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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155723
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20221006BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16F9/348
F16F9/32 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059091
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
(72)【発明者】
【氏名】小山 聖生
(72)【発明者】
【氏名】山本 直紀
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA53
3J069DD26
3J069EE25
3J069EE28
(57)【要約】
【課題】車両における乗心地を向上させるとともに異音の発生を抑制できる緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、アウターチューブ1とロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内の作動室R1,R2を連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに直列に設けられたメイン減衰力発生要素MDおよびサブ減衰力発生要素SDとを備え、サブ減衰力発生要素SDがサブバルブ14と、サブバルブ14との間に環状隙間Pを開けて対向する環状対向部6cと、弾性を備えて撓みが許容されるとともにサブバルブ14が撓んで当接するとサブバルブ14の撓みを規制するバルブストッパ13とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、
前記緩衝器本体内に設けられた二つの作動室を連通する減衰通路と、
前記減衰通路に直列に設けられたメイン減衰力発生要素およびサブ減衰力発生要素とを備え、
前記サブ減衰力発生要素は、
弾性を備え、内周或いは外周の一方が固定されて固定端とされ内周あるいは外周の他方を自由端として撓みが許容されるとともに前記減衰通路に設けられる環状のサブバルブと、
前記サブバルブの自由端との間に環状隙間を開けて対向する環状対向部と、
環状であって、前記サブバルブに対して軸方向に隙間を介して対向するとともに前記サブバルブが撓んで当接すると前記サブバルブの撓みを抑制するバルブストッパとを有し、
前記バルブストッパは、
前記サブバルブの固定端が内周である場合には内周が固定端とされ、前記サブバルブの固定端が外周である場合には外周が固定端とされて、反対側の周を自由端として自由端の撓みが許容される
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記バルブストッパの撓み剛性は、前記サブバルブの撓み剛性よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記メイン減衰力発生要素は、前記減衰通路を開閉するメインバルブを有し、
前記サブバルブが前記バルブストッパに当接した状態において、前記メインバルブの開弁時の流路面積は、前記サブバルブと前記環状対向部との間の前記環状隙間の流路面積よりも常に広い
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記メイン減衰力発生要素は、前記作動室間の差圧が第1差圧になると開弁するメインバルブを有し、
前記サブバルブは、
前記差圧が前記第1差圧以上の第2差圧になると前記バルブストッパに当接する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記バルブストッパは、
複数枚の環状板を積層して形成される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記バルブストッパの自由端側の径は、サブバルブ側から反サブバルブ側へ向けて、段階的或いは連続的に、固定端側の径に近づくように変化している
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両における乗心地を向上する目的で、車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、伸縮時に発揮する減衰力で車体および車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内の圧側室の下方に気室を区画するフリーピストンと、ピストンに設けられて伸側室と圧側室とを連通する減衰通路と、減衰通路に設けた減衰力発生要素とを備えている。
【0004】
近年、車両用の緩衝器には、車両における乗心地の向上のため、伸縮速度が低速よりも低い微低速域では減衰係数を高くし減衰力を伸縮の行程の切り換わりに対して速やかに立ち上げ、低速域では減衰係数を微低速域よりも小さくし、さらに、低速を超える高速域では伸縮速度に比例するが低速域よりも減衰係数が小さくさせる減衰力特性の発揮が要望されている。そのために、主として伸縮速度が低速から高速時に減衰力を発生させるメインバルブと、主として伸縮速度が微低速時に減衰力を発生させるサブバルブとを減衰通路に直列に有する減衰力発生要素を備えた緩衝器が開発されている。
【0005】
メインバルブは、ピストンに設けられた伸側ポートを開閉する伸側リーフバルブと、ピストンに設けられた圧側ポートを開閉する圧側リーフバルブとで構成されている。伸側リーフバルブは、伸側室の圧力が圧側室の圧力を上回り両者の差(差圧)が開弁圧に達すると伸側ポートを開放して伸側室から圧側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。圧側リーフバルブは、圧側室の圧力が伸側室の圧力を上回り両者の差(差圧)が開弁圧に達すると圧側ポートを開放して圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。なお、ピストンに設けられて伸側リーフバルブ或いは圧側リーフバルブが着座する弁座には切欠が設けられており、閉弁時には切欠を介して圧側室と伸側室とを連通する。
【0006】
また、サブバルブは、環状であって内周側が固定されて外周側の撓みが許容されるリーフバルブとされていて、外周側に配置される環状対向部の内周に環状隙間を介して対向し、伸側室と圧側室とを行き交う作動油の流れに抵抗を与える。
【0007】
そして、緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合、サブバルブが然程撓まず環状対向部との環状隙間を小さく維持するので、減衰力の減衰力特性は、サブバルブによって伸縮速度に応じて急激に立ち上がる。緩衝器の伸縮速度が低速域になると、サブバルブが大きく撓んで前記環状隙間における流路面積がピストンにおける切欠の流路面積よりも大きくなるため、緩衝器は、切欠によって減衰力を発生する。さらに、緩衝器の伸縮速度が高速域になると、メインバルブにおける伸側或いは圧側のリーフバルブが撓んで伸側或いは圧側のポートを開放するので、緩衝器における減衰係数が微低速時および低速時の減衰係数よりも小さくなる。従来の緩衝器のサブバルブおよびメインバルブは以上のように動作して、緩衝器は、車両に適する減衰力特性を実現している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-183918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、従来の緩衝器におけるサブバルブは、外周側の自由端が大きく撓むことで低速時の減衰力特性にサブバルブが影響しないようにしている。しかしながら、緩衝器の伸縮速度が高速域になった際の差圧を受けて過剰に撓むとサブバルブが応力に耐えられなくなる可能性がある。そのため、従来の緩衝器では、サブバルブに対して軸方向に隙間を開けて対向し、サブバルブが所定量以上撓むとサブバルブの外周側に当接してサブバルブのそれ以上の撓みを規制するバルブストッパを備えている。
【0010】
このように、従来の緩衝器は、バルブストッパを備えているのでサブバルブを保護できるのであるが、サブバルブがバルブストッパによって撓みが規制されると流路面積をそれ以上大きくできなくなる。よって、従来の緩衝器では、伸縮速度が非常に高くなって高速を超える高々速域に達すると、図9に示すように、メインバルブがピストンから離間してできる流路における流路面積よりサブバルブで制限する流路面積が小さくなって減衰力が過剰となり、車両における乗心地を損なってしまう場合がある。
【0011】
また、緩衝器が単筒型緩衝器とされる場合、シリンダ内にフリーピストンで区画して気室の拡縮によってピストンロッド侵入分の体積を補償しているため、圧側室内の圧力を気室の圧力以上に上昇させることができない。よって、緩衝器が単筒型緩衝器であると、従来の緩衝器の構造では、バルブストッパによって支持されたサブバルブが流路面積を制限してしまうため、圧側の減衰力がすぐに上限に達して伸側室が負圧となって、緩衝器の伸縮方向が伸長に切り換わる際に速やかに減衰力を発揮できず異音を生じさせてしまう可能性がある。
【0012】
そこで、本発明は、車両における乗心地を向上させるとともに異音の発生を抑制できる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の緩衝器は、アウターチューブと、アウターチューブ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、緩衝器本体内に設けられた二つの作動室を連通する減衰通路と、減衰通路に直列に設けられたメイン減衰力発生要素およびサブ減衰力発生要素とを備え、サブ減衰力発生要素は、弾性を備えて内周或いは外周の一方が固定されて固定端とされ内周あるいは外周の他方を自由端として撓みが許容されるとともに減衰通路に設けられる環状のサブバルブと、サブバルブの自由端との間に環状隙間を開けて対向する環状対向部と、環状であってサブバルブに対して軸方向に隙間を介して対向するとともにサブバルブが撓んで当接すると前記サブバルブの撓みを抑制するバルブストッパとを有し、バルブストッパは、サブバルブの固定端が内周である場合には内周が固定端とされ、サブバルブの固定端が外周である場合には外周が固定端とされて、反対側の周を自由端として自由端の撓みが許容されることを特徴としている。
【0014】
このように構成された緩衝器によれば、サブバルブがバルブストッパに当接すると正面側から受ける圧力によって撓もうとするサブバルブが背面側の弾性を備えたバルブストッパに支持されるとともに、緩衝器の伸縮速度の増加に応じてバルブストッパもサブバルブとともに撓んで、サブバルブの応力を軽減しつつも緩衝器の収縮速度に応じて環状隙間を大きくすることができる。
【0015】
また、緩衝器におけるバルブストッパの撓み剛性をサブバルブの撓み剛性よりも高くする場合には、サブバルブの過剰な撓みを抑制できサブバルブの応力を効果的に軽減できる。
