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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155675
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 7/02 20060101AFI20221006BHJP
   B62J 9/22 20200101ALI20221006BHJP
【FI】
B62J7/02
B62J9/22
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059021
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】江田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】宮内 素
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌平
(57)【要約】
【課題】ハンドルとシートとの間に設けた荷台において、荷物を下方から支えつつ、車幅方向に挟むことを可能とする。
【解決手段】鞍乗型車両である自動二輪車10の荷台86は、内側フレーム150及び外側フレーム152を前後方向に屈曲させた屈曲部154と、前方から屈曲部154に向かって後ろ下がりに傾斜する前側傾斜部156と、屈曲部154から後方に向かって延びる後側延出部158と、前側傾斜部156において内側フレーム150の上端部が外側フレーム152の上端部よりも低い凹み部166とを備える。この場合、後側延出部158は、前側傾斜部156よりも自動二輪車10の水平方向に対する傾斜角度が小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(36)とシート(78)との間で前後方向に延びる荷台(86)を備える鞍乗型車両(10)において、
前記荷台(86)は、
内側フレーム(150)と、
外側フレーム(152)と、
前記内側フレーム(150)及び前記外側フレーム(152)を前記前後方向に屈曲させた屈曲部(154)と、
前記内側フレーム(150)及び前記外側フレーム(152)の前記屈曲部(154)よりも前側部分であって、前方から前記屈曲部(154)に向かって後ろ下がりに傾斜する前側傾斜部(156)と、
前記内側フレーム(150)及び前記外側フレーム(152)の前記屈曲部(154)よりも後側部分であって、前記屈曲部(154)から後方に向かって延びる後側延出部(158)と、
前記前側傾斜部(156)に形成され、前記内側フレーム(150)の上端部が前記外側フレーム(152)の上端部よりも低い凹み部(166)と、
を備え、
前記後側延出部(158)は、前記前側傾斜部(156)よりも前記鞍乗型車両(10)の水平方向に対する傾斜角度が小さい、鞍乗型車両(10)。
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両(10)において、
前記後側延出部(158)は、前記内側フレーム(150)の上端部及び前記外側フレーム(152)の上端部が略同じ高さの平ら部(168)を備える、鞍乗型車両(10)。
【請求項3】
請求項2記載の鞍乗型車両(10)において、
前記外側フレーム(152)は、前記内側フレーム(150)よりも大径の部材である、鞍乗型車両(10)。
【請求項4】
請求項3記載の鞍乗型車両(10)において、
前記荷台(86)は、前記外側フレーム(152)の前記凹み部(166)又は前記平ら部(168)の構成部分から下方に延びる下方突出部(162b、164b)をさらに備える、鞍乗型車両(10)。
【請求項5】
請求項3又は4記載の鞍乗型車両(10)において、
前記荷台(86)は、前記外側フレーム(152)の前記前側傾斜部(156)の構成部分から下方に延び、前記鞍乗型車両(10)の車体(18)に連結される第1支持ステー(88)をさらに備える、鞍乗型車両(10)。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、
前記荷台(86)は、前記後側延出部(158)から下方に延び、前記鞍乗型車両(10)の車体(18)に連結される第2支持ステー(89)をさらに備える、鞍乗型車両(10)。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、
