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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155805
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】印刷システム及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/08 20060101AFI20221006BHJP
   B65H 23/198 20060101ALI20221006BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41J17/08
B65H23/198
B41J2/325 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059211
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
3F105
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AD07
2C065DA03
2C065DA11
2C065DA12
2C065DA13
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068GG01
2C068GH02
2C068GH04
2C068GK01
2C068GL01
3F105AA15
3F105AB07
3F105BA07
3F105BA16
3F105CA06
3F105CB04
3F105DA23
3F105DC03
(57)【要約】
【課題】インクリボンの搬送に係る設定値を正確に補正できる印刷システム及び印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷システムは印刷装置、制御部を含む。印刷装置はサーマルヘッド、第1スプール、第2スプール、第1モータ、第2モータ、ガイド軸、エンコーダを備える。第1スプールは供給ロールを装着し、第1モータの駆動で回転する。第2スプールは巻取ロールを装着し、第2モータの駆動で回転する。ガイド軸はインクリボンの搬送により回転する。エンコーダはガイド軸の回転量を検出する。制御部はサーマルヘッドによる印刷を行う(S32)。制御部はその後、インクリボンを巻取ロールから供給ロールに引き戻す(S41)。制御部はエンコーダの検出結果に基づき、インクリボンの搬送量及び搬送速度を計測する(S42)。制御部は計測結果に基づき、供給ロールと巻取ロールの直径を補正する(S47)。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置及び制御部を備え、
前記印刷装置は、
サーマルヘッドと、
インクリボンを搬送する機構であって、前記サーマルヘッドに前記インクリボンを供給可能な供給部と、前記サーマルヘッドに対して前記供給部と反対側に設けられ、前記インクリボンを受け取り可能な受取部と、前記供給部と前記受取部との間で搬送される前記インクリボンに従動して回転可能なローラとを有する搬送機構と、
前記ローラの回転量を検出する検出部とを備え、
前記制御部は、
前記サーマルヘッドが前記インクリボンを加熱することで印刷媒体に印刷を行う印刷処理と、
前記印刷処理の後に、実行される制御処理であって、
前記サーマルヘッドが前記インクリボンから離隔した状態で、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部側へ引き戻す引戻処理と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記引戻処理おいて引き戻される前記インクリボンの搬送速度及び搬送長さの少なくとも一方を計測する計測処理と、
前記計測処理での計測結果に基づき、前記搬送機構による前記インクリボンの搬送に係る設定値を補正する補正処理と
を含む制御処理とを行うことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記補正処理は、前記設定値として、前記供給部及び前記受取部の少なくとも一方にある前記インクリボンに係る量を補正することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記印刷装置は、前記搬送機構を駆動するステッピングモータを備え、
前記補正処理は、前記設定値として、前記ステッピングモータの駆動信号を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記引戻処理の後に、前記搬送機構が前記インクリボンのうち前記印刷処理において使用されていない未使用領域が前記サーマルヘッドと対向する位置まで、前記インクリボンを前記供給部から前記受取部に繰り出す繰出処理を行うことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の印刷システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部側へ引き戻す第二制御処理を実行可能であり、
前記印刷処理の後に、前記制御処理及び前記第二制御処理を選択的に切り替えて実行する制御切替処理を行うことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の印刷システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記制御処理の前記引戻処理において、前記第二制御処理で前記インクリボンが引き戻される第二距離よりも長い第一距離の前記インクリボンを引き戻す第一引戻処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記第一引戻処理において、前記インクリボンは所定の第一速度で引き戻され、
前記引戻処理は、
前記第一引戻処理と、
前記搬送機構が前記インクリボンを前記第一速度よりも遅い第二速度で前記第二距離だけ前記供給部側へ引き戻す第二引戻処理とを実行可能であり、
前記制御部は、前記印刷処理の後に、前記第一引戻処理及び前記第二引戻処理を選択的に切り替えて実行する引戻切替処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記印刷処理は、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部から前記受取部側へ搬送しながら、前記サーマルヘッドが前記インクリボンを加熱することを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の印刷システム。
【請求項9】
サーマルヘッドと、インクリボンを搬送する機構であって、前記サーマルヘッドに前記インクリボンを供給可能な供給部と、前記サーマルヘッドに対して前記供給部と反対側に設けられ、前記インクリボンを受け取り可能な受取部と、前記供給部と前記受取部との間で搬送される前記インクリボンに従動して回転可能なローラとを有する搬送機構と、前記ローラの回転量を検出する検出部とを備える印刷装置による印刷方法であって、
前記サーマルヘッドが前記インクリボンを加熱することで印刷媒体に印刷を行う印刷工程と、
前記印刷工程の後に、実行される制御工程であって、
前記サーマルヘッドが前記インクリボンから離隔した状態で、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部側へ引き戻す引戻工程と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記引戻工程において引き戻される前記インクリボンの搬送速度及び搬送長さの少なくとも一方を計測する計測工程と、
