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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155735
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鋳造金型の加熱方法および鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/06 20060101AFI20221006BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20221006BHJP
   B22D 17/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B22C9/06 B
B22D17/22 D
B22D17/14
B22D17/22 G
B22C9/06 P
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059106
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】結城 研二
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB01
4E093NB05
4E093NB07
(57)【要約】
【課題】遮断弁のシール部での異物噛み込みを抑制する。
【解決手段】鋳造金型12の加熱方法は、鋳造を行う前に鋳造金型を加熱する加熱方法であって、鋳造金型は、キャビティ部14およびオーバーフロー部18を備え、オーバーフロー部は、ガス流路(吸引路22、23)に接続され、ガス流路とオーバーフロー部の間に弁(開閉弁V、遮断弁20)が設けられる。加熱方法は、弁を鋳造時における第1の時間よりも短い第2の時間だけ開状態として、オーバーフロー部内およびキャビティ部内のガスを吸引することによって、キャビティ部内を第2の圧力とする工程、および圧力とされたキャビティ部内に溶湯を供給して、固化させることで、鋳造金型を加熱する工程を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造を行う前に鋳造金型を加熱する加熱方法であって、
前記鋳造金型は、その内部に、
キャビティ部と、
前記キャビティ部に接続されるオーバーフロー部と、
を備え、
前記オーバーフロー部は、前記鋳造金型の内部または外部に設けられるガス流路に接続され、
前記ガス流路と前記オーバーフロー部の間に弁が設けられ、
前記鋳造を行う工程は、
前記弁を閉じた状態で、前記ガス流路内のガスを吸引して、前記ガス流路内を所定の圧力とする第1吸引工程と、
前記弁を第1の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引することによって、前記キャビティ部内を第1の圧力とする第2吸引工程と、
前記第1の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給して、固化させる工程と、
前記溶湯が固化してなる鋳造品を製品として取り出す工程と、
を有し、
前記加熱方法は、
前記弁を閉じた状態で、前記ガス流路内を前記所定の圧力とする第3吸引工程と、
前記弁を前記第1の時間よりも短い第2の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引することによって、前記キャビティ部内を第2の圧力とする第4吸引工程と、
前記第2の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給して、固化させることで、前記鋳造金型を加熱する工程と、
前記溶湯が固化してなる鋳造品を試験品として取り出す工程と、
を有する、鋳造金型の加熱方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造金型の加熱方法であって、
前記第2の圧力は、40kPa以上、90kPa以下である、鋳造金型の加熱方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鋳造金型の加熱方法であって、
前記第2の時間は、0.1秒以上、0.5秒以下である、鋳造金型の加熱方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の鋳造金型の加熱方法であって、
前記試験品を検査して、前記オーバーフロー部への前記溶湯の充填状態の良否を判定する工程を有し、
前記判定する工程において、前記充填状態が良好と判定されたときに、前記鋳造が行われる、鋳造金型の加熱方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の鋳造金型の加熱方法であって、
前記ガス流路内を前記所定の圧力とする工程、前記キャビティ部内を前記第2の圧力とする工程、前記溶湯を供給する工程、および前記鋳造品を試験品として取り出す工程は、複数回繰り返される、鋳造金型の加熱方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の鋳造金型の加熱方法であって、
