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特開2022-155708通行状況監視装置、通行状況監視方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155708
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】通行状況監視装置、通行状況監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059067
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】深田 雅裕
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181DD07
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL04
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】通行状況を安定的に監視することができる通行状況監視装置、通行状況監視方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】通行状況監視装置は、評価対象移動体の位置情報の時系列に基づき、評価対象移動体の通行状況を所定の通行区間毎に表す情報である通行情報を生成する通行情報生成部と、評価対象移動体の通行情報と他の移動体の通行情報との対比によって、評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象移動体の位置情報の時系列に基づき、前記評価対象移動体の通行状況を所定の通行区間毎に表す情報である通行情報を生成する通行情報生成部と、
前記評価対象移動体の通行情報と他の移動体の通行情報との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定する判定部と、
を備える通行状況監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記評価対象移動体の通行情報と同一の通行区間に紐付けられた他の移動体の通行情報との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定する
請求項1に記載の通行状況監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記評価対象移動体の通行情報に基づく所定の値と、類似する通行区間に紐付けられた他の移動体の通行情報に基づく統計量を統計的に補正した値との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定する
請求項1に記載の通行状況監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記評価対象移動体の通行情報に基づく左右方向の動きに基づく値と、前記他の移動体の通行情報に基づく左右方向の動きの統計量に基づく値との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定し、特異であると判定した場合、前記評価対象移動体が蛇行運転であると判定する
請求項1から3のいずれか1項に記載の通行状況監視装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記通行区間の曲率が所定値以上の場合、前記評価対象移動体の通行情報に基づく通過速度と、前記他の移動体の通行情報に基づく通過速度の統計量に基づく値との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定し、特異であると判定した場合、前記評価対象移動体が速度超過であると判定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の通行状況監視装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記評価対象移動体の通行情報と前記他の移動体の通行情報とに基づく前記評価対象移動体と前方の移動体との車間距離が所定のしきい値以下である場合、前記評価対象移動体の通行が特異であって、かつ車間距離不保持の危険運転であると判定する
請求項1または2に記載の通行状況監視装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記評価対象移動体と前記前方の移動体の通行速度が、周囲の移動体の通行速度と比較して所定の値以上低いか、または所定の割合以下に低い場合、前記前方の移動体が低速度通行による危険運転であると判定する
請求項6に記載の通行状況監視装置。
【請求項8】
評価対象移動体の位置情報の時系列に基づき、前記評価対象移動体の通行状況を所定の通行区間毎に表す情報である通行情報を生成するステップと、
前記評価対象移動体の通行情報と他の移動体の通行情報との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定するステップと、
