(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155799
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】照明システムおよび照明制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/105 20200101AFI20221006BHJP
【FI】
H05B47/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059203
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 和章
(72)【発明者】
【氏名】右田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】貞照 知基
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA05
3K273QA16
3K273SA08
3K273SA09
3K273SA32
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA38
3K273TA42
3K273UA18
3K273UA24
3K273UA27
(57)【要約】
【課題】テレビスタジオ等の停電時における照明負荷の明るさ制御を的確に実施可能とする。
【解決手段】複数の照明負荷それぞれに電力を供給する複数の電源系統に対して、商用電源の停電の有無に応じて受電設備、補助電源設備または無停電電源設備から選択的に電力を供給しこれら複数の照明器具のオンオフを制御する照明システムであって、受電設備、補助電源設備および無停電電源設備に係る電源供給状態を判別し、判別結果に応じて予め設定された優先度に基づいて、複数の照明器具のオン/オフを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力会社からの商用電源の供給を受け、負荷に対して所定の電源を供給する受電設備と;
前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給可能とする補助電源設備と;
前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給可能とする無停電電源設備と;
受電設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力する機能を有する受電設備用電流電圧計と;
前記補助電源設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力する機能を有する補助電源設備用電流電圧計と;
前記無停電電源設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力する機能を有する無停電電源設備用電流電圧計と;
前記受電設備、前記補助電源設備および前記無停電電源設備からそれぞれ供給される電源のいずれか一つを選択し、選択した電源に係る前記いずれかの設備を下流の複数の電源系統に接続する機能を有する電源切替装置と;
前記電源切替装置から分岐した前記複数の電源系統からそれぞれ供給される電源の電流を計測する複数の電流計と;
前記複数の電源系統にそれぞれ配設され、当該複数の電源系統を個別にそれぞれオン/オフ制御する複数のリモートスイッチと;
前記複数の電源系統にそれぞれ負荷として接続されている複数の照明器具と;
前記受電設備用電流電圧計、前記補助電源設備用電流電圧計、前記無停電電源設備用電流電圧計においてそれぞれ計測した計測値を取得し、当該取得した計測値に基づいて前記受電設備、前記補助電源設備および前記無停電電源設備に係る電源供給状態を判別し、予め設定された設定値に基づいて、前記電源切替装置に対して前記各設備を選択して切り替えるための選択信号を出力する共に、前記複数のリモートスイッチのそれぞれに対してオン/オフを制御する制御信号を出力する機能を有する制御装置
を具備する照明システム。
【請求項2】
前記制御装置は、少なくとも前記補助電源設備および前記無停電電源設備におけるそれぞれの許容電流量と、前記複数の電源系統それぞれのオン状態を保持するための優先度と、をそれぞれ設定可能とし、前記複数の電源系統におけるそれぞれの前記電流計に係る計測結果、前記許容電流量、および、前記優先度に基づいて、前記複数の電源系統のうちいずれの電源系統のオン状態を保持するかを決定する
ことを特徴とする請求項1記載の照明システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記許容電流量および前記優先度を任意に設定できる機能を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の照明システム。
【請求項4】
前記許容電流量および前記優先度の設定を、外部装置からの指示により実施可能とする