【0016】
さらに、メイン減衰力発生要素が減衰通路を開閉するメインバルブを有し、サブバルブがバルブストッパに当接した状態において、メインバルブの開弁時の流路面積がサブバルブと環状対向部との間の環状隙間の流路面積よりも常に広くなるように緩衝器を構成してもよい。このように構成された緩衝器によれば、伸縮速度が高々速域に達しても減衰力が過剰となることがなく車両における乗心地を効果的に向上できる。
【0017】
そして、メイン減衰力発生要素は、作動室間の差圧が第1差圧になると開弁するメインバルブを有し、サブバルブは、差圧が第1差圧以上の第2差圧になるとバルブストッパに当接してもよい。このように構成された緩衝器によれば、伸縮速度が高々速域に達しても減衰力が過剰となることがなく車両における乗心地を効果的に向上できる。
【0018】
また、緩衝器におけるバルブストッパが複数枚の環状板を積層して形成される場合には、サブバルブがバルブストッパに当接してからの撓み量を簡単にチューニングでき、サブバルブの応力を効果的に軽減しつつも減衰力が過剰となるのを防止できる。
【0019】
そして、さらに、緩衝器におけるバルブストッパの自由端側の径がサブバルブ側から反サブバルブ側へ向けて、段階的或いは連続的に、固定端側の径に近づくように変化する場合には、サブバルブがバルブストッパに当接してバルブストッパとともに撓んでも、流路面積を無用に減じてしまうことがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の緩衝器によれば、車両における乗心地を向上させるとともに異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態の緩衝器の縦断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態の緩衝器の一部拡大断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態の緩衝器のサブ減衰力発生要素の拡大断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態の緩衝器の減衰力特性を示した図である。
図5】本発明の第1の実施の形態の緩衝器のサブバルブがバルブストッパとともに撓んだ状態を示した一部拡大断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態の第1変形例の緩衝器のサブ減衰力発生要素の一部拡大断面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態の第2変形例の緩衝器のサブ減衰力発生要素の一部拡大断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態の第2変形例の緩衝器の縦断面図である。
図9】従来の緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、第1の実施の形態における緩衝器Dは、アウターチューブとしてのシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに設けられたメイン減衰力発生要素MDとサブ減衰力発生要素SDとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0023】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、緩衝器本体Aは、アウターチューブとしての有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画する隔壁部材としてのピストン3とを備えている。
【0024】
そして、ロッド2の図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の一方に連結される。また、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の他方に連結される。
【0025】
このようにして緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0026】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ1の上端を塞ぐとともに、内周にロッド2が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド10を備えている。よって、シリンダ1内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ1内のピストン3から見てロッド2とは反対側に、フリーピストン11が摺動自在に挿入されている。
【0027】
シリンダ1内におけるフリーピストン11の上側には液室Lが形成され、下側にはガス室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン3でロッド2側の伸側室R1とピストン3側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1と圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、ガス室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0028】
そして、緩衝器Dの伸長時にロッド2がシリンダ1から退出し、その退出したロッド2の体積分シリンダ内容積が増加すると、フリーピストン11がシリンダ1内を上側へ移動してガス室Gを拡大させる。反対に、緩衝器Dの収縮時にロッド2がシリンダ1内へ侵入し、その侵入したロッド2の体積分シリンダ内容積が減少すると、フリーピストン11がシリンダ1内を下側へ移動してガス室Gを縮小させる。
【0029】
なお、フリーピストン11に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lとガス室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0030】
さらに、本実施の形態では、緩衝器Dが片ロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン(可動隔壁)11でガス室Gを拡大または縮小させて、シリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。
【0031】
たとえば、フリーピストン(可動隔壁)11とガス室Gとを廃してシリンダ1の外周にアウターシェルを設け、シリンダ1とアウターシェルとの間に液体を貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型の緩衝器にする場合、リザーバによってシリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ1とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ロッド2の中央にピストン3が装着されてシリンダ1の両端からロッド2の端部がシリンダ1外に突出する両ロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0032】
ロッド2は、先端側に設けた小径部2aと、小径部2aより図2中上側の大径部2bとの境に設けられた段部2cと、小径部2aの先端外周に設けられた螺子部2dとを備えている。
【0033】
つづいて、隔壁部材としてのピストン3は、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合されており、ロッド2の螺子部2dに螺着されるピストンナット15によってロッド2に固定されている。より詳細には、ピストン3は、環状の本体部3aと、本体部3aの図2中下端外周に設けられた筒部3bと、本体部3aの同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫く複数の伸側ポート3cと、本体部3aの前記伸側ポート3cよりも外周側の同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫く複数の圧側ポート3dと、本体部3aの図2中下端の伸側ポート3cと圧側ポート3dとの間に設けられて伸側ポート3cを取り囲む環状の伸側弁座3eと、本体部3aの図2中上端に設けられて伸側ポート3cを避けて圧側ポート3dの開口のみをそれぞれ個別に取り囲む花弁型の圧側弁座3fとを備えて構成されている。
【0034】
戻って、ピストン3の図2中下面には、ロッド2の小径部2aに内周側が固定されて伸側ポート3cを開閉する積層リーフバルブでなる伸側リーフバルブ4、伸側リーフバルブ4の撓みの支点の位置を設定する環状であって伸側リーフバルブ4より外径が小径な間座5が重ねられている。さらに、間座5の下方には、ロッド2の小径部2aに内周が固定される環状のサブバルブケース6、環状のバルブストッパ13および環状のサブバルブ14が重ねられる。
【0035】
また、ピストン3の図2中上面には、ロッド2の小径部2aに内周側が固定されて圧側ポート3dを開閉する積層リーフバルブでなるメインバルブとしての圧側リーフバルブ7、圧側リーフバルブ7の撓みの支点の位置を設定する環状であって圧側リーフバルブ7より外径が小径な間座8およびストッパ9が重ねられている。
【0036】
これらのストッパ9、間座8、圧側リーフバルブ7、ピストン3、伸側リーフバルブ4、間座5、サブバルブケース6、バルブストッパ13およびサブバルブ14は、順にロッド2の小径部2aの外周に組み付けられた後、ロッド2の先端の螺子部2dに螺着されるピストンナット15とロッド2の段部2cとで挟持されてロッド2に固定される。そして、メイン減衰力発生要素MDは、ピストン3および圧側リーフバルブ7とを備えて構成されている。また、ピストン3における圧側ポート3dは、減衰通路DPの一部を構成している。つまり、本実施の形態の緩衝器Dでは、メイン減衰力発生要素MDは、減衰通路DPを開閉するメインバルブとしての圧側リーフバルブ7を備えている。
【0037】
伸側リーフバルブ4は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りロッド2に固定されてピストン3の図2中下端に積層されてピストン3の伸側弁座3eに着座している。伸側リーフバルブ4を構成するリーフバルブのうち、図2中で最上方に積層されて伸側弁座3eに着座するリーフバルブの外周には切欠オリフィス4aが設けられている。よって、伸側リーフバルブ4は、伸側弁座3eに着座した状態では伸側弁座3eにより取り囲まれている伸側ポート3cを切欠オリフィス4aのみを介して圧側室R2に連通させる。なお、伸側リーフバルブ4は、伸側弁座3eに着座した状態でも圧側ポート3dの入口については閉塞しない。
【0038】