を備える通行状況監視方法。
【請求項9】
評価対象移動体の位置情報の時系列に基づき、前記評価対象移動体の通行状況を所定の通行区間毎に表す情報である通行情報を生成するステップと、
前記評価対象移動体の通行情報と他の移動体の通行情報との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通行状況監視装置、通行状況監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には次のような車載器が開示されている。すなわち、特許文献1に記載されている車載器は、監視対象となる自車両とその前方を走行している他車両との車間距離を計測し、車間距離に応じた時間の余裕を閾値と比較して異常接近の有無を判定する。また、この車載器は、道路上の白線と自車両との横方向の位置関係に基づいて自車両の走行軌跡の時系列変化から蛇行状態を把握する。また、この車載器は、異常接近でない時に、蛇行状態を表す統計量を学習しておく。また、この車載器は、異常接近の場合には、蛇行状態を表す最新の統計量と学習した統計量との違いの大きさを把握して、煽り運転か否かを判定する。この車載器によれば、自車両の運転者による煽り運転のような異常な運転行為を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-24580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車載器では、道路上の白線と自車両との位置関係に基づく自車両の走行軌跡の時系列変化から蛇行状態を把握するので、白線を検知できない場合、蛇行状態を把握することができないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、移動体(例えば車両)の通行状況(走行状況)を安定的に監視することができる通行状況監視装置、通行状況監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る通行状況監視装置は、評価対象移動体の位置情報の時系列に基づき、前記評価対象移動体の通行状況を所定の通行区間毎に表す情報である通行情報を生成する通行情報生成部と、前記評価対象移動体の通行情報と他の移動体の通行情報との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
本開示に係る通行状況監視方法は、評価対象移動体の位置情報の時系列に基づき、前記評価対象移動体の通行状況を所定の通行区間毎に表す情報である通行情報を生成するステップと、前記評価対象移動体の通行情報と他の移動体の通行情報との対比によって、前記評価対象移動体の通行が特異であるか否かを判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上述の各態様によれば、通行状況を安定的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る走行状況監視装置の構成例を示すシステム図である。
図2】本開示の実施形態に係る走行状況監視装置で用いる走行情報の構成例を示す模式図である。
図3】本開示の実施形態に係る走行状況監視装置で用いる走行情報の他の構成例を示す模式図である。
図4】本開示の実施形態に係る走行状況監視装置で用いる走行区間情報の構成例を示す模式図である。
図5】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を示すフローチャートである。
図6】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を説明するための模式図である。
図7】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を説明するための模式図である。
図8】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を説明するための模式図である。
図9】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を示すフローチャートである。
図10】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を説明するための模式図である。
図11】本開示の実施形態に係る判定部の動作例を説明するための模式図である。
図12】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(走行状況監視装置の構成例)
以下、本開示の実施形態に係る走行状況監視装置(通行状況監視装置)の構成例について、図1図4を参照して説明する。図1は、本開示の実施形態に係る走行状況監視装置の構成例を示すシステム図である。図2は、本開示の実施形態に係る走行状況監視装置で用いる走行情報の構成例を示す模式図である。図3は、本開示の実施形態に係る走行状況監視装置で用いる走行情報の他の構成例を示す模式図である。図4は、本開示の実施形態に係る走行状況監視装置で用いる走行区間情報の構成例を示す模式図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0011】
