IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファルテックの特許一覧

<>
  • 特開-車両用外装部品 図1
  • 特開-車両用外装部品 図2
  • 特開-車両用外装部品 図3
  • 特開-車両用外装部品 図4
  • 特開-車両用外装部品 図5
  • 特開-車両用外装部品 図6
  • 特開-車両用外装部品 図7
  • 特開-車両用外装部品 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155657
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両用外装部品
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20221006BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60R13/04
H01Q1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058996
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】碇 龍之介
【テーマコード(参考)】
3D023
5J046
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AA06
3D023AB11
3D023AC12
3D023AD02
3D023AD06
3D023AD12
5J046AA13
5J046RA03
(57)【要約】
【課題】金属光沢を有すると共にインジウムを用いる場合よりも電波透過率を向上可能な車両用外装部品を提供する。
【解決手段】電波透過性を有するレーダカバー10であって、電波透過性を有する樹脂製の基部12aと、基部12aに支持されると共に円状の微細開口を複数有する銀膜層12cとを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波透過性を有する車両用外装部品であって、
電波透過性を有する樹脂製の基材と、
前記基材に支持されると共に円状の微細開口を複数有する銀膜層と
を備えることを特徴とする車両用外装部品。
【請求項2】
直径寸法が10μm以上の前記微細開口が前記銀膜層に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用外装部品。
【請求項3】
前記銀膜層の厚さ寸法が15nm以上から40nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用外装部品。
【請求項4】
透明かつ電波透過性を有すると共に前記銀膜層を前記基材と反対側から覆う保護コート層を備えることを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の車両用外装部品。
【請求項5】
電波透過性を有すると共に前記基材と前記銀膜層との間に介挿されたベースコート層を備えることを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の車両用外装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用外装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波等の電波を用いて車両の周囲の障害物等を検知するレーダユニットが車両に搭載されている。このようなレーダユニットは、車両の外部の人から視認されないよう、電波透過性を有するレーダカバー等の車両用外装部品に覆われた状態で配置されることが一般的である。
【0003】
ところで、車両用外装部品は、外部から視認可能であることから、車両の外観印象に大きく影響する。このため、車両用外装部品は、電磁波の透過性を確保しつつ、意匠性を高める必要がある。例えば、特許文献1には、電磁波が透過可能なインジウムからなる薄膜を設けることにより、金属光沢が付与された車両用カバー部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-49522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インジウムからなる薄膜は、真空蒸着やスパッタリングによって形成することで、インジウムからなる多数の島部の間に隙間が形成された海島構造とすることができる。このような海島構造により、電磁波が島部の間の隙間を透過でき、インジウムからなる薄膜が電磁波透過性を有することになる。ところが、真空蒸着やスパッタリングによって形成されるインジウムの隙間は、線状で極めて幅寸法が小さく、数nm程度の幅寸法である。このため、電磁波の多くの成分はインジウムの薄膜を透過することができず、インジウムの薄膜における電波の透過率には限界がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、金属光沢を有すると共にインジウムを用いる場合よりも電波透過率を向上可能な車両用外装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の第1の態様は、電波透過性を有する車両用外装部品であって、電波透過性を有する樹脂製の基材と、上記基材に支持されると共に円状の微細開口を複数有する銀膜層とを備えるという構成を採用する。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、直径寸法が10μm以上の上記微細開口が上記銀膜層に設けられているという構成を採用する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、上記銀膜層の厚さ寸法が15nm以上から40nm以下であるという構成を採用する。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第1~第3いずれかの態様において、透明かつ電波透過性を有すると共に上記銀膜層を上記基材と反対側から覆う保護コート層を備えるという構成を採用する。
