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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155821
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】振動子の検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/52 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01S7/52 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059233
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】澁澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】堀野 直己
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB20
5J083AC26
5J083AE03
5J083BA12
5J083BE12
5J083BE14
5J083BE38
(57)【要約】
【課題】測深機や探知機の振動子の検査を容易に実施する。
【解決手段】送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する手段としての送受波部2と、前記電気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算するとともに前記所定の周波数範囲にエコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて超音波を送波するとともに受波する送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する手段としての検査演算部5と、を有し、エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する手段と、
前記電気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算するとともに前記所定の周波数範囲に前記エコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて前記超音波を送波するとともに受波する振動子の健全性を判定する手段と、を有し、
前記エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である、
ことを特徴とする振動子の検査装置。
【請求項2】
前記所定の周波数範囲の下限側の第1の周波数flwおよび上限側の第2の周波数fupが、下記の数式1A乃至1C
(数1A) fwd=f0/Q
(数1B) flw=f0-fwd/2
(数1C) fup=f0+fwd/2
ただし、 fwd:送受信周波数をスイープさせる周波数範囲の幅
f0 :振動子の共振周波数
Q :振動子のQ値
によって決定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動子の検査装置。
【請求項3】
前記エコー信号強度の平均値の最大値をImax、前記第1の周波数flwにおける前記エコー信号強度の平均値をIflw、さらに前記第2の周波数fupにおける前記エコー信号強度の平均値をIfupとし、また、強度しきい値をTiとして、下記の条件1
(条件1) Imax-Iflw≧Ti 且つ Imax-Ifup≧Ti
が成立する場合に前記振動子は正常であると判定し、前記条件1が成立しない場合に前記振動子に異常が発生していると判定し、
前記強度しきい値Tiが、5~7dBの範囲のうちのいずれかの値に設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の振動子の検査装置。
【請求項4】
送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する処理と、
前記電気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算するとともに前記所定の周波数範囲に前記エコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて前記超音波を送波するとともに受波する振動子の健全性を判定する処理と、を有し、
前記エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である、
ことを特徴とする振動子の検査方法。
【請求項5】
前記所定の周波数範囲の下限側の第1の周波数flwおよび上限側の第2の周波数fupが、下記の数式1A乃至1C
(数1A) fwd=f0/Q
(数1B) flw=f0-fwd/2
(数1C) fup=f0+fwd/2
ただし、 fwd:送受信周波数をスイープさせる周波数範囲の幅
f0 :振動子の共振周波数
Q :振動子のQ値
によって決定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の振動子の検査方法。
【請求項6】
前記エコー信号強度の平均値の最大値をImax、前記第1の周波数flwにおける前記エコー信号強度の平均値をIflw、さらに前記第2の周波数fupにおける前記エコー信号強度の平均値をIfupとし、また、強度しきい値をTiとして、下記の条件1
(条件1) Imax-Iflw≧Ti 且つ Imax-Ifup≧Ti
が成立する場合に前記振動子は正常であると判定し、前記条件1が成立しない場合に前記振動子に異常が発生していると判定し、