前記計測工程での計測結果に基づき、前記搬送機構による前記インクリボンの搬送に係る設定値を補正する補正工程と
を含む制御工程とを行うことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の搬送装置を含む記録装置は、シートを搬送するためのローラと、ローラに対向する対向ローラと、ローラを駆動する駆動モータとを備える。搬送装置は、ローラの回転速度、モータの駆動電流に基づき、ローラと対向ローラとの間の挟持部にシートの端部が進入する位置から所定搬送量だけシートが搬送される間の駆動モータの仕事量を求め、該仕事量に基づいてシートの寸法を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-144904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記搬送装置では、シートが搬送される距離が短い場合、ローラの回転量、駆動モータの駆動電流が小さくなり、ローラの回転速度及びモータの駆動電流を精度よく検出できない。この場合、搬送装置はシートの寸法を精度よく求めることができない。搬送装置が求めたシートの寸法と搬送されるシートの実際の寸法とが異なっていると、シートの搬送条件が不適切になり、記録装置がシートに画像を記録する際に画像不良を引き起こす場合がある。故に、シートの寸法を精度よく求めることができ、シートの寸法に基づきシートの搬送条件を適宜補正する記録装置が求められる。
【0005】
本発明の目的は、インクリボンの搬送に係る設定値を正確に補正できる印刷システム及び印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る印刷システムは、印刷装置及び制御部を備え、前記印刷装置は、サーマルヘッドと、インクリボンを搬送する機構であって、前記サーマルヘッドに前記インクリボンを供給可能な供給部と、前記サーマルヘッドに対して前記供給部と反対側に設けられ、前記インクリボンを受け取り可能な受取部と、前記供給部と前記受取部との間で搬送される前記インクリボンに従動して回転可能なローラとを有する搬送機構と、前記ローラの回転量を検出する検出部とを備え、前記制御部は、前記サーマルヘッドが前記インクリボンを加熱することで印刷媒体に印刷を行う印刷処理と、前記印刷処理の後に、実行される制御処理であって、前記サーマルヘッドが前記インクリボンから離隔した状態で、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部側へ引き戻す引戻処理と、前記検出部の検出結果に基づき、前記引戻処理おいて引き戻される前記インクリボンの搬送速度及び搬送長さの少なくとも一方を計測する計測処理と、前記計測処理での計測結果に基づき、前記搬送機構による前記インクリボンの搬送に係る設定値を補正する補正処理とを含む制御処理とを行うことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、引戻処理で搬送されるインクリボンの搬送速度及び搬送長さの少なくとも一方に基づき、インクリボンの搬送に係る設定値を補正する。引戻処理ではサーマルヘッドがインクリボンから離隔しているので、検出部が検出する際に外乱が生じ難く、精度よく検出できる。よって、印刷システムは、インクリボンの搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0008】
第一態様の印刷システムにおいて、前記補正処理は、前記設定値として、前記供給部及び前記受取部の少なくとも一方にある前記インクリボンに係る量を補正してもよい。印刷システムは、設定値として、供給部及び受取部の少なくとも一方にあるインクリボンに係る量を補正する。よって、印刷システムは、インクリボンに係る量を正しく補正して搬送できる。
【0009】
第一態様の印刷システムにおいて、前記印刷装置は、前記搬送機構を駆動するステッピングモータを備え、前記補正処理は、前記設定値として、前記ステッピングモータの駆動信号を補正してもよい。印刷システムは、設定値として、ステッピングモータの駆動信号を補正する。よって、印刷システムは、ステッピングモータの駆動信号を正しく補正して搬送できる。
【0010】
第一態様の印刷システムにおいて、前記制御部は、前記引戻処理の後に、前記搬送機構が前記インクリボンのうち前記印刷処理において使用されていない未使用領域が前記サーマルヘッドと対向する位置まで、前記インクリボンを前記供給部から前記受取部に繰り出す繰出処理を行ってもよい。印刷システムは、引戻処理でインクリボンを供給部側へ引き戻した後、未使用領域がサーマルヘッドと対向する位置まで、インクリボンを受取部側に繰り出す。よって、印刷システムは次回の印刷処理においてインクリボンの搬送が容易になる。
【0011】
第一態様の印刷システムにおいて、前記制御部は、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部側へ引き戻す第二制御処理を実行可能であり、前記印刷処理の後に、前記制御処理及び前記第二制御処理を選択的に切り替えて実行する制御切替処理を行ってもよい。印刷システムは、制御処理と第二制御処理とを選択的に切り替えて実行する。第二制御処理を実行する場合の印刷システムは、検出部の検出結果に基づく計測、及び計測結果に基づく設定値の補正を行わないので、制御処理と比べて処理を簡略化できる。
【0012】
第一態様の印刷システムにおいて、前記制御部は、前記制御処理の前記引戻処理において、前記第二制御処理で前記インクリボンが引き戻される第二距離よりも長い第一距離の前記インクリボンを引き戻す第一引戻処理を行ってもよい。印刷システムは、第一引戻処理で引き戻すインクリボンの距離が第二制御処理で引き戻すインクリボンの距離よりも長い。第一引戻処理を実行する場合、インクリボンを搬送する距離が長いので、検出部はローラの回転量を精度よく検出できる。よって、印刷システムは、インクリボンの搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0013】
第一態様の印刷システムでは、前記第一引戻処理において、前記インクリボンは所定の第一速度で引き戻され、前記引戻処理は、前記第一引戻処理と、前記搬送機構が前記インクリボンを前記第一速度よりも遅い第二速度で前記第二距離だけ前記供給部側へ引き戻す第二引戻処理とを実行可能であり、前記制御部は、前記印刷処理の後に、前記第一引戻処理及び前記第二引戻処理を選択的に切り替えて実行する引戻切替処理を行ってもよい。印刷システムは、第二引戻処理において第二速度で第二距離だけインクリボンを供給部側へ引き戻す。第一速度よりも遅い第二速度でインクリボンを引き戻すので、ローラでのインクリボンの滑りが低減して検出部の検出精度が高くなる。よって、印刷システムは、第一距離よりも短い第二距離でインクリボンを供給部側へ引き戻す場合にも、インクリボンの搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0014】
第一態様の印刷システムにおいて、前記印刷処理は、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部から前記受取部側へ搬送しながら、前記サーマルヘッドが前記インクリボンを加熱してもよい。第一態様の印刷システムは、連続でインクリボンを搬送しながらサーマルヘッドによる印刷を行う。この場合にも、印刷システムは、引戻処理にてインクリボンを引き戻し、インクリボンの搬送に係る設定値を補正する。よって、印刷システムは、インクリボンの搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0015】
