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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155667
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B25J19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059010
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智己
(72)【発明者】
【氏名】山下 賢人
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS08
3C707HS13
3C707HS21
3C707HS24
3C707LV22
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】複数のリニアソレノイドを同時に駆動する場合でも、ピーク電流を低減し、制御性を良好にする。
【解決手段】ロボット装置は、複数の人工筋肉と、複数の人工筋肉にそれぞれ流体を給排する流体供給装置とを含む。流体供給装置は、リニアソレノイドバルブの駆動により対応する人工筋肉に供給源側からの流体の圧力または流量を調整して供給する流体調整部と、それぞれPWM信号によりオンオフする複数のスイッチング素子を有しスイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に印加される電流を制御する駆動制御部と、を備える。そして、駆動制御部は、複数のリニアソレノイドバルブのうち、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉と、前記複数の人工筋肉にそれぞれ前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、
前記流体供給装置は、
前記流体の供給源と、
複数のリニアソレノイドバルブを有し、前記リニアソレノイドバルブの駆動により対応する人工筋肉に前記供給源側からの前記流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、
それぞれPWM信号によりオンオフする複数のスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に印加される電流を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、前記複数のリニアソレノイドバルブのうち、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせる、
ロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置であって、
複数のリンクと、
それぞれ対応する2つのリンクを連結する複数の関節と、
を更に備え、
前記複数の人工筋肉は、前記関節ごとに互いに対をなす第1の人工筋肉および第2の人工筋肉を含み、
前記第1の人工筋肉は、前記第2の人工筋肉よりも大きい力が要求される人工筋肉であり、
前記少なくとも2つのリニアソレノイドバルブは、それぞれ対応する前記関節の前記第1の人工筋肉を駆動する複数のリニアソレノイドバルブを含む、
ロボット装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット装置であって、
前記駆動制御部は、前記互いに対をなす前記第1の人工筋肉および前記第2の人工筋肉を駆動するリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを同じとする、
ロボット装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のロボット装置であって、
前記複数のリンクのうち先端のリンクに手先を備え、
前記第1の人工筋肉は、前記手先とは反対側に常時位置する人工筋肉である、
ロボット装置。
【請求項5】
流体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉と、前記複数の人工筋肉にそれぞれ前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、
前記流体供給装置は、
前記流体の供給源と、
複数のリニアソレノイドバルブを有し、前記リニアソレノイドバルブの駆動により対応する人工筋肉に前記供給源側からの前記流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、
それぞれPWM信号によりオンオフする複数のスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に印加される電流を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、前記複数のリニアソレノイドバルブのうち、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士をオンオフさせる前記PWM信号の周波数を異ならせる、
ロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、流体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉と、前記複数の人工筋肉にそれぞれ前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のロボット装置としては、基台に立設された支持部材の先端部に軸支されたプーリと、基端部がプーリに固着されプーリの回転に従って回動するアームと、基台に取り付けられた係止ブラケットにそれぞれの一端が連結されると共にプーリに巻き掛けられたロープを介して互いの他端が連結された2つのゴム人工筋と、液圧源からの作動液を対応するゴム人工筋の出入口にそれぞれ供給する2つの圧力制御弁と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-216691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複数の人工筋肉を含むロボット装置において、アームを回動させたり、当該アームの姿勢を保持したりするために、複数のリニアソレノイドバルブ(圧力制御弁)が同時に駆動されることが行なわれる。リニアソレノイドバルブの制御として、PWM信号によりスイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に供給する電流を制御する場合、同時に駆動される複数のリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、スイッチング素子のオンタイミングが重なると、電源からのピーク電流が増大する。この場合、ピーク電流の増大により電圧降下が過大となるため、電磁部に十分な電流を流すためには電源から電磁部へのハーネスを太くする必要があり、大型化や重量増を招く。