前記鋳造金型は、その内部に、
前記オーバーフロー部を介して、前記キャビティ部に接続される一端を有する第1ガス流路と、
前記オーバーフロー部と前記第1ガス流路との間に配置され、前記第1ガス流路を開閉する第1弁と、
を備え、
前記鋳造金型の外部に、前記第1ガス流路の他端に接続される第2ガス流路が設けられ、
前記第1ガス流路と前記第2ガス流路との間に、第2弁が設けられ、
前記第1吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の他方を閉じた状態とし、
前記第2吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第1の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第1の圧力とし、
前記第3吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を閉じた状態とし、
前記第4吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第2の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第2の圧力とする、鋳造金型の加熱方法。
【請求項7】
鋳造の前に鋳造金型を加熱する鋳造装置であって、
前記鋳造金型は、その内部に、
キャビティ部と、
前記キャビティ部に接続されるオーバーフロー部と、
を備え、
前記鋳造装置は、
前記鋳造金型の内部または外部に設けられるガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引するガス吸引部と、
前記ガス流路と前記オーバーフロー部の間に設けられる弁と、
前記キャビティ部内に溶湯を供給する溶湯供給部と、
前記弁、前記ガス吸引部、および前記溶湯供給部を制御する制御部と、
を備え、
鋳造時において、前記制御部は、
前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を閉じた状態で、前記ガス吸引部に前記ガス流路内のガスを吸引させて、前記ガス流路内を所定の圧力とさせる第1吸引工程と、
前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を第1の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記ガス吸引部に前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引させて、前記キャビティ部内を第1の圧力とさせる第2吸引工程と、
前記溶湯供給部を制御して、前記第1の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給させて、固化させる工程と、
を実行し、
加熱時において、前記制御部は、
前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を閉じた状態で、前記ガス吸引部に前記ガス流路内のガスを吸引させて、前記ガス流路内を前記所定の圧力とさせる第3吸引工程と、
前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を前記第1の時間より短い第2の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記ガス吸引部に前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引させて、前記キャビティ部内を第2の圧力とさせる第4吸引工程と、
前記溶湯供給部を制御して、前記第2の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給させて、固化させる工程と、を実行することで、前記鋳造金型を加熱させる鋳造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の鋳造装置であって、
前記第2の圧力は、40kPa以上、90kPa以下である、鋳造装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の鋳造装置であって、
前記第2の時間は、0.1秒以上、0.5秒以下である、鋳造装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の鋳造装置であって、
前記鋳造金型は、その内部に、
前記オーバーフロー部を介して、前記キャビティ部に接続される一端を有する第1ガス流路と、
前記オーバーフロー部と前記第1ガス流路との間に配置され、前記第1ガス流路を開閉する第1弁と、
を備え、
前記鋳造装置は、
前記第1ガス流路の他端に接続され、前記鋳造金型の外部に設けられる第2ガス流路と、
前記第1ガス流路と前記第2ガス流路との間に配置される第2弁と、
を備え、
前記制御部は、前記第1弁および前記第2弁を制御して、
前記第1吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の他方を閉じた状態とし、