前記荷台(86)は、前記鞍乗型車両(10)の車幅方向に延び、前記外側フレーム(152)及び前記内側フレーム(150)の各下端部側を連結する連結部(88a、162a、164a)をさらに備える、鞍乗型車両(10)。
【請求項8】
請求項7記載の鞍乗型車両(10)において、
前記荷台(86)は、前記内側フレーム(150)の前記連結部(88a)から前方に突出する荷掛フック部(160)をさらに備える、鞍乗型車両(10)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、
前記後側延出部(158)は、後方に向かって後ろ上がりに傾斜する後側傾斜部である、鞍乗型車両(10)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(10)において、
前記外側フレーム(152)の前端部又は後端部の少なくとも一方は、前記前後方向の先端に向かって先細る形状である、鞍乗型車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台を備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートの後方に荷台を配置したスクータ型の車両が開示されている。この荷台は、内側フレームと外側フレームとで構成され、略平坦なリヤカバーの上面に設けられている。この場合、内側フレーム全体の高さを外側フレームの高さよりも低くすることで、荷台の中央部分を凹ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-299573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スクータ型の車両を含む鞍乗型車両において、ハンドルとシートとの間に荷台を設ける場合、ハンドルとシートとの間には、前後方向に傾斜する部分が存在する。これにより、荷台も傾斜した状態で設置されることになるので、積載した荷物が荷台から落下しないように、該荷物を下方から支えつつ、車幅方向に挟む必要がある。
【0005】
しかしながら、前述のように、特許文献1の荷台は、略平坦なリヤカバーの上面に設けられているので、該荷台の構成をハンドルとシートとの間の荷台にそのまま適用することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、ハンドルとシートとの間に設けた荷台において、荷物を下方から支えつつ、車幅方向に挟むことが可能な鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、ハンドル(36)とシート(78)との間で前後方向に延びる荷台(86)を備える鞍乗型車両(10)に関する。
【0008】
この場合、第1の構成として、前記荷台(86)は、内側フレーム(150)と、外側フレーム(152)と、前記内側フレーム(150)及び前記外側フレーム(152)を前記前後方向に屈曲させた屈曲部(154)と、前記内側フレーム(150)及び前記外側フレーム(152)の前記屈曲部(154)よりも前側部分であって、前方から前記屈曲部(154)に向かって後ろ下がりに傾斜する前側傾斜部(156)と、前記内側フレーム(150)及び前記外側フレーム(152)の前記屈曲部(154)よりも後側部分であって、前記屈曲部(154)から後方に向かって延びる後側延出部(158)と、前記前側傾斜部(156)に形成され、前記内側フレーム(150)の上端部が前記外側フレーム(152)の上端部よりも低い凹み部(166)とを備える。前記後側延出部(158)は、前記前側傾斜部(156)よりも前記鞍乗型車両(10)の水平方向に対する傾斜角度が小さい。
【0009】
第2の構成として、前記後側延出部(158)は、前記内側フレーム(150)の上端部及び前記外側フレーム(152)の上端部が略同じ高さの平ら部(168)を備える。
【0010】
第3の構成として、前記外側フレーム(152)は、前記内側フレーム(150)よりも大径の部材である。
【0011】
第4の構成として、前記荷台(86)は、前記外側フレーム(152)の前記凹み部(166)又は前記平ら部(168)の構成部分から下方に延びる下方突出部(162b、164b)をさらに備える。
【0012】
第5の構成として、前記荷台(86)は、前記外側フレーム(152)の前記前側傾斜部(156)の構成部分から下方に延び、前記鞍乗型車両(10)の車体に連結される第1支持ステー(88)をさらに備える。