【0005】
本開示のロボット装置は、複数の人工筋肉を含むロボット装置において、対応する人工筋肉をそれぞれ駆動する複数のリニアソレノイドを同時に駆動する場合においても、大型化や重量増を招くことなく、要求に応じた電流をそれぞれのリニアソレノイドの電磁部に供給することができ、複数の人工筋肉を適正に駆動することができるロボット装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロボット装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のロボット装置は、流体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉と、前記複数の人工筋肉にそれぞれ前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、前記流体供給装置は、前記流体の供給源と、複数のリニアソレノイドバルブを有し、前記リニアソレノイドバルブの駆動により対応する人工筋肉に前記供給源側からの前記流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、それぞれPWM信号によりオンオフする複数のスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に印加される電流を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記複数のリニアソレノイドバルブのうち、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせる、ことを要旨とする。
【0008】
この本開示のロボット装置では、流体調整部が、複数のリニアソレノイドバルブを有し、リニアソレノイドバルブの駆動により対応する人工筋肉に供給源側からの流体の圧力または流量を調整して出力する。また、駆動制御部が、それぞれPWM信号によりオンオフする複数のスイッチング素子を有し、スイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に印加される電流を制御する。そして、当該駆動制御部は、複数のリニアソレノイドバルブのうち、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせることとしている。これにより、電源からのピーク電流を低減することができるため、大型化や重量増を招くことなく、各リニアソレノイドバルブの電磁部に要求に応じた電流を供給することができる。この結果、複数の人工筋肉を適正に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
図2】本開示のロボット装置を示す拡大図である。
図3】本開示のロボット装置の流体供給装置を示す系統図である。
図4】本開示のロボット装置の制御装置を示すブロック図である。
図5】本開示のロボット装置の制御装置に含まれる駆動制御部を中心として示す構成図である。
図6】各バルブ駆動制御部におけるキャリア信号とPMW信号との一例を示す説明図である。
図7】各バルブ駆動制御部におけるキャリア信号とPMW信号との他の例を示す説明図である。
図8】ディザ制御により各電磁部に印加される電流波形の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム2と、流体供給装置(液体供給装置)10とを含む。本実施形態において、ロボット装置1は、指定された目的位置まで自走可能な、いわゆる無人搬送車(AGV)である搬送台車20に搭載される。ただし、ロボット装置1は、搬送台車20に搭載されるものに限られず、予め定められた設置箇所に定置されてもよい。
【0012】
ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、2つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の流体アクチュエータ(液圧アクチュエータ)M1,M2,M3,M4,M5,M6と、先端側のアーム3に取り付けられる把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。ロボットアーム2のハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1の制御装置100(図3図5参照)により制御される。また、流体供給装置10は、当該制御装置100により制御されて各流体アクチュエータM1-M6に流体(作動流体)としての作動油(液体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0013】
ロボットアーム2の各流体アクチュエータM1-M6は、図2に示すように、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(流体供給装置10側、図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。このような流体アクチュエータM1-M6のチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給して当該チューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0014】
図1および図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も流体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、流体供給装置10側の2つのアーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した流体アクチュエータM1の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、当該関節J1に対応した流体アクチュエータM2の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0015】
