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特開2022-155764ポリロタキサン及び架橋ポリロタキサン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155764
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ポリロタキサン及び架橋ポリロタキサン
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/329 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
C08G65/329
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059152
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 明繁
(72)【発明者】
【氏名】玉井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】生越 友樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 研一
(72)【発明者】
【氏名】大西 克知
(72)【発明者】
【氏名】足立 佳祐
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005AA12
4J005BD00
4J005BD04
4J005BD05
(57)【要約】
【課題】一定以上の耐熱性を有しながら、各種溶媒への溶解性が良いポリロタキサンを提供する。
【解決手段】直鎖状分子と、該直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、該直鎖状分子の両末端に配置された封鎖基とを有するポリロタキサンにおいて、前記環状分子が、側鎖にフェノール性水酸基を有する芳香環を含み、さらに前記フェノール性水酸基の少なくとも一部が特定置換基で置換されていることを特徴とする。特定置換基は、ヒドロキシプロピル基その他の非イオン性基である。当該ポリロタキサンは複数のポリロタキサンの環状分子間が架橋された架橋ポリロタキサンとすることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状分子と、該直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、該直鎖状分子の両末端に配置された封鎖基とを有するポリロタキサンにおいて、
前記環状分子が、側鎖にフェノール性水酸基を有する芳香環を含み、さらに前記フェノール性水酸基の少なくとも一部が特定置換基で置換されており、
前記特定置換基は、-O-R-Xで示される化学構造を有しており、前記Rは炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基から水素が1つ除かれた基、少なくとも1個のエーテル基を含む炭素数2~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基から水素が1つ除かれた基、炭素数3~12の環状アルキル基から水素が1つ除かれた基、炭素数2~12の環状アルキルエーテル基から水素が1つ除かれた基、又は炭素数2~12の環状アルキルチオエーテル基から水素が1つ除かれた基であり、前記XはOH、NH2、またはSHであることを特徴とするポリロタキサン。
【請求項2】
前記特定置換基は、ヒドロキシプロピル基である請求項1記載のポリロタキサン。
【請求項3】
請求項1又は2記載の複数のポリロタキサンの環状分子間が架橋された架橋ポリロタキサン。
【請求項4】
請求項3記載の架橋ポリロタキサンを含むエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリロタキサンは、直鎖状分子と、該直鎖状分子を串刺し状に包接する(空孔の中に取り込んでいる)環状分子と、該直鎖状分子の両末端に配置された封鎖基とを有する構造の分子集合体であり、環状分子が直鎖状分子に対してスライド可能であるため、スライドリングマテリアル(SRM)と称されている。環状分子と直鎖状分子はそれぞれ種々のものが知られているが、環状分子としてシクロデキストリン、直鎖状分子としてポリエチレングリコールが用いられることが多い(特許文献1,2)。
【0003】
シクロデキストリンは、環状にD-グルコースがつながった構造をしている。D-グルコースの環員数が6であるα-シクロデキストリンの構造式を、図4に示す。シクロデキストリンは、空孔の端に水酸基が多くあり、また、空孔の中にエーテル結合の酸素原子と水素原子がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/080469号
【特許文献2】国際公開第2018/038124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、環状分子がシクロデキストリンであるポリロタキサン(以下「シクロデキストリン型ポリロタキサン」ということがある。)は、本発明者らの検討によると、耐熱性と、各種溶媒への溶解性に改善の余地があった(後述する表1の比較例3参照)。
【0006】
