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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155823
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】曇り止めシステム
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/02 20060101AFI20221006BHJP
   B60S 1/62 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60S1/02 310
B60S1/62 110A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059236
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古地 健人
(72)【発明者】
【氏名】中島 匡貴
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AA04
3D225AA11
3D225AB01
3D225AC09
3D225AD02
3D225AD08
3D225AD22
3D225AF28
3D225AG72
3D225AG78
(57)【要約】
【課題】窓の曇りを効果的に抑制すると共に、車両の走行時に撮影装置が撮影する画像に歪みが発生するのを効果的に抑制する。
【解決手段】車内空間から窓を介して車外空間を撮影する撮影装置10を備えた車両1に設けられる曇り止めシステムXであって、車速を検出する車速センサ44と、撮影装置10の視野外に配置され、窓を加熱する第1ヒーター28と、撮影装置10の視野内に配置され、窓に接触し、窓を加熱する第2ヒーター29と、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を制御する制御装置26と、を備え、制御装置26は、車速センサ44の検出結果に基づいて車両1が停止しているか否かを判定し、車両1が停止していることを含む第1条件が成立する場合に第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させ、車両1が走行していることを含む第2条件が成立する場合に第1ヒーター28のみを稼働させる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内空間から窓を介して車外空間を撮影する撮影装置を備えた車両に設けられる曇り止めシステムであって、
車速を検出する車速センサと、
前記撮影装置の視野外に配置され、前記窓を加熱する第1ヒーターと、
前記撮影装置の視野内に配置され、前記窓に接触し、前記窓を加熱する第2ヒーターと、
前記第1ヒーター及び前記第2ヒーターを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記車速センサの検出結果に基づいて前記車両が停止しているか否かを判定し、前記車両が停止していることを含む第1条件が成立する場合に前記第1ヒーター及び前記第2ヒーターを稼働させ、前記車両が走行していることを含む第2条件が成立する場合に前記第1ヒーターのみを稼働させることを特徴とする曇り止めシステム。
【請求項2】
前記第1条件は、前記車両が停止していることと、前記車両が所定の基準速度以上の速度で走行していることとを含み、
前記第2条件は、前記車両が前記基準速度よりも低い速度で走行していることを含むことを特徴とする請求項1に記載の曇り止めシステム。
【請求項3】
前記第2ヒーターの温度を検出するヒーター温度センサを更に備え、
前記第1条件は、前記第2ヒーターの温度が所定の閾値温度以下であることを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の曇り止めシステム。
【請求項4】
前記窓のうちの前記撮影装置の視野内にある部分の温度を検出する窓温度センサを更に備え、
前記第1条件は、前記窓のうちの前記撮影装置の視野内にある部分の温度が所定の閾値温度以下であることを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の曇り止めシステム。
【請求項5】
前記車外空間の温度を検出する車外温度センサを更に備え、
前記第1条件及び前記第2条件は、前記車外空間の温度が所定の基準温度よりも低いことを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【請求項6】
前記第1ヒーターは、前記窓に接触していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【請求項7】
前記第1ヒーターは、前記窓と間隔を介して対向していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【請求項8】
