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特開2022-155778情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155778
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H04M11/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059174
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂上 充敏
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201BA02
5K201CC10
5K201ED09
5K201EE05
(57)【要約】
【課題】着座用具に人が着席しているか否かを従来よりも簡便に検知する。
【解決手段】本発明のある態様は、着座用具の座面又は背もたれ面に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶する第1無線タグと、着座用具の利用者と、当該着座用具に取り付けられた無線タグのタグ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を有する情報処理装置と、を備えた情報処理システムである。上記情報処理装置は、第1無線タグがタグ識別情報を含む信号を発信した場合、タグ識別情報を取得する取得部と、タグ識別情報を取得したか否かに基づいて、利用者が着座用具に着席しているか否かを決定する制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座用具の座面又は背もたれ面に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶する第1無線タグと、
着座用具の利用者と、当該着座用具に取り付けられた無線タグのタグ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を有する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記第1無線タグが前記タグ識別情報を含む信号を発信した場合、前記タグ識別情報を取得する取得部と、
前記タグ識別情報を取得したか否かに基づいて、前記利用者が前記着座用具に着席しているか否かを決定する制御部と、を有する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、所定時間内に前記タグ識別情報を受信した回数が所定値以上である場合に、前記タグ識別情報を取得したと判断する、
請求項1に記載された情報処理システム。
【請求項3】
前記第1無線タグは、周囲の電波からエネルギーを得て動作する、
請求項1又は2に記載された情報処理システム。
【請求項4】
前記第1無線タグは、温度を検出するセンサを有し、
前記制御部は、前記センサの検出情報に基づいて、前記利用者が前記着座用具に着席していたか否か決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された情報処理システム。
【請求項5】
前記着座用具において前記利用者と近接しない位置に取り付けられ、温度を検出するセンサを有し、固有のタグ識別情報を記憶する第2無線タグをさらに備え、
前記制御部は、前記第1無線タグにおいて検出された温度が前記第2無線タグにおいて検出された温度よりも高い場合に、前記利用者が前記着座用具に着席していたと判断する、
請求項4に記載された情報処理システム。
【請求項6】
無線タグと情報処理装置との間の情報処理方法であって、
前記無線タグは、着座用具の座面又は背もたれ面に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、
前記情報処理装置は、着座用具の利用者と、当該着座用具に取り付けられた無線タグのタグ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を有し、
前記情報処理方法は、
前記無線タグが、前記タグ識別情報を含む信号を発信するステップと、
前記情報処理装置が、前記無線タグが発信する信号に含まれる前記タグ識別情報を取得したか否かに基づいて、前記利用者が前記着座用具に着席しているか否かを決定するステップと、を含む、
情報処理方法。
【請求項7】
無線タグが発信する信号に含まれる情報を処理する情報処理装置において、コンピュータに所定の方法を実行させるプログラムであって、
前記無線タグは、着座用具の座面又は背もたれ面に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、
前記方法は、
前記無線タグがタグ識別情報を含む信号を発信した場合に、タグ識別情報を取得するステップと、
