることにより、触媒による電極反応によって水素分子から水素イオンを生じ、該水素イオンが固体高分子電解質膜41を透過してカソード電極42に移動する一方、水素分子から電子が解放される。
【0028】
水素分子から解放された電子は、負極端子86から出力調整器80及びモータ84等の外部負荷を通じ、正極端子88を介してカソード電極42に移動する。
【0029】
カソード電極42では、触媒の作用によって水素イオン及び電子と、供給された酸化剤ガスに含まれる酸素とが反応して水が生成される。
【0030】
正極端子88と負極端子86との間には、発電電圧Vfcを検出する電圧センサ92が設けられる。さらに、正極端子88と出力調整器80の間の配線には、発電電流Ifcを検出する電流センサ93が設けられる。
【0031】
エアポンプ26は、蓄電器82の電力が供給される図示しないインバータ及びモータにより駆動される機械式の過給器等で構成され、大気(空気)を取り込んで加圧し、加湿器28に供給する機能を有する。
【0032】
加湿器28は、酸化剤ガス(乾燥した空気)が流通する流路52と、燃料電池スタック16のカソード流路47からの排出ガス{湿潤な酸化剤排ガス(ブリード弁158の閉弁時)又は該湿潤な酸化剤排ガスに混合される後述する燃料排ガス(ブリード弁158の開弁時)}が、燃料電池スタック16の酸化剤ガス出口連通口102及び管路104を通じて流通する流路54を有する。
【0033】
管路104には、該管路104に流通する酸化剤ガスの圧力をカソード出口圧力Pco[kPa]として検出するカソード出口圧力センサ69が設けられる。
【0034】
加湿器28は、エアポンプ26から供給された酸化剤ガスを加湿する機能を有している。すなわち、加湿器28は、前記排出ガス中に含まれる水分を、多孔質膜を介して供給ガス(酸化剤ガス)に移動させる。
【0035】
エアポンプ26の吸入口側は、管路106、エアフローセンサ(AFS)(流量センサ)56及び管路108を通じて大気に連通する。
【0036】
エアフローセンサ56は、エアポンプ26から燃料電池スタック16のカソード流路47に供給される酸化剤ガスの質量流量M[g/min]を計測して制御装置12へ出力する。
【0037】
エアポンプ26の吐出口側は、管路110、112を通じて加湿器28の流路52の一端側に連通する。加湿器28の流路52の他端側は、管路である管路114(酸化剤ガス供給流路)の一端側に連通し、管路114の他端側は、酸化剤ガス入口連通口116を通じて燃料電池スタック16内のカソード流路47に連通する。
【0038】
管路110には、エアポンプ26から吐出される酸化剤ガスの圧力を酸化剤吐出圧力Po[kPa]として検出する吐出圧圧力センサ64が設けられる。
【0039】
管路114には、該管路114に流通する酸化剤ガスの圧力をカソード入口圧力Pci[kPa]として検出するカソード入口圧力センサ67が設けられる。
【0040】
加湿器28の流路54の吐出側には、管路117、118を通じて希釈器66の一方の入口側に連通する。
【0041】
エアポンプ26の吐出口側の管路110は、分岐し、一方は、管路112に連通すると共に、他方は、バイパス管路120、バイパス弁122を介して管路118に連通する。
【0042】
管路118には、該管路118に流通するガスの圧力を希釈入口圧力Pd[kPa]として検出する希釈器入口圧力センサ62が設けられる。
【0043】
水素タンク18は、電磁作動式の遮断弁を備え、高純度の水素を高い圧力で圧縮して収容する容器である。
【0044】
水素タンク18から吐出される燃料ガスは、管路140、インジェクタ30、管路142、エジェクタ32、管路144(燃料ガス供給流路)を通じ、燃料ガス入口連通口146を介して燃料電池スタック16のアノード流路48の入口に供給される。
【0045】
管路144には、該管路144に流通する燃料ガスの圧力をアノード入口圧力Pai[kPa]として検出するアノード入口圧力センサ68が設けられる。
【0046】
アノード流路48の出口は、燃料ガス出口連通口148、管路150(燃料排ガス路)を通じて気液分離器34の入口151に連通され、該気液分離器34にアノード流路48から水素含有ガスである燃料排ガス(アノードオフガス)が供給される。
【0047】
管路150には、該管路150に流通する燃料排ガスの圧力をアノード出口圧力Poa[kPa]として検出するアノード出口圧力センサ70及び該管路150に流通する燃料排ガスの温度をアノード出口温度Toa[℃]として検出するアノード出口温度センサ72が設けられる。
