(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155704
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電力システム及び電力制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04007 20160101AFI20221006BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221006BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20221006BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20221006BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20221006BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M8/04007
H01M8/04694
H01M8/04858
H01M8/00 Z
H01M8/0432
H01M8/04313
H01M8/249
H01M8/04955
B60L50/75
B60L58/30
B60L3/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059063
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健人
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸高
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 潤野
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD02
5H125BD10
5H125BD14
5H125CB01
5H125CD06
5H125EE37
5H125EE44
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE64
5H125EE70
5H126AA22
5H127AB04
5H127AB11
5H127AB29
5H127AC05
5H127CC06
5H127DB49
5H127DB72
5H127DB74
5H127DB91
5H127DB93
5H127DC41
5H127DC42
(57)【要約】
【課題】燃料電池の劣化を従来よりも抑えることができる電力システム及び電力制御装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の電力システムは、燃料電池、熱源、放熱部及び制御部を備える。燃料電池は、電気化学反応により発電し、第1の熱を発する。熱源は、動作することで第2の熱を発する。放熱部は、前記第1の熱及び前記第2の熱を放熱する。制御部は、前記熱源が動作中である場合、前記第1の熱の熱量が、前記放熱部の放熱量の上限から前記第2の熱の熱量を引いた放熱余力以下となるように前記燃料電池を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応により発電し、第1の熱を発する燃料電池と、
動作することで第2の熱を発する熱源と、
前記第1の熱及び前記第2の熱を放熱する放熱部と、
前記熱源が動作中である場合、前記第1の熱の熱量が、前記放熱部の放熱量の上限から前記第2の熱の熱量を引いた放熱余力以下となるように前記燃料電池を制御する制御部と、を備える電力システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の熱の熱量が前記放熱余力以下となるように前記燃料電池の出力を上げる、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記電力システムは、車両に搭載され、
前記熱源は、リターダーを含む、請求項1又は請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記リターダーの温度と外気温、前記リターダーの要求出力、前記リターダーから出る冷却液の温度、又は前記車両の速さ及び加速度とブレーキ要求の少なくともいずれかに基づき前記第2の熱の熱量を求める、請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記放熱部は、ラジエーターを含み、前記ラジエーターを通過する風の風速、前記ラジエーターに入る冷却液の温度、外気温及び、前記冷却液を加速させるウォーターポンプの出力に基づき、前記上限を求める、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項6】
複数の前記燃料電池を含み、
前記第1の熱は、複数の前記燃料電池が発する熱を合わせた熱であり、
前記制御部は、劣化度の小さい前記燃料電池を優先して停止させることで前記第1の熱の熱量を前記放熱余力以下にする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項7】
前記燃料電池によって発電された電力で動作する複数の負荷部をさらに備え、
前記制御部は、停止させる前記燃料電池と同じ電源系統の前記負荷部の出力を、他の電源系統の前記負荷部の出力よりも小さくする、請求項6に記載の電力システム。
【請求項8】
前記燃料電池によって発電された電力で動作する複数の負荷部をさらに備え、
前記制御部は、複数の部品を合わせた部品群の余命が最も長くなるように、前記負荷部の出力を決定する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項9】