前記取得するステップにおいてタグ識別情報を取得した場合に、着座用具の利用者と、当該着座用具に取り付けられた無線タグのタグ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を参照し、前記取得するステップにおいて取得したタグ識別情報に対応する利用者が前記着座用具に着席していると判断するステップと、を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、椅子等の着座用具に人が着席しているか否かを検知する技術(着席検知技術)が多数提案されている。着席検知技術は、職場での従業員の在席/不在の把握、鉄道やバス等の交通機関の乗客の在席/不在の把握等、広範囲な用途に利用可能である。
例えば特許文献1には、遊技台の離着席を検知するシステムが記載されている。このシステムは、遊技台の周辺に配置された周辺機と、周辺機に設けられ、椅子の方向に赤外線を照射する赤外線センサと、赤外線センサの温度情報に基づき、人の存在の有無を検出する人検出処理部と、赤外線センサの温度情報に基づき、椅子の存在の有無を検出する椅子検出処理部と、人検出処理部及び椅子検出処理部の検出結果を受け、遊技台の周囲の状態を判定する状態判定処理部と、を備える。
また、特許文献2には、座席に埋設させた絶縁性フィルム内に設けられた静電容量型センサにより乗員検知を行うものが記載されている。このセンサは、乗員が着席したときの圧力に応じて変化する容量を検出することで乗員検知を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-000425号公報
【特許文献2】特開2006-226823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の着席検知技術は、複雑かつ高価であるため、汎用的に適用し難いという課題がある。例えば特許文献1に記載されたシステムでは赤外線センサにより着席する人の温度情報を検出する必要があるため、特に監視対象の席数が多くなればなるほどシステムが複雑かつ高価となる。特許文献2に記載された静電容量型センサは、絶縁性フィルムを座席に埋設させなければならず、汎用性に乏しい。
【0005】
そこで、本発明は、着座用具に人が着席しているか否かを従来よりも簡便に検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、着座用具の座面又は背もたれ面に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶する第1無線タグと、着座用具の利用者と、当該着座用具に取り付けられた無線タグのタグ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部を有する情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、前記第1無線タグが前記タグ識別情報を含む信号を発信した場合、前記タグ識別情報を取得する取得部と、前記タグ識別情報を取得したか否かに基づいて、前記利用者が前記着座用具に着席しているか否かを決定する制御部と、を有する、情報処理システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、着座用具に人が着席しているか否かを従来よりも簡便に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の離着席検知システムが適用例を示す図である。
図2図1に示される椅子の正面図である。
図3】在席データベースのデータ構成例を示す図である。
図4】一実施形態の離着席検知システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
図5】IoTタグから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
図6】座面に取り付けたタグに対する測定結果を例示する図である。
図7】背もたれ面に取り付けたタグに対する測定結果を例示する図である。
図8図1に示される椅子の背面図の一例である。
図9】背もたれ部の裏面に取り付けたタグに対する測定結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の情報処理システムの一実施形態である離着席検知システムについて、図面を参照しながら説明する。
本開示において「着座用具」は、人が着席するために特定のエリアに設けられる備品であり、例えば椅子やソファ等が挙げられる。以下の説明において、椅子は、着座用具の一例である。また、着座用具は、一人用の椅子であるものとして説明するが、これには限定されない。
【0010】
