(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155702
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20221006BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20221006BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20221006BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 E
G08G1/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059061
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長岡 伸治
(72)【発明者】
【氏名】菅野 勇希
(72)【発明者】
【氏名】奥津 良太
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241CD12
3D241CE02
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3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241DB01Z
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3D241DC02Z
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3D241DC59Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC24
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】自車両が湿潤状態にある路面を走行している状況において、自車両の横方向への移動をより安定的に制御することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】自車両周辺の状況を認識する認識部と、前記認識部による自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成部と、を備え、前記認識部は、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、前記行動計画生成部は、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成する、車両制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の状況を認識する認識部と、
前記認識部による自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成部と、
を備え、
前記認識部は、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、
前記行動計画生成部は、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記行動計画生成部は、前記認識部による道路区画線の認識精度が規定の許容範囲を超えて低下した場合に、自車両と前記他車両との車間距離を長くする第1の行動計画を生成する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記認識部による道路区画線の認識精度が規定の許容範囲を超えて低下した場合とは、前記車間距離の認識結果のゆらぎの大きさが第1閾値以上となった場合である、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記行動計画生成部は、前記車間距離の認識結果のゆらぎの大きさが第1閾値よりも小さい第2閾値以下となった場合に、自車両と前記他車両との車間距離を短くする第2の行動計画を生成する、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記行動計画生成部は、自車両の現在の走行速度に応じて変更後の車間距離を決定する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記認識部は、前記第1の行動計画によって自車両の走行制御が行われても前記道路区画線の認識精度が前記許容範囲の範囲内に改善しない場合、前記他車両が走行した道路の画像から前記他車両の走行軌跡を前記道路区画線の代替物標として認識する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
コンピュータが、
自車両周辺の状況を認識する認識処理と、
前記認識処理における自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成処理と、
を実行し、
前記認識処理において、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、
前記行動計画生成処理において、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成する、
車両制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
自車両周辺の状況を認識する認識処理と、
前記認識処理における自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成処理と、
を実行させ、
前記認識処理において、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識させ、
前記行動計画生成処理において、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行制御において、道路区画線や前走車両を認識し、これらの位置を基準として車両の横方向の移動を制御する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、雨天時等において自車両が湿潤状態にある路面を走行している状況において、前走車両が巻き上げる水の影響により、道路区画線の認識が困難になったり、前走車両の認識精度が低下したりして横制御の安定性が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、自車両が湿潤状態にある路面を走行している状況において、自車両の横方向への移動をより安定的に制御することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両周辺の状況を認識する認識部と、前記認識部による自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成部と、を備え、前記認識部は、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、前記行動計画生成部は、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記行動計画生成部は、前記認識部による道路区画線の認識精度が規定の許容範囲を超えて低下した場合に、自車両と前記他車両との車間距離を長くする第1の行動計画を生成するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記認識部による道路区画線の認識精度が規定の許容範囲を超えて低下した場合とは、前記車間距離の認識結果のゆらぎの大きさが第1閾値以上となった場合である。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記行動計画生成部は、前記車間距離の認識結果のゆらぎの大きさが第1閾値よりも小さい第2閾値以下となった場合に、自車両と前記他車両との車間距離を短くする第2の行動計画を生成するものである。
