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特開2022-155666自動運転ユニット及び自動芝刈りシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155666
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】自動運転ユニット及び自動芝刈りシステム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20221006BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20221006BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60W30/10
A01D34/64 M
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059007
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】513087792
【氏名又は名称】株式会社オリエンタル群馬
(71)【出願人】
【識別番号】514033770
【氏名又は名称】公立大学法人前橋工科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】朱 赤
(72)【発明者】
【氏名】中埜 智親
(72)【発明者】
【氏名】平野 曜伯
(72)【発明者】
【氏名】李 沛譲
(72)【発明者】
【氏名】澤入 良樹
(72)【発明者】
【氏名】宇野 健二朗
【テーマコード(参考)】
2B043
2B083
3D241
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB11
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA02
2B043EA32
2B043EB05
2B043EC02
2B043ED03
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083HA28
3D241AB04
3D241BA29
3D241BB24
3D241BC01
3D241CA20
3D241CE04
(57)【要約】
【課題】既存の作業用車両に装着して自動運転を可能とするとともに、自動運転を行わない場合には人による手動運転が可能な自動運転ユニット及びこれを用いた自動芝刈りシステムを提供する。
【解決手段】この自動運転ユニット80は、既存の作業用車両10に装着して自動運転を可能とする。このため、導入コストを極めて低く抑えることができる。また、この自動運転ユニット80は人による運転操作を阻害しないよう構成されている。このため、作業者等は作業用車両10を自動運転ユニット80を装着したまま運転することができる。また、この自動芝刈りシステム100は、GNSS衛星104からの信号に基づいて取得した移動局103の測位情報と基準局102の測位情報とに基づいて自身の位置情報を取得する。このため、自身の位置情報を数センチメートルの単位で取得可能で、予め設定されたルート上を極めて正確に走行することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の作業用車両を自動運転させる自動運転ユニットであって、
前記作業用車両の操作ハンドルに着脱可能に設置して前記操作ハンドルを回転させるハンドル操作ユニットと、
前記作業用車両の操作ペダルに着脱可能に設置して前記操作ペダルを操作するペダル操作ユニットと、
前記作業用車両の機能スイッチに着脱可能に設置して前記機能スイッチをオンオフするスイッチ操作ユニットと、
前記作業用車両を予め設定されたルートに沿って自動運転するように前記ハンドル操作ユニットとペダル操作ユニットとスイッチ操作ユニットとを制御する制御部と、を有することを特徴とする自動運転ユニット。
【請求項2】
ハンドル操作ユニットが、
操作ハンドルに着脱可能に設置する装着部と、
前記装着部に固定し前記操作ハンドルと略同軸のプーリと、
前記プーリを回転可能に軸支するプーリ保持部と、
前記プーリを回転させるワイヤと、
制御部によって動作制御され前記ワイヤを引くことで前記プーリを回転させるモータと、
前記ワイヤの経路を人の乗車を阻害しないように取り回すワイヤガイドと、を有することを特徴とする請求項1記載の自動運転ユニット。
【請求項3】
プーリ保持部がスイッチ操作ユニットにより支持されることを特徴とする請求項2記載の自動運転ユニット。
【請求項4】
ペダル操作ユニットが、
操作ペダルに着脱可能に固定するペダル固定部と、