前記第2吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第1の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第1の圧力とし、
前記第3吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を閉じた状態とし、
前記第4吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第2の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第2の圧力とする、鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造金型の加熱方法および鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造において、製品作成のための鋳造に先立って、鋳造金型の予備加熱のための鋳造を行う手法(捨て打ち)がある(例えば、特許文献1)。捨て打ちは、鋳造金型のキャビティ内に溶湯を注入して固化することで、鋳造金型を加熱するものであり、このとき固化した溶湯(鋳造品)は、製品としては用いられない。
【0003】
鋳造金型はキャビティの下流にオーバーフロー部を有する。このオーバーフロー部は、鋳造において、製品部に凝固収縮による欠陥が生じないように溶湯を充填する押し湯機能やガスが混入した溶湯を製品部から除去する機能等、多様な機能を備えている。しかし、オーバーフロー部は、鋳造品の離型時に金型に貼り付いて折損し、金型に残存し易い。このため、鋳造品と共に、オーバーフロー部が完全に離型されているかの確認(離型の確認)が必要となる。オーバーフロー部(の断片)が金型内に残存すると、次の鋳造時において、例えば、金型に挟まれて、鋳造の障害となる等の不備が生じる可能性がある。この確認のためには、鋳造時にオーバーフロー部が溶湯によって充填されていることが必要である。つまり、鋳造時にオーバーフロー部が未充填だと、離型の確認時に離型の不備と未充填の区別が形状からだと付き難くなる。この点、捨て打ちにおいても、残存するオーバーフロー部によって、その後の工程が不備となることを避ける必要がある。すなわち、捨て打ちであっても、オーバーフロー部の離型を確認すること、すなわち、鋳造時にオーバーフロー部が充填されていることが必要となる。
【0004】
ところで、溶湯内へのガスの混入に起因する欠陥(例えば、巣)の発生を抑制するために、キャビティ内のガスを吸引した後に、鋳造を行う減圧鋳造方式が用いられる。ここで、減圧鋳造方式、特に、キャビティ部を真空近くまで減圧する高真空鋳造方式においては、キャビティ部内への大気のリークを防ぐため、金型には厳重なシールが施されている。このため、減圧鋳造方式において、キャビティ部内にガスが残存すると、オーバーフロー部内での溶湯の充填を阻害することになる。すなわち、ガスが残存する箇所には、溶湯が充填されない。すなわち、減圧鋳造方式の鋳造金型においては、捨て打ちであっても、オーバーフロー部の充填のためにキャビティ内を減圧することが望ましい。
【0005】
ここで、捨て打ちは、金型が十分に加熱されていない状態で行われることから、粉バリ(溶湯紛)が発生し易い。このため、捨て打ち後の減圧時において、粉バリが減圧遮断弁(遮断弁)の周囲に付着する等して、遮断弁のシール部に噛みこまれる可能性がある。減圧鋳造方式では、オーバーフロー部の下流側に遮断弁が設けられ、減圧路(ガス流路)内への溶湯の侵入を防止している。遮断弁のシール部が異物を噛み込むと、溶湯の充填時に、遮断弁が完全に閉じず、減圧路内に溶湯が侵入してしまう畏れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5717692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、遮断弁のシール部での異物噛み込みの抑制を図った鋳造金型の加熱方法および鋳造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る鋳造金型の加熱方法は、鋳造を行う前に鋳造金型を加熱する加熱方法であって、前記鋳造金型は、その内部に、キャビティ部と、前記キャビティ部に接続されるオーバーフロー部と、を備え、前記オーバーフロー部は、前記鋳造金型の内部または外部に設けられるガス流路に接続され、前記ガス流路と前記オーバーフロー部の間に弁が設けられ、前記鋳造を行う工程は、前記弁を閉じた状態で、前記ガス流路内のガスを吸引して、前記ガス流路内を所定の圧力とする第1吸引工程と、前記弁を第1の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引することによって、前記キャビティ部内を第1の圧力とする第2吸引工程と、前記第1の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給して、固化させる工程と、前記溶湯が固化してなる鋳造品を製品として取り出す工程と、を有し、前記加熱方法は、前記弁を閉じた状態で、前記ガス流路内を前記所定の圧力とする第3吸引工程と、前記弁を前記第1の時間よりも短い第2の