(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155728
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20221006BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20221006BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059099
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】東 英孝
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 哲郎
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC11
3D054CC34
3D054CC42
3D054CC47
3D054FF17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造が容易で、乗員を安全に保護することができるサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】縁部と異なる部位であって互いに対向する第1固定部132及び第2固定部133を有する第1パネル130と、第1パネル130とともに袋状のエアバッグ120を形成する第2パネル140と、エアバッグ120内部に設けられ、第1固定部132及び第2固定部133にそれぞれ固定された第1部位151及び第2部位152を有する規制部材150と、を備え、第1固定部132から第2固定部133までの長さL11は、第1部位151から第2部位152までの長さL12よりも長く、エアバッグ120は、メインバッグ121と、第1パネル130及び規制部材150によって形成された保護膨張部122と、を有し、膨張展開時、インフレータからのガスはメインバッグ121に導入され、第1パネル130は乗員に面し、保護膨張部122が乗員を受け止める。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを発生するインフレータと、
縁部と、前記縁部と異なる部位である第1固定部と、前記縁部と異なる部位であって前記第1固定部と対向する部位である第2固定部とを有する第1パネルと、
前記第1パネルの前記縁部に結合された縁部を有し、前記第1パネルとともに袋状のエアバッグを形成する第2パネルと、
前記エアバッグ内部に設けられ、前記第1固定部に固定された第1部位と、前記第2固定部に固定された第2部位とを有する規制部材と、
を備え、
前記第1パネルの前記第1固定部から前記第2固定部までの長さは、前記規制部材の前記第1部位から前記第2部位までの長さよりも長く、
前記エアバッグは、前記第1固定部及び前記第2固定部の間を除く前記第1パネルと、前記第2パネルと、前記規制部材とによって形成されたメインバッグと、
前記第1固定部及び前記第2固定部の間の前記第1パネルと、前記規制部材とによって形成された保護膨張部と、を有し、
エアバッグの膨張展開時において、前記インフレータからのガスは前記メインバッグに導入され、前記第1パネルは乗員に面し、前記保護膨張部が乗員を受け止めることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ装置であって、
前記メインバッグと前記保護膨張部との間には前記規制部材によってくびれが設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ装置であって、
前記第1パネルの前記第1固定部から前記第2固定部までの長さは、前記規制部材の前記第1部位から前記第2部位までの長さのπ/2よりも長いことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のエアバッグ装置であって、
前記第1パネルの前記縁部は、前記第1固定部の外方に位置する第1縁部と、前記第2固定部の外方に位置する第2縁部を有し、
前記規制部材の前記第1部位から前記第2部位までの長さは、前記第1パネルの前記第1固定部から前記第1縁部までの長さより短く、かつ、前記第1パネルの前記第2固定部から前記第2縁部までの長さよりも短いことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のエアバッグ装置であって、
前記第1パネルの前記縁部は、前記第1固定部の外方に位置する第1縁部と、前記第2固定部の外方に位置する第2縁部を有し、
前記第1パネルの前記第2固定部から前記第2縁部までの長さは、前記第1パネルの前記第1固定部から前記第1縁部までの長さよりも長いことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のエアバッグ装置であって、
前記規制部材は、エアバッグの膨張展開時、前記保護膨張部が乗員の胴体の前方部又は乗員の頭部に対応する位置に配置されるように、設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関する。より詳しくは、自動車等の車両の側面衝突時に膨張展開し、乗員を保護するエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の側面衝突時に膨張展開し、乗員を保護するエアバッグ装置として、車両の車内側の側壁(以下、単に「車両側壁」という)と座席に着座した乗員との間で膨張展開するサイドエアバッグ装置や、車両側壁の上方から下方へ膨張展開するカーテンエアバッグ装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、乗員の衝撃に弱いところを保護するために、メインチャンバの乗員側に設けた、メインチャンバよりも圧力の低いサブチャンバで胸部を拘束し、胸部の拘束力を緩和する車両用サイドエアバッグ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のサイドエアバッグ装置は、基布を弛ませる、又は、タックしながらメインチャンバに縫合することでサブチャンバを形成しているため、製造が煩雑になってしまう(
図8及び