一実施形態では、椅子に対して人が着席しているか否かを検出するために、椅子にIoTタグ(無線タグの一例)が取り付けられる。一実施形態では、IoT(Internet of Things)タグ(以下、単に「タグ」という。)は、周囲環境の電波に基づいて発電する環境発電型の通信デバイスであり、バッテリレスで動作するが、それには限定されない。本開示におけるタグの通信距離は限定されず、用途に応じて適宜変更若しくは調整可能である。
【0011】
椅子においてタグを取り付ける位置は、椅子の利用者が着席しているときに利用者に接触又は近接する位置であればよく、例えば、椅子の座面又は背もたれ面である。椅子に対して利用者が着席しているときには、利用者の体の一部がタグを覆うことでタグから電波(信号)を発信できないか、タグから発信する電波が微弱なものとなる。他方、椅子に対して利用者が着席していないときには、タグから正常に電波を発信できる。
タグから発信される信号には、タグに固有のタグID(タグ識別情報の一例)が含まれる。そのため、タグから発信される信号を受信でき、当該信号からタグIDを取得できた場合には当該タグに対応する椅子に利用者が着席していないと判断でき、タグIDを取得できない場合には当該タグに対応する椅子に利用者が着席していると判断できる。
一実施形態では、タグから発信される信号は、離着席検知システムが適用されるエリア内の無線装置によって受信可能である。別の実施形態では、タグから発信される信号は、利用者が所持する利用者端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末等)によって受信可能である。
一実施形態では、エリア内の無線装置又は利用者端末がタグからタグIDを受信した場合、受信したタグIDをネットワークに接続されたサーバに送信する。サーバは、タグIDを取得したか否かに基づいてタグIDに対応付けられた特定の椅子に対する利用者の着席又は離席を判断する。
【0012】
以下、図1図3を参照して一実施形態の離着席検知システム1のシステム構成について説明する。図1は、一実施形態の離着席検知システム1が適用例を示す図であり、一例として複数の椅子が配置されている職場において椅子を利用する利用者(例えば従業員等)の離着席を検知するように構成されている。
図1を参照すると、離着席検知システム1が適用されるエリアARには複数の椅子3が配置されている。エリアAR内で、それぞれの椅子3に対して予め利用者が割り当てられており、利用者は自身に割り当てられている椅子3に必要に応じて着席する。
【0013】
図2は、図1に示される椅子の正面図である。椅子3は、座面部31及び背もたれ部32を含む。図2に示すように、座面部31にはタグT1が取り付けられ、背もたれ部32にはタグT2が取り付けられている。タグT1,T2は、それぞれ第1無線タグの一例である。
【0014】
後に詳述するが、タグT1,T2は、例えば周囲環境の電波に基づいて発電する環境発電型の通信デバイスであり、バッテリを備えていない。タグT1,T2には、周囲温度を検出する温度センサを内蔵することができる。
タグT1,T2は、所定間隔毎(例えば、1~10秒程度の短時間毎)に固有のタグIDを含む信号(後述するパケット)を発信するように構成されている。一実施形態では、各タグから発信される信号には、発信元のタグに固有のタグIDが含まれる。別の実施形態では、各タグから発信される信号には、発信元のタグに固有のタグIDとともに、温度センサの検出値(「センサデータ」という。)を含む。
以下では、各タグから発信される信号にタグIDとセンサデータとが含まれる場合について説明する。また、以下の説明では、タグIDとセンサデータを総称して「タグ情報」という。
【0015】
タグT1,T2の通信距離は、限定しないが、例えば3~10メートルの範囲である。各タグT1,T2は、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth Low Energy(登録商標)(以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。
タグT1,T2は、BLEの規格に準拠する場合、周囲のBLE端末に対してアドバタイジングパケット(後述する)をブロードキャスト送信する。タグT1,T2が送信するパケットには、タグ情報(タグIDとセンサデータ)が含まれる。
【0016】
図1に示すように、離着席検知システム1は、無線装置2、及び、無線装置2とネットワークNWを介して通信可能な管理サーバ5を含む。ネットワークNWは限定しないが、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、移動体通信ネットワーク、インターネット等である。
無線装置2は、椅子3に取り付けられているタグT1,T2からBLE通信によりパケットを受信するBLE無線端末として機能する。また、無線装置2は、各タグからパケットを受信すると、受信したパケットに含まれるタグIDとセンサデータを管理サーバ5に送信する。