図1に示すように、本開示の実施形態に係る走行状況監視装置(あるいは走行状況監視システムとも呼べる)100は、中央データ装置1と、走行情報処理装置2と、道路課金判定装置3と、交通統計情報通知装置4と、交通違反判定装置5と、道路課金管理装置6と、交通統計情報管理装置7と、交通違反管理装置8と、複数の車載装置10とを備える。各装置1~8は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータと、その周辺装置とを用いて構成することがきる。
【0012】
車載装置10は、GNSS(Global Navigation Satellite System;衛星測位システム)受信装置11と、情報処理装置12と、移動体通信装置13とを備える。車載装置10は、道路301を走行する複数の自動車(移動体)C1、C2等に搭載されている。なお、車載装置10が搭載されるものは自動車に限らず、移動するものであれば自転車、二輪車またはドローン等でもよい。さらに、後述する走行情報の対比は、たとえば自動車と二輪車、ドローンと自転車等、異なる移動体のものであってもよい。
【0013】
GNSS受信装置11は、GNSS信号受信用のアンテナを用いて複数のGNSS衛星401から受信したGNSS信号に基づき所定の周期で繰り返し位置情報(アンテナ位置の緯度、経度、海抜等)を算出して情報処理装置12へ出力する。なお、GNSS受信装置11は、例えば道路301脇に設置されたアンテナ402が送信したGNSS補正信号を受信することで位置情報の誤差を補正する機能を備えていてもよい。
【0014】
情報処理装置12は、例えば一定期間ごとに繰り返し、GNSS受信装置11から取得した位置情報の時系列(時系列データ)を、移動体通信装置13を用いて中央データ装置1へ送信する。情報処理装置12は、例えば、位置情報とともに、車載器10を搭載する自動車C1等の固有情報(例えば、自動車の種別、車番等)を合わせて中央データ装置1へ送信してもよい。なお、GNSS受信装置11で算出した位置情報を以下、車載器10の位置情報あるいは自動車(C1等)の位置情報ともいう。
【0015】
移動体通信装置13は、移動体基地局403等に接続することで移動体通信網等の通信網を介して、中央データ装置1と通信接続する。
【0016】
中央データ装置1は、複数の車載器10が送信した一定期間分のすべての位置情報の時系列を収集して記憶装置1-1に記憶する。中央データ装置1は、例えば、移動体通信装置13に設定されている個別識別番号等を各車載器10の識別符号(車両識別符号)として、各位置情報の時系列を記憶する。また、中央データ装置1は、走行情報処理装置2が生成した走行情報を記憶装置1-1に記憶する。また、中央データ装置1は、道路課金判定装置3、交通統計情報通知装置4、および交通違反判定装置5に対して、記憶装置1-1に記憶している走行情報を提供する。その際、中央データ装置1は、例えば、走行情報に基づく車両や速度を地図上に記載(地図データに追記)する形で、走行情報を提供することができる。
【0017】
(走行情報生成部21の構成例)
走行情報処理装置2は、コンピュータ等のハードウェアとそのコンピュータ等が実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、走行情報生成部21(通行情報生成部)を備える。走行情報生成部21は、評価対象車両の一例である自動車C1等の位置情報の時系列に基づき、自動車C1の「走行状況」(通行状況)を所定の「走行区間310」(通行区間)毎に表す情報である「走行情報」(通行情報)を生成する。そして、走行情報生成部21は、生成した走行情報を中央データ装置1へ送信し、中央データ装置1に保存する。
【0018】
なお、「走行区間310」は、所定距離毎に道路301を複数に区分したり、あるいは直線、曲線、坂等の形状に対応させて道路301を複数に区分したりした道路301の部分である。互いに隣接する各走行区間310は、重複部分を有していてもよいし、重複部分を有していなくてもよい。
【0019】
また、「走行状況」は、自動車の走行態様、自動車の周辺環境等を表す情報であり、例えば、走行時刻や走行時間帯、走行速度、走行加速度(前後方向、左右方向)、走行時の天気、走行軌跡(例えば位置情報の時系列そのもの)、対象区間の通過時間、走行方向等の情報を含む。走行情報生成部21は、中央データ装置1から各自動車の位置情報の時系列を取得し、取得した位置情報の時系列に基づいて1または複数の走行区間を特定し、走行区間と走行状況を対応付けて走行区間毎に走行情報を生成する。その際、走行情報生成部21は、例えば地図情報や後述する走行区間情報を参照し、位置情報に基づいて走行区間を特定し、特定した走行区間毎に、走行情報を生成する。なお、走行情報生成部21は、走行時の天気については、例えば図示していない外部の天気情報を提供するサーバ等から取得する。
【0020】