図9参照)。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、容易な製造で、乗員を安全に保護することができるサイドエアバッグ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ガスを発生するインフレータと、縁部と、前記縁部と異なる部位である第1固定部と、前記縁部と異なる部位であって前記第1固定部と対向する部位である第2固定部とを有する第1パネルと、前記第1パネルの前記縁部に結合された縁部を有し、前記第1パネルとともに袋状のエアバッグを形成する第2パネルと、前記エアバッグ内部に設けられ、前記第1固定部に固定された第1部位と、前記第2固定部に固定された第2部位とを有する規制部材と、を備え、前記第1パネルの前記第1固定部から前記第2固定部までの長さは、前記規制部材の前記第1部位から前記第2部位までの長さよりも長く、前記エアバッグは、前記第1固定部及び前記第2固定部の間を除く前記第1パネルと、前記第2パネルと、前記規制部材とによって形成されたメインバッグと、前記第1固定部及び前記第2固定部の間の前記第1パネルと、前記規制部材とによって形成された保護膨張部と、を有し、エアバッグの膨張展開時において、前記インフレータからのガスは前記メインバッグに導入され、前記第1パネルは乗員に面し、前記保護膨張部が乗員を受け止めるエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易な製造で、乗員を安全に保護することができるサイドエアバッグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1のエアバッグ装置について、サイドエアバッグの膨張展開前の状態を示す模式図であり、(a)は側方から見た状態を示し、(b)は上方から見た状態を示す。
【
図2】実施形態1のエアバッグ装置について、サイドエアバッグの膨張展開後の状態を示す模式図であり、(a)は側方から見た状態を示し、(b)は上方から見た状態を示す。
【
図3】実施形態1のエアバッグ装置について、サイドエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、乗員側から見た状態を示す。
【
図4】実施形態1のエアバッグ装置について、サイドエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、車両外側の第2パネルを図示せずに側方から見た状態を示す。
【
図5】
図3及び
図4中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【
図6】
図3及び
図4中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【
図7】
図3及び
図4中の線分C1-C2に対応する部分を示す断面模式図であり、前方から見た状態を示す。
【
図8】実施形態1のエアバッグ装置について、第1パネル及び第2パネルを示す平面模式図である。
【
図9】実施形態1のエアバッグ装置について、第1パネルの第2固定部に第1規制部材及び第2規制部材を結合した状態を示す平面模式図である。
【
図10】実施形態1のエアバッグ装置について、第1パネルの第1固定部に第1規制部材及び第2規制部材を結合した状態を示す平面模式図である。
【
図11】実施形態1のエアバッグ装置について、第1パネルに第2パネルを結合した状態を示す平面模式図である。
【
図12】実施形態1のエアバッグ装置について、膨張前のサイドエアバッグを展開した状態を乗員とともに示す模式図であり、側方から見た状態を示す。
【
図13】実施形態1の変形例1のエアバッグ装置について、保護膨張部が設けられた部分のサイドエアバッグの膨張展開後の状態を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【
図14】実施形態1の変形例2のエアバッグ装置について、保護膨張部が設けられた部分のサイドエアバッグの膨張展開後の状態を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【
図15】実施形態2のエアバッグ装置について、カーテンエアバッグの膨張展開前の状態を示す模式図であり、車両側壁を車内側から正面視した図である。
【
図16】実施形態2のエアバッグ装置について、カーテンエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、乗員側から見た状態を示す。
【
図17】
図16中の線分D1-D2に対応する部分を示す断面模式図であり、前方から見た状態を示す。
【
図18】実施形態2の変形例1のエアバッグ装置について、カーテンエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、乗員側から見た状態を示す。
【
図19】
図18中の線分E1-E2に対応する部分を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら、実施形態1のエアバッグ装置について説明する。本明細書中の方向に関する記載は、特に断りのない限り、車両を基準としたものであり、例えば、「前方」は車両前方向を示し、「後方」は車両後方向を示し、「上方」は車両上方向を示し、「下方」は車両下方向を示し、「側方」は車両幅方向における外側方向を示す。また、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印OUTは車両幅方向における外側方向を示す。なお、車両用座席の内部に配置される部材は、車両用座席を透視した状態で図示されている。
【0011】
図1は、実施形態1のエアバッグ装置について、サイドエアバッグの膨張展開前の状態を示す模式図であり、(a)は側方から見た状態を示し、(b)は上方から見た状態を示す。
【0012】
図1(a)、(b)に示すように、エアバッグ装置100は、サイドエアバッグ装置であり、車両用座席30のシートバック(背もたれ部)31の側部(車両側壁50側の側部)に取り付けられている。
【0013】
車両用座席30としては、例えば、車両の運転席、助手席等が想定される。
【0014】
本実施形態では、国際統一側面衝突ダミー(World-SID:World Side Impact Dummy)40が車両用座席30に着座している。国際統一側面衝突ダミー40の着座姿勢は、現在、日本及び欧州で採用されている側面衝突試験法(ECE R95)、又は、米国で採用されている側面衝突試験法(FMVSS214)で定められたものである。エアバッグの膨張展開時の位置及び大きさは、
図1(a)に示すような国際統一側面衝突ダミー40の頭部41、胸部42、上腕部43、肩部44、腹部45、背部46、及び、腰部47の位置に応じて設定される。以下では、国際統一側面衝突ダミー40を「乗員40」と称する。
【0015】
車両側壁50としては、車両用座席30に着座した乗員40の側方に位置する車体部分であれば特に限定されず、サイドドア、ピラー、サイドウインドウ等を総称している。
【0016】
図1(a)に示すように、エアバッグ装置100は、膨張展開可能に折り畳まれた袋状のサイドエアバッグ120と、サイドエアバッグ120の内部に配置されるインフレータ110と、を有している。
