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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155782
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電磁連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/10 20060101AFI20221006BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16D27/10 A
H01F7/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059179
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000185248
【氏名又は名称】小倉クラッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 由典
(72)【発明者】
【氏名】原 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 真也
(72)【発明者】
【氏名】高原 利浩
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AB06
(57)【要約】
【課題】フィールドコア内のデッドスペースを最少にしてフィールドコアの軸線方向への小型化または電磁コイルの巻数増加を図る。
【解決手段】電磁コイル17と、穴33を有するフィールドコア16と、端子部43を有し、穴33に通されてフィールドコア16に支持された端子台71と、端子部43に設けられた一対の端子44とを備える。端子44を通して端子台71を貫通する一対の第1の貫通孔47を備える。端子44には、第1の貫通孔47に通されたマグネットワイヤ34と、外部接続用の一対のリード線56,57とが半田付けされる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットワイヤを巻回させて形成された電磁コイルと、
前記電磁コイルを収容する凹部を有しかつ前記凹部の壁を貫通するように形成された穴を有するフィールドコアと、
前記フィールドコアの外側に突出する端子部を有し、前記穴に通されて前記フィールドコアに支持された端子台と、
前記端子部に設けられた一対の端子と、
前記端子を通して前記端子台を貫通し、前記フィールドコアの外と前記凹部の内部とを連通する一対の貫通孔とを備え、
前記一対の端子のうちの一方の端子には、この端子を貫通する一方の前記貫通孔に通されて前記一方の端子から突出した前記マグネットワイヤの巻き始め端部と、外部接続用の一対のリード線のうちの一方のリード線とが半田付けされ、
前記一対の端子のうちの他方の端子には、この端子を貫通する他方の前記貫通孔に通されて前記他方の端子から突出した前記マグネットワイヤの巻き終わり端部と、前記外部接続用の一対のリード線のうちの他方のリード線とが半田付けされていることを特徴とする電磁連結装置。
【請求項2】
請求項1記載の電磁連結装置において、
前記端子台は、前記外部接続用の一対のリード線を前記一対の端子に沿うように保持する一対のリード線保持部を有し、
前記一対のリード線のうちの一方のリード線は、前記マグネットワイヤの前記巻き始め端部と交差するように前記一方の端子上に導かれ、
前記一対のリード線のうちの他方のリード線は、前記マグネットワイヤの前記巻き終わり端部と交差するように前記他方の端子上に導かれていることを特徴とする電磁連結装置。
【請求項3】
請求項2記載の電磁連結装置において、
さらに、前記端子台の内部に収容されて前記一方の端子に一端が接続されるとともに前記他方の端子に他端が接続されたサージ電圧吸収部材を備えていることを特徴とする電磁連結装置。
【請求項4】
請求項3記載の電磁連結装置において、
前記サージ電圧吸収部材の前記一端と前記他端は、それぞれリードによって形成され、
前記端子台と前記一対の端子とにおける前記一対の貫通孔と隣り合う位置に、前記フィールドコアの外と前記凹部の内部とを連通する別の一対の貫通孔が穿設され、
前記別の一対の貫通孔に前記サージ電圧吸収部材の前記一端となるリードと前記他端となるリードとが通され、
前記サージ電圧吸収部材の前記一端となるリードは、前記マグネットワイヤの前記巻き始め端部と協働して前記一方のリード線を挟むように前記一方の端子から突出し、これらとともに前記一方の端子に半田付けされ、