前記強度しきい値Tiが、5~7dBの範囲のうちのいずれかの値に設定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の振動子の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動子の検査装置および検査方法に関し、具体的には、水中へと送波した超音波が水底や物標で反射した反射波に基づいて水深の測定や水中の物標の探知を行う測深機や探知機の振動子を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中へと送波した超音波が反射した反射波に基づいて水中探知を行う技術として、第1送信信号を生成する第1生成手段と、第1送信信号よりも長いパルス幅の第2送信信号を生成する第2生成手段と、送信信号に基づく超音波を水中へ送波し、水中で反射した反射波を受波して受信信号に変換する送受波器へ、第1および第2生成手段が生成した送信信号を出力する出力手段と、送受波器から出力された第1送信信号に係る第1受信信号に基づいて、魚または水深を検出する水中検出手段と、送受波器から出力された第2送信信号に係る第2受信信号に基づいて、海底の底質を判別する底質判別手段と、を備える水中探知装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-225651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、船舶に搭載される測深機や探知機の振動子は、主に外的要因(具体的には、水圧による長期間の加圧、荒天下でのパンチングによる衝撃、海洋生物の付着など)や経年劣化によって特性が変化するため定期的な点検と清掃が必要であり、著しい性能低下がみられた場合は交換しなければならない。従来は、測深機や探知機を搭載している対象船にデータ取得担当の技師が訪船してSWR計などの計測器を使用して振動子の特性を計測し、その結果をデータ分析担当の技術者が検証して振動子の健全性を判断するという手順がふまれる。すなわち、振動子の性能確認には、SWR計などの計測器と技師・技術者とが必須であり、多大な手間および時間ならびに多額の費用がかかるとともに訪船タイミングの調整が必要である、という問題がある。さらに、測深機や探知機の振動子は船底に装備されるため、レーダのパフォーマンスモニタのように別系統の受信機を追加装備することができない、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、測深機や探知機の振動子の検査を容易に実施することが可能な、振動子の検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る振動子の検査装置は、送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する手段と、前記電気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算するとともに前記所定の周波数範囲に前記エコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて前記超音波を送波するとともに受波する振動子の健全性を判定する手段と、を有し、前記エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係る振動子の検査方法は、送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する処理と、前記電
気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算するとともに前記所定の周波数範囲に前記エコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて前記超音波を送波するとともに受波する振動子の健全性を判定する処理と、を有し、前記エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である、ことを特徴とする。
【0008】
この発明に係る振動子の検査装置や振動子の検査方法は、前記所定の周波数範囲の下限側の第1の周波数flwおよび上限側の第2の周波数fupが、下記の数式1A乃至1Cによって決定される、ようにしてもよい。
(数1A) fwd=f0/Q
(数1B) flw=f0-fwd/2
(数1C) fup=f0+fwd/2
ただし、 fwd:送受信周波数をスイープさせる周波数範囲の幅
f0 :振動子の共振周波数
Q :振動子のQ値
【0009】
この発明に係る振動子の検査装置や振動子の検査方法は、前記エコー信号強度の平均値の最大値をImax、前記第1の周波数flwにおける前記エコー信号強度の平均値をIflw、さらに前記第2の周波数fupにおける前記エコー信号強度の平均値をIfupとし、また、強度しきい値をTiとして、下記の条件1が成立する場合に前記振動子は正常であると判定し、下記の条件1が成立しない場合に前記振動子に異常が発生していると判定し、前記強度しきい値Tiが、5~7dBの範囲のうちのいずれかの値に設定される、ようにしてもよい。
(条件1) Imax-Iflw≧Ti 且つ Imax-Ifup≧Ti
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る振動子の検査装置や振動子の検査方法によれば、測深機や探知機自身が振動子の検査に纏わる各種処理を実行して振動子の健全性を判定することができるので、測深機や探知機を搭載している対象船への技師・技術者の訪船は不要であり、振動子の性能確認にかかる手間,時間,および費用を低減・短縮することが可能となり、延いては測深機や探知機の振動子の検査を容易に実施することが可能となる。また、測深機や探知機自身が振動子の健全性を判定することができるので、振動子の健全性を即時的に確認することが可能となり、延いては振動子の検査手法としての有用性の向上を図ることが可能となる。