【0017】
サイドエアバッグ120は、袋状体であり、膨張展開前において、シートバック31の側部に位置するサイドフレーム33の側部に折り畳まれた状態で固定され、クッションパッド34とともにシートバック31の表皮32に覆われて収納されている。
【0018】
インフレータ110は、シリンダー状(円柱状)のガス発生装置であり、シートバック31の延在方向(高さ方向)に沿って配置されている。インフレータ110の上方部分及び下方部分からは一対のボルト111が突出しており、その一対のボルト111は、サイドエアバッグ120を貫通している。インフレータ110は、このような一対のボルト111によって、シートバック31のサイドフレーム33に取り付けられている。
【0019】
インフレータ110は、車両の緊急時(例えば、車両の側面衝突時)に作動する。具体的には、まず、車両に搭載された衝突検知センサが車両の側面衝突を検知すると、衝突検知センサから送られた信号をECU(Electronic Control Unit)が演算し、衝突のレベルが判定される。そして、判定された衝突のレベルがサイドエアバッグ120を膨張させる場合に該当すると、インフレータ110が着火され、燃焼による化学反応でガスが発生する。その結果、インフレータ110から発生したガスは、サイドエアバッグ120の内部に導入されることになる。
【0020】
インフレータ110の種類としては、特に限定されず、例えば、ガス発生剤を燃焼させて発生するガスを利用するパイロ式インフレータ、圧縮ガスを利用するストアード式インフレータ、ガス発生剤を燃焼させて発生するガスと圧縮ガスとの混合ガスを利用するハイブリッド式インフレータ等が挙げられる。
【0021】
図2は、実施形態1のエアバッグ装置について、エアバッグの膨張展開後の状態を示す模式図であり、(a)は側方から見た状態を示し、(b)は上方から見た状態を示す。
【0022】
車両が障害物60(例えば、別の車両)と側面衝突し、インフレータ110が作動すると、インフレータ110から発生したガスがサイドエアバッグ120の内部に導入され、サイドエアバッグ120は、その折り畳みが解かれながら膨張する。そして、膨張したサイドエアバッグ120から加わる力によってシートバック31の表皮32が破られると、
図2(a)、(b)に示すように、サイドエアバッグ120は、乗員40の車両側壁50側に膨張展開(フル展開)する。
【0023】
図3及び
図4は、実施形態1のエアバッグ装置について、サイドエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、
図3は、乗員側から見た状態を示し、
図4は、車両外側の第2パネルを図示せずに側方から見た状態を示す。
図5は、
図3及び
図4中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
図6は、
図3及び
図4中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
図7は、
図3及び
図4中の線分C1-C2に対応する部分を示す断面模式図であり、前方から見た状態を示す。
【0024】
図3~
図7に示すように、サイドエアバッグ120は、第1パネル130、第2パネル140、第1規制部材150a及び第2規制部材150bを有している。
【0025】
第1パネル130は、縁部131と、縁部131と異なる部位である第1固定部132a及び132bと、縁部131と異なる部位であって第1固定部132a及び132bとそれぞれ対向する部位である第2固定部133a及び133bとを有している。以下、第1固定部132a及び132bを区別しない場合は第1固定部132として説明し、第2固定部133a及び133bを区別しない場合は第2固定部133として説明する。
【0026】
第1固定部132及び第2固定部133は、所定の方向(以下、延伸方向とする。ここでは上下方向)に沿った線状の部位であり、縁部131の内方に位置している。また、第1固定部132及び第2固定部133は、
図4に示したように互いに略平行であってもよいし、互いに非平行であってもよく、例えば両者の間隔が徐々に変化してもよい。更に、第1固定部132及び第2固定部133は、
図4に示したように直線状であってもよいし、少なくとも一方が、曲線状(例えば円弧)、ジグザグ状、波型等のように非直線状であってもよい。
【0027】
図4~
図6に示すように、第1パネル130の縁部131は、第1固定部132の外方に位置する第1縁部131aと、第2固定部133の外方に位置する第2縁部131bを含んでいる。すなわち、第1縁部131a、第1固定部132、第2固定部133及び第2縁部131bがこの順に並んでいる。
【0028】
第2パネル140は、第1パネル130の縁部131に結合された縁部141を有しており、第1パネル130とともに袋状のサイドエアバッグ120を形成する。第1パネル130及び第2パネル140は、それぞれ1枚の基布から形成されており、第1パネル130の縁部131が第2パネル140の縁部141と一致するように略同一形状、例えばC字状に形成されている。
【0029】
図2(a)に示したように、サイドエアバッグ120は、膨張展開時、乗員40の肩部44及び胸部42から腹部45を経て腰部47に至る位置に対応して配置されている。
【0030】
第1規制部材150aは、サイドエアバッグ120内部に設けられ、第1固定部132aに固定された第1部位151aと、第2固定部133aに固定された第2部位152aとを有する。また、第2規制部材150bは、サイドエアバッグ120内部に設けられ、第1固定部132bに固定された第1部位151bと、第2固定部133bに固定された第2部位152bとを有する。以下、第1規制部材150a及び第2規制部材150bを区別しない場合は規制部材150として説明し、第1部位151a及び151bを区別しない場合は第1部位151して説明し、第2部位152a及び152bを区別しない場合は第2部位152して説明する。
【0031】
規制部材150は、後述する保護膨張部122を形成するために設けられた部材であり、片方のパネル(ここでは第1パネル130)のみに設けられ、膨張展開時に第1パネル130が完全に膨張するのを規制する。規制部材150は、帯状の1枚の基布から形成されており、第1固定部132及び第2固定部133で第1パネル130にそれぞれ結合されている。規制部材150の第1部位151と第1パネル130の第1固定部132とは、サイドエアバッグ120上の同一箇所に位置しており、規制部材150の第2部位152と第1パネル130の第2固定部133とは、サイドエアバッグ120上の同一箇所に位置している。第1規制部材150aは、サイドエアバッグ120の膨張展開時、後述する第1保護膨張部122aが、乗員40の腰部47に対応する位置に配置されるように、設けられている。また、第2規制部材150bは、サイドエアバッグ120の膨張展開時、後述する第2保護膨張部122bが、乗員40の胴体の前方部に対応する位置に配置されるように、設けられている。