【0013】
第6の構成として、前記荷台(86)は、前記後側延出部(158)から下方に延び、前記鞍乗型車両(10)の車体に連結される第2支持ステー(89)をさらに備える。
【0014】
第7の構成として、前記荷台(86)は、前記鞍乗型車両(10)の車幅方向に延び、前記外側フレーム(152)及び前記内側フレーム(150)の各下端部側を連結する連結部(88a、162a、164a)をさらに備える。
【0015】
第8の構成として、前記荷台(86)は、前記内側フレーム(150)の前記連結部(88a)から前方に突出する荷掛フック部(160)をさらに備える。
【0016】
第9の構成として、前記後側延出部(158)は、後方に向かって後ろ上がりに傾斜する後側傾斜部である。
【0017】
第10の構成として、前記外側フレーム(152)の前端部又は後端部の少なくとも一方は、前記前後方向の先端に向かって先細る形状である。
【発明の効果】
【0018】
第1の構成によれば、前側傾斜部よりも傾斜角度の小さい後側延出部で荷物を支えつつ、前側傾斜部の凹み部で荷物を車幅方向に挟むことができる。
【0019】
第2の構成によれば、平ら部で荷物の荷重を内側フレーム及び外側フレームに分散させながら該荷物を支えることができる。
【0020】
第3の構成によれば、外側フレームが大径の部材であるため、荷台の機械的強度が向上する。これにより、荷台に荷物が積載された状態で、横方向の加速度が外側フレームに作用しても、横方向の加速度による荷重に耐えつつ、荷物を支持することができる。また、内側フレームが小径の部材であるため、荷台全体を軽量化することができる。
【0021】
第4の構成によれば、内側フレームよりも耐荷重性がある外側フレームに下方突出部が設けられているので、該下方突出部を荷掛フックとして使用することが可能となる。
【0022】
第5の構成によれば、大径の部材である外側フレームから第1支持ステーを延ばすことで、高剛性で荷台を車体に支持することができる。
【0023】
第6の構成によれば、第2支持ステーを後側延出部から延ばすことで、前側傾斜部と後側延出部とを前後で車体に支持することができる。これにより、より高剛性で荷台を車体に支持することができる。
【0024】
第7の構成によれば、連結部によって外側フレーム及び内側フレームを下方から支持するので、凹み部及び平ら部を容易に構成することができる。また、荷台全体の機械的強度も向上する。
【0025】
第8の構成によれば、大径の部材である外側フレームにより荷物を車幅方向に挟みつつ、荷掛フック部を用いて荷物の荷掛を容易に行うことができる。
【0026】
第9の構成によれば、車体の形状に応じて荷台を構成することができる。また、前側傾斜部の凹み部で荷物を車幅方向に挟みつつ、後側延出部で荷物を支えることができる。
【0027】
第10の構成によれば、荷台に直角の角部が存在しなくなるので、乗員が跨ぎ部を跨ぎやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図2図1の荷台周辺を拡大した斜視図である。
図3図1の荷台の背面図である。
図4図4Aは、図1のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4Bは、図1のIVB-IVB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る鞍乗型車両について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0030】
[1.自動二輪車10の概略構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両としての自動二輪車10の左側面図である。自動二輪車10は、パワーユニット12の駆動力をドライブチェーン14によって後輪16に伝達することで走行する鞍乗型車両である。以下の説明では、自動二輪車10が前進する方向を前方として、前後、左右及び上下の方向を説明する。
【0031】
自動二輪車10は、車体フレーム18(車体)を備える。車体フレーム18の前端部には、ステアリングステム20を回動自在に軸支するヘッドパイプ22が配設されている。ステアリングステム20の上端部には、アッパーブリッジであるトップブリッジ24が固定されている。ステアリングステム20の下端部には、ロアブリッジであるボトムブリッジ26が固定されている。
【0032】