前記ペダル固定部と接続したシャフトと、
制御部によって動作制御され前記シャフトを押し引きする伸縮機構と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動運転ユニット。
【請求項5】
スイッチ操作ユニットが、
機能スイッチに着脱可能に固定したスイッチ固定部と、
前記スイッチ固定部と接続したスイッチ用シャフトと、
制御部によって動作制御され前記スイッチ用シャフトを押し引きするスイッチ用伸縮機構と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動運転ユニット。
【請求項6】
制御部が、移動局と位置取得手段とをさらに有し、
前記位置取得手段は、前記移動局がGNSS衛星からの信号に基づいて取得した移動局の測位情報と、地上に設置されている基準局がGNSS衛星からの信号に基づいて取得した基準局の測位情報とを取得して、前記移動局の測位情報と基準局の測位情報とに基づいて自身の位置情報を取得し、
制御部は、前記位置取得手段からの位置情報に基づいて、作業用車両が予め設定されたルートから外れないように動作制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自動運転ユニット。
【請求項7】
自走するための車輪と動力とを備えた駆動系と、芝刈り刃と、車両の進行方向を変えるための操作ハンドルと、車両の走行速度を加速、減速するためのアクセル及びブレーキの操作ペダルと、芝刈り刃の動作をオンオフする機能スイッチと、を備えた芝刈り機としての作業用車両と、
作業場所の近傍に設置されGNSS衛星からの信号に基づいて取得した自身の測位情報を基準局の測位情報として発信する基準局と、
移動局を備え前記作業用車両に装着された請求項6記載の自動運転ユニットと、を有し、
前記自動運転ユニットは前記作業用車両が予め設定されたルートから外れないように動作制御して、予め設定された範囲の芝を刈ることを特徴とする自動芝刈りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の作業用車両に加工を施すことなく装着し、予め設定されたルートに沿って自動運転させる自動運転ユニット及びこの自動運転ユニットを備えた自動芝刈りシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、公園やゴルフ場、サッカー場等の芝面を有する運動施設等では、芝生の状態を維持するために定期的に芝刈りを行う必要がある。しかしながら、これらの広い敷地に対して芝刈りを定期的に行うには大きな労力や費用が掛かる。
【0003】
また、近年、例えば下記[特許文献1]に記載のように、車両の自動運転に関する様々な開発が世界各国で行われている。しかしながら、一般道を自由に走行する自動運転には未だ様々な課題があり、更なる技術革新が必要である。これに対して、公園やゴルフ場、サッカー場等の障害物の少ない敷地内を予め設定されたルートで走行させる自動運転技術は一般道を自由に走行する自動運転技術と比較して遥かに容易であり、実用化が模索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-009433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動運転型の作業用車両の開発と購入には莫大な費用が掛かり、安易に導入することができないという問題点がある。また、自動運転のみの作業用車両は汎用性に劣り、作業頻度の低い特殊な作業やその状況に応じて変化する作業には向かないという問題点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、既存の作業用車両に装着して自動運転を可能とするとともに、自動運転を行わない場合には人による手動運転が可能な自動運転ユニット及びこれを用いた自動芝刈りシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)既存の作業用車両10を自動運転させる自動運転ユニットであって、
前記作業用車両10の操作ハンドル12に着脱可能に設置して前記操作ハンドル12を回転させるハンドル操作ユニット30と、前記作業用車両10の操作ペダル14a~14cに着脱可能に設置して前記操作ペダル14a~14cを操作するペダル操作ユニット40と、前記作業用車両10の機能スイッチ16に着脱可能に設置して前記機能スイッチ16をオンオフするスイッチ操作ユニット50と、前記作業用車両10を予め設定されたルートに沿って自動運転するように前記ハンドル操作ユニット30とペダル操作ユニット40とスイッチ操作ユニット50とを制御する制御部70と、を有することを特徴とする自動運転ユニット80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ハンドル操作ユニット30が、