【0010】
(5):上記(2)から(4)のいずれかの態様において、前記行動計画生成部は、自車両の現在の走行速度に応じて変更後の車間距離を決定するものである。
【0011】
(6):上記(2)から(5)のいずれかの態様において、前記認識部は、前記第1の行動計画によって自車両の走行制御が行われても前記道路区画線の認識精度が前記許容範囲の範囲内に改善しない場合、前記他車両が走行した道路の画像から前記他車両の走行軌跡を前記道路区画線の代替物標として認識するものである。
【0012】
(7):この発明の一態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、自車両周辺の状況を認識する認識処理と、前記認識処理における自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成処理と、を実行し、前記認識処理において、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、前記行動計画生成処理において、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成するものである。
【0013】
(8):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、自車両周辺の状況を認識する認識処理と、前記認識処理における自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成処理と、を実行させ、前記認識処理において、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識させ、前記行動計画生成処理において、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成させるものである。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)~(8)の態様によれば、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更することにより、自車両が湿潤状態にある路面を走行している状況において、自車両の横方向への移動をより安定的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。
【
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
【
図3】運転モードと自車両の制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。
【
図4】行動計画生成部が有する湿潤時行動計画機能の概略を説明する図である。
【
図5】行動計画生成部が実行する湿潤時行動計画生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】認識部が有する代替物標認識機能の概略を説明する図である。
【
図7】行動計画生成部が、代替物標の認識結果に基づいて行動計画を生成する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0018】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0019】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0020】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0021】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0022】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0023】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0024】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0025】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0026】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0027】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0028】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報、後述するモードAまたはモードBが禁止される禁止区間の情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0029】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、自車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。
【0030】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイール82は、「運転者による操舵操作を受け付ける操作子」の一例である。操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持している(力を加えられる状態で接していることをいう)か否かを検知可能な信号を自動運転制御装置100に出力する。
【0031】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置100は「車両制御装置」の一例である。