動作することで第2の熱を発する熱源が動作中である場合、電気化学反応により発電する燃料電池が発する第1の熱の熱量が、前記第1の熱及び第2の熱を放熱する放熱部の放熱量の上限から前記第2の熱の熱量を引いた放熱余力以下となるように前記燃料電池を制御する制御部を備える、電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システム及び電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を備え、当該燃料電池によって動作する車両などの装置がある。このような装置は、例えばリターダーなどの、動作することで発熱する熱源を備える場合がある。このような熱源を備える装置では、従来、燃料電池も発熱するため、熱源が動作中は燃料電池をアイドル状態にするなどして停止させることで、発熱量を抑えている。これは、熱源と燃料電池が共に発熱すると、放熱が間に合わなくなるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱源を動作させるたびに燃料電池を停止させると、燃料電池の発電量の変動が大きくなる。
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、燃料電池の劣化を従来よりも抑えることができる電力システム及び電力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電力システムは、燃料電池、熱源、放熱部及び制御部を備える。燃料電池は、電気化学反応により発電し、第1の熱を発する。熱源は、動作することで第2の熱を発する。放熱部は、前記第1の熱及び前記第2の熱を放熱する。制御部は、前記熱源が動作中である場合、前記第1の熱の熱量が、前記放熱部の放熱量の上限から前記第2の熱の熱量を引いた放熱余力以下となるように前記燃料電池を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、燃料電池の劣化を従来よりも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る車両の要部回路構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図1中の冷却部の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図3】
図1中の制御部のプロセッサーによる処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】実施形態の車両の各部の状態などの時間変化の一例を示すグラフ。
【
図5】従来の車両の各部の状態などの時間変化の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る電源系統について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。また、各図面及び本明細書中において、同一の符号は同様の要素を示す。
図1は、実施形態に係る車両1の要部回路構成の一例を示すブロック図である。
【0009】
車両1は、例えば、FCV(fuel cell vehicle)などの、燃料電池を動力として推進(走行)する車両である。車両1は、一例として、制御部100、冷却部200、電源系統300及び駆動系400を含む。制御部100、冷却部200及び電源系統300は、車両1に搭載される電力システムの一例を構成する。また、車両1は、電力システムの一例である。
【0010】
制御部100は、例えば、車両1の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターである。制御部100は、冷却部200、電源系統300及び駆動系400などを制御する。制御部100は、一例として、プロセッサー101、ROM(read-only memory)102、RAM(random-access memory)103及び補助記憶装置104を含む。なお、制御部100は、電力制御装置の一例である。
【0011】
プロセッサー101は、制御部100の中枢部分であり、各種演算及び処理を行う。プロセッサー101は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサー101は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。プロセッサー101は、ROM102又は補助記憶装置104などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、車両1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサー101は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサー101の回路内に組み込まれていても良い。
【0012】
ROM102及びRAM103は、制御部100の主記憶装置である。
ROM102は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM102は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェアなどを記憶する。また、ROM102は、プロセッサー101が各種の処理を行う上で使用するデータなども記憶する。
RAM103は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM103は、プロセッサー101が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリアなどとして利用される。RAM103は、典型的には揮発性メモリである。