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引することによって、前記キャビティ部内を第2の圧力とする第4吸引工程と、前記第2の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給して、固化させることで、前記鋳造金型を加熱する工程と、前記溶湯が固化してなる鋳造品を試験品として取り出す工程と、を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る鋳造装置は、鋳造金型を備えた鋳造装置であって、前記鋳造金型は、その内部に、キャビティ部と、前記キャビティ部に接続されるオーバーフロー部と、を備え、前記鋳造装置は、前記鋳造金型の内部または外部に設けられるガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引するガス吸引部と、前記ガス流路と前記オーバーフロー部の間に設けられる弁と、前記キャビティ部内に溶湯を供給する溶湯供給部と、前記弁、前記ガス吸引部、および前記溶湯供給部を制御する制御部と、を備え、鋳造時において、前記制御部は、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を閉じた状態で、前記ガス吸引部に前記ガス流路内のガスを吸引させて、前記ガス流路内を所定の圧力とさせる第1吸引工程と、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を第1の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記ガス吸引部に前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引させて、前記キャビティ部内を第1の圧力とさせる第2吸引工程と、前記溶湯供給部を制御して、前記第1の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給させて、固化させる工程と、を実行し、加熱時において、前記制御部は、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を閉じた状態で、前記ガス吸引部に前記ガス流路内のガスを吸引させて、前記ガス流路内を前記所定の圧力とさせる第3吸引工程と、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を前記第1の時間より短い第2の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記ガス吸引部に前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引させて、前記キャビティ部内を第2の圧力とさせる第4吸引工程と、前記溶湯供給部を制御して、前記第2の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給させて、固化させる工程と、を実行することで、前記鋳造金型を加熱させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遮断弁のシール部での異物噛み込みの抑制を図った鋳造金型の加熱方法および鋳造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る鋳造装置を表す図である。
図2】実施形態に係る鋳造方法を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る鋳造金型の加熱方法および鋳造装置を説明する。
【0013】
図1に示す鋳造装置10は、鋳造金型12を備える。鋳造金型12は、図の左右方向(水平方向)に互いに対向して配置される固定金型12aと可動金型12bとから構成される。可動金型12bは、固定金型12aに対して、当接および離間可能に、水平方向に移動する。固定金型12aと可動金型12bの互いに対向する合わせ面には、キャビティ部14を構成する凹部14a、14bがそれぞれ形成される。固定金型12aに可動金型12bを当接させることで、鋳造金型12は、閉じられ、その内部にキャビティ部14が形成される。
【0014】
鋳造装置10は、溶湯供給部16を有する。溶湯供給部16は、固定金型12a側に設けられ、キャビティ部14内に溶湯を供給する。可動金型12bには、キャビティ部14の下流にオーバーフロー部18が形成される。キャビティ部14に供給された溶湯はオーバーフロー部18に達して、キャビティ部14およびオーバーフロー部18の内部で固化する。固化した溶湯は、鋳造品として、鋳造金型12から取り出される。
【0015】
鋳造金型12は、遮断弁20、および吸引路22を有する。遮断弁20は、オーバーフロー部18と吸引路22の間に設けられ、吸引路22を遮断して、オーバーフロー部18から吸引路22への溶湯の侵入を防止する。
【0016】
