(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155660
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】可搬式火災感知・消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 13/00 20060101AFI20221006BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20221006BHJP
A62C 37/40 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A62C13/00
A62C35/02 A
A62C37/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058999
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 涼平
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA10
2E189BB08
2E189BD06
(57)【要約】
【課題】消火剤放出ノズルの下方に制御部が設けられた場合であっても、消火剤が制御部に降りかからないようにした可搬式火災感知・消火装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る可搬式火災感知・消火装置1は、消火剤を封入した消火剤タンク3と、消火剤タンク3の上方に延出する支持部材5と、支持部材5の上部に設けられた火災感知器7と、支持部材5における火災感知器7の下方に配設されて消火剤タンク3の消火剤を放出する消火剤放出ノズル9と、消火剤放出ノズル9の下方に設けられて火災感知器7の感知信号に基づいて消火剤放出ノズル9による消火剤の放出制御を行う制御部11とを備え、支持部材5における消火剤放出ノズル9の下方に、消火剤放出ノズル9から放出される消火剤が制御部11に降りかかるのを防止するための傘部材13を設けたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式の火災感知・消火装置であって、
消火剤を封入した消火剤タンクと、該消火剤タンクの上方に延出する支持部材と、該支持部材の上部に設けられた火災感知器と、前記支持部材における前記火災感知器の下方に配設されて前記消火剤タンクの消火剤を放出する消火剤放出ノズルと、該消火剤放出ノズルの下方に設けられて前記火災感知器の感知信号に基づいて前記消火剤放出ノズルによる消火剤の放出制御を行う制御部とを備え、
前記支持部材における前記消火剤放出ノズルの下方に、該消火剤放出ノズルから放出される消火剤が前記制御部に降りかかるのを防止するための傘部材を設けたことを特徴とする可搬式火災感知・消火装置。
【請求項2】
前記支持部材は所定の間隔を離して配設される共に上端部の高さ調整可能な一対の縦部材と、該一対の縦部材に架設された横部材を有し、該横部材に前記消火剤放出ノズル及び前記傘部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の可搬式火災感知・消火装置。
【請求項3】
前記消火剤放出ノズルの上方に前記火災感知器の監視範囲を撮影するカメラが配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬式火災感知・消火装置。
【請求項4】
前記傘部材は、上辺部と下辺部を有する板状の部材からなり、前記上辺部よりも前記下辺部の長さが長く下方が広幅の形状であり、前記下辺部側が消火剤の放射方向に突出するように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可搬式火災感知・消火装置。
【請求項5】
前記傘部材は、前壁と該前壁の両側に設けられた側壁とを有し、前記前壁は平板によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可搬式火災感知・消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビル等の建築現場のような建築物が完成していないような環境の任意の場所に配置されて、火災感知と消火を行う可搬式火災感知・消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬式火災感知・消火装置に関しては、例えば特許文献1に「消火剤を封入した消火剤タンクと、該消火剤タンクを移動するための運搬手段と、前記消火剤タンクに設けられたフレームと、該フレームに上端部の高さ調整可能に取り付けられた支持部材と、該支持部材の上部に設けられた火災感知器と、前記支持部材又は前記フレームに設けられて前記消火剤タンクの消火剤を放出する消火剤放出ノズルと、前記火災感知器の感知信号に基づいて前記消火剤放出ノズルによる消火剤の放出制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする可搬式火災感知・消火装置」(特許文献1の請求項1参照)が開示されている。
