(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155742
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ルーバー装置、及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20221006BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059117
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】板垣 惇平
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA25
2H199DA26
2H199DA27
2H199DA29
2H199DA32
2H199DA33
3D344AA20
3D344AA21
3D344AC25
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】 ヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置において、視認者の視点高さ位置に応じた、ルーバーの傾斜角の調整を容易化する。
【解決手段】 ヘッドアップディスプレイ装置等の光出射部26に設けられるルーバー装置は、光出射部から出射される画像の表示光を透過する光透過部54、及び厚み方向に対する傾斜角が異なる複数のルーバー52を備えるルーバー構造51と、ヘッドアップディスプレイ装置の表示像を視認する視認者の視点高さ位置に対応して、ルーバー構造51を、第1の回転方向C1、又は第1の回転方向C1とは反対の第2の回転方向C2に回転させる駆動部59と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置(20)の光出射部(26)に設けられるルーバー装置(50)であって、
前記光出射部(26)から出射される画像の表示光を透過する光透過部(54)、及び厚み方向に対する傾斜角(θn)が異なる複数のルーバー(52)を備えるルーバー構造(51)と、
前記ヘッドアップディスプレイ装置(20)の表示像を視認する観察者の目の高さ位置に対応して、前記ルーバー構造(51)を、第1の回転方向(C1)、又は前記第1の回転方向(C1)とは反対の第2の回転方向(C2)に回転させるアクチュエータ(59)と、
により構成されるルーバー装置(50)。
【請求項2】
前記アクチュエータ(59)は、
前記目の高さ位置が高い場合には、前記ルーバー構造(51)の前方が上がりかつ後方が下がるように、前記ルーバー構造(51)を前記第1の回転方向(C1)に回転させ、
目の高さ位置が低い場合には、前記ルーバー構造(51)の前方が下がりかつ後方が上がるように、前記ルーバー構造(51)を前記第2の回転方向(C2)に回転させる、
請求項1に記載のルーバー装置(50)。
【請求項3】
前記ルーバーの傾斜角(θn)は、前記車両の前方側が小さく、後方側が大きく設定される、
請求項1又は2に記載のルーバー装置(50)。
【請求項4】
前記アクチュエータ(59)は、
前記目の高さ位置の検出情報、
及び、
前記ヘッドアップディスプレイ装置から供給される前記目の高さ位置を推定可能な情報の少なくとも一方に基づいて、
前記目の高さ位置に対応するように、前記ルーバー構造を自動的に回転させる、
請求項1又は2に記載のルーバー装置(50)。
【請求項5】
画像を表示する空間光変調素子(22)と、
前記画像の表示光を導光するリレー光学系(23)と、
前記表示光を出射する光出射部(26)と、
画像表示を制御する制御部(30)と、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のルーバー装置(50)と、
を有するヘッドアップディスプレイ装置(20)。
【請求項6】
画像を表示する空間光変調素子(22)と、
前記画像の表示光20aを導光するリレー光学系(23)と、
前記表示光20aを出射する光出射部(26)、
画像表示を制御する制御部(30)と、
請求項4に記載のルーバー装置(50)と、
を有し、
前記リレー光学系(23)は、車両のフロントウインドウに、画像の表示光を投射する、回転可能な、又は、位置が固定の曲面ミラー(29)を有し、
前記制御部(30)は、
前記曲面ミラー(29)が回転可能である場合は、観察者の目の高さ位置に応じて、前記曲面ミラー(29)を回転させ、その回転情報を、前記目の高さ位置を推定可能な情報として、前記ルーバー装置(50)に供給し、
前記曲面ミラーの位置が固定である場合は、観察者の目の高さ位置に応じて、前記画像表示部(22)における画像の表示位置を変更し、それらの変更情報を、前記目の高さ位置を推定可能な情報として、前記ルーバー装置(50)に供給する、
ヘッドアップディスプレイ装置(20)。
【請求項7】
前記光出射部(26)は、前記表示光を出射する開口を覆う透光カバー(27)を有し、
前記ルーバー構造(31)は、前記透光カバー(27)の少なくとも一部を覆うように設けられ、
前記透光カバー(27)の、前記ルーバー構造(31)によって覆われない部分には、遮光部(55)が形成されている、