吸引路22は、開閉弁V、吸引路23、および切替弁24を介して、ガス吸引部26に接続される。ガス吸引部26は、切替弁24、吸引路23、開閉弁V、吸引路22、およびオーバーフロー部18を介して、キャビティ部14内のガスを吸引する。ガス吸引部26は、タンク26aおよび真空ポンプ26bを有し、真空ポンプ26bによって減圧されたタンク26aによって、キャビティ部14内のガスを吸引する。キャビティ部14への溶湯の供給の前に、キャビティ部14内のガスを吸引しておくことで、溶湯へのガスの混入による鋳造品の欠陥(例えば、巣)の発生を低減することができる。
【0017】
切替弁24には、ガス吸引部26と共に、エア供給部28が接続される。エア供給部28は、切替弁24、吸引路23、開閉弁V、吸引路22、およびオーバーフロー部18を介して、開かれた状態の鋳造金型12内にエアを流すことで(エアブロー)、吸引路22等をクリーニングする。開閉弁Vは、吸引路23と吸引路22との間を開閉する。切替弁24は、吸引路22に対するガス吸引部26およびエア供給部28の接続を切り替える。
【0018】
鋳造装置10は、圧力検出器30および撮像部32を備える。圧力検出器30は、吸引路23内に設けられ、ガス吸引部26によるガスの吸引およびエア供給部28からのエアの供給によって変動する吸引路23内の気体の圧力を検出する。撮像部32は, 鋳造金型12から取り出された鋳造品、特に、そのオーバーフロー部18を撮像し、オーバーフロー部18まで溶湯が充填されているか否かの検査に用いられる。なお、本実施形態では、撮像部32を用いて、オーバーフロー部18の欠損を検知しているが、撮像部32に替えて、オーバーフロー部18の欠損を検知できる検知手段を利用できる。検知手段として、通常の鋳造に用いられている検知手段(例えば、リミットスイッチ)を用いることができる。
【0019】
鋳造装置10は、制御部34、記憶部36、および入出力部38を有する。制御部34は、ハードウェア(例えば、プロセッサ)とソフトウェア(例えば、プログラム)から構成され、溶湯供給部16、遮断弁20、開閉弁V、切替弁24、ガス吸引部26、エア供給部28を制御し、圧力検出器30および撮像部32からの信号を受信する。記憶部36は、例えば、ハードディスク、半導体メモリであり、後述の第1の時間T1、第2の時間T2を記憶する。入出力部38は、制御部34とオペレータとの間で情報を入出力する装置、例えば、キーボード、および表示装置である。
【0020】
鋳造装置10は、製品としての鋳造品を作成する鋳造工程に先立って、鋳造金型12を予備加熱するための予備加熱工程を行う鋳造方法を実施する。
【0021】
図2は、実施形態に係る鋳造方法を表すフロー図である。鋳造方法は、予備加熱工程と、鋳造工程に区分される。このうち、予備加熱工程が本実施形態に係る鋳造金型の加熱方法に対応する。鋳造工程は、試験品を得る工程ではなく、製品を得る工程(通常鋳造工程、本鋳造工程)である。予備加熱工程は、その後の鋳造工程を前提としている。このため、以下では、判り易さのために、予備加熱工程および鋳造工程を含む鋳造方法として、纏めて説明する。
【0022】
ここでは、実際に実行される順番とは異なるが、判り易さのために、鋳造工程を先に説明する。鋳造工程は、製品としての鋳造品を作成するための工程である。制御部34は、開閉弁Vおよびガス吸引部26を制御して、開閉弁Vを閉じた状態で、吸引路23内を所定の圧力P0とする(第1吸引工程、ステップS11)。このとき遮断弁20は、開いた状態としておくことが好ましい。遮断弁20を開いておくことで、開閉弁Vのみの開閉により、オーバーフロー部18内およびキャビティ部14内のガスを吸引させることが可能となる。
【0023】
この所定の圧力P0は、吸引路23内に残留するガスがキャビティ部14からのガスの吸引を阻害せず、円滑に吸引を行うために設定される。この圧力P0は、基本的には、真空ポンプ26bがタンク26aを減圧したときの圧力である。タンク26aの容積は、通例、吸引路23の容積より十分に大きいため、タンク26aが吸引路23内のガスを吸引しても、タンク26a内の圧力は、実質的には変化しない。
【0024】
所定の圧力P0は、例えば、10~40kPa-abs(絶対圧)である。ここでは、所定の圧力P0、および後述の第1の圧力P1、第2の圧力P2は、大気圧よりも圧力が小さい、いわゆる、負圧の状態である。
【0025】
その後、制御部34は、開閉弁Vおよびガス吸引部26を制御して、開閉弁Vを第1の時間T1だけ開状態として、所定の圧力P0とされた吸引路23(および吸引路22)を介して、ガス吸引部26によって、オーバーフロー部18内およびキャビティ部14内のガスを吸引させる(第2吸引工程、ステップS12)。既述のように、遮断弁20が予め開かれていれば、このときの遮断弁20の操作は不要となる。ここでは、減圧されたタンク26aによって、オーバーフロー部18内およびキャビティ部14内のガスが吸引される。この結果、キャビティ部14内は、第1の圧力P1となる(ステップS12)。
【0026】
制御部34は、遮断弁20を閉じた後に、溶湯供給部16を制御して、第1の圧力P1とされたキャビティ部14内に溶湯を供給して、固化させる(ステップS13)。溶湯の供給前に遮断弁20を閉じることで、吸引路22等への溶湯の侵入が防止される。その後、溶湯が固化してなる鋳造品を製品として取り出す(ステップS14)。
【0027】