【0013】
補助記憶装置104は、制御部100の補助記憶装置である。補助記憶装置104は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリなどである。補助記憶装置104は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどを記憶する。また、補助記憶装置104は、プロセッサー101が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサー101での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値などを記憶する。
【0014】
図2は、冷却部200の要部構成の一例を示すブロック図である。
冷却部200は、車両1の各部を冷却するための部分である。冷却部200は、一例として、冷却回路210、ラジエーター(RAD)220、FCS(fuel cell system)230、ウォーターポンプ(WP)240及びリターダー(RET)250を含む。
【0015】
冷却回路210は、例えば、クーラントなどの液体(以下「冷却液」という。)が循環して流れる流体回路である。冷却回路210は、冷却液が熱を運ぶことで、燃料電池スタック233の冷却及び暖機、並びにリターダー250の冷却などを行う。冷却液は、例えば、ラジエーター220から出た後、FCS230又はリターダー250を通過してラジエーター220に戻る。
【0016】
ラジエーター220は、ヒートシンク及びファンなどによって放熱することで、ラジエーター220内の、冷却液を冷却する。冷却回路210及びラジエーター220は、燃料電池スタック233が発する熱とリターダー250が発する熱を放熱する放熱部の一例である。
【0017】
冷却部200は、1又は複数のFCS230を備える。
図2には、一例としてFCS230-1~FCS230-NのN基のFCS230を示している。なお、Nは、1以上の整数である。
FCS230は、例えば、燃料電池スタック233及び燃料電池スタック233が動作するために用いられる各種装置などを備える電源である。FCS230は、燃料電池スタック233が出力した電力を出力する。当該電力は、車両1の各部に供給され、例えば、バッテリー302の充電及びモーター305の駆動などの車両1の各部の動作に用いられる。FCS230は、一例として、サーモスタット弁(WP)231、ウォーターポンプ(WP)232、燃料電池スタック(STK)233及び温度センサー234を含む。また、FCS230は、燃料電池スタックの動作に用いられる装置として、燃料電池スタックに燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する補機などを備えていても良い。
【0018】
サーモスタット弁231は、FCS230内の冷却液の流れを制御して、冷却液をFCS230の外又は燃料電池スタック233に流す。
【0019】
ウォーターポンプ232は、サーモスタット弁231から燃料電池スタック233に流れる冷却液の流速を増加させる。
【0020】
燃料電池スタック233は、複数の燃料電池が積層したものである。燃料電池スタック233は、例えば、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電して電力を出力する。燃料電池スタック233は、発電した電力により、モーター305の駆動及びバッテリー302の充電などを行う。燃料電池スタック233は、発電を行うと発熱するため、冷却が必要となる。車両1が備える1又は複数の燃料電池スタック233が発する熱を合わせた熱は、第1の熱の一例である。
【0021】
温度センサー234は、燃料電池スタック233の温度を計測する。そして、温度センサー234は、当該温度の計測結果を出力する。
【0022】
ウォーターポンプ240は、ラジエーター220からリターダー250に流れる冷却液の流速を増加させる。
【0023】
リターダー250は、駆動系400の回転軸などの回転力に制動をかけることで、回転軸などの回転速度を減少させることができる。これにより、リターダー250は、車両1を減速させることができる。リターダー250は、動作中発熱する。したがって、リターダー250は、熱源の一例である。熱源であるリターダー250が発する熱は、第2の熱の一例である。
【0024】
図1の説明に戻る。
車両1は、1又は複数の電源系統300を備える。一例として、
図1に示す車両1は、電源系統300a及び電源系統300bの2つの電源系統300を備える。
電源系統300は、電源及び当該電源が出力する電力の出力先を示す。当該電源は、一例として、FCS130及びバッテリー302である。電源系統300は、一例として、FCVCU(fuel cell voltage control unit)301、バッテリー302、BATVCU(battery voltage control unit)303、PDU(power drive unit)304、モーター305、補機306及びFCS230を含む。
【0025】
FCVCU301は、例えば、FCS230が出力する電力の電圧を昇圧するなどして調整し、BATVCU303などに出力する昇圧コンバーターなどである。車両1は、例えば、1つのFCS230に対して1つのFCVCU301を備える。
【0026】
バッテリー302は、モーター305及び補機306などの車両1の各部に電力を供給する二次電池であり電源である。バッテリー302は、例えば、FCS230が出力する電力によって充電される。
【0027】
BATVCU303は、バッテリー302及びFCVCU301が出力する電圧を昇圧又は降圧するなどして調整し、PDU304及び補機306などに出力する昇降圧コンバーターなどである。また、BATVCU303は、FCVCU301が出力する電力を、バッテリー302の充電に適した電圧に調整してバッテリー302に出力する。