請求項5又は6に記載のヘッドアップディスプレイ装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迷光を抑制する機能をもつルーバー装置、及び、車両(乗り物)のウインドシールドやコンバイナ等の被投影部材に画像の表示光を投影(投射)し、運転者の前方等に虚像を表示するヘッドアップディスプレイ(Head-up Display:HUD)装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
迷光対策として、ルーバー装置を採用したHUD装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1の[0046]には、「この場合、
図7に示すように、ルーバー5を各々異なる傾斜角度に調整可能な駆動手段6と、この駆動手段6を制御する制御手段7と、を備え、制御手段7は、アイポイントEPを計測する視点検出手段8からの視点情報を入力し、各ルーバー5が所望の傾斜角度になるように駆動手段6を制御するように構成することで実現できる。」と記載されている。
【0004】
また、特許文献1の[0047]には、「なお、駆動手段6は、通電により駆動力を発生するステッピングモータの回動を利用して、ルーバー5の傾斜角度を変化させることができる。なお、駆動手段6は、リードスクリュータイプ、ラックアンドピニオンタイプ、またはステッピングモータが、ギア等を介して各ルーバー5の軸部を回動させる構成であっても適用できる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、[0047]の末尾において、「・・・ステッピングモータが、ギア等を介して各ルーバー5の軸部を回動させる構成であっても適用できる。」と記載されているように、各ルーバーの傾斜角を、個別に調整する構成が想定されているが、この場合、高精度な調整には、ある程度の手間がかかるのは否めない。また、駆動装置等の大型化や複雑化を抑制することも課題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載されない種々の態様を包含し得る。
【0008】
本開示の概要は、例えばヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置において、視認者の視点高さ位置に応じた、ルーバーの傾斜角の調整を容易化することである。
【0009】
したがって、本明細書に開示される第1の態様におけるルーバー装置は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置の光出射部に設けられるルーバー装置であって、光出射部から出射される画像の表示光を透過する光透過部、及び厚み方向に対する傾斜角が異なる複数のルーバーを備えるルーバー構造と、ヘッドアップディスプレイ装置の表示像を視認する観察者の目の高さ位置に対応して、ルーバー構造を、第1の回転方向、又は第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転させるアクチュエータと、により構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用表示システムの構成を示す図であって、自動車に採用された態様を示す。
【
図2】
図2は、上記実施形態における、目の高さ位置に応じたルーバー構造(可動ルーバー)の角度例を示す図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態のルーバー構造の特徴の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、ルーバー構造の具体例について説明するための図である。
【
図5】
図5は、表示光の出射角分布の目位置の高さ依存性について説明するための図である。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態に係る、車両用表示システムのブロック図である。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態に従って、観察者の目高さに基づき、ルーバー構造の角度を設定する動作を実行する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されるものではない。以下の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0012】
図1を参照する。
図1は、観察者(典型的には、車両1の運転者等の車両1の乗員である。)700の目の高さ位置710が異なる場合の虚像表示について説明するための図である。
図1では、車両用表示システム10によって、画像(虚像)Vが、観察者700の前方に表示されている。本実施形態の車両用表示システム10は、表示光20aをフロントウインドウ(被投影部)60に向けて出射するヘッドアップディスプレイ装置(以下では、HUD装置とも呼ぶ。)20、HUD装置20とフロントウインドウ60との間の表示光20aの光路上に配置されるルーバー装置50、観察者700の目の高さ位置710を検出する目位置検出部411、HUD装置20及びルーバー装置50を制御する表示制御装置30により少なくとも構成される。広義的には、車両用表示システム10は、フロントウインドウ60を含んでいてもよい。
【0013】
図1において、X方向は、運転者から見た左右方向(車両の幅方向)であり、+X方向は観察者700(運転者等)から見て右方であり、-X方向は左方である。Y方向は、車両の高さ方向(単に高さ方向という)であり、+Y方向は観察者700(運転者等)から見て上方であり、-Y方向は下方である。また、X方向及びY方向に直交するZ軸方向は、運転者から見た前後方向(車両の前後方向)であり、+Z方向は観察者700(運転者等)から見て前方であり、-Z方向は後方である。なお、