【0012】
本発明の第5の態様は、上記第1~第4いずれかの態様において、電波透過性を有すると共に上記基材と上記銀膜層との間に介挿されたベースコート層を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、電波透過性を有する樹脂の基材に支持された銀膜層を備える。このため、本発明の車両用外装部品は、銀膜層に光が反射して得られる金属光沢を有する。さらに、銀膜層には、円状の微細開口が複数設けられている。これらの微細開口は、インジウムの薄膜によって形成される海島構造に見られる線状の隙間でなく、広い面積を確保できる円状の開口である。このため、本発明によれば、銀膜層における電波の透過可能領域を広く確保することが可能となる。したがって、本発明によれば、車両用外装部品において、金属光沢を有すると共にインジウムを用いる場合よりも電波透過率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるレーダカバーを備えるラジエータグリルの正面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの拡大正面図である。
図3】(a)が本発明の一実施形態のレーダカバーの模式的な断面図であり、(b)が本発明の一実施形態のレーダカバーが備えるインナコアの模式的な断面図である。
図4】本発明の一実施形態におけるレーダカバーが備える銀膜層の拡大模式図であり、(a)が平面図であり、(b)が断面図である。
図5】本発明の一実施形態のレーダカバーの製造工程を説明するための模式図である。
図6】本発明の一実施形態のレーダカバーが備える銀膜層の表面拡大写真である。
図7】本発明の一実施形態のレーダカバーが備える銀膜層の表面拡大写真である。
図8】本発明の変形例であるラジエータグリルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用外装部品の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本第実施形態のレーダカバー10(車両用外装部品)を備えるラジエータグリル1の正面図である。また、図2は、本実施形態のレーダカバー10の拡大正面図である。また、図3は、(a)が本実施形態のレーダカバー10の模式的な断面図であり、(b)が本実施形態のレーダカバー10が備えるインナコア12の模式的な断面図である。
【0017】
ラジエータグリル1は、車両のエンジンルームに通じる開口を塞ぐように車両の前面に設けられており、エンジンルームへの通気を確保しかつエンジンルームへの異物の進入を防止している。ラジエータグリル1の中央には、エンジンルーム内に配置されるレーダユニットRに対向するようにしてレーダカバー10が設けられている。なお、ラジエータグリル1において、レーダカバー10を除く部位は、電波透過性を有する必要性がないことから、例えばクロム(Cr)によってめっき処理されている。
【0018】
レーダユニットR(図3(a)参照)は、例えばミリ波を発信する発信部、反射波を受信する受信部、及び、演算処理を行う演算部等を有している。このレーダユニットRは、レーダカバー10を透過する電波の送受信を行い、受信した電波に基づいて車両の周囲状況を検知する。例えば、レーダユニットRは、障害物までの距離や障害物の相対速度等を算出して出力する。
【0019】
レーダカバー10は、レーダユニットRを車両の正面側から見て覆うように配置されている。このレーダカバー10は、図2に示すように、車両の正面側から見て、車両メーカのエンブレムを示す図形や文字等を表す光輝領域10Aと、当該光輝領域10Aの視認性を向上させる黒色領域10Bを有する部品である。このようなレーダカバー10は、図3(a)に示すように、透明部材11と、インナコア12と、ベース部材13(背面部材)とを備えている。
【0020】
透明部材11は、最も車両の外側に配置される略矩形状の透明材料により形成される部位である。この透明部材11は、車両の外部からのインナコア12の視認性を高めるため、表側の面が円滑面とされている。また、透明部材11の裏側の面には、インナコア12が配置される凹部11aが形成されている。また、透明部材11の裏側の面の凹部11aが設けられていない領域は、ベース部材13との固着面とされている。
【0021】
凹部11aは、インナコア12を収容する部位であり、収容されたインナコア12を車両の前方側から立体的に視認可能とする。この凹部11aは、車両メーカのエンブレム等の図形や文字等の形状に沿って設けられている。このような凹部11aにインナコア12が収容されることによって、上述の光輝領域10Aが形成される。
【0022】
