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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155792
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】曇り止めシステム
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/02 20060101AFI20221006BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20221006BHJP
   B60S 1/54 20060101ALI20221006BHJP
   B60S 1/62 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60S1/02 310
B60H1/32 626B
B60S1/54 F
B60S1/62 110A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059195
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 大
(72)【発明者】
【氏名】中島 匡貴
【テーマコード(参考)】
3D225
3L211
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AA11
3D225AB01
3D225AC05
3D225AC09
3D225AD02
3D225AD08
3D225AD22
3D225AF26
3D225AF28
3D225AG73
3D225AG78
3L211BA32
3L211BA42
3L211EA04
3L211EA12
3L211EA13
3L211EA56
3L211EA72
3L211FB08
3L211GA03
3L211GA10
(57)【要約】
【課題】電力の消費効率を高めつつ、窓の曇りを効果的に抑制する。
【解決手段】車内空間から窓を介して車外空間を撮影する撮影装置10を備えた車両1のための曇り止めシステムXであって、車内空間の状態を検出する第1検出装置41、42と、乗員のバイタルデータを取得する取得装置61と、窓の曇りを抑制する曇り止め装置19、20と、曇り止め装置19、20を制御する制御装置26と、を備え、制御装置26は、第1検出装置41、42の検出結果に基づいて現在時刻における車内空間の水蒸気量である初期水蒸気量を推定し、取得装置61の取得結果に基づいて乗員が単位時間当たりに放出する水蒸気量である放出水蒸気量を推定し、初期水蒸気量の推定値と放出水蒸気量の推定値とに基づいて窓の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて曇り止め装置19、20を制御する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内空間から窓を介して車外空間を撮影する撮影装置を備えた車両のための曇り止めシステムであって、
前記車内空間の状態を検出する第1検出装置と、
乗員のバイタルデータを取得する取得装置と、
前記窓の曇りを抑制する曇り止め装置と、
前記曇り止め装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1検出装置の検出結果に基づいて現在時刻における前記車内空間の水蒸気量である初期水蒸気量を推定し、前記取得装置の取得結果に基づいて前記乗員が単位時間当たりに放出する水蒸気量である放出水蒸気量を推定し、前記初期水蒸気量の推定値と前記放出水蒸気量の推定値とに基づいて前記窓の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて前記曇り止め装置を制御することを特徴とする曇り止めシステム。
【請求項2】
前記取得装置は、前記乗員に装着されるウェアラブルデバイスであることを特徴とする請求項1に記載の曇り止めシステム。
【請求項3】
前記ウェアラブルデバイスは、前記バイタルデータとして、前記乗員の身長、体重、心拍数、及び体温を少なくとも取得することを特徴とする請求項2に記載の曇り止めシステム。
【請求項4】
前記車外空間の状態及び/又は前記車両の走行状態を検出する第2検出装置を更に備え、