【0032】
図4及び
図7に示すように、規制部材150は、第1部位151及び第2部位152が互いに対向する向きに対して側方(延伸方向及びその反対方向、ここでは上下方向)では第1パネル130に固定されておらず、開口部160がそれぞれ設けられている。これらの開口部160を通して、後述するメインバッグ121と、保護膨張部122との間をインフレータ110からのガスが流通可能となっている。
【0033】
規制部材150は、
図4に示したように端部を除く中間部にて第1固定部132及び第2固定部133に固定されてもよいし、一端が第1固定部132に固定され、他端が第2固定部133に固定されてもよい。なお、前者の場合、規制部材150の一端及び他端は、第1パネル130の縁部131及び第2パネル140の縁部141まで延在するとともに、縁部131及び141とともに結合されてもよい。
【0034】
図5及び
図6に示したように、第1パネル130の第1固定部132から第2固定部133までの長さL11は、規制部材150の第1部位151から第2部位152までの長さL12よりも長い。本明細書にて、「第1パネルの第1固定部から第2固定部までの長さ」及び「規制部材の第1部位から第2部位までの長さ」とは、第1固定部上の任意の第1の点(第1固定部の各地点上の点であってもよい)と、第2固定部上の点であって第1の点から最短距離に位置する第2の点とを通る断面(例えば
図5及び
図6の断面)を見た状態においてそれぞれ測定される長さを意味する。
【0035】
この結果、膨張前の段階で規制部材150を平らにした状態にすると、第1パネル130の第1固定部132から第2固定部133までの部分が弛んだ状態となる。換言すると、膨張前の段階では、規制部材150は、第1パネル130の第1固定部132から第2固定部133までの部分が弛んだ状態で第1固定部132及び第2固定部133に固定されている。
【0036】
サイドエアバッグ120は、第1固定部132及び第2固定部133の間を除く第1パネル130と、第2パネル140と、規制部材150とによって形成されたメインバッグ121と、第1固定部132a及び第2固定部133aの間の第1パネル130と、第1規制部材150aとによって形成された第1保護膨張部122aと、第1固定部132b及び第2固定部133bの間の第1パネル130と、第2規制部材150bとによって形成された第2保護膨張部122bと、を有している。以下、第1保護膨張部122a及び第2保護膨張部122bを区別しない場合は保護膨張部122として説明する。
【0037】
メインバッグ121は、サイドエアバッグ120の主要部を構成するチャンバであり、車両側壁50と座席に着座した乗員40との間で膨張展開して乗員40を保護するというサイドエアバッグ120の基本的な機能を主に担うものである。
図2に示したように、メインバッグ121は、サイドエアバッグ120の全体と同様に、乗員40の肩部44及び胸部42から腹部45を経て腰部47に至る位置に対応して配置される。
【0038】
保護膨張部122は、メインバッグ121の乗員40側に設けられたメインバッグ121より容量が小さいチャンバであり、メインバッグ121と座席に着座した乗員40との間で膨張展開して乗員40を保護するとともに、サイドエアバッグ120の膨張展開時に乗員40にかかる衝撃を緩和するという、サイドエアバッグ120の付加的な機能を担うものである。
図2に示したように、サイドエアバッグ120の膨張展開時、第1保護膨張部122aは、乗員40の腰部47に対応する位置に配置されており、第2保護膨張部122bは、乗員40の胴体の前方部に対応する位置に配置されている。なお、ここで、乗員40の胴体とは、乗員40の胸部42、腹部45及び背部46を含む部位であり、胴体の前方部とは、胸部42及び腹部45を指す。すなわち、第2保護膨張部122bは、乗員40の胸部42及び腹部45の少なくも一方に対応する位置に配置されている。
【0039】
そして、サイドエアバッグ120の膨張展開時には、インフレータ110からのガスはメインバッグ121に導入され、第1パネル130は乗員40に面し、保護膨張部122が乗員40を受け止める。
【0040】
より詳細には、インフレータ110は、メインバッグ121内に設けられており、インフレータ110から噴出されたガスは、メインバッグ121内に流出し、次いでメインバッグ121から開口部160を通って保護膨張部122内に流入する。本実施形態では、第1保護膨張部122aが乗員40の腰部47の側面を受け止め、第2保護膨張部122bが乗員40の胴体の前方部(胸部42及び/又は腹部45)の側面を受け止める。
【0041】
サイドエアバッグ120の製造工程は特に限定されないが、例えば、
図8~
図11に示した工程によって製造することができる。
【0042】
まず、
図8に示すように、基布から第1パネル130及び第2パネル140をそれぞれ切り出す。第1パネル130にはインフレータ110をサイドエアバッグ120内に挿入するための切れ込み134と、一対のボルト111を挿入するための一対の孔135が形成されている。第2パネル140は、切れ込み134と、一対の孔135とが形成されていないことを除いて、第1パネル130と同じものである。
【0043】
次に、基布から第1規制部材150a及び第2規制部材150bをそれぞれ切り出し、
図9に示すように、目印Y1~Y2が対応するように第1パネル130の第2固定部133bに第2規制部材150bの第2部位152bを結合するとともに、目印Y3が対応するように第1パネル130の第2固定部133aに第1規制部材150aの第2部位152aを結合する。
【0044】
次に、
図10に示すように、第1パネル130を中央部で折り縮た状態で、目印Y4~Y5が対応するように第1パネル130の第1固定部132bに第2規制部材150bの第1部位151bを結合するとともに、目印Y6~Y7が対応するように第1パネル130の第1固定部132aに第1規制部材150aの第1部位151aを結合する。これにより、第1パネル130に第1規制部材150a及び第2規制部材150bが取り付けられる。
【0045】
そして、目印Y1~Y9が対応するように第1パネル130及び第2パネル140の一対の縁部131及び141を重ね合わせて結合することで、
図11に示すように、袋状のサイドエアバッグ120を製造できる。このとき、縁部131及び141に規制部材150の一端及び他端を重ね合わせて結合してもよい。
【0046】
なお、上記結合の方法としては、例えば、縫製、接着、溶着等が挙げられ、なかでも縫製が好適である。
【0047】