このような透明部材11は、凹部11aが設けられた本体部15と、本体部15の表面に設けられて上述の円滑面を形成するハードコート層16とを有している。本体部15は、例えば、有色透明のPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されており、1.5mm~10mm程度の厚さとされている。ハードコート層16は、本体部15の表面を覆う透明なコーティング層である。このハードコート層16は、本体部15の表面が傷つくことを抑止する。
【0023】
インナコア12は、図3(b)に示すように、基部12a(基材)と、ベースコート層12bと、銀膜層12cと、トップコート層12d(保護コート層)とを備えている。基部12aは、電波透過性を有する樹脂製の部材であり、射出成形によって成形されている。基部12aは、例えばABS、PC又はPET等の電波透過性を有する合成樹脂によって形成されている。この基部12aは、透明部材11の凹部11aを埋設する凸状の形状とされており、透明部材11の凹部11aに嵌合される。
【0024】
ベースコート層12bは、電波透過性を有すると共に基部12aと銀膜層12cとの間に介挿されている。このベースコート層12bは、基部12aと銀膜層12cとの密着性を向上させる。このベースコート層12bは、例えば、透明な合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成されている。
【0025】
銀膜層12cは、基部12aの表側の面(透明部材11側の面)に形成されており、基部12aに被さるように配置されて支持されると共に金属光輝性を備える層である。この銀膜層12cは、銀(Ag)からなる薄膜である。このような銀膜層12cに光が反射することで金属光沢が得られる。
【0026】
図4は、銀膜層12cの拡大模式図であり、(a)が平面図であり、(b)が断面図である。これらの図に示すように、銀膜層12cは、複数の微細開口12c1を有している。微細開口12c1は、銀膜層12cを貫通し、ベースコート層12bを介して、基部12aを露出させる開口である。各々の微細開口12c1は、平面視にて円状に形成されており、直径寸法は様々である。少なくとも一部の微細開口12c1は、直径寸法10μm以上に形成されることが好ましい。
【0027】
なお、図4(a)に示すように、微細開口12c1の平面視形状は、必ずしも真円ではない。このため、直径寸法は、例えば、微細開口12c1が食み出すことなく内接される最小の真円の直径寸法とすることができる。また、銀膜層12cの厚さ寸法は、例えば15nm~40nmとすることができる。
【0028】
インジウム(In)を真空蒸着やスパッタリングで成膜した場合には、互いの間に隙間を有して配置される複数の島部を有する構造(海島構造)が形成される。海島構造における複数の島部の間に形成される多数の微細な線状の隙間はミリ波等の電波を透過な領域である。この微細な線状の隙間は、連続して形成されており、幅寸法は数nm程度である。つまり、インジウム(In)を真空蒸着やスパッタリングで成膜した場合には、電波の透過領域は、幅寸法は幅寸法が数nm程度の線状の隙間になる。
【0029】
これに対して、本実施形態のレーダカバー10においては、例えば直径寸法10μm以上の微細開口12c1が複数設けられた銀膜層12cを光輝性膜として有している。これらの微細開口12c1が電波の透過領域となる。このため光輝性膜として、インジウム(In)の薄膜を設ける場合と比較して、電波を透過可能な領域が拡大する。したがって、本実施形態のレーダカバー10における銀膜層12cは、電波透過率が高い光輝性膜となる。
【0030】
図3に戻り、トップコート層12dは、銀膜層12cを覆うように銀膜層12c上に形成されており、銀膜層12cを保護する透明な層である。このトップコート層12dは、例えば透明(着色透明を含む)な合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成されている。また、トップコート層12dは、酸化ケイ素(SiOx)からなる透明セラミックコート層とすることもできる。この場合には、クリヤー塗装等によって形成される樹脂からなるトップコート層と比較して高い耐熱性を有すると共に、高い電波透過性を有する。
【0031】
なお、トップコート層12dは、銀膜層12cの微細開口12c1の内部に入り込んで形成されている。つまり、トップコート層12dは、微細開口12c1を介してベースコート層12bと接続している。このため、銀膜層12cがトップコート層12dと基部12aに対して強固に固着されたベースコート層12bとに挟持され、銀膜層12cの密着性が向上する。
【0032】
ベース部材13は、透明部材11の裏側に固着される部位であり、黒色の樹脂材料から形成されている。このベース部材13は、エンジンルーム側に突出する係合部13aを有している。この係合部13aは、先端部が爪状に成形されており、当該先端部が例えばラジエータグリル本体に係止される。このように透明部材11の裏側の面に対して固着されたベース部材13は、透明部材11の外側から視認可能とされており、上述の黒色領域10Bを形成している。このベース部材13は、光輝領域10A以外の領域を黒色に視認させ、相対的に光輝領域10Aの視認性を向上させる。
【0033】