前記サージ電圧吸収部材の前記他端となるリードは、前記マグネットワイヤの前記巻き終わり端部と協働して前記他方のリード線を挟むように前記他方の端子から突出し、これらとともに前記他方の端子に半田付けされていることを特徴とする電磁連結装置。
【請求項5】
請求項3記載の電磁連結装置において、
前記サージ電圧吸収部材は、半田付け用ランドがパッケージの一端と他端とに設けられた表面実装部品として形成され、前記一方の端子と前記他方の端子とに表面実装されていることを特徴とする電磁連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチや電磁ブレーキなどの電磁連結装置に関し、特に、電磁コイルのマグネットワイヤと外部接続用のリード線およびサージ電圧吸収部材との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁クラッチや電磁ブレーキなどの電磁連結装置においては、例えば特許文献1に記載されているように、環状に形成された電磁コイルがフィールドコアの環状凹部に収容されている。特許文献1に開示されている電磁コイルの巻き始め端部と巻き終わり端部には、外部接続用のリード線とサージ電圧吸収部材とがそれぞれ結線されている。このため、図17に示すように、フィールドコア1の環状凹部2の内側底面2aと、環状凹部2内に収容された電磁コイル3の側面3aとの間にリード線4が配線されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭58-8998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図17に示すように電磁コイル3の側面3aとフィールドコア1の内側底面2aとの間にリード線4が位置していると、図17中に符号Sで示すデッドスペースが生じる。このデッドスペースSは、フィールドコア1内で電磁コイル3を配置することができないスペースである。このため、図17に示すような従来の電磁連結装置のフィールドコア1は、デッドスペースSの分だけ軸線方向(図17においては上下方向)に大型化するし、電磁コイル3の巻数が少なくなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、フィールドコア内のデッドスペースを最少にしてフィールドコアの軸線方向への小型化または電磁コイルの巻数増加を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る電磁連結装置は、マグネットワイヤを巻回させて形成された電磁コイルと、前記電磁コイルを収容する凹部を有しかつ前記凹部の壁を貫通するように形成された穴を有するフィールドコアと、前記フィールドコアの外側に突出する端子部を有し、前記穴に通されて前記フィールドコアに支持された端子台と、前記端子部に設けられた一対の端子と、前記端子を通して前記端子台を貫通し、前記フィールドコアの外と前記凹部の内部とを連通する一対の貫通孔とを備え、前記一対の端子のうちの一方の端子には、この端子を貫通する一方の前記貫通孔に通されて前記一方の端子から突出した前記マグネットワイヤの巻き始め端部と、外部接続用の一対のリード線のうちの一方のリード線とが半田付けされ、前記一対の端子のうちの他方の端子には、この端子を貫通する他方の前記貫通孔に通されて前記他方の端子から突出した前記マグネットワイヤの巻き終わり端部と、前記外部接続用の一対のリード線のうちの他方のリード線とが半田付けされているものである。
【0007】
本発明は、前記電磁連結装置において、前記端子台は、前記外部接続用の一対のリード線を前記一対の端子に沿うように保持する一対のリード線保持部を有し、前記一対のリード線のうちの一方のリード線は、前記マグネットワイヤの前記巻き始め端部と交差するように前記一方の端子上に導かれ、前記一対のリード線のうちの他方のリード線は、前記マグネットワイヤの前記巻き終わり端部と交差するように前記他方の端子上に導かれていてもよい。
【0008】
本発明は、前記電磁連結装置において、さらに、前記端子台の内部に収容されて前記一方の端子に一端が接続されるとともに前記他方の端子に他端が接続されたサージ電圧吸収部材を備えていてもよい。
【0009】