図2は、走行情報生成部21が生成する走行情報の構成例(走行情報201)を示す。図2に示す走行情報201は、走行区間310の識別情報である走行区間識別符号と、自動車あるいは車載器の識別情報である車両識別符号と、位置情報時系列とを含む。位置情報時系列は、例えば、当該走行区間に対応する位置情報の時系列(日時、緯度、経度を表すデータの組)である。
【0021】
図3は、走行情報生成部21が生成する走行情報の他の構成例(走行情報202)を示す。図3に示す走行情報202は、走行区間310の識別情報である走行区間識別符号と、走行方向(当該走行区間が対面通行である場合の通行方向)と、自動車あるいは車載器の識別情報である車両識別符号と、日時(年月日時分秒)と、当該走行区間周辺の雲量、降雨量、降雪量、気温、霧の有無等の気象状態を表す天気と、速度(走行速度(平均、最低、最高))と、加速度(走行加速度(前後、左右))と、位置情報時系列とを含む。ただし、例えば、位置情報時系列等の一部は省略してもよい。
【0022】
図4は、走行情報生成部21が走行区間を特定する際に参照する走行区間情報の構成例(走行区間情報203)を示す。走行情報処理装置2は、走行区間毎に各走行区間情報を記憶する。図4に示す走行区間情報203は、走行区間310の識別情報である走行区間識別符号と、走行方向(当該走行区間が対面通行である場合の通行方向)と、当該走行区間の範囲を表す座標情報(境界の緯度、経度の座標群)と、当該走行区間の曲率(平均、最大)と、制限速度とを含む。
【0023】
図1に示す道路課金判定装置3は、中央データ装置1が記憶している走行情報を取得し、走行情報に基づいて、例えば、道路301に負荷が掛かるような運転(急発進、急減速、速度超過等を含む運転)が発生したか否かを判定し、判定した結果を道路課金管理装置6へ通知する。あるいは、道路課金判定装置3は、走行情報に基づいて、例えば、道路301に落下物等の障害物が存在している場合に、特定の車線を回避するような運転が発生したか否かを判定し、判定した結果を道路課金管理装置6へ通知するようにしてもよい。道路課金管理装置6は、例えば、道路301を管理する事業者が運営する装置であって、操作者の指示に基づき、道路課金判定装置3の判定結果を参照し、例えば特定の自動車に対して一定の割り増し料金を課金する等の課金管理を行ったり、落下物等が存在すると判定された場合に発生場所を巡回する手配を行ったりする。
【0024】
図1に示す交通統計情報通知装置4は、中央データ装置1が記憶している走行情報を取得し、走行情報に基づいて、例えば、マップ上に車両の台数や平均速度を表示することで、渋滞の発生状況を把握しやすいように作成したマップを表す情報を、交通統計情報管理装置7へ通知する。交通統計情報管理装置7は、例えば、道路301を管理する自治体や自治体等から委託を受けた事業者が運営する装置であって、操作者の指示に基づき、例えば、交通統計情報通知装置4から通知された情報を、表示したり、編集したり、印刷したりする。
【0025】
(判定部51の構成例および動作例)
交通違反判定装置5は、コンピュータ等のハードウェアとそのコンピュータ等が実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、判定部51を備える。判定部51は、評価対象車両の一例である自動車C1の走行情報と、他車両の一例である自動車C2等の走行情報との対比によって、自動車C1の走行が例えば危険運転等に対応するような特異なものであるか否かを判定する。交通違反判定装置5は、判定した結果を交通違反管理装置7へ提供する。
【0026】
判定部51は、例えば、評価対象車両の走行情報に基づく左右方向の動きに基づく値と、他車両の走行情報に基づく左右方向の動きの統計量に基づく値との対比によって、たとえば値同士に一定以上の差があるか否かにもとづいて評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定し、特異であると判定した場合、評価対象車両が蛇行運転であると判定することができる。あるいは、判定部51は、走行区間の曲率が所定値以上の場合、評価対象車両の走行情報に基づく当該走行区間の通過速度と、他車両の走行情報に基づく当該走行区間の通過速度の統計量に基づく値との対比によって、たとえば値同士に一定以上の差があるか否かにもとづいて評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定し、特異であると判定した場合、評価対象車両が速度超過であると判定することができる。あるいは、判定部51は、評価対象車両の走行情報と他車両の走行情報とに基づく評価対象車両と前方車両との車間距離が所定のしきい値以下である場合、評価対象車両の走行が特異であって、かつ車間距離不保持の危険運転であると判定することができる。ただし、判定部51は、評価対象車両と前方車両の走行速度が、周囲の車両の走行速度と比較して所定の値以上低いか、または所定の割合以下に低い場合、車間距離不保持の危険運転であるとの判定を取り消し、前方車両が低速度走行による危険運転であると判定することができる。また、特異であるか否かの判定は、所定の値を用いた比較のほか、人工知能による判定としてもよい。具体的には、蛇行運転や速度超過や車間距離不保持の危険運転にあたるデータをあらかじめ学習し、評価対象車両の走行情報と学習したデータとを比較して蛇行運転や速度超過や車間距離不保持の危険運転にあたるかを判定してもよい。