前記制御装置は、前記第2検出装置の検出結果に基づいて前記窓の温度を推定し、前記初期水蒸気量の推定値と前記放出水蒸気量の推定値と前記窓の温度の推定値とに基づいて前記窓の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて前記曇り止め装置を制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記初期水蒸気量の推定値に前記放出水蒸気量の推定値を加えることで補正水蒸気量を算出し、前記窓の温度の推定値に基づいて飽和水蒸気量を算出し、前記補正水蒸気量と前記飽和水蒸気量とに基づいて前記窓が所定時間内に曇るか否かを判定し、前記窓が所定時間内に曇ると判定した場合に、前記曇り止め装置の稼働を開始するか、又は、前記曇り止め装置の出力を増加させることを特徴とする請求項4に記載の曇り止めシステム。
【請求項6】
前記第2検出装置は、前記車外空間の温度を検出する車外温度センサと、車速を検出する車速センサと、を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の曇り止めシステム。
【請求項7】
前記第1検出装置は、前記車内空間の温度を検出する車内温度センサと、前記車内空間の湿度を検出する車内湿度センサと、を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【請求項8】
前記曇り止め装置は、前記窓を加熱する加熱装置及び/又は前記車内空間の空気を調整する空調装置を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓の曇りを抑制するための曇り止めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の窓の曇りを抑制するための曇り止めシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両等の移動体に取り付けられる窓ガラスと、窓ガラスの室内側表面に設けられる防曇膜と、窓ガラスの室内側表面の温度を検出する温度センサと、移動体の室内の温度及び湿度を検出する温湿度センサと、防曇膜に付着する水分を気化する乾燥手段と、温度センサによって検出されるガラス温度と、温湿度センサによって検出される室内の温度及び湿度とに基づいて防曇膜に曇りが生じるまでの時間を推測し、推測した時間に基づいて乾燥手段を作動させる回路を有する制御部とを含む、窓ガラスシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/189353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、複数の乗員を乗せた車両が寒冷地を走行する場合に、車両の窓が曇ることがある。その要因の一つとして、乗員が放出する水蒸気が窓の表面付近で冷やされて凝集することが挙げられる。
【0006】
上記の従来技術では、このような乗員が放出する水蒸気の影響を考慮せずに防曇膜に曇りが生じるまでの時間を推測しているため、防曇膜に曇りが生じるまでの時間を正確に推測することは困難である。そのため、乾燥手段の作動時間が短すぎて防曇膜の曇りを抑制できなかったり、乾燥手段の作動時間が長すぎて電力を無駄に消費してしまったりする恐れがある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、電力の消費効率を高めつつ、窓の曇りを効果的に抑制することが可能な曇り止めシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車内空間(SP1)から窓(6)を介して車外空間(SP2)を撮影する撮影装置(10)を備えた車両(1)のための曇り止めシステム(X)であって、前記車内空間の状態を検出する第1検出装置(41、42)と、乗員のバイタルデータを取得する取得装置(61)と、前記窓の曇りを抑制する曇り止め装置(19、20)と、前記曇り止め装置を制御する制御装置(26)と、を備え、前記制御装置は、前記第1検出装置の検出結果に基づいて現在時刻における前記車内空間の水蒸気量である初期水蒸気量を推定し、前記取得装置の取得結果に基づいて前記乗員が単位時間当たりに放出する水蒸気量である放出水蒸気量を推定し、前記初期水蒸気量の推定値と前記放出水蒸気量の推定値とに基づいて前記窓の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて前記曇り止め装置を制御する。
【0009】
この態様によれば、初期水蒸気量の推定値と放出水蒸気量の推定値とに基づいて窓の将来の曇りを正確に予測することができるため、曇り止め装置の稼働時間や出力を適正化することができる。そのため、電力の消費効率を高めつつ、窓の曇りを効果的に抑制することができる。
【0010】
上記の態様において、前記取得装置は、前記乗員に装着されるウェアラブルデバイス(61)であっても良い。