操作ハンドル12に着脱可能に設置する装着部32と、前記装着部32に固定し前記操作ハンドル12と略同軸のプーリ34と、前記プーリ34を回転可能に軸支するプーリ保持部36と、前記プーリ34を回転させるワイヤ38と、制御部70によって動作制御され前記ワイヤ38を引くことで前記プーリ34を回転させるモータ72と、前記ワイヤ38の経路を人の乗車を阻害しないように取り回すワイヤガイド39と、を有することを特徴とする上記(1)記載の自動運転ユニット80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)プーリ保持部36がスイッチ操作ユニット50により支持されることを特徴とする上記(2)記載の自動運転ユニット80を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)ペダル操作ユニット40が、
操作ペダル14a~14cに着脱可能に固定するペダル固定部42a~42cと、前記ペダル固定部42a~42cと接続したシャフト44a~44cと、制御部70によって動作制御され前記シャフト44a~44cを押し引きする伸縮機構46a~46cと、を有することを特徴とする上記(1)乃至上記(3)のいずれかに記載の自動運転ユニット80を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)スイッチ操作ユニット50が、
機能スイッチ16に着脱可能に固定したスイッチ固定部52と、前記スイッチ固定部52と接続したスイッチ用シャフト54と、制御部70によって動作制御され前記スイッチ用シャフト54を押し引きするスイッチ用伸縮機構56と、を有することを特徴とする上記(1)乃至上記(4)のいずれかに記載の自動運転ユニット80を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)制御部70が、移動局103と位置取得手段とをさらに有し、
前記位置取得手段は、前記移動局103がGNSS衛星104からの信号に基づいて取得した移動局103の測位情報と、地上に設置されている基準局102がGNSS衛星104からの信号に基づいて取得した基準局102の測位情報とを取得して、前記移動局103の測位情報と基準局102の測位情報とに基づいて自身の位置情報を取得し、
制御部70は、前記位置取得手段からの位置情報に基づいて、作業用車両10が予め設定されたルートから外れないように動作制御することを特徴とする上記(1)乃至上記(5)のいずれかに記載の自動運転ユニット80を提供することにより、上記課題を解決する。
(7)自走するための車輪3と動力とを備えた駆動系と、芝刈り刃5と、車両の進行方向を変えるための操作ハンドル12と、車両の走行速度を加速、減速するためのアクセル及びブレーキの操作ペダル14a~14cと、芝刈り刃5の動作をオンオフする機能スイッチ16と、を備えた芝刈り機としての作業用車両10と、
作業場所の近傍に設置されGNSS衛星104からの信号に基づいて取得した自身の測位情報を基準局102の測位情報として発信する基準局102と、
移動局103を備え前記作業用車両10に装着された上記(6)記載の自動運転ユニット80と、を有し、
前記自動運転ユニット80は前記作業用車両10が予め設定されたルートから外れないように動作制御して、予め設定された範囲の芝を刈ることを特徴とする自動芝刈りシステム100を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る自動運転ユニットは、既存の作業用車両に装着して自動運転を可能とする。このため、既存の作業用車両が利用可能となり導入コストを低く抑えることができる。また、本発明に係る自動運転ユニットは、基本的に作業用車両に対する機械的、電気的な加工を行わない。このため、作業用車両本体の強度や安全性能をそのまま保持することができる。さらに、本発明に係る自動運転ユニットの各構成は人による作業用車両の運転操作を阻害しないよう構成されている。このため、自動運転ユニットがオフの状態では、作業者等は作業用車両を自動運転ユニットを装着したまま運転することができる。
また、本発明に係る自動芝刈りシステムは、自動運転ユニットの制御部がGNSS衛星からの信号に基づいて取得された移動局の測位情報と基準局の測位情報とに基づいて自身(作業用車両)の位置情報を取得する。このため、自身の位置情報を数センチメートルの単位で取得可能で、予め設定されたルート上を極めて正確に走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る自動運転ユニットを示す図である。
図2】本発明に係る自動運転ユニットのハンドル操作ユニットを説明する図である。