第1パネル130、第2パネル140及び規制部材150に使用される基布は、例えば、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の糸で形成することができる。また、耐熱性の向上や、気密性の向上等のために、基布は、シリコン等で表面が被覆されたものであってもよい。
【0048】
図12は、実施形態1のエアバッグ装置について、膨張前のサイドエアバッグを展開した状態を乗員とともに示す模式図であり、側方から見た状態を示す。
【0049】
図12に示すように、膨張前の段階においても膨張展開時と同様に、サイドエアバッグ120は、乗員40の肩部44及び胸部42から腹部45を経て腰部47に至る位置に対応している。
【0050】
以上のように、本実施形態では、保護膨張部122を形成する第1パネル130の第1固定部132から第2固定部133までの長さL11が、規制部材の第1部位151から第2部位152までの長さL12より長いことで、第1パネル130と第2パネル140の一対の縁部131及び141を結合して袋状に形成されたサイドエアバッグ120のうち、規制部材150によって隔てられたメインバッグ121及び保護膨張部122は、保護膨張部122よりもメインバッグ121の方が大きくなり、内圧によって発生するサイドエアバッグ120の反力も、保護膨張部122よりもメインバッグ121の方が大きくなる。そのため、保護膨張部122はメインバッグ121に比べて柔らかくなる。加えて、メインバッグ121及び保護膨張部122の大きさの違いにより、サイドエアバッグ120が膨張することでメインバッグ121を形成する第2パネル140の表面に発生するテンションも、第1パネル130に比べて大きくなる。
【0051】
そして、エアバッグ装置100が作動し、インフレータ110からガスが発生すると、インフレータ110からメインバッグ121にガスが導入され、メインバッグ121が膨張展開する。その際、サイドエアバッグ120のうち、規制部材150が設けられた部分が膨張展開することにより、保護膨張部122も展開し、第1パネル130と規制部材150との間(開口部160)からガスが流入し保護膨張部122が膨張する。この時、第2パネル140に発生するテンション及び内圧によって高い反力が発生するメインバッグ121が車両と当接すると、サイドエアバッグ120はその反力により乗員40側へと移動する。それにより、保護膨張部122が乗員40と接触を早くすることができ、かつ、第1パネル130の一部によって形成される柔らかい保護膨張部122は、硬いメインバッグ121と乗員40との間に介在し乗員40を柔らかく受け止めることができる。好ましくは、第2保護膨張部122bによって乗員40の胴体の前方部(胸部42及び/又は腹部45)の側面を柔らかく受け止めることができる。
【0052】
また、上記のように、反力の高いメインバッグ121が車両と乗員40との間に膨張展開されてサイドエアバッグ120が乗員40側に移動することで、乗員40との接触を早めることができ、かつ、柔らかい保護膨張部122で乗員40を保護することができるため、乗員40へ危害を与えることなく安全に、早期に乗員40を保護することができる。
【0053】
更に、サイドエアバッグ120の製造時、第1パネル130に規制部材150を取り付けた後、第1パネル130及び第2パネル140の一対の縁部131及び141を重ね合わせて結合すればいいため、容易に製造することができる。
【0054】
また、サイドエアバッグ120の後方部(乗員40の腰部47に対応する位置)に第2規制部材150bを設けることで、サイドエアバッグ120の前方部を屈曲させ、乗員に近づけることができるため、早期に乗員40を拘束(保護)することができる。
【0055】
また、本実施形態では、
図5及び
図6に示したように、メインバッグ121と保護膨張部122との間には規制部材150によってくびれ153が設けられていることが好ましい。これにより、保護膨張部122がメインバッグ121に対してくびれ153を起点に傾く(揺らぐ)ことができる。そのため、保護膨張部122で乗員40を受け止めた後にメインバッグ121が移動した場合でも、保護膨張部122で乗員40を受け止め続けることができる。このように、保護膨張部122は、規制部材150の第1部位151から第2部位152まで部分よりも大きく膨張することが好ましい。
【0056】
また、保護膨張部122は、サイドエアバッグ120の内圧によっては丸く膨張しようとするが、本実施形態では、
図5及び
図6に示したように、第1パネル130の第1固定部132から第2固定部133までの長さL11は、規制部材150の第1部位151から第2部位152までの長さL12のπ/2(すなわちL12×π/2)よりも長いことが好ましい。すなわち、長さL11は、長さL12を直径とする円周の半分の長さより長いことが好ましい。これにより、規制部材150の第1部位151から第2部位152までの長さよりも保護膨張部122の最大幅の方が大きくなるため、くびれ153を効果的に形成することができる。
【0057】
また、長さL12に対する長さL11の比率(L11/L12)の上限は、特に限定されないが、長さL12は開口部160から保護膨張部122にガスが流通可能な長さであることが好ましい。。
【0058】
また、本実施形態では、
図5に示したように、第1規制部材150aの第1部位151aから第2部位152aまでの長さL12が、第1パネル130の第1固定部132aから第1縁部131aまでの長さL13より短く、かつ、第1パネル130の第2固定部133aから第2縁部131bまでの長さL14よりも短いことが好ましい。これにより、メインバッグ121の厚みを厚くできる。そのため、サイドエアバッグ120が車両に押しつぶされたときのストロークを稼ぐことができる。
【0059】
ここで、「第1パネルの第1固定部から第1縁部までの長さ」及び「第1パネルの第2固定部から第2縁部までの長さ」とは、第1固定部上の任意の第1の点(第1固定部の各地点上の点であってもよい)と、第2固定部上の点であって第1の点から最短距離に位置する第2の点とを通る断面(例えば
図5の断面)を見た状態においてそれぞれ測定される長さを意味する。
【0060】
長さL13に対する長さL12の比率(L12/L13)及び長さL14に対する長さL12の比率(L12/L14)は、特に限定されない。
【0061】
また、本実施形態では、
図5に示したように、第1パネル130の第2固定部133aから第2縁部131bまでの長さL14は、第1パネル130の第1固定部132aから第1縁部131aまでの長さL13よりも長いことが好ましい。すなわち、保護膨張部122aの場所が第2縁部131bよりも第1縁部131aの方に偏っていることが好ましい。これにより、
図5に示したように、第2縁部131b側のサイドエアバッグ120の前方部分が乗員40側に屈曲する。そのため、サイドエアバッグ120の一部の膨張展開位置を、乗員40との距離や乗員40の体形に合わせて調整できる。