【0011】
この発明に係る振動子の検査装置や振動子の検査方法は、送受信周波数をスイープさせる周波数範囲が振動子の共振周波数およびQ値に基づいて決定されるようにした場合には、エコー信号強度の平均値のピークの探索/検出範囲を適切に設定することが可能となり、延いては振動子の検査手法としての信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
この発明に係る振動子の検査装置や振動子の検査方法は、エコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値Iflwと強度しきい値Tiとの間、および、エコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値Ifupと強度しきい値Tiとの間に上記の条件1が成立するか否かによって振動子の健全性を判定するようにした場合には、振動子の健全性を適切に判定することが可能となり、延いては振動子の検査手法としての信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態に係る振動子の検査装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2】この発明の実施の形態に係る振動子の検査方法の処理手順を示すフロー図である。
図3】共振周波数とQ値に関係する周波数帯域の幅との間の関係を説明する図である。
図4】発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値の変動の態様と送受波部の超音波振動子の健全性の判定との間の関係の例を示す模式図である。
図5】送受波部の超音波振動子の健全性を判定する手順(判定方法2)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る振動子の検査装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。また、図2は、この発明の実施の形態に係る振動子の検査方法の処理手順を示すフロー図である。
【0015】
振動子の検査装置1は、水中へと送波した超音波が水底や物標(例えば、魚群)で反射した反射波に基づいて水深の測定や水中の物標の探知を行う測深機/探知機/ソナーなど(以下、「測深機等」と表記する)の振動子を検査するための機序であり、前記測深機等に、当該の測深機等の振動子の検査に纏わる各種処理を実行する機能が付加されて構成される。
【0016】
このため、振動子の検査装置1は、水中へと送波した超音波が水底や物標で反射した反射波に基づいて水深を測定したり水中の物標を探知したりするための機序(つまり、一般的な測深機等としての機序)と振動子の検査に纏わる各種処理を実行するための機序(即ち、この発明に特有の機序)とを備え、この実施の形態では、送受波部2,送受信部3,処理部4,検査演算部5,記憶部6,表示部7,および出力部8を有する。
【0017】
上記も踏まえ、以下では、この発明の特徴的な構成について主に説明し、一般的な測深機等として機能するための従来と同様の構成であってこの発明の特徴的な構成とは関係のない構成については説明を省略する。
【0018】
送受波部2は、単数もしくは複数の送受波素子としての超音波振動子(図示省略)を有し、超音波を送信/送波および受信/受波する機能を備える。送受波部2は、例えば、船舶の船底に配設されて、水中へと超音波を送信/送波し、水中の標的で反射した反射波を含む超音波を受信/受波する。
【0019】
送受波部2の超音波振動子は、外部から供給される電気信号を超音波に変換するとともに送信波として水中へと送信/送波し、また、前記超音波が水中の標的で反射して戻ってくる反射波を含む超音波を受信波として受信/受波するとともに前記受信波を電気信号に変換して出力する。
【0020】
送受信部3は、切替回路31,送信回路32,受信回路33,検波回路34,およびA/D変換器35を有する。
【0021】
切替回路31は、送受波部2の超音波振動子と送信回路32および受信回路33との間に介在し、送受波部2および送受信部3の動作を送信と受信との間で切り替える機能を備える。
【0022】
送信回路32は、各超音波振動子に対応して設けられて、処理部4によって制御されることにより、送受波部2から送波される超音波/送信波のもととなる、言い換えると、送受波部2(具体的には、超音波振動子)を駆動させるための、駆動信号(別言すると、送
信信号,送信トリガパルス信号)を生成して出力する。
【0023】
送信回路32から出力される駆動信号は、送信回路32から送受波部2へと信号が送られる接続に切替回路31が切り替わることにより、前記切替回路31を介して送受波部2へと供給される。
【0024】
送信回路32から出力される駆動信号によって送受波部2の超音波振動子が駆動して超音波が水中へと送波される。そして、送受波部2から送波された超音波が水底や物標で反射して戻ってくる反射波を含む超音波が送受波部2によって受波され電気信号に変換されて出力される。
【0025】
送受波部2から出力される電気信号は、送受波部2から受信回路33へと信号が送られる接続に切替回路31が切り替わることにより、前記切替回路31を介して受信回路33へと伝送される。
【0026】
受信回路33は、受信信号を生成する機能を備える。受信回路33は、具体的には、送受波部2から出力される電気信号の入力を受け、前記電気信号を増幅したり帯域を制限して不要な周波数成分(即ち、ノイズ)を除去したりしたうえで受信信号として出力する。
【0027】
検波回路34は、受信回路33から出力される受信信号の入力を受け、前記受信信号に対して検波処理を施して受信信号の包絡線データを検出して、振幅情報をエコー信号強度(尚、アナログ信号である)として出力する。検波処理自体は周知の技術であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0028】