一方、予備加熱工程は、基本的に、製品としての鋳造品を作成する前に、鋳造金型12を予備加熱するための鋳造を行う(捨て打ち)工程である。制御部34は、開閉弁Vおよびガス吸引部26を制御して、開閉弁Vを閉じた状態で、吸引路22内を所定の圧力P0とする(第3吸引工程、ステップS1)。このとき、鋳造工程と同様、遮断弁20は、開いた状態としておくことが好ましい。この所定の圧力P0は、鋳造工程での所定の圧力P0と同様の意義を有し、同一とすることができる。但し、予備加熱工程と鋳造工程で圧力を異ならせてもよい。
【0028】
その後、制御部34は、開閉弁Vおよびガス吸引部26を制御して、開閉弁Vを第1の時間T1よりも短い第2の時間T2(T2<T1)だけ開状態として、所定の圧力P0とされた吸引路22を介して、ガス吸引部26によってオーバーフロー部18内およびキャビティ部14内のガス(当初は、基本的に大気圧)を吸引させる(第4吸引工程、ステップS2)。この結果、キャビティ部14内は、第2の圧力P2(負圧)となる(第4吸引工程、ステップS2)。このとき、第2の圧力P2は、第1の圧力P1より大きい(P2>P1)。
【0029】
制御部34は、遮断弁20を閉じた後に、溶湯供給部16を制御して、第2の圧力P2とされたキャビティ部14内に溶湯を供給して、固化させる(ステップS3)。鋳造工程と同様、溶湯の供給前に遮断弁20を閉じることで、吸引路22等への溶湯の侵入が防止される。その結果、鋳造金型12は、予備加熱される。その後、溶湯が固化してなる鋳造品を試験品として取り出す(ステップS4)。この予備加熱工程、すなわち、ガス吸引部26内を所定の圧力P0とする第3吸引工程、キャビティ部14内を第2の圧力P2とする第4吸引工程、溶湯を供給する工程、および鋳造品を試験品として取り出す工程を複数回繰り返し、鋳造金型12をより確実に加熱することができる。
【0030】
取り出された試験品は、撮像部32によって、撮像され、撮像結果に基づいて、そのオーバーフロー部18も含めて、検査される(ステップS5)。すなわち、鋳造品の全体(キャビティ部14に対応する製品部、およびオーバーフロー部18)が離型しているか否かが、判定される。この検査の結果、鋳造品の離型が不十分であれば、鋳造品の断片が金型内部に残留しているおそれがある。このため、次の鋳造工程を取り止め(ステップS6、No)、鋳造金型12のクリーニングが行われる。
【0031】
既述のように、本実施形態では、ステップS2とS12において、開閉弁Vを開く時間(第1の時間T1、第2の時間T2)が異なる。予備加熱時での第2の時間T2は、鋳造時の第1の時間T1より短い。すなわち、粉バリが比較的発生し易い、捨て打ち時において、開閉弁Vが開いている時間(ガスを吸引している時間)が短い。この結果、遮断弁20のシール部への粉バリ等の異物の付着や挟み込みによるシール不良の発生を抑制できる。すなわち、遮断弁20を閉じることによって、溶湯が吸引路22に侵入することを確実に防止できる。加えて予備加熱時において、キャビティ部14およびオーバーフロー部18を吸引する時間、結局は、予備加熱に要する時間を低減できる。
【0032】
一方、第2の時間T2が短すぎると、第2の圧力P2が大きくなり(大気圧との差が小さい)、その後に溶湯を供給したときに、オーバーフロー部18に溶湯が充填されず、オーバーフロー部18を用いた離型の良否の検査がし難くなる。このため、第2の時間T2をオーバーフロー部18に溶湯が充填される範囲の比較的短い時間としている。この第2の時間T2を、例えば、0.1秒以上、0.5秒以下として、第2の圧力P2を、例えば、40kPa以上、90kPa以下とすることによって、オーバーフロー部18を用いた検査を可能としつつ、予備加熱に要する時間を低減することができる。大気圧は、約101kPaであるから、40kPa-abs~90kPa-absの第2の圧力P2は、鋳造金型12内(基本的に、キャビティ部14とオーバーフロー部18内)のガスの40%~90%、例えば、80%を吸引することを意味する。
【0033】
一方、鋳造工程では、オーバーフロー部18に溶湯が充填されるのみでは足りず、鋳造品の欠陥を低減するため、溶湯内へのガスの混入を抑制する必要がある。このため、第1の時間T1を1秒程度とより長くして、第1の圧力P1を、例えば、10kPa-abs程度以下まで低減している。
【0034】
以上のように、本実施形態では、予備加熱のための捨て打ちにおいて、オーバーフロー部18の充填を可能とする短い第2の時間T2だけ遮断弁20を開き、ガス吸引部26によって、キャビティ部14とオーバーフロー部18内のガス(当初は、基本的に大気圧)を吸引させる。この結果、粉バリが比較的発生し易い捨て打ち時において、開閉弁Vが開いている時間(ガスの吸引時間)が短いため、遮断弁20のシール部への粉バリ等の異物の付着や挟み込みによるシール不良を抑制できる。加えて予備加熱の時間の短縮を図りつつ、オーバーフロー部18を用いる鋳造品の離型の確認が可能となる。
【0035】
[変形実施形態]
本発明についての実施形態を上述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。例えば、実施形態では、開閉弁Vを開閉することによって、ガスの吸引を開始、停止させている。これに対して、開閉弁Vに替えて、遮断弁20を開閉することによって、ガスの吸引を開始、停止させてもよい。
【0036】