また、各連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM1またはM3の先端側(手先側)の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM2またはM4の先端側(手先側)の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM3またはM5の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM4またはM6の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0016】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、流体アクチュエータM1-M6のうちの対応する2つが当該アーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される流体アクチュエータM1,M3,M5は、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)を構成し、各アーム3の他側に配置される2つの流体アクチュエータM2,M4,M6は、当該第1の人工筋肉と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉を構成する。
【0017】
ただし、第1および第2の人工筋肉は、それぞれ2つ以上(同数)の流体アクチュエータにより構成されてもよく、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数とが異なっていてもよい。更に、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(2つ)の流体アクチュエータM1,M2等は、互いに同一の諸元を有するが、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元とが異なっていてもよい。
【0018】
また、本実施形態において、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、流体供給管としての複数のホースH(図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する流体アクチュエータM1-M6の基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各流体アクチュエータM-M6のチューブT内には、ホースHを介して流体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0019】
従って、制御装置100により流体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等のチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等のチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、互いに拮抗するように配置された2つの流体アクチュエータM1,M2等すなわち対をなす(1組の)第1および第2の人工筋肉から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等とは、チューブTが自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として流体供給装置10からの油圧により拮抗駆動される。
【0020】
本実施形態では、ロボット装置1の作動中、ロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応した一対の流体アクチュエータM1,M2のうち、流体アクチュエータM1は、アーム3に関してハンド部4の反対側に常時位置し、関節J1の可動範囲から定まる流体アクチュエータM1に対する要求出力の最大値(最大要求出力)が流体アクチュエータM2に対する最大要求出力よりも大きくなる。また、ロボットアーム2の中間の関節J2に対応した一対の流体アクチュエータM3,M4のうち、流体アクチュエータM3は、アーム3に関してハンド部4の反対側に常時位置し、関節J2の可動範囲から定まる流体アクチュエータM3に対する要求出力の最大値(最大要求出力)が流体アクチュエータM4に対する最大要求出力よりも大きくなる。更に、ロボットアーム2の先端側の関節J3に対応した一対の流体アクチュエータM5,M6のうち、流体アクチュエータM5は、アーム3に関してハンド部4の反対側に常時位置し、関節J3の可動範囲から定まる流体アクチュエータM5に対する要求出力の最大値(最大要求出力)が流体アクチュエータM6に対する最大要求出力よりも大きくなる。また、本実施形態において、ロボット装置1(ロボットアーム2)の作動中、流体アクチュエータM1に対する最大要求出力が、すべての流体アクチュエータM1-M6の中で最大となる。流体アクチュエータM1-M6に対する要求出力は、流体アクチュエータM1-M6に対して要求される収縮力および収縮速度の積(仕事率あるいはパワー)である。
【0021】
上記流体アクチュエータM1-M6等に作動油を供給するロボット装置1の流体供給装置10は、図1に示すように、作動油貯留部(流体貯留部)を画成するタンク11と、当該タンク11を上下方向に延びる回転軸(図1における一点鎖線参照)の周りに回転自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、ロボットアーム2の支持部材5は、タンク11の回転軸と同軸に延在するように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される(図2参照)。すなわち、ロボットアーム2は、流体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0022】
ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するように搬送台車20に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回転軸の周りに所定角度(例えば360°)だけ回転させる図示しない回転駆動ユニットを支持している。これにより、回転駆動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2を当該回転軸の周りにタンク11と一体に回転させることが可能となる。本実施形態において、回転駆動ユニットは、流体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータである。ただし、当該回転駆動ユニットは、電動モータやギヤ機構等を含むものであってもよい。
【0023】
更に、流体供給装置10は、図3に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、流体供給源としてのポンプ13と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、リリーフ弁(圧力制御弁)RVと、逆止弁CVと、アキュムレータ(蓄圧器)14と、流体調整バルブ(流体調整部)としての複数のリニアソレノイドバルブ151,152,153,154,155,156およびコントロールバルブ(圧力制御弁)16とを含む。
