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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155734
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】充電制御装置及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20221006BHJP
【FI】
H02J7/02 U
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059105
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 航汰
(72)【発明者】
【氏名】齊田 陽
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】精度良く充電時間を推定することができる充電制御装置及び充電制御方法を提供する。
【解決手段】外部電源16から供給される電力により、バッテリ3を充電する充電制御装置1は、外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得する外部電源情報取得部24、25、26と、バッテリの温度、電圧及び電流を含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部21、22、23と、バッテリから補機12に供給される電力量を消費電力量として取得する消費電力取得部27と、バッテリの充電時間を推定する充電時間推定部33とを有する。充電時間推定部は、バッテリ情報に基づいてバッテリの充電状態の初期値を取得し、バッテリの温度と、外部電源情報と、消費電力量と、充電状態の初期値とに基づいて、充電時間を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から供給される電力により、バッテリを充電する充電制御装置であって、
前記外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得する外部電源情報取得部と、
前記バッテリの温度、電圧、及び電流を含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部と、
前記バッテリから補機に供給される電力量を消費電力量として取得する消費電力取得部と、
前記バッテリの充電時間を推定する充電時間推定部とを有し、
前記充電時間推定部は、前記バッテリ情報に基づいて前記バッテリの充電状態の初期値を取得し、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量と、前記充電状態の初期値とに基づいて、前記充電時間を推定する充電制御装置。
【請求項2】
前記充電時間推定部は、
前記充電状態の前回値に、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量とに基づいて演算される前記バッテリの電流値の今回値の積分値を加算することによって、所定時間経過後の前記充電状態の今回値を演算し、
前記充電状態の今回値が充電完了値以上になるまで要する時間を前記充電時間として設定する請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記充電時間推定部は、
前記バッテリの温度の前回値と、前記バッテリを冷却する冷媒の温度と、外気温度とに基づいて、所定時間経過後の前記バッテリの温度の今回値を取得する請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記充電時間推定部は、
前記バッテリの電圧の前回値と前記バッテリの電流の前回値とを掛けることによって前記バッテリの電力の今回値を算出し、
前記バッテリの電力の今回値と前記バッテリの温度の今回値とに基づいて前記バッテリの電圧の今回値を取得し、
前記外部電源の電力を前記バッテリの電圧の今回値で除することによって充電律速電流の今回値を算出し、
前記バッテリのセル電圧と、前記バッテリの温度の今回値とに基づいて、前記バッテリの保護が可能な電流値である制限電流の今回値を取得し、
前記充電律速電流の今回値と前記制限電流の今回値との内で小さい方の値から、前記消費電力量から取得される消費電流値を減算することによって前記バッテリの電流値の今回値を取得する請求項2又は請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
外部電源から供給される電力により、バッテリを充電する充電制御方法であって、
前記外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得し、
前記バッテリの温度、電圧、及び電流を含むバッテリ情報を取得し、
前記バッテリから補機に供給される電力量を消費電力量として取得し、