A/D変換器35(Analog-to-Digital converter)は、検波回路34から出力されるアナログのエコー信号強度の入力を受け、前記アナログのエコー信号強度を所定の時間間隔でサンプリングしてアナログ-デジタル変換処理を行い、デジタル信号に変換されたエコー信号強度を出力する。
【0029】
処理部4は、振動子の検査装置1を構成する各部を統制して制御などする機能を備え、例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)を含んで構成されたり、FPGA(Field Programmable Gate Array の略)によって構成されたりする。
【0030】
処理部4は、サンプリング回路41を有するとともに、検査演算部5が構成される。
【0031】
サンプリング回路41は、送受信部3(具体的には、A/D変換器35)から出力されるデジタル信号に変換されたエコー信号強度の入力を受け、検査演算部5(具体的には、サンプリングタスク52)からの制御信号に基づいて、前記エコー信号強度のうち、振動子の検査に用いるエコー信号強度を記憶部6に記録・蓄積させる。
【0032】
なお、送受信部3の検波回路34およびA/D変換器35ならびに処理部4のサンプリング回路41は、DSP(Digital Signal Processor の略)によって構成されたり、FPGA(Field Programmable Gate Array の略)などのPLD(Programmable Logic Device の略)によって構成されたりするようにしてもよい。
【0033】
検査演算部5は、例えば記憶部6に格納されている所定のプログラムが処理部4によって実行されることによって実現される、振動子の検査に纏わる各種処理を実行するためのタスク群であり、具体的には、送受信部3(具体的には、A/D変換器35)から出力されサンプリング回路41を介して記憶部6に記録・蓄積されているエコー信号強度データ
に基づいて送受波部2の超音波振動子の検査を行う。検査演算部5は、周波数制御タスク51,サンプリングタスク52,計算タスク53,および判定タスク54を有する。
【0034】
記憶部6は、各種の情報,プログラム,およびデータなどを記憶する記憶領域となる機能や、処理部4が振動子の検査に纏わる演算処理を実行する際に生成されるデータや情報を一時的に記憶などするための作業領域となる機能を備え、例えば、ROM(Read Only Memory の略),ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive の略),RAM(Random Access Memory の略)などの記憶装置や記憶素子によって構成される。
【0035】
表示部7は、検査演算部5による振動子の検査の結果などを表示する機能を備え、例えば液晶ディスプレイによって構成される。
【0036】
そして、実施の形態に係る振動子の検査装置1は、送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する手段としての送受波部2と、前記電気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算するとともに前記所定の周波数範囲にエコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて超音波を送波するとともに受波する送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する手段としての検査演算部5と、を有し、エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である、ようにしている。
【0037】
また、実施の形態に係る振動子の検査方法は、送受信周波数を所定の周波数範囲にわたってスイープしながら超音波を送波するととも受波して電気信号に変換する処理(ステップS1~S4)と、前記電気信号を処理してエコー信号強度の平均値を計算する処理(ステップS5)と、前記所定の周波数範囲にエコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かに基づいて超音波を送波するとともに受波する送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する処理(ステップS6)と、を有し、エコー信号強度の平均値が発振線を含む所定範囲におけるエコー信号強度の平均値である、ようにしている。
【0038】
検査演算部5の周波数制御タスク51は、送信回路32(具体的には、各超音波振動子に対応して設けられる送信回路のそれぞれ)へと指令を出して送信周波数を制御しながら前記送信回路32に駆動信号を生成させ、また、受信回路33へと指令を出して前記受信回路33の受信周波数を前記送信周波数に合わせて制御する。なお、送受波部2が複数の超音波振動子を有する場合には、振動子の検査は1超音波振動子ごとに繰り返し実行される。
【0039】
周波数制御タスク51は、送受波部2の超音波振動子から送波される超音波パルスの周波数、および、送受波部2の超音波振動子が受波する超音波の周波数帯域を所定の周波数範囲にわたってスイープするように制御する(ステップS1)。周波数制御タスク51が送受信周波数をスイープする際の前記所定の周波数範囲の幅fwdは、送受波部2の超音波振動子の共振周波数f0とQ値とに基づいて決定される。
【0040】
ここで、機械的な共振の尖鋭度を表す量であるQ値と、共振周波数f0と、ピーク値から-3dBの点の周波数帯域の幅「f2-f1」との間には下記の数式2の関係が成り立つ(図3参照)。なお、ピーク値から-3dBの点は、ピーク(即ち、共振周波数f0におけるレベル)に対して、振幅が1/√(2)で、エネルギーが1/2になる位置である。