本発明の第二態様に係る印刷方法は、サーマルヘッドと、インクリボンを搬送する機構であって、前記サーマルヘッドに前記インクリボンを供給可能な供給部と、前記サーマルヘッドに対して前記供給部と反対側に設けられ、前記インクリボンを受け取り可能な受取部と、前記供給部と前記受取部との間で搬送される前記インクリボンに従動して回転可能なローラとを有する搬送機構と、前記ローラの回転量を検出する検出部とを備える印刷装置による印刷方法であって、前記サーマルヘッドが前記インクリボンを加熱することで印刷媒体に印刷を行う印刷工程と、前記印刷工程の後に、実行される制御工程であって、前記サーマルヘッドが前記インクリボンから離隔した状態で、前記搬送機構が前記インクリボンを前記供給部側へ引き戻す引戻工程と、前記検出部の検出結果に基づき、前記引戻工程において引き戻される前記インクリボンの搬送速度及び搬送長さの少なくとも一方を計測する計測工程と、前記計測工程での計測結果に基づき、前記搬送機構による前記インクリボンの搬送に係る設定値を補正する補正工程とを含む制御工程とを行うことを特徴とする。第二態様の印刷方法は第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】印刷システム8の概要を示す図である。
図2】印刷システム8の電気的構成を示すブロック図である。
図3】引戻処理においてパターンQ1、Q2でインクリボン9が搬送される場合の印刷システム8の印刷動作を説明する図である。
図4】引戻処理においてパターンQ3でインクリボン9が搬送される場合の印刷システム8の印刷動作を説明する図である。
図5】引戻処理におけるインクリボン9の搬送速度の時間変動を示すグラフである。
図6】メイン処理のフローチャートである。
図7図6の続きを示すメイン処理のフローチャートである。
図8図7の続きを示すメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<印刷システム8の概要>
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。印刷システム8は、熱転写型の印刷を行うためのシステムである。印刷システム8は、外部機器100(図2参照)によって搬送される印刷媒体Pに対して印刷を行う。外部機器100の具体例として、包材を搬送する包装機が挙げられる。この場合、例えば印刷システム8は、包装機によって印刷媒体Pが搬送される搬送ラインの一部に組み込まれて使用される。
【0018】
図1に示すように、印刷システム8は、印刷装置1、制御部7、111(図2参照)、プラテンローラ20、機器間コントローラ110(図2参照)を含む。以下、図の説明の理解を助けるため、印刷装置1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側を定義する。印刷装置1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側は、図1の上側、下側、左側、右側、手前側、及び、奥側に夫々対応する。図1において、印刷媒体Pの搬送方向は、印刷装置1の左右方向と一致する。印刷媒体Pは外部機器100によって、右側から左側に向けて搬送される。
【0019】
印刷装置1は、熱転写型のサーマルプリンタである。印刷装置1は、サーマルヘッド3と、第1モータ81、第2モータ82、第3モータ83(図2参照)とを含む。図1に示すように、印刷装置1は、箱状の筐体10を有する。筐体10の内部に、基板10Aが固定される。基板10Aにはサーマルヘッド3、制御部7(図2参照)、搬送機構6が設けられる。搬送機構6は、リボン装着部2、ガイド軸60、モータ80(図2参照)を備える。ガイド軸60は、ガイド軸61、62、65、66の総称である。モータ80は、第1モータ81、第2モータ82、第3モータ83の総称である。
【0020】
印刷装置1の下方に、円筒状のプラテンローラ20が配置される。サーマルヘッド3とプラテンローラ20とは、互いに上下方向に対向する。第1モータ81及び第2モータ82(図2参照)は、インクリボン9をサーマルヘッド3とプラテンローラ20との間を経由して搬送する。印刷装置1は、印刷媒体Pの印刷面(図1における上側の面)に印刷装置1の下端が対向する状態で、印刷媒体Pに隣接する。外部機器100によって搬送される印刷媒体Pは、インクリボン9とプラテンローラ20との間を通る。つまりプラテンローラ20は、外部機器100により搬送される印刷媒体Pの搬送経路に対して、インクリボン9とは反対に配置される。
【0021】
<リボンアッセンブリ90>
印刷装置1は、筐体10の内部に収容されるリボンアッセンブリ90のインクリボン9をサーマルヘッド3で加熱することによって、印刷媒体Pに印刷を行う。リボンアッセンブリ90は、芯軸90A、90B、及びインクリボン9を有する。芯軸90A、90Bは、夫々円筒状である。インクリボン9は帯状のフィルムであり、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)などの基材の表面にインク層が塗布されている。インク層は、例えば、カーボンなどの色素成分と、ワックス及び/又はレジンなどのバインダー成分とを含む。インクは加熱により溶融し、印刷媒体Pに転写される。インクリボン9は、必要に応じて、バックコート層、剥離層、接着層などの機能層を有してもよい。インクリボン9は、一端部が芯軸90Aの側面に接続され、他端部が芯軸90Bの側面に接続される。
【0022】
リボンアッセンブリ90は、芯軸90Aにインクリボン9が巻回された状態で、印刷装置1のリボン装着部2に装着される。芯軸90Aに巻回されたインクリボン9を、「供給ロール9A」という。インクリボン9は、サーマルヘッド3による印刷の過程で、芯軸90Aの供給ロール9Aから繰り出され、ガイド軸60及びサーマルヘッド3によって案内され、芯軸90Bに巻き取られる。芯軸90Bに巻回されたインクリボン9を、「巻取ロール9B」という。
【0023】
<リボン装着部2>
リボン装着部2は、第1モータ81、第2モータ82、第1スプール21及び第2スプール22を有する。第1スプール21及び第2スプール22は、夫々、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。第1スプール21は、基板10Aの上下方向略中央、且つ、左右方向中央よりも右側に設けられる。第2スプール22は、基板10Aの上下方向略中央、且つ、左右方向中央よりも左側に設けられる。第1スプール21には、リボンアッセンブリ90の芯軸90Aに巻回された供給ロール9Aが装着される。第2スプール22には、リボンアッセンブリ90の芯軸90Bに巻回された巻取ロール9Bが装着される。
【0024】
第1スプール21は第1モータ81(図2参照)に直結し、第1モータ81によって回転する。第2スプール22は第2モータ82(図2参照)に直結し、第2モータ82によって回転する。第1スプール21及び第2スプール22は、夫々異なるモータ80によって回転するので、夫々異なる回転速度で回転可能である。なお、第1スプール21及び第2スプール22は、夫々第1モータ81及び第2モータ82と間接的に連結されていてもよい。
【0025】
第1スプール21及び第2スプール22が、図1における印刷装置1を前側から見た状態で反時計回りに回転するとき、芯軸90A、90Bは正転方向に回転する。このとき、インクリボン9は、供給ロール9Aから繰り出され、巻取ロール9Bに巻き取られる。第1スプール21及び第2スプール22が、図1における印刷装置1を前側から見た状態で時計回りに回転するとき、芯軸90A、90Bは反転方向に回転する。インクリボン9は、巻取ロール9Bから繰り出され、供給ロール9Aに巻き取られる。