【0028】
PDU304は、入力される電力をモーター305の回転速度及びトルクに適した周波数及び電圧に変換してモーター305に出力するインバーターなどである。
【0029】
モーター305は、駆動系400などを駆動させるモーターである。モーター305は、単一のモーターであっても良いし、複数のモーターから成るモーター群であっても良い。モーター305は、例えば、燃料電池スタック233及びバッテリー302の少なくともいずれかが出力する電力によって駆動する。
図1には、電源系統300aのモーター305をモーター305a、電源系統300bのモーター305をモーター305bとして示している。モーター305は、燃料電池スタック233で発電された電力で動作する負荷部の一例である。
【0030】
電源系統300は、1又は複数の補機306を備える。電源系統300は、例えば、電源系統300ごとに異なる補機306を備える。補機306は、例えば、パワーステアリング、ブレーキ、冷却ファン、ウォーターポンプ及び冷凍機などである。
図1には、電源系統300aの補機306を補機306a、電源系統300bの補機306を補機306bとして示している。一例として、電源系統300aは、補機306aとして、パワーステアリング、ブレーキ及び冷却ファンなどを備える。そして、一例として、電源系統300bは、補機306bとして、冷却ファン、ウォーターポンプ及び冷凍機などを備える。
【0031】
駆動系400は、モーター305が出力する回転力を駆動輪に伝達する部分である。駆動系400は、例えば、モーター305、リターダー250、ギヤ、シャフト及び駆動輪などを含む。
【0032】
以下、実施形態に係る車両1の動作を
図3などに基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図3は、制御部100のプロセッサー101による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー101は、例えば、ROM102又は補助記憶装置104などに記憶されたプログラムに基づいて
図3の処理を実行する。なお、以下で説明する各熱量の単位はワット又はワットと同じ次元の単位である。
【0033】
プロセッサー101は、例えば、車両1の起動にともない
図3に示す処理を開始する。
ステップST11においてプロセッサー101は、リターダー250を作動させるか否かを判定する。例えば、プロセッサー101は、車両1に制動をかける必要がある場合などにリターダー250を作動させると判定する。プロセッサー101は、リターダー250を作動させると判定しないならば、ステップST11においてNoと判定してステップST11の処理を繰り返す。そして、プロセッサー101は、リターダー250を作動させると判定するならば、ステップST11においてYesと判定してステップST12へと進む。
【0034】
ステップST12においてプロセッサー101は、リターダー250を作動させる。
【0035】
ステップST13においてプロセッサー101は、ラジエーター220の放熱量を推定するために用いるデータ(以下「RADデータ」という。)を取得する。RADデータは、例えば、ラジエーター220のファンの回転数、ラジエーター220に入る冷却液の温度、外気温、ウォーターポンプの出力及び車両1の速さなどを含む。なお、プロセッサー101は、例えば、ラジエーター220のファンの回転数及びラジエーター220に入る冷却液の温度をラジエーター220から取得する。また、プロセッサー101は、例えば、外気温を、外気温を計測する温度センサーなどから取得する。なお、当該外気温は、車両1の車体の外の気温であっても良いし、車両1の車体内のラジエーターの外の温度であっても良い。また、プロセッサー101は、例えば、ウォーターポンプの出力を各ウォーターポンプから取得する。また、プロセッサー101は、車両1の速さを速度計などから取得する。
【0036】
ステップST14においてプロセッサー101は、ステップST13で取得したRADデータを用いてラジエーター220の放熱量の推定値(以下「放熱量推定値」という。)を推定する。このために、プロセッサー101は、ラジエーター220のファンの回転数及び車両1の速さなどから、ラジエーター220を通過する風の速さ(風速)を求める。そして、プロセッサー101は、例えば、当該風速、ラジエーター220に入る冷却液の温度、外気温、ウォーターポンプの出力を用いてラジエーター220の放熱量の推定値を求める。当該放熱量は、ラジエーター220が現在の環境において放熱可能な熱量の上限を示す。ラジエーター220に入力する熱量が当該上限を超えた状態が続くと、ラジエーター220及び冷却回路210などの温度が上昇を続け、ラジエーター220及び冷却回路210などが上限温度を超えることとなり、故障する場合がある。
【0037】
ステップST15においてプロセッサー101は、リターダー250の発熱量を推定するために用いるデータ(以下「リターダーデータ」という。)を取得する。リターダーデータは、例えば、リターダー250の温度及び外気温を含む。あるいは、リターダーデータは、リターダー250の要求出力を含む。あるいは、リターダーデータは、車両1の速さ、減速G及びブレーキ要求を含む。あるいは、リターダーデータは、リターダー250から出る冷却液の温度を含む。あるいは、リターダーデータは、これらのうちの複数を含む。プロセッサー101は、例えば、リターダー250の温度をリターダー250又は温度センサーなどから取得する。リターダー250の温度は、例えば、リターダー250内の油の温度である。プロセッサー101は、例えば、要求出力をリターダー250から取得する。減速Gとは、車両1が受ける加速度である。プロセッサー101は、減速Gを例えば、加速度計などから取得する。ブレーキ要求とは、例えば、車両1の運転者の操作などに基づくブレーキ開度などに応じて要求されるブレーキの強さ(制動力)である。プロセッサー101は、ブレーキ要求を例えば、ブレーキ開度などを用いて求める。プロセッサー101は、リターダー250から出る冷却液の温度を、例えば冷却回路210などから取得する。