トップブリッジ24及びボトムブリッジ26は、左右一対のフロントフォーク28を支持する。各フロントフォーク28は、前輪30を回転自在に軸支する。各フロントフォーク28には、円筒状のライトステーホルダ32が被せられている。
【0033】
トップブリッジ24の上部には、左右一対のハンドルグリップ34を備えたハンドルバー36(ハンドル)が固定されている。ハンドルバー36には、左右一対のウィンカである前側フラッシャランプ38と、バックミラー40とが固定されている。ライトステーホルダ32の前方には、ヘッドライト42を支持するヘッドライトステー44が固定されている。
【0034】
トップブリッジ24の前方には、メータ46及びアクセサリソケット48が配設されている。トップブリッジ24の前方であって、ヘッドライト42の上方には、荷台としてのキャリア50が配設されている。キャリア50の後部には、取付ステーとしてのスクリーンステー52が取り付けられている。スクリーンステー52には、ウィンドスクリーン54が取り付けられている。スクリーンステー52の後部には、ワイヤハーネス等の配索を行うための棒状部材56が設けられている。
【0035】
車体フレーム18の下部には、エンジン及び変速機を一体に構成したパワーユニット12が吊り下げられている。パワーユニット12の車幅方向(左右方向)の左側には、シフトペダル58が取り付けられている。運転者(乗員)が足を乗せるステップ60は、左右一対に設けられている。パワーユニット12の後方で車体フレーム18の下端部には、後輪16を回転自在に軸支するスイングアーム62を揺動自在に軸支するピボット64が設けられている。ピボット64の下方の位置には、センタスタンド66及びサイドスタンド68が取り付けられている。
【0036】
パワーユニット12の駆動力は、ドライブチェーン14を介して後輪16に伝達される。スイングアーム62には、ドライブチェーン14の上方を覆うチェーンカバー70と、左右一対のリヤステップ72とが取り付けられている。スイングアーム62の後端部は、車体フレーム18の後部に連続的に形成される金属製のリヤフェンダ74に、左右一対のリヤクッション76を介して吊り下げられている。
【0037】
運転者が着座するシート78の下方には、燃料タンク80が配設されている。パワーユニット12の上方の車体フレーム18は、車体カバー82で覆われている。車体フレーム18及び車体カバー82は、前方から後方に向かって下方に傾斜する形状を有する。また、ハンドルバー36とシート78との間は、運転者が足を跨ぐ跨ぎ部84として構成される。跨ぎ部84には、前後方向に延びる荷台86が設けられている。なお、荷台86は、車体カバー82に沿って前後方向に延びている。荷台86から延びる複数のステー88、89が車体カバー82を貫通して車体フレーム18に連結することで、荷台86が車体フレーム18に固定される。
【0038】
燃料タンク80の車幅方向左側には、エアクリーナボックス90が配設されている。エアクリーナボックス90の吸気ダクト92は、リヤクッション76の車幅方向外側を通って、リヤキャリア94に取り付けられたカバー部材96に接続されている。
【0039】
リヤキャリア94は、リヤフェンダ74の上部に固定されている。リヤフェンダ74の車幅方向左側には、リヤキャリア94に吊り下げられた収納ボックス98が配設されている。リヤフェンダ74の後部には、テールランプ100及び左右一対の後側フラッシャランプ102が固定されている。
【0040】
[2.本実施形態の特徴的な構成]
以上のように構成される自動二輪車10の特徴的な構成について、図1図4Bを参照しながら説明する。特徴的な構成とは、荷台86に関するものである。すなわち、荷台86は、ハンドルバー36とシート78との間に設けられた跨ぎ部84において、前後方向に延びた状態で配置され、荷物を積載可能である。
【0041】
跨ぎ部84は、ハンドルバー36とシート78との間の車体フレーム18及び車体カバー82の部分を含む。この部分は、前方から後方に向かって下方に傾斜し、パワーユニット12の上方の箇所から後方に向かって上方に傾斜している。この場合、跨ぎ部84の前方部分(車体フレーム18及び車体カバー82におけるパワーユニット12の上方の箇所よりも前方の部分)の水平方向に対する傾斜角度は、跨ぎ部84の後方部分(車体フレーム18及び車体カバー82におけるパワーユニット12の上方の箇所よりも後方の部分)の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい。そして、荷台86は、車体フレーム18及び車体カバー82の形状に対応して、前後方向に延びている。