図3】本発明に係る自動芝刈りシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る自動運転ユニット80及び自動芝刈りシステム100の実施の形態について図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る自動運転ユニット80を作業用車両10の運転席に装着した例を示す模式図である。また、図2は本発明に係る自動運転ユニット80のハンドル操作ユニット30を説明する模式図である。
【0011】
先ず、本発明に係る自動運転ユニット80は、例えば既存の芝刈り機、ゴルフカート、耕運機等の農作業用車両、清掃車両、運搬車両等の作業用車両10の運転席に設置され、作業用車両10の操作ハンドル12を回転させるハンドル操作ユニット30と、作業用車両10の操作ペダル14a、14b、14cを操作するペダル操作ユニット40と、作業用車両10の機能スイッチ16をオンオフするスイッチ操作ユニット50と、これらハンドル操作ユニット30とペダル操作ユニット40とスイッチ操作ユニット50とを制御する制御部70と、を有している。尚、本発明に係る自動運転ユニット80は、基本的に作業用車両10への機械的、電気的な加工を行わずに装着を行う。このため、作業用車両10の製造メーカーが保証している作業用車両10本体の強度や安全性能を損うことは無い。
【0012】
そして、本発明に係る自動運転ユニット80を構成するハンドル操作ユニット30は図1図2に示すように、作業用車両10の操作ハンドル12に着脱可能に設置する装着部32と、この装着部32に固定したプーリ34と、このプーリ34を回転可能に軸支するプーリ保持部36と、プーリ34を回転させるワイヤ38と、制御部70によって動作制御されワイヤ38を引くことでプーリ34を回転させるモータ72と、ワイヤ38の経路を人の乗車と運転とを阻害しないように取り回すワイヤガイド39と、このワイヤガイド39やプーリ保持部36等に設けられワイヤ38の移動を円滑化する滑車(アイドルプーリ)37と、を有している。尚、図2ではプーリ保持部36を破線で透過状態で図示している。
【0013】
そして、ハンドル操作ユニット30の装着部32はプーリ34とプーリ保持部36とを操作ハンドル12に一体的に装着するものであり、操作ハンドル12と略同形のリング状で操作ハンドル12に被せるもしくは嵌め込んで着脱可能に装着するものが好ましい。また、プーリ34は周面にワイヤ38が嵌る溝を備え、操作ハンドル12の回転軸と略同軸となるように装着部32に固定している。尚、装着部32、プーリ34、プーリ保持部36は、人による運転を阻害しないよう、可能な限り低背でコンパクトに構成することが好ましい。そして、プーリ34の溝にはワイヤ38が通され、このワイヤ38はワイヤガイド39を通して制御部70が動作制御するモータ72の回転駆動部と接続する。
【0014】
また、プーリ保持部36は、プーリ34を操作ハンドル12と略同軸の位置に軸支するフリーの回転軸を有しており、これによりプーリ34はプーリ保持部36に対して自由に回転する。また、プーリ保持部36はプーリ34の回転により自身が回転しないよう作業用車両10に支持される。このプーリ保持部36の支持は機械加工を伴わない支持棒やステー等で行っても良いが、後述のスイッチ操作ユニット50を介して行うことが好ましい。この構成では、スイッチ操作ユニット50がプーリ保持部36の支持棒を兼ねるため、自動運転ユニット80の部材構成を簡略化することができる。これにより、プーリ34がワイヤ38によって駆動され、操作ハンドル12が回転してもプーリ保持部36の位置(向き)はそのまま保持される。このため、操作ハンドル12が回転しても、プーリ保持部36の下部に取り付けられている滑車37及びこの滑車37を通ったワイヤ38の向きはそのまま保持され、ワイヤ38とプーリ34による操作ハンドル12の回転制御を円滑に行うことができる。
【0015】
ここで、制御部70が操作ハンドル12を右回転させる場合、制御部70はプーリ34の右側のワイヤ38を引き込み、左側のワイヤ38を送り出す方向にモータ72を回転させる。これにより、プーリ34の右側のワイヤ38は引かれプーリ34は右回転する。これにより、装着部32がプーリ34と一体的に右回転し、作業用車両10の操作ハンドル12が右回転する。これにより、作業用車両10が走行している場合、作業用車両10は右折する。また、反対に制御部70が操作ハンドル12を左回転させる場合、制御部70はプーリ34の左側のワイヤ38を引き込み、右側のワイヤ38を送り出す方向にモータ72を回転させる。これにより、プーリ34の左側のワイヤ38は引かれプーリ34は左回転する。これにより、装着部32がプーリ34と一体的に左回転し、作業用車両10の操作ハンドル12が左回転する。これにより、作業用車両10が走行している場合、作業用車両10は左折する。