前記車両の走行時に、前記制御装置は、前記撮影装置が撮影した画像に基づいて前記車両の走行制御を実行することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の曇り止めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓の曇りを抑制するための曇り止めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車内空間から窓を介して車外空間を撮影する撮影装置を備えた車両が知られている。このような車両には、窓の曇りを抑制するための曇り止めシステムが設けられることがある。このような曇り止めシステムは、例えば、窓を加熱するヒーターと、このヒーターを制御する制御装置と、を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透光性の窓部材を通して移動体の周辺環境を監視可能な監視装置と、窓部材のうち監視装置の監視領域内の部位を加熱するための加熱装置と、移動体内の空調を行う空調装置と、加熱装置および空調装置の駆動制御を行う制御装置と、を備えた移動体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-152324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような曇り止めシステムにおいて、撮影装置の視野内に配置された直接加熱型のヒーター(即ち、窓に接触するヒーター)によって窓を加熱すると、撮影装置の視野内において窓に熱歪みが発生し、撮影装置が撮影する画像の歪みにつながる恐れがある。特に、車両の走行時には、撮影装置が撮影する画像に高い精度が求められるため、上記のような画像の歪みを抑制するのが好ましい。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、窓の曇りを効果的に抑制すると共に、車両の走行時に撮影装置が撮影する画像に歪みが発生するのを効果的に抑制することが可能な曇り止めシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車内空間(SP1)から窓(6)を介して車外空間(SP2)を撮影する撮影装置(10)を備えた車両(1)に設けられる曇り止めシステム(X)であって、車速を検出する車速センサ(44)と、前記撮影装置の視野外に配置され、前記窓を加熱する第1ヒーター(28)と、前記撮影装置の視野内に配置され、前記窓に接触し、前記窓を加熱する第2ヒーター(29)と、前記第1ヒーター及び前記第2ヒーターを制御する制御装置(26)と、を備え、前記制御装置は、前記車速センサの検出結果に基づいて前記車両が停止しているか否かを判定し、前記車両が停止していること(S4、S14、S24、S34:Yes)を含む第1条件が成立する場合に前記第1ヒーター及び前記第2ヒーターを稼働させ(S5、S15、S25、S35)、前記車両が走行していること(S4、S14、S24、S34:No)を含む第2条件が成立する場合に前記第1ヒーターのみを稼働させる(S6、S17、S29、S39)。
【0008】
この態様によれば、車両の停止時には、第1ヒーター及び第2ヒーターを稼働させることで、窓の曇りを効果的に抑制することができる。一方で、車両の走行時には、第1ヒーターのみを稼働させることで、撮影装置の視野内において窓に熱歪みが発生するのを抑制することができる。これにより、撮影装置が撮影する画像に歪みが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0009】
上記の態様において、前記第1条件は、前記車両が停止していることと、前記車両が所定の基準速度以上の速度で走行していること(S16:Yes)とを含み、前記第2条件は、前記車両が前記基準速度よりも低い速度で走行していること(S16:No)を含んでいても良い。
【0010】
車両が比較的高速で走行しているときには、走行風によって窓が冷やされるため、第2ヒーターを稼働させても、撮影装置の視野内において窓に熱歪みが発生しにくい。上記の態様によれば、このような傾向を踏まえ、車両が比較的高速で走行しているときに、第2ヒーターの稼働が許容される。これにより、窓の曇りをより効果的に抑制することができる。
【0011】
上記の態様において、前記曇り止めシステムは、前記第2ヒーターの温度を検出するヒーター温度センサ(45)を更に備え、前記第1条件は、前記第2ヒーターの温度が所定の閾値温度以下であること(S28:Yes)を含んでいても良い。
【0012】
この態様によれば、第2ヒーターの温度が比較的高い状態で第2ヒーターが稼働するのを抑制することができる。そのため、撮影装置の視野内において窓に熱歪みが発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0013】
上記の態様において、前記曇り止めシステムは、前記窓のうちの前記撮影装置の視野内にある部分の温度を検出する窓温度センサ(46)を更に備え、前記第1条件は、前記窓のうちの前記撮影装置の視野内にある部分の温度が所定の閾値温度以下であること(S38:Yes)を含んでいても良い。
【0014】
この態様によれば、窓のうちの撮影装置の視野内にある部分の温度が比較的高い状態で第2ヒーターが稼働するのを抑制することができる。そのため、撮影装置の視野内において窓に熱歪みが発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0015】