タグT1,T2は、正常にパケットを発信できる状況では、上述したように所定間隔毎にパケットを発信し、それに応じて無線装置2もタグ情報を所定間隔毎に管理サーバ5に送信する。
【0017】
タグT1,T2は、利用者が椅子3に着席したときに利用者の体の一部に接触又は近接する位置に取り付けられている。
利用者が椅子3に着席しているときには、利用者の体の一部が座面にあるタグT1及び背もたれ面にあるタグT2を覆うことで各タグから正常に電波を発信できなくなるため、無線装置2が各タグからのパケットを受信できない。その場合、管理サーバ5は、利用者が着席していなければ定期的に受信するはずのタグ情報を無線装置2から受信できないことから、対応する椅子3の利用者が着席していることがわかる。
他方、利用者が椅子3を離席しているときには、タグT1,T2が露出して各タグが正常に電波を発信できるため、無線装置2は、各タグからのパケットを受信し、受信したパケットに含まれるタグ情報を管理サーバ5に送信する。管理サーバ5は、定期的にタグ情報を無線装置2から受信することで、対応する椅子3の利用者が離席していることがわかる。
【0018】
図1において利用者端末4は、利用者が所持する情報処理端末であり、限定しない例として、例えばラップトップ型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等が挙げられる。
一実施形態では、利用者端末4は、例えばBLE対応アプリケーションを有し、ネットワークNWを介して管理サーバ5と通信可能であり、無線装置2と同様に機能する。すなわち、利用者端末4は、タグT1,T2からのパケットを受信し、受信したパケットに含まれるタグ情報を管理サーバ5に送信してもよい。
すなわち、離着席検知システム1において、管理サーバ5がエリアAR内のタグT1,T2のタグ情報を取得するときの経路は、少なくとも(i)無線装置2がタグからタグ情報を受信し、管理サーバ5に送信する経路、又は(ii)利用者端末4がタグからタグ情報を受信し、管理サーバ5に送信する経路のいずれかが想定されており、いずれかに限定されない。
【0019】
管理サーバ5は、図1のエリアARにおける各椅子3の利用者の離着席の状態を管理する情報処理装置の一例である。
管理サーバ5は、図3に例示する離着席データベースを備える。図3に示す例では、離着席データベースは、エリアAR内の椅子3に対して1つレコードが構成されている。
各レコードには、対応する椅子3に取り付けられているタグT1,T2のタグIDと、対応する椅子3に割り当てられている利用者の識別情報である利用者IDと、対応する椅子3に当該利用者が着席しているか離席しているかを示す離着席情報(「着席」又は「離席」を示す情報)と、が対応付けられている。
管理サーバ5が無線装置2又は利用者端末4からのタグ情報の取得有無に応じて、対応するレコードの離着席情報が適宜更新される。
【0020】
次に、図4及び図5を参照して、一実施形態の離着席検知システム1の各装置の構成を説明する。
図4は、本実施形態の離着席検知システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。図5は、タグT1,T2から送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
なお、以下では、タグT1,T2に対して共通する事項について言及するときには、「タグT」と表記する。
【0021】
図4を参照すると、タグTは、例えば、制御部11、アンテナ12、ハーベスティング部13、電圧制御部14、RFトランシーバ15、及び、センサ16を含む。
タグTの全体の形態は図示しないが、例えば、アンテナ12とセンサ16が形成される所定のパターンの導電性金属箔と、当該金属箔に接続されるICチップとが接続された薄膜状の部材である。ICチップ内に、制御部11、ハーベスティング部13、及び、電圧制御部14、RFトランシーバ15が実装される。
【0022】
制御部11は、マイクロプロセッサとメモリ111を有し、タグTの全体を制御する。メモリ111は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、タグTに固有の識別情報であるタグID、センサ16が出力するセンサデータ等を記憶する。
【0023】
ハーベスティング部13は、周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ131に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部13は、例えばアンテナ12が受信した無線信号を直流電圧に変換し、エネルギーストレージ131に貯蔵する。エネルギーストレージ131は、例えばキャパシタである。キャパシタの場合には、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよい。
【0024】