前記バッテリ情報に基づいて前記バッテリの充電状態の初期値を取得し、
前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量と、前記充電状態の初期値とに基づいて、充電時間を推定する充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置及び充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、充電電力、電池温度、充電状態(SOC)に基づいて、複数のマップを参照して充電時間を取得し、充電時間を表示装置に表示する車両の充電制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/046233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、充電中においても、温度調節装置等の補機が駆動し、バッテリの電力が消費されている場合がある。この場合、実際の充電時間が、表示装置に表示された充電時間よりも長くなるという問題がある。この問題を解決するために、補機による消費電力を考慮したマップを予め用意しておく対策が考えられるが、複数の補機の様々な使用状態を考慮する必要があり、マップが複雑化すると共にデータ量が増大するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、精度良く充電時間を推定することができる充電制御装置及び充電制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、外部電源(16)から供給される電力により、バッテリ(3)を充電する充電制御装置(1)であって、前記外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得する外部電源情報取得部(24、25)と、前記バッテリの温度、電圧、及び電流を含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部(21、22、23)と、前記バッテリから補機(12)に供給される電力量を消費電力量として取得する消費電力取得部(27)と、前記バッテリの充電時間を推定する充電時間推定部(33)とを有し、前記充電時間推定部は、前記バッテリ情報に基づいて前記バッテリの充電状態の初期値を取得し、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量と、前記充電状態の初期値とに基づいて、前記充電時間を推定する。
【0007】
この態様によれば、バッテリの温度及び消費電力を考慮して充電時間を推定するため、精度良く充電時間を推定することができる。
【0008】
上記の態様において、前記充電時間推定部は、前記充電状態の前回値に、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量とに基づいて演算される前記バッテリの電流値の今回値の積分値を加算することによって、所定時間経過後の前記充電状態の今回値を演算し、前記充電状態の今回値が充電完了値以上になるまで要する時間を前記充電時間として設定するとよい。
【0009】
この態様によれば、各時点におけるバッテリ温度を考慮して各時点における充電状態を取得するため、充電時間を精度良く推定することができる。
【0010】
上記の態様において、前記充電時間推定部は、前記バッテリの温度の前回値と、前記バッテリを冷却する冷媒の温度と、外気温度とに基づいて、所定時間経過後の前記バッテリの温度の今回値を取得するとよい。
【0011】
この態様によれば、各時点のバッテリ温度を精度良く推定することができる。その結果、各時点における充電状態を精度良く推定することができ、充電時間を精度良く推定することができる。
【0012】
上記の態様において、前記充電時間推定部は、前記バッテリの電圧の前回値と前記バッテリの電流の前回値とを掛けることによって前記バッテリの電力の今回値を算出し、前記バッテリの電力の今回値と前記バッテリの温度の今回値とに基づいて前記バッテリの電圧の今回値を取得し、前記外部電源の電力を前記バッテリの電圧の今回値で除することによって充電律速電流の今回値を算出し、前記バッテリのセル電圧と、前記バッテリの温度の今回値とに基づいて、前記バッテリの保護が可能な電流値である制限電流の今回値を取得し、前記充電律速電流の今回値と前記制限電流の今回値との内で小さい方の値から、前記消費電力量から取得される消費電流値を減算することによって前記バッテリの電流値の今回値を取得するとよい。
【0013】
この態様によれば、各時点の充電状態を精度良く推定することができる。
【0014】