図1のように、車両1の左方(-X方向)から見た際の、時計周り方向を第1の回転方向C1、反時計周り方向を第2の回転方向C2とする。
【0014】
HUD装置20は、表示光20aをフロントウインドウ(被投影部材の一例である。)60に向けて出射し、フロントウインドウ60は、HUD装置20が表示する画像の表示光20aをアイボックスEへ反射する。HUD装置20は、車両1に関する情報(以下、車両情報と言う。)だけでなく、車両情報以外の情報も統合的に車両1の乗員(前記乗員は、典型的には、車両1の運転者である。)に報知する。なお、車両情報は、車両1自体の情報だけでなく、車両1の運行に関連した車両1の外部の情報も含んでいてもよい。
【0015】
また、本実施形態の説明で用いる「アイボックス」とは、(1)観察者の目の位置700(左目及び/又は右目)が領域内では画像の虚像Vの全部が視認でき、領域外では画像の虚像Vの少なくとも一部分が視認されない領域、(2)領域内では画像の虚像Vの少なくとも一部が視認でき、領域外では画像の虚像Vの一部分も視認されない領域、(3)領域内では画像の虚像Vの少なくとも一部が所定の輝度以上で視認でき、領域外では画像の虚像Vの全体が前記所定の輝度未満である領域、又は(4)HUD装置20が立体視可能な虚像Vを表示可能である場合、虚像Vの少なくとも一部が立体視でき、領域外では虚像Vの一部分も立体視されない領域である。すなわち、観察者が目(両目)をアイボックスE外に配置すると、観察者は、画像の虚像Vの全体が視認できない、画像の虚像Vの全体の視認性が非常に低く知覚しづらい、又は画像の虚像Vが立体視できない。前記所定の輝度とは、例えば、アイボックスの中心で視認される画像の虚像の輝度に対して1/50程度である。「アイボックス」は、HUD装置20が搭載される車両で観察者の視点位置の配置が想定されるエリア(アイリプスとも呼ぶ。)と同じ、又は前記アイリプスの大部分(例えば、80%以上。)を含むように設定される。
【0016】
HUD装置20は、例えば、画像を生成する空間光変調素子22、空間光変調素子22が表示する画像の光(表示光20a)を、被投影部(フロントウインドウ60)に向ける平面鏡28及び曲面鏡29等のリレー光学系23、1つ又は複数のリレー光学系23を動作させる第1のアクチュエータ24、HUD装置20とフロントウインドウ60との間の表示光20a上に配置され、第2のアクチュエータ(駆動部)59により符号AXを軸に回転するルーバー装置50、空間光変調素子22、第1のアクチュエータ24、及び第2のアクチュエータ(駆動部)59を制御する表示制御装置30、及びこれらを収納する筐体25により構成される。
【0017】
筐体25は、インストルメントパネル2の車両1の駆動源(エンジンやモータ)側に配設される車体フレーム(不図示)等に係合される係合部(不図示)を有し、かつ黒色の遮光性合成樹脂等で形成される上ケース(不図示)及び前記下ケースにより構成される。HUD装置20が車両1に搭載された状態における前記上ケースの前後方向の略中間には、HUD開口部(以下では、光出射部とも呼ぶ。)26が設けられている。HUD開口部26は、例えば、透明の透光性合成樹脂等で形成される透光カバー27によって覆われている。
【0018】
透光カバー27は、例えば、ガラスやアクリル、ポリカーボネートなどの合成樹脂等の透明度の高い材料を用いて薄板状に形成されており、HUD装置20のHUD開口部26を塞いでいる。透光カバー27は、車両1の前方側から後方側に向かうにしたがって上方に向かうように湾曲して配置されている(
図1)。但し、透光カバー27は、平板状であってもよい。
【0019】
ルーバー装置50は、透光カバー27とフロントウインドウ60との間のインストルメントパネル2の開口を塞ぐ位置に設けられている。ルーバー装置50は、HUD装置20に組み付けられてもよく、インストルメントパネル2に組みつけられてもよい(組付け方法は、ネジ止め、嵌合、溶着などあらゆる手段が適用され得る。)。なお、HUD装置20の構造の例は、一例に過ぎず、車両用表示システム10のHUD装置20の構造を何ら制限するものではない。
【0020】
図1では、異なる3つの目位置(運転者等の目)710が示されている。図中、符号711は高い位置(トーラー位置)、符号712は通常位置(ノミナル位置)、符号713は低い位置(ショーター位置)を示す。
【0021】
目位置(高さ方向の位置等)710は、目位置検出用のカメラ等を含む後述する目位置検出部411(
図6参照)により検出される。
【0022】
観察者700の前方には、虚像Vが表示される。但し、観察者700が、その虚像Vを視認するためには、画像(虚像)の表示光20aを、各高さ位置にある目位置(目)に確実に照射する必要がある。
【0023】
次に、
図2を参照する。
図2(a)は、目の高さ位置が高い場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の角度例を示す図であり、
図2(b)は、目の高さ位置がノミナル位置である場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の基準となる角度例を示す図であり、
図2(c)は、目の高さ位置が低い場合の、ルーバー構造(可動ルーバー)の角度例を示す図である。
【0024】