【0062】
なお、本実施形態では、
図6に示したように、保護膨張部122bの場所が第1縁部131aよりも第2縁部131bの方に偏っているが、保護膨張部122bと第1縁部131aとの間にはインフレータ110が固定されているため、第1縁部131a側のサイドエアバッグ120の後方部分は乗員40側に屈曲していない。
【0063】
以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0064】
図13及び
図14は、それぞれ、実施形態1の変形例1及び2のエアバッグ装置について、保護膨張部が設けられた部分のサイドエアバッグの膨張展開後の状態を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【0065】
図13及び
図14に示すように、第1パネル130の第2固定部133から第2縁部131bまでの長さL14は、第1パネル130の第1固定部132から第1縁部131aまでの長さL13と実質的に同じ長さであってもよい。すなわち、保護膨張部122が第1縁部131aと第2縁部131bとの間の中央に位置していてもよい。
【0066】
また、
図13に示すように、規制部材150の第1部位151から第2部位152までの長さL12は、第1パネル130の第1固定部132から第1縁部131aまでの長さL13より長く、かつ、第1パネル130の第2固定部133から第2縁部131bまでの長さL14よりも長くてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、第1規制部材150a及び第2規制部材150bの少なくとも一方に、ガスが流通可能なガス流通孔が少なくとも1つ(例えば1つ)設けられてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、第1固定部132及び第2固定部133が沿う延伸方向は、特に限定されず、例えば、前後方向であってもよいし、上下方向及び前後方向に交差する斜め方向であってもよい。
【0069】
また、本実施形態では、第1パネル130及び第2パネル140の少なくとも一方に、ガスを排出するためのベントホールを少なくとも1つ(例えば1つ)設けることが好ましい。膨張展開したサイドエアバッグ120が押し潰されると内圧が上昇するため、サイドエアバッグ120の反力が高くなる。すなわち、サイドエアバッグ120が硬くなるが、ベントホールからガスを適度に排出することで、サイドエアバッグ120の吸収特性を制御することができる。
【0070】
また、本実施形態では、サイドエアバッグ120を乗員40の頭部41及び胸部42から腹部45を経て腰部47に至る位置に対応して配置し、保護膨張部122で頭部41を保護してもよく、また、サイドエアバッグ120の1つ当たりの保護膨張部122の数は、特に限定されず、例えば、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0071】
(実施形態2)
以下、図面を参照しながら、実施形態2のエアバッグ装置について説明する。実施形態2のサイドエアバッグ装置は、保護膨張部を設ける対象のエアバッグが異なる以外、実施形態1のエアバッグ装置と同様であるため、重複する点については説明を適宜省略する。本実施形態では、保護膨張部をカーテンエアバッグに設ける。
【0072】
図17は、実施形態2のエアバッグ装置について、カーテンエアバッグの膨張展開前の状態を示す模式図であり、車両側壁を車内側から正面視した図である。
【0073】
エアバッグ装置200は、カーテンエアバッグ装置であり、車両の車両側壁50の上方に内装材に覆われて収納されている。エアバッグ装置200は、車内の乗員に視認されないように、車両側壁50と内装材との間に形成された空間(車両側壁50の収納部)に収納されているが、
図15では、説明の便宜上、エアバッグ装置200が特化して図示されている。
【0074】
車両側壁50は、座席に着座した乗員の側方に位置する車体部分であれば特に限定されず、サイドドア、ピラー、サイドウインドウ等を総称している。車両側壁50としては、車両上方のルーフサイドレール51、車両前方のフロントピラー(Aピラー)53、車両中央のセンターピラー(Bピラー)52、車両後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)等が挙げられる。なお、
図15では、車両側壁50のうち、車両前方部分、車両後方部分及び車両下方部分の図示が省略されている。
【0075】
内装材は、車両側壁50を覆う部材であれば特に限定されず、例えば、ルーフサイドレール51を覆う天井材51A、フロントピラーを覆うフロントピラートリム53A、センターピラー52を覆うセンターピラートリム52A、リアピラーを覆うリアピラートリム(図示せず)等が挙げられる。
【0076】
エアバッグ装置200は、ガスを発生させるインフレータ210と、カーテンエアバッグ220と、を備えている。
【0077】
インフレータ210は、シリンダー状(円柱状)のガス発生装置であり、車両長手方向の一端にガス噴出孔を有している。ガス噴出孔は、筒状に縫合されて形成されたカーテンエアバッグ220のガス導入部223に挿入されている。
【0078】
インフレータ210は、実施形態1の場合と同様に、「車両の緊急時(例えば、車両の側面衝突時)に作動する。インフレータ210から発生したガスは、インフレータ210のガス噴出孔から、カーテンエアバッグ220のガス導入部223を通じて、カーテンエアバッグ220の内部に導入される。
【0079】
インフレータ210の種類は特に限定されず、例えば、実施形態1で例示したものが挙げられる。
【0080】
カーテンエアバッグ220は、インフレータ210から発生したガスが導入されるガス導入部223を有している。ガス導入部223は、インフレータ210から発生したガスが漏れ出さないように、挿入されたインフレータ210とともにバンド212で締め付けられている。インフレータ210は、センターピラー52の上方で、ルーフサイドレール51に取り付けられている。一方、ガス導入部223は、カーテンエアバッグ220の上縁(車両高さ方向の上端)に配置されている。ガス導入部223が車両の前後方向の中央付近に配置されていることから、カーテンエアバッグ220の内部では、車両の前後方向の中央付近から前端へ向かうガスの流れと、車両の前後方向の中央付近から後端へ向かうガスの流れとが生じることになる。
【0081】