【0038】
ステップST16においてプロセッサー101は、ステップST15で取得したリターダーデータを用いてリターダー250の発熱量の推定値(以下、「発熱量推定値」という。)を求める。
【0039】
ステップST17においてプロセッサー101は、許可発熱量の推定値を求める。許可発熱量は、ラジエーター220の放熱余力を示し、FCS230が発熱して良い量の上限を示す。プロセッサー101は、例えば、ステップST14で求めた放熱量推定値から、ステップST16で求めた発熱量推定値を引くことで許可発熱量を求める。あるいは、プロセッサー101は、放熱量推定値から発熱量推定値を引いた値から、さらにマージンを引いた値を許可発熱量としても良い。
【0040】
ステップST18においてプロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の発熱量が、ステップST17で求めた許可発熱量以下となるような制御を開始する。なお、プロセッサー101は、すでに当該制御を開始済みである場合には、最新の許可発熱量に基づく制御に変更する。プロセッサー101は、例えば、以下に示す(1)~(3)のいずれかの方法で燃料電池スタック233の合計の発熱量が許可発熱量以下となるように各FCS230を制御する。
【0041】
なお、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の発熱量を低下させるためには、燃料電池スタック233の合計の出力を低下させる必要がある。この際、プロセッサー101は、劣化度の小さい燃料電池スタック233を優先して停止させる(アイドル状態にする)ことで燃料電池スタック233の合計の出力を低下させる。例えば、プロセッサー101は、劣化度の小さい方から順に燃料電池スタック233の動作を停止させることで、燃料電池スタック233の合計の出力を低下させる。例えば、燃料電池スタック233の稼働時間が燃料電池スタック233の劣化度を示す。あるいは、プロセッサー101は、各燃料電池スタック233の出力を抑えることで、燃料電池スタック233を停止させずに燃料電池スタック233の合計の発熱量を低下させても良い。
【0042】
また、プロセッサー101は、劣化度の小さい燃料電池スタック233を優先して停止させるために、劣化度の小さい燃料電池スタック233と同じ電源系統300で消費する電力を抑える。このために、プロセッサー101は、例えば、当該電源系統300のモーター305の出力を低くし、他の電源系統300のモーター305の出力を高くする。
例えば、プロセッサー101は、電源系統300aの燃料電池スタック233の稼働台数がNa基、電源系統300bの燃料電池スタック233の稼働台数がNb基である場合、モーター305aの出力がモーター305bの出力の例えば(Na/Nb)倍程度になるようにする。
【0043】
あるいは、プロセッサー101は、各部品の寿命を予測して、当該寿命に基づいてモーターの出力305の振り分けを決定しても良い。例えば、モーター305aの出力とモーター305bの出力の比をα:(1-α)とする。プロセッサー101は、例えば、αの値を様々に変化させることで、出力ごとの各部品の寿命を推定する。プロセッサー101は、一例として、αの値を0.01ずつ変化させながら各出力における各部品の寿命を推定する。部品の寿命の推定方法について、モーターオイルを例に説明する。
【0044】
部品の寿命を推定するためには、例えば、部品の劣化の大きさを示す劣化指標を用いる。モーターオイルの劣化指標は、例えば、モーターオイルの粘度である。モーターオイルは劣化すると粘度が低くなるため、粘度が低くなるほどモーターオイルが劣化していることを示す。粘度は、モーター305の出力及びモーター305の動作時間の関数で示すことが可能である。実験又はシミュレーションなどによって、モーター305の出力を一定にした場合のモーター305の時間と粘度との関係を、様々な出力で求めておく。これにより、粘度と、モーター305の出力及び経過時間との関係を示す関数が分かる。当該関数は、例えばテーブルの形であっても良いし、数式の形であっても良い。補助記憶装置104などが当該関数を記憶しておく。モーターオイルの場合、粘度が所定の下限以下となった場合が寿命である。したがって、一定の出力でモーター305を動作させた場合の部品の余命は、現在の劣化指標と、部品の寿命を示す下限又は上限の値が分かれば分かる。
【0045】
1~n番の番号が振られたn個の部品のi番目の部品の余命を、Rt_i(Pw_j_i)と定義する。Rt_iは、Pw_j_iの関数である。Pw_j_iは、i番目の部品の余命を決めるモーター305の出力を示す。当該モーター305は、例えば、当該部品と同じ電源系統のモーター305である。なお、iは、1以上n以下の整数である。
また、n個の全ての部品を合わせた部品群の余命をRt_all(Pw_j)と置く。Pw_jは、全てのモーター305のそれぞれの出力を示す。モーター305の出力がPw_jである場合、i番目の部品と同じ電源系統のモーター305の出力は、Pw_j_iである。また、Rt_allは、Pw_jの関数である。また、Rt_all(Pw_j)は、以下の(1)式で表すことができる。
Rt_all(Pw_j)=min{i=1 to n}(Rt_i_j(Pw_j_i)) (1)