ことを特徴とする請求項1-3のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項5】
前記受電設備、前記補助電源設備、前記無停電電源設備または前記複数の電源系統の状況を所定の指示信号により検出する
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項6】
計測値、許容電流量に対する余裕度等を表示する機能を有する
ことを特徴とする請求項1-5のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項7】
受電設備が、電力会社からの商用電源の供給を受け、負荷に対して所定の電源を供給するステップと;
補助電源設備が、前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給するステップと;
無停電電源設備が、前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給するステップと;
受電設備用電流電圧計が、受電設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力するステップと;
補助電源設備用電流電圧計が、前記補助電源設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力するステップと;
無停電電源設備用電流電圧計が、前記無停電電源設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力するステップと;
電源切替装置が、前記受電設備、前記補助電源設備および前記無停電電源設備からそれぞれ供給される電源のいずれか一つを選択し、選択した電源に係る前記いずれかの設備から下流の複数の電源系統であって、それぞれ負荷として接続されている複数の照明器具を配設する複数の電源系統に供給するステップと、;
前記複数の電源系統にそれぞれ配設された複数の電流計が、前記電源切替装置から分岐した前記複数の電源系統からそれぞれ供給される電源の電流を計測するステップと;
前記複数の電源系統にそれぞれ配設された複数のリモートスイッチが、当該複数の電源系統を個別にそれぞれオン/オフ制御するステップと;
制御装置が、前記受電設備用電流電圧計、前記補助電源設備用電流電圧計、前記無停電電源設備用電流電圧計においてそれぞれ計測した計測値を取得するステップと;
前記制御装置が、当該取得した計測値に基づいて前記受電設備、前記補助電源設備および前記無停電電源設備に係る電源供給状態を判別するステップと;
前記制御装置が、予め設定された設定値に基づいて、前記電源切替装置に対して前記各設備を選択して切り替えるための選択信号を出力するステップと;
前記制御装置が、前記複数のリモートスイッチのそれぞれに対してオン/オフを制御する制御信号を出力するステップ
を有する照明制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明システムおよび照明制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人物が照明対象の中心となるテレビスタジオまたは舞台等の照明システムにおいては、演色性の高いハロゲンランプを用いた照明器具を使用することが知られている。この照明器具は、開口部を有する箱状の器具本体を有し、当該器具本体内部に、光源部(ハロゲンランプ)および制御基板等が収容されて構成されている。
【0003】
また、上記照明システムは、調光操作卓と、複数の調光器を内蔵した調光盤と、各調光器に接続されて調光制御される上記照明器具(照明負荷)と、を基本的な構成とし、調光操作卓において照明器具の調光レベルの設定を行い、調光レベルデータを作成して、伝送線を介して調光盤の各調光器に伝送するようにしている。
【0004】
ところで、テレビスタジオ等においては、上述したように人物が照明対象の中心となることから、例えば、照明器具に電力を供給している商用電源が停電した際の明かり確保として、自家発電等のいわゆるGC電源(Generator Current)を使用する例も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、調光操作卓から所定の調光レベルデータを出力し、照明負荷を消灯状態から所定の調光レベルで点灯するように制御するシステムにおいては、商用電源からGC電源に切り替える際には、一時的に電源供給が停止することから、調光操作卓における照明負荷の制御と、照明負荷の明るさの変化が異なるという不都合が発生し、継続的な明かりの確保が困難になっていた。また、照明負荷に突入電流が流れてストレスがかかりランプ寿命が短くなるとともに、ブレーカが遮断する虞があるという問題も生じる。
【0007】
一方、近年、照明機器の省エネルギー化に伴い、停電時の明かりの確保に必要最低限の電力を、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply;無停電電源装置)から供給することが可能となった。