【0026】
供給ロール9Aと巻取ロール9Bとの間に張り渡されるインクリボン9は、第1スプール21と第2スプール22の回転に応じ、筐体10内で搬送される。インクリボン9が搬送されるときに通過する経路を、「搬送経路R」という。インクリボン9は、ガイド軸60と接触することによって搬送経路Rに沿って搬送され案内される。サーマルヘッド3は、供給ロール9Aと巻取ロール9Bとの間に張り渡されるインクリボン9に隣接する。
【0027】
<サーマルヘッド3>
サーマルヘッド3は、基板10Aの前面のうち、第1スプール21及び第2スプール22よりも下側に設けられる。サーマルヘッド3は、インクリボン9の搬送方向の一部に設けられる。サーマルヘッド3は、前後方向に直線状に並んだ複数の発熱素子を有する。前後方向は、インクリボン9の搬送方向と交差する方向であるインクリボン9の幅方向に対応する方向である。サーマルヘッド3は、インクリボン9の幅方向に並んだ複数の発熱素子を発熱させることで、インクリボン9を用いた印字を行う。
【0028】
サーマルヘッド3は、上下方向に移動可能である。第3モータ83(図2参照)は、上下方向においてヘッド位置3A、3B間で、サーマルヘッド3を上下方向に移動させる。ヘッド位置3Bは、インクリボン9をプラテンローラ20に向けて付勢する位置である。ヘッド位置3Aは、ヘッド位置3Bよりも上側でインクリボン9から離隔して、プラテンローラ20に対するインクリボン9の付勢を解除する位置である。つまり、第3モータ83は、サーマルヘッド3をプラテンローラ20に対して接近及び離隔する方向に移動させる。
【0029】
<ガイド軸60>
ガイド軸60は円柱状であり、基板10Aの表面である前面から前側に向けて延びる。ガイド軸60は、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。ガイド軸61は、基板10Aの右上の隅近傍に設けられる。ガイド軸62は、基板10Aの右下の隅近傍に設けられる。ガイド軸65は、基板10Aの左下の隅近傍に設けられる。ガイド軸66は、基板10Aの左上の隅近傍に設けられる。
【0030】
ガイド軸60の周面の一部にインクリボン9が接触する。インクリボン9の搬送経路Rは、第1スプール21に装着された供給ロール9Aから右斜め上側に向けて延び、ガイド軸61に接触して方向を変え、ガイド軸62に向けて下側に延び、ガイド軸62に接触して方向を変え、ガイド軸65に向けて左側に延びる。インクリボン9の搬送経路Rは、ガイド軸62とガイド軸65との間の途中の部分において、サーマルヘッド3と接触することに応じて方向が変更される。インクリボン9の搬送経路Rは更に、ガイド軸65に接触して方向を変え、ガイド軸66に向けて上側に延び、ガイド軸66に接触して方向を変え、巻取ロール9Bに向けて右斜め下側に延びる。なお、印刷装置1に、例えば、ガイド軸62とガイド軸65との間に、搬送経路Rの方向を変える他のガイド軸が設けられていてもよい。
【0031】
<印刷システム8の電気的構成>
図2を参照し、印刷システム8の電気的構成について説明する。印刷装置1は制御部7を備える。制御部7は、例えば印刷装置1を制御するCPUと、CPUの指示に応じて動作する各種の駆動回路とで構成される。各種の駆動回路は、例えば、モータ80である第1モータ81、第2モータ82、第3モータ83に信号(例えば、駆動電流)を供給するための回路、サーマルヘッド3に信号(例えば、駆動電流)を供給するための回路などを含む。制御部7は、記憶部71と、操作部73と、サーマルヘッド3と、モータ80である第1モータ81、第2モータ82、第3モータ83と、エンコーダ811と、通信インタフェース(通信I/F)72と、非図示のインタフェース回路を介して電気的に接続する。
【0032】
サーマルヘッド3は、制御部7から出力される信号に応じて発熱する。モータ80は、パルス信号に同期して回転するステッピングモータである。第1モータ81は、制御部7から出力されるパルス信号に応じて、第1スプール21を回転させる。第2モータ82は、制御部7から出力されるパルス信号に応じて、第2スプール22を回転させる。第3モータ83は、制御部7から出力されるパルス信号に応じて回転し、サーマルヘッド3を上下方向に移動させる。
【0033】
エンコーダ811はガイド軸65の回転位置及び回転量を検出する。エンコーダ811は検出した回転位置及び回転量を示す信号を、制御部7に出力する。通信I/F72は、機器間コントローラ110との間で通信を行なうためのインタフェース素子である。
【0034】
機器間コントローラ110は、印刷装置1の外部に設けられ、印刷装置1と外部装置との通信を制御する。機器間コントローラ110は、制御部111、記憶部112、通信I/F113、及び通信I/F114を含む。通信I/F113は、印刷装置1の通信I/F72と有線又は無線で接続される。通信I/F114は、外部装置である外部機器100及び外部端末150と有線又は無線で接続される。本実施形態では、外部機器100は印刷媒体Pを搬送する機器(例えば、包材を搬送する包装機)である。外部端末150は、ユーザが印刷装置1に対して様々な指示を行うことが可能な端末(例えばPC)である。
【0035】
印刷装置1の記憶部71は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等の各種記憶媒体を含む。記憶部71には、制御部7が実行する処理のプログラムが記憶される。記憶部71には、印刷データ、印刷数、後述するリボン最高速度Va、Va´、搬送量L1等が記憶される。印刷データ及び印刷数は、外部機器100又は外部端末150から機器間コントローラ110を介して制御部7に入力されることで、記憶部71内に設定される。
【0036】
制御部7によって実行されるプログラムは、例えば、外部端末150から通信I/F72を介してダウンロードされてもよい。制御部7は、通信I/F72を介して、外部端末150から取得したプログラムを、記憶部71に記憶してもよい。印刷データ、媒体速度V、及び設定情報は、印刷装置1の操作部73から入力されて、記憶部71に設定されてもよい。
【0037】
<印刷動作の概要>
図3図4を参照して、印刷システム8において印刷媒体Pに印刷イメージが形成される印刷動作の概要を説明する。なお、理解を容易とするため、図3図4では、インクリボン9が直線状に示される。しかし実際には、インクリボン9及び印刷媒体Pは曲折する場合がある。また、印刷装置1の動作を中心に説明し、搬送される印刷媒体Pの説明を簡略化する。図3(a)に示すように、印刷動作の実行前、サーマルヘッド3はヘッド位置3Aとなる上下方向の位置に配置される。
【0038】
印刷システム8では、印刷媒体Pが外部機器100(図2参照)によって、外部機器100で設定された搬送速度である媒体速度Vで搬送される。印刷媒体Pが媒体速度Vで搬送された状態で、印刷装置1による印刷動作が実行される。外部機器100は、機器間コントローラ110を介して印刷装置1に、所定タイミングで印刷指令を送信する。
【0039】
印刷装置1では、外部機器100から印刷指令を受信すると、図3(b)に示すように、印刷準備処理が実行される。印刷準備処理では、第1モータ81及び第2モータ82が駆動し、第1スプール21及び第2スプール22が回転する。インクリボン9は、第1スプール21の供給ロール9Aから繰り出され、第2スプール22の巻取ロール9Bに巻き取られる。そして、インクリボン9の搬送速度が、ゼロから所定のリボン速度Vrまで加速される。リボン速度Vrは、外部機器100又は外部端末150から設定された媒体速度Vに応じた、インクリボン9の目標到達速度である。