本発明の他の態様は、外部電源(18)から供給される電力により、バッテリ(3)を充電する充電制御方法であって、前記外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得し、前記バッテリの温度、電圧、及び電流を含むバッテリ情報を取得し、前記バッテリから補機(12)に供給される電力量を消費電力量として取得し、前記バッテリ情報に基づいて前記バッテリの充電状態の初期値を取得し、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量と、前記充電状態の初期値とに基づいて、充電時間を推定する。
【0015】
この態様によれば、バッテリの温度及び消費電力を考慮して充電時間を推定するため、精度良く充電時間を推定することができる。また、様々な補機が存在する場合にも、個別の補機の消費電力を考慮せずに、補機全体の消費電力を考慮するため、演算を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成によれば、精度良く充電時間を推定することができる充電制御装置及び充電制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る充電制御装置の構成図
図2】充電制御装置が実行する充電制御方法のフロー図
図3】バッテリ温度推定処理の手順を示す説明図
図4】バッテリ電流推定処理の手順を示す説明図
図5】充電停止判定処理の手順を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る充電制御装置1の実施形態について説明する。充電制御装置1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両2に搭載されたバッテリ3の充電を制御する。
【0019】
図1に示すように、バッテリシステム4は、バッテリ3、接続口6、充電器7、充電制御装置1、及び操作端末8を有する。バッテリ3は、リチウムイオン電池等のセルを複数含む。複数のセルは、互いに直列又は並列に接続されている。バッテリ3は、車両2の駆動源としての電動モータ11、及び各種の補機12に電力を供給する。また、バッテリ3は、電動モータ11の回生電力、及び外部電源16からの電力を受けて充電される。
【0020】
バッテリ3には、冷却装置13が設けられている。冷却装置13は、例えば水である冷媒が循環する冷媒循環流路と、冷媒を冷却するラジエータ等の冷却器と、冷媒を循環させる冷媒ポンプとを有する。循環流路は、バッテリ3と熱交換可能に配置されている。バッテリ3は、冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0021】
補機12は、バッテリ3から供給される電力によって駆動する。補機12は、例えば空調装置や、電動モータ11の冷媒を循環させるポンプ、冷却装置13の冷媒を循環させるポンプ、バッテリ3を加温するためのヒータ等を含む。
【0022】
接続口6は、車両2に設けられ、充電ケーブル15を介して外部電源16と接続される。外部電源16は、交流電源である。充電器7は、車両2に搭載された、いわゆるオンボードチャージャである。充電器7は、交流電源から供給される電力をバッテリ3の充電に適した電力に変換して、バッテリ3に供給する電気回路である。充電器7は、AC/DCコンバータ(インバータ)、DC/DCコンバータ、及びコントローラ等を有する。充電器7は、接続口6及びバッテリ3と接続されている。
【0023】
充電制御装置1は、バッテリ温度取得部21、バッテリ電圧取得部22、バッテリ電流取得部23、外部電源電圧取得部24、外部電源電流取得部25、変換効率取得部26、消費電力取得部27、冷媒温度取得部28、外気温度取得部29、SOC取得部31、電池容量取得部32、充電時間推定部33を有する。充電制御装置1は、CPU、不揮発性メモリ(ROM)、及び揮発性メモリ(RAM)等を含む電子制御装置(ECU)と、電子制御装置に接続された複数のセンサとによって構成されているとよい。
【0024】
バッテリ温度取得部21は、バッテリ3に設けられ、バッテリ3の温度を取得するセンサである。バッテリ電圧取得部22は、バッテリ3に設けられ、バッテリ3の電圧を取得するセンサである。バッテリ電圧取得部22は、バッテリ3に含まれる複数のセルのそれぞれの電圧(セル電圧という)と、複数のセルによって構成されるユニット全体の電圧である全電圧(以下、全電圧をバッテリ電圧という)とを取得する。バッテリ電流取得部23は、バッテリ3に設けられ、バッテリ3の電流を取得するセンサである。バッテリ温度取得部21、バッテリ電圧取得部22、及びバッテリ電流取得部23は、バッテリ情報取得部を構成する。バッテリ温度、バッテリ電圧、及びバッテリ電流を、バッテリ情報という。
【0025】
外部電源電圧取得部24は、充電器7に設けられ、外部電源16の電圧を取得する。外部電源電流取得部25は、充電器7に設けられ、外部電源16の電流を取得する。外部電源電流取得部25は、外部電源16の最大電流を取得するとよい。変換効率取得部26は、充電器7の変換効率を取得する。変換効率は、外部電源16から充電器7に入力される電力に対する充電器7からバッテリ3に供給される電力の比である。変換効率取得部26は、例えば予め設定された所定値を変換効率に設定してもよく、外部電源16の電圧及び電流の少なくとも一方に基づいてマップを参照して変換効率を設定してもよい。外部電源電流取得部25、外部電源電圧取得部24、及び変換効率取得部26は、外部電源情報取得部を構成する。外部電源電流、外部電源電圧、変換効率を、外部電源情報という。