【0011】
この態様によれば、車両に取得装置を設けることなく、乗員のバイタルデータを取得することができる。そのため、車両の構成の複雑化を抑制しつつ、窓の将来の曇りを正確に予測することができる。
【0012】
上記の態様において、前記ウェアラブルデバイスは、前記バイタルデータとして、前記乗員の身長、体重、心拍数、及び体温を少なくとも取得しても良い。
【0013】
この態様によれば、乗員のバイタルデータに基づいて放出水蒸気量を正確に推定することができる。
【0014】
上記の態様において、前記曇り止めシステムは、前記車外空間の状態及び/又は前記車両の走行状態を検出する第2検出装置(43、44)を更に備え、前記制御装置は、前記第2検出装置の検出結果に基づいて前記窓の温度を推定し、前記初期水蒸気量の推定値と前記放出水蒸気量の推定値と前記窓の温度の推定値とに基づいて前記窓の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて前記曇り止め装置を制御しても良い。
【0015】
この態様によれば、窓の将来の曇りを更に正確に予測することができるため、曇り止め装置の稼働時間や出力を更に適正化することができる。
【0016】
上記の態様において、前記制御装置は、前記初期水蒸気量の推定値に前記放出水蒸気量の推定値を加えることで補正水蒸気量を算出し、前記窓の温度の推定値に基づいて飽和水蒸気量を算出し、前記補正水蒸気量と前記飽和水蒸気量とに基づいて前記窓が所定時間内に曇るか否かを判定し、前記窓が所定時間内に曇ると判定した場合に、前記曇り止め装置の稼働を開始するか、又は、前記曇り止め装置の出力を増加させても良い。
【0017】
この態様によれば、補正水蒸気量と飽和水蒸気量とに基づいて窓が所定時間内に曇るか否かを正確に判定することができる。そのため、曇り止め装置の稼働を適切なタイミングで開始するか、又は、曇り止め装置の出力を適切なタイミングで増加させることができる。
【0018】
上記の態様において、前記第2検出装置は、前記車外空間の温度を検出する車外温度センサ(43)と、車速を検出する車速センサ(44)と、を含んでも良い。
【0019】
この態様によれば、車外空間の温度と車速とに基づいて窓の温度を正確に推定することができる。そのため、窓の将来の曇りを更に正確に予測することができる。
【0020】
上記の態様において、前記第1検出装置は、前記車内空間の温度を検出する車内温度センサ(41)と、前記車内空間の湿度を検出する車内湿度センサ(42)と、を含んでも良い。
【0021】
この態様によれば、車内空間の温度と車内空間の湿度とに基づいて初期水蒸気量をより正確に推定することができる。そのため、窓の将来の曇りを更に正確に予測することができる。
【0022】
上記の態様において、前記曇り止め装置は、前記窓を加熱する加熱装置(19)及び/又は前記車内空間の空気を調整する空調装置(20)を含んでも良い。
【0023】
この態様によれば、曇り止め装置によって窓の曇りを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の構成によれば、電力の消費効率を高めつつ、窓の曇りを効果的に抑制することが可能な曇り止めシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る車両を示す斜視図
図2】本発明の一実施形態に係るフロントウィンドウとその周辺部を示す断面図
図3】本発明の一実施形態に係る車両及びウェアラブルデバイスを示すブロック図
図4】本発明の一実施形態に係る第1~第3制御テーブルを示す説明図
図5】本発明の一実施形態に係る曇り止め制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
<車両1>
まず、図1図4を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る車両1について説明する。
【0027】
図1を参照して、本実施形態に係る車両1は、自動車である。車両1は、前後方向に長い車体2を有する。車体2の内部には車内空間SP1が形成されており、車内空間SP1の前後方向中央部には乗員を収容する車室3が設けられている。車室3には、例えば、複数の前部座席4(運転席、助手席)と、前部座席4の後方に配置される複数の後部座席5と、が設けられている。なお、本実施形態では座席が前後に2列設けられているが、他の実施形態では座席が前後に1列だけ設けられていても良いし、座席が前後に3列以上設けられていても良い。
【0028】