【0040】
また、サーマルヘッド3が第3モータ83の駆動により、ヘッド位置3Aからヘッド位置3Bに上下方向に移動する。サーマルヘッド3はプラテンローラ20に上側から接近して、インクリボン9を印刷媒体Pの印刷面に付勢する。プラテンローラ20は、印刷媒体Pのうち印刷面と反対の面に接触し、インクリボン9及び印刷媒体Pをサーマルヘッド3に付勢する。
【0041】
印刷準備処理が完了した後、図3(c)に示すように、印刷処理が実行される。印刷処理では、サーマルヘッド3の発熱素子が、記憶部71に設定されている印刷データに基づく通電によって加熱される。インクリボン9はリボン速度Vrで搬送されながら、インクが印刷媒体Pの印刷面に転写される。以上によって、印刷イメージが印刷媒体Pに形成される。印刷媒体Pへの印刷が完了すると、サーマルヘッド3の加熱が停止される。
【0042】
印刷処理が完了した後、図3(d)に示すように、印刷完了処理が実行される。印刷完了処理では、第3モータ83の駆動により、ヘッド位置3Bからヘッド位置3Aに上下方向に移動する。サーマルヘッド3は、インクリボン9の上側に離隔して、プラテンローラ20に対するインクリボン9の付勢を解除する。また、第1モータ81及び第2モータ82の駆動が制御され、インクリボン9の搬送速度がリボン速度Vrからゼロまで減速される。第1スプール21及び第2スプール22の回転が停止されることで、インクリボン9の搬送が停止される。
【0043】
印刷完了処理が完了した後、図3(e)に示すように、引戻処理が実行される。引戻処理では、第1モータ81及び第2モータ82が印刷処理と逆方向に駆動されて、第1スプール21及び第2スプール22が逆回転する。インクリボン9は、第2スプール22の巻取ロール9Bから、第1スプール21の供給ロール9Aへと引き戻される。インクリボン9は少なくとも印刷処理での使用量(Lta)だけ引き戻される。
【0044】
引戻処理の実行中、計測処理が実行される。計測処理では、エンコーダ811がガイド軸65の回転量を検出し、検出結果を示す信号を制御部7に出力する。制御部7は、エンコーダ811の検出結果に基づき、搬送されるインクリボン9の搬送量及び搬送速度を計測する。なお、制御部7は引戻処理の実行中に計測処理を実行しなくてもよい。引戻処理の実行中に制御部7が計測処理が実行する設定を、第一制御設定といい、引戻処理の実行中に制御部7が計測処理が実行しない設定を、第二制御設定という。外部機器100は、機器間コントローラ110を介して印刷装置1に対して第一制御設定及び第二制御設定の何れか一方を設定する。
【0045】
図5に示すように、引戻処理では、インクリボン9の搬送速度が、ゼロからリボン最高速度Vaまで加速度Aで加速される。リボン最高速度Vaは、外部機器100又は外部端末150から設定されたインクリボン9の目標到達速度である。その後、インクリボン9の搬送速度が、リボン最高速度Vaからゼロまで加速度-Aで減速される。インクリボン9が搬送されてから時間Taで搬送完了するまでのインクリボン9の総搬送量はLtaである。総搬送量Ltaは、印刷処理でのインクリボン9の使用量、即ち発熱したサーマルヘッド3がヘッド位置3Bにおいて印刷媒体Pに印刷を行った量と等しい。インクリボン9がリボン最高速度Vaの定速で搬送される定速搬送量はLaである。定速搬送量Laは、印刷処理でのインクリボン9の使用量(Lta)から、インクリボン9をリボン最高速度Vaまで加速させた長さとリボン最高速度Vaからゼロまで減速させた長さの合計を差し引いた長さである。
【0046】
本実施形態では、リボンが定速で送られているときのエンコーダ出力に基づき、後述する供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径補正処理を行う。定速搬送量Laは、記憶部71に設定される印刷データにより変動する。定速搬送量Laが小さい場合、定速となるリボン最高速度Vaで搬送される時間が短くなる。この場合、エンコーダ811は、ガイド軸65の回転量を精度よく検出することができない。
【0047】
定速搬送量Laが所定の搬送量L1よりも短い場合、制御部7はエンコーダ811が精度よく検出できないと判断する、この場合、制御部7は搬送処理におけるリボン最高速度をVaよりも低速のVa´に設定する。リボン最高速度Va´の定速で搬送されるインクリボン9の定速搬送量をLa´とする。これにより、図5の一点鎖線で示すように、同じ総搬送量Ltaを搬送した場合でも、リボン最高速度Va´で搬送される時間及び定速搬送量La´が、リボン最高速度Vaで搬送される時間及び定速搬送量Laよりも長くなる。よって、エンコーダ811は、ガイド軸65の回転量を精度よく検出できる。引戻処理において、総搬送量Lta、リボン最高速度Va、定速搬送量La、加速度A、所要時間Taで、インクリボン9が巻取ロール9Bから供給ロール9Aに搬送されるパターンをQ1という。総搬送量Lta、リボン最高速度Va´、定速搬送量La´、加速度A、所要時間Ta´で、インクリボン9が巻取ロール9Bから供給ロール9Aに搬送されるパターンをQ2という。
【0048】
パターンQ2でインクリボン9が搬送される場合、所要時間Ta´が過剰に長くなる場合がある。また、インクリボン9の搬送速度(搬送量)の制御の細かさは、供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径の大きさにより変動する。より詳細に、第1モータ81が1つのパルス信号で供給ロール9Aが巻き取るインクリボン9の量は、供給ロール9Aの直径が大きくなるほど長くなる。第2モータ82が1つのパルス信号で巻取ロール9Bが繰り出すインクリボン9の量は、巻取ロール9Bの直径が大きくなるほど長くなる。よって、供給ロール9A、巻取ロール9Bの何れか一方の直径が大きい場合、制御部7はインクリボン9の搬送速度(搬送量)を細かく制御できない。
【0049】
パターンQ2で所要時間Ta´が過剰に長くなる場合、若しくは定速搬送量La´が所定の搬送量L1よりも短い場合、制御部7は引戻処理でのインクリボン9の総搬送量をLtbとする。総搬送量Ltbは印刷処理でのインクリボン9の使用量(Lta)よりも大きい。引戻処理において、総搬送量Ltb、リボン最高速度Va、リボン最高速度Vaで搬送される定速搬送量Lb(Lb≧L1)、加速度A、所要時間Tbでインクリボン9が搬送されるパターンをQ3という。
【0050】
引戻処理にてパターンQ3でインクリボン9が搬送された後、図4(f)に示す、繰出処理が実行される。繰出処理では、第1モータ81及び第2モータ82が引戻処理と逆方向(即ち、印刷処理と同方向)に駆動されて、第1スプール21及び第2スプール22が回転する。繰出処理では、印刷処理でのインクリボン9の使用量(Lta)に対してパターンQ3の引戻処理で過剰に引き戻された総搬送量Ltbとの差分(Ltb-Lta)のインクリボン9が供給ロール9Aから巻取ロール9Bに繰り出される。繰出処理の実行後、インクリボン9のうち印刷処理に使用されていない未使用領域がサーマルヘッド3と対向する。なお、引戻処理にてパターンQ1、Q2でインクリボン9が引き戻された場合、繰出処理は実行されない。
【0051】
<供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径の補正>
上記の通り、制御部7がインクリボン9の搬送速度、搬送量を制御する上で、供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径は重要なパラメータの一つである。制御部7は、印刷動作の実行開始時にエンコーダ811を使って供給ロール9Aと巻取ロール9B夫々の直径を検出する動作を実行する。また制御部7は、搬送処理が行われた場合、検出した供給ロール9Aと巻取ロール9Bの直径を補正する為の補正処理を実行する。