そして、伸側リーフバルブ4は、伸側ポート3cを介して正面側に作用する伸側室R1の圧力と背面側に作用する圧側室R2との差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませて伸側弁座3eから離間する。伸側リーフバルブ4は、伸側弁座3eから離間すると伸側弁座3eとの間に環状の隙間を形成し、当該隙間を介して伸側ポート3cを圧側室R2に連通させて伸側ポート3cを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側リーフバルブ4は、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合に開いて、伸側ポート3cを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、伸側リーフバルブ4は、伸側ポート3cを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0039】
また、伸側リーフバルブ4の内周が当接する本体部3aの当接面より伸側弁座3eの方が図2中下方へ突出していて、両者の高さに差(高低差)が設けられていて、伸側リーフバルブ4は、ピストン3に重ねられてロッド2の外周に内周側が固定されると前記高低差によって外周が撓む。このように伸側リーフバルブ4には、予め初期撓みが与えられて伸側弁座3eに自身が発揮する弾発力で自身を押し付けている。よって、伸側室R1と圧側室R2との差圧による伸側リーフバルブ4を撓ませる力が前述の弾発力による押し付け力に打ち勝つようになるまで伸側リーフバルブ4は開弁せず、この開弁時の差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧となる。よって、伸側リーフバルブ4の開弁圧は、伸側リーフバルブ4の撓み剛性と伸側リーフバルブ4に与える初期撓み量によって調整できる。
【0040】
他方の圧側リーフバルブ7は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りロッド2に固定されてピストン3の図2中上端に積層されてピストン3の圧側弁座3fに着座している。圧側リーフバルブ7は、圧側弁座3fに着座した状態では圧側弁座3fにより取り囲まれている圧側ポート3dのみを閉塞するが、伸側ポート3cの入口については閉塞しない。そして、圧側リーフバルブ7は、圧側ポート3dを介して正面側に作用する圧側室R2の圧力と背面側に作用する伸側室R1との差圧が開弁圧となる第1差圧に達すると外周を撓ませて圧側弁座3fから離間して圧側ポート3dを開放し、圧側ポート3dを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器Dでは、圧側リーフバルブ7は、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合に開いて、圧側ポート3dを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、圧側リーフバルブ7は、圧側ポート3dを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。なお、圧側リーフバルブ7の開弁圧は、伸側リーフバルブ4と同様に、圧側リーフバルブ7の撓み剛性と圧側リーフバルブ7に与える初期撓み量によって調整できる。なお、伸側リーフバルブ4における切欠オリフィス4aに代えて、或いは、切欠オリフィス4aに加えて、圧側リーフバルブ7を構成する積層リーフバルブのうち圧側弁座3fに着座するリーフバルブの外周に切欠オリフィスを設けてもよいし、圧側弁座3fに切欠或いは打刻によって形成されるオリフィスを設けてもよい。
【0041】
なお、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされているが、環状板の積層枚数は緩衝器Dに発生させた減衰力に応じて任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されるリーフバルブとされてもよい。また、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は、リーフバルブ或いは積層リーフバルブ以外の構成のバルブとされてもよいが、薄い環状板を用いたリーフバルブ或いは積層リーフバルブとされることで緩衝器Dのピストン部の全長が長くならず緩衝器Dのストローク長を確保しやすくなるという利点を享受できる。
【0042】
また、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は、間座5,8によって内周が支持されていて、間座5,8によって支持されていない外周側の撓みが許容される。よって、間座5,8の外径の設定によって、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7の撓みの支点の位置を変更できる。なお、間座5、8は、複数枚の環状のワッシャで構成されてもよい。
【0043】
ストッパ9は、圧側リーフバルブ7が大きく撓んだ際に圧側リーフバルブ7の外周に当接して圧側リーフバルブ7のそれ以上の撓みを規制して圧側リーフバルブ7を保護する。
【0044】
つづいて、サブ減衰力発生要素SDは、ロッド2の小径部2aの外周に内周が固定される環状のサブバルブ14と、サブバルブケース6の筒状のケース部6bの内周に周方向に沿って設けられた環状突起で形成される環状対向部6cと、サブバルブ14に対して軸方向で隙間を介して対向するバルブストッパ13とを備えている。
【0045】
サブバルブケース6は、環状であってピストン3の筒部3bの内周に嵌合する環状の嵌合部6aと、嵌合部6aの下端外周部から下方へ突出する筒状のケース部6bと、ケース部6bの内周に周方向に沿って設けられた内周側に突出する環状突起で形成された環状対向部6cとを備えている。そして、嵌合部6aと筒部3bとの間がシール50で塞がれており、嵌合部6aには、ケース部6bの内周側に開口して嵌合部6aを軸方向に貫通するサブポート6dが形成されている。また、ケース部6bの内方には、ロッド2の小径部2aの外周に内周が装着される環状のバルブストッパ13および環状のサブバルブ14とが収容されている。
【0046】
サブバルブケース6の嵌合部6aをピストン3の筒部3b内に嵌合すると、サブバルブケース6とピストン3との間に形成される空間Cは、伸側ポート3cおよび圧側ポート3dとを介して伸側室R1に連通され、サブポート6dを介して圧側室R2に連通される。よって、サブポート6dおよび前記空間Cは、圧側ポート3dとともに減衰通路DPを形成している。
【0047】
本実施の形態のサブバルブ14は、図3に示すように、環状であって内周側がロッド2の小径部2aに固定されて固定端とされ外周側を自由端として撓みが許容された三枚のリーフバルブ14a,14b,14cを積層して構成されている。これら三枚のリーフバルブ14a,14b,14cのうちの中央のリーフバルブ14bの外径は、上下両端に位置するリーフバルブ14a,14cの外径よりも大きい。なお、サブバルブ14を構成するリーフバルブの枚数は、緩衝器Dで得たい減衰力に応じて任意に設定でき、複数でなくとも単数とされてもよい。
【0048】
そして、サブバルブ14は、中央のリーフバルブ14bの外周面がサブバルブケース6に設けた環状対向部6cの内周面に対向する位置に位置決めされてロッド2の小径部2aに固定される。また、本実施の形態では、サブバルブ14は、内周が小径の間座16,17によって挟持されている。間座16,17は、外径がサブバルブ14を構成する各リーフバルブ14a,14b,14cの外径よりも小さい環状板であり、サブバルブ14はその内周部を間座16,17で挟まれた状態でロッド2の小径部2aに固定されている。よって、サブバルブ14は、間座16,17の外周縁を支点として外周側が図2中上下方向へ弾性変形して撓むことができる。なお、間座16,17は、図示したところでは、それぞれ1枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板で構成されてもよい。
【0049】
つづいて、バルブストッパ13は、弾性を備えるとともに環状であって、間座16とサブバルブケース6における嵌合部6aの内周側とで挟持された状態でロッド2の小径部2aに装着されている。詳しくは、バルブストッパ13は、本実施の形態の緩衝器Dでは、内周が小径部2aに固定された5枚の環状板13a,13b,13c,13d,13eで構成されており、軸方向にて間座16の厚み分の隙間を介してサブバルブ14の図2中上面に対向している。
【0050】
軸方向でサブバルブ14に最も近い環状板13aと環状板13aの反サブバルブ側に重ねられた環状板13bは、一番大径のリーフバルブ14bが撓んだ際にリーフバルブ14bに当接してリーフバルブ14bを支持可能な外径を持つ環状板で形成されている。また、環状板13bの反サブバルブ側に積層される2枚の環状板13c,13dは、環状板13a,13bと同じ内径を持ち、環状板13a,13bの外径よりも小径な外径を持つ環状板で形成されている。さらに、環状板13a,13b,13c,13d,13eのうち最もサブバルブ14から遠くに積層される環状板13eは、環状板13a,13b,13c,13dと同じ内径を持つ一方で、環状板13a,13b,13c,13dよりも小さな外径を持っている。これら環状板13a,13b,13c,13dは、ともに弾性を備えていて内周が支持されているので、内周側を固定端として環状板13eの外周縁を支点として自由端である外周側の撓みが許容されているが、バルブストッパ13が全体としてリーフバルブ14a,14b,14cで構成されるサブバルブ14よりも高い撓み剛性を備えている。なお、バルブストッパ13の撓み剛性をサブバルブ14の撓み剛性よりも高くするには、たとえば、バルブストッパ13を構成する環状板13a,13b,13c,13dとリーフバルブ14a,14b,14cとを同じ材料で形成する場合、環状板13a,13b,13c,13dの板厚をリーフバルブ14a,14b,14cの板厚よりも厚くしてもよいし、環状板13a,13b,13c,13dをリーフバルブ14a,14b,14cの材料より撓み剛性が高い材料で製造してもよい。
【0051】
そして、サブバルブケース6、バルブストッパ13、間座16、サブバルブ14および間座17は、順番に、伸側リーフバルブ4の図2中下方に積層されてロッド2の小径部2aの外周に組み付けられた後、ロッド2の螺子部2dに螺着されるピストンナット15によってロッド2に固定される。すると、図3に示すように、サブバルブ14のリーフバルブ14bは、内周が固定された状態で外周面を環状対向部6cの内周面に正対させて、環状対向部6cとの間に所定の環状隙間Pをあけて対向する。本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2の小径部2aに固定されるサブバルブ14の内周が固定端とされ、サブバルブ14の外周側に位置する中央のリーフバルブ14bの外周面が、サブバルブケース6に設けられた環状対向部6cに対して上下方向へ動ける自由端となっている。なお、間座16,17を構成する環状板の板厚或いは積層枚数の調整によって、サブバルブ14のリーフバルブ14bが環状対向部6cの内周面と対向するように位置決めすればよい。
【0052】