本発明は、前記電磁連結装置において、前記サージ電圧吸収部材の前記一端と前記他端は、それぞれリードによって形成され、前記端子台と前記一対の端子とにおける前記一対の貫通孔と隣り合う位置に、前記フィールドコアの外と前記凹部の内部とを連通する別の一対の貫通孔が穿設され、前記別の一対の貫通孔に前記サージ電圧吸収部材の前記一端となるリードと前記他端となるリードとが通され、前記サージ電圧吸収部材の前記一端となるリードは、前記マグネットワイヤの前記巻き始め端部と協働して前記一方のリード線を挟むように前記一方の端子から突出し、これらとともに前記一方の端子に半田付けされ、前記サージ電圧吸収部材の前記他端となるリードは、前記マグネットワイヤの前記巻き終わり端部と協働して前記他方のリード線を挟むように前記他方の端子から突出し、これらとともに前記他方の端子に半田付けされていてもよい。
【0010】
本発明は、前記電磁連結装置において、前記サージ電圧吸収部材は、半田付け用ランドがパッケージの一端と他端とに設けられた表面実装部品として形成され、前記一方の端子と前記他方の端子とに表面実装されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部接続用のリード線がマグネットワイヤにフィールドコアの外で接続されるから、フィールドコア内に外部接続用のリード線を配線するスペースが不要になる。したがって、フィールドコアと電磁コイルとの間に発生していたデッドスペースが最少になるから、フィールドコアの軸線方向への小型化または電磁コイルの巻線増加を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る電磁連結装置の断面図である。
図2図2は、外部接続用のリード線が接続されたフィールドコア組立体の正面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III線断面図である。
図4図4は、フィールドコアを示すである。
図5図5は、電磁コイルを示す図である。
図6図6は、第1の実施の形態による端子台の断面図である。
図7図7は、端子台の斜視図である。
図8図8は、端子台の平面図である。
図9図9は、端子台のフィールドコア側から見た底面図である。
図10図10は、図8におけるX-X線断面図である。
図11図11は、図8におけるXI-XI線断面図である。
図12図12は、図8におけるXII-XII線断面図である。
図13図13は、第2の実施の形態による端子台の斜視図である。
図14図14は、第2の実施の形態による端子台の斜視断面図である。
図15図15は、第2の実施の形態による端子台の配線を説明するための斜視図である。
図16図16は、第3の実施の形態による端子台の斜視図である。
図17図17は、従来のフィールドコアの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る電磁連結装置の一実施の形態を図1図12を参照して詳細に説明する。この実施の形態においては、本発明を電磁クラッチに適用した場合の例で説明する。
図1に示す電磁クラッチ11は、カーエアコン用コンプレッサ12の回転軸13に動力を伝達したり、この動力の伝達を遮断するためのものである。この電磁クラッチ11は、コンプレッサ12のフロントハウジング14に取付板15を介して固定された環状のフィールドコア16を備えている。フィールドコア16の内部には環状の電磁コイル17が収容されている。また、この電磁クラッチ11は、フロントハウジング14の円筒部14aに軸受18によって回転自在に支持されたロータ19を備えている。さらに、この電磁クラッチ11は、回転軸13の先端部にスプライン嵌合されてボルト20によって抜け止めされたアーマチュア組立体21を備えている。アーマチュア組立体21は、回転軸13に固定されたハブ23と、ハブ23に板ばね24を介して支持されたアーマチュア25とを備えている。
【0014】
フィールドコア16は、図2および図3に示すように全体が円環状に形成されており、回転軸13と同一軸線上に位置付けられている。また、このフィールドコア16は、図1に示すように、ロータ19に形成された環状溝19aの内部に挿入されている。
ロータ19は、環状溝19a内にフィールドコア16が挿入された状態で回転する。このロータ19は、その外周部にプーリ溝19bが形成されており、このプーリ溝19bに巻き掛けられたベルト(図示せず)を介して例えばエンジン(図示せず)の動力が伝達される。ロータ19の軸方向の一端面には、アーマチュア組立体21のアーマチュア25と対向する摩擦面19cが形成されている。以下においては、ロータ19に対してアーマチュア25が位置する方向を「電磁クラッチ11の前方」とし、この方向とは反対の方向を「電磁クラッチ11の後方」として説明を行う。
【0015】
この電磁クラッチ11においては、フィールドコア16の内部に設けられている電磁コイル17が励磁されることにより、アーマチュア25がロータ19に磁気によって吸着されてロータ19の回転がアーマチュア組立体21を介して回転軸13に伝達される。また、電磁コイル17への給電が絶たれることによって、アーマチュア25がロータ19から離間し、動力の伝達は遮断される。