【0024】
ポンプ13は、制御装置100により制御される電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油を吸入して吐出口から油路L1に吐出(圧送)する。本実施形態において、ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータや減速ギヤ機構等を有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動ユニット130とを含む。
【0025】
リリーフ弁RVは、ポンプ13により吐出された作動油の圧力を予め定められた一定の上限圧Plim(上限値、例えば6-7MPa程度)を超えないように制限可能なものである。逆止弁CVは、ポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を油路LLに流出させると共に、油路LL側からポンプ13(およびリリーフ弁RV)側への作動油の流通を規制する。アキュムレータ14は、逆止弁CVの下流側で油路LLに接続(直結)された作動油の出入口を有しており、ポンプ13側からの油圧を蓄える。また、アキュムレータ14としては、最高作動圧が上記上限圧Plim以上であるものが用いられる。更に、油路LLには、逆止弁CVの下流側かつアキュムレータ14の上流側で当該油路LLにおける作動油の圧力(元圧)を検出する元圧センサPSが設置されている。
【0026】
リニアソレノイドバルブ151-156は、共通の構成を有しており、それぞれバルブボディ内に配置されると共に制御装置100により制御される。本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151は、コントロールバルブ16への信号圧を調整し、リニアソレノイドバルブ152は、流体アクチュエータM2への油圧(駆動圧)を調整する。また、リニアソレノイドバルブ153は、流体アクチュエータM3への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ154は、流体アクチュエータM4への油圧(駆動圧)を調整する。更に、リニアソレノイドバルブ155は、流体アクチュエータM5への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ156は、流体アクチュエータM6への油圧(駆動圧)を調整する。
【0027】
図3に示すように、リニアソレノイドバルブ151-156は、制御装置100により通電制御される電磁部15eと、スリーブ内に軸方向に移動可能に配置されるスプール15sと、スプール15sを電磁部15e側(出力ポート15o側から入力ポート15i側、図3中上側)に付勢するスプリング15spとを含む。更に、リニアソレノイドバルブ151-156は、入力ポート15iと、出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。リニアソレノイドバルブ151-156の入力ポート15iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLにそれぞれ連通する。また、リニアソレノイドバルブ152-156の出力ポート15oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して対応する流体アクチュエータM2-M6(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。更に、リニアソレノイドバルブ151-156のドレンポート15dは、それぞれ油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0028】
本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じて入力ポート15iと出力ポート15oとを連通させるようにスプール15sを軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により発生する推力と、スプリング15spの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール15sに作用する電磁部15e側への推力とをバランスさせることで、入力ポート15iに供給されたポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を所望の圧力に調整して出力ポート15oから流出させることが可能となる。
【0029】
また、流体アクチュエータM1-M6側に供給される油圧(信号圧または駆動圧)をリニアソレノイドバルブ151-156にフィードバックすることで、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6により駆動されるロボットアーム2に当該流体アクチュエータM1-M6以外からの外力が加えられたときに、当該外力による流体アクチュエータM1-M6のチューブTの体積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。加えて、当該外力が無くなった後には、速やかに要求に応じた油圧(駆動圧)を流体アクチュエータM1-M6に供給することが可能となる。
【0030】
コントロールバルブ16は、リニアソレノイドバルブ151からの信号圧に応じて油路LLからの作動油の圧力を調整して上記最大要求出力が最大となる流体アクチュエータM1のチューブTに供給するものである。コントロールバルブ16は、バルブボディ内に配置されるスプール16sおよび当該スプール16sを付勢するスプリング16spを含むスプールバルブである。また、コントロールバルブ16は、図3に示すように、入力ポート16iと、出力ポート16oと、フィードバックポート16fと、信号圧入力ポート16cと、ドレンポート16dとを含む。
【0031】
入力ポート16iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLに連通する。出力ポート16oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して流体アクチュエータM1(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。フィードバックポート16fは、バルブボディに形成された油路を介して出力ポート16oに連通する。信号圧入力ポート16cは、バルブボディに形成された油路を介してリニアソレノイドバルブ151の出力ポート15oに連通する。ドレンポート16dは、油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0032】