【0048】
気液分離器34は、前記燃料排ガスを気体成分と液体成分(液水)とに分離する。燃料排ガスの気体成分(燃料排ガス)は、気液分離器34の気体排出口152から排出され、管路154を通じてエジェクタ32に供給される一方、必要時に、ブリード弁158が開弁されると、燃料排ガスは、連絡管路156(接続流路)、ブリード弁158(開閉弁)を介し、酸化剤ガスの管路114にも供給される。
【0049】
なお、ブリード弁158は、カソード流路47に存在する窒素ガスが電解質膜・電極構造体44を透過してアノード流路48内の水素濃度を低下させることを原因とするアノード電極43の劣化を防止するために開弁される。すなわち、ブリード弁158は、走行時等の通常発電時に、アノード流路48内の水素濃度が低下したと判断したときに開弁される。
【0050】
酸化剤ガスの管路114に供給された燃料排ガスは、管路114内でエアポンプ26から供給される酸化剤ガスと混合されて酸化剤ガス入口連通口116を通じて燃料電池スタック16のカソード流路47に供給される。
【0051】
カソード流路47に供給された燃料排ガスの一部は、カソード電極42の触媒反応により水素イオン化され、該水素イオンは酸化剤ガスと反応して水が生成される。反応しなかった残部の燃料排ガスは酸化剤ガス出口連通口102から排出され、管路104、流路54、管路117、118を通じて希釈器66から排出される際に、バイパス管路120から供給される酸化剤ガスにより希釈され、管路118、希釈器66及び管路124を介して燃料電池車両10の外部(大気)に排出される。
【0052】
前記エジェクタ32には、その上流側に設けられたインジェクタ30から管路142を介して燃料ガスが供給される。このため、気液分離器34を介して供給されている燃料排ガス(前記気体成分)は、エジェクタ32で吸引され燃料ガスと混合された状態で、燃料電池スタック16の管路144を通じ燃料ガス入口連通口146を介して燃料電池スタック16のアノード流路48に供給される。
【0053】
燃料排ガスの液体成分は、気液分離器34の液体排出口160から管路162、ドレン弁164、及び管路166を通じ、希釈器66を経て、管路124から燃料電池車両10の外部に排出される。
【0054】
実際上、ドレン弁164から管路166には、液体成分と共に、一部の燃料排ガスが排出される。この燃料排ガス中の水素ガスを希釈して外部に排出するために、エアポンプ26から吐出した酸化剤ガスの一部がバイパス管路120、管路118を通じて希釈器66に供給されている。
よって、希釈器66の中で燃料排ガス中の水素ガスが希釈されて外部に排出される。
【0055】
燃料電池スタック16は、該燃料電池スタック16に設けられた冷却媒体流路(不図示)に、冷却媒体を供給・排出するための冷却媒体供給流路74a及び冷却媒体排出流路74bがさらに付設されている。冷却媒体排出流路74bに温度センサ76が設けられ、該温度センサ76は、燃料電池スタック16の温度として冷却媒体排出流路74bに流れる冷却媒体の温度Tw[℃]を測定する。
【0056】
制御装置12は、CPU(不図示)、記憶部(ROMとRAM)等を備えるマイクロコンピュータを含んでECU(電子制御ユニット)として構成される。
【0057】
記憶部には、当該燃料電池車両10及び燃料電池システム14の制御プログラム等が記憶される。
【0058】
制御装置12のCPUは、前記制御プログラムに従って演算を実行することで、燃料電池車両10及び燃料電池システム14の運転制御を行う。
【0059】
運転制御を行うために、制御装置12には、図示しないアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサからのアクセル開度θa、図示しない車速センサからの車速Vs、蓄電器82のSOC(残容量)を検出するSOCセンサ83からのSOC等に基づき出力調整器80を通じて燃料電池スタック16の発電電力と蓄電器82の電力供給割合を調整しモータ84を駆動制御する。
【0060】
また、モータ84を駆動制御する際に、制御装置12は、前記発電電力の供給割合に基づき、吐出圧圧力センサ64等の圧力センサ、及び温度センサ76等の温度センサの他、各種センサから受けた検出信号に基づき、酸化剤ガス系デバイス22及び燃料ガス系デバイス24を構成する各構成要素を駆動制御することで燃料電池システム14の発電制御を行う。
【0061】
図2Aに示すように、制御装置12は、燃料電池スタック16の発電電力指令値Pfccom及び発電電圧Vfcに基づき、出力調整器80に発電電流指令値Ifccomを出力する電流変換器90としても動作する。