車体2の前部には、前部座席4の前方にフロントウィンドウ6(窓の一例)が設けられている。フロントウィンドウ6は、ガラスによって形成されている。なお、他の実施形態では、フロントウィンドウ6がガラス以外の透明性材料(例えば、透明性樹脂)によって形成されていても良い。車体2の後部には、後部座席5の後方にリアウィンドウ7が設けられている。車体2の両側部には、前部座席4及び後部座席5の側方に複数のサイドドア8が設けられており、各サイドドア8の上部にはサイドウィンドウ9が設けられている。
【0029】
図1図2を参照して、フロントウィンドウ6の上部後方には、フロントカメラ10(撮影装置の一例)が設けられている。フロントカメラ10は、車内空間SP1からフロントウィンドウ6を介して車外空間SP2(本実施形態では、車両1の前方の空間)を撮影する装置である。フロントカメラ10は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。フロントカメラ10は、フロントウィンドウ6を介して前方から入射される光を収束させるレンズと、レンズによって収束された光を電気信号に変換するセンサと、を含む。なお、図2の矢印Pは、フロントカメラ10の視野(撮影可能範囲)を示している。
【0030】
図2を参照して、フロントカメラ10は、ブラケット11を介してフロントウィンドウ6の内面に取り付けられている。ブラケット11は、フロントカメラ10の周りに配置される本体部12と、本体部12から前方に延びるフード部13と、を含む。本体部12は、フロントウィンドウ6の内面に固定されている。フード部13は、フロントウィンドウ6と共にフロントカメラ10のレンズの前方の空間を囲んでいる。フード部13は、左右方向に延びる底壁13Aと、底壁13Aの左右両端部から上方に延びる左右両側壁13B(図2では、右側壁13Bのみを表示)と、を含む。
【0031】
図3を参照して、車両1は、推進装置14と、ブレーキ装置15と、ステアリング装置16と、HMI17(Human Machine Interface)と、ナビゲーション装置18と、加熱装置19(曇り止め装置の一例)と、空調装置20(曇り止め装置の一例)と、乗員センサ21と、外界センサ22と、車両センサ23と、制御装置26と、を備えている。
【0032】
推進装置14は、車両1に駆動力を付与する装置である。推進装置14は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び/又は電動モータを含む。
【0033】
ブレーキ装置15は、車両1に制動力を付与する装置である。ブレーキ装置15は、例えば、ブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。
【0034】
ステアリング装置16は、車輪の舵角を変える装置である。ステアリング装置16は、例えば、車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを含む。
【0035】
HMI17は、各種情報(例えば、加熱装置19の故障)を乗員に報知するとともに、乗員から入力操作を受け付ける装置である。HMI17は、例えば、タッチパネル、音声発生装置、イグニッションスイッチ等を含む。
【0036】
ナビゲーション装置18は、車両1の目的地への経路案内等を行う装置である。ナビゲーション装置18は、乗員から入力操作を受け付ける入力機器を含む。この入力機器は、HMI17の一部によって構成されていても良いし、HMI17とは別個に設けられていても良い。ナビゲーション装置18は、地図情報を記憶している。ナビゲーション装置18は、人工衛星から受信した信号に基づいて車両1の現在位置(緯度及び経度)を特定する。ナビゲーション装置18は、地図情報と車両1の現在位置と乗員が上記入力機器に入力した車両1の目的地とに基づいて、車両1の出発地(例えば、現在位置)から目的地までの経路を設定する。
【0037】
加熱装置19は、フロントウィンドウ6を加熱することでフロントウィンドウ6の曇りを抑制する装置である。図2を参照して、加熱装置19は、フロントウィンドウ6の内面に接触する複数本の金属製の電熱線28によって構成されている。複数本の電熱線28のうちの少なくとも一部は、フロントカメラ10の視野(図2の矢印P参照)内に配置されていると良い。なお、他の実施形態では、加熱装置19は、ITOフィルム(Indium Tin Oxide Film)等の透明フィルムによって構成されていても良い。また、他の実施形態では、加熱装置19は、フロントウィンドウ6に内蔵されていても良いし、フロントウィンドウ6と間隔を介して対向していても良い。
【0038】