ハーベスティング部13が環境発電に使用する電波は、広範囲の周波数帯域において複数の異なる周波数帯の電波である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
ここに例示したような電波は、一般に、ほとんどすべてのエリアで適用可能である。そして、タグTは、周囲環境の電波に基づいてハーベスティング部13による環境発電で得られる電力で動作する。そのため、タグTにバッテリを搭載する必要がなく、システムコストを抑制することができる。また、バッテリを搭載する必要がないことから、バッテリの交換作業を行わずに済むため、タグが存在するにもかかわらずタグIDを取得できないという不具合が生じない。
【0025】
電圧制御部14は、制御部11及びRFトランシーバ15に動作電圧を供給するとともに、エネルギーストレージ131の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部11及びRFトランシーバ15では、後述するパケットの生成や無線信号の送信等が行われない。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部11及びRFトランシーバ15ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
【0026】
なお、制御部11は、例えば電力モードが第1モードの場合であってもエネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上に充電された場合には、センサ16により検出されたセンサデータを、検出時刻のデータとともにメモリ111に格納してもよい。その場合、制御部11は、電力モードが第1モードから第2モードに切り替えられた時点で、メモリ111に格納していたセンサデータ及び検出時刻のデータを含むパケットを生成し、送信してもよい。
【0027】
センサ16は、タグTの周囲温度のデータ(つまり、センサデータ)を検出する。センサデータは、後述するパケットに含めるためにメモリ111に一時的に格納される。
【0028】
制御部11は、電力モードが第2モードの場合に、BLEのプロトコルに従ってアドバタイジングパケットを生成する。
アドバタイジングパケットは、BLEにおいてブロードキャスト通信を実現するためにアドバタイジングチャネルを利用して送信されるパケットであり、図5に示すパケット構成を有する。アドバタイジングパケットは、以下では適宜、単に「パケット」という。
【0029】
図5においてプリアンブル及びアドレスアクセスは、それぞれが所定の固定値である。CRCは巡回検査符号であり、パケットペイロード(つまり、アドバタイジングチャネルPDU(protocol data unit))を対象として所定の生成多項式を用いて算出される検査データである。
アドバタイジングチャネルPDU(以下、単に「PDU」という。)はヘッダとペイロードからなり、当該ペイロードは、ADVアドレスとADVデータとからなる。ADVアドレスはアドバタイザー(つまり、報知する主体であるタグT)のアドレスであるが、送信元を特定しないように送信の都度に設定されるランダムな値でもよい。ADVデータはアドバタイザーのデータ(ブロードキャストデータ)であり、タグID、及び、センサ16によって出力されるセンサデータを含むタグ情報に相当する。
【0030】
制御部11は、PDUを暗号化することが好ましい。暗号化方法は限定しないが、例えば鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)を利用することができる。
【0031】
RFトランシーバ15は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)をアンテナ12に送出する。
【0032】
アンテナ12は、送信アンテナと発電用アンテナを含む。送信アンテナは、RFトランシーバ15によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。他方、発電用アンテナは、例えば周囲環境の電波を受信し、ハーベスティング部13と協働してレクテナとして機能する。
【0033】
図4に示すように、利用者端末4は、例えば、制御部41、ストレージ42、操作入力部43、表示部44、第1通信部45、及び、第2通信部46を備える。
【0034】
制御部41は、マイクロプロセッサを主体として構成され、利用者端末4の全体を制御する。
一実施形態では、制御部41は、ストレージ42に格納するBLE対応アプリケーションをロードして実行する。
ストレージ42は、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、上述したBLE対応アプリケーション等、制御部41によって実行される各種のプログラムを格納する。
【0035】
操作入力部43は、各種のプログラムを実行するためにユーザから操作入力を受け付ける入力インタフェースであり、表示部44の表示パネルに設けられるタッチパネル入力部であってもよい。