かかるコントロールバルブ16のスプール16sは、電磁部15eは印加される電流に応じたリニアソレノイドバルブ151からの信号圧が作用することで、スプリング16spの付勢力に抗して軸方向に移動する。これにより、信号圧の作用によりスプール16sに付与される推力と、スプリング16spの付勢力と、出力ポート16oからフィードバックポート16fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール16sに作用する推力とをバランスさせることで、入力ポート16iに供給されたポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油の一部を適宜ドレンポート16dを介してドレンして出力ポート16oから流体アクチュエータM1のチューブTへと供給される作動油を所望の圧力に調整することができる。これにより、単体のリニアソレノイドバルブよりも体格を小さくしつつ、要求出力が大きい流体アクチュエータM1に要求に応じた油圧を確実に供給することができる。ただし、すべての流体アクチュエータ(人工筋肉)M1-M6に対し、各々に対応したリニアソレノイドバルブから作動油が供給されるように構成されてもよい。また、2つ以上の流体アクチュエータに対し、各々に対応したコントロールバルブから作動油が供給されるように構成されてもよい。
【0033】
なお、流体供給装置10において、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、常開弁であってもよい。この場合、当該常開弁は、電磁部からの推力および当該電磁部からの推力と同方向に作用するようにフィードバックポートに供給された液圧による推力を、スプリングの付勢力とバランスさせるものであってもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、専用のフィードバックポートをもたず、スプールを収容するスリーブの内側で出力圧(駆動圧)をフィードバック圧としてスプールに作用させるように構成されたものであってもよい(例えば、特開2020-41687号公報参照)。同様に、コントロールバルブ16も、出力圧(駆動圧)をスプールの内部でフィードバック圧として当該スプールに作用させるように構成されたものであってもよい。
【0034】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100には、図4および図5に示すように、CPUやROM、RAM、ロジックICといったハードウエアと、ROMにインストールされた各種プログラムといったソフトウエアとの少なくともいずれか一方により、演算処理部110と、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)に接続される複数のバルブ駆動制御部120a-120fと、ポンプ13の駆動モータに接続されるポンプ駆動制御部130aとが機能ブロック(モジュール)として構築される。複数のバルブ駆動制御部120a-120fにより、各リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eには、電源111から電流が供給される。なお、図5には、説明の簡単のために、1つのバルブ駆動制御部のみを示す。
【0035】
また、制御装置100は、上記元圧センサPSや、リニアソレノイドバルブ151-156等の電源111の電圧を検出する図示しない電圧センサの検出値等を入力する。また、制御装置100は、元圧センサPSにより検出される油路LLにおける油圧(元圧)が目標値になるように、ポンプ13の駆動ユニット130を制御(デューティ制御)する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに供給する電流を制御(デューティ制御)する。
【0036】
制御装置100の各バルブ駆動制御部120a-120fは、図5に示すように、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)に要求される要求電流Ireqと後述する電流検出部125の検出電流Ieとの差分に基づくフィードバック演算により目標電流Itagを算出する目標電流算出部121と、PWM信号の周期および位相を設定する周期位相設定部122と、目標電流算出部121により算出された目標電流Itagに基づいて周期位相設定部122により設定された周期と位相でPWM信号を生成するPWM信号生成部123と、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに接続される駆動回路124と、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)を流れる電流(検出電流Ie)を検出する電流検出部125と、を有する。
【0037】
目標電流算出部121は、演算処理部110からの要求電流Ireqと電流検出部125の検出電流Ieとの差分に基づくPI制御(比例積分制御)あるいはPID制御(比例積分微分制御)により要求電流Ireqを補正した目標電流Itagを算出する。すなわち、目標電流算出部121は、要求電流Ireqと検出電流Ieとの差分に比例ゲインを乗じた比例項と要求電流Ireqと検出電流Ieとの差分の積算値に積分ゲインを乗じた積分項との和、あるいは比例項と積分項と要求電流Ireqと検出電流Ieとの差分の微分値に微分ゲインを乗じた微分項との和に基づいて目標電流Itagを算出する。
【0038】
PWM信号生成部123は、目標電流算出部121により算出された目標電流Itagに応じた目標電流デューティを算出し、目標電流デューティに基づくパルス信号(PWM信号)を、周期位相設定部122により設定された周期と位相で生成して対応する駆動回路124に出力する。
【0039】
周期位相設定部122は、本実施形態において、対をなす流体アクチュエータM1およびM2,M3およびM4,M5およびM6のうち最大要求出力が大きい方(ハンド部4と反対側に常時位置する方)の流体アクチュエータM1,M3,M5に対応するバルブ駆動制御部120a,120c,120eの周期位相設定部122は、互いに異なる位相(例えば120°ずつ異なる位相)を設定する。一方、対をなす流体アクチュエータM1およびM2の対応するバルブ駆動制御部120a,120bの周期位相設定部122は、互いに同じ位相を設定する。また、対をなす流体アクチュエータM3およびM4の対応するバルブ駆動制御部120c,120dの周期位相設定部122は、互いに同じ位相を設定する。更に、対をなす流体アクチュエータM5およびM6の対応するバルブ駆動制御部120e,120fの周期位相設定部122は、互いに同じ位相を設定する。なお、本実施形態においては、いずれの周期位相設定部122も、同じ周波数を設定する。
【0040】