図3を参照して、空調装置20は、車内空間SP1の空気を調整する装置である。空調装置20は、車内空間SP1及び車外空間SP2に接続されたダクトと、ダクト内に設置されるエバポレータ及びヒータコアと、ダクト内に空気の流れを発生させるブロアファンと、ブロアファンを駆動させる電動モータと、を含む。空調装置20は、風量(ブロアファンの回転数)や空調モードを切り替え可能に設けられている。上記の空調モードには、例えば、車外空間SP2の空気を車内空間SP1に導入する外気導入モードと、車内空間SP1の空気を循環させる内気循環モードと、フロントウィンドウ6に向かって空気を吹き付けるデフロスタモードとが含まれる。
【0039】
乗員センサ21は、乗員の乗車状態を検出するセンサである。乗員センサ21は、乗員によるシートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサ35と、乗員を撮影する乗員カメラ36と、を含む。
【0040】
外界センサ22は、車外空間SP2に存在する物標(例えば、車両1の走行路上の障害物や区画線)を検出するセンサである。外界センサ22は、前述のフロントカメラ10と、ソナー38と、車外カメラ39と、を含む。
【0041】
車両センサ23は、車内空間SP1の状態、車外空間SP2の状態、車両1の走行状態等を検出するセンサである。車両センサ23は、車内空間SP1の温度(以下、「車内温度」と称する)を検出する車内温度センサ41(第1検出装置の一例)と、車内空間SP1の湿度(以下、「車内湿度」と称する)を検出する車内湿度センサ42(第1検出装置の一例)と、車外空間SP2の温度(以下、「車外温度」と称する)を検出する車外温度センサ43(第2検出装置の一例)と、車速を検出する車速センサ44(第2検出装置の一例)とを含む。
【0042】
制御装置26は、CPUやROM、RAM等から構成された電子制御ユニットである。制御装置26は、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークによって車両1の各構成要素に接続されており、車両1の各構成要素を制御する。
【0043】
制御装置26は、通信部51と外界認識部52と走行制御部53と曇り止め制御部54と記憶部55とを含む。
【0044】
制御装置26の通信部51は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格に基づいて周辺機器と通信する。例えば、通信部51は、無線通信規格に基づいてウェアラブルデバイス61(詳細は後述)と通信し、ウェアラブルデバイス61との間で情報の送受信を行う。
【0045】
制御装置26の外界認識部52は、外界センサ22の検出結果に基づいて、車外空間SP2に存在する物標(例えば、車両1の走行路上の障害物や区画線)の位置を認識する。例えば、外界認識部52は、フロントカメラ10が撮影した画像上の濃度値の変化を解析することで、車両1の前方に存在する物標の位置を認識する。
【0046】
制御装置26の走行制御部53は、外界センサ22や車両センサ23の検出結果に基づいて、車両1の走行を制御する。例えば、車速センサ44が検出した車速が所定の第1閾値速度以上である場合に、走行制御部53は、外界認識部52が認識した区画線の位置に基づいて車線維持制御を実行する。車線維持制御において、走行制御部53は、区画線によって区画される車線内の基準位置(例えば、車線の幅方向中央)を車両1が走行するように、ステアリング装置16を制御する。また、車速センサ44が検出した車速が所定の第2閾値速度以上である場合に、走行制御部53は、外界認識部52が認識した障害物の位置に基づいて衝突軽減制御を実行する。衝突軽減制御において、走行制御部53は、車両1と障害物との衝突が回避又は軽減されるように、ブレーキ装置15を制御する。
【0047】
制御装置26の曇り止め制御部54は、フロントウィンドウ6の曇りを抑制すべく、加熱装置19及び空調装置20を制御する。例えば、曇り止め制御部54は、車両センサ23の検出結果やHMI17に対する乗員の入力操作に基づいて、空調装置20の風量や空調モードを切り替える。曇り止め制御部54は、車両センサ23の検出結果等に基づいて、PWM制御によって加熱装置19を制御する。
【0048】
制御装置26の記憶部55は、メモリやHDD等によって構成されている。記憶部55は、車両1の制御に必要なプログラムやテーブル等を記憶している。例えば、記憶部55は、第1制御テーブルT1、第2制御テーブルT2、及び第3制御テーブルT3を記憶している。
【0049】
図4(A)を参照して、第1制御テーブルT1は、車内温度及び車内湿度と現在時刻における車内空間SP1の水蒸気量(以下、「初期水蒸気量」と称する)の関係を規定するテーブルである。第1制御テーブルT1では、車内温度や車内湿度が高いほど初期水蒸気量が多く設定されている。