この場合、例えば、次のように工程が進められる。例えば、開閉弁Vを開いた状態としておく。そして、ステップS1、S11では、制御部34は、遮断弁20およびガス吸引部26を制御して、遮断弁20を閉じた状態で、吸引路23内を所定の圧力P0とする。そして、ステップS2、S12では、制御部34は、遮断弁20およびガス吸引部26を制御して、遮断弁20を第1の時間T1または第2の時間T2だけ開状態として、所定の圧力P0とされた吸引路23(および吸引路22)を介して、ガス吸引部26によって、オーバーフロー部18内およびキャビティ部14内のガスを吸引させる。なお、ステップS3、S13での溶湯供給工程では、その前に遮断弁20が閉じられているため、遮断弁20の操作は不要となる。
【0037】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0038】
[1]鋳造金型の加熱方法は、鋳造を行う前に鋳造金型(12)を加熱する加熱方法であって、前記鋳造金型は、その内部に、キャビティ部(14)と、前記キャビティ部に接続されるオーバーフロー部(18)と、を備え、前記オーバーフロー部は、前記鋳造金型の内部または外部に設けられるガス流路(吸引路22、23)に接続され、前記ガス流路と前記オーバーフロー部の間に弁(開閉弁V、遮断弁20)が設けられ、前記鋳造を行う工程は、前記弁を閉じた状態で、前記ガス流路内のガスを吸引して、前記ガス流路内を所定の圧力(P0)とする第1吸引工程(ステップS11)と、前記弁を第1の時間(T1)だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引することによって、前記キャビティ部内を第1の圧力(P1)とする第2吸引工程(ステップS12)と、前記第1の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給して、固化させる工程(ステップS13)と、前記溶湯が固化してなる鋳造品を製品として取り出す工程(ステップS14)と、を有し、前記加熱方法は、前記弁を閉じた状態で、前記ガス流路内を前記所定の圧力とする第3吸引工程(ステップS1)と、前記弁を前記第1の時間よりも短い第2の時間(T2)だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引することによって、前記キャビティ部内を第2の圧力(P2)とする第4吸引工程(ステップS2)と、前記第2の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給して、固化させることで、前記鋳造金型を加熱する工程(ステップS3)と、前記溶湯が固化してなる鋳造品を試験品として取り出す工程(ステップS4)と、を有する。これにより、粉バリ等の異物が比較的発生し易い捨て打ち時において、ガスの吸引時間が短いため、遮断弁のシール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0039】
[2]前記第2の圧力は、40kPa以上、90kPa以下である。これにより、シール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0040】
[3]前記第2の時間は、0.1秒以上、0.5秒以下である。これにより、シール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0041】
[4]鋳造金型の加熱方法は、前記試験品を検査して、前記オーバーフロー部への前記溶湯の充填状態の良否を判定する工程(ステップS5)を有し、前記判定する工程において、前記充填状態が良好と判定されたときに(ステップS6、YES)、前記鋳造が行われる。
【0042】
[5]鋳造金型の加熱方法は、前記ガス流路内を前記所定の圧力とする工程、前記キャビティ部内を前記第2の圧力とする工程、前記溶湯を供給する工程、および前記鋳造品を試験品として取り出す工程は、複数回繰り返される。これにより、複数回の捨て打ち時において、遮断弁のシール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0043】
[6]前記鋳造金型は、その内部に、前記オーバーフロー部を介して、前記キャビティ部に接続される一端を有する第1ガス流路(吸引路22)と、前記オーバーフロー部と前記第1ガス流路との間に配置され、前記第1ガス流路を開閉する第1弁(遮断弁20)と、を備え、前記鋳造金型の外部に、前記第1ガス流路の他端に接続される第2ガス流路(吸引路23)が設けられ、前記第1ガス流路と前記第2ガス流路との間に、第2弁(開閉弁V)が設けられ、前記第1吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の他方を閉じた状態とし、前記第2吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第1の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第1の圧力とし、前記第3吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を閉じた状態とし、前記第4吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第2の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第2の圧力とする。これにより、鋳造金型の内外の第1弁および第2弁を操作して、捨て打ちおよび鋳造を行える。