【0008】
このUPSを併用することで上述したような電源切り替え時に生じる問題も解消されるが、ハロゲンランプを用いた照明器具は、その照明負荷も大きく、商用電源停電時における照明の明るさ制御に関しては、さらなる適切な明るさ制御が求められていた。
【0009】
そこで、実施形態は、テレビスタジオ等の停電時における照明負荷の明るさ制御を的確に実施可能とする照明システムおよび照明方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、電力会社からの商用電源の供給を受け、負荷に対して所定の電源を供給する受電設備と;前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給可能とする補助電源設備と;前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給可能とする無停電電源設備と;受電設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力する機能を有する受電設備用電流電圧計と;前記補助電源設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力する機能を有する補助電源設備用電流電圧計と;前記無停電電源設備から供給されている電源の電流および電圧を計測し、計測値を出力する機能を有する無停電電源設備用電流電圧計と;前記受電設備、前記補助電源設備および前記無停電電源設備からそれぞれ供給される電源のいずれか一つを選択し、選択した電源に係る前記いずれかの設備を下流の複数の電源系統に接続する機能を有する電源切替装置と;前記電源切替装置から分岐した前記複数の電源系統からそれぞれ供給される電源の電流を計測する複数の電流計と;前記複数の電源系統にそれぞれ配設され、当該複数の電源系統を個別にそれぞれオン/オフ制御する複数のリモートスイッチと;前記複数の電源系統にそれぞれ負荷として接続されている複数の照明器具と;前記受電設備用電流電圧計、前記補助電源設備用電流電圧計、前記無停電電源設備用電流電圧計においてそれぞれ計測した計測値を取得し、当該取得した計測値に基づいて前記受電設備、前記補助電源設備および前記無停電電源設備に係る電源供給状態を判別し、予め設定された設定値に基づいて、前記電源切替装置に対して前記各設備を選択して切り替えるための選択信号を出力する共に、前記複数のリモートスイッチのそれぞれに対してオン/オフを制御する制御信号を出力する機能を有する制御装置を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る照明システムにおいて、照明器具に電力を供給する電源系の構成を示したブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る照明システムにおいて、照明器具に電力を供給する電源を制御する制御装置の機能と説明するためのブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る照明システムにおける電源制御を説明するためのフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態に係る照明システムにおける電源制御を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る照明システムにおいて、制御装置における設定内容(負荷系統優先順位の設定)の一例を示した表図である。
【
図6】第1の実施形態に係る照明システムにおいて、受電設備に係る電源供給条件および照明器具(電源系統)の優先度の関係を示した表図である。
【
図7】第1の実施形態に係る照明システムにおいて、補助電源設備(自家発電装置)に係る電源供給条件および照明器具(電源系統)の優先度の関係を示した表図である。
【
図8】第1の実施形態に係る照明システムにおいて、無停電電源設備(無停電電源装置)に係る電源供給条件および照明器具(電源系統)の優先度の関係を示した表図である。
【
図9】第2の実施形態に係る照明システムにおいて、照明器具に電力を供給する電源系の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
(構成)
第1の実施形態に係る照明システムにおいて、照明器具に電力を供給する電源系の構成を示したブロック図であり、
図2は、第1の実施形態に係る照明システムにおいて、照明器具に電力を供給する電源を制御する制御装置の機能と説明するためのブロック図である。
【0014】
本実施形態に係る照明システムは、テレビスタジオにおいて用いられる照明システムを想定する。また、本実施形態の照明システムは、人物が照明対象の中心となるテレビスタジオにおいて用いられることから、演色性の高いハロゲンランプを用いた照明器具を使用することを特徴とする。
【0015】
<第1の実施形態の電源系統>