【0003】
特許文献1においては、消火剤放出ノズルと制御部との配置関係に関し、消火剤放出ノズルが制御部よりも上方に配置されている。
これは、消火剤放出ノズルは消火剤の放射範囲を広くする観点から高い位置が好ましく、他方、制御部にはスイッチ等の操作部が設けられることから人が操作できる低い位置が好ましいからである。
このため、必然的に制御部は消火剤放出ノズルよりも下方に配置されることになる(特許文献1の
図1、
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消火剤放出ノズルの下方に制御部が設けられている場合、消火剤が放出された際に制御部に消火剤が降りかかってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、消火剤放出ノズルの下方に制御部が設けられた場合であっても、消火剤が制御部に降りかからないようにした可搬式火災感知・消火装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る可搬式火災感知・消火装置は、可搬式の火災感知・消火装置であって、
消火剤を封入した消火剤タンクと、該消火剤タンクの上方に延出する支持部材と、該支持部材の上部に設けられた火災感知器と、前記支持部材における前記火災感知器の下方に配設されて前記消火剤タンクの消火剤を放出する消火剤放出ノズルと、該消火剤放出ノズルの下方に設けられて前記火災感知器の感知信号に基づいて前記消火剤放出ノズルによる消火剤の放出制御を行う制御部とを備え、
前記支持部材における前記消火剤放出ノズルの下方に、該消火剤放出ノズルから放出される消火剤が前記制御部に降りかかるのを防止するための傘部材を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記支持部材は所定の間隔を離して配設される共に上端部の高さ調整可能な一対の縦部材と、該一対の縦部材に架設された横部材を有し、該横部材に前記消火剤放出ノズル及び前記傘部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記消火剤放出ノズルの上方に前記火災感知器の監視範囲を撮影するカメラが配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記傘部材は、上辺部と下辺部を有する板状の部材からなり、前記上辺部よりも前記下辺部の長さが長く下方が広幅の形状であり、前記下辺部側が消火剤の放射方向に突出するように傾斜して配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記傘部材は、前壁と該前壁の両側に設けられた側壁とを有し、前記前壁は平板によって形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、消火剤放出ノズルの下方に、傘部材を設けたことにより、消火剤が放出された際に消火剤が制御部に降りかかるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る可搬式火災感知・消火装置の斜視図である(支持部材を延ばした監視時の状態)。
【
図2】本発明の実施の形態に係る可搬式火災感知・消火装置の斜視図である(支持部材を縮めた移動時の状態)。
【
図3】本発明の実施の形態に係る傘部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る可搬式火災感知・消火装置1は、
図1、
図2に示すように、消火剤を封入した消火剤タンク3と、消火剤タンク3の上方に延出する支持部材5と、支持部材5の上部に設けられた火災感知器7と、支持部材5における火災感知器7の下方に配設されて消火剤タンク3の消火剤を放出する消火剤放出ノズル9と、消火剤放出ノズル9の下方に設けられて火災感知器7の感知信号に基づいて消火剤放出ノズル9による消火剤の放出制御を行う制御部11と、支持部材5における消火剤放出ノズル9の下方に設けられた傘部材13と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<消火剤タンク>