【0032】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0033】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0034】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0035】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0036】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0037】
具体的には、本実施形態の自動運転制御装置100において、行動計画生成部140は、降雨時や湿潤状態の路面を走行しているときに、道路区画線の認識精度が低下することによって車両の横方向への移動制御が不安定になることを抑制するように目標軌道を生成する機能(以下「湿潤時行動計画機能」)を有する。湿潤時行動計画機能の詳細については後述する。
【0038】
なお、行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0039】
モード決定部150は、自車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。モード決定部150は、例えば、運転者状態判定部152と、モード変更処理部154とを備える。これらの個別の機能については後述する。
【0040】
図3は、運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。自車両Mの運転モードには、例えば、モードAからモードEの5つのモードがある。制御状態すなわち自車両Mの運転制御の自動化度合いは、モードAが最も高く、次いでモードB、モードC、モードDの順に低くなり、モードEが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、モードAが最も軽度であり、次いでモードB、モードC、モードDの順に重度となり、モードEが最も重度である。なお、モードDおよびEでは自動運転でない制御状態となるため、自動運転制御装置100としては自動運転に係る制御を終了し、運転支援または手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0041】
モードAでは、自動運転の状態となり、運転者には前方監視、ステアリングホイール82の把持(図ではステアリング把持)のいずれも課されない。但し、モードAであっても運転者は、自動運転制御装置100を中心としたシステムからの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される自車両Mの進行方向の空間を意味する。モードAは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度(例えば50[km/h]程度)以下で自車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードであり、TJP(Traffic Jam Pilot)と称される場合もある。この条件が満たされなくなった場合、モード決定部150は、モードBに自車両Mの運転モードを変更する。
【0042】
モードBでは、運転支援の状態となり、運転者には自車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。モードCでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。モードDは、自車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、モードDでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が行われる。モードEでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。モードD、モードEともに、当然ながら運転者には自車両Mの前方を監視するタスクが課される。
【0043】
自動運転制御装置100(および運転支援装置(不図示))は、運転モードに応じた自動車線変更を実行する。自動車線変更には、システム要求による自動車線変更(1)と、運転者要求による自動車線変更(2)がある。自動車線変更(1)には、前走車両の速度が自車両の速度に比して基準以上に小さい場合に行われる、追い越しのための自動車線変更と、目的地に向けて進行するための自動車線変更(推奨車線が変更されたことによる自動車線変更)とがある。自動車線変更(2)は、速度や周辺車両との位置関係等に関する条件が満たされた場合において、運転者により方向指示器が操作された場合に、操作方向に向けて自車両Mを車線変更させるものである。
【0044】
自動運転制御装置100は、モードAにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行しない。自動運転制御装置100は、モードBおよびCにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行する。運転支援装置(不図示)は、モードDにおいて、自動車線変更(1)は実行せず自動車線変更(2)を実行する。モードEにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行されない。
【0045】
モード決定部150は、決定した運転モード(以下、現運転モード)に係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに自車両Mの運転モードを変更する。
【0046】
例えば、モードAにおいて運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢である場合(例えば許容エリア外の脇見を継続している場合や、運転困難となる予兆が検出された場合)、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。自動運転を停止した後は、自車両はモードDまたはEの状態になり、運転者の手動操作によって自車両Mを発進させることが可能となる。以下、「自動運転を停止」に関して同様である。モードBにおいて運転者が前方を監視していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。モードCにおいて運転者が前方を監視していない場合、或いはステアリングホイール82を把持していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を、および/またはステアリングホイール82を把持するように促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。
【0047】
運転者状態判定部152は、上記のモード変更のために運転者の状態を監視し、運転者の状態がタスクに応じた状態であるか否かを判定する。例えば、運転者状態判定部152は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して姿勢推定処理を行い、運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢であるか否かを判定する。また、運転者状態判定部152は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して視線推定処理を行い、運転者が前方を監視しているか否かを判定する。