【0050】
図4(B)を参照して、第2制御テーブルT2は、乗員の身長、体重、心拍数、及び体温(いずれも乗員のバイタルデータの一例)と乗員が単位時間当たりに放出する水蒸気量(以下、「放出水蒸気量」と称する)の関係を規定するテーブルである。第2制御テーブルT2では、乗員の身長が高いほど放出水蒸気量が多く設定され、乗員の体重が重いほど放出水蒸気量が多く設定され、乗員の心拍数が多いほど放出水蒸気量が多く設定され、乗員の体温が高いほど放出水蒸気量が多く設定されている。
【0051】
図4(C)を参照して、第3制御テーブルT3は、車外温度及び車速とフロントウィンドウ6の温度の関係を示すテーブルである。第3制御テーブルT3では、車外温度が高いほどフロントウィンドウ6の温度が高く設定され、車速が高いほどフロントウィンドウ6の温度が低く設定されている。
【0052】
<ウェアラブルデバイス61>
次に、図3を参照しつつ、本実施形態に係るウェアラブルデバイス61(取得装置の一例)について説明する。ウェアラブルデバイス61は、加熱装置19、空調装置20、乗員センサ21、外界センサ22、車両センサ23、及び制御装置26と共に、曇り止めシステムXを構成している。
【0053】
ウェアラブルデバイス61は、乗員に装着されている。乗員が1名のみである場合、ウェアラブルデバイス61はその1名の乗員に装着されていれば良い。乗員が複数名である場合、ウェアラブルデバイス61は複数名の乗員にそれぞれ装着されているのが好ましい。ウェアラブルデバイス61は、腕時計型、リストバンド型、眼鏡型、指輪型、靴型、ペンダント型等の任意の形状を成している。
【0054】
ウェアラブルデバイス61は、処理部62と通信部63と入力部64と検出部65とを備えている。
【0055】
処理部62は、CPUやROM、RAM等から構成される電子制御ユニットである。処理部62は、ウェアラブルデバイス61の各構成要素に接続されており、ウェアラブルデバイス61の各構成要素を制御する。
【0056】
通信部63は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格に基づいて周辺機器と通信する。例えば、通信部63は、無線通信規格に基づいて車両1の制御装置26の通信部51と通信し、制御装置26の通信部51との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部63は、入力部64や検出部65が取得する乗員の身長、体重、心拍数、及び体温を制御装置26の通信部51に送信する。
【0057】
入力部64は、乗員の身長及び体重の入力を受け付ける。なお、他の実施形態では、入力部64が乗員の身長及び体重の入力を受け付ける代わりに、乗員が所有する携帯端末が乗員の身長及び体重の入力を受け付け、通信部63が携帯端末から乗員の身長及び体重に関する情報を受信しても良い。また、他の実施形態では、入力部64が乗員の身長及び体重の入力を受け付ける代わりに、デジタル測定機器が乗員の身長及び体重を測定し、通信部63がデジタル測定機器から乗員の身長及び体重に関する情報を受信しても良い。
【0058】
検出部65は、PPGセンサ(Photoplethysmogram Sensor)等の光学式心拍センサを含んでおり、乗員の心拍数を検出可能に設けられている。検出部65は、サーミスタ等の温度センサを含んでおり、乗員の体温を検出可能に設けられている。なお、他の実施形態では、検出部65は、乗員の心拍数や体温だけでなく、乗員の身長や体重を検出可能に設けられていても良い。
【0059】
<曇り止め制御>
次に、図5を参照しつつ、制御装置26の曇り止め制御部54が実行する曇り止め制御について説明する。曇り止め制御は、フロントウィンドウ6の曇りを抑制するための制御である。例えば、曇り止め制御は、乗員がイグニッションスイッチをONにした直後(即ち、乗員が車両1に乗り込んだ直後)に実行される。但し、他の実施形態では、曇り止め制御は、上記以外のタイミング(例えば、車両1の走行時)に実行されても良い。
【0060】
曇り止め制御が開始されると、曇り止め制御部54は、車内温度センサ41から取得した車内温度と車内湿度センサ42から取得した車内湿度とに基づいて第1制御テーブルT1を参照することで、初期水蒸気量を推定する(ステップST1)。以下、ステップST1において曇り止め制御部54が推定する初期水蒸気量のことを「初期水蒸気量の推定値」と称する。なお、車内温度や車内湿度が所定時間内に大きく変動することが予測される場合(例えば、空調装置20が外気導入モードで稼働している場合)、曇り止め制御部54は、車内温度や車内湿度の変動量の予測値に応じて、初期水蒸気量の推定値を補正しても良い。