カーテンエアバッグ220は、袋状体であり、膨張展開前において、車両長手方向に沿って、ルーフサイドレール51及びフロントピラー53に配置されている。そして、カーテンエアバッグ220は、棒状に折り畳まれ、膨張時に破断可能なラッピング材等(図示せず)で巻かれた状態で収納されている。車両の緊急時には、インフレータ210から発生したガスがカーテンエアバッグ220の内部に導入されることで、カーテンエアバッグ220が膨張し、その折り畳みが解ける。そして、膨張したカーテンエアバッグ220から加わる力によって内装材が押し開けられると、カーテンエアバッグ220は車内に降下して更に膨張し、車両側壁50の上方から下方へ向かってカーテン状に膨張展開する。その結果、膨張展開したカーテンエアバッグ220が、車両の前後方向に沿って車両側壁50を車内側から覆うため、車内の乗員40は、頭部41を中心に保護される。
【0082】
次に、エアバッグ装置200の展開状態について、
図16及び
図17を参照して以下に説明する。
【0083】
図16は、実施形態2のエアバッグ装置について、カーテンエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、乗員側から見た状態を示す。
図17は、
図16中の線分D1-D2に対応する部分を示す断面模式図であり、前方から見た状態を示す。
【0084】
図16及び
図17に示すように、カーテンエアバッグ220は、第1パネル230、第2パネル240及び規制部材250を有している。
【0085】
第1パネル230は、1枚の基布から形成されており、縁部231と、縁部231と異なる部位である第1固定部232と、縁部231と異なる部位であって第1固定部232と対向する部位である第2固定部233とを有している。
【0086】
第1固定部232及び第2固定部233は、所定の方向(以下、延伸方向とする。ここでは前後方向)に沿った線状の部位であり、縁部231の内方に位置している。
【0087】
第2パネル240は、第1パネル230の縁部231に結合された縁部241を有しており、第1パネル230とともに袋状のカーテンエアバッグ220を形成する。第1パネル230及び第2パネル240は、それぞれ1枚の基布から形成されており、第1パネル230の縁部231が第2パネル240の縁部241と一致するように略同一形状、例えば帯状に形成されている。
【0088】
図17に示したように、カーテンエアバッグ220は、膨張展開時、乗員40の少なくとも頭部41に対応して配置されている。
【0089】
規制部材250は、カーテンエアバッグ220内部に設けられ、第1固定部232に固定された第1部位251と、第2固定部233に固定された第2部位252とを有する。
【0090】
規制部材250は、矩形状の1枚の基布から形成されており、第1固定部232及び第2固定部233で第1パネル230にそれぞれ結合されている。規制部材250の第1部位251と第1パネル230の第1固定部232とは、カーテンエアバッグ220上の同一箇所に位置しており、規制部材250の第2部位252と第1パネル230の第2固定部233とは、カーテンエアバッグ220上の同一箇所に位置している。
【0091】
図16に示すように、規制部材250は、第1部位251及び第2部位252が互いに対向する向きに対して側方(延伸方向及びその反対方向、ここでは前後方向)では第1パネル230に固定されておらず、ガスが流通可能となる開口部260がそれぞれ設けられている。
【0092】
規制部材250は、
図16に示したように一端及び他端にて第1固定部232及び第2固定部233にそれぞれ固定されてもよいし、端部を除く中間部にて第1固定部232及び第2固定部233にそれぞれ固定されてもよい。なお、後者の場合、規制部材250の一端及び他端は、第1パネル230の縁部231及び第2パネル240の縁部241まで延在するとともに、縁部231及び241とともに結合されてもよい。
【0093】
図17に示したように、第1パネル230の第1固定部232から第2固定部233までの長さL21は、規制部材250の第1部位251から第2部位252までの長さL22よりも長い。
【0094】
この結果、膨張前の段階で規制部材250を平らにした状態にすると、第1パネル230の第1固定部232から第2固定部233までの部分が弛んだ状態となる。換言すると、膨張前の段階では、規制部材250は、第1パネル230の第1固定部232から第2固定部233までの部分が弛んだ状態で第1固定部232及び第2固定部233に固定されている。
【0095】
カーテンエアバッグ220は、第1固定部232及び第2固定部233の間を除く第1パネル230と、第2パネル240と、規制部材250とによって形成されたメインバッグ221と、第1固定部232及び第2固定部233の間の第1パネル230と、規制部材250とによって形成された保護膨張部222と、を有している。
【0096】
メインバッグ221は、カーテンエアバッグ220の主要部を構成するチャンバであり、車両側壁50と座席に着座した乗員40との間で膨張展開して乗員40を保護するというカーテンエアバッグ220の基本的な機能を主に担うものである。
図17に示したように、メインバッグ221は、カーテンエアバッグ220の全体と同様に、乗員40の少なくとも頭部41に対応して配置される。
【0097】
また、メインバッグ221には、第1パネル230と第2パネル240とが結合された線状の複数の結合部224が設けられている。結合部224によれば、膨張時のカーテンエアバッグ220の車幅方向における厚みを部分的に規制し、カーテンエアバッグ220の膨張形状を制御することができる。これにより、膨張時のカーテンエアバッグ220の内部容量及び厚みが調整され、乗員40(主に、頭部41)の保護性能を高めることができる。
【0098】
また、メインバッグ221には、複数の固定布(タブ)225がメインバッグ221の上縁から突出するように結合されている。固定布225は、例えば、ボルト、クリップ等を用いて、ルーフサイドレール51及びフロントピラー53に固定される。
【0099】
保護膨張部222は、メインバッグ221の乗員40側に設けられたチャンバであり、メインバッグ221と座席に着座した乗員40との間で膨張展開して乗員40を保護するとともに、カーテンエアバッグ220の膨張展開時に乗員40にかかる衝撃を緩和するという、カーテンエアバッグ220の付加的な機能を担うものである。
図17に示したように、カーテンエアバッグ220の膨張展開時、保護膨張部222は、乗員40の頭部41に対応する位置に配置されている。
【0100】
そして、カーテンエアバッグ220の膨張展開時には、インフレータ210からのガスはメインバッグ221に導入され、第1パネル230は乗員40に面し、保護膨張部222が乗員40を受け止める。
【0101】
より詳細には、インフレータ210から噴出されたガスは、ガス導入部223を経由してメインバッグ221内に流出し、次いでメインバッグ221から開口部260を通って保護膨張部222内に流入する。本実施形態では、保護膨張部222が乗員40の頭部41の側面を受け止める。
