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特開2022-155676ルーバー装置、及びヘッドアップディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155676
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ルーバー装置、及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20221006BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059022
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】板垣 惇平
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA29
2H199DA32
2H199DA33
3D344AA16
3D344AA21
3D344AA28
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】 ヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置において、視認者の視点高さ位置に応じた、ルーバーの傾斜角の調整を容易化する。
【解決手段】 ヘッドアップディスプレイ装置等の光出射部OPに設けられるルーバー装置は、光出射部から出射される画像の表示光を透過する光透過部7、及び厚み方向に対する傾斜角が異なる複数のルーバー8を備えるルーバー構造34と、ヘッドアップディスプレイ装置の表示像を視認する視認者の視点高さ位置に対応して、ルーバー構造34を、第1の方向(+Z方向)、又は第1の方向とは反対の第2の方向(-Z方向)に移動させる駆動部32と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置であって、
前記光出射部から出射される画像の表示光を透過する光透過部、及び厚み方向に対する傾斜角が異なる複数のルーバーを備えるルーバー構造と、
前記表示装置の表示像を視認する視認者の視点高さ位置に対応して、前記ルーバー構造を、第1の方向、又は前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動させる駆動部と、
を有するルーバー装置。
【請求項2】
前記視認者から見て、前方を前記第1の方向とし、後方を前記第2の方向とする場合に、
前記ルーバーの傾斜角は、前方側が小さく、後方側が大きく設定され、
前記駆動部は、視点が通常位置よりも高い場合には、前記ルーバー構造を後方に移動させ、低い場合には前方に移動させる、
請求項1に記載のルーバー装置。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記視点高さ位置の検出情報、
及び、
前記ヘッドアップディスプレイ装置から供給される前記視点高さ位置を推定可能な情報の少なくとも一方に基づいて、
前記視点高さ位置に対応するように、前記ルーバー構造を自動的に移動させる、
請求項1又は2に記載のルーバー装置。
【請求項4】
画像を表示する画像表示部と、
前記画像の表示光を導光する光学系と、
前記表示光を出射する光出射部と、
画像表示を制御する制御部と、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のルーバー装置と、
を有するヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
画像を表示する画像表示部と、
前記画像の表示光を導光する光学系と、
前記表示光を出射する光出射部と、
画像表示を制御する制御部と、
請求項3に記載のルーバー装置と、
を有し、
前記光学系は、車両のウインドシールドに、画像の表示光を投射する、回転可能な、又は、位置が固定の曲面ミラーを有し、
前記制御部は、
前記曲面ミラーが回転可能である場合は、視認者の視点高さ位置に応じて、曲面ミラーを回転させ、その回転情報を、前記視点高さ位置を推定可能な情報として、前記ルーバー装置に供給し、
前記曲面ミラーの位置が固定である場合は、視認者の視点高さ位置に応じて、前記画像表示部における画像の表示位置を変更し、あるいは、前記光学系における可動の光学要素の位置を変更し、それらの変更情報を、前記視点高さ位置を推定可能な情報として、前記ルーバー装置に供給する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記光出射部は、前記表示光を出射する開口を覆う透光部材を有し、
前記ルーバー構造は、前記透光部材の少なくとも一部を覆うように設けられ、
前記透光部材の、前記ルーバー構造によって覆われない部分には、遮光部が形成されている、
請求項4又は5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迷光を抑制する機能をもつルーバー装置、及び、車両(乗り物)のウインドシールドやコンバイナ等の被投影部材に画像の表示光を投影(投射)し、運転者の前方等に虚像を表示するヘッドアップディスプレイ(Head-up Display:HUD)装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