【0016】
フィールドコア16には、図4(A),(B)に示すように、このフィールドコア16の周方向に延びるとともに電磁クラッチ11の前方に向けて開口する環状溝31と、環状溝31の底壁32を貫通する穴33とが形成されている。環状溝31内には、電磁コイル17が収容されている。この実施の形態においては、環状溝31が本発明でいう「電磁コイルを収容する凹部」に相当する。
電磁コイル17は、図5(A)に示すように、素線としてのマグネットワイヤ34を巻回させて円筒状に形成されている。この実施の形態による電磁コイル17は、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと巻き終わり端部34bとが、円筒状を呈する電磁コイル17の軸線方向の一端部となる後側端部17aであって、周方向において同一部分に導出されるように形成されている。電磁コイル17は、後側端部17aがフィールドコア16の環状溝31の底壁32と対向するようにフィールドコア16の環状溝31内に収容されている。
【0017】
電磁コイル17の軸線方向の他端部には、図5(B)に示すように、サーマルヒューズ35が取付けられている。このサーマルヒューズ35は、電磁コイル17の巻き線の一部となるようにマグネットワイヤ34に電気的に接続されている。
この電磁コイル17の外周面、内周面および軸線方向の両端面には、絶縁用の綿テープ36{図5(B)参照}が巻き付けられている。
フィールドコア16の環状溝31内には、電磁コイル17が挿入されている状態で絶縁性を有する注型樹脂37が充填されている。電磁コイル17は、注型樹脂37が環状溝31内で硬化することにより環状溝31内に固定されている。
【0018】
図4(A)に示すように、フィールドコア16の穴33は、フィールドコア16を電磁クラッチ11の後方から見てフィールドコア16の接線方向Aに延びる長円状に形成され、フィールドコア16の軸線方向に延びて環状溝31の底壁32を貫通している。この穴33には、図1および図3に示すように端子台41が挿入されている。
端子台41は、図6および図7に示すように、フィールドコア16の穴33に嵌合する内側筒体42と、フィールドコア16から後方に(フィールドコア16の外側に)突出する端子部43と、端子部43に設けられた一対の端子44と、端子部43からフィールドコア16の後面16a{図4(A)参照}に沿うように突出する一対の支持片45などを有している。内側筒体42と、端子部43と、一対の支持片45は、絶縁材料からなるプラスチック材料によって一体に形成されている。
【0019】
内側筒体42は、図9に示すように、その軸線方向から見てフィールドコア16の接線方向A(図9においては左右方向)に長い長円状に形成されている。図9において内側筒体42を囲むように同心円状に描かれている複数の長円は、図10に示すように端子部43と支持片45の裏面(フィールドコア16と対向する面)に形成されたシール46を現す線である。シール46は、端子台41とフィールドコア16の後面16aとの間をシールするためのもので、複数の長円状の突条46aと、複数の長円状の溝46bとによって構成されている。これらの突条46aと溝46bは、交互に並ぶように形成されている。このシール46は、環状溝31に注入された注型樹脂37が穴33と内側筒体42との間の隙間を通ってフィールドコア16の外に漏洩することを防止する。
【0020】
内側筒体42には、図10に示すように、一対の第1の貫通孔47が穿設されている。これらの第1の貫通孔47は、図11に示すように、端子44の板状に形成された板部48を通して端子台41を貫通している。このため、第1の貫通孔47は、端子台41がフィールドコア16に組み付けられた状態で、フィールドコア16の外と環状溝31の内部とを連通するようになる。図6に示すように、これらの一対の第1の貫通孔47のうちの一方の(図6においては右側の)第1の貫通孔47aには、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aが通されている。巻き始め端部34aは、一対の端子44のうち一方の端子44aを貫通して端子台41の外に突出しており、この突出部において半田49によって一方の端子44aに半田付けされている。
【0021】
また、一対の第1の貫通孔47のうちの他方の第1の貫通孔47bには、マグネットワイヤ34の巻き終わり端部34bが通されている。巻き終わり端部34bは、一対の端子44のうち他方の端子44bを貫通して端子台41の外に突出しており、この突出部において半田50によって他方の端子44bに半田付けされている。