(1)式は、各モーター305をPw_jの出力で動作させた場合の部品群の余命は、各モーター305をPw_jの出力で動作させた場合のn個の部品の余命のうちの最も短い余命に等しいことを示す。プロセッサー101は、Pw_jを様々に変化させてRt_all(Pw_j)を求めることで、部品群の余命が最も長くなる場合のPw_jを探索する。ただし、プロセッサー101は、通常Pw_jを離散的な値として当該探索を行うため、厳密に部品群の余命が最も長くなる場合のPw_jを求める必要はない。すなわち、プロセッサー101は、離散的な値としてのPw_jのうちの部品群の余命が最も長くなる場合のPw_jを求めれば良い。また、処理時間が足りない場合などにおいては、プロセッサー101は、時間内に求めることができたうちの中で最も部品群の余命が長くなる場合のPw_jを求めても良い。このようにPw_jを求めることで、プロセッサー101は、前述のαを求めることができる。なお、プロセッサー101は、モーター305の数が3つ以上の場合でも同様にして、各モーター305の出力比を求めることができる。
【0046】
なお、プロセッサー101は、モーター305の出力から、当該モーター305と同じ電源系統のFCS230及びバッテリー302のそれぞれの出力が分かる。例えば、プロセッサー101は、当該モーター305の出力及び当該バッテリー302のSOC(state of charge)などから、当該FCS230及び当該バッテリー302のそれぞれの出力を求める。プロセッサー101は、FCS230中の部品については、このようにして求めたFCS230の出力を用いて、余命を求める。また、プロセッサー101は、バッテリー302中の部品については、このようにして求められたバッテリー302の出力を用いて、余命を求める。
【0047】
燃料電池スタック233の劣化指標は、例えば、水素供給量、出力電流に対する出力電圧、又は電力などである。燃料電池スタック233の劣化について、ある一定の出力を続けた場合の、時間に対する劣化指標のデータを実測もしくはシミュレーションで取っておくことにより、燃料電池スタック233の劣化指標を、燃料電池スタック233の出力及び時間の関数として得ることができる。このような関数を用いることで、燃料電池スタック233が今要求されている出力を継続した場合に、何時間後に劣化指標が下限に到達するかを推定することができる。プロセッサー101は、例えばこのような劣化指標を用いることで燃料電池スタック233の余命を求める。
【0048】
(1)プロセッサー101は、許可発熱量から許可出力を求める。許可出力は、燃料電池スタック233の発熱量が許可発熱量以下となる出力電力の上限を示す。そして、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電力が許可出力超である場合、燃料電池スタック233の合計の出力電力が許可出力以下となるように各FCS230を制御する。好ましくは、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電力が許可出力超である場合、燃料電池スタック233の合計の出力電力が許可出力より所定の値小さい値以上許可出力以下となるように各FCS230を制御する。より好ましくは、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電力が許可出力超である場合、燃料電池スタック233の合計の出力電力が許可出力と同じ値になるように各FCS230を制御する。なお、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電力を上げる場合、許可出力を上限として出力電力を上げるように各FCS230を制御する。
【0049】
(2)プロセッサー101は、許可発熱量から許可電流を求める。許可電流は、燃料電池スタック233の発熱量が許可発熱量以下となる出力電流の上限を示す。そして、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電流が許可電流超である場合、燃料電池スタック233の合計の出力電流を許可電流以下となるように各FCS230を制御する。好ましくは、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電流が許可電流超である場合、燃料電池スタック233の合計の出力電流が許可電流より所定の値小さい値以上許可電流以下となるように各FCS230を制御する。より好ましくは、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電流が許可電流超である場合、燃料電池スタック233の合計の出力電流が許可電流と同じ値になるように各FCS230を制御する。なお、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の出力電流を上げる場合、許可電流を上限として出力電流を上げるように各FCS230を制御する。
【0050】
(3)プロセッサー101は、許可発熱量から許可水素量を求める。許可水素量は、燃料電池スタック233の発熱量が許可発熱量以下となる時間あたり水素使用量の上限を示す。そして、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の時間あたり水素使用量の合計が許可水素量超である場合、燃料電池スタック233の水素使用量の合計を許可水素量以下となるように制御する。好ましくは、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の水素使用量が許可水素量超である場合、燃料電池スタック233の合計の水素使用量が許可水素量より所定の値小さい値以上許可水素量以下となるように各FCS230を制御する。より好ましくは、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の水素使用量が許可水素量超である場合、燃料電池スタック233の合計の水素使用量が許可水素量と同じ値になるように各FCS230を制御する。なお、プロセッサー101は、燃料電池スタック233の合計の水素使用量を上げる場合、許可水素量を上限として水素使用量を上げるように各FCS230を制御する。