【0042】
具体的に、荷台86は、車体カバー82の上方で車幅方向内側に設けられた環状の内側フレーム150と、車体カバー82の上方で内側フレーム150の外側に設けられた環状の外側フレーム152とを有する。内側フレーム150及び外側フレーム152は、金属製の円柱又は円筒の棒状部材を環状に形成することで構成される。外側フレーム152は、内側フレーム150よりも大径の棒状部材である。なお、内側フレーム150及び外側フレーム152は、矩形又は多角形の断面形状の棒状部材であってもよい。
【0043】
外側フレーム152は、前端部及び後端部が前後方向の先端に向かって先細る形状を有する。具体的に、外側フレーム152の前端部は、斜め上方又は前方の先端に向かって先細る形状を有する。また、外側フレーム152の後端部は、斜め上方又は後方の先端に向かって先細る形状を有する。なお、本実施形態では、外側フレーム152の前端部又は後端部の少なくとも一方が前後方向の先端に向かって先細る形状であればよい。
【0044】
そして、荷台86では、車体カバー82の形状に沿って、内側フレーム150及び外側フレーム152が前後方向に屈曲している。屈曲した箇所は、屈曲部154を構成する。これにより、内側フレーム150及び外側フレーム152の屈曲部154よりも前側部分は、前方から屈曲部154に向かって後ろ下がりに傾斜する前側傾斜部156として形成される。また、内側フレーム150及び外側フレーム152の屈曲部154よりも後側部分は、屈曲部154から後方に向かって延びる後側延出部158として形成される。
【0045】
後側延出部158は、屈曲部154から後方に向かって後ろ上がりに傾斜する後側傾斜部として形成されている。また、後側延出部158は、前側傾斜部156よりも自動二輪車10の水平方向に対する傾斜角度が小さく設定されている。なお、後側延出部158は、屈曲部154から後方に向かって延びていればよいので、該後側延出部158の傾斜角度は0°であってもよい。
【0046】
荷台86を車体フレーム18に固定する2つのステー88、89のうち、一方のステー88(第1支持ステー)は、前側傾斜部156を車体フレーム18に固定する。すなわち、ステー88は、金属製の円柱又は円筒の棒状部材である。ステー88は、前側傾斜部156を構成する内側フレーム150及び外側フレーム152の前側部分の下端部(底部)に接触して車幅方向に延びる連結部88aと、連結部88aの両端部から前方斜め下方に延びて車体フレーム18に連結される左右一対の固定部88bとから構成される。
【0047】
この場合、連結部88aの両端部は、外側フレーム152の下端部よりも車幅方向外側に突出している。そのため、固定部88bは、外側フレーム152よりも車幅方向外側で下方に延びている。また、連結部88aと、内側フレーム150及び外側フレーム152の前側部分の下端部とは、溶接接合等によって連結されている。
【0048】
他方のステー89(第2支持ステー)は、後側延出部158を車体フレーム18に固定する。すなわち、ステー89は、金属製の部材である。ステー89は、後側延出部158を構成する内側フレーム150の後側部分における屈曲部154近傍の箇所に接触する略U字状の連結部89aと、連結部89aから下方に延び、車体カバー82を貫通して車体フレーム18に連結される固定部89bとから構成される。連結部89aと、内側フレーム150の後側部分の屈曲部154近傍の箇所とは、溶接接合等によって連結されている。
【0049】
また、荷台86には、複数の荷掛フック部160~164が設けられている。荷掛フック部160は、内側フレーム150において、ステー88の連結部88aから内側フレーム150に沿って、前方且つ斜め上方にU字状に突出する部分である。これにより、買い物袋やバッグ等を荷掛フック部160に好適に掛けることができる。
【0050】
荷掛フック部162は、前側傾斜部156におけるステー88と屈曲部154との間の箇所に設けられている。荷掛フック部162は、前側傾斜部156を構成する内側フレーム150及び外側フレーム152の前側部分の下端部に接触して車幅方向に延びる連結部162aと、連結部162aの両端部から前方斜め下方に突出する左右一対の下方突出部162bとから構成される。
【0051】