迷光対策として、ルーバー装置を採用したHUD装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1の[0046]には、「この場合、図7に示すように、ルーバー5を各々異なる傾斜角度に調整可能な駆動手段6と、この駆動手段6を制御する制御手段7と、を備え、制御手段7は、アイポイントEPを計測する視点検出手段8からの視点情報を入力し、各ルーバー5が所望の傾斜角度になるように駆動手段6を制御するように構成することで実現できる。」と記載されている。
【0004】
また、特許文献1の[0047]には、「なお、駆動手段6は、通電により駆動力を発生するステッピングモータの回動を利用して、ルーバー5の傾斜角度を変化させることができる。なお、駆動手段6は、リードスクリュータイプ、ラックアンドピニオンタイプ、またはステッピングモータが、ギア等を介して各ルーバー5の軸部を回動させる構成であっても適用できる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-165163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、[0047]の末尾において、「・・・ステッピングモータが、ギア等を介して各ルーバー5の軸部を回動させる構成であっても適用できる。」と記載されているように、各ルーバーの傾斜角を、個別に調整する構成が想定されているが、この場合、高精度な調整には、ある程度の手間がかかるのは否めない。また、駆動装置等の大型化や複雑化を抑制することも課題となり得る。
【0007】
本発明の目的の1つは、例えばヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置において、視認者の視点高さ位置に応じた、ルーバーの傾斜角の調整を容易化することである。
【0008】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0010】
第1の態様において、ルーバー装置は、
ヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置であって、
前記光出射部から出射される画像の表示光を透過する光透過部、及び厚み方向に対する傾斜角が異なる複数のルーバーを備えるルーバー構造と、
前記表示装置の表示像を視認する視認者の視点高さ位置に対応して、前記ルーバー構造を、第1の方向、又は前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動させる駆動部と、
を有する。
【0011】
第1の態様によれば、視点高さ位置に対応させて、ルーバー構造を前後に駆動させるだけで、各ルーバーを、視点高さに応じた最適な角度に調整可能である。よって、個々にルーバーを駆動させる機構が不要となり、調整が容易となり、また、装置の小型化、複雑化の抑制等も実現される。
【0012】
第1の態様に従属する第2の態様では、
前記視認者から見て、前方を前記第1の方向とし、後方を前記第2の方向とする場合に、
前記ルーバーの傾斜角は、前方側が小さく、後方側が大きく設定され、
前記駆動部は、視点が通常位置よりも高い場合には、前記ルーバー構造を後方に移動させ、低い場合には前方に移動させてもよい。
【0013】
第2の態様によれば、ルーバー構造を前後方向に直線的に移動させることで、各ルーバーの傾斜角を一括して調整可能である。ルーバー構造の前後方向の移動は、例えばラックアンドピニオン機構の使用等により、あるいは、ルーバーフィルムのローラによる巻取り等によって、比較的容易に実現可能である。
【0014】
第1又は第2の態様に従属する第3の態様において、
前記駆動部は、
前記視点高さ位置の検出情報、
及び、
前記ヘッドアップディスプレイ装置から供給される前記視点高さ位置を推定可能な情報の少なくとも一方に基づいて、
前記視点高さ位置に対応するように、前記ルーバー構造を自動的に移動させてもよい。
【0015】
本態様によれば、視点の高さ位置に応じてルーバー構造を移動させる作業を、自動化することができる。この移動は、視認者(運転者等)が操作ボタン等を操作して、マニュアルにて行うこともできるが、本態様によれば、このマニュアル操作が不要となり、視認者の負担が軽減される。
【0016】
また、ルーバー構造の移動の制御は、視点位置の検出情報、及び視点高さ位置を推定可能な情報の2種類の情報の少なくとも一方を用いて行うことができ、これらの情報を活用して、例えばルーバー構造の移動の精度を高めることも可能である。
【0017】
第4の態様において、ヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を表示する画像表示部と、
前記画像の表示光を導光する光学系と、
前記表示光を出射する光出射部と、
画像表示を制御する制御部と、
第1乃至第3の何れか1つの態様のルーバー装置と、