【0044】
[7]鋳造装置(10)は、鋳造の前に鋳造金型を加熱する鋳造装置であって、前記鋳造金型は、その内部に、キャビティ部と、前記キャビティ部に接続されるオーバーフロー部と、を備え、前記鋳造装置は、前記鋳造金型の内部または外部に設けられるガス流路を介して、前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引するガス吸引部(26)と、前記ガス流路と前記オーバーフロー部の間に設けられる弁と、前記キャビティ部内に溶湯を供給する溶湯供給部(16)と、前記弁、前記ガス吸引部、および前記溶湯供給部を制御する制御部(34)と、を備え、鋳造時において、前記制御部は、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を閉じた状態で、前記ガス吸引部に前記ガス流路内のガスを吸引させて、前記ガス流路内を所定の圧力とさせる第1吸引工程と、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を第1の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記ガス吸引部に前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引させて、前記キャビティ部内を第1の圧力とさせる第2吸引工程と、前記溶湯供給部を制御して、前記第1の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給させて、固化させる工程と、を実行し、加熱時において、前記制御部は、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を閉じた状態で、前記ガス吸引部に前記ガス流路内のガスを吸引させて、前記ガス流路内を前記所定の圧力とさせる第3吸引工程と、前記ガス吸引部および前記弁を制御して、前記弁を前記第1の時間より短い第2の時間だけ開状態として、前記所定の圧力とされた前記ガス流路を介して、前記ガス吸引部に前記オーバーフロー部内および前記キャビティ部内のガスを吸引させて、前記キャビティ部内を第2の圧力とさせる第4吸引工程と、前記溶湯供給部を制御して、前記第2の圧力とされた前記キャビティ部内に溶湯を供給させて、固化させる工程と、を実行することで、前記鋳造金型を加熱させる。これにより、粉バリ等の異物が比較的発生し易い捨て打ち時において、ガスの吸引時間が短いため、遮断弁のシール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0045】
[8]前記第2の圧力は、40kPa以上、90kPa以下である。これにより、シール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0046】
[9]前記第2の時間は、0.1秒以上、0.5秒以下である。これにより、シール部への異物の付着や挟み込み等を抑制できる。
【0047】
[10]前記鋳造金型は、その内部に、前記オーバーフロー部を介して、前記キャビティ部に接続される一端を有する第1ガス流路と、前記オーバーフロー部と前記第1ガス流路との間に配置され、前記第1ガス流路を開閉する第1弁と、を備え、前記鋳造装置は、前記第1ガス流路の他端に接続され、前記鋳造金型の外部に設けられる第2ガス流路と、前記第1ガス流路と前記第2ガス流路との間に配置される第2弁と、を備え、前記制御部は、前記第1弁および前記第2弁を制御して、前記第1吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の他方を閉じた状態とし、前記第2吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第1の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第1の圧力とし、前記第3吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開き、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を閉じた状態とし、前記第4吸引工程において、前記第1弁および前記第2弁の前記一方を開いた状態で、前記第1弁および前記第2弁の前記他方を前記第2の時間だけ開状態として、前記キャビティ部内を前記第2の圧力とする。これにより、鋳造金型の内外の第1弁および第2弁を操作して、捨て打ちおよび鋳造を行える。
【符号の説明】
【0048】
10…鋳造装置 12…鋳造金型
14…キャビティ部 16…溶湯供給部
18…オーバーフロー部 20…遮断弁
22、23…吸引路 24…切替弁
26…ガス吸引部 28…エア供給部
30…圧力検出器 32…撮像部
34…制御部 36…記憶部
V…開閉弁
図1
図2