【0051】
ステップST19においてプロセッサー101は、リターダー250を停止させるか否かを判定する。プロセッサー101は、車両1に制動をかける必要がなくなった場合などにリターダー250を制定させると判定する。プロセッサー101は、リターダー250を停止させないならば、ステップST19においてNoと判定してステップST20へと進む。
【0052】
ステップST20においてプロセッサー101は、許可発熱量を再度求めるか否かを判定する。プロセッサー101は、例えば、前回許可発熱量の推定値を求めてから所定の時間経過したならば、許可発熱量を再度求めると判定する。また、プロセッサー101は、例えば、車両1の速さ、走行中の道の勾配、車両1の加速度、ブレーキ開度、アクセル開度、外気温、又は燃料電池スタック233の温度などの車両1の状態又は車両1の周囲の環境の状態を示す各種の値が所定量以上変化した場合、又は所定の範囲内となった場合に許可発熱量を再度求めると判定する。プロセッサー101は、許可発熱量を再度求めないならば、ステップST20においてNoと判定してステップST19へと戻る。かくして、プロセッサー101は、リターダー250を停止させると判定するか、許可発熱量を再度求めると判定するまでステップST19及びステップST20を繰り返す待受状態となる。
【0053】
プロセッサー101は、ステップST19及びステップST20の待受状態にあるときに許可発熱量を再度求めると判定するならば、ステップST20においてYesと判定してステップST13へと戻る。このように、プロセッサー101は、所定の時間ごとに、あるいは、各種値が所定量以上変化する又は所定の範囲内となるごとに、ステップST13~ステップST18の処理を行う。
【0054】
また、プロセッサー101は、ステップST19及びステップST20の待受状態にあるときにリターダー250を停止させると判定するならば、ステップST19においてYesと判定してステップST21へと進む。
ステップST21においてプロセッサー101は、リターダー250を停止させる。
【0055】
ステップST22においてプロセッサー101は、ステップST18で開始した、燃料電池スタック233の合計の発熱量が、ステップST17で求めた許可発熱量以下となるような制御を終了し、FCS230の動作を通常の動作に戻す。これにより、燃料電池スタック233の合計の発熱量の上限は許可発熱量ではなくなる。プロセッサー101は、ステップST22の処理の後、ステップST11へと戻る。
【0056】
実施形態の車両1の動作の一例をグラフに示すと
図4のようになる。
図4は、実施形態の車両1の各部の状態などの時間変化の一例を示すグラフである。また、従来の車両の動作をグラフに示した場合、
図5のようになる。
図5は、従来の車両の各部の状態などの時間変化の一例を示すグラフである。
【0057】
グラフG11は、アクセルのオンとオフを示すグラフである。
グラフG21及びグラフ21bは、燃料電池スタック233の合計の出力を示すグラフである。
グラフG22は、車両の速度を示すグラフである。
グラフG23は、車両が走る道の標高を示すグラフである。
グラフG24は、リターダー250の制動の出力を示すグラフである。
グラフG31は、ラジエーター220の放熱量の上限を示すグラフである。
グラフG32及びグラフG32bは、燃料電池スタック233の合計の発熱量とリターダー250の発熱量を足した合計熱量を示すグラフである。
グラフG33及びグラフG33bは、燃料電池スタック233の合計の発熱量を示すグラフである。
グラフG34及びグラフG34bは、冷却液の温度を示すグラフである。
グラフG35は、リターダー250の発熱量を示すグラフである。
領域AR1は、グラフG31に示す上限からグラフG32に示す合計熱量を引いた、ラジエーター220の放熱量の余力を示す。
領域AR1bは、グラフG31に示す上限からグラフG32bに示す合計熱量を引いた、ラジエーター220の放熱量の余力を示す。
【0058】
図4及び
図5の示すグラフは、車両が上り道、下り道、上り道の順で走行する場合を例に示している。車両は、時間t1まで5%勾配の上り道を走り、時間t1から時間t3まで5%勾配の下り道を走り、時間t3以降5%勾配の上り道を走る。また、
図4及び
図5ともに、車両の速度は50km/sで一定である。
図4及び
図5ともに、アクセルは、時間t1までオン、時間t1から時間t3までオフ、時間t3からオンである。また、
図4及び
図5ともに、時間t2でリターダー250を作動させ、時間t3でリターダー250を停止させている。なお、時間t2は、時間t1と時間t3の間の時間である。
【0059】
従来の車両では、
図5のグラフG33bに示すように燃料電池スタック233を停止するため、出力が大きく落ちている。これに対して、実施形態の車両1では、
図4のグラフ33に示すように、従来の車両に比べて出力の落ちは少ない。
このため、領域AR1及び領域AR1bに示すように実施形態の車両1は、放熱量の余力が少ない。すなわち、実施形態の車両1は、放熱量の余力をあまり残さず有効に使用していることが分かる。
【0060】
実施形態の車両1は、リターダー250を作動させた場合に燃料電池スタック233の一部を停止させる。したがって、実施形態の車両1は、燃料電池スタック233を全て停止させる従来の車両よりも燃料電池スタック233が劣化しにくい。
あるいは、実施形態の車両1は、リターダー250を作動させた場合に燃料電池スタック233を停止させずに出力を低下させる。したがって、実施形態の車両1は、燃料電池スタック233を全て停止させる従来の車両よりも燃料電池スタック233が劣化しにくい。