上記の態様において、前記曇り止めシステムは、前記車外空間の温度を検出する車外温度センサ(43)を更に備え、前記第1条件及び前記第2条件は、前記車外空間の温度が所定の基準温度よりも低いこと(S2、S12、S22、S32:Yes)を含んでいても良い。
【0016】
この態様によれば、車外空間の温度が高く、窓が曇りにくい状態で、第1ヒーター及び/又は第2ヒーターが稼働するのを抑制することができる。そのため、曇り止めシステムの省エネルギー性を高めることができる。
【0017】
上記の態様において、前記第1ヒーターは、前記窓に接触していても良い。
【0018】
この態様によれば、第1ヒーターと第2ヒーターの両方によって窓を直接加熱することができるため、窓の昇温速度を高めることができる。これにより、窓の曇りをより効果的に抑制することができると共に、消費電力を低くすることができる。
【0019】
上記の態様において、前記第1ヒーターは、前記窓と間隔を介して対向していても良い。
【0020】
この態様によれば、第1ヒーターの故障時に、第1ヒーターを容易に取り外すことができる。そのため、第1ヒーターのメンテナンス性が向上する。
【0021】
上記の態様において、前記車両の走行時に、前記制御装置は、前記撮像装置が撮影した画像に基づいて前記車両の走行制御を実行しても良い。
【0022】
この態様によれば、車両の走行時に、歪みのない画像に基づいて車両の走行制御を実行することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の構成によれば、窓の曇りを効果的に抑制すると共に、車両の走行時に撮影装置が撮影する画像に歪みが発生するのを効果的に抑制することが可能な曇り止めシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両を示す斜視図
図2】本発明の第1実施形態に係るフロントウィンドウとその周辺部を示す断面図
図3】本発明の第1実施形態に係るフロントウィンドウと加熱装置を示す正面図
図4】本発明の第1実施形態に係る車両を示すブロック図
図5】本発明の第1実施形態に係る曇り止め制御を示すフローチャート
図6】本発明の変形例に係るフロントウィンドウとその周辺部を示す断面図
図7】本発明の変形例に係るフロントウィンドウと加熱装置を示す正面図
図8】本発明の変形例に係るフロントウィンドウとその周辺部を示す断面図
図9】本発明の第2実施形態に係る曇り止め制御を示すフローチャート
図10】本発明の第3実施形態に係る曇り止め制御を示すフローチャート
図11】本発明の第4実施形態に係る曇り止め制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、図1図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
【0026】
<車両1>
まず、図1図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る車両1について説明する。
【0027】
図1を参照して、本実施形態に係る車両1は、自動車である。車両1は、前後方向に長い車体2を有する。車体2の内部には車内空間SP1が形成されており、車内空間SP1の前後方向中央部には乗員を収容する車室3が設けられている。車室3には、例えば、複数の前部座席4(運転席、助手席)と、前部座席4の後方に配置される複数の後部座席5と、が設けられている。なお、本実施形態では座席が前後に2列設けられているが、他の実施形態では座席が前後に1列だけ設けられていても良いし、座席が前後に3列以上設けられていても良い。
【0028】
車体2の前部には、前部座席4の前方にフロントウィンドウ6(窓の一例)が設けられている。フロントウィンドウ6は、ガラスによって形成されている。なお、他の実施形態では、フロントウィンドウ6がガラス以外の透明性材料(例えば、透明性樹脂)によって形成されていても良い。車体2の後部には、後部座席5の後方にリアウィンドウ7が設けられている。車体2の両側部には、前部座席4及び後部座席5の側方に複数のサイドドア8が設けられており、各サイドドア8の上部にはサイドウィンドウ9が設けられている。
【0029】
図1図2を参照して、フロントウィンドウ6の上部後方には、フロントカメラ10(撮影装置の一例)が設けられている。フロントカメラ10は、車内空間SP1からフロントウィンドウ6を介して車外空間SP2(本実施形態では、車両1の前方の空間)を撮影する装置である。フロントカメラ10は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。フロントカメラ10は、フロントウィンドウ6を介して前方から入射される光を収束させるレンズと、レンズによって収束された光を電気信号に変換するセンサと、を含む。なお、図2の矢印Pは、フロントカメラ10の視野(撮影可能範囲)を示している。また、図3の破線枠Qは、フロントウィンドウ6のうちのフロントカメラ10の視野内にある部分(以下、「視野内部分Q」と称する)を示している。
【0030】