このようなベース部材13は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、有色のPC、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、0.5mm~10mm程度の厚さとされている。
【0034】
続いて、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について説明するための概略図である。まず、図5(a)に示すように、透明部材11の本体部15を形成する。例えば、透明部材11は、樹脂材料を射出成形することによって形成される。この射出成形により、凹部11aを有する本体部15を形成することができるため、後工程により凹部11aを形成する必要はない。
【0035】
続いて、図5(b)に示すように、本体部15の表面側(車両外側に向く面)には、耐久性等を向上させるためのハードコート層16を形成する。ここでは、例えばハードコート層の形成材料を本体部15の表面に塗布及び乾燥させることによってハードコート層16を形成する。
【0036】
次に、図5(c)に示すように、インナコア12の基部12aを形成する。例えば、基部12aは、射出成形により形成される。続いて、図5(d)に示すように、ベースコート層12b、銀膜層12c及びトップコート層12dを形成する。例えば、基部12aに対してクリヤー塗装を行い、その後乾燥させることによりベースコート層12bを形成する。また、銀膜層12cの形成材料をベースコート層12b上に塗布し、その形成材料を乾燥させることによって、ベースコート層12b上に銀膜層12cを形成する。また、銀膜層12cの表面に対してクリヤー塗装を行い、その後乾燥させることにより、トップコート層12dを形成する。なお、インナコア12の形成は、図5(a)及び図5(b)で示した透明部材11の形成を待って行う必要はない。図5(a)及び図5(b)で示した透明部材11の形成工程と並行して、インナコア12を形成することによって、レーダカバー10の製造時間を短縮することができる。
【0037】
銀膜層12cの形成材料については、特に限定されるものではないが、例えば、アルコール溶媒中に高分子分散剤が溶解され、さらに銀化合物が分散されたアルコール溶液を用いることができる。例えば、高分子分散剤としては、スチレン-無水マレイン酸樹脂構造を有し、無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコールまたは末端アミノ基のポリアルキレングリコールで変性されているものからなる酸価が150以下のものを用いることができる。また、アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール及び1-メトキシ-2-プロパノールを用いることができる。また、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール鎖とポリプロピレングリコール鎖のモル比率が6/4~8/1であり、分子量は500~3000のものを用いることができる。
【0038】
なお、銀膜層12cの厚さ寸法や微細開口12c1の大きさ及び密度は、銀膜層12cの形成材料における銀化合物の濃度や、銀膜層12cの形成材料の塗布回数によって調整することが可能である。
【0039】
次に、図5(e)に示すように、インナコア12を透明部材11の凹部11aに嵌合する。次に、図5(f)に示すように、ベース部材13を形成する。ここでは、凹部11aにインナコア12が設置された透明部材11を、射出成形用の金型の内部に配置し、透明部材11の背面側に溶融した樹脂を射出するインサート成形を行うことで、ベース部材13を形成する。このようなベース部材13は、インサート成形時の熱により透明部材11と溶着され、インナコア12を覆うように配置される。これによって、インナコア12が透明部材11に対して当接状態で固定される。
【0040】
以上のような工程で本実施形態のレーダカバー10が製造される。このような本実施形態のレーダカバー10は、電波透過性を有するレーダカバー10であって、電波透過性を有する樹脂製の基部12aと、基部12aに支持されると共に円状の微細開口12c1を複数有する銀膜層12cとを備える。
【0041】
このような本実施形態のレーダカバー10においては、電波透過性を有する樹脂の基部12aに支持された銀膜層12cを備える。このため、本実施形態のレーダカバー10は、銀膜層12cに光が反射して得られる金属光沢を有する。さらに、銀膜層12cには、円状の微細開口12c1が複数設けられている。これらの微細開口12c1は、インジウム(In)の薄膜によって形成される海島構造に見られる線状の隙間でなく、広い面積を確保できる円状の開口である。このため、本実施形態のレーダカバー10によれば、銀膜層12cにおける電波の透過可能領域を広く確保することが可能となる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、金属光沢を有すると共にインジウム(In)を用いる場合よりも電波透過率を向上させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、直径寸法が10μm以上の微細開口12c1が銀膜層12cに設けられている。