【0048】
モード変更処理部154は、モード変更のための各種処理を行う。例えば、モード変更処理部154は、行動計画生成部140に路肩停止のための目標軌道を生成するように指示したり、運転支援装置(不図示)に作動指示をしたり、運転者に行動を促すためにHMI30の制御をしたりする。
【0049】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0050】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0051】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0052】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0053】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0054】
[湿潤時行動計画機能]
図4は、行動計画生成部140が有する湿潤時行動計画機能の概略を説明する図である。
図4に示すグラフG1およびG2は、それぞれに対応する走行状況において自車両M1と、自車両M1の前を走行する前走車両M2との間の距離の認識結果の一例を示すグラフである。グラフG1およびG2はいずれも、雨天時等において自車両が湿潤状態にある路面を走行している状況における前走車両との車間距離の認識結果を表すものである。グラフG1は自車両M1と前走車両M2との車間距離が比較的短い状況(以下「第1の走行状況」という。)における認識結果を表し、グラフG2は自車両M1と前走車両M2との車間距離が比較的長い状況(以下「第2の走行状況」という。)における認識結果を表している。
図4は、第1の走行状況における車間距離がXaであり、第2の走行状況における車間距離がXb(>Xa)である状況を表している。自車両M1と前走車両M2との車間距離は、例えば認識部130によって認識され、行動計画生成部140に通知される。
【0055】
第1の走行状況は、自車両M1と前走車両M2との車間距離が短いことにより、自車両M1の前方の道路区画線の大部分が前走車両M2の巻き上げた水(以下「水幕」ともいう。)によって覆い隠されてしまい、自車両M1による道路区画線の認識が困難となっている状況である。また、第1の走行状況は、水幕の影響により、自車両M1による前走車両M2の認識も困難となっている状況である。前走車両M2の認識精度の低下は、自車両M1と前走車両M2との車間距離の認識結果のゆらぎが大きいことによって確認される(例えばグラフG1参照)。
【0056】
第2の走行状況は、前走車両M2が巻き上げた水幕の影響により、自車両M1による前走車両M2の認識精度が低下している状況である点では第1の走行状況と類似している。前走車両M2の認識精度の低下は、第1の走行状況の場合と同様に、自車両M1と前走車両M2との車間距離の認識結果のゆらぎが大きいことによって確認される(例えばグラフG2参照)。一方、第2の走行状況は、自車両M1と前走車両M2との車間距離が長いことにより、自車両M1の前方の道路区画線において、前走車両M2が巻き上げた水幕の影響を受けない(すなわち水幕によって覆い隠されない)範囲が大きくなり、道路区画線の認識精度がある程度改善された状況である点で第1の走行状況と異なる。
【0057】
本実施形態において行動計画生成部140が有する湿潤時行動計画機能は、第1の走行状況において前走車両M2の認識精度が閾値以下となった場合には、自車両M1と前走車両M2との車間距離を長くするような行動計画を生成し、第2の走行状況において前走車両M2の認識精度が閾値以上となった場合には、自車両M1と前走車両M2との車間距離を短くするような行動計画を生成するものである。
【0058】
具体的には、行動計画生成部140は、前走車両M2の認識精度として認識結果のゆらぎの大きさ(以下「ゆらぎ幅」という。)を用い、第1の走行状況においてゆらぎ幅が第1の閾値ΔX1以上となった場合に、自車両M1と前走車両M2との車間距離を長くするような行動計画を生成する。一方、行動計画生成部140は、第2の走行状況においてゆらぎ幅が第2の閾値ΔX2以下となった場合に、自車両M1と前走車両M2との車間距離を短くするような行動計画を生成する。
【0059】
なお、第1の閾値ΔX1および第2の閾値ΔX2は、乾燥状態にある路面の走行時におけるゆらぎ幅と、湿潤状態にある路面の走行時におけるゆらぎ幅とを予め計測しておき、その計測結果と、許容される道路区画線の認識精度の範囲(許容範囲)とをもとに決定されるとよい。
【0060】
図5は、行動計画生成部140が、湿潤時行動計画機能に関して実行する処理(以下「湿潤時行動計画生成処理」という。)の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、簡単のため一周期の制御で実施される処理の流れを説明するが、実際には
図5のフローが繰り返し実行されることにより、車間距離の調整が継続して実施される。まず、行動計画生成部140は、自車両と前走車両との車間距離の認識結果を認識部130から取得し、取得した認識結果に基づいて、認識結果のゆらぎ幅ΔXの値を取得する(ステップS101)。例えば、行動計画生成部140は、現在から過去の所定時点までの間に取得された複数の認識結果を認識部130から取得し、取得した複数の認識結果のうちの最大値と最小値との差をゆらぎ幅ΔXの大きさとして取得してもよい。
【0061】
続いて、行動計画生成部140は、取得したゆらぎ幅ΔXの大きさが第1の閾値ΔX1以上であるか否かを判定する(ステップS102)。ここで、ゆらぎ幅ΔXの大きさが第1の閾値ΔX1以上であると判定した場合、行動計画生成部140は、自車両と前走車両との車間距離を長くする行動計画を生成する(ステップS103)。行動計画生成部140は、生成した行動計画を第2制御部160に通知して湿潤時行動計画生成処理を終了する。
【0062】
一方、ステップS102において、ゆらぎ幅ΔXの大きさが第1の閾値ΔX1未満であると判定した場合、行動計画生成部140は、ステップS101において取得したゆらぎ幅ΔXの大きさが第2の閾値ΔX2以下であるか否かを判定する(ステップS104)。ここで、ゆらぎ幅ΔXの大きさが第2の閾値ΔX2以下であると判定した場合、行動計画生成部140は、自車両と前走車両との車間距離を短くする行動計画を生成する(ステップS105)。行動計画生成部140は、生成した行動計画を第2制御部160に通知して湿潤時行動計画生成処理を終了する。一方、ステップS104において、ゆらぎ幅ΔXの大きさが第2の閾値ΔX2よりも大きいと判定した場合、行動計画生成部140は、ステップS105をスキップして湿潤時行動計画生成処理を終了する。
【0063】