【0027】
以下、判定部51が危険運転に対応する特異な走行を判定する処理について説明する。図5は、本開示の実施形態に係る判定部51の動作例を示すフローチャートである。図5は、判定部51の基本的動作例を示す。図5に示す動作例では、まず、判定部51が、中央データ装置1から評価対象車両の走行情報を取得する(ステップS101)。次に、判定部51が、中央データ装置1から、同一走行区間、同時間帯、同一天気での他車両の走行情報を取得する(ステップS102)。次に、判定部51が、評価対象車両の走行情報と他車両の走行情報との対比によって、評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定する(ステップS103)。そして、評価対象車両の走行が特異である場合(ステップS103で「Yes」の場合)、判定部51は、評価対象車両が危険運転であると判定する(ステップS104)。
【0028】
なお、判定部51による、自車単独(評価対象者量単独)で危険運転を行ったか否かの判定では、任意の走行区間における、自車の走行情報と、速度制限や車線情報を追記した地図データまたは同時刻帯・同気象条件での他車の走行情報(過去も含め)との比較を行ない、自車の走行が交通違反または他車と比べ特異な走行の場合、危険運転を行ったと判定することができる。道路形状により、危険運転と判定する項目を変化させることで、フレキシブルに危険運転を検知することができる。例えば直線道路では蛇行運転、カーブ部では走行速度を危険運転の判定項目とすることができる。
【0029】
特異であるか否かの判定は、蛇行運転であれば、例えば、機械学習により走行情報の過去データの統計量(進行方向に対する左右方向の動き、の分散、二次/四次モーメント、分布の形、データグラフの画像識別など)をクラスタリングし、学習済みモデルを用いて、通常運転と危険運転に分類することで行うことはできる。学習させたパラメータを用い、判定する車両の統計量などから、危険運転有無を判断させことができる。図6は、本開示の実施形態に係る判定部の動作例を説明するための模式図である。図6は、同一道路301aの同一走行区間310aにおける評価対象車両である自動車C1の走行(左側)と複数の他車C2の走行(右側)とを比較して示す。複数の他車C2の走行情報に基づいて学習した学習済みモデルを用いて、自動車C1の走行情報を分類することで、判定部51は、評価対象車両の走行情報と他車両の走行情報との対比によって、評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定することができる。
【0030】
また、速度超過であれば、走行情報の過去データの統計量から、例えばμ+2σ(平均+標準偏差の2倍)より走行速度が一定時間速ければ、危険運転と判断させることができる。図7図8は、本開示の実施形態に係る判定部51の動作例を説明するための模式図である。図7は、道路301bの走行区間310bにおける評価対象車両である自動車C1の走行例を示し、図8は、同一道路301bの同一走行区間310bにおける複数の他車C2の走行例を示す。
【0031】
以上のように、判定部51は、得られた位置情報の時系列から統計量を算出し、クラスタリングなどのクラス分類による結果、または統計量の平均値からの外れ値(標準偏差の何倍以上乖離している、箱ひげ図プロット時の外れ値など)により、特異と判断することができる。また、特異と判断される挙動について、進行方向に対して、正弦波のような周期的に左右方向にぶれている挙動、前方車両との車間距離が短くまたは近づいたり離れたりする、加減速が著しい挙動が挙げられる。
【0032】
さらに、判定部51は、天候や時刻情報によって、比較する過去データの抽出(同一気象時刻)を実施しているが、万が一抽出した過去データ量が比較用データの量として不十分である場合、道路構造が似たその他のエリアにおいて、同一気象時刻とそれ以外での統計的な差(差分量)を計算する。そして、判定部51は、得られた差分量および同一気象時刻以外での過去データを用いて、統計量の値を調整することにより、データ不足時に対応可能となる。例えば、ある解析エリアの深夜かつ雨のデータが不足している場合、他のエリア(道路構造が似ているエリア)にて、同一気象時刻条件時とそれ以外の場合の統計量を比較する。統計量の誤差ΔSを記録し、解析エリアの同一気象時刻条件時は、それ以外の場合の統計量にΔSを加算したものを同一気象時刻条件時の統計量と定義する。すなわち、判定部51は、例えば、評価対象車両の走行情報に基づく所定の値と、類似する走行区間に紐付けられた他車両の走行情報に基づく統計量を統計的に補正した値との対比によって、評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定することができる。
【0033】