を有する。
【0018】
第4の態様では、ルーバー装置を、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)の構成要素の一つとして取り扱う。本態様によれば、ルーバーを用いた光ガイド(ウェーブガイド)型のHUD装置を実現できる。
【0019】
第5の態様において、ヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を表示する画像表示部と、
前記画像の表示光を導光する光学系と、
前記表示光を出射する光出射部と、
画像表示を制御する制御部と、
第3の態様のルーバー装置と、
を有し、
前記光学系は、車両のウインドシールドに、画像の表示光を投射する、回転可能な、又は、位置が固定の曲面ミラーを有し、
前記制御部は、
前記曲面ミラーが回転可能である場合は、視認者の視点高さ位置に応じて、曲面ミラーを回転させ、その回転情報を、前記視点高さ位置を推定可能な情報として、前記ルーバー装置に供給し、
前記曲面ミラーの位置が固定である場合は、視認者の視点高さ位置に応じて、前記画像表示部における画像の表示位置を変更し、あるいは、前記光学系における可動の光学要素の位置を変更し、それらの変更情報を、前記視点高さ位置を推定可能な情報として、前記ルーバー装置に供給する。
【0020】
第5の態様では、第4の態様と同様に、ルーバー装置を、HUD装置の構成要素として取り扱うことができる。但し、本態様では、視点高さ位置検出情報、及び視点高さ位置を推定可能な情報の少なくとも一方に基づいて、ルーバー構造を自動的に移動させることが可能である。
【0021】
ここで、視点高さ位置を推定可能な情報としては、表示光をウインドシールドに投射(例えば拡大投射)する曲面ミラー(凹面鏡等)が回転可能であるときは、その回転情報を使用することができる。
【0022】
また、曲面ミラー(凹面鏡等)が位置固定(不可動)である場合は、画像表示部における画像の表示位置の変更情報、あるいは、光学系における可動の光学要素の位置の変更情報を、視点高さ位置を推定可能な情報として使用することができる。
【0023】
視点(目)の高さ位置は、例えば、カメラ等による視点(目)の撮像画像に画像処理を施すことで検出可能である。但し、HUD装置の内部では、その検出結果を受けて、制御部が必要な処理を行う。
【0024】
その結果として、例えば、上記のような変更情報が得られる。これらの変更情報は、表示光の進路を直接的に決定する制御結果を示す電気信号等であり、よって、精度が高く、視点高さ位置推定のための情報として活用可能である。
【0025】
その視点高さ位置の推定情報(制御結果を示す精度の高い電気信号等)を、ルーバー構造の駆動部にも供給する。駆動部が、その情報に基づいてルーバー構造を移動させた場合、HUD装置内部における表示光の進路を変更するための各部の動作と、ルーバー移動動作とが、共通の精度の高い情報に基づいて連動することになり、よって、表示光の進路変更動作とルーバー移動動作との間に不整合が生じない。よって、表示光は、ルーバーを通過して、確実に視点(目)に届くことになる。
【0026】
第4又は第5の態様に従属する第6の態様では、
前記光出射部は、前記表示光を出射する開口を覆う透光部材を有し、
前記ルーバー構造は、前記透光部材の少なくとも一部を覆うように設けられ、
前記透光部材の、前記ルーバー構造によって覆われない部分には、遮光部が形成されていてもよい。
【0027】
第6の態様では、例えばルーバー構造の直下に埃を防ぐカバーガラス等の透光部材を、HUD装置の筐体に設けられた開口を覆うように設置し、ルーバーが存在しない領域を遮光するように、例えば、反射防止塗装による遮光部を、透光部材の一部において形成する。これによって、ルーバーが存在しない領域に起因する迷光の発生を確実に防止することができる。
【0028】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、視点高さ位置が異なる場合の虚像表示について説明するための図である。
図2図2(A)は、視点高さ位置が低い場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の移動制御例を示す図、図2(B)は、視点高さ位置が高い場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の移動制御例を示す図である。
図3図3(A)は、ルーバー構造の特徴の一例を示す図、図3(B)は、傾斜角が徐々に変化するルーバーの配列を示す図である。
図4図4は、ルーバー構造の具体例について説明するための図である。
図5図5(A)は、ルーバー構造の駆動部の構成の一例を示す図、図5(B)は、他の例を示す図である。
図6図6(A)、図6(B)は、出射角分布の視点の高さ依存性について説明するための図である。
図7図7(A)、(B)は、視点高さ位置を推定可能な情報に基づいてルーバー構造の移動を制御するHUD装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0031】
(第1の実施形態)