そこで、本出願人は先に、ピラーアレーンを環状分子として用いたポリロタキサン(以下「ピラーアレーン型ポリロタキサン」ということがある。)を開発し、従来のシクロデキストリン型よりも耐熱性が向上することを見出した(特願2020-036286(本出願時において未公開)。しかし、そのピラーアレーン型ポリロタキサンは、各種溶媒への溶解性が非常に悪く(表1の比較例2参照)、アルカリ水溶液には溶解するが、他の溶媒としてはわずかにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解するのみであり、従って、例えば当該ポリロタキサンを架橋反応させるとき等に制約がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、一定以上の耐熱性を有しながら、各種溶媒への溶解性が良いポリロタキサンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が検討したところ、上記のピラーアレーン型ポリロタキサンの溶解性が非常に悪い要因は、ピラーアレーンがフェノール性水酸基を有するものであったため、ロタキサン同士が水素結合形成により凝集することにあると考えられ、その凝集をほどくために高温が必要であるなど加工性にも難があった。そこで、さらに検討を重ね、芳香環を含む環状分子のフェノール性水酸基の少なくとも一部を特定置換基で置換することで、凝集を抑えられることを見出して本発明に至った。
【0009】
[1]ポリロタキサン
直鎖状分子と、該直鎖状分子を串刺し状に包接する環状分子と、該直鎖状分子の両末端に配置された封鎖基とを有するポリロタキサンにおいて、
前記環状分子が、側鎖にフェノール性水酸基を有する芳香環を含み、さらに前記フェノール性水酸基の少なくとも一部が特定置換基で置換されており、
前記特定置換基は、-O-R-Xで示される化学構造を有しており、前記Rは炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基から水素が1つ除かれた基、少なくとも1個のエーテル基を含む炭素数2~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基から水素が1つ除かれた基、炭素数3~12の環状アルキル基から水素が1つ除かれた基、炭素数2~12の環状アルキルエーテル基から水素が1つ除かれた基、又は炭素数2~12の環状アルキルチオエーテル基から水素が1つ除かれた基であり、前記XはOH、NH2、又はSHであることを特徴とするポリロタキサン。
前記特定置換基は、いずれも非イオン性基である。
前記特定置換基のうち、Rが炭素数3の分岐鎖状のアルキル基から水素が1つ除かれた基であり、XがOHである非イオン性基がヒドロキシプロピル基であって、前記非イオン性基の中でも好適である。 前記フェノール性水酸基の少なくとも一部をヒドロキシプロピル基で置換することを、以下「ヒドロキシプロピル修飾」ということがある。
【0010】
(作用)
芳香環を含む環状分子のフェノール性水酸基の少なくとも一部を、特定置換基で置換することによって、アルカリ水溶液やDMSOなどの高極性溶媒にしか溶解しなかったものが、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、トルエンなどの低極性溶媒にも溶解するようになる(表1の実施例参照)。これは、環状分子のフェノール性水酸基が非イオン性の置換基に置換されたことで、ロタキサン同士の水素結合形成による凝集が抑制されたためと考えられる。
【0011】
このように、各種溶媒への溶解性が向上したことで、加工性(ハンドリング)が改善されるだけでなく、相溶性の観点から、様々な化合物やポリマーとの混合が良好になるため、当該ポリロタキサンを架橋反応させるときの架橋剤の化学構造の選択肢が増える。例えば、SP値による極性の指標から、トルエン(SP値:18.2)~THF(SP値:19.4)などとよく相溶するポリマーポリプロピレン(SP値:18.8)などには良混合が期待できる。
【0012】
しかし、芳香環を含む環状分子をヒドロキシプロピル修飾したポリロタキサンは、芳香環を含む環状分子をヒドロキシプロピル修飾しないポリロタキサンと比べて、耐熱性が低下する(表1の実施例と比較例2参照)。
同様に各種溶媒への溶解性を良くしようとして、シクロデキストリンをヒドロキシプロピル修飾したポリロタキサンは、シクロデキストリンをヒドロキシプロピル修飾しないポリロタキサンと比べて、耐熱性が低下する(表1の比較例1と比較例3参照)。
これらを比較すると、芳香環を含む環状分子をヒドロキシプロピル修飾したポリロタキサンは、シクロデキストリンをヒドロキシプロピル修飾したポリロタキサンと比べれば、熱分解温度が高く(表1の実施例と比較例1参照)、一定以上の耐熱性を有している。
【0013】
[2]架橋ポリロタキサン
上記[1]の複数のポリロタキサンの環状分子間が架橋剤により架橋された架橋ポリロタキサン。
【0014】
[4]エラストマー
上記[2]の架橋ポリロタキサンを含むエラストマー。
【0015】
同エラストマーの用途は、特に限定されず、例えば同エラストマーに電極を付けて高分子アクチュエータ又は高分子センサ-として用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定以上の耐熱性を有しながら、各種溶媒への溶解性が良いポリロタキサンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は実施例のポリロタキサンの製造過程の前半を説明する模式図である。
図2図2は同前半で得られたピラーアレーン型ポリロタキサン(ヒドロキシプロピル修飾前)の模式図である。
図3図3は実施例のポリロタキサンの製造過程の後半(ヒドロキシプロピル修飾)と、得られたポリロタキサンの架橋を説明する模式図である。
図4図4は比較例3のポリロタキサンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.ポリロタキサン