【0061】
次に、曇り止め制御部54は、ウェアラブルデバイス61から取得した乗員の身長、体重、心拍数、及び体温に基づいて第2制御テーブルT2を参照することで、放出水蒸気量を推定する(ステップST2)。以下、ステップST2において曇り止め制御部54が推定する放出水蒸気量のことを「放出水蒸気量の推定値」と称する。なお、乗員が複数名である場合、曇り止め制御部54は、複数名の乗員のそれぞれについて放出水蒸気量の推定値を算出し、算出した放出水蒸気量の推定値を足し合わせることで最終的な放出水蒸気量の推定値を算出すると良い。
【0062】
次に、曇り止め制御部54は、初期水蒸気量の推定値に放出水蒸気量の推定値を加えることで、補正水蒸気量を算出する(ステップST3)。補正水蒸気量は、現在時刻から所定時間が経過した時刻における車内空間SP1の水蒸気量の推定値に相当する。
【0063】
次に、曇り止め制御部54は、車外温度センサ43から取得した車外温度及び車速センサ44から取得した車速に基づいて第3制御テーブルT3を参照することで、フロントウィンドウ6の温度を推定する(ステップST4)。以下、ステップST4において曇り止め制御部54が推定するフロントウィンドウ6の温度のことを「フロントウィンドウ6の温度の推定値」と称する。
【0064】
次に、曇り止め制御部54は、フロントウィンドウ6の温度の推定値と対応する飽和水蒸気量を算出する(ステップST5)。なお、フロントウィンドウ6の温度の推定値と飽和水蒸気量の対応関係は、予め制御装置26の記憶部55に記憶されていると良い。
【0065】
次に、曇り止め制御部54は、補正水蒸気量と飽和水蒸気量とに基づいて、フロントウィンドウ6が所定時間内に曇るか否か(フロントウィンドウ6の温度が所定時間内に露点に達するか否か)を判定する(ステップST6)。例えば、補正水蒸気量が飽和水蒸気量を超えている場合に、曇り止め制御部54は、フロントウィンドウ6が所定時間内に曇ると判定する。一方で、補正水蒸気量が飽和水蒸気量以下である場合に、曇り止め制御部54は、フロントウィンドウ6が所定時間内に曇らないと判定する。
【0066】
フロントウィンドウ6が所定時間内に曇ると判定した場合(ステップST6:Yes)、曇り止め制御部54は、曇り止め処理を実行する(ステップST7)。曇り止め処理において、曇り止め制御部54は、加熱装置19及び空調装置20の稼働を開始するか、又は、加熱装置19及び空調装置20の出力を増加させることで、フロントウィンドウ6の曇りを抑制する。曇り止め制御部54は、加熱装置19及び空調装置20の出力を増加させる場合、加熱装置19のデューティー比を増加させたり、空調装置20の風量を増加させたりすると良い。なお、他の実施形態では、曇り止め制御部54は、加熱装置19と空調装置20のいずれか一方のみの稼働を開始しても良いし、加熱装置19と空調装置20のいずれか一方のみの出力を増加させても良い。曇り止め処理が終了すると、曇り止め制御部54は、曇り止め制御を終了する。
【0067】
一方で、フロントウィンドウ6が所定時間内に曇らないと判定した場合(ステップST6:No)、曇り止め制御部54は、曇り止め処理を実行することなく、曇り止め制御を終了する。つまり、曇り止め制御部54は、加熱装置19及び空調装置20の稼働を開始したり加熱装置19及び空調装置20の出力を増加させたりせずに、現在時刻における加熱装置19及び空調装置20の稼働状態を維持する。
【0068】
以上のように、曇り止め制御部54は、初期水蒸気量(現在時刻における車内空間SP1の水蒸気量)の推定値と放出水蒸気量(乗員が単位時間当たりに放出する水蒸気量)の推定値とに基づいてフロントウィンドウ6の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて加熱装置19及び空調装置20を制御する。これにより、初期水蒸気量の推定値と放出水蒸気量の推定値とに基づいてフロントウィンドウ6の将来の曇りを正確に予測することができるため、加熱装置19及び空調装置20の稼働時間や出力を適正化することができる。そのため、電力の消費効率を高めつつ、フロントウィンドウ6の曇りを効果的に抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、乗員に装着されるウェアラブルデバイス61によって乗員のバイタルデータを取得している。これにより、乗員のバイタルデータを取得する装置を車両1に設ける必要がなくなる。そのため、車両1の構成の複雑化を抑制しつつ、フロントウィンドウ6の将来の曇りを正確に予測することができる。なお、他の実施形態では、車両1の構成要素によって乗員のバイタルデータを取得しても良い。例えば、乗員カメラ36が乗員の体温(皮膚温度)を検出可能な赤外線カメラである場合、乗員カメラ36によって乗員の体温を取得しても良い。