図2を参照して、フロントカメラ10は、ブラケット11を介してフロントウィンドウ6の内面に取り付けられている。ブラケット11は、フロントカメラ10の周りに配置される本体部12と、本体部12から前方に延びるフード部13と、を含む。本体部12は、フロントウィンドウ6の内面に固定されている。フード部13は、フロントウィンドウ6と共にフロントカメラ10のレンズの前方の空間を囲んでいる。フード部13は、左右方向に延びる底壁13Aと、底壁13Aの左右両端部から上方に延びる左右両側壁13B(図2では、右側壁13Bのみを表示)と、を含む。
【0031】
図4を参照して、車両1は、推進装置14と、ブレーキ装置15と、ステアリング装置16と、HMI17(Human Machine Interface)と、ナビゲーション装置18と、加熱装置19と、空調装置20と、乗員センサ21と、外界センサ22と、車両センサ23と、制御装置26と、を備えている。加熱装置19、空調装置20、乗員センサ21、外界センサ22、車両センサ23、及び制御装置26は、曇り止めシステムXを構成している。
【0032】
推進装置14は、車両1に駆動力を付与する装置である。推進装置14は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び/又は電動モータを含む。
【0033】
ブレーキ装置15は、車両1に制動力を付与する装置である。ブレーキ装置15は、例えば、ブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。
【0034】
ステアリング装置16は、車輪の舵角を変える装置である。ステアリング装置16は、例えば、車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを含む。
【0035】
HMI17は、各種情報(例えば、加熱装置19の故障)を乗員に報知するとともに、乗員から入力操作を受け付ける装置である。HMI17は、例えば、タッチパネル、音声発生装置、イグニッションスイッチ等を含む。
【0036】
ナビゲーション装置18は、車両1の目的地への経路案内等を行う装置である。ナビゲーション装置18は、乗員から入力操作を受け付ける入力機器を含む。この入力機器は、HMI17の一部によって構成されていても良いし、HMI17とは別個に設けられていても良い。ナビゲーション装置18は、地図情報を記憶している。ナビゲーション装置18は、人工衛星から受信した信号に基づいて車両1の現在位置(緯度及び経度)を特定する。ナビゲーション装置18は、地図情報と車両1の現在位置と乗員が上記入力機器に入力した車両1の目的地とに基づいて、車両1の出発地(例えば、現在位置)から目的地までの経路を設定する。
【0037】
加熱装置19は、フロントウィンドウ6を加熱することでフロントウィンドウ6の曇りを抑制する装置である。図2図3を参照して、加熱装置19は、第1ヒーター28と第2ヒーター29とを含む。
【0038】
加熱装置19の第1ヒーター28は、フロントカメラ10の視野外に配置されている。第1ヒーター28は、例えば、フロントウィンドウ6の内面に接触する1本の金属製の電熱線31と、電熱線31に接続される一対の電極(図示せず)と、を含んでいる。電熱線31は、フロントウィンドウ6にプリントされている。電熱線31は、環状を成しており、フロントウィンドウ6の視野内部分Qを囲んでいる。なお、他の実施形態では、電熱線31は、フロントウィンドウ6に内蔵されていても良いし、ラミネート構造を成していても良い。また、他の実施形態では、電熱線31は、複数本配置されていても良いし、環状以外の形状(例えば、直線状)を成していても良い。
【0039】
加熱装置19の第2ヒーター29は、フロントカメラ10の視野内に配置されている。例えば、第2ヒーター29は、フロントウィンドウ6の内面に接触する複数本の金属製の電熱線32と、電熱線32の両端部に接続される一対の電極33と、を含んでいる。電熱線32は、フロントウィンドウ6にプリントされている。電熱線32は、直線状を成しており、左右方向に延びている。なお、他の実施形態では、電熱線32は、フロントウィンドウ6に内蔵されていても良いし、ラミネート構造を成していても良い。また、他の実施形態では、電熱線32は、1本だけ配置されていても良いし、直線状以外の形状(例えば、環状)を成していても良い。また、他の実施形態では、第2ヒーター29は、1本の電熱線32をその両端部が隣接するように一筆書き状に配置することで形成されていても良い。
【0040】
図4を参照して、空調装置20は、車内空間SP1の空気を調整する装置である。空調装置20は、車内空間SP1及び車外空間SP2に接続されたダクトと、ダクト内に設置されるエバポレータ及びヒータコアと、ダクト内に空気の流れを発生させるブロアファンと、ブロアファンを駆動させる電動モータと、を含む。空調装置20は、風量(ブロアファンの回転数)や空調モードを切り替え可能に設けられている。上記の空調モードには、例えば、車外空間SP2の空気を車内空間SP1に導入する外気導入モードと、車内空間SP1の空気を循環させる内気循環モードと、フロントウィンドウ6に向かって空気を吹き付けるデフロスタモードとが含まれる。
【0041】
乗員センサ21は、乗員の乗車状態を検出するセンサである。乗員センサ21は、乗員によるシートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサ35と、乗員を撮影する乗員カメラ36と、を含む。
【0042】