そして、緩衝器Dが伸縮せず停止した状態では、サブバルブ14が撓まず、図3に示す取付初期の状態に保たれる。このように、サブバルブ14が撓んでいない状態では、図3に示すように、サブバルブ14のリーフバルブ14bは、外周面を環状対向部6cの内周面に正対させて、環状対向部6cとの間に所定の環状隙間Pをあけて対向する。そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、正対するリーフバルブ14bと環状対向部6cとの間にできる環状隙間Pは非常に狭く、その環状隙間Pの開口面積は、前述の切欠オリフィス4aの開口面積よりも小さい。
【0053】
他方、緩衝器Dが動き出す(伸縮する)と、サブバルブ14は撓み、サブバルブ14の撓み量は伸縮速度の増加に応じて大きくなる。そして、緩衝器Dの伸長速度が動き出しのような伸縮速度が0(ゼロ)に近い場合、サブバルブ14の撓み量が非常に小さく、微低速域から低速域の間でサブバルブ14が環状対向部6cの内周面から対向し得なくなる程度に撓んでサブバルブ14は開弁する。さらに、緩衝器Dの伸長速度が低速域、または高速域にある場合には、サブバルブ14の外周部が間座17の外周を撓みの支点にして下側へと大きく撓む。反対に、緩衝器Dの収縮速度が低速域、または高速域にある場合には、サブバルブ14の外周部が間座16の外周を撓みの支点にして上側へと大きく撓む。サブバルブ14が撓んで環状対向部6cから離間して開弁する際の伸側室R1と圧側室R2の差圧、つまり、サブバルブ14の開弁圧は、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7の開弁圧より低く、伸縮速度が低速域にある場合、サブバルブ14は前述の通り開弁するが、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は開弁せず、液体は切欠オリフィス4aを介して伸側室R1と圧側室R2とを行き来する。
【0054】
なお、リーフバルブ14bが環状対向部6cの内周面に正対した状態で環状隙間Pが略0になるようにすれば、緩衝器Dの動き出して直ぐに伸側室R1と圧側室R2とに差圧が生じるため、緩衝器Dの伸縮の切り換わりにおいて緩衝器Dが速やかに減衰力を発生できる。
【0055】
このように、サブバルブ14は、緩衝器Dの伸長作動時では伸側室R1の圧力を受けて図2中下方へ撓み、緩衝器Dの収縮作動時では圧側室R2の圧力を受けて図2中上方へ撓む。なお、サブバルブ14の作動の説明において、サブバルブ14の正面を高圧が作用する面とし、サブバルブ14の背面を低圧が作用する面として説明することとする。したがって、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸長作動時においてサブバルブ14の正面とは高圧となる伸側室側を向く面となり背面とは低圧となる圧側室側を向く面となり、収縮作動時においてサブバルブ14の正面とは高圧となる圧側室側を向く面となり背面とは低圧となる伸側室側を向く面となる。
【0056】
なお、サブバルブ14の外周部が上下に撓む低速域、及び高速域では、上下にずれたサブバルブ14のリーフバルブ14bと環状対向部6cとの間にできる環状隙間の開口面積が、切欠オリフィス4aの開口面積よりも大きくなる。
【0057】
また、サブバルブ14の上側に位置するバルブストッパ13は、減衰通路DPを流れる液体の流量が多くなってサブバルブ14が大きく撓むとリーフバルブ14bの図3中上端面に当接して、サブバルブ14の図3中上面に当接してこれを支えて、サブバルブ14の図3中上方側への撓みを抑制してサブバルブ14を保護する。なお、バルブストッパ13がサブバルブ14に当接した状態におけるバルブストッパ13とサブバルブ14の全体の撓み剛性は、伸側リーフバルブ4の撓み剛性よりも小さくなっている。また、バルブストッパ13は、サブバルブ14に対向する環状板13aの外周から内周側へ向けて形成される切欠13a1を備えている。切欠13a1は、バルブストッパ13にリーフバルブ14bが当接してもサブバルブ14とバルブストッパ13とで区画される空隙を外方へ連通させて当該空隙が閉鎖空間となるのを防止している。この切欠13a1の設置により、バルブストッパ13にリーフバルブ14bが当接してもリーフバルブ14bがバルブストッパ13に吸着するのが防止される。よって、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接してから閉弁側へ動作した際においてサブバルブ14の閉じ遅れが阻止される。
【0058】
さらに、サブバルブ14の下側に位置するピストンナット15は、減衰通路DPを流れる液体の流量が多くなってサブバルブ14が大きく撓むとリーフバルブ14cの図3中下端面に当接して、サブバルブ14のそれ以上の図3中下方への撓みを規制して、サブバルブ14を保護する。よって、ピストンナット15は、ロッド2の外周にサブバルブケース6、サブバルブ14、バルブストッパ13、間座16,17を固定する役割を果たすとともにサブバルブ14の図3中下方側の撓みを規制するバルブストッパとしても機能している。
【0059】
また、ピストンナット15は、サブバルブ14に対向する図3中上面の外周から内周側へ向けて形成される切欠15aを備えている。切欠15aは、ピストンナット15にリーフバルブ14bが当接してもサブバルブ14とピストンナット15とで区画される空隙を外方へ連通させて当該空隙が閉鎖空間となるのを防止している。この切欠15aの設置により、ピストンナット15にリーフバルブ14bが当接した際にリーフバルブ14bがピストンナット15に吸着するのが防止される。よって、サブバルブ14が最大限に開弁してから閉弁側へ動作した際に、サブバルブ14のサブポート6dの閉じ遅れが阻止される。
【0060】
そして、前述したように、液体が、減衰通路DPを伸側室R1から圧側室R2へ向かう際には、伸側リーフバルブ4とサブ減衰力発生要素SDにおけるサブバルブ14を通過し、減衰通路DPを圧側室R2から伸側室R1へ向かう際には、メイン減衰力発生要素MDにおけるメインバルブとしての圧側リーフバルブ7とサブ減衰力発生要素SDにおけるサブバルブ14を通過する。このように、メイン減衰力発生要素MDとサブ減衰力発生要素SDは、減衰通路DPに直列に設けられている。
【0061】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。緩衝器Dの伸長時には、ピストン3がシリンダ1内を上方へ移動して伸側室R1を圧縮する。緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側リーフバルブ4は開弁せず伸側ポート3cを閉塞したまま維持する。圧側リーフバルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長速度が0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧に達しないため、サブバルブ14は撓んでも外周面を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となってサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。さらに、緩衝器Dの伸長速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えるので、サブバルブ14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁し、サブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。
【0062】
そして、液体は、切欠オリフィス4a、伸側ポート3c、空間C、サブポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。液体は、このように減衰通路DPを通過する際に、切欠オリフィス4aおよび環状隙間Pを通過するが微低速域における開弁状態のサブバルブ14における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さい。そのため、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主としてサブバルブ14が液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性(緩衝器Dの伸長速度に対する減衰力の特性)は、図4に示したように、伸長速度が0近傍では減衰係数が非常に大きく立ち上がった後、サブバルブ14の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。
【0063】
緩衝器Dの伸長速度が微低速域を超えて低速域にある場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側リーフバルブ4は未だ開弁せず伸側ポート3cを閉塞したまま維持する。圧側リーフバルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長速度が低速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えるので、サブバルブ14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁し、サブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。よって、この場合も液体は、切欠オリフィス4a、伸側ポート3c、空間C、サブポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動するが、環状隙間Pの流路面積が切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器Dの伸長速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの伸長速度の2乗に比例する特性となるが、前記伸長速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0064】
さらに、緩衝器Dの伸長速度が低速域を超えて高速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧に達して、伸側リーフバルブ4が撓んで開弁して伸側ポート3cを開放する。圧側リーフバルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えているのでサブバルブ14が開弁してサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積が大きくなる。液体は、伸側リーフバルブ4と伸側弁座3eとの間、伸側ポート3c、空間C、サブポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合、伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流量が多くなるので、サブバルブ14が大きく撓んで環状隙間Pにおける流路面積よりも伸側リーフバルブ4と伸側弁座3eとの間の隙間における流路面積の方が小さくなる。よって、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合、緩衝器Dは、主として伸側リーフバルブ4が液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、図4に示したように、伸側リーフバルブ4の特有の緩衝器Dの伸長速度に比例するような特性となるが、前記伸長速度が低速域にある場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0065】