(a)環状分子
芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を例示できる。
当該環状分子としては、側鎖にフェノール性水酸基を有するピラーアレーン、カリックスアレーン等を例示できる。
当該環状分子は、上記のとおり、側鎖のフェノール性水酸基の少なくとも一部が特定置換基で置換されているものとするが、フェノール性水酸基の別の一部を、他の基、例えば-SH、-NH2、-COOH、-SO3H、-PO4H等で置換したものでもよいし、種々の有機溶媒に溶化できるよう、グラフト鎖(例えばラクトンモノマーの開環重合からなるグラフト鎖)を有する置換基で置換したものでもよい。
【0019】
ピラーアレーンは、アレーン(芳香環)が環状かつ角柱状につながった構造をもつオリゴマーであり、アレーンの環員数を[n]として、一般的にピラー[n]アレーンと表記される。[n]は特に限定されないが、好ましくは5~6である。
カリックスアレーンは、フェノールがメチレン基を介して環状につながった構造を持つオリゴマーであり、フェノールの環員数を[n]として、一般にカリックス[n]アレーンと表記される。[n]は特に限定されないが、好ましくは3~10である。
【0020】
(b)直鎖状分子
直鎖状分子としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテル等を例示できる。直鎖状分子は、ポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールとともに他の直鎖状分子が含有されていてもよい。
【0021】
(c)封鎖基
封鎖基としては、特に限定されないが、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類等を例示できる。ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類である。
【0022】
2.架橋剤
ポリロタキサンの架橋剤としては、特に限定されないが、イソシアネート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はポリエン、もしくはそれらの共重合体、もしくはそれらの混合体を例示できる。
架橋剤の各末端に位置する官能基としては、特に限定されないが、環状分子のフェノール性水酸基と反応できるイソシアネート基が好ましく、ブロック化イソシアネートがより好ましい。
【0023】
3.エラストマー
エラストマーは、架橋ポリロタキサンのみからなるものでもよいし、架橋ポリロタキサンと他のエラストマー等の混合物でもよい。
他のエラストマーとしては、特に限定されないが、シリコーンエラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ウレアゴム、フッ素ゴム等を例示できる。
【実施例0024】
次の(1)~(5)の工程を踏む方法により、実施例のポリロタキサンを作製した。
【0025】
(1)ポリエチレングリコール(PEGと略記する)の両末端の活性化
図1(1)に示すように、文献(Macromolecules,2005,38,7524-7527.)の方法に従って、ポリエチレングリコール(PEG20000)の水溶液に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(TEMPO)、NaBr、NaClOを作用させ、pH10-11で15分間反応させた。反応液を希塩酸を加えて処理を行い、得られた混合物をジクロロメタンで2回抽出した。得られたジクロロメタン溶液を回収・減圧濃縮し、エタノールで再結晶を行い、分子の両末端がカルボキシル基であるポリエチレングリコール(PEG-COOHと略記する)を91%の重量収率で得た。
【0026】
(2)ピラー[5]アレーンの合成
図1(2)に示すように、文献(J.Org.Chem.2011,76,328-331.)の方法に従って、ジメトキシピラー[5]アレーン(2.00g,2.67mmol)を無水クロロホルム(150mL)に溶解させた溶液に三臭化ホウ素(13.6g,54.3mmol)を加え、25℃で72時間攪拌した。反応溶液に水を加えて生じた沈殿物を回収し、0.5MHCl水溶液およびクロロホルムで洗浄し、側鎖にフェノール性水酸基を有する芳香環を含むピラー[5]アレーン(P5AOHと略記する)(1.61g,2.64mmol)を定量的に得た。
【0027】
(3)擬ポリロタキサンの合成
図1(3)に示すように、重量比でメタノール:水=1:1で混合したメタノール水溶液10mLを溶媒に用いて調製したP5AOH溶液10mL(0.0121mol/L)を、PEG-COOH溶液0.6mL(1.894mol/L)と混合し、室温で1日静置した。生じた沈殿物を水10mLで洗浄し、得られた残渣を真空下、50℃で1日乾燥し、P5AOHがPEG-COOHを包接する擬ポリロタキサン(PseudoP5AOH-PEGと略記する)を得た。
【0028】
(4)ピラーアレーン型ポリロタキサンの合成
図1(4)に示すように、アダマンタンアミン(0.016g,0.11mmol)、BOP試薬(0.048g,0.11mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.019mL,0.12mmol)をジメチルホルムアミド(dryDMF)(10mL)に溶解した溶液を充分に氷冷し、PseudoP5AOH-PEG(150mg)を加えて4℃で一昼夜攪拌した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで減圧下濃縮し、過剰の水を加えて攪拌する。沈殿物をろ過し、得られた残渣にアセトンを加えて超音波洗浄、上澄みの除去、真空乾燥し、PEGの両末端にアダマンタン基類が配置されたピラーアレーン型ポリロタキサン(P5AOH-PEGと略記する)(104mg)を得た。このP5AOH-PEGの模式図を(P5AOHについては構造式も)図2に示す。