(数2) Q=f0/(f2-f1)
【0041】
この発明が適用され得る共振周波数f0やQ値は、特定の値に限定されるものではないものの、あくまで一例として挙げると、共振周波数f0が200kHzでQ値が16程度であったり、共振周波数f0が50kHzでQ値が38程度であったりすることが考えら
れる。
【0042】
図3や上記の数式2に示すQ値と共振周波数f0と上記周波数帯域の幅「f2-f1」との間の関係によれば、送受波部2の超音波振動子から送波される超音波のレベルには、延いては、送受波部2の超音波振動子が受波する超音波のレベルには、周波数f1から周波数f2までの範囲において明らかな1つのピーク(即ち、単峰分布のピーク)が存在すると考えられる。そこでこの発明は、周波数f1から周波数f2までの範囲においてエコー信号強度のピーク(単峰分布のピーク)が存在するか否かに基づいて送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する。
【0043】
具体的には、周波数f1から周波数f2までの範囲において、所定の条件を満たすエコー信号強度のピーク(単峰分布のピーク)が存在する場合には送受波部2の超音波振動子は正常であると判断し、前記所定の条件を満たすエコー信号強度のピークが存在しなかったり所定の条件を満たすエコー信号強度の谷が存在したりする場合には送受波部2の超音波振動子に異常が発生していると判断する。
【0044】
上記をふまえ、周波数制御タスク51は、第1の周波数flw(言い換えると、下限の周波数)から第2の周波数fup(言い換えると、上限の周波数)までの範囲で送受信周波数をスイープさせるように送信回路32および受信回路33を制御する。第1の周波数flwおよび第2の周波数fupは、下記の数式3A乃至3Cに従って決定される。
(数3A) fwd=f0/Q
(数3B) flw=f0-fwd/2
(数3C) fup=f0+fwd/2
ただし、 fwd:図3におけるf1からf2までに相当する周波数帯域の幅であり、
送受信周波数をスイープさせる周波数範囲の幅
f0 :送受波部2の超音波振動子の共振周波数
Q :送受波部2の超音波振動子のQ値
flw:送受信周波数をスイープさせる周波数範囲の第1の周波数
fup:送受信周波数をスイープさせる周波数範囲の第2の周波数
なお、第1の周波数flw<第2の周波数fup である。
【0045】
ここで、上述のとおりピーク値から-3dBの点はピークに対して振幅が1/√(2)となるので、flwからfupまでの範囲で送受信周波数を変化させると、送信感度と受信感度とがともに-3dBとなって送受合計で-6dBとなり、エコー信号強度が半減する程度には変動する計算になる(即ち、1/√(2) /√(2)=0.5)。
【0046】
なお、超音波振動子の共振周波数f0はばらつくことも考えられるので、上記の数式3A乃至3Cで計算される第1の周波数flwおよび第2の周波数fupのそれぞれに対して例えば1~3kHz程度のマージンが減算されたり加算されたりしたうえで最終的な第1の周波数flwおよび第2の周波数fupが設定されるようにしてもよい。
【0047】
周波数制御タスク51が送受信周波数をスイープする際の周波数変化量Δf(つまり、周波数の変化ピッチ)は、特定の値に限定されるものではなく、例えば第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲で送受信周波数をスイープしながら行う振動子の検査にかかる全時間が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。周波数変化量Δfは、具体的には例えば、0.1~1.0kHz程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0048】
周波数制御タスク51の制御に従って送信回路32から出力される駆動信号によって送受波部2の超音波振動子が駆動して超音波が水中へと送波され、前記超音波の反射波を含
む超音波が送受波部2によって受波され電気信号に変換されて出力される(ステップS2)。
【0049】
サンプリングタスク52は、サンプリング回路41へと指令を出して、周波数制御タスク51からの指令に基づいて送受波部2が振動子の検査のための超音波の送波および受波を行っている間にA/D変換器35から出力されてサンプリング回路41へと伝送されるエコー信号強度を記憶部6に記録・蓄積させる(ステップS3)。
【0050】
サンプリングタスク52は、すなわち、周波数制御タスク51からの指令に基づいて第1の周波数flwから第2の周波数fupまで周波数変化量Δfずつ変化させた各周波数での超音波の送波および受波が行われている間(ステップS4:No)のエコー信号強度を記憶部6に記録・蓄積させ、第1の周波数flwから第2の周波数fupまで送受信周波数のスイープが完了した場合(ステップS4:Yes)に振動子の検査の処理手順をステップS5の処理へと進める。
【0051】
サンプリングタスク52の働きにより、記憶部6には、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの、前記第1の周波数flwから周波数変化量Δfずつ変化させた各周波数でのエコー信号強度が記録・蓄積される。
【0052】
計算タスク53は、エコー信号強度のうち発振線を含む所定範囲(「発振線範囲」と呼ぶ)におけるエコー信号強度の平均値を計算する(ステップS5)。
【0053】
発振線は自己の送信パルスの回り込みに相当する部分であり、発振線範囲におけるエコー信号強度は主に自己の送信パルスの回り込みの信号強度に対応すると理解される。すなわち、通常の水深の測定や水中の物標の探知を行う際の手順では水中の標的で反射した反射波を受波して信号処理を行うのに対し、この発明に係る振動子の検査では、自己の送信パルスの回り込みを受波して信号処理を行うことにより、送受波部2の超音波振動子の健全性の判定を行う。