表示部44は、例えばLCD等の表示パネルと、表示パネルの駆動回路とを含み、制御部41によるプログラムの実行結果を表示する。
【0036】
第1通信部45は、例えば、第2通信部よりも狭い通信範囲で物体と無線通信を行うものであり、例えば、タグTがブロードキャストするパケットを受信するように構成されている。
【0037】
第2通信部46は、ネットワークNWを介して管理サーバ5と通信を行うための通信インタフェースである。一実施形態では、制御部41は、第1通信部45を介してタグTからパケットを受信してタグ情報を取得する。制御部41はさらに、タグTから取得したタグ情報を、第2通信部46を介して管理サーバ5に送信する。
【0038】
図4に示すように、管理サーバ5は、例えば、制御部51、ストレージ52、及び、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、管理サーバ5の全体を制御する。
ストレージ52(記憶部の一例)は、HDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置を備え、離着席データベースを記憶する。
通信部53は、無線装置2や利用者端末4との間で通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0039】
制御部51はサーバプログラムを実行することで、タグTがタグIDを含むパケットを発信した場合、タグIDを無線装置2又は利用者端末4を介して取得する取得部として機能する。
制御部51はサーバプログラムを実行することで、タグIDを取得したか否かに基づいて、利用者が対応する椅子3に着席しているか否かを決定し、離着席データベース(図3)を更新する。
【0040】
具体的に、離着席データベースの更新処理は以下のようにして行われる。
エリアAR内の各椅子3の座面及び背もたれ面にそれぞれ取り付けられたタグT1,T2は、所定時間毎(例えば、1~10秒程度の短時間毎)にパケットをブローキャスト送信している。無線装置2又は利用者端末4がパケットを受信した場合、パケットに含まれるタグ情報(タグID及びセンサデータ)を管理サーバ5に送信する。無線装置2又は利用者端末4がパケットを受信できない場合、無線装置2又は利用者端末4は管理サーバ5に何も送信しない。
そこで、管理サーバ5の制御部51は、例えば所定時間内に所定回数以上、同一のタグIDを受信した場合にタグIDを取得したと判断し、離着席データベースにおいて、当該タグIDに対応する離着席情報を「離席」とする。逆に、所定時間内に同一のタグIDを受信できないか、又は受信できたとしても受信回数が所定回数未満である場合には、当該タグIDに対応する離着席情報を「着席」とする。
1回タグIDを受信した場合、あるいは、1回のタグIDを受信できなかった場合に、タグIDを取得した、あるいは取得できなかったと判断して離着席情報を書き換えてもよいが、所定時間内における受信回数に基づいてタグIDの取得可否を判断することで、離着席情報の精度を高めることができる。
【0041】
次に、図6及び図7を参照して、各椅子3の座面及び背もたれ面にそれぞれ取り付けられたタグT1,T2に対する測定結果について説明する。
図6は、椅子3の座面に取り付けたタグT1に対する測定結果を例示する図である。図7は、椅子3の背もたれ面に取り付けたタグT2に対する測定結果を例示する図である。
図6及び図7では、以下に示すように、タグT1,T2が取り付けられた椅子3に利用者が約15分毎に離着と着席を繰り返し、タグT1,T2のタグ情報の管理サーバ5における受信結果(受信頻度、温度)を示している。ここで、受信頻度は、各期間(約15分)において1分当たりのタグ情報の受信回数(平均値)を示している。
【0042】
・期間P0(時刻t0~時刻t1):着席
・期間P1(時刻t1~t2の間):離席
・期間P2(時刻t2~t3の間):着席
・期間P3(時刻t3~t4の間):離席
・期間P4(時刻t4~t5の間):着席
・期間P5(時刻t5~t6の間):離席
・期間P6(時刻t6~t7の間):着席
・期間P7(時刻t7~t8の間):離席
【0043】
図6及び図7が示すように、管理サーバ5は、利用者が着席している期間(P0,P2,P4,P6)ではタグT1,T2のタグ情報をほとんど受信できないのに対して、利用者が離席している期間(P1,P3,P5,P7)ではタグT1,T2のタグ情報を受信できる頻度が高いことがわかる。そのため、タグ情報の受信頻度を所定の閾値と比較することで、利用者の離席又は着席を判定することができる。
【0044】
また、図6及び図7が示すように、利用者が離席した直後の時刻t1,t3,t5,t7では、管理サーバ5がタグ情報を直ちに受信できるようになるとともに、タグT1,T2からのセンサデータが示す温度が高く、そこからセンサデータが示す温度は椅子3が冷却されるとともに徐々に低下していくことがわかる。
【0045】