次に自車と他車が絡む危険運転の判定(例:車間不保持)については、判定部51は、任意の区間または走行時間における、自車および関係する他車の走行情報と、同時間帯・同気象条件でのその他の車の走行情報(過去を含む)との比較を行い、他車との車間距離が著しく短い場合、自車を車間不保持による危険運転と判定することできる。一方、判定部51は、前方車両との車間距離が短く車間不保持と判定したが、自車および前方車両の走行速度が周囲の車両の走行速度と比較して、著しく遅い場合、前方車両の低速度走行により自車の前方車両との車間距離が短くなったと判定し、自車の車間不保持の取消および前方車両の低速度走行による危険運転と判定することができる。
【0034】
図9は、本開示の実施形態に係る判定部51の動作例を示すフローチャートである。図9は、判定部51が、車間距離不保持によって危険運転を判定する動作例を示す。図9に示す動作例では、まず、判定部51が、中央データ装置1から評価対象車両の走行情報を取得し、評価対象車両の走行位置と走行速度を取得する(ステップS201)。次に、判定部51が、中央データ装置1から評価対象車両の前方車両の走行情報を取得し、前方車両の走行位置と走行速度を取得する(ステップS202)。次に、判定部51が、評価対象車両と前方車両の走行速度がほぼ同等か否かを判定する(ステップS203)。走行速度がほぼ同等でない場合(ステップS203で「No」の場合)、判定部51は、ステップS201へ戻り、新たな走行情報を取得する。
【0035】
一方、走行速度がほぼ同等である場合(ステップS203で「Yes」の場合)、判定部51は、評価対象車両と前方車両の車間距離を算出する(ステップS204)。次に、判定部51は、車間距離が著しく短いか否かを判定する(ステップS205)。車間距離が著しく短くない場合(ステップS205で「No」の場合)、判定部51は、ステップS201へ戻り、新たな走行情報を取得する。他方、車間距離が著しく短い場合(ステップS205で「Yes」の場合)、判定部51は、同時刻における周囲の車両の走行速度を取得する(ステップS206)。
【0036】
次に、判定部51は、評価対象車両の走行速度と、同時刻における周囲の車両の走行速度とがほぼ等しいか否かを判定する(ステップS207)。一方、走行速度とがほぼ等しくない場合(ステップS207で「No」の場合)、判定部51は、低速度走行による前方車両の危険運転であると判定し(ステップS208)、他方、走行速度とがほぼ等しい場合(ステップS207で「Yes」の場合)、判定部51は、評価対象車両の車間不保持による危険運転であると判定する(ステップS209)。
【0037】
図10図11は、本開示の実施形態に係る判定部51の動作例を説明するための模式図である。図10図11は、車間距離不保持の例を示す。図10は、同一道路301cの同一走行区間310cにおける評価対象車両である自動車C1と複数の他車C21、C22およびC23のある時刻における走行例(左側)とその所定時間後の走行例(右側)とを示す。自動車C1と前方の自動車C21との車間距離は著しく短い状態(走行速度に対応した所定のしきい値以下の状態)である。自動車C1と複数の他車C21、C22およびC23の走行速度は時速80kmである。図10に示す例では、判定部51は、評価対象車両C1の車間不保持による危険運転であると判定する(ステップS203で「Yes」→ステップS205で「Yes」→ステップS207で「Yes」→ステップS209)。
【0038】
図11は、同一道路301cの同一走行区間310cにおける評価対象車両である自動車C1と複数の他車C21、C22およびC23のある時刻における走行例(左側)とその所定時間後の走行例(右側)とを示す。自動車C1と前方の自動車C21との車間距離は著しく短い状態(走行速度に対応した所定のしきい値以下の状態)である。自動車C1と複数の他車C21の走行速度は時速40kmである。自動車C22およびC23の走行速度は時速80kmである。図11に示す例では、判定部51は、低速走行による前方車両C21の危険運転であると判定する(ステップS203で「Yes」→ステップS205で「Yes」→ステップS207で「No」→ステップS208)。
【0039】
(作用・効果等)
上記実施形態では、GNSSを利用することで、車載カメラが不要となり、周辺環境による撮影不可および画像処理の必要がなくなる、また速度などをより正確に計測できるメリットがある。したがって、本開示の走行状況監視装置および走行状況監視方法によれば、走行状況を安定的に監視することができる。
【0040】
また、GNSS情報を中央データ装置1にて集約することにより、位置情報の改ざんを防ぐことができ、また、自車周辺車両の動きを把握、危険運転の起因点を把握できるといったメリットがある。
【0041】
さらにこの技術を活用すれば、危険運転以外にもドライバーの運転能力評価、有料道路などの通行料金課金、交通量統計データの作成といった様々なサービスを提供できる。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、車載器10は、CAN(Controller Area Network)等を用いて、ステアリング角度を示す情報、ブレーキペダルの角度を示す情報等を取得し、左右方向の加速度に対応する情報、急ブレーキの有無を示す情報を、位置情報に付加して中央データ装置1へ送信してもよい。この場合、走行情報生成部21は、これらの付加情報を走行情報に含めることができる。また、比較対象についての条件は、走行区間や時間帯、天気が同一であることに加えて、曜日や平日と休日の別を同一としてもよい。