【0054】
計算タスク53は、具体的には、記憶部6に記録・蓄積されている各周波数でのエコー信号強度を読み込み、前記各周波数のそれぞれについて、発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値を計算する。
【0055】
発振線範囲(具体的には、水深)の下限値および上限値は、特定の値に限定されるものではなく、超音波振動子が正常である場合に第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲においてエコー信号強度の平均値のピークが良好に現れ得ることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、発振線範囲の下限値は0~1.0m程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられ、発振線範囲の上限値は0.5~1.0m程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる(但し、下限値≦上限値)。なお、下限値と上限値とが同じ値に設定されて、特定の水深におけるエコー信号強度が発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値として用いられるようにしてもよい。
【0056】
なお、送受波部2による送波・受波1回分のデータが用いられて発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値が求められるようにしてもよく、或いは、送受波部2による送波・受波複数回分のデータが用いられて発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値が求められるようにしてもよい。
【0057】
ここで、計算タスク53は上述のとおり発振線範囲のエコー信号強度を使用するところ、発振線範囲のエコー信号強度は通常は強いことが想定される。そこで、発振線範囲のエ
コー信号強度(具体的には、平均値)が飽和レベル未満になるように、振動子の検査の手順が開始される前に、送信出力が調節される(具体的には、低減させられる)ようにしてもよい(ステップS0)。
【0058】
具体的には、送受波部2による振動子の検査のための超音波の送波および受波が行われる前に(即ち、ステップS1の前に)、送信出力の調節のため、送受信周波数が共振周波数f0に固定されたうえで送受波部2による超音波の送波および受波が行われるとともに計算タスク53による発振線範囲のエコー信号強度の平均値の計算が行われる。
【0059】
そして、前記発振線範囲のエコー信号強度の平均値が飽和レベル以上となった場合には、PWM(Pulse Width Modulation の略) duty比を低下させて、共振周波数f0のまま送受波部2による超音波の送波および受波があらためて(別言すると、繰り返し)行われるとともに計算タスク53による発振線範囲のエコー信号強度の平均値の計算があらためて(別言すると、繰り返し)行われる。
【0060】
そのうえで、発振線範囲のエコー信号強度の平均値が飽和レベル未満となった場合に、そのときのPWM duty比を固定して(ステップS0)、振動子の検査の手順としての送受波部2による超音波の送波および受波が行われる(ステップS1)。
【0061】
計算タスク53は、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの、前記第1の周波数flwから周波数変化量Δfずつ変化させた周波数と、発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値との組み合わせデータを出力する。
【0062】
判定タスク54は、計算タスク53から出力される周波数とエコー信号強度の平均値との組み合わせデータの入力を受け、前記組み合わせデータを用いて送受波部2の超音波振動子の健全性(即ち、正常か異常か)を判定する(ステップS6)。
【0063】
判定タスク54は、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲にエコー信号強度の平均値の妥当/適切なピークが存在するか否かに基づいて送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する。判定タスク54における判定手法は、特定の手法には限定されるものではなく、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲にエコー信号強度の平均値の妥当/適切なピークが存在するか否かを的確に判断し得る手法・手順であれば、どのような手法・手順であってもよい。
【0064】
判定タスク54は、具体的には例えば、下記の2つの判定方法のうちのどちらか一方に従って送受波部2の超音波振動子の健全性を判定するようにしてもよい。
【0065】
(判定方法1)
上記の周波数とエコー信号強度の平均値との組み合わせデータのうちの、エコー信号強度の平均値の最大値をImax、第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値をIflw、さらに第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値をIfupとし、また、強度しきい値をTiとして、下記の条件1が成立する場合に送受波部2の超音波振動子は正常であると判定し、下記の条件1が成立しない場合に送受波部2の超音波振動子に異常が発生していると判定する。
(条件1) Imax-Iflw≧Ti 且つ Imax-Ifup≧Ti (但し、Ti>0)
【0066】