なお、ステップS103において車間距離を長くする行動計画を生成する場合、どの程度まで車間距離を長くするかは、現在の車間距離および走行速度に応じて決定されるとよい。また、ステップS105において車間距離を短くする行動計画を生成する場合も同様に、どの程度まで車間距離を短くするかは、現在の車間距離や走行速度に応じて決定されるとよい。例えば、自車両から前走車両までの距離が同じ場合であっても、走行速度が速い状況の方が水幕の影響範囲が広くなると考えられる。そのため、車間距離を長くする場合には、行動計画生成部140は、走行速度が速いほど車間距離を長くするような行動計画を生成するとよい。また、車間距離を短くする場合には、行動計画生成部140は、走行速度が遅いほど車間距離を短くするような行動計画を生成するとよい。
【0064】
なお、ステップS102で生成した行動計画により車間距離を長くとった場合であっても、自車両周辺の明るさや降雨等の状況によっては、道路区画線の認識精度が依然として低いままであるという状況が発生することも考えられる。このような状況を想定し、本実施形態における認識部130は、このような場合においても行動計画生成部140が自車両の横方向への移動制御を継続することができるように、道路区画線に代わる物標(以下「代替物標」という。)を認識する機能(以下「代替物標認識機能」という。)を有する。認識部130は、代替物標の認識結果を行動計画生成部140に通知し、行動計画生成部140は認識部130によって認識された代替物標を用いて自車両の横方向への移動制御を実施する。
【0065】
[代替物標認識機能]
図6は、認識部130が有する代替物標認識機能の概略を説明する図である。本実施形態において、認識部130が有する代替物標認識機能は、湿潤状態にある道路の走行中において道路上にできる前走車両の走行軌跡を代替物標として認識する機能である。例えば、
図6に示す画像IM1は、雨天時の走行中に自車両から前走車両M3を撮像した画像である。この画像IM1を見ても分かるように、雨天時の道路表面は、雨水による光の反射により白っぽく見える一方で、前走車両M3のタイヤが通過した部分は、雨水が押しのけられて黒っぽく見える。このように、十分な湿潤状態にある道路の画像には、当該道路を走行した車両の走行軌跡が黒い線(
図6の例ではLB1およびLB2)として現れ得る。
【0066】
そこで、認識部130は、自車両と前走車両との間の道路表面が撮像された画像に対して、前走車両から伸びる黒い線のエッジを検出する画像認識処理を行うことにより、前走車両の走行軌跡を認識する。例えば、認識部130は、道路区画線を認識する際に使用するフィルタの白と黒を逆にして画像処理を行うことによって黒い線を検出することができる。例えば、認識部130は、
図6の画像IM1に対して画像認識処理を実施した結果、画像IM2のような認識結果を得ることができる。認識部130は、認識結果を行動計画生成部140に通知する。
【0067】
図6の例を見ても分かるように、認識される前走車両の走行軌跡は道路区画線と略並行であるため、行動計画生成部140は、認識された走行軌跡を基準として道路区画線を推定し、推定した道路区画線を用いることにより、自車両の横方向への移動制御を継続して実施することが可能となる。
【0068】
図7は、行動計画生成部140が、代替物標の認識結果に基づいて行動計画を生成する処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、簡単のため一周期の制御で実施される処理の流れを説明するが、実際には
図7のフローが繰り返し実行されることにより、適宜必要なタイミングで代替物標が認識される。まず、行動計画生成部140は、自車両の走行状況が第2の走行状況であるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、自車両の走行状況が第2の走行状況であると判定した場合、行動計画生成部140は、認識部130により道路区画線が認識されているか否かを判定する(ステップS202)。ここで、道路区画線が認識されていると判定した場合、または、ステップS201において自車両の走行状況が第2の走行状況でないと判定した場合、行動計画生成部140は、一連の処理フローを終了する。
【0069】
一方、ステップS202において道路区画線が認識されていないと判定した場合、行動計画生成部140は、認識部130に対して代替物標の認識を指示し、この指示に応じて認識部130が画像認識処理を実施することにより、前走車両の走行軌跡を代替物標として認識する(ステップS203)。認識部130は、代替物標の認識結果を行動計画生成部140に通知し、行動計画生成部140は、認識された代替物標を用いて行動計画を生成することにより、自車両の横方向への移動制御を実施する(ステップS204)。
【0070】
なお、
図7の処理フローは、
図5で説明した湿潤時行動計画生成処理の一部に組み込まれてもよいし、
図7の処理フローで認識された代替物標は、湿潤時行動計画生成処理以外の処理において用いられてもよい。
【0071】
このように構成された実施形態の自動運転制御装置100は、自車両と前走車両との車間距離を認識する認識部130と、車間距離の認識結果に基づいて自車両と前走車両との車間距離を変更する行動計画を生成する行動計画生成部140とを備えることにより、自車両が湿潤状態にある路面を走行している状況において、自車両の横方向への移動をより安定的に制御することが可能となる。
【0072】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記プログラムを実行することにより、
自車両周辺の状況を認識する認識処理と、
前記認識処理における自車両周辺の認識結果に基づいて自車両の行動計画を生成する行動計画生成処理と、
を実行し、
前記認識処理において、自車両と、自車両の前を走行する他車両との車間距離を認識し、
前記行動計画生成処理において、前記車間距離の認識結果に基づいて自車両と前記他車両との車間距離を変更する行動計画を生成する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0073】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…車両システム、10…カメラ、12…レーダ装置、14…LIDAR、16…物体認識装置、20…通信装置、30…HMI、40…車両センサ、50…ナビゲーション装置、51…GNSS受信機、52…ナビHMI、53…経路決定部、54…第1地図情報、60…MPU、61…推奨車線決定部、62…第2地図情報、70…ドライバモニタカメラ、80…運転操作子、82…ステアリングホイール、84…ステアリング把持センサ、100…自動運転制御装置、120…第1制御部、130…認識部、140…行動計画生成部、150…モード決定部、152…運転者状態判定部、154…モード変更処理部、160…第2制御部、162…取得部、164…速度制御部、166…操舵制御部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置