【0043】
(コンピュータ構成)
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の中央データ装置1、走行情報処理装置2、道路課金判定装置3、交通統計情報通知装置4、交通違反判定装置5、道路課金管理装置6、交通統計情報管理装置7、交通違反管理装置8、および車載装置10は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0044】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0045】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0046】
<付記>
各実施形態に記載の走行状況監視装置100は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る走行状況監視装置100(通行状況監視装置)は、評価対象車両(評価対象移動体)の位置情報の時系列に基づき、前記評価対象車両の走行状況(通行状況)を所定の走行区間(通行区間)毎に表す情報である走行情報(通行情報)を生成する走行情報生成部21(通行情報生成部)と、前記評価対象車両の走行情報と他車両(他の移動体)の走行情報との対比によって、前記評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定する判定部51と、を備える。この態様および以下の各態様によれば、走行状況を安定的に監視することができる。
【0048】
(2)第2の態様に係る走行状況監視装置100は、(1)の走行状況監視装置100であって、前記判定部51は、前記評価対象車両の走行情報と同一の走行区間に紐付けられた他車両の走行情報との対比によって、前記評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定する。
【0049】
(3)第3の態様に係る走行状況監視装置100は、(1)の走行状況監視装置100であって、前記判定部51は、前記評価対象車両の走行情報に基づく所定の値と、前記所定の走行区間に類似する走行区間に紐付けられた他車両の走行情報に基づく統計量を統計的に補正した値との対比によって、前記評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定する。この態様によれば、所定の走行区間と類似する走行区間の情報を用いることで、所定の走行区間における他車両に関するデータ数が少ない場合に精度良く判定を行うことができる。
【0050】
(4)第4の態様に係る走行状況監視装置100は、(1)~(3)の走行状況監視装置100であって、前記判定部51は、前記評価対象車両の走行情報に基づく左右方向の動きに基づく値と、前記他車両の走行情報に基づく左右方向の動きの統計量に基づく値との対比によって、前記評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定し、特異であると判定した場合、前記評価対象車両が蛇行運転であると判定する。
【0051】
(5)第5の態様に係る走行状況監視装置100は、(1)~(4)の走行状況監視装置100であって、前記判定部51は、前記走行区間の曲率が所定値以上の場合、前記評価対象車両の走行情報に基づく通過速度と、前記他車両の走行情報に基づく通過速度の統計量に基づく値との対比によって、前記評価対象車両の走行が特異であるか否かを判定し、特異であると判定した場合、前記評価対象車両が速度超過であると判定する。
【0052】
(6)第6の態様に係る走行状況監視装置100は、(1)または(2)の走行状況監視装置100であって、前記判定部は、前記評価対象車両の走行情報と前記他車両の走行情報とに基づく前記評価対象車両と前方車両(前方の移動体)との車間距離が所定のしきい値以下である場合、前記評価対象車両の走行が特異であって、かつ車間距離不保持の危険運転であると判定する。
【0053】
(7)第7の態様に係る走行状況監視装置100は、(6)の走行状況監視装置100であって、前記判定部51は、前記評価対象車両と前記前方車両の走行速度が、周囲の車両の走行速度と比較して所定の値以上低いか、または所定の割合以下に低い場合、前記前方車両が低速度走行による危険運転であると判定する。
【符号の説明】
【0054】
100 走行状況監視装置(通行状況監視装置)
1 中央データ装置
2 走行情報処理装置
3 道路課金判定装置
4 交通統計情報通知装置
5 交通違反判定装置
6 道路課金管理装置
7 交通統計情報管理装置
8 交通違反管理装置
10 車載装置
21 走行情報生成部(通行情報生成部)
51 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12