つづいて、緩衝器Dの収縮時には、ピストン3がシリンダ1内を下方へ移動して圧側室R2を圧縮する。緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側リーフバルブ7の開弁圧に達しないため、圧側リーフバルブ7は開弁せず圧側ポート3dを閉塞したまま維持する。伸側リーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮速度が0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧に達しないため、サブバルブ14は撓んでも外周面を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となってサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。さらに、緩衝器Dの収縮速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えるので、サブバルブ14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁し、サブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。
【0066】
そして、液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C、伸側ポート3cおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。液体は、このように減衰通路DPを通過する際に、切欠オリフィス4aおよび環状隙間Pを通過するが微低速域における開弁状態のサブバルブ14における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さい。そのため、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主としてサブバルブ14が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、図4に示したように、伸長速度が0近傍では減衰係数が非常に大きく立ち上がった後、サブバルブ14の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。
【0067】
緩衝器Dの収縮速度が微低速域を超えて低速域にある場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側リーフバルブ7の開弁圧である第1差圧に達しないため、圧側リーフバルブ7は未だ開弁せず圧側ポート3dを閉塞したまま維持する。伸側リーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮速度が低速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えるので、サブバルブ14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁し、サブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。よって、この場合も液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C、伸側ポート3cおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動するが、環状隙間Pの流路面積が切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器Dの収縮速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの収縮速度の2乗に比例する特性となるが、前記収縮速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0068】
さらに、緩衝器Dの収縮速度が低速域を超えて高速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が圧側リーフバルブ7の開弁圧である第1差圧に達して、圧側リーフバルブ7が撓んで開弁して圧側ポート3dを開放する。伸側リーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮速度が中高速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えているのでサブバルブ14が開弁してサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積が大きくなる。液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C、圧側ポート3dおよび圧側リーフバルブ7と圧側弁座3fとの間を通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合、圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流量が多くなるので、サブバルブ14が大きく撓んで環状隙間Pにおける流路面積よりも圧側リーフバルブ7と圧側弁座3fとの間の隙間における流路面積の方が小さくなる。よって、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合、緩衝器Dは、主として圧側リーフバルブ7が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、図4に示したように、圧側リーフバルブ7の特有の緩衝器Dの収縮速度に比例するような特性となるが、前記収縮速度が低速域にある場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0069】
またさらに、緩衝器Dの収縮速度が高速域を超えて高々速域になると、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が第2差圧に到達してサブバルブ14は、大きく撓んでバルブストッパ13に当接して、バルブストッパ13に背面側から支持されて撓みが抑制される。第2差圧は、第1差圧よりも大きく、圧側リーフバルブ7は開弁状態となっている。そして、緩衝器Dの収縮速度が高速域に到達してさらに高くなると、図5に示すように、バルブストッパ13は、弾性を備えているためにサブバルブ14とともに自由端である外周側を撓ませて、サブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pにおける流路面積を増大させる。このように、圧側室R2の圧力と伸側室R1との差圧が第2差圧以上になると、サブバルブ14は、バルブストッパ13に背面側から支持されつつ、緩衝器Dの収縮速度の増加に応じてバルブストッパ13とともに撓み量を大きくして環状隙間Pにおける流路面積を大きくする。また、バルブストッパ13の撓み剛性は、サブバルブ14の撓み剛性よりも大きいので、バルブストッパ13は、サブバルブ14を支持して撓みを抑制できる。さらに、バルブストッパ13がサブバルブ14に当接した状態におけるバルブストッパ13とサブバルブ14の全体の撓み剛性は、圧側リーフバルブ7の撓み剛性よりも小さくなっている。よって、圧側リーフバルブ7が開弁して圧側弁座3fから離座して圧側ポート3dを開放した状態では、圧側リーフバルブ7と圧側弁座3fとの間に形成される隙間における流路面積は、常に、サブバルブ14と環状対向部6cとの間に環状隙間Pにおける流路面積よりも大きくなるように設定されている。
【0070】
したがって、緩衝器Dの収縮速度が高々速域に達しても、サブバルブ14はバルブストッパ13に支持されつつも撓み量を増大でき、減衰通路DPにおいてサブ減衰力発生要素SDにおける流路面積が開弁した状態における圧側リーフバルブ7の流路面積以下に制限しない。よって、サブ減衰力発生要素SDにおけるサブバルブ14がバルブストッパ13によって支持されて撓みが抑制されても、緩衝器Dの減衰力特性に影響せず、緩衝器Dの収縮速度が高速域以上の場合にはメイン減衰力発生要素MDのみによって減衰力を発揮できる。なお、図4に示したように、緩衝器Dの収縮速度が高々速域に達しさらに増加すると、圧側ポート3dの特性が現れて減衰係数が上昇するが、バルブストッパが撓まずにサブバルブ14の撓みを規制する従来の緩衝器では図4中の一点鎖線で示すように高々速域の減衰力が高くなるが、バルブストッパ13がサブバルブ14とともに撓むので本実施の形態の緩衝器Dの減衰力は高々速域において実線で示すように低減される。
【0071】
なおリーフバルブ14bが環状対向部6cの内周面に正対した状態で環状隙間Pが略0になるように設定する場合には、緩衝器Dの動き出して直ぐに伸側室R1と圧側室R2とに差圧が生じるため、緩衝器Dは、伸縮の切り換わりにおいて速やかに減衰力を発生できる。
【0072】
本実施の形態の緩衝器Dは、以上の通り作動する。そして、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターチューブ)1と、シリンダ(アウターチューブ)1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられた伸側室R1と圧側室R2(二つの作動室)を連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに直列に設けられたメイン減衰力発生要素MDおよびサブ減衰力発生要素SDとを備え、サブ減衰力発生要素SDは、内周が固定されて固定端とされ外周を自由端として撓みが許容されるとともに減衰通路DPに設けられる環状のサブバルブ14と、サブバルブ14の自由端との間に環状隙間Pを開けて対向する環状対向部6cと、弾性を備えて環状であってサブバルブ14に対して軸方向に隙間を介して対向するとともにサブバルブ14が撓んで当接するとサブバルブ14の撓みを規制するバルブストッパ13とを有し、バルブストッパ13は、内周が固定端とされ、反対側の外周を自由端として自由端の撓みが許容されるように構成されている。
【0073】
このように構成された緩衝器Dでは、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接すると、正面側から受ける圧力によって撓もうとするサブバルブ14が背面側の弾性を備えたバルブストッパ13に支持されるとともに、収縮速度の増加に応じてバルブストッパ13もサブバルブ14とともに撓む。よって、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7が開弁する状況において、バルブストッパ13による支持を受けてサブバルブ14の応力を軽減しつつも、緩衝器Dの収縮速度に応じてサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pを大きくすることができ、緩衝器Dの発生減衰力が過剰となるのを防止できる。