図2(a)では、目位置(目)710は、トーラー位置711にあり、この際のルーバー構造の角度は、目位置(目)710がノミナル位置712である場合のルーバー構造の角度(
図2(b)参照)よりも第1の回転方向C1に傾いて配置される。また、
図2(c)では、目位置(目)710は、ショーター位置713にあり、この際のルーバー構造の角度は、目位置(目)710がノミナル位置712である場合のルーバー構造の角度(
図2(b)参照)よりも第2の回転方向C2に傾いて配置される。
【0025】
また、ルーバー装置50は、複数の傾斜角が調整された、非平行の複数のルーバー52、及びルーバー52の間に設けられる光透過部53を有するルーバー構造51と、第2のアクチュエータ59と、を含む。
【0026】
各ルーバーの傾斜角θnは、前方側が小さく、後方側が大きく設定され(この点については後述する)、第2のアクチュエータ59は、目位置が通常位置よりも高い場合には、ルーバー構造51を第1の回転方向C1(
図2(a)参照)に回転させ(ZX平面に対するX方向を軸としたルーバー構造51の傾斜角度θxは、θx1とする。)、低い場合には第2の回転方向C2(
図2(c)参照)に回転させる(ZX平面に対するX方向を軸としたルーバー構造51の傾斜角度θxは、θx3とする。)。この構成によれば、ルーバー構造51を例えば、軸AXを中心に回転させることで、各ルーバー52の傾斜角を一括して調整可能である。
【0027】
上記のとおり、第2のアクチュエータ59は、ルーバー構造51を、第1の回転方向C1(車両1の左方から見た場合の車幅方向を軸とした時計周り方向)、あるいは第2の回転方向C2(車両1の左方から見た場合の車幅方向を軸とした反時計周り方向)に移動させることができる。第2のアクチュエータ59の動作は、表示制御装置30によって制御される。
【0028】
このルーバー装置は50、HUD装置20とは別の装置とみることができ、また、HUD装置20の構成要素の1つとみることもできる。ルーバー装置50は、種々のHUD装置(広義には表示装置)50に適用することができる。例えば、射出瞳拡大器として機能するライトガイド(ウェーブガイドとも呼ばれる。リレー光学系23の一例。)を有するHUD装置20にも適用可能である。
【0029】
表示制御装置30は、HUD装置用の制御機能と、ルーバー装置用の制御機能とを合わせもつことができる。但し、例えば、回路基板に複数のプロセッサを搭載し、1つのプロセッサをHUD装置の制御用として使用し、他のプロセッサをルーバー装置の制御用に使用してもよい。このような変形は、適宜、なし得る。
【0030】
また、
図1、
図2では、表示制御装置30は、HUD装置の筐体21の外に設けられているが、筐体21の内部に設けることもできる。表示制御装置30を設ける箇所は、特に限定されない。
【0031】
また、表示制御装置30は、目位置検出部411(
図6参照)からの情報に基づいて目位置(目の高さ位置を含む)を検出する機能を有する。但し、これに限定されるものではない。例えば、目の高さ位置を検出する部分(例えば画像処理部)を、表示制御装置30とは別に設けてもよい。
【0032】
次に、
図3を参照する。
図3は、ルーバー構造の特徴の一例を示す図である。なお、
図3では、ルーバー構造51については、説明の便宜上、19本のルーバー52のみを抽出して簡略化して示している。
【0033】
ルーバー構造51は、光出射部を構成するHUD開口部26の少なくとも一部を覆うように設けられる。例えば、ルーバー構造51は、例えば、アクリルなどの透光性材料で構成される透光基板54の上に載置されてもよい。また、透光基板54の、ルーバー構造51によって覆われない部分には、例えば、反射防止塗装による遮光部55が形成されている。これによって、ルーバー52が存在しない領域に起因する迷光の発生を確実に防止することができる。このようなルーバー構造51によれば、前方上方のフロントウインドウ60を介して入射される外光(不図示)がHUD装置に進入しようとしても、ルーバー52によって阻止されるため、画像(虚像)の視認に影響を与える迷光は発生しない。
【0034】
また、
図2に示されるとおり、目の高さ位置710に対応させて、ルーバー構造51を回転させるだけで、各ルーバー52を、目位置高さに応じた最適な角度に調整可能である。よって、個々にルーバーを駆動させる機構が不要となり、調整が容易となり、また、装置の小型化、複雑化の抑制等も実現される。また、ルーバー52の傾斜角が適正に調整されることから、目位置の高さに関係なく、表示光20aを目位置まで、確実に到達させることができる。
【0035】
また、各ルーバー52の傾斜角θnは、ルーバー構造51の厚み方向(この厚み方向は、言い換えれば、透光基板54の平坦な表面に対する法線方向ということもできる)からの傾き角とする。
【0036】
19本の各ルーバー52の傾斜角θnは、前方から後方に向かって、θ1、θ2、θ3、・・・θ18、θ19に設定され、前方側の傾斜角は後方側の傾斜角よりも小さい。
【0037】
具体的には、好ましくは、θ1<θ2<θ3・・・<θ18<θ19が成立するように、傾斜角を徐々に変化させる。また、透光基板54の一部には、上述のとおり、遮光部55が設けられている。また、透光基板54の左右方向の両端には、第2のアクチュエータ59によりルーバー構造51を回転させるための回転軸部56を、透光基板54と一体的に形成する。なお、回転軸部56は、透光基板54と別体とされ、透光基板54に組み付けられる構成であってもよい。
【0038】