図1を参照する。図1は、視点高さ位置が異なる場合の虚像表示について説明するための図である。図1では、車載のHUD装置によって、画像(虚像)Vが、視認者の前方に表示されている。
【0032】
図1において、X方向は運転者から見た左右方向(車両の幅方向)であり、Y方向は車両の高さ方向(単に高さ方向という)であり、+X方向は視認者(運転者等)から見て前方であり、-X方向は後方である。なお、+X方向を第1方向、-X方向を第2方向と称する場合がある。
【0033】
図1では、視点高さ位置が異なる3つの視点(運転者等の目)Eが示されている。図中、Htは高い位置(トーラー位置)、Hnは通常位置(ノミナル位置)、Hsは低い位置(ショーター位置)を示す。
【0034】
視点(目)位置は、視点検出用のカメラ50により撮像され、例えば画像処理によって視点高さ位置等が検出される。
【0035】
視認者の前方には、虚像Vが表示される。但し、視認者が、その虚像Vを視認するためには、画像(虚像)の表示光を、各高さ位置にある視点(目)に確実に照射する必要がある。
【0036】
次に、図2を参照する。図2(A)は、視点高さ位置が低い場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の移動制御例を示す図、図2(B)は、視点高さ位置が高い場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の移動制御例を示す図である。
【0037】
図2(A)では、視点(目)Eは、ショーター位置Hsにあり、図2(B)では、視点(目)Eは、トーラー位置Htにある。
【0038】
図2(A)、(B)において、HUD装置は、例えば車両のダッシュボード(あるいはインストルメントパネル)4内に設置されている。
【0039】
HUD装置は、筐体21と、表示器22を備える画像表示部(単に表示部と称する場合がある)24と、反射ミラー26と、表示光を車両のウインドシールド2に投射(拡大投射)する曲面ミラー28と、開口部(言い換えれば、筐体21の光出射部に設けられた開口であり、単に開口と称する場合もある)OPを覆って埃等の筐体21の内部への進入を阻止する透光部材(カバーガラス等)12と、を備える。なお、RS1、RS2は、曲面ミラー28の反射領域である。
【0040】
開口部OP及び透光部材(カバーガラス等)12は、表示光を、HUD装置の外部に出射する光出射部として機能する。透光部材(カバーガラス等)12は平板状であり、湾曲していないため、HUD装置の高さの増大を抑制可能である。
【0041】
また、ルーバー装置は、複数の傾斜角が調整された、非平行の複数のルーバー8、及びルーバー8の間に設けられる光透過部7を有するルーバー構造34と、駆動部32と、を含む。
【0042】
ルーバーの傾斜角は、前方側が小さく、後方側が大きく設定され(この点については後述する)、駆動部32は、視点が通常位置よりも高い場合には、ルーバー構造を後方(第2方向:図2(B)参照)に移動させ、低い場合には前方(第1方向:図2(B)参照)に移動させる。この構成によれば、ルーバー構造34を例えば、前後方向に直線的に移動させることで、各ルーバー8の傾斜角を一括して調整可能である。
【0043】
上記のとおり、駆動部32は、ルーバー構造34を、+Z方向(第1方向、前方)、あるいは-Z方向(第2方向、後方)に移動させることができる。駆動部32の動作は、制御部30によって制御される。駆動部の具体例については後述する。
【0044】
このルーバー装置は、HUD装置とは別の装置とみることができ、また、HUD装置の構成要素の1つとみることもできる。前者の場合、ルーバー装置は、種々のHUD装置(広義には表示装置)に適用することができる。また、後者の場合、ライトガイド(ウェーブガイド)型のHUD装置が実現される。
【0045】
制御部30は、HUD装置用の制御機能と、ルーバー装置用の制御機能とを合わせもつことができる。但し、例えば、回路基板に複数のプロセッサを搭載し、1つのプロセッサをHUD装置の制御用として使用し、他のプロセッサをルーバー装置の制御用に使用してもよい。このような変形は、適宜、なし得る。
【0046】
また、図2(A)、(B)では、制御部30は、HUD装置の筐体21の外に設けられているが、筐体21の内部に設けることもできる。制御部30を設ける箇所は、特に限定されない。
【0047】
また、図2(A)、(B)においては、制御部30には、視点検出用のカメラ50からの撮像情報に基づいて視点位置(視点高さ位置を含む)を検出する機能を有する。但し、これに限定されるものではない。例えば、視点高さ位置を検出する部分(例えば画像処理部)を、制御部30とは別に設けてもよい。
【0048】
ルーバー構造34は、光出射部を構成する透光部材(カバーガラス等)12の少なくとも一部を覆うように設けられる。例えば、ルーバー構造34は、透光部材12の上に載置されてもよい。また、その載置に際しては、支持枠、支持台、スペーサ等を使用してもよい。
【0049】
上述のとおり、光出射部は、表示光を出射する開口OPを覆う透光部材12を有し、ルーバー構造34は、透光部材12の少なくとも一部を覆うように設けられている。また、透光部材12の、ルーバー構造34によって覆われない部分には、遮光部11が形成されている。