【0016】
また、モータ72及び制御部70は人による運転の邪魔にならない場所に設置され、特に作業用車両10の座席18の下に設けることが好ましい。この場合、プーリ34と座席18下のモータ72とをワイヤ38で直線的に繋ぐと、人の乗車を大きく阻害することとなる。よって、ワイヤ38の経路が人の乗車を阻害しないよう適宜ワイヤガイド39を通し、例えば作業用車両10の運転席に沿うように取り回すことが好ましい。尚、ワイヤガイド39の両端には、前述のように滑車37を設けることが好ましい。
【0017】
また、自動運転ユニット80のペダル操作ユニット40は、作業用車両10の操作ペダル14a~14cにそれぞれ固定されるペダル固定部42a~42cと、このペダル固定部42a~42cとそれぞれ接続したシャフト44a~44cと、制御部70によって動作制御されシャフト44a~44cをそれぞれ押し引きする伸縮機構46a~46cと、を有している。尚、ここでは操作ペダル14a~14cが、作業用車両10の速度を減速するブレーキペダル14aと、作業用車両10の前進時の速度を加速するアクセルペダル14bと、作業用車両10の後退時の速度を加速するバックペダル14cとの3つで構成した例を示している。
【0018】
そして、ペダル固定部42a~42cは人による操縦を阻害しない位置、例えば操作ペダル14a~14cの側面や裏面を挟持したり、操作ペダル14a~14cの上部や裏面
に嵌め込むようにして着脱可能に設置することが好ましい。また、シャフト44a~44cも人による操縦を阻害しないようペダル固定部42a~42cの上部もしくは側方に接続することが好ましい。また、伸縮機構46a~46cは制御部70の制御によりシャフト44a~44cを押し引きする周知の伸縮機構を用いることができる。中でも特にステッピングモータと、このステッピングモータの回転動作を前後動に変換して伸縮するリニアアクチュエータとで構成することが好ましい。この構成では、比較的コンパクトな装置構成で操作ペダル14a~14cをリニアに操作することができる。
【0019】
そして、作業用車両10を前進させる場合、制御部70はアクセルペダル14bと接続した伸縮機構46bを伸ばす方向に例えば伸縮機構46bのステッピングモータを回転動作させる。これにより、伸縮機構46bのシャフト44bは押し出され、このシャフト44bと接続したペダル固定部42bが押圧されて、アクセルペダル14bが押し込まれる。これにより、作業用車両10は前進する。そして、制御部70は予め設定された伸長量で伸縮機構46bを維持する。これにより、作業用車両10は所定の速度を維持しながら前進する。また、作業用車両10を減速もしくは停止させる場合、制御部70は伸縮機構46bが縮む方向に動作制御する。これにより、伸縮機構46bのシャフト44bは後退し、このシャフト44bと接続したペダル固定部42bが引き戻され、アクセルペダル14bが押し戻される。これにより、作業用車両10は減速する。また、必要であれば制御部70はブレーキペダル14aと接続した伸縮機構46aを伸ばす方向に動作制御する。これにより、伸縮機構46aのシャフト44aは押し出され、このシャフト44aと接続したペダル固定部42aが押圧されて、ブレーキペダル14aが押し込まれる。これにより、作業用車両10にはブレーキが掛かりさらに減速する。また、必要によって伸縮機構46aの伸長動作は継続され、ブレーキペダル14aはさらに押し込まれて作業用車両10は停止する。また、作業用車両10を後退させる場合、伸縮機構46a、46bが縮みブレーキペダル14a、アクセルペダル14bが戻った状態で、制御部70が伸縮機構46cを伸ばす方向に動作制御する。これにより、伸縮機構46cのシャフト44cは押し出され、このシャフト44cと接続したペダル固定部42cが押圧されて、バックペダル14cが押し込まれる。これにより、作業用車両10は後退する。
【0020】
また、自動運転ユニット80のスイッチ操作ユニット50は、制御部70によって作業用車両10の機能スイッチ16をオンオフし、作業用車両10の所定の機能をオンオフするものである。尚、機能スイッチ16でオンオフする作業用車両10の所定の機能とは、例えば、芝刈り機であれば芝刈り刃の稼働であり、ゴルフカートや運搬車両であれば例えばパーキングブレーキの稼働であり、農作業用車両であれば耕運や稲刈り、田植え、農薬散布等の装置の稼働であり、清掃車両であれば吸引や床拭き等の清掃装置の稼働等である。尚、機能スイッチ16の形状、操作方法、設置位置は作業用車両10によって異なるため、スイッチ操作ユニット50はそれぞれの機能スイッチ16に応じた構成及び機構となる。