各ルーバーの傾斜角θ1~θ19は、前方から後方に向かって、徐々に大きくなる(狭義単調増加する)ことが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば隣接するルーバーの傾斜角が実質的に差のないものとなることも許容され得る(広義単調増加でもよい)。全体として、前方側よりも後方側の傾斜角が大きく設定される傾向があればよい。
【0039】
次に、
図4を参照する。
図4は、ルーバー構造の具体例について説明するための図である。
【0040】
ルーバー構造51は、例えば、ルーバーフィルム(あるいはルーバーシート)として実現可能である。ルーバーフィルムは、具体的には、一対の保護層としての透明フィルム57、58の間に、ルーバー構造の厚み方向(あるいは、保護層である透明フィルム57、58の厚み方向)に対して角度を有するように複数が間隔を隔てて、傾斜したルーバー(フィラーということもできる)を配置して構成される。また、各ルーバー52間に光透過部53が形成される。また、各ルーバー52は、
図4に示されるように、矩形かつ平板の遮光部材として形成することができる。
【0041】
各ルーバー52は、微小なものである。例えば、ルーバー間のピッチは、例えば1mm~5mm程度である。また、ルーバー構造51の厚み(厚さ)は、例えば、0.02mm~0.08m程度である。微細なルーバー構造は、例えば、MEMS加工技術を使用して製造可能である。
【0042】
次に、
図5を参照する。
図5(A)、
図5(B)は、出射角分布の目位置の高さ依存性について説明するための図である。
【0043】
図5(B)に示すように、表示光20aの出射角θpを定める。出射角は、ルーバー34の厚み方向(あるいは透光基板54の厚み方向)に対する角度である。なお、
図5(B)において、θnは、先に説明したルーバー52の傾斜角である。
【0044】
図5(A)において、D1は、目位置がトーラー位置711のときの、Z方向位置(前後方向位置)に対する出射角の分布を示す。同様に、D2はノミナル位置712における出射角の分布を示し、D3は、ショーター位置713における出射角の分布を示す。各分布は、Z方向(前後方向)に少しずつ位置がずれ得る。
【0045】
図6は、いくつかの実施形態に係る、車両用表示システム10のブロック図である。表示制御装置30は、1つ又は複数のI/Oインタフェース31、1つ又は複数のプロセッサ33、1つ又は複数の画像処理回路35、及び1つ又は複数のメモリ37を備える。
図6に記載される様々な機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。
図6は、1つの実施形態に過ぎず、図示された構成要素は、より数の少ない構成要素に組み合わされてもよく、又は追加の構成要素があってもよい。例えば、画像処理回路35(例えば、グラフィック処理ユニット)が、1つ又は複数のプロセッサ33に含まれてもよい。
【0046】
図示するように、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37と動作可能に連結される。より具体的には、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37に記憶されているプログラムを実行することで、例えば、ルーバー装置50の制御(ルーバー装置50の前記制御は、例えば、ルーバー構造51の傾斜角度θxを調整するための第2のアクチュエータ59の制御などを含む。)、画像データの生成及び/又は送信するなど、車両用表示システム10(HUD装置20、空間光変調素子22、バックライト(不図示)、ルーバー装置50)の操作を行うことができる。プロセッサ33及び/又は画像処理回路35は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ37は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVRAMを含んでもよい。
【0047】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース31は、例えば、車両に設けられた後述の車両ECU401、又は他の電子機器(後述する符号403~419)と、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて通信(CAN通信とも称する)を行う。なお、I/Oインタフェース31が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport:MOSTは登録商標)、UART、もしくはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース31は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0048】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と相互動作可能に連結されることで、車両用表示システム10(I/Oインタフェース31)に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース31には、例えば、車両ECU401、道路情報データベース403、自車位置検出部405、車外センサ407、操作検出部409、目位置検出部(視線方向検出部)411、IMU413、明るさセンサ415、携帯情報端末417、及び外部通信機器419などが動作可能に連結される。なお、I/Oインタフェース31は、車両用表示システム10に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0049】