【0026】
消費電力取得部27は、バッテリ3から補機12に供給される電力量を消費電力量として取得する。消費電力取得部27は、バッテリ3と補機12とを接続する電力線を流れる電流を消費電流として検出する電流センサであるとよい。
【0027】
冷媒温度取得部28は、冷却装置13の冷媒循環流路に設けられ、冷媒循環通路を流れる冷媒を検出する温度センサである。外気温度取得部29は、車両2に設けられ、外気温度を取得する温度センサである。
【0028】
SOC取得部31は、SOC(State Of Charge、充電率[%])を取得する。SOC取得部31は、公知の手法を用いてSOCを取得するとよい。SOC取得部31は、例えば、バッテリ3の電圧とSOCとの関係を規定したマップを使用して、バッテリ3の電圧に基づいてSOCを取得する。マップは、バッテリ3の劣化度に応じて変更されるとよい。バッテリ3の劣化度は、例えばバッテリ3の内部抵抗に基づいて取得されるとよい。他の手法では、SOC取得部31は、バッテリ3の電流を積算することによってSOCを取得してもよい。
【0029】
電池容量取得部32は、バッテリ3の電池容量、すなわち満充電容量を取得する。電池容量取得部32は、公知の手法を用いて電池容量を取得するとよい。電池容量取得部32は、例えば、予め設定された電池容量の初期値に劣化度を掛けることによって電池容量を取得してもよい。
【0030】
充電時間推定部33は、バッテリ3の充電時間を推定する。充電時間は、現在時刻に基づいて充電完了時刻に変換されてもよい。充電時間推定部33は、後述する充電時間推定処理を実行することによって充電時間を取得する。
【0031】
充電制御装置1は、操作端末8と通信可能に接続されている。操作端末8は、入出力可能なインタフェースを有する。インタフェースは、例えばタッチパネルディスプレイであるとよい。操作端末8は、車両2に搭載され、充電制御装置1とケーブルによって接続されてもよい。また、操作端末8は、スマートフォン等の携帯端末であり、充電制御装置1と無線通信してもよい。また、操作端末8は、サーバ41を介して充電制御装置1と無線通信してもよい。
【0032】
操作端末8は、ユーザの入力操作に基づいて充電完了SOC(充電完了値)を取得する。また、操作端末8は、ユーザの入力操作に基づいて、充電開始指令を充電制御装置1に出力する。充電制御装置1は、充電器7がケーブルによって外部電源16と接続され、かつ操作端末8から充電開始指令を受け取ったときに、バッテリ3の充電を開始する。
【0033】
充電制御装置1は推定した充電時間又は充電完了時刻の情報を操作端末8に出力し、操作端末8はインタフェースに充電時間又は充電完了時刻を表示する。
【0034】
充電時間推定部33は、図2に示すフロー図に基づいて、充電時間推定処理を実行する。充電時間推定部33は、充電の開始時に充電時間推定処理を実行する。また、充電時間推定部33は、バッテリ3の充電が行われているときに、所定の時間間隔で充電時間推定処理を実行し、充電時間を更新してもよい。
【0035】
充電時間推定部33は、最初に、時点tに0を設定し、初期化する(S1)。
【0036】
次に、充電時間推定部33は、時点t=0における各種の情報を取得する(S2)。充電時間推定部33は、バッテリ温度、冷媒温度、外気温度、SOC、外部電源16の最大電流、バッテリ3の電池容量、変換効率、及び充電完了SOCの時点t=0における値、すなわち初期値を取得する。上述したように、バッテリ温度はバッテリ温度取得部21によって取得される。冷媒温度は冷媒温度取得部28によって取得される。外気温度は外気温度取得部29によって取得される。SOCはSOC取得部31によって取得される。外部電源16の最大電流は外部電源電流取得部25によって取得される。バッテリ3の電池容量は電池容量取得部32によって取得される。変換効率は変換効率取得部26によって取得される。充電完了SOCは操作端末8によって取得される。
【0037】
次に、充電時間推定部33は、時点tに+1加算して、時点tを進める(S3)。時点tが1増加することは、所定のサンプリングタイムが経過することに対応する。サンプリングタイムは、例えば1[s]に設定されるとよい。以下に説明では、ある時点tにおける値を今回値、時点tの1つ前の時点t-1における値を前回値という。
【0038】
次に、充電時間推定部33は、時点tにおけるバッテリ温度、すなわちバッテリ温度の今回値を推定する(S4)。充電時間推定部33は、図3に示すバッテリ温度推定処理によって時点tにおけるバッテリ温度部を推定する。充電時間推定部33は、例えば予め設定されたバッテリ温度予測モデルに基づいて、時点tにおけるバッテリ温度を推定する。本実施形態では、バッテリ温度予測モデルに、バッテリ温度の初期値、冷媒温度の初期値、外気温度の初期値を入力することによって、各時点のバッテリ温度を推定することができる。