【0062】
制御装置12は、1つとすることに限らず、燃料電池スタック16の発電電力指令値Pfccomを決定するエネルギ管理部と、電流変換器90を有し前記発電電力指令値Pfccomに基づき燃料電池スタック16の発電制御を行う発電制御部と、モータ84を駆動制御するモータ制御部等に分ける等、2以上に分けても良い。
【0063】
[動作]
次に、基本的には以上のように構成される燃料電池システム14の動作について、[1]燃料電池車両10の走行時等における通常発電中の動作(後述する第2実施例でも同様の動作である。)、[2]アノード流路48での水素濃度低下を考慮した第1実施例に係る発電電流指令値Ifccomの設定動作、[3]アノード流路48での水素濃度低下を考慮した第2実施例に係る発電電流指令値Ifccomの設定動作の順に説明する。
【0064】
[1]燃料電池車両10の走行時等における通常発電時の動作の説明
通常発電中(アノード電極43側での水素濃度がブリード弁158を開弁させる必要のない状況である場合の走行中等)の動作について、燃料ガス、酸化剤ガス、及び電力の流れに実線の矢線を付けた
図3を参照して、以下に説明する。なお、
図3中、破線の矢線は、後述するブリード弁158の開弁時における燃料排ガスの流れを示している。
【0065】
通常発電中、ブリード弁158は閉弁され、バイパス弁122は、主にドレン弁164を開弁したときに希釈のために開弁される。
【0066】
酸化剤ガス系デバイス22側では、制御装置12の制御下に蓄電器82の高電圧の電力を動力源として動作するエアポンプ26から吐出される酸化剤ガスが、管路110、112、加湿器28を通って加湿された後、管路114を通じて燃料電池スタック16の酸化剤ガス入口連通口116に供給される。
【0067】
なお、加湿器28は、燃料電池スタック16の酸化剤ガス出口連通口102から管路104に排出される湿潤な排出ガスが流通する流路54から多孔質膜を介して前記排出ガス中の水分を、流路52を流通する供給ガス(酸化剤ガス)に移動させる。
【0068】
一方、燃料ガス系デバイス24側では、インジェクタ30の開弁作用下に、高圧の水素タンク18から管路142に燃料ガス(水素ガス)が供給される。この燃料ガスは、管路(循環路)154を通じてエジェクタ32に吸引された燃料排ガスと混合されてエジェクタ32を通った後、燃料電池スタック16の燃料ガス入口連通口146に供給される。
【0069】
燃料電池スタック16内で、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通口116から各発電セル40のカソード流路47を介してカソード電極42に供給される。一方、水素ガスは、燃料ガス入口連通口146から各発電セル40のアノード流路48を介してアノード電極43に供給される。従って、各発電セル40では、カソード電極42に供給される空気中に含まれる酸素ガスと、アノード電極43に供給される水素ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応(燃料電池反応)により消費されて発電が行われる。
【0070】
次いで、カソード電極42に供給されて消費された空気からなるカソード排ガス及び反応生成水は、酸化剤ガス出口連通口102に排出され、管路104、流路54及び管路117を介して、バイパス管路120から供給される酸化剤ガスに合流され、管路118を介して希釈器66に供給され、管路124を介して燃料電池車両10の外部に排出される。
【0071】
アノード電極43に供給されて消費された水素ガスは、燃料排ガス(一部が消費された燃料ガス)として燃料ガス出口連通口148に排出される。
【0072】
燃料排ガスは、管路150から気液分離器34に導入されて液体成分(液水)が除去された後、管路154を介してエジェクタ32により吸引され燃料電池スタック16内での発電反応に供される。
【0073】
複数の発電セル40が電気的に直列に接続された燃料電池スタック16により発電された高電圧の発電電圧の電力は、出力調整器80を介して蓄電器82に蓄電される。
【0074】
制御装置12のエネルギ管理部は、燃料電池車両10のアクセル開度θa、車速Vs、蓄電器82のSOCや図示しない空調装置の設定温度等の負荷状態に応じて燃料電池スタック16の発電電力指令値Pfccomを決定する。
【0075】