空間光変調素子22は、例えば、液晶光変調素子であり、プロセッサ33及び画像処理回路35に動作可能に連結される。したがって、空間光変調素子22によって表示される画像は、プロセッサ33及び/又は画像処理回路35から受信された画像データに基づいてもよい。プロセッサ33及び画像処理回路35は、I/Oインタフェース31から取得される情報に基づき、空間光変調素子22が表示する画像を制御する。
【0050】
車両ECU401は、車両1に設けられたセンサやスイッチから、車両1の状態(例えば、車両1の運転席の位置(目位置を推定可能な情報の一例。)、走行距離、車速、アクセルペダル開度、ブレーキペダル開度、エンジンスロットル開度、インジェクター燃料噴射量、エンジン回転数、モータ回転数、ステアリング操舵角、シフトポジション、ドライブモード、ヘッドライトの点灯・消灯や照射範囲を含むヘッドライトに関する情報(調光参照情報の一例。)、各種警告状態、姿勢(ロール角、及び/又はピッチング角を含む)、車両の振動(振動の大きさ、頻度、及び/又は周波数を含む))などを取得し、車両1の前記状態を収集、及び管理(制御も含んでもよい。)するものであり、機能の一部として、車両1の前記状態の数値(例えば、車両1の車速。)を示す信号を、表示制御装置30のプロセッサ33へ出力することができる。なお、車両ECU401は、単にセンサ等で検出した数値(例えば、ピッチング角が前傾方向に3[degree]。)をプロセッサ33へ送信することに加え、又はこれに代わり、センサで検出した数値を含む車両1の1つ又は複数の状態に基づく判定結果(例えば、車両1が予め定められた前傾状態の条件を満たしていること。)、若しくは/及び解析結果(例えば、ブレーキペダル開度の情報と組み合わせされて、ブレーキにより車両が前傾状態になったこと。)を、プロセッサ33へ送信してもよい。例えば、車両ECU401は、車両1が車両ECU401のメモリ(不図示)に予め記憶された所定の条件を満たすような判定結果を示す信号を表示制御装置30へ出力してもよい。なお、I/Oインタフェース31は、車両ECU401を介さずに、車両1に設けられた車両1に設けられたセンサやスイッチから、上述したような情報を取得してもよい。
【0051】
また、車両ECU401は、車両用表示システム10が表示する画像を指示する指示信号を表示制御装置30へ出力してもよく、この際、空間光変調素子22に表示させる画像の座標、サイズ、色、階調、種類、表示態様、画像の報知必要度、報知必要度を判定する元となる必要度関連情報、及び/又は虚像の輝度を調整する信号(調光信号の一例。)を、前記指示信号に付加して送信してもよい。
【0052】
目位置検出部411は、車両1の運転席に着座する観察者の目位置700を検出する赤外線カメラなどのカメラを含み、撮像した画像を、プロセッサ33に出力してもよい。プロセッサ33は、目位置検出部411から撮像画像(目位置700を推定可能な情報の一例。)を取得し、この撮像画像を、パターンマッチングなどの手法で解析することで、観察者の目位置700の座標を検出し、検出した目位置700の座標を示す信号を、プロセッサ33へ出力してもよい。
【0053】
また、目位置検出部411は、カメラの撮像画像を解析した解析結果(例えば、観察者の目位置700が、予め設定された複数の表示パラメータ600(後述する。)が対応する空間的な領域のどこに属しているかを示す信号。)を、プロセッサ33に出力してもよい。なお、車両1の観察者の目位置700、又は観察者の目位置700を推定可能な情報を取得する方法は、これらに限定されるものではなく、既知の目位置検出(推定)技術を用いて取得されてもよい。
【0054】
また、目位置検出部411は、観察者の目位置700の移動速度、及び/又は移動方向を検出し、観察者の目位置700の移動速度、及び/又は移動方向を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0055】
メモリ37に記憶されたソフトウェア構成要素は、目位置検出モジュール502、目位置推定モジュール504、目位置予測モジュール506、グラフィックモジュール508、及びアクチュエータ駆動モジュール510、などを含む。
【0056】
図7は、いくつかの実施形態に従って、観察者の目高さに基づき、ルーバー構造の角度を設定する動作を実行する方法S100を示すフロー図である。方法S100は、少なくともルーバー装置50と、このルーバー装置50を制御する表示制御装置30と、において実行される。以下に示す方法S100のいくつかの動作は任意選択的に組み合わされ、いくつかの動作の手順は任意選択的に変更され、いくつかの動作は任意選択的に省略される。
【0057】
図6の目位置検出モジュール502は、観察者の目位置710を検出する(S110)。目位置検出モジュール502は、観察者の目位置710を示す座標(X,Y軸方向の位置であり、目位置710を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さを示す座標(Y軸方向の位置であり、目位置710を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さ及び奥行方向の位置を示す座標(Y及びZ軸方向の位置であり、目位置710を示す信号の一例である。)を検出すること、及び/又は観察者の目位置710を示す座標(X,Y,Z軸方向の位置であり、目位置710を示す信号の一例である。)を検出すること、に関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。