【0074】
以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、発生する減衰力が過剰となるのを防止できるので、車両における乗心地を向上できる。また、バルブストッパ13が弾性を備えてサブバルブ14が撓んで当接すると、サブバルブ14とともに撓んで環状隙間Pを緩衝器Dの収縮速度に応じて大きくでき、流路面積を小さく制限しないので、緩衝器Dが単筒型緩衝器とされても、圧側の減衰力がすぐに上限に達して伸側室R1が負圧となることがなく、緩衝器Dの伸縮方向が伸長に切り換わる際に速やかに減衰力を発揮でき、異音の発生を防止できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、車両における乗心地を向上できるとともに異音の発生を抑制できる。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7が開弁した状態において、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7と圧側弁座3fとの間に形成される隙間における流路面積よりも常にサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積が大きくなるように設定されているが、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接するとサブバルブ14とともにバルブストッパ13が撓む構成を備えていれば、緩衝器Dの収縮速度が高々速域を超える速度となった場合に、環状隙間Pの流路面積が圧側リーフバルブ(メインバルブ)7と圧側弁座3fとの間に形成される隙間における流路面積よりも小さくなる場合であっても、従来の緩衝器と比較すれば、緩衝器Dの減衰力が過剰となるのを抑制でき、異音の発生を抑制できることは当然である。
【0075】
なお、軸方向から見たサブバルブ14および環状対向部6cの形状は、サブバルブ14と環状対向部6cとの間を通過する液体の流れに抵抗を与えることができれば、ともに円環以外にも楕円形状、D形状、十字状、円環の一部または複数個所を切り欠いた形状、四角形状等、任意に設計変更できる。
【0076】
また、軸方向から見たバルブストッパ13の形状は、サブバルブ14に当接するとサブバルブ14の撓みを規制しつつも自身も撓むことができる限りにおいて、円環形状に限定されず、円環以外にも楕円形状、C形状、D形状、十字状、円環の一部または複数個所を切り欠いた形状、四角形状等、任意に設計変更できる。
【0077】
また、このように本実施の形態の緩衝器Dでは、主としてサブバルブ14で減衰力を発生する速度域を微低速域とし、主として切欠オリフィス4aで減衰力を発生する速度域を低速域とし、主として伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7で減衰力を発生する速度域を高速域としている。なお、微低速、低速および中高速の区分する速度については設計者が任意に設定できる。
【0078】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるバルブストッパ13の撓み剛性は、サブバルブ14の撓み剛性よりも高いので、サブバルブ14の過剰な撓みを抑制できサブバルブ14の応力を効果的に軽減できる。なお、バルブストッパ13とサブバルブ14とが当接してともに撓む構造は、ばねを並列配置した構造と等価である。そのため、バルブストッパ13の撓み剛性がサブバルブ14の撓み剛性より低くても、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接した状態の全体の撓み剛性は高くなり、バルブストッパ13でサブバルブ14を支持してサブバルブ14の撓み量を少なくできる。よって、バルブストッパ13の撓み剛性がサブバルブ14の撓み剛性より低くても本願発明の効果は失われない。
【0079】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、メイン減衰力発生要素MDが減衰通路DPを開閉する圧側リーフバルブ(メインバルブ)7を有し、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接した状態において、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7の開弁時の流路面積は、サブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pにおける流路面積よりも常に広くなるように設定されている。このように構成された緩衝器Dでは、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7が開弁した状態では、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7以上にサブバルブ14と環状対向部6cとで減衰通路DPの流路面積を制限することがないので、緩衝器Dの収縮速度が高速域以上の場合にメイン減衰力発生要素MDのみによって減衰力を発揮できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、収縮速度が高々速域に達しても減衰力が過剰となることがなく車両における乗心地を効果的に向上できるとともに、高速域以上の速度域における減衰力特性の設定が非常に簡単となる。
【0080】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、メイン減衰力発生要素MDが伸側室R1と圧側室R2との間の差圧が第1差圧になると開弁する圧側リーフバルブ(メインバルブ)7を有し、サブバルブ14が、伸側室R1と圧側室R2との間の差圧が第1差圧以上の第2差圧になるとバルブストッパ13に当接するように構成されている。このように構成された緩衝器Dでは、緩衝器Dの収縮速度が高速となって圧側リーフバルブ(メインバルブ)7が開弁し、さらに、収縮速度が高くなるとサブバルブ14がバルブストッパ13に当接する。つまり、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接するタイミングは、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7の開弁後になる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7が開弁する状況において、圧側リーフバルブ(メインバルブ)7以上にサブバルブ14と環状対向部6cとで減衰通路DPの流路面積を制限することが防止され、緩衝器Dの収縮速度が高速域以上の場合にメイン減衰力発生要素MDのみによって減衰力を発揮できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、収縮速度が高々速域に達しても減衰力が過剰となることがなく車両における乗心地を効果的に向上できるとともに、高速域以上の速度域における減衰力特性の設定が非常に簡単となる。なお、圧側リーフバルブ7が開弁する第1差圧およびサブバルブ14がバルブストッパ13に当接する第2差圧についても第2差圧が第1差圧以上であるという条件を満たす限りにおいて適宜設計者が任意に設定できる。
【0081】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるバルブストッパ13は、複数枚の環状板13a,13b,13c,13d,13eを積層して形成されている。このように構成された緩衝器Dでは、環状板の積層枚数でバルブストッパ13の撓み剛性を容易に調整できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接してからの撓み量を簡単にチューニングでき、サブバルブ14の応力を効果的に軽減しつつも減衰力が過剰となるのを防止できる。ただし、バルブストッパ13は、弾性を備えていて、サブバルブ14よりも撓み剛性が高く、サブバルブ14が当接するとサブバルブ14の背面を支えつつサブバルブ14とともに撓むことができれば、1枚の環状板で形成されていてもよいし、また、軸方向から見た形状も円環形状以外の形状とされてもよい。
【0082】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dにおけるバルブストッパ13は、複数枚の環状板13a,13b,13c,13d,13eを積層して形成されていて、サブバルブ14側の2枚の環状板13a,13bの外径がサブバルブ14における最大の外径を持つリーフバルブ14bの外径に等しく、環状板13a,13bの反サブバルブ側に積層される2枚の環状板13c,13dの外径が環状板13a,13bの外径より小さく、さらに、環状板13dの反サブバルブ側に積層される環状板13eの外径がさらに環状板13dの外径よりも小さくなっている。このように、バルブストッパ13の自由端側の径は、サブバルブ側から反サブバルブ側へ向けて段階的に固定端側の径に近づくように変化する。つまり、バルブストッパ13の外径が反サブバルブ側へ向かうと段階的に漸減されている。このように構成された緩衝器Dによれば、バルブストッパ13の反サブバルブ側の外径がサブバルブ14から遠ざかるにつれ段階的に漸減しているため、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接してバルブストッパ13とともに図5に示すように上方側へ撓んでも、サブバルブケース6の嵌合部6aのサブポート6dの開口における流路面積を無用に減じてしまうことがない。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、バルブストッパ13の撓みが進行してバルブストッパ13自体で減衰通路DPの流路面積を制限することがないので、バルブストッパ13によって収縮速度が高速域にある際の減衰力が過剰となる問題もない。
【0083】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるバルブストッパ13は、径の異なる環状板を積層することで、外径が反サブバルブ側へ向けて段階的に漸減する形状となっているが、図6に示したように、外径が反サブバルブ側へ向けて段階的に漸減する形状の1枚の環状板で形成されてもよい。また、バルブストッパ13が1枚の環状板で形成される場合、外径が反サブバルブ側へ向けて無段階に漸減する形状となっていてもよく、この場合も、サブバルブケース6の嵌合部6aのサブポート6dの開口における流路面積を無用に減じてしまうことがない。よって、このように構成された緩衝器Dによっても、バルブストッパ13の撓みが進行してバルブストッパ13自体で減衰通路DPの流路面積を制限することがないので、バルブストッパ13によって収縮速度が高速域にある際の減衰力が過剰となる問題もない。