【0050】
言い換えれば、ルーバー構造34の直下に埃等を防ぐカバーガラス等の透光部材12を、HUD装置の筐体に設けられた開口を覆うように設置し、ルーバー8(あるいはルーバー構造34)が存在しない領域を遮光するように、例えば、反射防止塗装による遮光部11が、透光部材の一部において設けられる。これによって、ルーバー8が存在しない領域に起因する迷光の発生を確実に防止することができる。
【0051】
また、図2(A)の左側に示されるように、外光LQがHUD装置に進入しようとしても、ルーバー8によって阻止されるため、画像(虚像)の視認に影響を与える迷光は発生しない。
【0052】
また、図2(A)、(B)に示されるとおり、視点高さ位置に対応させて、ルーバー構造34を前後に駆動させるだけで、各ルーバー8を、視点高さに応じた最適な角度に調整可能である。よって、個々にルーバーを駆動させる機構が不要となり、調整が容易となり、また、装置の小型化、複雑化の抑制等も実現される。また、ルーバー8の傾斜角が適正に調整されることから、視点の高さに関係なく、表示光を視点まで、確実に到達させることができる。
【0053】
次に、図3を参照する。図3(A)は、ルーバー構造の特徴の一例を示す図、図3(B)は、傾斜角が徐々に変化するルーバーの配列を示す図である。図3において、前掲の図と共通する部分には同じ符号を付している。
【0054】
まず、図3(A)を参照する。なお、図3(A)では、ルーバー構造34については、説明の便宜上、4本のルーバー8のみを抽出して簡略化して示している。(詳細な構成は後述する)。
【0055】
また、ルーバー8の傾斜角は、ルーバー構造34の厚み方向(この厚み方向は、言い換えれば、光出射部の構成要素である透光部材12の平坦な表面に対する法線方向ということもできる)からの傾き角とする。なお、透光部材12が水平に配置されているとすると、上記の厚み方向は、高さ方向(Y方向)と一致する。
【0056】
4本のルーバー8の各傾斜角は、前方側から後方側に向かって、θra、θrb、θrc、θrdに設定され、前方側の傾斜角は後方側の傾斜角よりも小さい。
【0057】
具体的には、好ましくは、θra<θrb<θrc<θrdが成立するように、傾斜角を徐々に変化させる。また、透光部材(カバーガラス)12の一部には、上述のとおり、遮光部11が設けられている。また、外光LQは、ルーバー8によってHUD装置の内部への進入が阻止され、また、画像(虚像)の視認に悪影響を与える迷光も生じない。
【0058】
次に、図3(B)を参照する。図3(B)では、11本のルーバー8が例示されている。各ルーバーの傾斜角は、θr1~θr11に設定されている。θr1~θr11は徐々に大きくなるのが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば隣接するルーバーの傾斜角が実質的に差のないものとなることも許容され得る。全体として、前方側よりも後方側の傾斜角が大きく設定される傾向があればよい。
【0059】
次に、図4を参照する。図4は、ルーバー構造の具体例について説明するための図である。
【0060】
ルーバー構造34は、例えば、ルーバーフィルム(あるいはルーバーシート)として実現可能である。ルーバーフィルムは、具体的には、一対の保護層としての透明フィルム10、10の間に、ルーバー構造の厚み方向(あるいは、保護層である透明フィルム10の厚み方向)に対して角度を有するように複数が間隔を隔てて、傾斜したルーバー(フィラーということもできる)を配置して構成される。なお、一対の保護層10、10は、特に限定されるものではないが、好ましい一例では、互いに平行に配置される。また、各ルーバー8間に光透過部7が形成される。また、各ルーバー8は、図4に示されるように、矩形かつ平板の遮光部材として形成することができる。
【0061】
各ルーバー8は、微小なものである。例えば、ルーバー間のピッチは、例えば1mm~5mm程度である。また、ルーバー構造34の厚み(厚さ)は、例えば、0.02mm~0.08m程度である。微細なルーバー構造は、例えば、MEMS加工技術を使用して製造可能である。
【0062】
次に、図5を参照する。図5(A)は、ルーバー構造の駆動部の構成の一例を示す図、図5(B)は、他の例を示す図である。
【0063】
図5(A)では、ルーバー構造34の駆動部32として、ラック37とピニオン35を組み合わせた、ラックアンドピニオン機構を用いている。図5(B)では、ローラ39による巻取り機構を用いている。これらは例示であり、これらに限定されるものではない。
【0064】
次に、図6を参照する。図6(A)、図6(B)は、出射角分布の視点の高さ依存性について説明するための図である。
【0065】
図6(B)に示すように、表示光L1の出射角θpを定める。出射角は、ルーバー34の厚み方向(あるいは保護層10の厚み方向)に対する角度である。なお、図6(B)において、θrは、先に説明したルーバー8の傾斜角である。
【0066】
図6(A)において、Dnは、視点がトーラー位置Htのときの、Z方向位置(前後方向位置)に対する出射角の分布を示す。同様に、Dnはノミナル位置における出射角の分布を示し、Dsは、ショーター位置における出射角の分布を示す。