強度しきい値Tiは、特定の値に限定されるものではなく、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲にエコー信号強度の平均値のピークが存在するか否かを的確に判断し得ることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。強度しきい値Tiは、具体的には例えば、5~7dB程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが
考えられる(図3および同図に関係する上記の説明も参照)。
【0067】
発振線範囲におけるエコー信号強度の平均値の変動の態様と送受波部2の超音波振動子の健全性の判定との間の関係の典型例の模式図を図4に示す。同図(A)は、エコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値Iflwとの差が強度しきい値Ti以上(即ち、Imax-Iflw≧Ti)であるとともにエコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値Ifupとの差が強度しきい値Ti以上(即ち、Imax-Ifup≧Ti)であり、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲にエコー信号強度の平均値の妥当/適切なピークが存在する場合の例である。すなわち、図4(A)は、送受波部2の超音波振動子が正常である場合の例である。
【0068】
図4(B)は、エコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値Iflwとの差が強度しきい値Ti未満(即ち、Imax-Iflw<Ti;但し、0より大きい)であるとともにエコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値Ifupとの差が強度しきい値Ti未満(即ち、Imax-Ifup<Ti;但し、0より大きい)であり、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲にエコー信号強度の平均値の妥当/適切なピークが存在しない場合の例である。すなわち、図4(B)は、送受波部2の超音波振動に異常が発生している場合の例である。
【0069】
図4(C)は、第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値Iflwおよび第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値Ifupよりも小さいエコー信号強度の平均値が存在し、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲に、上に凸のピークとなっているエコー信号強度の平均値の最大値Imaxが存在しない一方で、下に凸のピークとなっているエコー信号強度の平均値の谷が存在して、エコー信号強度の平均値の妥当/適切なピークが存在しない場合の例である。すなわち、図4(C)は、送受波部2の超音波振動に異常が発生している場合の例である。
【0070】
(判定方法2)
下記の手順1乃至9に従って送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する(図5参照)。下記の手順1乃至4は、第1の周波数flwから第2の周波数fupへと向かって順次行われる。そのうえで、下記の手順5乃至9が行わる。
【0071】
下記の説明では、周波数fにおけるエコー信号強度の平均値をIavg(f)とする。また、Δfは送受信周波数をスイープする際の周波数変化量(つまり、周波数の変化ピッチ)であり、Iavg(f+Δf)はIavg(f)と隣り合う次のエコー信号強度の平均値であり、Iavg(f-Δf)はIavg(f)と隣り合う1つ前のエコー信号強度の平均値である。
【0072】
〈手順1〉
ΔIn(f)=Iavg(f+Δf)-Iavg(f)を計算する。
【0073】
〈手順2〉
ΔIb(f)=Iavg(f)-Iavg(f-Δf)を計算する。
【0074】
〈手順3〉
ΔIb(f)≧0 且つ ΔIn(f)≦0 が成立する場合に、Iavg(f)の点をピークとする(図5中の符号pの点)。
【0075】
〈手順4〉
ΔIb(f)<0 且つ ΔIn(f)>0 が成立する場合に、Iavg(f)の点を谷とする(図5中の符号tの点)。
【0076】
〈手順5〉
上記の手順3によって検出されるピークのうちの最大の値を極大値とする。
【0077】
〈手順6〉
第1の周波数flwから共振周波数f0までの範囲におけるIavg(f)のうちの最小の値を下限側極小値とし、また、共振周波数f0から第2の周波数fupまでの範囲におけるIavg(f)のうちの最小の値を上限側極小値とする。
【0078】
〈手順7〉
上記の手順3によるピークが検出されない、または、上記の手順3によって検出されるピークが連続しきい値Tp以上連続する場合に、送受波部2の超音波振動子に異常が発生していると判定する。
【0079】
連続しきい値Tpは、特定の値に限定されるものではなく、第1の周波数flwから第2の周波数fupまでの範囲にエコー信号強度の平均値の妥当/適切なピークが存在するか否かを的確に判断し得ることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。連続しきい値Tpは、具体的には例えば、5~10程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0080】
〈手順8〉
上記の手順4によって谷が検出された場合で、上記の手順5によって検出される極大値に対応するIavg(f)と、上記の手順4によって検出される谷に対応するIavg(f)との差を求め(尚、谷が複数検出された場合には各々について求める)、その差が強度しきい値Ti以上になる谷が1つでもある場合に、送受波部2の超音波振動子に異常が発生していると判定する。なお、この手順8では、強度しきい値Tiとは異なるしきい値が用いられるようにしてもよく、例えば、強度しきい値Tiよりも小さいしきい値が用いられるようにしてもよい。