駆動回路124は、例えばMOSFET、バイポーラトランジスタあるいはIGBTにより構成される第1および第2スイッチング素子Tr1,Tr2を含む。第1スイッチング素子Tr1のドレインは、電源111に接続され、第1スイッチング素子Tr1のソースと第2スイッチング素子Tr2のドレインとは互いに接続され、第2スイッチング素子Tr2のソースは接地されている。また、駆動回路124に対応したリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eは、互いに接続された第1スイッチング素子Tr1のソースおよび第2スイッチング素子Tr2のドレインと、第2スイッチング素子Tr2のソースとに接続されている。更に、PWM信号生成部123は、第1および第2スイッチング素子Tr1,Tr2のゲートに接続されている。これにより、PWM信号生成部123からのPWM信号(ハイレベル)により第1スイッチング素子Tr1がオンされると共に第2スイッチング素子Tr2がオフされると、電源111の電圧Vcが対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)に印加され、当該電磁部15eに起電流が流れる。一方、PWM信号生成部123からのPWM信号(ローレベル)により第1スイッチング素子Tr1がオフされると共に第2スイッチング素子Tr2がオンされると、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)が接地され、当該電磁部15eに逆起電流が流れる。なお、本実施形態において、第1および第2スイッチング素子Tr1,Tr2は、Nチャネル型のトランジスタ(FET)により構成される例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、Pチャネル型のトランジスタとNチャネル型のトランジスタとを組み合わせたものや、Nチャネル型のトランジスタとダイオードとを組み合わせたもの等、PWM信号に基づくスイッチング素子のスイッチングによって電磁部15eへの通電を制御できるものであれば、如何なる構成も採用しうる。
【0041】
電流検出部125は、電磁部15eに対して直列に接続されたシャント抵抗と、当該シャント抵抗の電圧差を検出するオペアンプと、オペアンプの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器等を含む。電流検出部125により検出された検出電流Ieは、目標電流算出部121に出力される。
【0042】
次に、こうして構成されるロボット装置1の動作について説明する。
【0043】
図示しない起動スイッチがオフされてロボット装置1の動作が完全に停止している際、ハンド部4は、図示しない支持台に形成された係止部により保持される。これにより、ロボットアーム2の姿勢は、予め定められた待機姿勢に強制的に保持される。また、ロボット装置1の起動スイッチがオンされてシステム起動が完了すると、制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、リニアソレノイドバルブ151-156に供給される油路LLにおける油圧(元圧)が予め定められた比較的低い待機圧Pst(700-900kPa程度)になるようにポンプ13を制御する。
【0044】
次いで、制御装置100は、予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに作動油を充填して各チューブTを上記初期状態とするようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTには、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156の対応する何れかから作動油が供給され、各チューブTは、自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮する。これ以後、ハンド部4が上記支持台等に載置されてロボット装置1の動作が停止されるまで、リニアソレノイドバルブ151-156の各電磁部15eには継続して電流が供給され、リニアソレノイドバルブ151-156は、ポンプ13側からの作動油の圧力を電磁部15eに供給される電流に応じて調整する。
【0045】
上述のようなロボット装置1の作業開始準備の完了後、ロボットアーム2およびハンド部4を用いた作業の開始が指示されると、制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、油路LLにおける油圧(元圧)が上記上限圧Plimよりも低く、かつアキュムレータ14の最低作動圧以上に定められた比較的高い常用圧Pw(例えば5-6MPa程度)になるようにポンプ13を制御する。更に、制御装置100は、外部(支持台)からの強制力無しにロボットアーム2を上記待機姿勢に保持するのに要求される油圧を予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給するようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。
【0046】
そして、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156から各流体アクチュエータM1-M6に対してロボットアーム2への要求に応じた油圧が供給されるように各電磁部15eへの電流指令値を設定し、当該電流指令値に基づいて各電磁部15eに供給される電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTに対し、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156により要求に応じて調整された油圧(駆動圧)を供給することが可能となる。この結果、複数の流体アクチュエータM1-M6により各アーム3を回動させてロボット装置1のハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0047】
ここで、同時に駆動されるリニアソレノイドバルブの電磁部15eに対し、対応するバルブ駆動制御部120a-120fの第1スイッチング素子Tr1のオンタイミングが重なると、電源111からのピーク電流が増大する。この場合、電圧降下が過大となるため、各電磁部15eに十分な電流を流すためにはハーネスを太くする必要が生じ、大型化や重量増を招くおそれが生じる。
【0048】
これに対し、本実施形態では、各アーム3に対してハンド部4と反対側に常時位置し、最大要求出力が大きい方の第1の人工筋肉である流体アクチュエータM1,M3,M5の対応するバルブ駆動制御部120a,120c,120eの周期位相設定部122は、パルス信号(PWM信号)の位相として、図6に示すように、互いに異なる位相を設定する。これにより、生成されるパルス信号の立ち上がり(ローレベルからハイレベルへの変化)を互いにずらすことができ、各バルブ駆動制御部120a,120c,120eの第1スイッチング素子Tr1同士のオンタイミングが重ならないようにすることができる。この結果、電源111からの電流のピークを分散させて電圧降下を低減し、ハーネスを太くすることなく、すなわち大型化や重量増を招くことなく、同時に駆動されるリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eにそれぞれ要求に応じた適正な電流を供給することが可能となる。更に、電源111からの電流のピークを分散させることによりノイズを低減することもできるため、制御装置100やこれと電気的に接続される機器等への悪影響を抑制することができる。