【0058】
なお、目位置検出モジュール502が検出する目位置710は、右目と左目のそれぞれの位置、右目位置及び左目位置のうち予め定められた一方の位置、右目位置及び左目位置のうち検出可能な(検出しやすい)いずれか一方の位置、又は右目位置と左目位置とから算出される位置(例えば、右目位置と左目位置との中点)、などを含む。例えば、目位置検出モジュール502は、目位置710を、ルーバー装置50の傾斜角度θx(表示設定の一例。)を更新するタイミングの直前に目位置検出部411から取得した観測位置に基づき決定する。
【0059】
また、目位置検出部411は、目位置検出部411から取得する観察者の目の検出タイミングの異なる複数の観測位置に基づき、観察者の目位置710の移動方向、及び/又は移動速度を検出し、観察者の目位置710の移動方向、及び/又は移動速度を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0060】
目位置推定モジュール504は、目位置を推定可能な情報を取得する(S114)。目位置を推定可能な情報は、例えば、第1のアクチュエータ24の制御情報(角度に関する情報)、目位置検出部411から取得した撮像画像、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などである。目位置推定モジュール504は、目位置を推定可能な情報から、車両1の観察者の目位置710を推定する。目位置推定モジュール504は、第1のアクチュエータ24の制御情報(角度に関する情報)、目位置検出部411から取得した撮像画像、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などから、観察者の目位置(目高さ)710を推定すること、など観察者の目位置(目高さ)710を推定することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置推定モジュール504は、目の位置を推定可能な情報から観察者の目位置710を推定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0061】
目位置推定モジュール504は、目位置710の推定位置を、ルーバー装置50の傾斜角度θx(表示設定の一例。)を更新するタイミングの直前に目位置検出部411から取得した目の観測位置と、1つ又は複数の過去に取得した目の観測位置とに基づき、例えば、加重平均などの手法により、算出してもよい。
【0062】
目位置予測モジュール506は、観察者の目位置710を予測可能な情報を取得する(S116)。観察者の目位置710を予測可能な情報は、例えば、目位置検出部411から取得した最新の観測位置、又は1つ又はそれ以上の過去に取得した観測位置などである。目位置予測モジュール506は、観察者の目位置710を予測可能な情報に基づいて、目位置710を予測することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。具体的に、例えば、目位置予測モジュール506は、新たなルーバー装置50の傾斜角度θx(表示設定の一例。)が適用された画像が観察者に視認されるタイミングの、観察者の目位置710を予測する。目位置予測モジュール506は、例えば、最小二乗法や、カルマンフィルタ、α-βフィルタ、又はパーティクルフィルタなどの予測アルゴリズムを用いて、過去の1つ又はそれ以上の観測位置を用いて、次回の値を予測するようにしてもよい。
【0063】
図6のグラフィックモジュール508は、レンダリングなどの画像処理をして画像データを生成し、空間光変調素子22を駆動するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。また、グラフィックモジュール508は、表示される画像の、種類、配置(位置座標、角度)、サイズ、表示距離(3Dの場合。)、視覚的効果(例えば、輝度、透明度、彩度、コントラスト、又は他の視覚特性)、を変更するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含んでいてもよい。グラフィックモジュール508は、画像の種類(表示パラメータの1つ。)、画像の位置座標(表示パラメータの1つ。)、画像の角度(X方向を軸としたピッチング角、Y方向を軸としたヨーレート角、Z方向を軸としたローリング角などであり、表示パラメータの1つ。)、及び画像のサイズ(表示パラメータの1つ。)で観察者に視認されるように画像データを生成し、HUD装置20を駆動し得る。また、グラフィックモジュール508は、目高さ情報(又は目高さを推定可能な情報)に基づいて、空間光変調素子22の表示面における画像の表示位置を変更し得る。
【0064】
図6のアクチュエータ駆動モジュール510は、第1のアクチュエータ24及び第2のアクチュエータ59を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含むアクチュエータ駆動モジュール510は、ステップS110で取得した目高さ情報(又は目高さを推定可能な情報)と、曲面鏡29の角度(及びルーバー装置50の傾斜角度θx)とを関連付けたテーブルデータなどを予めメモリ38に記憶しており、ステップS110で取得した目高さ情報(又は目高さを推定可能な情報)に基づき、第1のアクチュエータ24及び第2のアクチュエータ59を駆動し得る。