【0102】
カーテンエアバッグ220の製造工程は特に限定されないが、例えば、実施形態1の場合と同様に、まず、基布から第1パネル230及び第2パネル240をそれぞれ切り出し、次に、基布から規制部材250を切り出し、次に、第1パネル230の第2固定部233に規制部材250の第2部位252を結合し、次に、第1パネル230を中央部で折り縮た状態で、第1パネル230の第1固定部232に規制部材250の第1部位251を結合し、次に、第1パネル230及び第2パネル240の一対の縁部231及び241を重ね合わせて結合し、そして、第1パネル230及び第2パネル240の所定箇所を結合することで結合部224を設け、袋状のメインバッグ221を製造する。その後、メインバッグ221の所定箇所に固定布225を結合することで、袋状のカーテンエアバッグ220を製造できる。
【0103】
なお、上記結合の方法としては、例えば、縫製、接着、溶着等やそれらを組み合わせた方法が挙げられ、なかでも縫製が好適である。
【0104】
以上のように、本実施形態では、保護膨張部222を形成する第1パネル230の第1固定部232から第2固定部233までの長さL21が、規制部材の第1部位251から第2部位252までの長さL22より長いことから、実施形態1の場合と同様に、保護膨張部222はメインバッグ221に比べて柔らかくなる。加えて、第2パネル240の表面に発生するテンションも、第1パネル230に比べて大きくなる。また、保護膨張部222が乗員40と接触を早くすることができ、かつ、第1パネル230の一部によって形成される柔らかい保護膨張部222は、硬いメインバッグ221と乗員40との間に介在し乗員40を柔らかく受け止めることができる。
【0105】
また、実施形態1の場合と同様に、安全かつ早期に乗員40を保護することができるとともに、カーテンエアバッグ220を容易に製造することができる。
【0106】
また、本実施形態では、
図17に示したように、メインバッグ221と保護膨張部222との間には規制部材250によってくびれ253が設けられていることが好ましい。これにより、実施形態1の場合と同様に、保護膨張部222で乗員40を受け止めた後にメインバッグ221が移動した場合でも、保護膨張部222で乗員40を受け止め続けることができる。このように、保護膨張部222は、規制部材250の第1部位251から第2部位252まで部分よりも大きく膨張することが好ましい。
【0107】
また、
図17に示したように、第1パネル230の第1固定部232から第2固定部233までの長さL21は、規制部材250の第1部位251から第2部位252までの長さL22のπ/2(すなわちL22×π/2)よりも長いことが好ましい。すなわち、長さL21は、長さL22を直径とする円周の半分の長さより長いことが好ましい。これにより、実施形態1の場合と同様に、くびれ253を効果的に形成することができる。
【0108】
また、長さL22に対する長さL21の比率(L21/L22)の上限は、特に限定されないが、長さL22は開口部260から保護膨張部222にガスが流通可能な長さであることが好ましい。
【0109】
以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0110】
図18は、実施形態2の変形例1のエアバッグ装置について、カーテンエアバッグの膨張展開後の立体形状を模式的に示した図であり、乗員側から見た状態を示す。
図19は、
図18中の線分E1-E2に対応する部分を示す断面模式図であり、上方から見た状態を示す。
【0111】
図18及び
図19に示すように、第1固定部232及び第2固定部233が沿う延伸方向は、上下方向であってもよい。この場合は、第1部位251及び第2部位252も上下方向に沿って配置され、規制部材250は、第1部位251及び第2部位252が互いに対向する向きに対して側方(延伸方向及びその反対方向、ここでは上下方向)では第1パネル230に固定されず、ガスが流通可能となる開口部260がそれぞれ設けられることになる。
【0112】
また、本実施形態では、第1固定部232及び第2固定部233が沿う延伸方向は、特に限定されず、例えば、上下方向及び前後方向に交差する斜め方向であってもよい。
【0113】
また、本実施形態では、規制部材250に、ガスが流通可能なガス流通孔が少なくとも1つ(例えば1つ)設けられてもよい。
【0114】
また、本実施形態では、カーテンエアバッグ220の1つ当たりの保護膨張部222の数は、特に限定されず、例えば、2つ以上であってもよい。また、座席の列の数に応じた数であってもよい。例えば、座席の列と同じ数だけ保護膨張部222を設けてもよい。
【0115】
本発明は、上記実施形態に記載された内容に限定されるものではない。実施形態に記載された各構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜削除されてもよいし、追加されてもよいし、変更されてもよいし、組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0116】
30:車両用座席
31:シートバック(背もたれ部)
32:表皮
33:サイドフレーム
34:クッションパッド
40:乗員(国際統一側面衝突ダミー)
41:頭部
42:胸部
43:上腕部
44:肩部
45:腹部
46:背部
47:腰部
50:車両側壁
60:障害物
51:ルーフサイドレール
51A:天井材
52:センターピラー(Bピラー)
52A:センターピラートリム
53:フロントピラー(Aピラー)
53A:フロントピラートリム
100、200:エアバッグ装置
110、210:インフレータ
111:ボルト
120:サイドエアバッグ
121、221:メインバッグ
122、222:保護膨張部
122a:第1保護膨張部
122b:第2保護膨張部
130、230:第1パネル
131、231:縁部
131a:第1縁部
131b:第2縁部
132、132a、132b、232:第1固定部
133、133a、133b、233:第2固定部
134:切れ込み
135:孔
140、240:第2パネル
141、241:縁部
150、250:規制部材
150a:第1規制部材
151a、151b、151、251:第1部位
152a、152b、152、252:第2部位
150b:第2規制部材
153:くびれ
160、260:開口部
220:カーテンエアバッグ
223:ガス導入部
224:結合部
225:固定布(タブ)
212:バンド
L11、L21:第1パネルの第1固定部から第2固定部までの長さ
L12、L22:規制部材の第1部位から第2部位までの長さ
L13:第1パネルの第1固定部から第1縁部までの長さ
L14:第1パネルの第2固定部から第2縁部までの長さ
Y1~Y9:目印