この場合、連結部162aの両端部は、外側フレーム152の下端部よりも車幅方向外側に突出している。従って、下方突出部162bは、外側フレーム152よりも車幅方向外側で下方に延びている。また、連結部162aと、内側フレーム150及び外側フレーム152の前側部分の下端部とは、溶接接合等によって連結されている。さらに、下方突出部162bは、少なくとも、連結部162aの両端部から下方に突出していればよい。これにより、荷掛用の紐を荷掛フックとしての下方突出部162bに好適に掛けることができる。
【0052】
荷掛フック部164は、後側延出部158におけるステー89よりも後方の箇所に設けられている。荷掛フック部164は、後側延出部158を構成する内側フレーム150及び外側フレーム152の後側部分の下端部に接触して車幅方向に延びる連結部164aと、連結部164aの両端部から後方斜め下方に突出する左右一対の下方突出部164bとから構成される。
【0053】
この場合、連結部164aの両端部は、外側フレーム152の下端部に対して車幅方向内側に位置する。そのため、下方突出部164bは、外側フレーム152よりも車幅方向内側の箇所から下方に延びている。また、連結部164aと、内側フレーム150及び外側フレーム152の後側部分の下端部とは、溶接接合等によって連結されている。また、下方突出部164bは、少なくとも、連結部164aの両端部から下方に突出していればよい。これにより、荷掛用の紐を荷掛フックとしての下方突出部164bに好適に掛けることができる。
【0054】
そして、本実施形態において、前側傾斜部156では、図4Aの断面視で、内側フレーム150の上端部が外側フレーム152の上端部よりも低い。これにより、前側傾斜部156には、外側フレーム152に対して内側フレーム150が凹んでいる凹み部166が形成される。
【0055】
すなわち、内側フレーム150は、小径の棒状部材であり、外側フレーム152は、大径の棒状部材である。また、前側傾斜部156において、内側フレーム150及び外側フレーム152の各下端部は、車幅方向に延びる各連結部88a、162a上に載置された状態で、各連結部88a、162aと連結している。さらに、各連結部88a、162aの両端部は、外側フレーム152よりも車幅方向外側に延びている。そのため、各連結部88a、162aに内側フレーム150及び外側フレーム152の各下端部を連結させることで、凹み部166を容易に形成することができる。
【0056】
これにより、荷台86に荷物を置いたときに、凹み部166の外側フレーム152の内側で該荷物を好適に挟み込むことができる。また、固定部88b及び下方突出部162bは、外側フレーム152の凹み部166の構成部分から下方に延びることになる。さらに、荷掛フック部160は、内側フレーム150の凹み部166の構成部分から前方に突出することになる。
【0057】
また、本実施形態において、後側延出部158では、図4Bの断面視で、内側フレーム150の上端部と外側フレーム152の上端部とが略同じ高さに設定されている。これにより、後側延出部158には、上側部分が平坦な平ら部168が形成される。
【0058】
すなわち、後側延出部158では、内側フレーム150の下端部は、車幅方向に延びる連結部164aに載置された状態で、連結部164aと連結している。また、連結部164aの両端部は、外側フレーム152の車幅方向内側の箇所で連結している。そのため、平ら部168を容易に形成することができる。これにより、平ら部168に荷物を置きやすくなる。また、下方突出部164bは、外側フレーム152の平ら部168の構成部分から下方に延びることになる。
【0059】
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態は、ハンドルバー36(ハンドル)とシート78との間で前後方向に延びる荷台86を備える自動二輪車10(鞍乗型車両)に関する。
【0060】
この場合、荷台86は、内側フレーム150と、外側フレーム152と、内側フレーム150及び外側フレーム152を前後方向に屈曲させた屈曲部154と、内側フレーム150及び外側フレーム152の屈曲部154よりも前側部分であって、前方から屈曲部154に向かって後ろ下がりに傾斜する前側傾斜部156と、内側フレーム150及び外側フレーム152の屈曲部154よりも後側部分であって、屈曲部154から後方に向かって延びる後側延出部158と、前側傾斜部156に形成され、内側フレーム150の上端部が外側フレーム152の上端部よりも低い凹み部166とを備える。後側延出部158は、前側傾斜部156よりも自動二輪車10の水平方向に対する傾斜角度が小さい。