【0029】
(5)ヒドロキシプロピル修飾ピラーアレーン型ポリロタキサンの合成
図3(5)に示すように、P5AOH-PEG(仕込み804mg,内ピラーアレーン分459mg)を、0.01M NaOH水溶液30.1mL(10当量)に溶解させた溶液に、プロピレンオキシド131.4g(3000eq.)を加え、室温で24時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残留プロピレンオキシドを除去した。残渣を3M HCl水溶液でpH=3~4に酸処理した後、酸処理液を減圧濃縮し、水を除去した。残渣にTHFを加え、ろ過し、可溶部を減圧濃縮した。得られた液状化合物の1.5gにエタノールを加えて、ろ過し、不溶部を40℃で1日真空乾燥し、ピラーアレーンのフェノール性水酸基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基で置換された(ヒドロキシプロピル修飾)ピラーアレーン型ポリロタキサン(P5AOHP-PEGと略記する)を154mg得た。
【0030】
[比較例2]
上記(4)で得たP5AOH-PEG(ヒドロキシプロピル修飾前)(図2)を、比較例2とした。
【0031】
[比較例3]
上記(1)で得たPEG-COOHと市販のα-シクロデキストリン(CDと略記する)を用い、次の方法により、比較例3のポリロタキサンを作製した。
文献(Macromolecules,2005,38,7524-7527.)の方法に従って、PEG-COOH3.0g(8.6×10-5mol)とα-シクロデキストリン(12g,1.2×10-2mol)を水(100mL)に溶解し、冷蔵庫に終夜静置した。得られたペースト状の混合物を凍結乾燥し、乾燥した固形分をアダマンタンアミン(0.16g,1.1×10-3mol)、BOP試薬(0.48g,1.1×10-3mol)、エチルジイソプロピルアミン(0.19mL,1.2×10-3mol)と共にDMF100mLに溶解し、4℃で一昼夜反応させた。得られた混合物をDMF/MeOH(1:1)の混合溶媒、MeOHで各2回遠心分離した。回収した沈殿物にDMSO80mLを加え洗浄し、得られた沈殿物にHO(800mL)を加えて遠心分離を行い、得られた固形分を凍結乾燥し、比較例3のシクロデキストリン型ポリロタキサン(CD-PEGと略記する)を9.55g~10.3g得た。このCD-PEGの模式図を(CDについては構造式も)図4に示す。
【0032】
[比較例1]
上記比較例3のCD-PEGのCDを、国際公開第2005/080469号の段落0092に記載の方法によりヒドロキシプロピル修飾して、比較例1のヒドロキシプロピル修飾シクロデキストリン型ポリロタキサン(CDP-PEGと略記する)を得た。
【0033】
[測定]
実施例及び比較例1~3について、次の測定を行った。
【0034】
(ア)TG-DTA測定(耐熱性の確認)
実施例及び比較例1~3の各ポリロタキサンについて、TG-DTA測定を行った。
詳しくは、示差熱・熱重量(TG-DTA)同時測定装置(日立ハイテクノロジーズ製 STA7200)を用い、サンプルパンとして白金を用いて、Nガス気流(10mL/分)中で、熱分解昇温速度:100~300℃…1℃/分、300~900℃…10℃/分の条件下、測定した。加熱前重量を基準(100%)にして加熱前重量に対して50%重量減少した温度を熱分解温度(50%重量減)として表1に示す。
【0035】
(イ)溶解性試験
実施例及び比較例1~3のポリロタキサンの各サンプル10mgに、溶媒1mLを加え、室温にて24時間静置した後、目視にて固形物、ゲルなどの残存を確認して溶解性を判断した。溶媒は、NaOH水溶液、DMSO、THF、クロロホルム、トルエンの5種類とした。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
図3(6)に示すように、実施例のP5AOHP-PEGは、隣り合う複数のP5AOHP-PEGの環状分子間が架橋剤により架橋された架橋ポリロタキサンとすることができる。
この架橋ポリロタキサンは、単独で又は他のエラストマーと混合し、耐熱性の高いエラストマーとして用いることができる。
また、実施例のP5AOHP-PEGを他のエラストマーと混合して、P5AOHP-PEGの環状分子と他のエラストマーが有する官能基とを直接的に、または架橋剤によって架橋させることによって耐熱性の高いエラストマーとして用いることができる。
これらの耐熱性の高いエラストマーは、電極を付けて(例えば膜状のエラストマーの両面に伸縮性のある電極層を付けて)、耐熱性の高い高分子アクチュエータ又は高分子センサ-として用いることができる。
【0038】
具体的には、架橋ポリロタキサンを以下のような方法で作成した。
実施例のP5AOHP-PEG22mgにTHF20mLを加え、さらに架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアナート)4mLとジラウリン酸ジブチルスズ2mLを加えて、室温で撹拌した(約1日間)。
上記の液からTHFを揮発(室温・約半日)させると、ゲル状物質が得られた。このゲル状物質をガラス基板に塗布して、さらにドラフト内で1晩室温で静置・乾燥して、架橋ポリロタキサンのフィルムを得た。
【0039】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
図1
図2
図3
図4