【0061】
実施形態の車両1は、燃料電池スタック233の出力を上げる場合、燃料電池スタック233の合計の発熱量が許可発熱量以下となるように出力を上げる。これにより、実施形態の車両1は、ラジエーター220に入力する熱量が放熱量の上限を超えることを防ぐことができる。
【0062】
実施形態の車両1は、熱源としてリターダー250を備えた車両である。したがって、実施形態の車両1は、リターダー250を備えている場合に起こる燃料電池スタック233の劣化を従来よりも防ぐことができる。
【0063】
実施形態の車両1は、リターダーデータを用いて、リターダー250の発熱量を推定する。当該発熱量を用いることで、実施形態の車両1は、ラジエーター220の放熱量の余力をより正確に求めることができる。
【0064】
実施形態の車両1は、RADデータを用いて、ラジエーター220の放熱量を推定する。当該放熱量を用いることで、実施形態の車両1は、ラジエーター220の放熱量の余力をより正確に求めることができる。
【0065】
実施形態の車両1は、劣化度の小さい燃料電池スタック233を優先して停止させる。これにより、実施形態の車両1は、劣化度の大きい燃料電池スタック233の、停止させることによる劣化することを防ぐことができる。
【0066】
実施形態の車両1は、停止させる燃料電池スタック233と同じ電源系統のモーター305の出力を、他の電源系統の出力よりも低くする。これにより、燃料電池スタック233が停止している電源系統であってもモーター305を正常に動作させることができる。
【0067】
実施形態の車両1は、複数の部品を合わせた部品群の寿命が最も長くなように、モーターの出力を決定する。これにより、実施形態の車両1は、いずれかの部品が寿命となるまでの時間を長くすることができる。
【0068】
上記の実施形態は、以下のような変形も可能である。
プロセッサー101は、発熱量推定値を求めることに代えて、温度センサーなどを用いて計測されたリターダー250の発熱量を取得しても良い。そして、プロセッサー101は、例えば、ステップST14で求めた放熱量推定値から、当該発熱量を引くことで許可発熱量を求める。
【0069】
プロセッサー101は、発熱量推定値を求めることに代えてラジエーター220の現在の放熱量を取得しても良い。例えば、プロセッサー101は、計測された当該放熱量を取得する。そして、プロセッサー101は、例えば、ステップST14で求めた放熱量推定値から、計測された当該放熱量を引くことで許可発熱量を求める。
【0070】
上記の実施形態の車両1は、燃料電池スタック233とリターダー250を冷却回路210及びラジエーター220を用いて冷却する。しかしながら、実施形態の車両は、燃料電池スタック233とリターダー250に加えて、リターダー250以外の装置も冷却回路210及びラジエーター220で冷却しても良い。この場合、プロセッサー101は、発熱量推定値として、リターダー250と当該装置の合計の発熱量の推定値を求める。また、実施形態の車両は、燃料電池スタック233とリターダー250以外の装置を冷却回路210及びラジエーター220で冷却しても良い。この場合、プロセッサー101は、発熱量推定値として、当該装置の発熱量の推定値を求める。冷却回路210及びラジエーター220の冷却対象である装置は、熱源の一例である。
【0071】
上記の実施形態の車両1は、燃料電池スタック233及びリターダー250を冷却回路210及びラジエーター220を用いて液体で冷却する水冷方式である。しかしながら、実施形態の車両は、空冷などの水冷方式以外の方式で冷却しても良い。空冷方式の場合の車両は、例えば、ヒートシンク及び冷却ファンなどを用いて冷却する。ヒートシンク及び冷却ファンなどは、放熱部の一例である。
【0072】
上記の実施形態では、車両を例に説明した。しかしながら、実施形態の電力システムは、車両以外の、燃料電池を動力とする乗り物又は無人機に適用することも可能である。例えば、実施形態の電力システムは、燃料電池を動力とする航空機、船舶、潜水艦、又は鉄道車両などに適用可能である。
また、実施形態の電力システムは、発電施設若しくはコージェネレーションシステムなどの定置型システム又はロボットなどの、乗り物及び無人機以外の機械に適用することも可能である。
【0073】
プロセッサー101は、上記実施形態においてプログラムによって実現する処理の一部又は全部を、回路のハードウェア構成によって実現するものであっても良い。
【0074】
実施形態の処理を実現するプログラムは、例えば装置に記憶された状態で譲渡される。しかしながら、当該装置は、当該プログラムが記憶されない状態で譲渡されても良い。そして、当該プログラムが別途に譲渡され、当該装置へと書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、リムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはインターネット又はLAN(local area network)などのネットワークを介したダウンロードにより実現できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、例として示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 車両
100 制御部
101 プロセッサー
102 ROM
103 RAM
104 補助記憶装置
200 冷却部
210 冷却回路
220 ラジエーター
230 FCS
231 サーモスタット弁
232,240 ウォーターポンプ
233 燃料電池スタック
234 温度センサー
250 リターダー
300a,300b 電源系統
301 FCVCU
302 バッテリー
303 BATVCU
304 PDU
305a,305b モーター
306a,306b 補機
400 駆動系