制御装置12の発電制御部の電流変換器90は、発電電力指令値Pfccomと発電電圧Vfcに基づき、発電電流指令値Ifccomを算出し、発電電流指令値Ifccomに対応する発電電流Ifcが生成されるように、酸化剤ガス系デバイス22、燃料ガス系デバイス24及び出力調整器80を制御する。
【0076】
この場合、燃料電池車両10は、出力調整器80の制御下に蓄電器82及び/又は燃料電池スタック16の電力によりモータ84が駆動されることで走行する。
【0077】
[2]アノード流路48での水素濃度低下を考慮した第1実施例に係る発電電流指令値Ifccomの設定動作の説明
【0078】
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
図4のフローチャートによる処理(制御プログラム)を実行するのは制御装置12(のCPU)であるが、これをその都度参照するのは繁雑になるので、必要に応じて参照する。
【0079】
ステップS1にて、アクセル開度θa、車速Vs、及びSOCに基づき燃料電池スタック16で発生すべき発電電力指令値Pfccomを算出する。
【0080】
ステップS2にて、電圧センサ92により発電電圧Vfcを取得する。
【0081】
ステップS3にて、制御装置12の電流変換器90は、発電電力指令値Pfccomと発電電圧Vfcとに基づき、(1)式を参照して、発電電流指令値Ifccomを算出する。
Ifccom=Pfccom÷Vfc …(1)
【0082】
ステップS4にて、発電電流指令値Ifccomに基づき電流センサ93で検出される発電電流IfcをIfc=Ifccomとする燃料電池スタック16の発電制御を行う。
【0083】
次いで、ステップS5にて、アノード流路48に流通する燃料ガス(水素)の濃度を推定する。
【0084】
この場合、カソード入口圧力センサ67からカソード入口圧力Pciを取得すると共に、アノード入口圧力センサ68からアノード入口圧力Paiを取得し、さらに、温度センサ76により冷却媒体の温度Twを取得する。冷却媒体の温度Twは、燃料電池スタック16の(内部)温度、すなわちアノード流路48内の燃料ガス(水素)の温度に略等しい。
【0085】
そして、この冷却媒体の温度Twと、カソード入口圧力Pciとアノード入口圧力Paiとに基づき、カソード電極42側からアノード電極43側への窒素の透過量を推定することで、アノード流路48中の燃料ガス(水素)の濃度を推定する。なお、水素濃度は、管路144及び/又は管路150に水素濃度センサを設けて計測してもよい。
【0086】
次いで、推定した水素濃度に基づき、ステップS6~S9にて、ブリード弁158の開閉制御を行う。
【0087】
図5のタイムチャート、
図6の発電模式図も利用して、ブリード弁158の開閉制御について説明する。なお、
図6の発電模式図では、酸素及び水素を除く窒素等のガスについては図示を省略している。
【0088】
燃料電池スタック16では、アノード電極43の燃料ガスの濃度が所定濃度(
図5では閾値B)より低下する(燃料ガスが欠乏する)と、固体高分子電解質膜41が劣化するので、ステップS6にて、水素濃度が閾値B未満になったか否かが判定される。
【0089】
ステップS6の水素濃度判定にて、水素濃度が閾値B未満となった(ステップS6:YES)とき、ステップS7にて、ブリード弁158を開弁する。
ブリード弁158を開弁すると、燃料ガス出口連通口148から排出される燃料排ガスが、連絡管路156を介し、管路114を通じ酸化剤ガス入口連通口116からカソード流路47に供給される。
【0090】
そのため、ブリード弁158の開弁中には、
図6の「ブリード弁開弁中」側の描画に示すように、カソード流路47側では、酸化剤ガス量が低下してカソード電極42側の電位が低下し、発電セル電圧Vcell[V]が低下する。これにより、燃料電池スタック16の発電電圧Vfcが低下する。
【0091】
この第1実施例では、発電電圧Vfcが低下しても、上記(1)式を参照して説明したように、電流変換器90の作用下に発電電流指令値Ifccomが増加するように制御しているので、発電電圧Vfcの低下を原因とする発電電力Pfcの低下を回避、あるいは低下を抑制することができる。
【0092】
また、ブリード弁158の開弁中には、インジェクタ30の燃料ガス吐出量を大きくして、燃料ガス入口連通口146から燃料電池スタック16のアノード流路48に供給する燃料ガス量を増量して水素濃度の増加を図る。
【0093】
次いで、ステップS8にて、燃料電池システム14の発電効率の低下を抑制するために、アノード流路48における水素濃度が、閾値A(閾値A>閾値B)(
図5参照)まで回復したか否かを判定する。