【0061】
この構成によれば、前側傾斜部156よりも傾斜角度の小さい後側延出部158で荷物を支えつつ、前側傾斜部156の凹み部166で荷物を車幅方向に挟むことができる。
【0062】
この場合、後側延出部158は、内側フレーム150の上端部及び外側フレーム152の上端部が略同じ高さの平ら部168を備える。
【0063】
これにより、平ら部168で荷物の荷重を内側フレーム150及び外側フレーム152に分散させながら該荷物を支えることができる。
【0064】
また、外側フレーム152は、内側フレーム150よりも大径の部材である。
【0065】
この構成によれば、荷台86の機械的強度が向上する。これにより、荷台86に荷物が積載された状態で、横方向の加速度が外側フレーム152に作用しても、横方向の加速度による荷重に耐えつつ、荷物を支持することができる。また、内側フレーム150が小径の部材であるため、荷台86全体を軽量化することができる。
【0066】
また、荷台86は、外側フレーム152の凹み部166又は平ら部168の構成部分から下方に延びる下方突出部162b、164bをさらに備える。
【0067】
この構成によれば、内側フレーム150よりも耐荷重性がある外側フレーム152に下方突出部162b、164bが設けられているので、該下方突出部162b、164bを荷掛フックとして使用することが可能となる。
【0068】
また、荷台86は、外側フレーム152の前側傾斜部156の構成部分から下方に延び、自動二輪車10の車体フレーム18(車体)に連結されるステー88(第1支持ステー)をさらに備える。
【0069】
この構成によれば、大径の部材である外側フレーム152からステー88を延ばすことで、高剛性で荷台86を車体フレーム18に支持することができる。
【0070】
また、荷台86は、後側延出部158から下方に延び、車体フレーム18に連結されるステー89(第2支持ステー)をさらに備える。
【0071】
この構成によれば、ステー89を後側延出部158から延ばすことで、前側傾斜部156と後側延出部158とを前後で車体フレーム18に支持することができる。これにより、より高剛性で荷台86を車体フレーム18に支持することができる。
【0072】
また、荷台86は、車幅方向に延び、内側フレーム150及び外側フレーム152の各下端部側を連結する連結部88a、162a、164aをさらに備える。
【0073】
この構成によれば、連結部88a、162a、164aによって内側フレーム150及び外側フレーム152を下方から支持するので、凹み部166及び平ら部168を容易に構成することができる。また、荷台86全体の機械的強度も向上する。
【0074】
また、荷台86は、内側フレーム150の連結部88aから前方に突出する荷掛フック部160をさらに備える。
【0075】
この構成によれば、大径の部材である外側フレーム152により荷物を車幅方向に挟みつつ、荷掛フック部160を用いて荷物の荷掛を容易に行うことができる。
【0076】
さらに、後側延出部158は、後方に向かって後ろ上がりに傾斜する後側傾斜部である。
【0077】
この構成によれば、車体フレーム18の形状に応じて荷台86を構成することができる。また、前側傾斜部156の凹み部166で荷物を車幅方向に挟みつつ、後側延出部158で荷物を支えることができる。
【0078】
さらにまた、外側フレーム152の前端部又は後端部の少なくとも一方は、前後方向の先端に向かって先細る形状である。
【0079】
この構成によれば、荷台86に直角の角部が存在しなくなるので、運転者(乗員)が跨ぎ部84を跨ぎやすくなる。
【0080】
以上、本発明について好適な実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記の実施形態の記載範囲に限定されることはない。上記の実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは、当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定されて解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
10…自動二輪車(鞍乗型車両) 36…ハンドルバー
78…シート 86…荷台
150…内側フレーム 152…外側フレーム
154…屈曲部 156…前側傾斜部
158…後側延出部 166…凹み部
168…平ら部
図1
図2
図3
図4