【0081】
〈手順9〉
上記の手順5によって検出される極大値と上記の手順6によって検出される下限側極小値との差が強度しきい値Ti以上であるとともに、前記極大値と上記の手順6によって検出される上限側極小値との差が強度しきい値Ti以上である場合に、送受波部2の超音波振動子は正常であると判定する。一方で、前記極大値と前記下限側極小値との差が強度しきい値Ti未満であったり、前記極大値と前記上限側極小値との差が強度しきい値Ti未満であったりする場合に、送受波部2の超音波振動子に異常が発生していると判定する。
【0082】
そして、判定タスク54は送受波部2の超音波振動子の健全性の判定結果を表示部7に対して出力し、表示部7は前記判定結果を表示する。
【0083】
判定タスク54は、判定方法1に従って送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する場合には、上記判定結果とともに、エコー信号強度の平均値の最大値Imax,第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値Iflw,および第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値Ifup、ならびに、「Imax-Iflw」の値および「Imax-Ifup」の値をそれぞれ出力して表示部7に表示させるようにしてもよい。
【0084】
判定タスク54は、また、判定方法2に従って送受波部2の超音波振動子の健全性を判定する場合には、上記判定結果とともに、極大値,下限側極小値,および上限側極小値、
ならびに、極大値と下限側極小値との差の値および極大値と上限側極小値との差の値をそれぞれ出力して表示部7に表示させるようにしてもよい。
【0085】
判定タスク54は、さらに、計算タスク53から出力される周波数とエコー信号強度の平均値との組み合わせデータのプロット図の表示データを出力して表示部7に前記プロット図を表示させるようにしてもよい。
【0086】
なお、振動子の検査装置1による振動子の検査の処理は、振動子の検査装置1が直接操作されて手動で実施されるようにしてもよく、また、定期的な実施条件が設定されたうえで自動で実施されるようにしてもよい。さらには、振動子の検査装置1が、各種の無線/有線の通信回線網を介して伝送される信号・情報の送受信/入出力を行う機能を備える通信部(図示していない)を有して、前記通信部を介して制御指令やデータなどの送受信/入出力を行えるように構成されて、振動子の検査装置1が遠隔操作されて実施されるようにしてもよい。
【0087】
また、計算タスク53から出力される周波数とエコー信号強度の平均値との組み合わせデータが出力部8へと出力されて出力部8においてファイル化されたうえで上記通信部を介して送信されて、前記組み合わせデータが船外に居る技術者によって検証されて超音波振動子の健全性が遠隔で判定されるようにしてもよい。
【0088】
実施の形態に係る振動子の検査装置1や振動子の検査方法によれば、測深機等自身が振動子の検査に纏わる各種処理を実行して超音波振動子の健全性を判定するようにしているので、測深機等を搭載している対象船への技師・技術者の訪船は不要であり、振動子の性能確認にかかる手間,時間,および費用を低減・短縮することが可能となり、延いては測深機等の振動子の検査を容易に実施することが可能となる。また、測深機等自身が超音波振動子の健全性を判定するので、超音波振動子の健全性を即時的に確認することが可能となり、延いては振動子の検査手法としての有用性の向上を図ることが可能となる。
【0089】
実施の形態に係る振動子の検査装置1によれば、また、送受信周波数をスイープさせる周波数範囲が超音波振動子の共振周波数f0およびQ値に基づいて決定されるようにしているので、エコー信号強度の平均値のピークの探索/検出範囲を適切に設定することが可能となり、延いては振動子の検査手法としての信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0090】
実施の形態に係る振動子の検査装置1によれば、また、エコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第1の周波数flwにおけるエコー信号強度の平均値Iflwと強度しきい値Tiとの間、および、エコー信号強度の平均値の最大値Imaxと第2の周波数fupにおけるエコー信号強度の平均値Ifupと強度しきい値Tiとの間に上記の条件1が成立するか否かによって超音波振動子の健全性を判定するようにしているので、超音波振動子の健全性を適切に判定することが可能となり、延いては振動子の検査手法としての信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0091】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0092】
例えば、上記の実施の形態では船舶に搭載される測深機等を想定して説明しているが、この発明が適用され得る対象は船舶に搭載される測深機等に限定されるものではなく、自己の送信パルスの回り込みを受波し得る種々の振動子に対してこの発明は適用され得る。
【符号の説明】
【0093】
1 振動子の検査装置
2 送受波部
3 送受信部
31 切替回路
32 送信回路
33 受信回路
34 検波回路
35 A/D変換器
4 処理部
41 サンプリング回路
5 検査演算部
51 周波数制御タスク
52 サンプリングタスク
53 計算タスク
54 判定タスク
6 記憶部
7 表示部
8 出力部
図1
図2
図3
図4
図5