消火剤タンク3は、消火剤を封入するためのものであり、消火剤としては例えば中性強化液が用いられる。
消火剤タンク3は、上下端部の鏡板部分が曲面になった円筒状の容器からなり、容量は例えば40L前後のものを用いる。もっとも、本発明において消火剤タンク3の形状や容量が限定されるものではなく、手動にて運搬可能なものであればよい。
【0016】
消火剤タンク3には、運搬手段として車輪15が取り付けられており、本装置を手動にて、すなわち作業者が手で押して所望の場所に移動させることができるようになっている。
本例の車輪15は、例えば
図1に示すように、消火剤タンク3の下端の後ろ寄りに一対取り付けられている。
なお、本発明の装置を可搬式とするための運搬手段としては、
図1に示すような車輪15に限られず、作業者が手動で所望の場所に移動させるために機能するものであれば他の態様であってもよい。
【0017】
<支持部材>
支持部材5は、消火剤タンク3の上方に延出する部材であって、火災感知器7、消火剤放出ノズル9及び傘部材13が取り付けられるものである。
具体的には、所定の間隔を離して配設されると共に上端部の高さ調整可能な一対の縦部材5aと、一対の縦部材5aに架設された横部材5bを有し、横部材5bに消火剤放出ノズル9及び傘部材13が取り付けられている。
また、一対の縦部材5aの上端にはこれらに架設された上端横部材5cが設けられ、上端横部材5cに火災感知器7と火災感知器7の監視範囲を撮影するカメラ17が配設されている。
【0018】
本実施の形態の支持部材5は、高さ調整可能になっており、運搬時には
図2に示すように、支持部材5を縮めた状態にし、所定場所に設置する際には、
図1に示すように、延ばした状態にする。
縦部材5aは、テレスコピックパイプで構成された伸縮可能なものであり、また上端部の位置が最も高い状態(
図1参照)と、最も低い状態(
図2参照)の2つの状態で固定可能になっている。
運搬時には、支持部材5の上端部の位置を最も低い状態にすることで、狭い箇所の通過も容易にでき、運搬が容易になる。他方、監視時には、支持部材5の位置を最も高い状態にすることで、火災の監視領域および消火液の放出エリアの広範囲化が可能になる。
【0019】
なお、消火剤タンク3の周囲には、制御部11等の機器類の保持等のためのフレーム19が設けられている。
フレーム19を構成するものとしては、例えば、消火剤タンク3を手で押して移動する際に作業者が把持する手押しハンドル19a、制御部11を保持するための制御部保持部19bがある。
なお、フレーム19には警報灯21が設けられている。警報灯21は制御部11によって制御され、常時は緑色に点灯し、火災感知器7によって火災が感知されたときには赤色に点灯又は点滅する。
【0020】
<火災感知器>
火災感知器7は、上端横部材5cに設けられて、周辺の火災を感知するものであり、例えば赤外線式炎感知器によって構成される。
火災感知器7は、所定の監視範囲を有する複数(本例では、第1炎感知器7aと第2炎感知器7bの2個)の炎感知器を有し、複数の炎感知器は監視範囲を一部重複させて配設されている。
第1炎感知器7aと第2炎感知器7bは監視範囲を一部重複させており、全体として可搬式火災感知・消火装置1の位置を中心として、前方(傘部13のある側)の床面の例えば半径5m、左右方向に200°を監視範囲としている。
【0021】
<消火剤放出ノズル>
消火剤放出ノズル9は、横部材5bに取り付けられ、消火剤タンク3から消火剤供給配管(図示なし)を介して供給される消火剤を放出するものである。
消火剤放出ノズル9は、第1消火剤放出ノズル9a、第2消火剤放出ノズル9b及び第3消火剤放出ノズル9cの3つで構成され、各ノズルからはそれぞれの放出領域に均等に消火剤が放出できるように構成されている。
第1消火剤放出ノズル9aと第2消火剤放出ノズル9b、第2消火剤放出ノズルと第3消火剤放出ノズル9cは、放出領域を一部重複させ、火災感知器7の監視範囲をカバーしており、第1炎感知器7aが火災感知したときには、第1消火剤放出ノズル9a及び第2消火剤放出ノズル9bから消火剤を放出し、第2炎感知器7bが火災感知したときには、第2消火剤放出ノズル9b及び第3消火剤放出ノズル9cから消火剤を放出する。
【0022】
<制御部>
制御部11には、火災感知器7の感知信号が入力され、該感知信号に基づいて、制御部11は消火剤放出ノズル9からの消火剤の放出制御を行う。
【0023】
なお、本実施の形態では、上記の構成に加えて、カメラ17(可視光カメラ及び赤外線カメラ)が、火災感知器7と同様に支持部材5の上端部に設置されている。