【0022】
端子部43は、図10に示すように、内側筒体42の一端部(フィールドコア16の外側に位置する端部)に接続された板状の端子台本体51と、この端子台本体51からフィールドコア16の軸線方向であって電磁クラッチ11の後方に突出する外側筒体52とによって構成されている。
端子台本体51には一対の端子44が設けられている。これらの一対の端子44は、端子台本体51にインサート成形によって埋設されている。この実施の形態による一対の端子44は、上述した接線方向Aに所定の間隔をおいて並ぶように配設されている。
【0023】
これらの端子44は、図8に示すように、外側筒体52の内方で端子部43の平坦な外表面に沿って延びる板部48と、板部48から折り曲げられて起立し、端子台本体51から電磁クラッチ11の後方に向けて突出する複数の凸部53とによって形成されている。板部48は、フィールドコア16の接線方向Aとは直交するフィールドコア16の径方向Bに長くなるように形成されている。また、端子44は、板部48の表面が端子台本体51の表面に露出するように端子部43に埋設されている。
凸部53は、接線方向Aにおいて板部48の両端部に設けられている。
【0024】
外側筒体52は、図8に示すように、フィールドコア16の軸線方向から見て、角が丸められた角筒となる形状に形成されている。外側筒体52は、その開口部がフィールドコア16の接線方向Aと径方向Bとに延びるように形成されている。この外側筒体52の内部は、図6に示すように最終的に封止材54が充填され、封止材54によって封止される。
外側筒体52の接線方向Aに延びる2つの側壁52a,52bのうちフィールドコア16の径方向の外側(図8においては上側)に位置する一方の側壁52aは、図7および図8に示すように、他方の側壁52bより壁厚が厚くなるように形成されており、一対の溝55が形成されている。
【0025】
これらの溝55は、電磁コイル17に給電するための一対の外部接続用のリード線56,57を保持するためのもので、端子台本体51に設けられている一対の端子44と隣り合う位置において側壁52aを厚み方向(径方向B)に貫通している。これらの溝55の溝壁には、リード線56,57の被覆56a,57a(図7参照)と係合してリード線56,57が抜けることを規制する複数のリップ58が形成されている。この溝55にリード線56,57を通すことにより、リード線56,57の先端部に露出している導体56b,57bが端子44に沿う状態でリード線56,57が端子台41に保持されるようになる。
この実施の形態においては、これらの一対の溝55が本発明でいう「リード線保持部」に相当する。
【0026】
一対の外部接続用のリード線56,57のうちの一方のリード線56の導体56bは、図6に示すように、一方の第1の貫通孔47aに挿通されたマグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと交差するように一方の端子44上に導かれ、巻き始め端部34aとともに半田49によって一方の端子44aに半田付けされている。また、他方のリード線57の導体57bは、巻き終わり端部34bと交差するように他方の端子44上に導かれ、巻き終わり端部34bとともに半田50によって他方の端子44bに半田付けされている。
【0027】
図10に示すように、端子台本体51における内側筒体42の内方となる部分であって、一対の第1の貫通孔47,47と隣り合う位置には、一対の第2の貫通孔61,61が穿設されている。第2の貫通孔61は、図12に示すように、端子44の板部48と端子台本体51とを貫通している。このため、端子台41がフィールドコア16に組み付けられた状態においては、第2の貫通孔61によってフィールドコア16の外とフィールドコア16の環状溝31の内部とが連通されるようになる。この実施の形態においては、第2の貫通孔61が本発明でいう「別の一対の貫通孔」に相当する。
【0028】
また、図9および図10に示すように、端子台41をフィールドコア16側から見た状態において一対の第2の貫通孔61より内側には、4つの突体62が設けられている。これらの突体62は、端子台本体51の前面(フィールドコア16と対向する面)における接線方向Aの2箇所と、径方向Bの2箇所とに配設されている。これらの4つの突体62によって囲まれた空間には、図6に示すように、ダイオード63のパッケージ部63aが挿入されている。
【0029】