【0052】
補正処理において制御部7は、搬送処理の前に制御部7が設定したインクリボン9の定速搬送量La(Lb)と、エンコーダ811の検出結果に基づき計測したインクリボン9の定速搬送量Lmとを比較する。計測した定速搬送量Lmが設定した定速搬送量La(Lb)よりも大きい場合、過剰にインクリボン9が搬送されており、実際の供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径は検出した値よりも大きい。よって、供給ロール9A、巻取ロール9Bの検出した直径に補正値βを加算して補正する。一方、計測した定速搬送量Lmが設定した定速搬送量La(Lb)よりも小さい場合、インクリボン9の搬送が不足しており、実際の供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径は検出した値よりも小さい。よって、供給ロール9A、巻取ロール9Bの検出した直径から補正値βを減算して補正する。
【0053】
本実施形態では、以下の式(1)により補正値βを算出する。なお、Vmは制御部7がエンコーダ811の検出結果に基づき計測したリボン最高速度である。パターンQ2でインクリボン9が搬送される場合、VaはVa´に置換される。Fは所定の係数である。
β=|Vm-Va|×F (1)
【0054】
<メイン処理>
図6図8を参照し、印刷装置1のメイン処理について説明する。メイン処理は印刷装置1が印刷媒体Pに印刷イメージを形成するための処理である。メイン処理の開始前、記憶部71には、印刷する印刷データ、印刷数、リボン最高速度Va、Va´、搬送量L1が予め記憶されている。印刷数は、メイン処理において印刷媒体Pに対して印刷を行う繰り返し数である。
【0055】
また、記憶部71はメイン処理で用いられる制御フラグ、引戻フラグを記憶する。
制御フラグは、計測処理と計測処理に基づく補正処理を実行する第一制御設定に設定する場合、値を0に設定され、計測処理と補正処理を実行しない第二制御設定に設定する場合、値を1に設定される。引戻フラグは、搬送処理においてパターンQ3でインクリボン9が搬送される場合、値を1に設定され、パターンQ1、Q2でインクリボン9が搬送される場合、値を0に設定される。
【0056】
印刷装置1の制御部7は、印刷装置1の電源が投入されたことを契機として、記憶部71に記憶されているプログラムを読み出して実行することでメイン処理を開始する。図6に示すように、制御部7は初期動作を実行する(S1)。初期動作は、印刷装置1を初期状態に制御する処理である。初期動作において、制御部7はサーマルヘッド3をヘッド位置3Aへ移動させる動作、及びエンコーダ811を使って供給ロール9Aと巻取ロール9B夫々の直径を検出する動作を実行する。
【0057】
制御部7は、制御設定を変更するか否かを判断する(S2)。ユーザは制御設定を切り替える場合、外部機器100又は外部端末150を操作し、機器間コントローラ110を介して印刷装置1に制御設定を変更する指示を送信する。制御部7に制御設定を変更する指示が入力された場合(S2:YES)、制御部7は変更する制御設定が第一制御設定か否かを判断する(S3)。変更する制御設定が第一制御設定である場合(S3:YES)、制御部7は制御フラグの値を0に設定して第一制御設定とし(S4)、処理をS6に移行する。変更する制御設定が第一制御設定でない場合(S3:NO)、制御部7は制御フラグの値を1に設定して第二制御設定とし(S5)、処理をS6に移行する。一方、制御部7に制御設定を変更する指示が入力されない場合(S2:NO)、制御部7は制御設定を変更せず処理をS6に移行する。
【0058】
制御部7は、外部機器100から印刷指令を受信したか否かを判断する(S6)。ユーザは印刷装置1の印刷動作を実行する場合、外部機器100を操作し、機器間コントローラ110を介して印刷装置1に印刷指令を送信する。外部機器100から印刷指令を受信していないと判断した場合(S6:NO)、制御部7は処理をS2に戻し、S2~S6の処理を繰り返す。
【0059】
外部機器100から印刷指令を受信したと判断した場合(S6:YES)、制御部7は記憶部71から印刷データ、印刷数、リボン最高速度Va、加速度A等の各種データを取得する(S11)。制御部7は、取得した印刷データ、リボン最高速度Va、及び加速度Aに基づき、総搬送量Lta、定速搬送量Laを算出する(S12)。
【0060】
制御部7は、記憶部71が記憶する制御フラグの値が0であるか否かを判断する(S13)。制御フラグの値が0であると判断した場合(S13:YES)、制御部7は第一制御設定で印刷動作を実行するとして、処理をS21(図7参照)に移行する。制御フラグの値が1であると判断した場合(S13:NO)、制御部7は第二制御設定で印刷動作を実行するとして、後述する引戻処理をパターンQ1(総搬送量Lta、定速搬送量La、リボン最高速度Va)でインクリボン9を引き戻すと設定し(S14)、処理をS31に移行する。
【0061】
図7に示すように、制御部7は、算出した定速搬送量Laが記憶部71に記憶された搬送量L1以上であるか否かを判断する(S21)。定速搬送量Laが搬送量L1以上である場合(S21:YES)、制御部7はパターンQ1でインクリボン9を搬送した場合にもエンコーダ811が十分な精度でガイド軸65の回転量を検出できると判断する。そして、制御部7は後述する引戻処理をパターンQ1(総搬送量Lta、定速搬送量La、リボン最高速度Va)でインクリボン9を引き戻すと設定し(S22)、処理をS28に移行する。
【0062】
定速搬送量Laが搬送量L1よりも小さい場合(S21:NO)、制御部7は印刷データ、リボン最高速度Va、及び加速度Aに基づき、パターンQ3における総搬送量Ltb、定速搬送量Lb、所要時間Tbを算出する(S23)。制御部7は、総搬送量Lta、減速したリボン最高速度Va´、及び加速度Aに基づき、パターンQ3における所要時間Ta´及びリボン最高速度Va´での定速搬送量La´を算出する(S24)。
【0063】
制御部7は、定速搬送量La´が記憶部71に記憶される搬送量L1以上であるか否かを判断する(S25)。定速搬送量La´が搬送量L1以上である場合(S25:YES)、S24で算出した所要時間Ta´がS23で算出した所要時間Tb以下であるか否かを判断する(S26)。所要時間Ta´が所要時間Tb以下である場合(S26:YES)、制御部7はパターンQ2でインクリボン9を搬送した場合にも十分な精度でガイド軸65の回転量を検出できると判断する。そして、制御部7は後述する引戻処理においてパターンQ2(総搬送量Lta、定速搬送量La´、リボン最高速度Va´)でインクリボン9を引き戻すと設定する(S27)。制御部7は、記憶部71に記憶されている繰出フラグの値を0に設定し(S28)、処理をS31に移行する。
【0064】
定速搬送量La´が搬送量L1よりも小さい(S25:NO)、又は所要時間Ta´が所要時間Tbよりも大きい場合(S26:NO)、制御部7はパターンQ3でインクリボン9を搬送した場合に十分な精度でガイド軸65の回転量を検出できると判断する。制御部7は後述する搬送処理においてパターンQ3(総搬送量Ltb、定速搬送量Lb、リボン最高速度Va)でインクリボン9を搬送すると設定する(S29)。制御部7は、記憶部71に記憶されている引戻フラグの値を1に設定し(S30)、処理をS31に移行する。
【0065】