【0084】
なお、本実施の形態では、サブバルブ14は、内周固定で外周側の撓みが許容されており、外周の環状対向部6cに対向しており、バルブストッパ13もまた内周を固定端とし外周側を自由端として外周側の撓みが許容される構造となっているが、サブバルブとバルブストッパの外周を固定端として固定し、内周側を自由端として当該内周の撓みを可能として、このサブバルブの内周に環状対向部を対向させる構造を備えていてもよい。
【0085】
また、緩衝器Dが高々速域で伸長作動する場合にも、サブバルブ14の撓みを抑制しつつサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくしたい場合、ピストンナット15をサブバルブ14のバルブストッパとして用いるのではなく、図7に示すように、サブバルブ14の下方にも図2に示した構造のバルブストッパ13を天地逆向きにしてナットとサブバルブ14との間に介装すればよい。この場合には、緩衝器Dの伸長速度が高速域に達して伸側リーフバルブ4が開弁した後で伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力の差圧が第2差圧以上になるとサブバルブ14がバルブストッパ13に当接してサブバルブ14を支持しつつ伸長速度の増加に応じて環状隙間Pの流路面積を増大させ得る。よって、この図7に示した緩衝器では、伸側ポート3cは圧側ポート3dとともに減衰通路DPの一部をなし、伸側リーフバルブ4も圧側リーフバルブ7とともにメイン減衰力発生要素MDにおけるメインバルブをなしている。このように構成された緩衝器Dでは、収縮作動時だけでなく伸長作動時においても、伸側リーフバルブ4或いは圧側リーフバルブ7の開弁状態において、伸縮速度が高々速域以上となった際に減衰力が過剰となるのを防止できる。
【0086】
そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブ減衰力発生要素SDは、内周あるいは外周の一方が固定されて固定端とされ内周あるいは外周の他方を自由端として撓みが許容されるとともに減衰通路DPに設けられるサブバルブ14と、サブバルブ14の自由端との間に環状隙間Pを開けて対向する環状対向部6cとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、サブバルブ14が撓まない状態において環状隙間Pで減衰通路DPを絞って減衰力を発揮でき、伸縮速度が極低速域における減衰力を発生できるとともに、サブバルブ14の外径の大きさで環状隙間Pの開口面積の調整できるから、外径の異なるサブバルブ14の付け替えによって減衰力特性を容易に調整できる。
【0087】
また、図1に示したところでは、二つの作動室を伸側室R1と圧側室R2としているが、複筒型とされる図8に示した第2の実施の形態の緩衝器D1のように、圧側室R4とリザーバRとを仕切るとともに圧側室R4とリザーバRとを連通する排出ポート30cを備えたバルブケース30と、排出ポート30cを開閉するメインバルブ31とを備えたメイン減衰力発生要素MDと、排出ポート30cとともに減衰通路DPを形成するサブバルブケース6と、サブバルブ14と、バルブストッパ13とで構成されるサブ減衰力発生要素SDを備える場合、二つの作動室を圧側室R4とリザーバRとしてもよい。
【0088】
緩衝器D1は、シリンダ34と、シリンダ34の外周を覆うとともにシリンダ34との間にリザーバRを形成する有底筒状のアウターチューブ35と、シリンダ34内に移動可能に挿入されるロッド36とを備えた緩衝器本体A1と、ロッド36に連結されてシリンダ34内に移動可能に挿入されてシリンダ34内を伸側室R3と圧側室R4とに区画するピストン37と、緩衝器本体A1内に設けられた二つの作動室としての圧側室R4とリザーバRとを連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに直列に設けられたメイン減衰力発生要素MDおよびサブ減衰力発生要素SDとを備えている。
【0089】
シリンダ34とアウターチューブ35の上端は、図示しない環状であって内周にロッド36が挿通されるロッドガイドによって閉塞されており、シリンダ34およびアウターチューブ35内は、密閉空間とされている。
【0090】
ピストン37は、シリンダ34内を液体が充填される伸側室R3と圧側室R4とに区画するとともに、伸側室R3と圧側室R4とを連通する通路37a,37bと、通路37aの途中に設けられて伸側室R3から圧側室R4へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える減衰バルブ37cと、通路37bの途中に設けられて圧側室R4から伸側室R3へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える減衰バルブ37dとを備えている。
【0091】
メイン減衰力発生要素MDは、シリンダ34の図8中下端に嵌合するとともにアウターチューブ35の底部との間で挟持されるとともにアウターチューブ35内にリザーバRと圧側室R4とを区画するバルブケース30と、バルブケース30に設けられた排出ポート30cを開閉するメインバルブ31とを備えて構成されている。なお、バルブケース30とメインバルブ31とは、ともに環状であって、内周側にガイドロッド32が挿入されている。そして、メインバルブ31は、ガイドロッド32の外周に装着されることで内周側が固定端とされて自由端となる外周側の撓みが許容されている。
【0092】
バルブケース30は、シリンダ34の下端に嵌合されて、圧側室R4とシリンダ34とアウターチューブ35との間に形成されるリザーバRとを区画している。このように本実施の形態の緩衝器D1では、アウターチューブ35内の圧側室R4とリザーバRとを作動室としている。
【0093】
詳細には、バルブケース30は、環状であって、シリンダ34の図8中下端に嵌合される本体部30aと、本体部30aの下端外周から下方へ向けて延びる環状の脚部30bと、本体部30aの同一円周上に設けられて本体部30aを軸方向に貫く排出ポート30cと、本体部30aの排出ポート30cよりも外周側の同一円周上に設けられて本体部30aを軸方向に貫く吸込ポート30dと、本体部30aの図8中下端の排出ポート30cとを備えて構成されている。そして、本実施の形態では、バルブケース30に設けられた排出ポート30cによって、作動室としての圧側室R4と作動室としてのリザーバRとを連通している。また、バルブケース30は、脚部30bにシリンダ34とアウターチューブ35との間の環状隙間と脚部30b内とを連通する切欠30eが設けられており、減衰通路DPによる圧側室R4とリザーバRとの連通を妨げないようになっている。
【0094】
また、バルブケース30の内周には、ガイドロッド32が挿通されている。ガイドロッド32は、バルブケース30内に挿入される筒状の軸部32aと、軸部32aの先端外周に設けられた螺子部32bと、軸部32aの基端外周に設けられたフランジ部32cとを備えている。
【0095】
バルブケース30の図8中下端には、排出ポート30cを開閉する環状の積層リーフバルブでなるメインバルブ31が重ねられており、バルブケース30の図8中上端には、吸込ポート30dを開閉する環状のチェックバルブ33が重ねられている。これらのメインバルブ31、バルブケース30およびチェックバルブ33は、サブ減衰力発生要素SDを構成するサブバルブケース6、バルブストッパ13およびサブバルブ14、さらには、サブバルブ14の上下に配置される間座16,17とともにガイドロッド32の軸部32aの外周に順番に組み付けられるとともに、螺子部32bに螺着されるナット41とフランジ部32cとで挟持されてガイドロッド32に固定されている。
【0096】
メインバルブ31は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りガイドロッド32に固定されてバルブケース30の図8中下端に積層されてバルブケース30の図8中下端に設けられて排出ポート30cを取り囲む弁座30fに着座している。なお、弁座30fには、打刻または切り欠くことによって形成されるオリフィス30iが設けられている。メインバルブ31は、弁座30fに着座した状態では弁座30fに設けられたオリフィス30iのみによって排出ポート30cをリザーバRに連通する。なお、メインバルブ31は、弁座30fに着座しても吸込ポート30dの入口については閉塞しない。そして、メインバルブ31は、排出ポート30cを介して正面側に作用する圧側室R4の圧力と背面側に作用するリザーバRとの差圧が開弁圧となる第1差圧に達すると外周を撓ませて弁座30fから離間して排出ポート30cを開放し、弁座30fとの間に隙間を形成して排出ポート30cを当該隙間を介してリザーバRに連通させるとともに通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器D1では、メインバルブ31は、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合に開いて、排出ポート30cを圧側室R4からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、メインバルブ31は、排出ポート30cを圧側室R4からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。このように本実施の形態の緩衝器D1におけるメイン減衰力発生要素MDは、バルブケース30と、バルブケース30に設けられた排出ポート30cを開閉するメインバルブ31とで構成されている。
【0097】
なお、メインバルブ31の開弁圧となる第1差圧の設定は、緩衝器Dと同様にメインバルブ31の撓み剛性と初期撓み量によって調整でき、撓みの支点の位置の調整についてはメインバルブ31の背面側に積層される間座40の外径の変更で行うことができる。また、メインバルブ31の最大撓み量の規制のためのバルブストッパを設けてもよいし、ガイドロッド32のフランジ部32cをメインバルブ31の撓みを規制するストッパとして用いてもよい。
【0098】
また、チェックバルブ33は、環状板で構成されており、内周が前述の通りガイドロッド32に固定されてバルブケース30の図8中上面に積層されてバルブケース30の図8中上端に設けられて吸込ポート30dを取り囲む弁座30gに着座している。チェックバルブ33は、弁座30gに着座した状態では弁座30gにより取り囲まれている吸込ポート30dのみを閉塞する。なお、チェックバルブ33は、排出ポート30cに対向する位置に透孔33aを備えており、バルブケース30の図8中上面に当接した状態でも排出ポート30cを閉塞することはない。そして、チェックバルブ33は、リザーバRの圧力よりも圧側室R4の圧力が低下すると撓んで吸込ポート30dを開放し、排出ポート30cを介してリザーバRから圧側室R4へ移動する液体の流れを許容する。このように、チェックバルブ33は、吸込ポート30dをリザーバRから圧側室R4へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0099】