まずは、テレビスタジオにおいて用いられる本実施形態の照明システムにおける照明器具に電力を供給する電源系統について、説明する。
【0016】
<受電設備、補助電源設備、無停電電源設備>
図1に示すように、本実施形態に係る照明システム1は、電力会社からの商用電源の供給を受け受電設備10と、前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給可能とする補助電源設備(自家発電装置)20と、前記商用電源の停電時において、負荷に対して所定の電源を供給可能とする無停電電源設備(無停電電源装置)30と、を備える。
【0017】
受電設備10は、電力会社からの商用電源の供給を受け、当該テレビスタジオにおいて使用する複数の照明器具301~303等の負荷に対して所定の電源を供給する。
【0018】
補助電源設備20は、受電設備10とは独立して配設され、受電設備10に係る商用電源の停電時において、負荷(複数の照明器具301~303等)に対して所定の電源を供給可能とする電源設備である。本実施形態においては、補助電源設備として、自家発電装置等の、いわゆるGC電源(Generator Current)を採用する。以下、本明細書においては、補助電源設備として自家発電装置20を採用した例について説明する。
【0019】
無停電電源設備30は、常時受電設備10からの電源供給を受け、商用電源の停電時において稼働する、いわゆるUPS(Uninterruptible Power Supply;無停電電源装置)により構成される。以下、本明細書においては、無停電電源設備として無停電電源装置(UPS)30を採用した例について説明する。
【0020】
また、本実施形態において照明システム1は、前記受電設備10、補助電源設備(自家発電装置)20、無停電電源設備(無停電電源装置)30のそれぞれの電流電圧値を計測する受電設備用電流電圧計11、補助電源設備用電流電圧計(自家発電装置用電流電圧計)21、無停電電源設備用電流電圧計(無停電電源装置用電流電圧計)31を備える。これら受電設備用電流電圧計11、補助電源設備用電流電圧計21、無停電電源設備用電流電圧計31において計測する計測値は、後述する制御装置50が取得するようになっている。
【0021】
<電源切替装置>
さらに、照明システム1は、前記受電設備10、前記自家発電装置20および前記無停電電源装置30からそれぞれ供給される電源のいずれか一つを選択し、選択した電源を下流の複数の電源系統に接続する機能を有する電源切替装置40を備える。この電源切替装置40は、後述する制御装置50により制御されるようになっている。
【0022】
<照明器具を有する複数の電源系統>
本実施形態の照明システム1は、さらに、複数の照明器具に対してそれぞれ電力を供給する複数の電源系統を備える。本実施形態においては、例えば、6つの照明器具に対してそれぞれ電力を供給する6つの電源系統(系統A,系統B,系統C,系統D,系統E,系統F)が配設されるものとする。なお、本実施形態においては、6つの電源系統が配設されるものとしたが、本願発明はこれに限られることなく、これより多く、または少ない系統の照明器具電源供給系統が配設されてもよい。
【0023】
図1に示すように、本実施形態における複数の電源系統(系統A,系統B,系統C,系統D,系統E,系統F)には、それぞれ電源切替装置40から分岐し、それぞれの電源系統ごとに供給される電源の電流を計測する複数の電流計101~106が配設される。さらに、これら複数の電流計101~106には、それぞれ当該電源系統を個別にオン/オフ制御するためのリモートスイッチ201~206が接続される。
【0024】
また、前記複数のリモートスイッチ201~206には、照明負荷としての照明器具301~303がそれぞれ接続されている。
【0025】
<本実施形態における照明器具>
本実施形態においては、照明器具としてハロゲンランプを用いた照明器具を採用する。本実施形態の照明システム1が適用されるテレビスタジオは、人物が照明対象の中心となるため、照明器具としては演色性の高いハロゲンランプが採用されることが多く、本実施形態においても、光源部としてハロゲンランプを用いた照明器具を採用する。この照明器具は、具体的には、開口部を有する箱状の器具本体を有し、当該器具本体内部に、光源部(ハロゲンランプ)および制御基板等が収容されて構成されている。
【0026】
<制御装置50>
本実施形態の照明システム1は、
図1および
図2に示すように、電源切替装置40および複数の電源系統を制御する制御装置50を備える。
【0027】
この制御装置50は、上述した、受電設備用電流電圧計11、補助電源設備用電流電圧計(自家発電装置用電流電圧計)21、無停電電源設備用電流電圧計(無停電電源装置用電流電圧計)31においてそれぞれ計測した計測値を取得し、当該取得した計測値に基づいて受電設備10、自家発電装置20、および無停電電源装置30に係る電源供給状態を判別する機能を有する。
【0028】