【0039】
図2に示すように、充電時間推定部33は、次に、時点tにおけるバッテリ電圧、すなわちバッテリ電圧の今回値を推定する(S5)。充電時間推定部33は、図4に示すように、時点tにおけるバッテリ電流を推定するバッテリ電流推定処理の一部としてバッテリ電圧を推定する。充電時間推定部33は、バッテリ電流の前回値と、バッテリ電圧の前回値とを掛けることによってバッテリ3に入力される電力である入力電力を演算し、演算した入力電力とバッテリ温度の今回値とを予め作成されたバッテリプラントモデルに入力することによってバッテリ電圧の今回値を推定する。バッテリプラントモデルの作成においては、バッテリの電力の今回値、バッテリの電圧の前回値に加え、バッテリ容量、予め同定したSOC-OCVカーブ、バッテリ内部抵抗等を用いてもよい。
【0040】
図2に示すように、充電時間推定部33は、次に、時点tにおける充電律速電流、すなわち充電律速電流の今回値を取得する(S6)。充電時間推定部33は、図4に示すように、バッテリ電流推定処理の一部として充電律速電流を推定する。充電時間推定部33は、外部電源16の最大電流の初期値と、外部電源16の電圧の初期値と、変換効率の初期値との積によって外部電源16の電力を取得する。そして、充電時間推定部33は、外部電源16の電力をバッテリ電圧の今回値で除することによって、充電律速電流を取得する。
【0041】
図2に示すように、充電時間推定部33は、次に、時点tにおける全ての補機12の消費電流の初期値を取得する(S7)。
【0042】
次に、充電時間推定部33は、時点tにおける入力電流、すなわち入力電流の今回値を取得する(S8)。入力電流は、外部電源16からバッテリ3に供給される電流である。充電時間推定部33は、図4に示すように、バッテリ電流推定処理の一部として供給電流を推定する。充電時間推定部33は、予め設定されたセル電圧の最大値と、バッテリ温度の今回値とに基づいて予め設定された電流マップを参照し、電流制限値の今回値を取得する。電流マップには、セル電圧の最大値と、バッテリ温度と、電流制限値との関係が規定されている。電流制限値は、充電時にバッテリ3を保護するために設定される電流値である。バッテリ3の保護とは、バッテリの温度上昇等に起因する劣化や、バッテリの電析、その他の劣化要因に至ることを抑制することを含む。充電時間推定部33は、充電律速電流の今回値と、外部電源16の最大電流の初期値と、制限電流の今回値を比較して、最も小さい値を供給電流の今回値とする。
【0043】
図2に示すように、充電時間推定部33は、次に、時点tにおけるバッテリ電流、すなわちバッテリ電流の今回値を取得する(S9)。充電時間推定部33は、図4に示すように、バッテリ電流推定処理の一部としてバッテリ電流を取得する。充電時間推定部33は、供給電流の今回値から消費電流の初期値を減算することによってバッテリ電流の今回値を取得する。
【0044】
図2に示すように、充電時間推定部33は、次に、時点tにおけるSOC、すなわちSOCの今回値を取得する(S10)。充電時間推定部33は、図5に示すように、充電停止判定処理の一部としてSOCの今回値を取得する。充電時間推定部33は、バッテリ電流の今回値とサンプリングタイムとを掛けることによって、サンプリングタイムにおいてバッテリ3に供給された電荷量を取得する。サンプリングタイムにおいてバッテリ3に供給された電荷量は、バッテリ電流の今回値をサンプリングタイムで積分した積分値に対応する。そして、充電時間推定部33は、サンプリングタイムにおいてバッテリ3に供給された電荷量を電池容量で除することによって、サンプリングタイムにおけるSOCの変化量の今回値を取得する。そして、充電時間推定部33は、前回までの各サンプリングタイムにおけるSOCの変化量の総計である積算SOC変化量に、サンプリングタイムにおけるSOCの変化量の今回値を加算することによって、充電開始から時点tまでのSOCの変化量、すなわち積算SOCの今回値を取得する。そして、充電時間推定部33は、充電開始から時点tまでのSOCの変化量(積算SOC変化量)をSOCの初期値に加算することによって、SOCの今回値を取得する。他の実施形態では、充電時間推定部33は、SOCの前回値に、サンプリングタイムにおけるSOCの変化量の今回値を加算することによって、SOCの今回値を取得してもよい。
【0045】
図2に示すように、充電時間推定部33は、次に、充電停止条件が成立したか否かを判定する(S11)。図5に示すように、充電時間推定部33は、SOCの今回値が充電完了SOC以上である場合に充電停止条件が成立したと判定する。
【0046】
SOCの今回値が充電完了SOC未満であり、充電停止条件が成立しない場合(S11の判定結果がNo)、充電時間推定部33は、ステップS3~S11の処理を繰り返す。充電停止条件が成立した場合(S11の判定結果がYes)、充電時間推定部33は、時点tをサンプリングタイムに基づいて時間に変換し、充電時間を取得する(S12)。