【0049】
ただし、対をなす第1および第2の人工筋肉である流体アクチュエータM1およびM2の対応するバルブ駆動制御部120a,120bの周期位相設定部122は、パルス信号(PWM信号)の位相として、図6に示すように、互いに同じ位相を設定する。同様に、対をなす流体アクチュエータM3およびM4の対応するバルブ駆動制御部120c,120dの周期位相設定部122は、互いに同じ位相を設定する。更に、同様に、対をなす流体アクチュエータM5およびM6の対応するバルブ駆動制御部120e,120fの周期位相設定部122は、互いに同じ位相を設定する。これにより、対をなす第1および第2の人工筋肉の対応するバルブ駆動制御部の第1スイッチング素子Tr1同士のオンタイミングを一致させることができる。上述したようにロボット装置1の作業開始準備が完了した後、ロボット装置1の動作が停止されるまで、対をなす第1および第2の人工筋肉が拮抗するように、リニアソレノイドバルブ151-156の各電磁部15eには継続して電流が供給される。このため、対をなす第1および第2の人工筋肉の対応する第1スイッチング素子Tr1同士のオンタイミングを一致させることで、当該対をなす第1および第2の人工筋肉を良好に拮抗させることができ、各アーム3の挙動をより安定させることが可能となる。なお、複数の第1スイッチング素子Tr1同士のオンタイミングが重なると、電源111からのピーク電流が増大し、上述した不都合が生じることとなるが、オンタイミングが重なるのは、対をなす第1および第2の人工筋肉の対応する2つの第1スイッチング素子Tr1のみであるから、大きな問題は生じない。
【0050】
以上説明したように、ロボット装置1では、流体供給装置10は、ポンプ13側からの作動油の圧力または流量を調整して出力する複数のリニアソレノイドバルブ151-156と、それぞれPWM信号により対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに供給する電流を制御するバルブ駆動制御部120a-120fと、を有する。バルブ駆動制御部120a-120fは、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部15eに対し、それぞれ対応するスイッチング素子(第1スイッチング素子Tr1)同士のオンタイミングを異ならせる。
【0051】
これにより、電源111からのピーク電流を低減することができるため、大型化や重量増を招くことなく、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部15eに要求に応じた電流を供給することが可能となる。この結果、複数のリニアソレノイドバルブにより複数の人工筋肉を適切に駆動することができる。
【0052】
また、ロボット装置1では、それぞれ互いに対をなす流体アクチュエータM1およびM2,M3およびM4,M5およびM6のうち最大要求出力が大きい方の流体アクチュエータM1,M3,M5の対応するリニアソレノイドバルブ151,153,155のスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせる。これにより、電源111からのピーク電流をより確実に低減させることができ、対応するリニアソレノイドバルブ151,153,155の電磁部15eに要求に応じた電流をより確実に供給することが可能となる。
【0053】
更に、ロボット装置1では、それぞれ互いに対をなす流体アクチュエータM1およびM2のうち対応するリニアソレノイドバルブ151および152のスイッチング素子同士等のオンタイミングを同じとする。これにより、対をなす流体アクチュエータM1等(第1の人工筋肉)および流体アクチュエータM2等(第2の人工筋肉)を良好に拮抗させることができ、各アーム3の挙動をより安定させることが可能となる。また、オンタイミングが重なるスイッチング素子の数を最小限にして、電源111からのピーク電流が大きく増大するのを抑制することができる。
【0054】
加えて、ロボット装置1において、複数の流体アクチュエータM1-M6のうち、ハンド部4とは反対側に常時位置する流体アクチュエータM1,M3,M5の対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせる。これにより、より確実に、最大要求出力が大きい方の流体アクチュエータM1,M3,M5に対して、対応するスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせることができる。
【0055】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、流体アクチュエータM1,M3,M5の対応するバルブ駆動制御部120a,120c,120eの第1スイッチング素子Tr1同士のオンタイミングを異ならせたが、対応するバルブ駆動制御部120a,120c,120eの第1スイッチング素子Tr1同士のオンオフに用いるPWM信号の周波数を異ならせるものとしてもよい。すなわち、他の実施形態では、図7に示すように、対応するバルブ駆動制御部120a,120c,120eの周期位相設定部122は、互いに異なる周期を設定する。これにより、各バルブ駆動制御部120a,120c,120eにおいて、周期位相設定部122により設定される周期でパルス信号(PWM信号)が生成されることで、パルス信号の周波数を互いに異ならせることができる。すなわち、バルブ駆動制御部120a,120c,120e毎に、パルス信号(PWM信号)の立ち上がり(ローレベルからハイレベルへの変化)を互いにずらすことができ、各バルブ駆動制御部120a,120c,120eの第1スイッチング素子Tr1同士のオンタイミングが重ならないようにすることができる。この結果、電源111からの電流のピークを分散させて電圧降下を低減し、ハーネスを太くすることなく、同時に駆動されるリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eにそれぞれ要求に応じた適正な電流を供給することが可能となる。
【0057】