また、制御装置50は、予め設定された設定値に基づいて、前記電源切替装置40に対して前記各設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)を選択して切り替えるための選択信号(電源切替信号)を出力する機能を有する。この予め設定された設定値に基づく切替制御については、後に詳述する。
【0029】
さらに、制御装置50は、前記複数の電源系統(系統A,系統B,系統C,系統D,系統E,系統F)にそれぞれ配設された複数の照明器具301~303のオンオフを制御するため、これら系統ごとに配設された複数のリモートスイッチ(系統別スイッチ)201~206のそれぞれに対してオン/オフを制御する制御信号(ON/OFF信号)を出力する機能を有する。
【0030】
<照明器具(系統)の優先度>
本実施形態においては、複数の系統A~系統Fに係る複数の照明器具301~303に対しては、それぞれ稼働するにあたっての優先度が予め割り当てられている。そして、例えば、商用電源の停電時等、複数の照明器具301~303に対して(複数の系統A~系統Fに対して)供給する電力(許容電流)に限りが生じた場合において、制御装置50により、その設定された優先度に基づいて、稼働する照明器具が制御されるようになっている。
【0031】
さらに、本実施形態において上述した優先度の順位は、複数の系統A~系統Fに対して供給可能な電力(許容電流)に応じて変位する。以下、この負荷系統優先順位の設定の具体例について
図5を参照して説明する。
【0032】
図5は、第1の実施形態に係る照明システムにおいて、制御装置における設定内容(負荷系統優先順位の設定)の一例を示した表図である。
【0033】
図5に示すように、本実施形態においては、複数の系統A~系統Fに対して供給可能な電力(許容電流)に応じて、その優先順位が予め設定されている。例えば、システム全体として許容電流が30Aのときは(例えば、自家発電装置20のみが稼働している場合)、系統Fが最も優先順位が高く、その次に優先されるのは系統Aとし、一方、許容電流が10Aのときは(例えば、無停電電源装置30のみが稼働している場合)、系統Fが最も優先順位が高く、その次に優先されるのは系統Eとするように設定される。
【0034】
なお、
図5中、許容電流設定が100Aのときは、商用電源の停電は発生しておらず、すなわち、受電設備10からは正常に電力が供給されている状態なので、系統A~系統Fに係る複数の照明器具301~303にはすべて電力が供給されており、この場合、上述した優先度の設定は必要ない。
【0035】
<各電源設備の電源供給条件と照明器具の優先度との関係>
ここで、本実施形態における各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)の電源供給条件とこれに付随する照明器具301~306(系統A~系統F)の優先度の関係について、
図6~
図8を参照して説明する。
【0036】
図6、
図7、
図8は、それぞれ第1の実施形態に係る照明システムにおいて、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)の電源供給条件およびこれに付随する照明器具(系統A~系統F)の優先度との関係を示した表図である。
【0037】
図6、
図7、
図8に示すように、本実施形態において各電源設備(受電設備10、自家発電装置(GC電源)20、無停電電源装置(UPS電源)30)の電源供給条件として、供給可能電力が、許容電流として、それぞれ100[A],30[A],10[A]に設定されるとする。一方、各系統A~系統Fに対応する複数の照明器具301~303の負荷が、それぞれ
図6~
図8に示すような電流値となる負荷であるとする。なお、この複数の照明器具301~303のそれぞれの負荷は、複数の電流計101~106がそれぞれ計測し、制御装置50が記憶した電流値の値に対応するものとする。
【0038】
このような状況において本実施形態の照明システム1は、商用電源の停電の有無、稼働する補助的な電源の種類(この場合、自家発電装置20であるか無停電電源装置30であるか)によって、設定変更を含めて系統A~系統F(照明器具301~303)の優先順位が設定される。
【0039】
例えば、いま、本来的に系統A~系統Fの優先順位が、系統F→系統A→系統B→系統C→系統D→系統Eであり、それぞれの系統における照明器具の負荷が、
系統A:10[A]
系統B: 5[A]
系統C:10[A]
系統D:15[A]
系統E: 5[A]
系統F: 5[A]
であって合計の電流値が50[A]であるとする。
【0040】
このとき、商用電源が停電しておらず正常の場合は、受電設備10の許容電流は100[A]であるので、本実施形態の如き条件であれば、系統A~系統Fの優先度に拘わらず、すべての系統の照明器具301~303が点灯される。具体的には、制御装置50の制御下に、リモートスイッチ201~206がすべてオン制御される。
【0041】