図8に示すように、制御部7は印刷準備処理を実行する(S31)。印刷準備処理において、第1モータ81及び第2モータ82が駆動し、インクリボン9が供給ロール9Aから巻取ロール9Bに搬送される。インクリボン9の搬送速度は、ゼロからリボン速度Vrまで加速される。サーマルヘッド3は第3モータ83の駆動により、ヘッド位置3Aからヘッド位置3Bに上下方向に移動する。サーマルヘッド3はプラテンローラ20に上側から接近して、インクリボン9を印刷媒体Pの印刷面に付勢する。
【0066】
制御部7は、印刷処理を開始する(S32)。印刷処理において、制御部7は印刷データに基づきサーマルヘッド3の発熱素子を発熱させ、インクリボン9を供給ロール9Aから巻取ロール9Bに搬送しながら印刷媒体Pに印刷を行う。制御部7は、印刷が完了したか否かを判断する(S33)。印刷が完了していないと判断した場合(S33:NO)、制御部7は処理をS33に戻し、印刷が完了するまでS33の判断を繰り返す。印刷が完了したと判断した場合(S33:YES)、制御部7はサーマルヘッド3の発熱素子の発熱を停止して印刷処理を終了する(S34)。
【0067】
制御部7は、印刷完了処理を実行する(S35)。印刷完了処理において、サーマルヘッド3は第3モータ83の駆動により、ヘッド位置3Bからヘッド位置3Aに上下方向に移動する。サーマルヘッド3はインクリボン9の上側に離隔する。第1モータ81及び第2モータ82の駆動が制御され、インクリボン9の搬送速度がリボン速度Vrからゼロまで減速される。第1スプール21及び第2スプール22の回転が停止されることで、インクリボン9の搬送が停止される。
【0068】
制御部7は、記憶部71が記憶する制御フラグの値が0であるか否かを判断する(S36)。制御フラグの値が0であると判断した場合(S36:YES)、制御部7は第一制御設定であるとして、処理をS40に移行する。制御フラグの値が1であると判断した場合(S36:NO)、制御部7は第二制御設定であるとして、処理をS51に移行する。
【0069】
制御フラグの値が0であると判断した場合(S36:YES)、制御部7は引戻切替処理を実行する(S40)。引戻切替処理において、制御部7はS22、S27、S29(図7参照)で設定に基づき搬送のパターンをQ1~Q3に切り替える。制御部7は搬送のパターンQ1~Q3に基づく引戻処理を開始する(S41)。引戻処理において、第1モータ81及び第2モータ82を駆動する。第1スプール21及び第2スプール22が印刷処理の際と逆回転し、インクリボン9が第2スプール22の巻取ロール9Bから、第1スプール21の供給ロール9Aに引き戻される。制御部7は、計測処理を実行する(S42)。計測処理において、制御部7はエンコーダ811の検出結果に基づき、搬送されるインクリボン9の搬送量及び搬送速度を計測する。
【0070】
制御部7は、インクリボン9の引き戻しが完了したか否かを判断する(S43)。所要時間Ta(Ta´、Tb)が経過しておらず、インクリボン9の引き戻しが完了していないと判断した場合(S43:NO)、制御部7は処理をS43に戻し、引き戻しが完了するまでS43の判断を繰り返す。所要時間Ta(Ta´、Tb)が経過し、インクリボン9の引き戻しが完了したと判断した場合(S43:YES)、制御部7は第1モータ81及び第2モータ82の駆動を停止して引戻処理を終了する(S44)。
【0071】
制御部7は、繰出フラグが1であるか否かを判断する(S45)。搬送のパターンがQ1、Q2に設定され、繰出フラグが0であると判断した場合(S45:NO)、制御部7は処理をS47に移行する。搬送のパターンがQ3に設定され、繰出フラグが1であると判断した場合(S45:YES)、制御部7は繰出処理を実行する(S46)。繰出処理において、制御部7は第1モータ81及び第2モータ82を駆動し、インクリボン9を供給ロール9Aから巻取ロール9Bに繰り出す。インクリボン9のうち印刷処理に使用されていない未使用領域がサーマルヘッド3と対向するまで、インクリボン9は繰り出される。制御部7は処理をS47に移行する。
【0072】
制御部7は、補正処理を実行する(S47)。補正処理において、制御部7は計測処理(S44)で計測したインクリボン9の搬送量及び搬送速度に基づき、S1で検出した供給ロール9Aと巻取ロール9Bの直径を補正する。制御部7は処理をS61に移行する。
【0073】
一方、S36で制御フラグの値が1であると判断した場合(S36:NO)、制御部7は引戻処理を開始する(S51)。引戻処理において、制御部7はS14(図6参照)で設定した搬送のパターンQ1に基づき第1モータ81及び第2モータ82を駆動する。第1スプール21及び第2スプール22が印刷処理の際と逆回転し、インクリボン9が巻取ロール9Bから供給ロール9Aに引き戻される。
【0074】
制御部7は、インクリボン9の引き戻しが完了したか否かを判断する(S53)。所要時間Taが経過しておらず、インクリボン9の引き戻しが完了していないと判断した場合(S53:NO)、制御部7は処理をS53に戻し、引き戻しが完了するまでS53の判断を繰り返す。所要時間Taが経過し、インクリボン9の引き戻しが完了したと判断した場合(S53:YES)、制御部7は第1モータ81及び第2モータ82の駆動を停止して引戻処理を終了する(S54)。制御部7は処理をS61に移行する。
【0075】
制御部7は、印刷数分の全ての印刷が完了したか否かを判断する(S61)。全ての印刷が完了していないと判断した場合(S61:NO)、制御部7は処理をS31に戻す。印刷数分の全ての印刷が完了したと判断した場合(S61:YES)、制御部7は処理をS1に戻す。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の印刷システム8は、印刷装置1、制御部7を備える。印刷装置1は、サーマルヘッド3、搬送機構6、供給ロール9A、巻取ロール9B、エンコーダ811を備える。搬送機構6は、第1スプール21、第2スプール22、第1モータ81、第2モータ82、ガイド軸65を備える。供給ロール9Aは、第1スプール21に装着される。巻取ロール9Bは、第2スプール22に装着される。エンコーダ811は、ガイド軸65の回転位置及び回転量を検出する。制御部7は、サーマルヘッド3がインクリボン9を加熱することで印刷媒体Pに印刷を行う印刷処理を実行する(S32)。制御部7は、印刷処理を実行した後、サーマルヘッド3がインクリボン9から離隔した状態で、引戻処理を実行して第1モータ81、第2モータ82を駆動する(S41)。インクリボン9は、巻取ロール9Bから供給ロール9Aに引き戻される。エンコーダ811は、引戻処理においてガイド軸65の回転量を検出し、検出結果を制御部7に出力する。制御部7は、計測処理を実行し、エンコーダ811の検出結果に基づき、搬送されるインクリボン9の搬送量及び搬送速度を計測する(S42)。制御部7は、補正処理を実行し、計測処理での計測結果に基づき、インクリボン9の搬送に係る設定値として供給ロール9Aと巻取ロール9Bの直径を補正する(S47)。引戻処理においてサーマルヘッド3がインクリボン9から離隔しているので、エンコーダ811がガイド軸65の回転量を検出する際に外乱が生じ難い。よって、印刷システム8はインクリボン9の搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0077】
印刷システム8は、補正処理にて、インクリボン9の搬送に係る設定値として供給ロール9Aと巻取ロール9Bの直径を補正する。インクリボン9の搬送速度(搬送量)の制御の細かさは、供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径の大きさにより変動する。印刷システム8は、供給ロール9Aと巻取ロール9Bの直径を正しく補正できるので、インクリボン9の搬送速度(搬送量)を正しく制御できる。