【0067】
各分布は、Z方向(前後方向)に少しずつ位置がずれている。この位置ずれを考慮して、駆動部32は、ルーバー構造34を移動させる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、図7を参照する。図7(A)、(B)は、視点高さ位置を推定可能な情報に基づいてルーバー構造の移動を制御するHUD装置の構成例を示す図である。図7において、図2と共通する部分には、同じ参照符号を付している。構成自体は、図2に示される構成と同様である。
【0069】
図7では、視点高さ位置検出情報、及び視点高さ位置を推定可能な情報の少なくとも一方に基づいて、ルーバー構造を自動的に移動させることが可能である。以下の説明では、視点高さ位置を推定可能な情報を、積極的に活用して制御精度を高める例について説明する。
【0070】
ここで、視点高さ位置を推定可能な情報としては、表示光をウインドシールド2に投射(例えば拡大投射)する曲面ミラー(凹面鏡等)28が回転可能であるときは、その回転情報を使用することができる。ここで、図7(B)を参照すると、曲面ミラー28は、回転駆動機構70によって駆動可能である。この回転駆動の結果(具体的には回転角)を示す回転情報S5が、例えば、制御部30から、駆動部32に、制御情報S4として供給され得る。
【0071】
また、曲面ミラー(凹面鏡等)28が位置固定(不可動)である場合(図7(A)の場合)は、画像表示部24における表示器22の表示面(不図示)上における画像の表示位置の変更情報(例えば、画像位置がP1からP2に変更されたことを示す位置シフト情報S2)、あるいは、光学系における可動の光学要素(例えば可動の微小ミラー等)25による、表示光の光路の変更情報(例えば可動の光学要素25の回転情報(例えば回転角))S3を、視点高さ位置を推定可能な情報として使用することができる。
【0072】
視点(目)の高さ位置は、例えば、カメラ50等による視点(目)の撮像画像に画像処理を施すことで検出可能である。但し、HUD装置の内部では、その検出結果を受けて、制御部30が必要な処理を行う。
【0073】
その結果として、例えば、上記のような変更情報が得られる。これらの変更情報は、表示光の進路を直接的に決定する制御結果を示す電気信号等であり、よって、精度が高く、視点高さ位置推定のための情報として活用可能である。
【0074】
その視点高さ位置の推定情報(制御結果を示す精度の高い電気信号等)S2、S3、S5を、ルーバー構造の駆動部32に、制御情報S4として供給する。
【0075】
駆動部32が、その情報に基づいてルーバー構造34を移動させた場合、HUD装置内部における表示光の進路を変更するための各部の動作と、ルーバー移動動作とが、共通の精度の高い情報に基づいて連動することになり、よって、表示光の進路変更動作とルーバー移動動作との間に不整合が生じない。よって、表示光は、ルーバーを通過して、確実に視点(目)に届くことになる。
【0076】
なお、図7(B)では、曲面ミラー(凹面鏡等:自由曲面を有する曲面ミラーであってもよい)28を回転駆動しているが、この場合、制御誤差が生じる可能性があることは否めない。この誤差が問題になる場合は、図7(A)に示すような、曲面ミラー28を回転させず、画像の表示位置を変更したり、可動光学素子の位置変化によって表示光の進路を変更したりする方式の採用が有利となる。
【0077】
以上説明したように、本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ装置(広義には表示装置)の光出射部に設けられるルーバー装置において、視認者の視点高さ位置に応じた、ルーバーの傾斜角の調整を容易化することができる。
【0078】
本発明は、左右の各眼に同じ画像の表示光を入射させる単眼式、左右の各眼に、視差をもつ画像を入射させる視差式のいずれのHUD装置においても使用可能である。
【0079】
また、視点に追従して、局所的な照明を実施する視点追従スポットライティング制御を行う場合にも本発明を適用可能である。
【0080】
本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、HUD装置には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ)として使用されるものも含まれるものとする。
【0081】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0082】
2・・・ウインドシールド(被投影部材)、7・・・光透過部、8・・・ルーバー(ルーバー片、フィラー)、10・・・保護層、11・・・遮光部、12・・・透光部材(カバーガラス等)、21・・・筐体、22・・・表示器、24・・・画像表示部(表示部)、26・・・反射ミラー、28・・・曲面ミラー(凹面鏡等)、30・・・制御部、32・・・駆動部、34・・・ルーバー構造(ルーバー構造体、ルーバー部材)、50・・・カメラ(視点検出用の瞳や顔の撮像部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7