一方、商用電源が停電し、自家発電装置20のみが選択されて稼働する場合、上記条件に照らせば、当該自家発電装置20の許容電流は30[A]なので、系統A~系統Fに係る照明器具301~306をすべて点灯することはできない。この場合、本実施形態においては、予め設定された優先度(系統F→系統A→系統B→系統C→系統D→系統E)に応じて、許容電流30[A]の許容限度まで照明器具を点灯するよう制御する。
【0042】
具体的には、系統F→系統A→系統B→系統Cまでで自家発電装置20の許容限度である許容電流30[A]に達するので、これら系統F→系統A→系統B→系統Cに対応する照明器具306、301、302、303を点灯するよう制御する(
図7参照)。
【0043】
さらに、商用電源が停電し、自家発電装置20ではなく無停電電源装置30のみが選択されて稼働する場合、上記条件に照らせば、当該無停電電源装置30の許容電流は10[A]なので、この場合も、系統A~系統Fに係る照明器具301~306をすべて点灯することはできない。さらに、この場合、本来的に設定された優先度(系統F→系統A→系統B→系統C→系統D→系統E)によると、優先順位が1位である系統Fに優先順位が2位である系統Aを加えると、この段階で必要電流値は15[A]になることから、優先順位を変更しないままであると、優先順位が1位である系統Fに対応する照明器具306しか点灯させることができない。無停電電源装置30は、小容量といえども許容電流値は10[A]確保できることから、照明器具の選択さえ工夫すればさらに点灯可能な照明器具を設定することができる可能性もある。
【0044】
本実施形態においては、このような状況が起こりえることに鑑み、無停電電源装置30が選択された場合は、系統A~系統Fの優先順位を新たに見直し、最適な組み合わせを得ることを可能とする。
【0045】
具体的には、照明器具301~303それぞれの負荷を考慮して系統A~系統Fの優先順位を新たに、系統F→系統E→系統D→系統C→系統B→系統Aと組み換え、これにより、系統F:5[A]と系統E:5[A]の2つの系統に係る照明器具306、305を点灯させるよう制御する(
図8参照)。
【0046】
このように本実施形態においては、制御装置50の制御下に、各電源設備の許容電流と、複数の電源系統A~系統F(複数の照明器具301~303)それぞれのオン状態を保持するための優先度と、をそれぞれ設定可能とし、前記複数の電源系統におけるそれぞれの前記電流計に係る計測結果、前記許容電流量、および、前記優先度に基づいて、前記複数の電源系統のうちいずれの電源系統のオン状態を保持するかを決定することを特徴とする。
【0047】
なお、上述したように本実施形態において制御装置50は、予め設定された設定値に基づいて、電源切替装置40の切り替え制御を行うが、この設定値は、例えば、外部の設定器60からの指示によって設定されるものであってもよい。
【0048】
また、本実施形態において、照明システム1は、調光操作卓(調光操作器)70を備え、図示はしないが複数の調光器を内蔵した調光盤と、各調光器に接続されて調光制御される照明器具301~306と、を基本的な構成とする。
【0049】
<第1の実施形態の作用>
次に、上述の如き構成される本実施形態の照明システム1の電源制御について
図3および
図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図3および
図4は、一連の制御作用を示し、矢印番号1、2により、図を跨って作用が進行するものとする。
【0050】
図3に示すように、本実施形態の照明システム1において、受電設備10から各負荷に対して所定の電源が供給されると(ステップS1)、制御装置50は、複数の電源系統(系統A,系統B,系統C,系統D,系統E,系統F)におけるリモートスイッチ201~206に対してオン信号を送出し、複数の照明器具301~303それぞれに対して給電する(ステップS2)。
【0051】
この後、制御装置50は、複数の系統A~系統Fそれぞれの電流計101~106の計測結果を逐次取得し、この結果を保存する(ステップS3)。
【0052】
制御装置50は、複数の照明器具301~303への給電が開始された後、受電設備用電流電圧計11からの出力電圧信号を監視し(ステップS4)、電源設備10から出力される電圧信号が正常であれば、引き続き複数の電源系統(系統A,系統B,系統C,系統D,系統E,系統F)におけるリモートスイッチ201~206に対してオン信号を送出し、複数の照明器具301~303に対する給電を継続する(ステップS8)。
【0053】
一方、本実施形態においては、制御装置50は、系統A~系統Fそれぞれの電流計101~106からの計測結果と電源設備(この場合、受電設備10)からの許容電流との差分を計算し、その差分を取得し所定の表示部に表示し(ステップS9)、ステップS4に戻って、受電設備10からの出力の監視を続ける。
【0054】
一方、ステップS4において、受電設備10からの出力電圧信号の異常を検出すると、例えば、停電により受電設備10からの電源供給が停止すると、制御装置50は、まず、自家発電装置20(なお、