【0078】
引戻処理にてパターンQ3でインクリボン9が搬送された後、制御部7は繰出処理を実行する(S46)。繰出処理では、第1モータ81、第2モータ82を引戻処理と逆方向に回転駆動されて、インクリボン9が供給ロール9Aから巻取ロール9Bに繰り出される。インクリボン9は印刷処理に使用されていない未使用領域がサーマルヘッド3と対向するまで繰り出される。これにより、印刷システム8は、次回の印刷処理でインクリボン9の未使用領域まで搬送しなくてよく、処理を簡略化できる。
【0079】
制御部7は、印刷動作の実行前に、引戻処理(S41)、計測処理(S42)、及び計測処理に基づく補正処理(S47)が実行される第一制御設定と、引戻処理(S51)のみ実行される第二制御設定の何れか一方を制御フラグにより設定する(S4、S5)。印刷処理の完了後(S35)、制御部7は制御フラグに基づき、第一制御設定による引戻処理(S41)、計測処理(S42)、及び補正処理(S47)と、第二制御設定による引戻処理(S51)とを切り替えて実行する。第二制御設定による引戻処理(S51)が実行される場合、計測処理及び補正処理が実行されないので、処理を簡略化できる。
【0080】
第一制御設定による引戻処理(S41)にて引き戻しのパターンがQ3である場合、第二制御設定による引戻処理(S51)でのインクリボン9の総搬送量Ltaよりも大きい総搬送量Ltbのインクリボン9が引き戻される。この場合、インクリボン9が引き戻される距離が長いので、エンコーダ811がガイド軸65の回転量を精度よく検出できる。よって、印刷システム8はインクリボン9の搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0081】
制御部7は、引戻切替処理を実行する(S40)。引戻切替処理において、制御部7はリボン最高速度の速いパターンQ1、Q3(リボン最高速度Va)、リボン搬送速度の遅いパターンQ2(リボン最高速度Va´)とを切り替える。引戻処理では引戻切替処理にて切り替えられた搬送のパターンに基づきインクリボン9が引き戻される。パターンQ2でインクリボン9が引き戻される場合、パターンQ1、Q3で搬送する場合と比較して、第1スプール21、第2スプール22、及びガイド軸60でのインクリボン9の滑りが低減する。よって、エンコーダ811の検出精度が高くなり、印刷システム8は、供給ロール9Aと巻取ロール9Bの直径を正しく補正できる。
【0082】
印刷装置1は、印刷処理(S32)において、インクリボン9を供給ロール9Aから巻取ロール9Bに搬送しながら、印刷データに基づきサーマルヘッド3がインクリボン9を加熱することで、印刷媒体Pに印刷を行う。印刷システム8は、連続的にインクリボン9を巻取ロール9B側に搬送しながら印刷する場合においても、引戻処理にてインクリボン9を供給ロール9A側に引き戻し、インクリボン9の搬送に係る設定値を補正する。よって、印刷システム8は、インクリボン9の搬送に係る設定値を正しく補正できる。
【0083】
上記実施形態において、第1スプール21が本発明の「供給部」に相当する。第2スプール22が本発明の「受取部」に相当する。ガイド軸65が本発明の「ローラ」に相当する。エンコーダ811が本発明の「検出部」に相当する。供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径が本発明の「インクリボンに係る量」に相当する。制御部7により実行されるS51~S54が本発明の「第二制御処理」に相当する。制御部7により実行されるS36が本発明の「制御切替処理」に相当する。総搬送量Ltaが本発明の「第二距離」に相当する。総搬送量Ltbが本発明の「第一距離」に相当する。リボン最高速度Vaが本発明の「第一速度」に相当する。パターンQ1、Q3で引き戻される場合の引戻処理が本発明の「第一引戻処理」に相当する。リボン最高速度Va´が本発明の「第二速度」に相当する。パターンQ2で引き戻される場合の引戻処理が本発明の「第二引戻処理」に相当する。
【0084】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限り夫々組合わせ可能である。上記実施形態では、印刷装置1の制御部7がメイン処理(図6図8参照)を実行しているが、機器間コントローラ110の制御部111がメイン処理の一部又は全部を実行してもよい。例えば制御部111は、メイン処理のうち、引戻処理の設定に係る処理(S21~S30)を実行してもよい。
【0085】
上記実施形態では、補正処理にて供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径を補正したが、これに限定されない。例えば、補正処理にて第1モータ81、第2モータ82のパルス信号を補正する処理を行ってもよい。具体的には、 前記エンコーダ811の検出結果か搬送量のズレを算出し、第1モータ81若しくは第2モータ82に送るパルス信号に含まれるパルス数を前記ズレに応じて増減するものであっても良い。また、供給ロール9A、巻取ロール9Bの質量を補正してもよい。この場合、供給ロール9A、巻取ロール9Bの質量が本発明の「インクリボンに係る量」に相当する。
【0086】
ガイド軸60はガイド軸65以外のガイド軸の回転量及び回転位置を検出するエンコーダを有してもよい。制御部7は、エンコーダ811に加え、第1スプール21、または第2スプール22に設けられるエンコーダの検出結果に基づき、搬送速度及び搬送量の計測を行ってもよい。例えば、第1モータ81、第2モータ82をブラシレスモータとした場合、エンコーダ811と第1スプール21、または第2スプール22に設けられるエンコーダとが併用され、搬送速度及び搬送量の計測が行われる。
【0087】
上記実施形態では、第1スプール21及び第2スプール22は、夫々異なるモータ80によって回転するが、第1スプール21及び第2スプール22の何れか一方が第1モータ81、第2モータ82の何れか一方の駆動に従動して回転してもよい。この場合、印刷装置1は第1モータ81、第2モータ82の何れか他方を備えなくてもよい。
【0088】
上記実施形態では、パターンQ3でのインクリボン9の搬送後、繰出処理(S46)が実行され、その後補正処理(S47)が実行されるが、補正処理が実行された後、繰出処理が実行されてもよい。この場合、繰出処理は補正処理で補正された供給ロール9A、巻取ロール9Bの直径に基づき搬送量、搬送速度等が制御されてもよい。また、パターンQ3でインクリボン9を引き戻した場合であっても、必ずしも繰出処理(S46)が実行されなくともよい。例えば、次の印刷動作を早く処理したい場合においては繰出処理を行わず、そのまま印刷動作を開始してもよい。多く引き戻した分だけインクリボンの同じ領域を重ねて使用する可能性が高くなるが、適切な補正処理を行いながら速く印刷処理を行うことができる。
【0089】
上記実施形態では、印刷装置1は、連続的にインクリボン9を搬送しながら、印刷媒体Pに対して印刷を行うが、これに限定されない。例えば、間欠的にインクリボン9を搬送し、サーマルヘッド3による印刷時に、インクリボン9と印刷媒体Pの搬送を中断し、サーマルヘッド3がインクリボン9に対して相対的に移動しながら、印刷を行う場合にも本発明は適用できる。この場合、印刷装置1はサーマルヘッド3をインクリボン9の搬送方向に駆動する為のモータを備えることが望ましい。
【符号の説明】
【0090】
1 印刷装置
2 リボン装着部
3 サーマルヘッド
7 制御部
8 印刷システム
21 第1スプール
22 第2スプール
71 記憶部
81 第1モータ
82 第2モータ
811 エンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8