このように、本開示のロボット装置は、流体の供給を受けて作動する複数の人工筋肉と、前記複数の人工筋肉にそれぞれ前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、前記流体供給装置は、前記流体の供給源と、複数のリニアソレノイドバルブを有し、前記リニアソレノイドバルブの駆動により対応する人工筋肉に前記供給源側からの前記流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、それぞれPWM信号によりオンオフする複数のスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子をオンオフすることにより電源から対応するリニアソレノイドバルブの電磁部に印加される電流を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記複数のリニアソレノイドバルブのうち、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部に対し、それぞれ対応するスイッチング素子同士をオンオフさせる前記PWM信号の周波数を異ならせるものとしてもよい。
【0058】
同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部15eに対し、対応するスイッチング素子同士をオンオフさせるPWM信号の周波数を異ならせることにより、上述した実施形態と同様に、電源111からのピーク電流を低減して、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの電磁部15eに要求に応じた電流を供給することが可能となる。この結果、複数のリニアソレノイドバルブにより複数の人工筋肉を適切に駆動することができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、各バルブ駆動制御部120a-120fは、目標電流Itagに応じた目標電流デューティに基づいてPWM信号を生成するものとしたが、目標電流デューティに対してPWM周期よりも大きい所定のディザ周期により生成されるディザデューティを付加してPWM信号を生成するようにしてもよい。この場合、同時に駆動される少なくとも2つのリニアソレノイドバルブの対応する各バルブ駆動制御部において、それぞれディザ周期の起点をずらしてもよい。なお、ずれ量は、PWM周期以上とすることが望ましい。これにより、図8に示すように、ディザ周期を周期として電磁部に供給される電流の波形の山(振幅)を互いにずらすことができるため、電源111からの電流のピークを分散させることができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、最大要求出力が大きい流体アクチュエータM1,M3,M5の対応するリニアソレノイドバルブ151,153,155のスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせると共に、互いに対をなす流体アクチュエータM1およびM2の対応するリニアソレノイドバルブ151および152のスイッチング素子同士等のオンタイミングを同じとした。しかし、少なくとも2つの流体アクチュエータ(人工筋肉)のそれぞれ対応するリニアソレノイドバルブのスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせるものであればよく、例えば、すべての流体アクチュエータM1-M6の対応するリニアソレノイドバルブ151-156のスイッチング素子同士のオンタイミングを異ならせてもよい。
【0061】
また、流体供給装置10は、流体調整バルブ(流体調整部)として、例えば圧力センサにより検出される液圧(流体圧)が要求に応じた圧力になるように流体アクチュエータM1-M6への液体(流体)の流量を制御する流量制御弁を含むものであってもよい。そして、流体供給装置10は、水等の作動油以外の液体や空気等の気体を流体アクチュエータM1-M6に供給するものであってもよい。
【0062】
更に、ロボット装置1は、関節を1つだけ含むものであってもよく、人工筋肉としての流体アクチュエータを2つだけ含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、流体アクチュエータM1等とハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、複数の流体アクチュエータと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。
【0063】
また、ロボット装置1のロボットアーム2は、アーム3を駆動する流体アクチュエータとして揺動モータ(例えば、ハンド部4の根元(手首部)を回転させる揺動モータ)を含むものであってもよい。すなわち、ロボット装置1のロボット本体は、人工筋肉としての流体アクチュエータの他に、揺動モータを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1のロボットアーム2は、流体アクチュエータとしてエアシリンダや油圧シリンダといった流体圧シリンダを含むものであってもよい。また、関節J1-J3を介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の流体アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の流体アクチュエータと、当該流体アクチュエータと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。加えて、ロボット装置1において、タンク11がロボットアーム2といったロボット本体により支持されてもよい。
【0064】
更に、上記実施形態において、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6は、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における流体アクチュエータM1-M6の構成は、これに限られるものではない。すなわち、流体アクチュエータM1-M6は、流体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の流体アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示の発明は、複数の人工筋肉を含むロボット装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ロボット装置、2 ロボットアーム、3 アーム、4 ハンド部(手先)、10 流体供給装置、13 ポンプ(流体の供給源)、15e 電磁部、16 コントロールバルブ、111 電源、120a,120b,120c,120d,120e,120f バルブ駆動制御部(駆動制御部)、151,152,153,154,155,156 リニアソレノイドバルブ、J1,J2,J3 関節、M1,M2,M3 流体アクチュエータ(第1の人工筋肉)、M4,M5,M6 流体アクチュエータ(第2の人工筋肉)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8