図3中、自家発電装置をGC電源と示す)からの出力電圧信号を判定する(ステップS5)。
【0055】
具体的には、当該出力電圧信号が所定の閾値以上であるか否かを判定する。これは、本実施形態においては、商用電源からの電源が停電した際には、受電設備10とは独立した補助電源設備である自家発電装置20が稼働するが、制御装置50は、この受電設備10から自家発電装置20への切り替えが正常に行われているか否かを判定し、正常に自家発電装置20に切り替わっていると判定すると、ステップS7に移行して、当該自家発電装置20を優先的に稼働するよう電源切替装置40に対して所定の選択信号(自家発電装置20を選択する電源切替信号)を送出し(ステップS7)、
図4に示すステップS11に移行する。
【0056】
一方、ステップS5において、自家発電装置20(図中、GC電源と示す)からの出力電圧信号が所定の閾値を下回っていると自家発電装置20は正常に稼働していないと判定し、系統A~系統Fに対して無停電電源装置(なお、
図3中、無停電電源装置をUPS電源と示す)30から電源を供給するよう電源切替装置40に対して所定の選択信号(無停電電源装置30を選択する電源切替信号)を送出し(ステップS6)、
図4に示すステップS11に移行する。
【0057】
次に、
図4に移って、商用電源からの電源供給が停電によって停止され、自家発電装置20または無停電電源装置30による電源供給に切り替わると、制御装置50は、ステップS11において、優先度1位~6位が設定されている系統(この場合、系統A~系統Fすべて)に係る負荷電流値の合計と、自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を比較する(ステップS11)。
【0058】
なお、この自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流は、本実施形態においては30[A],10[A]に設定される(
図7、
図8参照)。また、各系統A~系統F(それぞれ優先度1位~6位が設定されている)に係るそれぞれの負荷電流値は、当該フローチャートの説明においては、
図7、
図8において設定される値に限らないものとする。
【0059】
このステップS11において、優先度1位~6位の系統に係る負荷電流値の合計が自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を下回っている場合は、制御装置50は、これら優先順位1位~6位が設定されている系統に係るリモートスイッチ201~206をオンし、照明器具301~303を点灯させる(ステップS21)。この後、上述したステップS9と同様に、制御装置50は、系統A~系統Fそれぞれの電流計101~106からの計測結果と電源設備(自家発電装置20または無停電電源装置30)からの許容電流との差分を計算し、その差分を取得し所定の表示部に表示し(ステップS27)、
図3に示すステップS4に戻る。
【0060】
上記ステップS11において、優先度1位~6位の系統に係る負荷電流値の合計が自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を上回っている場合は、制御装置50は、優先順位6位の系統に係る照明器具を消灯し(ステップS12)、次に、優先度1位~5位が設定されている系統に係る負荷電流値の合計と、自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を比較する(ステップS13)。
【0061】
このステップS13において、優先度1位~5位に係る系統の負荷電流値の合計が自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を下回っている場合は、制御装置50は、これら優先順位1位~5位が設定されている系統に係る照明器具を点灯させる(ステップS22)。この後、制御装置50は、上述したステップS27の処理を経て
図3に示すステップS4に戻る。
【0062】
上記ステップS13において、優先度1位~5位の系統に係る負荷電流値の合計が自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を上回っている場合は、制御装置50は、優先順位5位の系統に係る照明器具を消灯し(ステップS14)、次に、優先度1位~4位が設定されている系統に係る負荷電流値の合計と、自家発電装置20または無停電電源装置30に係る許容電流を比較する(ステップS15)。
【0063】
この後、制御装置50は、優先度を1つずつ減らしながら上述したステップS11、ステップS21、ステップS12と同様の処理を行い(ステップS16,S17,S18,S19,S20,S23,S24,S25,S26)、自家発電装置20または無停電電源装置30の許容電流の範囲内において点灯することができる照明器具を選択し、点灯するよう制御する。
【0064】
なお、当該フローチャートにおいても、上述した