カメラ17は上端横部材5cに取り付けられており、消火剤放出ノズル9よりも上方に配置されているため、消火剤が降りかかることがない。
なお、制御部11は、火災感知器7が火災を感知したとき及び/又は消火剤放出ノズル9から消火剤が放出された後、カメラ17による撮影を行うカメラ制御機能と、カメラ17で撮影した画像データを外部の機器に無線送信する送信機能、警報灯21を制御する機能を有している。
【0024】
<傘部材>
傘部材13は、支持部材5における消火剤放出ノズル9の下方、消火剤放出方向で、かつ制御部11の上方に設けられ、消火剤放出ノズル9から放出される消火剤が制御部11に降りかかるのを防止する機能を有している。より具体的には、横部材5bへの取付状態で傘部材13を平面視したときに、制御部11における最も前側の部分が傘部材13の投影面積の内側に入るようになっている。
傘部材13を設ける位置は消火剤放出ノズル9の下方であればよいが、本実施の形態では消火剤放出ノズル9と同様に横部材5bに取り付けられている。
【0025】
傘部材13は、
図3に示すように、上辺部13aと下辺部13bを有する板状の部材からなり、上辺部13aよりも下辺部13bの長さが長く下方が広幅の台形状の前壁13cと、前壁13cの両側に設けられた側壁13dとを有し、前壁13cは平板によって形成されている。前壁13cの上方に傘部材13を横部材5bに取り付けるための取付部13eが設けられている。
【0026】
前壁13cは、下辺部13b側が消火剤の放射方向に突出するようにα°だけ傾斜している(
図3(b)参照)。傾斜角度αは、例えば20°に設定されているが、傘部材13と消火剤放出ノズル9の相対的な位置関係により、消火剤が制御部11に降りかからない角度に適宜設定すればよい。
この点、傘部材13を消火剤放出ノズル9と同じ横部材5bに取り付けることで、消火剤放出ノズル9の直下に配置され、傾斜角度αを小さくすることができる。これにより、傘部材13が火災感知器7の監視範囲内に入り難くなっている。
【0027】
また、前壁13cを平板によって構成したのも、火災感知器7の監視範囲内に入り難くするためである。前壁13cを湾曲した形状にして側壁13dと一体化した形状にすることも本発明の範囲内であるが、上記の理由から前壁13cを平板にして側壁13dを形成することで、前壁13cが前方(消火剤の放出方向)に突出するのを最小限に抑えることができて好ましい。
【0028】
次に、上記のように構成された本実施の形態の可搬式火災感知・消火装置1の動作について、傘部材13の機能を中心に説明する。
可搬式火災感知・消火装置1を現場に設置し、支持部材5を上方に延伸させ、図示しないコンセント等から給電して、監視を開始する。監視状態において、傘部材13は火災感知器7の監視範囲内にはなく、監視の障害にはならない。
【0029】
火災が発生すると、火災感知器7が作動して火災が感知され、制御部11での火災判定がされると、制御部11によって消火剤放出制御アクチュエータが作動し、火災を感知した火災感知器7に対応した消火剤放出ノズル9から消火剤の放出が行われる。
消火剤は、消火剤放出ノズル9の直下方向にも放出されるが、傘部材13があることで制御部11に消火剤が降りかかるのを防止できる。
また、火災判定がされると、カメラ撮影を開始し、火災発生の通知と共に撮影した画像データを管理者に送信することで、管理者は、通知と画像データにより火災発生の事実と、現場状況を知ることができる。
カメラ17も消火剤放出ノズル9よりも上方に設けられているため、消火剤が降りかかることがない。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、傘部材13を設けたことで消火剤が制御部11に降りかかることがなく、消火剤による制御部11の不具合発生を防止することができる。
【0031】
なお、上記の実施の形態の傘部材13は、前壁13cと側壁13dを有するものであるが、本発明の傘部材13はこのようなものに限定されず、支持部材5における消火剤放出ノズル9の下方に設けられて、消火剤放出ノズル9から放出される消火剤が制御部11に降りかかるのを防止する機能を有するものを広く含む。
【符号の説明】
【0032】
1 可搬式火災感知・消火装置
3 消火剤タンク
5 支持部材
5a 縦部材
5b 横部材
5c 上端横部材
7 火災感知器
7a 第1炎感知器
7b 第2炎感知器
9 消火剤放出ノズル
9a 第1消火剤放出ノズル
9b 第2消火剤放出ノズル
9c 第3消火剤放出ノズル
11 制御部
13 傘部材
13a 上辺部
13b 下辺部
13c 前壁
13d 側壁
13e 取付部
15 車輪
17 カメラ
19 フレーム
19a 手押しハンドル
19b 制御部保持部
21 警報灯