【0065】
アクチュエータ駆動モジュール510は、ステップS110で取得した目高さ情報(又は目高さを推定可能な情報)に基づき、第2のアクチュエータ59を駆動することで、ルーバー構造51を所望の傾斜角度θxに回転させる(S130)。具体的には、アクチュエータ駆動モジュール510は、目高さ710が高くなった場合、ルーバー構造51を第1の回転方向C1に回転させ、ステップS110で取得した目高さ情報(又は目高さを推定可能な情報)に基づく所望の傾斜角度θx(例えば、θx1)に設定する(S132)。一方、アクチュエータ駆動モジュール510は、目高さ710が低くなった場合、ルーバー構造51を第2の回転方向C2に回転させ、ステップS110で取得した目高さ情報(又は目高さを推定可能な情報)に基づく所望の傾斜角度θx(例えば、θx3)に設定する(S134)。
【0066】
第2のアクチュエータ59が、第1のアクチュエータ24の制御情報(角度に関する情報)に基づいてルーバー構造51を回転させた場合、HUD装置内部における表示光20aの進路を変更するための各部の動作と、ルーバー移動動作とが、共通の精度の高い情報に基づいて連動することになり、よって、表示光20aの進路変更動作とルーバー移動動作との間に不整合が生じない。よって、表示光20aは、ルーバーを通過して、確実に目位置(目)に届くことになる。
【0067】
なお、
図1、
図2では、曲面ミラー(曲面鏡等:自由曲面を有する曲面ミラーであってもよい)29を回転駆動しているが、この場合、制御誤差が生じる可能性があることは否めない。この誤差が問題になる場合は、曲面鏡29を回転させず、空間光変調素子22の表示面における画像の表示位置を変更する方式の採用が有利となり得る。
【0068】
なお、フロントウインドウ60は、非正反射素子65(
図1参照)を含んでいてもよい。非正反射素子65は、例えばホログラフィック素子、回折光学素子(DOE)で構成することができる。ホログラフィック素子は、例えば,フォトポリマーや重クロム酸ゼラチンなどのホログラム材料などからなり、入射した光を所望の方向へ向けて回折する光学部材であり、物体光と参照光の干渉パターンを記録することで作成される。非正反射素子65は、例えば、シート状であり、被投影部60に内包され、HUD装置20が投影する表示光20aを車両1の内側の所定の領域であるアイボックスEへ回折する。例えば、後述する非正反射素子65は、HUD装置20から受けた表示光20aを回折することで、観察者に視認される画像(虚像)のサイズを大きくすることができる。観察者は、アイボックスE内に目710を配置することで、被投影部60より遠方側に、HUD装置20が表示する画像の虚像Vを視認することができる。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ装置(広義には表示装置)の光出射部に設けられるルーバー装置において、観察者700の目の高さ位置に応じた、ルーバーの傾斜角の調整を容易化することができる。
【0070】
本発明は、左右の各眼に同じ画像の表示光20aを入射させる単眼式、左右の各眼に、視差をもつ画像を入射させる視差式のいずれのHUD装置においても使用可能である。
【0071】
また、目位置に追従して、局所的な照明を実施する目位置追従スポットライティング制御を行う場合にも本発明を適用可能である。
【0072】
本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、HUD装置には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ)として使用されるものも含まれるものとする。
【0073】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0074】
1 :車両
2 :インストルメントパネル
5 :ルーバー
6 :駆動手段
7 :制御手段
8 :視点検出手段
10 :車両用表示システム
20 :HUD装置
20a :表示光
21 :筐体
22 :空間光変調素子(画像表示部)
23 :リレー光学系
24 :第1のアクチュエータ
25 :筐体
26 :HUD開口部
27 :透光カバー
28 :平面鏡
29 :曲面鏡
30 :表示制御装置(制御部)
31 :I/Oインタフェース
33 :プロセッサ
34 :ルーバー
35 :画像処理回路
37 :メモリ
38 :メモリ
50 :ルーバー装置
51 :ルーバー構造
52 :ルーバー
53 :光透過部
54 :透光基板
55 :遮光部
56 :回転軸部
57 :透明フィルム
58 :透明フィルム
59 :第2のアクチュエータ
60 :被投影部(フロントウインドウ)
65 :非正反射素子
401 :車両ECU
403 :道路情報データベース
405 :自車位置検出部
407 :車外センサ
409 :操作検出部
411 :目位置検出部
415 :明るさセンサ
417 :携帯情報端末
419 :外部通信機器
502 :目位置検出モジュール
504 :目位置推定モジュール
506 :目位置予測モジュール
508 :グラフィックモジュール
510 :アクチュエータ駆動モジュール
600 :表示パラメータ
700 :観察者
710 :目位置(目の高さ位置)
711 :トーラー位置
712 :ノミナル位置
713 :ショーター位置
AX :軸
C1 :第1の回転方向
C2 :第2の回転方向
E :アイボックス
V :虚像
θ1 :傾斜角
θn :傾斜角
θp :出射角
θx :傾斜角度