図8に係る説明において示したように、例えば、無停電電源装置30のみが稼働する場合は、系統(照明器具)の優先順位を新たに組み替えなおして最適な組み合わせとなるように制御しても良い。
【0065】
<第1の実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態によると、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)におけるそれぞれの許容電流量と、複数の電源系統A~系統Fに対応する複数の照明器具301~303それぞれのオン状態を保持するための優先度と、をそれぞれ設定可能とし、前記複数の電源系統におけるそれぞれの電流計101~106に係る計測結果、前記許容電流量、および、前記優先度に基づいて、前記複数の電源系統のうちいずれの電源系統のオン状態を保持するかを決定するように制御するので、テレビスタジオ等の停電時における照明負荷の明るさ制御を的確に実施することができる。
【0066】
なお、前記制御装置50は、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)に係る許容電流量、および、複数の照明器具301~303(系統A~系統F)に係る前記優先度を任意に設定できる機能を有してもよい。
【0067】
この場合、制御装置50は、所定の操作部を備え、接続される各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)、または、複数の照明器具301~303(系統A~系統F)の種別等、もしくは設置されるスタジオの環境等に応じて、最適な条件となるよう、当該操作部からの操作によりこれら電源設備の許容電流量、照明器具(系統A~系統F)に係る優先度等を任意にすることが設定できるように構成される。
【0068】
また、上述した許容電流量および優先度は、
図2に示す如き外部の設定器、例えば、スタジオ外の調整室からの指示、または、インターネット等のネットワークを介しての指示により設定するように構成してもよい。
【0069】
さらに、本実施形態においては、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)の状況は、それぞれ受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30に接続された受電設備用電流電圧計11、補助電源設備用電流電圧計21、無停電電源設備用電流電圧計31による電圧値を検出することにより判断したが、これに限ることなく、他の指示信号、例えば、商用電源の停電の有無、自家発電装置20、無停電電源装置30の稼働状況を示すフラグ等を検出することにより、または、その他の状態を示すセンサ信号等を取得して、これら各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)の状況を判断してもよい。
【0070】
(第2の実施形態)
(構成)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0071】
本第2の実施形態の照明システムは、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)のオンオフを制御するリレースイッチ機能をさらに有したことを特徴とする。その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0072】
図9は、第2の実施形態に係る照明システムにおいて、照明器具に電力を供給する電源系の構成を示したブロック図である。
【0073】
図9に示すように、第2の実施形態に係る照明システム1は、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)にそれぞれ、オンオフを制御するリレースイッチ12,22,32が接続され、各電源設備の稼働制御をより的確に実施することを可能とする。
【0074】
<第2の実施形態の効果>
本第2の実施形態によると、第1の実施形態に係る効果に加え、各電源設備(受電設備10、自家発電装置20、無停電電源装置30)のオンオフをより確実に制御することができるので、特に、商用電源が停電した際における、自家発電装置20と無停電電源装置30との稼働制御がより迅速かつ的確に実行できるので、系統A~系統Fに係る複数の照明器具301~303の点灯制御もより精密に実施することができる。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:照明システム
10:受電設備
11:受電設備用電流電圧計
20:補助電源設備(自家発電装置)
21:補助電源設備用電流電圧計(自家発電装置用電流電圧計)
30:無停電電源設備(無停電電源装置)
31:無停電電源設備用電流電圧計(無停電電源装置用電流電圧計)
40:電源切替装置
50:制御装置
101~106:複数の系統ごとの電流計
201:複数の系統ごとのリモートスイッチ
301:複数の系統ごとの照明器具
60:設定器
70:調光操作器