ただし、例えば最も一般的な機能スイッチ16であるボタンの押下やレバーの上げ下げに対応したスイッチ操作ユニット50は、機能スイッチ16に着脱可能に固定したスイッチ固定部52と、このスイッチ固定部52と接続したスイッチ用シャフト54と、制御部70によって動作制御されスイッチ用シャフト54を押し引きするスイッチ用伸縮機構56と、を有している。尚、スイッチ操作ユニット50も人による運転と操作とを阻害しないよう構成する。また、スイッチ用伸縮機構56に関しては特に限定は無いが、機能スイッチ16がボタンやレバーの場合には単純に伸縮するソレノイドアクチュエータを用いることが好ましい。尚、スイッチ用伸縮機構56を伸縮させるためにはスイッチ用伸縮機構56の逆端を支持する必要がある。このスイッチ用伸縮機構56の支持は前述のようにプーリ保持部36によって行うことが構成部材の削減の観点から好ましい。
【0021】
そして、例えば機能スイッチ16がレバーの上げ下げでオン、オフを行う機構の場合、制御部70が機能スイッチ16をオンする際にはスイッチ用伸縮機構56を伸長させる方向に動作制御する。これにより、スイッチ用シャフト54、スイッチ固定部52が押圧され、機能スイッチ16のレバーが引き下げられてオン状態となり、機能スイッチ16と対応した作業用車両10の所定の機能が動作する。また、機能スイッチ16をオフする場合、制御部70がスイッチ用伸縮機構56を縮める方向に動作制御する。これにより、スイッチ用シャフト54、スイッチ固定部52が引き戻され機能スイッチ16のレバーが引き上げられてオフ状態となる。これにより、機能スイッチ16と対応した作業用車両10の所定の機能が動作停止する。
【0022】
また、自動運転ユニット80の制御部70は、前述のように、作業用車両10の座席18の下などの人の運転に邪魔にならない場所に設置され、ハンドル操作ユニット30のモータ72と、ペダル操作ユニット40の伸縮機構46a~46cと、スイッチ操作ユニット50のスイッチ用伸縮機構56とを、予め設定されたプログラムに則して動作制御し、作業用車両10を予め設定されたルートに沿って所定の速度で自動運転するとともに、適宜機能スイッチ16をオンオフして、所定の作業を行わせる。
【0023】
尚、制御部70による自動運転に関しては、カメラ、ライントレースや光センサー技術を用いたLiDAR(light detection and ranging)等の周知の自動運転技術を用いることができる。中でも特に、GNSS衛星からの信号と地上に設置された基準局からの信号に基づいて自身の詳細な位置情報を取得する所謂RTK-GNSSを用いて、RTK-GNSSに基く自身の位置情報と予め設定されたルート情報とを比較して、ルートに沿うように軌道修正をしながら自動運転を行うものが好ましい。
【0024】
次に、本発明に係る自動運転ユニット80の動作をRTK-GNSSを用いた本発明に係る自動芝刈りシステム100を用いて説明する。本発明に係る自動芝刈りシステム100は、図3に示すように、芝刈り機としての作業用車両10と、この作業用車両10に装着された自動運転ユニット80と、この自動運転ユニット80の一部を構成し作業用車両10に搭載された移動局103と、作業場所の近傍に設置されGNSS衛星104からの信号に基づいて取得した自身の測位情報を基準局の測位情報として発信する基準局102と、を有している。また、芝刈り機としての作業用車両10は、自走するための車輪3と図示しないエンジン等の動力とを備えた駆動系と、芝を所定の長さに刈る芝刈り刃5と、車両(作業用車両10)の進行方向を変えるための操作ハンドル12と、車両を前進、後退、加速、減速するアクセル及びブレーキの操作ペダル14a~14cと、芝刈り刃5の動作をオンオフする機能スイッチ16と、を有している。
【0025】
また、自動芝刈りシステム100の自動運転ユニット80は、前述のハンドル操作ユニット30と、ペダル操作ユニット40と、スイッチ操作ユニット50と、制御部70と、を有している。さらに、本発明に係る自動芝刈りシステム100の自動運転ユニット80の制御部70は、前述の移動局103と、位置取得手段と、自身が走行するルート情報(位置情報)と、どの位置で機能スイッチ16をオンオフするかの動作情報と、を備えている。尚、ルート情報と動作情報とは予め作業者等が作成し、制御部70のメモリ等に記録しておく。また、制御部70の位置取得手段は、移動局103がGNSS衛星104からの信号に基づいて取得した移動局103の測位情報と、地上に設置されている基準局102がGNSS衛星104からの信号に基づいて取得した基準局102の測位情報とを取得して、これら移動局103の測位情報と基準局102の測位情報との相対位置を算出して位置の補正を行い自身(作業用車両10)の位置情報を取得する。
【0026】