サブ減衰力発生要素SDにおけるサブバルブケース6は、図8中でチェックバルブ33の上方に積層されてガイドロッド32の外周に装着される。サブバルブケース6は、前述した第1の実施の形態の緩衝器Dでは嵌合部6aをピストン3の筒部3bの内周に嵌合させていたが、第2の実施の形態の緩衝器D1では、嵌合部6aの外径を大きくして嵌合部6aの外周をシリンダ34の内周に嵌合させており、嵌合部6aの外周にシリンダ34との間をシールするシールリング6eを備えている。また、第2の実施の形態の緩衝器D1におけるサブバルブケース6は、嵌合部6aの下端とチェックバルブ33との間に、チェックバルブ33の撓みを許容するための隙間を形成するため、嵌合部6aの内周からチェックバルブ側へ向けて突出する筒状のボス部6fを備えている。なお、第2の実施の形態の緩衝器D1におけるサブバルブケース6のその他の構造は、第1の実施の形態の緩衝器Dにおけるサブバルブケース6と同様である。
【0100】
よって、サブバルブケース6がバルブケース30とともにガイドロッド32に固定されると、サブバルブケース6のサブポート6dと、バルブケース30の排出ポート30cとが、サブバルブケース6とバルブケース30との間の空間C1を介して連通される。このように、本実施の形態の緩衝器D1では、減衰通路DPは、サブポート6d、前記空間C1および排出ポート30cによって形成されており、圧側室R4とリザーバRとを連通する通路をなしている。
【0101】
サブバルブ14およびバルブストッパ13は、第1の実施の形態の緩衝器Dと同様の構成とされている。よって、サブ減衰力発生要素SDをガイドロッド32の外周に組み付けると、サブバルブ14とサブバルブケース6に設けた環状対向部6cとが両者間に環状隙間Pを介して対向する。サブバルブ14およびバルブストッパ13は、ともに内周がガイドロッド32の外周に装着され、内周側を固定端として自由端となる外周側の撓みが許容されている。よって、緩衝器D1にあっても、二つの作動室である圧側室R4とリザーバRとが減衰通路DPによって連通されており、減衰通路DPにメイン減衰力発生要素MDとサブ減衰力発生要素SDとが直列に設けられている。そして、メインバルブ31の開弁圧である第1差圧は、サブバルブ14の開弁圧よりも大きくなるように設定される。
【0102】
そして、サブバルブ14が撓んでいない状態における環状隙間Pの開口面積は、前述のオリフィス30iの開口面積よりも小さい。緩衝器D1の収縮速度が低速域、または高速域にある場合には、サブバルブ14が撓んで環状隙間Pの開口面積がオリフィス30iよりも大きくなる。サブバルブ14の開弁圧は、メインバルブ31の開弁圧である第1差圧より低く、緩衝器D1の収縮速度が低速域にある場合、サブバルブ14は前述の通り開弁するが、メインバルブ31は開弁せず、液体はオリフィス30iを通じて圧側室R4からリザーバRへ移動する。
【0103】
このように構成された緩衝器D1の伸長時には、ピストン37がシリンダ34内を上方へ移動して伸側室R3を圧縮する。液体は、圧縮される伸側室R3からピストン37の通路37aおよび減衰バルブ37cを通過して拡大される圧側室R4へ移動する。ロッド36のシリンダ34からの退出によって、ロッド36がシリンダ34から退出した体積分の液体がシリンダ34内で不足するが、不足分の液体は、チェックバルブ33が開弁してリザーバRから吸込ポート30dを通じて圧側室R4へ供給される。よって、緩衝器D1は、伸長時に減衰バルブ37cによって伸長を妨げる減衰力を発生する。
【0104】
これに対して、緩衝器D1の収縮時には、ピストン37がシリンダ34内を下方へ移動して圧側室R4を圧縮する。液体は、圧縮される圧側室R4からピストン37の通路37bおよび減衰バルブ37dを通過して拡大される伸側室R3へ移動する。緩衝器D1が収縮する場合、ロッド36がシリンダ34内へ侵入するため、ロッド36がシリンダ34内へ侵入した体積分の液体がシリンダ34内で過剰となり、過剰分の液体は、減衰通路DPを介してリザーバRへ移動する。緩衝器D1の収縮速度が微低速域にある場合、圧側室R4の圧力が上昇するもののリザーバRの圧力との差圧がメインバルブ31の開弁圧である第1差圧に達しないため、液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C1、排出ポート30cおよびオリフィス30iを通過して圧側室R4からリザーバRへ移動する。他方、緩衝器D1の収縮速度が微低速域にある場合、圧側室R4の圧力とリザーバRの圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧に達しない。第2の実施の形態の緩衝器D1にあっても、閉弁時のサブバルブ14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pにおける流路面積は、オリフィス30iの流路面積よりも小さくなるように設定している。そのため、緩衝器D1の収縮速度が微低速域にある場合、緩衝器D1は、主としてサブバルブ14および減衰バルブ37dが液体に与える抵抗によって減衰力を発生する。したがって、緩衝器D1の収縮速度が微低速域にある場合の緩衝器D1の圧側の減衰力特性は、減衰係数が非常に大きく収縮速度の増加に対して大きく立ち上がる特性となる。
【0105】
緩衝器D1の収縮速度が微低速域を超えて低速域にある場合、圧側室R4の圧力が上昇するもののリザーバRの圧力との差圧がメインバルブ31の開弁圧である第1差圧に達しないため、メインバルブ31は未だ開弁せず弁座30fに着座したままとなる。緩衝器D1の収縮速度が低速域にある場合、圧側室R4の圧力とリザーバRの圧力との差圧がサブバルブ14の開弁圧を超えるのでサブバルブ14は、撓んで開弁して環状隙間Pの流路面積を大きくする。開弁状態のサブバルブ14における環状隙間Pの流路面積はオリフィス30iの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器D1の収縮速度が低速域にある場合、緩衝器D1は、主としてオリフィス30iおよび減衰バルブ37dが液体に与える抵抗によって減衰力を発生する。したがって、緩衝器D1の収縮速度が低速域にある場合の緩衝器D1の圧側の減衰力特性は、オリフィス特有の緩衝器D1の収縮速度の2乗に比例する特性となるが、前記収縮速度が微低速域にある場合に比較して傾き(減衰係数)が小さくなる特性となる。
【0106】
さらに、緩衝器D1の収縮速度が低速域を超えて高速域にある場合、圧側室R4の圧力とリザーバRの圧力との差圧がメインバルブ31の開弁圧である第1差圧に達して、メインバルブ31が撓んで開弁して排出ポート30cを開放する。緩衝器D1の収縮速度が高速域にある場合、サブバルブ14も大きく撓んで開弁しており環状隙間Pの流路面積をメインバルブ31と弁座30fとの間の隙間の流路面積よりも大きくする。よって、緩衝器D1の伸長速度が高速域にある場合、緩衝器D1は、主としてメインバルブ31および減衰バルブ37dが液体に与える抵抗によって減衰力を発生する。したがって、緩衝器D1の収縮速度が中高速域にある場合の緩衝器D1の圧側の減衰力特性は、メインバルブ31の特有の緩衝器D1の収縮速度に比例するような特性となるが、前記収縮速度が低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0107】
そして、緩衝器D1の収縮速度が高速域を超えて高々速域に達すると、圧側室R4の圧力とリザーバRの圧力の差圧が第2差圧に達し、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接し、さらに、収縮速度が増加すると収縮速度に増加に応じてバルブストッパ13が正面側に圧側室R4の圧力を受けて撓むサブバルブ14の背面を支持してサブバルブ14とともに図8中下方に撓む。緩衝器D1にあっても、サブバルブ14がバルブストッパ13によって完全に撓みが規制されるのではなく、バルブストッパ13が弾性を備えてサブバルブ14を支持しつつサブバルブ14とともに撓む。緩衝器D1の収縮速度が高速域を超えて高々速域に達して、サブバルブ14がバルブストッパ13に当接しても環状隙間Pの流路面積を大きく確保できる。よって、このように構成された緩衝器D1は、サブバルブ14の応力を軽減しつつも環状隙間Pの流路面積が減衰通路DP中でボトルネックとなってしまうのを防止でき、収縮速度が高速域を超えて高々速域に達してもメイン減衰力発生要素MDにおけるメインバルブ31によって減衰力を発生させて減衰力が過剰となるのを防止できる。
【0108】
なお、減衰バルブ37dに代えて、通路37bに圧側室R4から伸側室R3へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブを設けてもよい。チェックバルブは、液体の流れに歩トンと抵抗を与えないため、緩衝器D1の減衰力に寄与しない。よって、減衰バルブ37dに代えてチェックバルブを設ける場合、緩衝器D1は、収縮速度が微低速域にある際には主としてサブバルブ14によって、収縮速度が低速域にある際には主としてオリフィス30iによって、収縮速度が高速域にある際には主としてメインバルブ31によって、それぞれ減衰力を発生する。
【0109】
このように、本実施の形態の緩衝器D1は、圧側室R4とリザーバRとを連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに直列に設けられるメイン減衰力発生要素MDとサブ減衰力発生要素SDとを備え、メイン減衰力発生要素MDがメインバルブ31を有し、サブ減衰力発生要素SDがサブバルブ14と、サブバルブ14に環状隙間Pを介して対向する環状対向部6cと、弾性を備えてサブバルブ14に当接するとサブバルブ14の撓みを抑制するバルブストッパ13とを備えている。このように構成された緩衝器D1の伸縮速度が高々速域に達しても、メイン減衰力発生要素MDにおけるメインバルブ31によって減衰力を発生させて減衰力が過剰となるのを防止できる。よって、本実施の形態の緩衝器D1によれば、車両における乗心地を向上できるとともに異音の発生を抑制できる。
【0110】
以上のように、減衰通路DPは、伸側室R1と圧側室R2とを連通してもよいし、圧側室R4とリザーバRとを連通してもよい。また、緩衝器D1のロッド36およびピストン37の代わりに、緩衝器Dのロッド2、ピストン3、伸側リーフバルブ4、圧側リーフバルブ7、サブバルブケース6およびサブバルブ14を適用して、ピストン側とバルブケース側にそれぞれ減衰通路DP、メイン減衰力発生要素MDおよびサブ減衰力発生要素SDを設ける構成も採用可能である。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1・・・シリンダ(アウターチューブ)、2,36・・・ロッド、6c・・・環状対向部、7・・・圧側リーフバルブ(メインバルブ)、13・・・バルブストッパ、13a,13b.13c.13d.13e・・・環状板、14・・・サブバルブ、31・・・メインバルブ、35・・・アウターチューブ、A,A1・・・緩衝器本体、D,D1・・・緩衝器、DP・・・減衰通路、MD・・・メイン減衰力発生要素、R1,R3・・・伸側室(作動室)、R2,R4・・・圧側室(作動室)、SD・・・サブ減衰力発生要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9