ダイオード63は、電磁コイル17の給電が遮断されたときに発生するサージ電圧を吸収するためのものである。この実施の形態においては、このダイオード63によって本発明でいう「サージ電圧吸収部材」が構成されている。このダイオード63は、円柱状に形成されたパッケージ部63aと、パッケージ部63aの両端から導出するリード63b,63cとによって構成されている。この実施の形態においては、リード63b,63cが本発明でいう「サージ電圧吸収部材の一端と他端」に相当する。
【0030】
ダイオード63の一対のリード63b,63cのうち、図6において右側に位置する、ダイオード63の一端となる一方のリード63bは、一対の第2の貫通孔61のうちの一方の第2の貫通孔61aに挿通されている。この一方のリード63bは、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと協働して一方のリード線56の導体56bを挟むように一方の端子44aから突出し、これらとともに一方の端子44aに半田付けされている。このため、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと、一方のリード線56と、ダイオード63の一方のリード63bとが一方の端子44a上で半田49を介して互いに導通される。
【0031】
ダイオード63の一対のリード63b,63cのうち、図6において左側に位置する、ダイオード63の他端となる他方のリード63cは、一対の第2の貫通孔61のうちの他方の第2の貫通孔61bに挿通されている。この他方のリード63cは、マグネットワイヤ34の巻き終わり端部34bと協働して他方のリード線57の導体57bを挟むように他方の端子44bから突出し、これらとともに他方の端子44bに半田付けされている。このため、マグネットワイヤ34の巻き終わり端部34bと、他方のリード線57と、ダイオード63の他方のリード63cとが他方の端子44b上で半田50を介して互いに導通される。
【0032】
端子台41の支持片45は、図2に示すように、フィールドコア16の後面16aに沿うように形成されており、取付板15に設けられた凸片64と後面16aとの間に挿入されている。凸片64は、支持片45を後面16aと協働して挟持している。
【0033】
このように構成された電磁クラッチ11を組み立てるには、先ず、端子台41をフィールドコア16に組み付ける。このとき、端子台41の内側筒体42の内部に予めダイオード63を組み付けておき、一方のリード63bを一方の第2の貫通孔61aに挿通させるとともに他方のリード63cを他方の第2の貫通孔61bに挿通させる。端子台41をフィールドコア16に組み付けるにあたっては、取付板15の凸片64を塑性変形させて支持片45をフィールドコア16に押し付けるようにして行う。
【0034】
次に、フィールドコア16のマグネットワイヤ34の巻き始め端部34aを一方の第1の貫通孔47aに挿通させるとともに、巻き終わり端部34bを他方の第1の貫通孔47bに挿通させ、フィールドコア16の環状溝31に電磁コイル17を挿入する。そして、環状溝31内に注型樹脂37を注入し、この注型樹脂37を固化させる。
その後、端子台41の一対の溝55に外部接続用のリード線56,57を通し、これらのリード線56,57の導体56b,57bを一対の端子44の上に導く。
【0035】
このとき、リード線56,57の被覆56a,57aを端子44の一対の凸部53の間に通して保持させ、図6に示すように、リード線56,57の導体56b,57bを各端子44の上でマグネットワイヤ34の巻き始め端部34a、巻き終わり端部34bとダイオード63のリード63b,63cとの間に挿入する。そして、端子44毎に導体56b,57bと、巻き始め端部34aおよび巻き終わり端部34bと、リード63b,63cとを各端子44に半田付けする。
このように半田付けした後、外側筒体52の内部に封止材54を注入し、外側筒体52内を封止する。
【0036】
この電磁クラッチ11においては、マグネットワイヤ34と外部接続用のリード線56,57との接続部が端子台41の内部であってフィールドコア16の外に設けられている。このため、フィールドコア16の環状溝31内に生じるデッドスペースを最少にすることができ、従来の電磁連結装置と較べてフィールドコア16の軸線方向への小型化または電磁コイル17の巻数増加を図ることができる。
また、電磁コイル17にリード線56,57とダイオード63とを接続するにあたって、接続を端子台41上で行うことができるから、従来の電磁連結装置の電磁コイルと較べて各種の結線端子の数を減らすことができるとともに、電磁コイル17への絶縁処理を簡素化することができる。
【0037】