【0094】
水素濃度が閾値Aまで回復していない(ステップS8:NO)場合、ステップS1に戻り、ステップS1~S5、ステップS6:YES、ステップS7及びステップS8:NOの判定処理までを繰り返す。
【0095】
水素濃度が閾値Aまで回復した(ステップS8:YES)とき、ステップS9にてブリード弁158を閉弁する。
この場合、
図6の「ブリード弁閉弁中」側の描画に示すように、発電セル40の発電が正常に戻り、発電セル電圧Vcellが通常の電圧まで上昇して回復する。
【0096】
発電電圧Vfcが回復した場合、上記(1)式を参照して説明したように、電流変換器90により発電電流指令値Ifccomが減少するように制御されるので、発電電圧Vfcの回復による上昇を原因とする発電電力Pfcの変化を回避、あるいは低下を抑制することができる。
【0097】
図7は、
図4のフローチャートにより説明した第1実施例の動作の一例を示すタイムチャートである。
【0098】
図7のタイムチャートによれば、発電電力指令値Pfccomは、時間の経過に係わらず一定値に保持される。
図7に示すように、ブリード弁158が開弁されているときに発電電圧Vfcが低下するが、
図4のフローチャートのステップS7、ステップS8:NO、ステップS1~S6:YES(
図5も参照)及びステップS7の順で制御が行われるので、上記(1)式に基づき、その分に対応する分だけステップS4にて発電電流指令値Ifccomが増加するように制御される。このため、燃料電池スタック16の実発電電力Pfcが変動することがない。
【0099】
このように第1実施例によれば、発電電流指令値Ifccomを、電流変換器90により発電電力指令値Pfccomを発電電圧Vfcで割った値とするように制御しているため、ブリード弁158を開弁してもブリード弁158の閉弁中(通常制御中の)発電制御を変更する必要がなく、制御を簡易化することができる。
【0100】
なお、この第1実施例において、ブリード弁158を開弁しているときには、燃料排ガス中の燃料ガスがカソード電極42側での触媒反応により消費しきれなかった分の燃料ガス(窒素も含む)が、
図2中、破線の矢印で示すように、酸化剤ガス出口連通口102から排出される。
【0101】
酸化剤ガス出口連通口102から排出される消費しきれなかった分の燃料ガスは、バイパス弁122を開弁して酸化剤ガスが混合されて、希釈器66及び管路124を通じて希釈されて大気に排出される。
【0102】
この際、バイパス弁122に流通する酸化剤ガス量分、エアポンプ26から余分に酸化剤ガスを吐出させる必要があるが、希釈が必要な燃料ガス量がカソード電極42での電極反応により減少しているので、エアポンプ26の吐出量の増加を抑制することができる。
結果として、エアポンプ26のノイズ・振動を原因とする燃料電池車両10のノイズ・振動に係わる商品性を向上させることができる。
【0103】
[3]アノード流路48での水素濃度低下を考慮した第2実施例に係る発電電流指令値Ifccomの設定動作
図8のフローチャートを参照して、第2実施例に係る発電電流指令値Ifccomの設定動作について説明する。なお、
図8のフローチャートにおいて、
図4のフローチャートに示した処理(ステップ)と対応する処理(ステップ)には同一のステップ番号を付与し、その詳細な説明は省略する。
第2実施例では、第1実施例での
図1中の電流変換器90が、
図2Bの模式的ブロック図に示すように、
図2Aを参照して説明した電流変換器90及び電力・電流変換マップ91を含む電流変換器90Aに代替される。
【0104】
ステップS1にて、第1実施例と同様に、アクセル開度θa、車速Vs、及びSOCに基づき燃料電池スタック16で発生すべき発電電力指令値Pfccomを算出する。
【0105】
次いで、ステップSpにて、ブリード弁158の閉弁時には、
図2Bに示すように、発電電力指令値Pfccomに基づき、電力・電流変換マップ91(燃料電池スタック16の発電電力に対する発電電流の特性)を用いて発電電流指令値Ifccomを設定する第1発電制御を行う。この場合、電流センサ93で検出される発電電流IfcをIfc=Ifccomとする燃料電池スタック16の発電制御を行う。
【0106】
次いで、ステップS5にて、第1実施例と同様に、アノード流路48の水素濃度を推定する。
次に、ステップS6の水素濃度判定にて、水素濃度が閾値B未満となった(ステップS6:YES)とき、ステップS7のブリード弁158の開弁処理に先立ち、ステップSqにて、発電電力指令値Pfccomと発電電圧Vfcとに基づき電流変換器90により発電電流指令値Ifccomを設定する第2発電制御に切り替える(