以上説明したように、一実施形態の離着席検知システム1では、椅子3に取り付けられたタグT1,T2は、小型かつ低消費電力で動作し、少なくともタグIDを含むパケットを例えば定期的に発信し、管理サーバ5がタグIDを無線装置2又は利用者端末4を介して取得するように構成される。そして、管理サーバ5は、タグIDを取得したか否かに基づいて、椅子3の利用者が椅子3に着席しているか否かを決定する。したがって、一実施形態の離着席検知システム1によれば、エリアAR内の各椅子3の座面又は背もたれ面にタグを取り付けるだけでよく、椅子3に利用者が着席しているか否かを従来よりも簡便に検知することができる。
【0046】
図6及び図7に示したように、椅子3に着席していた利用者が離席した直後は、椅子3の座面及び背もたれ面が温度上昇する。すなわち、利用者が着席している間は、利用者の体の一部が座面タグT1及び背もたれ面タグT2を覆うため各タグはパケットを正常に発信できないが、利用者が離席した直後は、各タグはパケットを正常に発信できるようになるとともに、パケットに含まれるセンサデータは高い温度を示すようになる。そこで、管理サーバ5が取得したタグ情報に含まれるセンサデータが所定温度よりも高い値を示す場合には、それまで荷物等ではなく利用者が着席していたことをより精度良く判断することができる。
【0047】
一実施形態では、図8に示すように、エリアAR内の室温を測定するためのタグT3,T4を椅子3に取り付けてもよい。図8は、椅子3の背面図を示している。図8では、2つのタグを取り付けているがその限りではなく、単一のタグを椅子3に取り付けてもよい。また、図8では、椅子3の背もたれ部32の裏側にタグT3,T4を取り付けているが、タグの取り付け場所はその限りではない。利用者が着席している場合に利用者による体温の影響を受けない場所であれば如何なる場所にタグT3,T4を取り付けてもよい。例えば、代替場所として椅子3の脚部や背もたれ部32の側面等が考えられる。タグT3,T4は、それぞれ第2無線タグの一例である。
タグT3,T4は、椅子3において利用者の体が接触しない位置に取り付けられているため、利用者の着席/離席に関わらず管理サーバ5がタグ情報を受信可能である。
【0048】
前述したように、着席していた利用者が離席した直後は、タグT1,T2から取得するセンサデータが示す温度の値は室温よりも高い値となる。そこで、一実施形態では、タグT1又はタグT2から取得するセンサデータが示す温度の値が、タグT3又はタグT4から取得するセンサデータが示す温度の値(つまり、室温)よりも高い場合に、それまで利用者が着席していたと判断してもよい。それによって、タグT1,T2から取得するセンサデータが示す温度のみに基づいて判断するよりも精度良く、それまで利用者が着席していたと判断できる。
【0049】
図9に、椅子3にタグT3,T4を取り付けてタグT1,T2と同様にしてセンサデータが示す温度を測定した結果を示す。図9に示すように、時刻t0~t8の全時間帯においてタグT3,T4のタグ情報を受信でき、タグT3,T4からのセンサデータが示す温度の値は、全時間帯で概ね室温の17.5~20℃の範囲を示した。すなわち、利用者が離席した直後の時刻t1,t3,t5,t7では、タグT1,T2からのセンサデータが示す温度は、タグT3,T4からのセンサデータが示す温度の値よりも十分に高い値となっていた。
【0050】
上述したタグT1,T2は、周囲の電波からエネルギーを得て動作する環境発電型の無線タグであるため、長期間の動作に適している。しかし、適用される無線タグは環境発電型のものに限られず、例えばUHF帯で動作するRFIDタグであってもよい。その場合、無線装置2に、RFIDタグと交信するためのリーダライタ装置を設けるとよい。
【0051】
以上、本発明の情報処理システム、情報処理方法、及び、プログラムの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更、上記の各実施形態の組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…離着席検知システム
T1,T2,T3,T4…タグ
11…制御部
111…メモリ
12…アンテナ
13…ハーベスティング部
131…エネルギーストレージ
14…電圧制御部
15…RFトランシーバ
16…センサ
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
23…RFトランシーバ
24…通信部
3…椅子
31…座面部
32…背もたれ部
4…利用者端末
41…制御部
42…ストレージ
43…操作入力部
44…表示部
45…第1通信部
46…第2通信部
5…管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
NW…ネットワーク
図1
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図9