この実施の形態による端子台41は、外部接続用の一対のリード線56,57を一対の端子44に沿うように保持する一対の溝55(リード線保持部)を有している。一対のリード線56,57のうちの一方のリード線56は、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと交差するように一方の端子44a上に導かれている。一対のリード線56,57のうちの他方のリード線57は、マグネットワイヤ34の巻き終わり端部34bと交差するように他方の端子44b上に導かれている。
外部接続用のリード線56,57を端子台41の溝55に保持させたときには、導体56b,57bが端子44に対して浮き上がることがある。このようになると導体56b,57bを端子44に半田付けすることが難しくなる。しかし、導体56b,57bがマグネットワイヤ34と交差するように端子44上に導かれているから、マグネットワイヤ34に沿うように端子44から盛り上がった半田49,50の中に導体56b,57bが入るようになり、導体56b,57bも半田付けされるようになる。したがって、この構成を採ることにより、半田付けを容易にかつ確実に行うことができるようになる。
【0038】
この実施の形態においては、端子台41の内部(内側筒体42の内部)に収容されて一方の端子44aに一端(リード63b)が接続されるとともに他方の端子44bに他端(リード63c)が接続されたダイオード63(サージ電圧吸収部材)を備えている。このため、この実施の形態による電磁クラッチ11は、フィールドコア16と、電磁コイル17と、端子台41と、ダイオード63とからなるフィールドコア組立体に外部接続用のリード線56,57を接続する構造のものとなる。外部接続用のリード線56,57としては、電磁クラッチ11の使用環境に適応するものを使用することができる。すなわち、多品種なリード線の仕様要求に対して、仕様毎のリード線組立を用意することで対応が可能となる。この場合、フィールドコア組立体は、共通部品化が可能である。
【0039】
この実施の形態においては、サージ電圧吸収部材としてダイオード63が用いられている。端子台41と一対の端子44とにおける一対の第1の貫通孔47と隣り合う位置に、フィールドコア16の外と環状溝31の内部とを連通する一対の第2の貫通孔61が穿設されている。一対の第2の貫通孔61にダイオード63の一方のリード63bと他方のリード63cとが通されている。ダイオード63の一方のリード63bは、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと協働して一方のリード線56の導体56bを挟むように一方の端子44aから突出し、これらとともに一方の端子44aに半田付けされている。
【0040】
ダイオード63の他端のリード63cは、マグネットワイヤ34の巻き終わり端部34bと協働して他方のリード線57の導体57bを挟むように他方の端子44bから突出し、これらとともに他方の端子44bに半田付けされている。
このため、マグネットワイヤ34とダイオード63のリード63b,63cとに沿うように端子44から盛り上がった半田の中央部に導体56b,57bが入るようになるから、半田付けの信頼性がより一層高くなり、半田付け作業がより一層簡単になる。
【0041】
(第2の実施の形態)
端子台は図13図14に示すように構成することができる。図13図14において、図1図12によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図13に示す端子台71は、角筒状を呈する筒体72と、この筒体72の内部に設けられた板状の端子台本体73とを備えている。筒体72は、図14に示すように、フィールドコア16の穴33に嵌合して一部がフィールドコア16の外に突出する形状に形成されている。
【0042】
フィールドコア16の内部に位置する筒体72の内端部には、穴33の開口幅より大きいフランジ74が設けられている。この端子台71は、フランジ74がフィールドコア16の内側底面16bに当接する状態で環状溝31内から穴33内に嵌合されている。
端子台本体73は、筒体72の内部をフィールドコア16の外に向けて開口する外側空間75{図13(A)参照}とフィールドコア16内に開口する内側空間76{図13(B)参照}とに仕切っている。端子台本体73には、一対の端子44がインサート成形によって埋設されている。端子44の表面は、外側空間75に露出している。
【0043】
これらの端子44には一対の第1の貫通孔47と一対の第2の貫通孔61とが開口している。これらの第1および第2の貫通孔47,61は、それぞれ端子44と端子台本体73とを貫通するように形成されている。