図2B参照)。
【0107】
すなわち、このステップSqの第2発電制御では、第1実施例でのステップS2と同様に、電圧センサ92により発電電圧Vfcを取得する。次に、ステップS3と同様に、制御装置12の電流変換器90A中の電流変換器90は、発電電力指令値Pfccomと発電電圧Vfcとに基づき、上記(1)式を参照して、発電電流指令値Ifccomを算出する。さらに、ステップS4と同様に、発電電流指令値Ifccomに基づき電流センサ93で検出される発電電流IfcをIfc=Ifccomとする燃料電池スタック16の発電制御を行う。
【0108】
このように、ブリード弁158の開弁中には、ステップS7、ステップS8:NO(
図5も参照)、ステップSqの順で制御が継続され第2発電制御が実行される。
【0109】
図9は、
図8のフローチャートにより説明した第2実施例の動作の一例を示すタイムチャートである。
【0110】
図9のタイムチャートによれば、発電電力指令値Pfccomは、第1実施例と同様に、時間の経過に係わらず一定値に保持される。
【0111】
図9に示すように、ブリード弁158が閉弁されているとき、換言すれば、発電電圧Vfcが酸化剤ガス不足により低下していないときには、ステップS9の処理の後、ステップS1~S5及びステップS6:NOの処理を繰り返すので、電力・電流変換マップ91を使用する第1発電制御により、実発電電力Pfcが電力指令値Pfcomに維持される。
【0112】
また、ブリード弁158が開弁されているときに発電電圧Vfcが低下するが、この場合、ステップS8:NO、ステップSq、ステップS7の処理が実行され、電流指令変換ロジックが第2発電制御に切り替わるので、上記(1)式に基づき、電流変換器90A中の電流変換器90により電流指令値Ifccomが増加されるので、実発電電力Pfcが電力指令値Pfcomに維持される。
【0113】
この第2実施例では、アノード流路48内(アノード電極43側)での水素濃度が閾値Bに近づいてきたら電磁弁であるブリード弁158のタイムラグを考慮して、実際にブリード弁158が開く(ステップS7)前に切り替えている(ステップSq)。
【0114】
ブリード弁158の開弁により発電セル電圧Vcellが低下するのは、カソード流路47(カソード電極42)に燃料排ガスが入ったときであるので、ブリード弁158が開弁してから少し時間がたったとき(例えば、100[ms]程度)に第2発電制御に切り替わっていれば基本的には問題ない。
【0115】
同様に、第1発電制御に戻すタイミングは、カソード流路47(カソード電極42)に燃料排ガスが入らなくなるタイミングでよい。実施上、10~100[ms]程度で軽微になる。
【0116】
アノード流路48(アノード電極43)の水素濃度の増減の傾き(
図5参照)は、上述したように、燃料電池スタック16の内部温度(上記した冷却媒体の温度Twで代替)、カソード入口圧力Pci及びアノード入口圧力Paiに基づき推定が行える。
【0117】
よって、ブリード弁158を開弁するタイミングもこの傾きを考慮して予測しているため、閾値Bを少し高めにして対応することも可能である。
【0118】
なお、この第2実施例においても、ブリード弁158を開弁しているとき、第1実施例で説明したのと同様に、希釈のためのエアポンプ26の吐出量の増加を抑制でき、燃料電池車両10のノイズ・振動に係わる商品性を向上させることができる。
【0119】
[実施形態から把握し得る発明]
ここで、上記実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。なお、理解の便宜のために構成要素の一部には、上記実施形態で用いた符号を付けているが、該構成要素は、その符号を付けたものに限定されない。
【0120】
この発明に係る燃料電池システム14は、燃料ガス供給流路を介してアノード電極43に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極42に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システム14であって、前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁と、前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置12と、前記燃料電池の発電電圧Vfcを取得する電圧取得器と、とを備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値Ifccomに基づき制御するにあたり、前記発電電流指令値Ifccomを、発電電力指令値Pfccomと前記電圧取得器により取得された発電電圧Vfcに基づき設定する。