【0047】
以上の実施形態に係る充電制御装置1及び充電制御方法によれば、バッテリ温度及び消費電力を考慮して充電時間を推定するため、精度良く充電時間を推定することができる。充電制御装置1は、各時点におけるバッテリ温度を考慮して各時点における充電状態を取得するため、充電時間を精度良く推定することができる。また、例えば充電中に外部電源から供給される電力(電流)量が変化したとしても、それを考慮して充電時間を精度良く推定することができる。なお、別の実施形態として、充電完了SOCに代わる充電完了条件として、充電開始からの経過時間や、バッテリのセル電圧あるいは電流の値を取得し、充電完了の判定を行っても良い。
【0048】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 :充電制御装置
6 :接続口
7 :充電器
8 :操作端末
11 :電動モータ
12 :補機
13 :冷却装置
16 :外部電源
21 :バッテリ温度取得部
22 :バッテリ電圧取得部
23 :バッテリ電流取得部
24 :外部電源電圧取得部
25 :外部電源電流取得部
26 :変換効率取得部
27 :消費電力取得部
28 :冷媒温度取得部
29 :外気温度取得部
31 :SOC取得部
32 :電池容量取得部
33 :充電時間推定部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から供給される電力により、バッテリを充電する充電制御装置であって、
前記外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得する外部電源情報取得部と、
前記バッテリの温度、電圧、及び電流を含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部と、
前記バッテリから補機に供給される電力量を消費電力量として取得する消費電力取得部と、
前記バッテリの充電時間を推定する充電時間推定部とを有し、
前記充電時間推定部は
記バッテリ情報に基づいて前記バッテリの充電状態の初期値を取得し、
前記バッテリの電圧の前回値と前記バッテリの電流の前回値とを掛けることによって前記バッテリの電力の今回値を算出し、
前記バッテリの電力の今回値と前記バッテリの温度の今回値とに基づいて前記バッテリの電圧の今回値を取得し、
前記外部電源の電力を前記バッテリの電圧の今回値で除することによって充電律速電流の今回値を算出し、
前記バッテリのセル電圧と、前記バッテリの温度の今回値とに基づいて、前記バッテリの保護が可能な電流値である制限電流の今回値を取得し、
前記充電律速電流の今回値と前記制限電流の今回値との内で小さい方の値から、前記消費電力量から取得される消費電流値を減算することによって前記バッテリの電流値の今回値を取得し、
前記充電状態の前回値に、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量とに基づいて演算される前記バッテリの電流値の今回値の積分値を加算することによって、所定時間経過後の前記充電状態の今回値を演算し、
前記充電状態の今回値が充電完了値以上になるまで要する時間を充電時間として設定する充電制御装置。
【請求項2】
前記充電時間推定部は、
前記バッテリの温度の前回値と、前記バッテリを冷却する冷媒の温度と、外気温度とに基づいて、所定時間経過後の前記バッテリの温度の今回値を取得する請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
外部電源から供給される電力により、バッテリを充電する充電制御方法であって、
前記外部電源の電圧を含む外部電源情報を取得し、
前記バッテリの温度、電圧、及び電流を含むバッテリ情報を取得し、
前記バッテリから補機に供給される電力量を消費電力量として取得し、
前記バッテリ情報に基づいて前記バッテリの充電状態の初期値を取得し、
前記バッテリの電圧の前回値と前記バッテリの電流の前回値とを掛けることによって前記バッテリの電力の今回値を算出し、
前記バッテリの電力の今回値と前記バッテリの温度の今回値とに基づいて前記バッテリの電圧の今回値を取得し、
前記外部電源の電力を前記バッテリの電圧の今回値で除することによって充電律速電流の今回値を算出し、
前記バッテリのセル電圧と、前記バッテリの温度の今回値とに基づいて、前記バッテリの保護が可能な電流値である制限電流の今回値を取得し、
前記充電律速電流の今回値と前記制限電流の今回値との内で小さい方の値から、前記消費電力量から取得される消費電流値を減算することによって前記バッテリの電流値の今回値を取得し、
前記充電状態の前回値に、前記バッテリの温度と、前記外部電源情報と、前記消費電力量とに基づいて演算される前記バッテリの電流値の今回値の積分値を加算することによって、所定時間経過後の前記充電状態の今回値を演算し、
前記充電状態の今回値が充電完了値以上になるまで要する時間を充電時間として設定する充電制御方法。