第1の貫通孔47には、マグネットワイヤ34の巻き始め端部34aと巻き終わり端部34bとが通されている。第2の貫通孔61には、筒体72内の内側空間76に収容されたサージ電圧吸収部材としてのダイオード63の一方のリード63bと他方のリード63cとが通されている。
【0044】
筒体72におけるフィールドコア16の外に突出する外端部には、一対の外部接続用のリード線56,57を保持するための一対の貫通穴77が形成されている。これらの貫通穴77は、図14に示すように、筒体72における、フィールドコア16の径方向の外側となる部分であって、一対の端子44と隣り合う部分を、フィールドコア16の径方向Bに貫通するように形成されている。これらの貫通穴77にリード線56,57が通されることにより、図15に示すように、端子44上に突出しているマグネットワイヤ34とダイオード63のリード63b,63cに対してリード線56,57の導体56b,57bが交差し、マグネットワイヤ34とリード63b,63cとの間に導体56b,57bが挿入される。これらのマグネットワイヤ34と、リード63b,63cと、導体56b,57bは、半田49,50によって端子44に半田付けされている。なお、図示してはいないが、筒体72の外端部内、すなわち外側空間75は、半田付けが終了した後に封止材54が充填されて封止される。
【0045】
この実施の形態による端子台71は、フィールドコア16の環状溝31内から穴33に挿入されてフィールドコア16に組み付けられる。この端子台71には、予めダイオード63を組み付けておく。そして、第1の貫通孔47にマグネットワイヤ34を通して環状溝31内に電磁コイル17が収容された後、環状溝31内に注型樹脂37を充填する。この注型樹脂37が固化することにより、端子台71がフィールドコア16に固定される。
【0046】
この実施の形態においても、マグネットワイヤ34と外部接続用のリード線56,57との接続部が端子台71の内部であってフィールドコア16の外に設けられている。このため、フィールドコア16の環状溝31内に生じるデッドスペースを最少にすることができ、従来の電磁連結装置と較べてフィールドコア16の軸線方向への小型化または電磁コイル17の巻数増加を図ることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
端子台は図16に示すように構成することができる。図16において、図1図12(第1の実施の形態)によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図16に示す端子台81は、一対の端子44にサージ電圧吸収部材としてのダイオード82が表面実装されている。この実施の形態によるダイオード82は、角柱状のパッケージ82aと、このパッケージ82aの一端と他端とにそれぞれ設けられた半田付け用ランド82b,82cとを備えた表面実装部品である。
【0048】
このダイオード82は、端子台81の一方の端子44aと他方の端子44bとにそれぞれランド82b,82cが重ねられた状態で、これらの端子44a,44bに図示していない半田を介して表面実装されている。
この実施の形態を採る場合の端子台81には、上述した実施の形態を採るときの第2の貫通孔61は設けられていない。
この実施の形態で示すようにサージ電圧吸収部材(ダイオード82)が端子台81に表面実装される構成を採ることにより、リードを有するサージ電圧吸収部材を使用する場合と較べてサージ電圧吸収部材の配線作業が簡略化されるから、電磁連結装置の生産性の向上を図ることができる。
【0049】
上述した各実施の形態においては本発明を電磁クラッチに適用する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、電磁ブレーキなどの他の電磁連結装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11…電磁クラッチ(電磁連結装置)、16…フィールドコア、17…電磁コイル、31…環状溝(凹部)、33…穴、34…マグネットワイヤ、34a…巻き始め端部、34b…巻き終わり端部、41,71,63b,63c…リード、43…端子部、44…端子、49,50…半田、47…第1の貫通孔、55…溝、56,57…外部接続用のリード線、61…第2の貫通孔、63,82…ダイオード(サージ電圧吸収部材)、77…貫通穴(リード線保持部)、81…端子台、82a…パッケージ、82b,82c…半田付け用ランド。
図1
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