【0121】
これにより、開閉弁が開弁され燃料排ガスがカソード電極に流通されて燃料電値の発電電圧が低下した場合であっても、発電電圧の低下に基づき発電電流指令値が増加されるので、発電電力が変化することがない。この制御では、制御を変更しないので、制御を簡易化できる。
【0122】
また、この発明に係る燃料電池システムは、燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムであって、前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁と、前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置と、前記燃料電池の発電電圧を取得する電圧取得器と、とを備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、前記開閉弁を閉弁させているときには、発電電力指令値に基づき前記発電電流指令値を設定する第1発電制御を行い、前記開閉弁を開弁させるときには、前記発電電力指令値と前記発電電圧とに基づき前記発電電流指令値を設定する第2発電制御を行う。
【0123】
これにより、発電中に、カソード電極側からアノード電極に透過する窒素ガスの影響によりアノード電極に流通する燃料ガスの濃度が低下して、燃料排ガス流路と酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路の開閉弁を開弁するときには、発電電力指令値と発電電圧とに基づき発電電流指令値を設定するようにしたので、アノード電極の燃料ガス濃度制御(燃料ガス濃度低下防止制御)を行っても燃料電池の発電電力が変化しない、あるいは変化することを抑制できる。
【0124】
また、燃料電池システムにおいては、前記アノード電極に流通する前記燃料ガスの濃度を取得する燃料ガス濃度取得部をさらに備え、前記制御装置は、前記燃料ガス濃度取得部により取得されている前記燃料ガスの濃度が所定値以下の濃度になった場合、前記開閉弁を開弁するようにしてもよい。
【0125】
これにより、アノード電極に流通する燃料ガスの濃度の低下に基づく電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0126】
さらに、燃料電池システムにおいては、前記アノード電極に流通する前記燃料ガスの濃度を取得する燃料ガス濃度取得部をさらに備え、前記制御装置は、前記燃料ガス濃度取得部により取得されている前記水素ガスの濃度が所定値以下の濃度になった場合、前記開閉弁を開弁する前に、前記第1制御から前記第2制御に切り替えるようにしてもよい。
これにより、電解質膜の劣化抑制と、電力指令値に対する適切な制御の両立が可能である。
【0127】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0128】
10…燃料電池車両 12…制御装置
14…燃料電池システム 16…燃料電池スタック
20…出力部 22…酸化剤ガス系デバイス
24…燃料ガス系デバイス 40…発電セル
41…固体高分子電解質膜 42…カソード電極
43…アノード電極 44…電解質膜・電極構造体
45、46…セパレータ 47…カソード流路
48…アノード流路 67…カソード入口圧力センサ
68…アノード入口圧力センサ 80…出力調整器
82…蓄電器 83…SOCセンサ
84…モータ 90、90A…電流変換器
91…電力・電流変換マップ 156…連絡管路
158…ブリード弁
【手続補正書】
【提出日】2021-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
この発明の一態様によれば、開閉弁が開弁され燃料排ガスがカソード電極に流通されて燃料電池の発電電圧が低下した場合であっても、発電電圧の低下に基づき発電電流指令値が増加されるので、発電電力の変化を回避乃至抑制できる。この制御では、制御を変更しないので、制御を簡易化できる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
なお、この第1実施例において、ブリード弁158を開弁しているときには、燃料排ガス中の燃料ガスがカソード電極42側での触媒反応により消費しきれなかった分の燃料ガス(窒素も含む)が、