【0070】
また、ウェアラブルデバイス61は、乗員のバイタルデータとして、乗員の身長、体重、心拍数、及び体温を取得している。これにより、乗員のバイタルデータに基づいて放出水蒸気量を正確に推定することができる。なお、他の実施形態では、ウェアラブルデバイス61は、乗員の身長、体重、心拍数、及び体温の中から選択された1~3個のデータのみを乗員のバイタルデータとして取得しても良いし、乗員の身長、体重、心拍数、及び体温以外のデータ(例えば、乗員の体水分率)をバイタルデータとして取得しても良い。
【0071】
また、曇り止め制御部54は、初期水蒸気量の推定値と放出水蒸気量の推定値とフロントウィンドウ6の温度の推定値とに基づいてフロントウィンドウ6の将来の曇りを予測し、その予測結果に基づいて加熱装置19及び空調装置20を制御している。これにより、フロントウィンドウ6の将来の曇りを更に正確に予測することができるため、加熱装置19及び空調装置20の稼働時間や出力を更に適正化することができる。
【0072】
また、曇り止め制御部54は、補正水蒸気量と飽和水蒸気量とに基づいてフロントウィンドウ6が所定時間内に曇るか否かを判定し、フロントウィンドウ6が所定時間内に曇ると判定した場合に、加熱装置19及び空調装置20の稼働を開始するか、又は、加熱装置19及び空調装置20の出力を増加させている。これにより、補正水蒸気量と飽和水蒸気量とに基づいてフロントウィンドウ6が所定時間内に曇るか否かを正確に判定することができる。そのため、加熱装置19及び空調装置20の稼働を適切なタイミングで開始するか、又は、加熱装置19及び空調装置20の出力を適切なタイミングで増加させることができる。
【0073】
また、曇り止め制御部54は、車外温度センサ43及び車速センサ44の検出結果に基づいてフロントウィンドウ6の温度を推定している。これにより、車外温度と車速とに基づいてフロントウィンドウ6の温度を正確に推定することができる。そのため、フロントウィンドウ6の将来の曇りを更に正確に予測することができる。なお、他の実施形態では、曇り止め制御部54は、車外温度センサ43と車速センサ44のいずれか一方のみの検出結果に基づいてフロントウィンドウ6の温度を推定しても良いし、車外温度センサ43や車速センサ44以外のセンサの検出結果に基づいてフロントウィンドウ6の温度を推定しても良い。
【0074】
また、曇り止め制御部54は、車内温度センサ41及び車内湿度センサ42の検出結果に基づいて、初期水蒸気量を推定している。これにより、車内温度と車内湿度とに基づいて初期水蒸気量をより正確に推定することができる。そのため、フロントウィンドウ6の将来の曇りを更に正確に予測することができる。なお、他の実施形態では、曇り止め制御部54は、車内温度センサ41と車内湿度センサ42のいずれか一方のみの検出結果に基づいて初期水蒸気量を推定しても良いし、車内温度センサ41や車内湿度センサ42以外のセンサの検出結果に基づいて初期水蒸気量を推定しても良い。
【0075】
また、本実施形態では、加熱装置19及び空調装置20によってフロントウィンドウ6の曇りを抑制している。これにより、フロントウィンドウ6の曇りを効果的に抑制することができる。なお、他の実施形態では、加熱装置19と空調装置20のいずれか一方のみによってフロントウィンドウ6の曇りを抑制しても良いし、加熱装置19や空調装置20以外の曇り止め装置によってフロントウィンドウ6の曇りを抑制しても良い。
【0076】
本実施形態では、曇り止めシステムXによってフロントウィンドウ6の曇りを抑制しているが、他の実施形態では、曇り止めシステムXによってリアウィンドウ7やサイドウィンドウ9の曇りを抑制しても良い。言い換えると、本実施形態では、フロントカメラ10を撮影装置の一例としているが、他の実施形態では、リアカメラやサイドカメラ(いずれも図示せず)を撮影装置の一例としても良い。
【0077】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 :車両
6 :フロントウィンドウ(窓の一例)
10 :フロントカメラ(撮影装置の一例)
19 :加熱装置(曇り止め装置の一例)
20 :空調装置(曇り止め装置の一例)
26 :制御装置
41 :車内温度センサ(第1検出装置の一例)
42 :車内湿度センサ(第1検出装置の一例)
43 :車外温度センサ(第2検出装置の一例)
44 :車速センサ(第2検出装置の一例)
61 :ウェアラブルデバイス(取得装置の一例)
SP1 :車内空間
SP2 :車外空間
X :曇り止めシステム
図1
図2
図3
図4
図5