このような本実施形態のレーダカバー10によれば、開口面積が広く確保可能な直径寸法が10μm以上の微細開口12c1を銀膜層12cに設けられるため、電波透過率をさらに向上させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、後述するように銀膜層12cの厚さ寸法が15nm以上から40nm以下とすることによって、銀膜層12cに微細開口12c1を確実に設けることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、透明かつ電波透過性を有すると共に銀膜層12cを基部12aと反対側から覆うトップコート層12dを備えている。このため、本実施形態のレーダカバー10によれば、銀膜層12cによる金属光沢を、トップコート層12dを介して視認可能となる。また、トップコート層12dによって銀膜層12cを保護することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、電波透過性を有すると共に基部12aと銀膜層12cとの間に介挿されたベースコート層12bを備えている。このため、銀膜層12cの下地層との密着性を向上させることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、銀化合物を含むアルコール溶液を乾燥させることで形成された銀膜層12cを備えているため、ベースコート層12bと、トップコート層12dとで銀膜層12cを挟持する構造で、耐候性が高くて実用性の高い車両用外装部品となる。例えば、一般的な銀鏡塗装では、金属膜とトップコート層との間に腐食防止層が介挿され、金属膜とベースコート層との間に表面調整剤層が介挿される。このため、本実施形態のレーダカバー10においては、一般的な銀鏡塗装と比較して、光輝性を維持するための層構造を簡素化することが可能となる。
【0047】
図6及び図7は、銀膜層12cの表面拡大写真であり、厚さ寸法を変更した場合における銀膜層12cの表面の変化の様子を示す。なお、図6及び図7において、格子の1マスにおける長辺の長さ寸法は400μmである。また、図6及び図7において、黒く示された部位が微細開口12c1である。
【0048】
図6(a)は、厚さ寸法が15nmの銀膜層12cの表面の様子を示す光学顕微鏡の写真である。また、図6(b)は、厚さ寸法が20nmの銀膜層12cの表面の様子を示す光学顕微鏡の写真である。また、図6(c)は、厚さ寸法が23.2nmの銀膜層12cの表面の様子を示す光学顕微鏡の写真である。また、図7(d)は、厚さ寸法が35nmの銀膜層12cの表面の様子を示す光学顕微鏡の写真である。また、図7(e)は、厚さ寸法が38.3nmの銀膜層12cの表面の様子を示す光学顕微鏡の写真である。
【0049】
これらの写真から明らかなように、銀膜層12cの厚さ寸法が15nm~38.3nmである場合には、微細開口12c1の密度や大きさに変化はあるものの、微細開口12c1が形成されることが分かった。この結果から、銀膜層12cの厚さ寸法が少なくとも15nm以上から40nm以下である場合には、微細開口12c1が形成されているものと考えられる。
【0050】
また、図6(a)に示す膜厚寸法が15nmの銀膜層12cを測色した結果、L値が41.04であり、b値が2.28であった。また、図6(b)に示す膜厚寸法が20nmの銀膜層12cを測色した結果、L値が46.17であり、b値が0.75であった。また、図6(c)に示す膜厚寸法が23.3nmの銀膜層12cを測色した結果、L値が52.52であり、b値が-0.10であった。また、図7(d)に示す膜厚寸法が35nmの銀膜層12cを測色した結果、L値が53.48であり、b値が0.21であった。また、図7(e)に示す膜厚寸法が38.3nmの銀膜層12cを測色した結果、L値が54.90であり、b値が0.37であった。
【0051】
これらの測色結果から、銀膜層12cの厚さ寸法が15nm~38.3nmである場合には、漆黒めっき相当の金属光沢が得られることが分かった。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、本発明の車両用外装部品をレーダカバー10に適用した例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。図8は、レーダカバー10を備えないラジエータグリル1Aの正面図である。このようなラジエータグリル1Aに対して本発明を適用することも可能となる。この場合には、例えば、ラジエータグリル1Aの全体あるいは電波を透過する部位を、電波透過性を有する樹脂製の基材と、基材に支持されると共に円状の微細開口を複数有する銀膜層とを備える構成とする。
【0054】
また、上記実施形態においては、透明部材11と、インナコア12と、ベース部材13とを備えるレーダカバーに対して本発明を適用した例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、銀膜層12cが透明部材11に対して成膜され、インナコア12の基部12a等がベース部材13と一体化されたレーダカバーに対して本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1……ラジエータグリル、1A……ラジエータグリル(車両用外装部品)、10……レーダカバー(車両用外装部品)、10A……光輝領域、10B……黒色領域、11……透明部材、11a……凹部、12……インナコア、12a……基部、12b……ベースコート層、12c……銀膜層、12d……トップコート層(保護コート層)、13……ベース部材、13a……係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8