図3中、破線の矢印で示すように、酸化剤ガス出口連通口102から排出される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
図9に示すように、ブリード弁158が閉弁されているとき、換言すれば、発電電圧Vfcが酸化剤ガス不足により低下していないときには、ステップS9の処理の後、ステップS1~S5及びステップS6:NOの処理を繰り返すので、電力・電流変換マップ91を使用する第1発電制御により、実発電電力Pfcが電力指令値
Pfccomに維持される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
また、ブリード弁158が開弁されているときに発電電圧Vfcが低下するが、この場合、ステップS8:NO、ステップSq、ステップS7の処理が実行され、電流指令値変換ロジックが第2発電制御に切り替わるので、上記(1)式に基づき、電流変換器90A中の電流変換器90により電流指令値Ifccomが増加されるので、実発電電力Pfcが電力指令値Pfccomに維持される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
この発明に係る燃料電池システム14は、燃料ガス供給流路を介してアノード電極43に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極42に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システム14であって、前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁と、前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置12と、前記燃料電池の発電電圧Vfcを取得する電圧取得器と、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値Ifccomに基づき制御するにあたり、前記発電電流指令値Ifccomを、発電電力指令値Pfccomと前記電圧取得器により取得された発電電圧Vfcに基づき設定する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0121】
これにより、開閉弁が開弁され燃料排ガスがカソード電極に流通されて燃料電池の発電電圧が低下した場合であっても、発電電圧の低下に基づき発電電流指令値が増加されるので、発電電力が変化することがない。この制御では、制御を変更しないので、制御を簡易化できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
また、この発明に係る燃料電池システムは、燃料ガス供給流路を介してアノード電極に供給される燃料ガスと、酸化剤ガス供給流路を介してカソード電極に供給される酸化剤ガスと、により発電する燃料電池を有する燃料電池システムであって、前記アノード電極から排出された燃料排ガスを流通させる燃料排ガス流路と、前記燃料排ガス流路と前記酸化剤ガス供給流路とを連通させる接続流路と、前記接続流路を開閉する開閉弁と、前記燃料電池への前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスの供給状態を制御する制御装置と、前記燃料電池の発電電圧を取得する電圧取得器と、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池の発電状態を発電電流指令値に基づき制御するにあたり、前記開閉弁を閉弁させているときには、発電電力指令値に基づき前記発電電流指令値を設定する第1発電制御を行い、前記開閉弁を開弁させるときには、前記発電電力指令値と前記発電電圧とに基づき前記発電電流指令値を設定する第2発電制御を行う。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
さらに、燃料電池システムにおいては、前記アノード電極に流通する前記燃料ガスの濃度を取得する燃料ガス濃度取得部をさらに備え、前記制御装置は、前記燃料ガス濃度取得部により取得されている前記水素ガスの濃度が所定値以下の濃度になった場合、前記開閉弁を開弁する前に、前記第1発電制御から前記第2発電制御に切り替えるようにしてもよい。
これにより、電解質膜の劣化抑制と、発電電力指令値に対する適切な制御の両立が可能である。