次に、自動芝刈りシステム100及び自動運転ユニット80の動作を説明する。先ず、自動運転ユニット80のオフ状態で、作業者が作業用車両10を予め設定された自動運転の開始位置に移動させる。尚、自動運転ユニット80がオフの状態では、ハンドル操作ユニット30のプーリ34、ペダル操作ユニット40の伸縮機構46a~46c、スイッチ操作ユニット50のスイッチ用伸縮機構56はフリーとなり、また自動運転ユニット80の各構成は前述のように人による運転操作を阻害しないよう構成されているから、作業者は作業用車両10を問題無く運転することができる。
【0027】
次に、作業者は作業用車両10のエンジンを動作させたまま、自動運転ユニット80をオンする。この際、作業者は作業用車両10を降りても良いし、異常時の対応のため残っていても良い。そして、自動運転ユニット80がオンされると、先ず制御部70の移動局103がGNSS衛星104からの信号に基づいて自身(移動局103の搭載された作業用車両10)の測位情報を取得する。また、基準局102が発信した基準局102の測位情報を取得する。次に、制御部70の位置取得手段が移動局103の測位情報と基準局102の測位情報との相対位置を算出して自身の位置に対する補正を行い自身(作業用車両10)の位置情報を取得する。より具体的には、GNSS衛星104からの信号に基づいて取得した基準局102の測位情報と予め既知の基準局102の正確な位置情報とからGNSS衛星104に基づく測位情報の誤差を取得し、この誤差分を移動局103の測位情報に対して補正することで作業用車両10の正確な位置情報を取得する。そして、制御部70は予め記録されているルート情報と自身の位置情報とを比較してそのルートに沿うように適宜ハンドル操作ユニット30、ペダル操作ユニット40を制御して作業用車両10を走行させる。また、ルート上の予め設定された位置に到達すると制御部70は動作情報に基づいてスイッチ操作ユニット50を制御し、機能スイッチ16をオンする。これにより、作業用車両10の芝刈り刃5が動作して作業用車両10はルート上の芝を刈りながら走行する。そして、設定された作業エリアの端まで到達すると、制御部70はルート情報に基づいて作業用車両10を1列ずらして折り返し運転させ、これらを繰り返すことにより設定された作業エリアの芝を刈る。そして、設定された作業エリアの芝刈りが終了すると、制御部70は動作情報に基づいてスイッチ操作ユニット50を制御し、機能スイッチ16をオフする。これにより、芝刈り刃5の動作が停止する。次に、制御部70はハンドル操作ユニット30、ペダル操作ユニット40を制御してルートの最終点にて停止し待機状態となる。
【0028】
以上のように、本発明に係る自動運転ユニット80は、既存の作業用車両10に装着して自動運転を可能とする。このため、既存の作業用車両10が利用可能となり導入コストを極めて低く抑えることができる。また、本発明に係る自動運転ユニット80は、基本的に作業用車両10に対する機械的、電気的な加工を行わない。このため、作業用車両10の製造メーカーが保証している作業用車両10本体の強度や安全性能をそのまま保持することができる。さらに、本発明に係る自動運転ユニット80の各構成は人による作業用車両10の運転操作を阻害しないよう構成されている。このため、自動運転ユニット80がオフの状態では、作業者等は作業用車両10を自動運転ユニット80を装着したまま運転することができる。
【0029】
また、本発明に係る自動芝刈りシステム100は、上記の自動運転ユニット80の効果に加え、自動運転ユニット80の制御部70が移動局103の測位情報と基準局102の測位情報との相対位置を算出して補正し自身(作業用車両10)の位置情報を取得する。このため、自身の位置情報を数センチメートルの単位で取得可能で、予め設定されたルート上を極めて正確に走行することができる。
【0030】
尚、本例で示した自動運転ユニット80及び自動芝刈りシステム100は一例であり、使用する作業用車両10、ハンドル操作ユニット30、ペダル操作ユニット40、スイッチ操作ユニット50、制御部70等の各部の構成、機構、動作、制御方法、設置位置、設置方法等は上記の例に限定されるわけではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
3 車輪
5 芝刈り刃
10 作業用車両
12 操作ハンドル
14a~14c 操作ペダル
16 機能スイッチ
30 ハンドル操作ユニット
32 装着部
34 プーリ
36 プーリ保持部
38 ワイヤ
39 ワイヤガイド
40 ペダル操作ユニット
42a~42c ペダル固定部
44a~44c シャフト
46a~46c 伸縮機構
50 スイッチ操作ユニット
52 スイッチ固定部
54 スイッチ用シャフト
56 スイッチ用伸縮機構
70 制御部
72 モータ
80 自動運転ユニット
102 基準局
103 移動局
104 GNSS衛星
100 自動芝刈りシステム
図1
図2
図3