外界センサ22は、車外空間SP2に存在する物標(例えば、車両1の走行路上の障害物や区画線)を検出するセンサである。外界センサ22は、前述のフロントカメラ10と、ソナー38と、車外カメラ39と、を含む。
【0043】
車両センサ23は、車内空間SP1の状態、車外空間SP2の状態、車両1の走行状態等を検出するセンサである。車両センサ23は、車内空間SP1の温度(以下、「車内温度」と称する)を検出する車内温度センサ41と、車内空間SP1の湿度(以下、「車内湿度」と称する)を検出する車内湿度センサ42と、車外空間SP2の温度(以下、「車外温度」と称する)を検出する車外温度センサ43と、車速を検出する車速センサ44と、第2ヒーター29の温度を検出するヒーター温度センサ45と、フロントウィンドウ6の視野内部分Qの温度を検出する窓温度センサ46とを含む。ヒーター温度センサ45は、例えば、第2ヒーター29の電熱線32の抵抗値に基づいて、第2ヒーター29の温度を検出する。窓温度センサ46は、例えば、接触型又は非接触型のサーミスタによって構成される。
【0044】
制御装置26は、CPUやROM、RAM等から構成された電子制御ユニットである。制御装置26は、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークによって車両1の各構成要素に接続されており、車両1の各構成要素を制御する。
【0045】
制御装置26は、外界認識部52と走行制御部53と曇り止め制御部54と記憶部55とを含む。
【0046】
制御装置26の外界認識部52は、外界センサ22の検出結果に基づいて、車外空間SP2に存在する物標(例えば、車両1の走行路上の障害物や区画線)の位置を認識する。例えば、外界認識部52は、フロントカメラ10が撮影した画像上の濃度値の変化を解析することで、車両1の前方に存在する物標の位置を認識する。
【0047】
制御装置26の走行制御部53は、外界センサ22や車両センサ23の検出結果に基づいて、車両1の走行を制御する。例えば、車速センサ44が検出した車速が所定の第1閾値速度以上である場合に、走行制御部53は、外界認識部52が認識した区画線の位置に基づいて車線維持制御を実行する。車線維持制御において、走行制御部53は、区画線によって区画される車線内の基準位置(例えば、車線の幅方向中央)を車両1が走行するように、ステアリング装置16を制御する。また、車速センサ44が検出した車速が所定の第2閾値速度以上である場合に、走行制御部53は、外界認識部52が認識した障害物の位置に基づいて衝突軽減制御を実行する。衝突軽減制御において、走行制御部53は、車両1と障害物との衝突が回避又は軽減されるように、ブレーキ装置15を制御する。
【0048】
制御装置26の曇り止め制御部54は、フロントウィンドウ6の曇りを抑制すべく、加熱装置19を制御する。例えば、曇り止め制御部54は、車両センサ23の検出結果やHMI17に対する乗員の入力操作に基づいて、空調装置20の風量や空調モードを切り替える。曇り止め制御部54は、車両センサ23の検出結果等に基づいて、PWM制御によって加熱装置19の第1ヒーター28及び第2ヒーター29を制御する。
【0049】
制御装置26の記憶部55は、メモリやHDD等によって構成されている。記憶部55は、車両1の制御に必要なプログラムやテーブル等を記憶している。
【0050】
<曇り止め制御>
次に、図5を参照しつつ、制御装置26の曇り止め制御部54が実行する曇り止め制御について説明する。例えば、曇り止め制御は、車両1のイグニッションスイッチがONになった直後から定期的に実行される。
【0051】
曇り止め制御が開始されると、曇り止め制御部54は、車外温度センサ43の検出結果に基づいて車外温度を取得する(ステップS1)。
【0052】
次に、曇り止め制御部54は、車外温度が所定の基準温度(本実施形態では、10℃)よりも低いか否かを判定する(ステップS2)。なお、他の実施形態では、基準温度は、10℃以外の温度であっても良い。車外温度が基準温度以上である場合(ステップS2:No)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させることなく、曇り止め制御を終了する。
【0053】
一方で、車外温度が基準温度よりも低い場合(ステップS2:Yes)、曇り止め制御部54は、車速センサ44の検出結果に基づいて車速を取得する(ステップS3)。
【0054】
次に、曇り止め制御部54は、車速が0km/hであるか否か、即ち、車両1が停止しているか否かを判定する(ステップS4)。
【0055】
車両1が停止している場合(ステップS4:Yes)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる(ステップS5)。これにより、第1ヒーター28及び第2ヒーター29によってフロントウィンドウ6が加熱され、フロントウィンドウ6の曇りが抑制される。
【0056】
一方で、車両1が停止していない場合、即ち、車両1が走行している場合(ステップS4:No)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28のみを稼働させる(ステップS6)。これにより、第1ヒーター28によってフロントウィンドウ6が加熱され、フロントウィンドウ6の曇りが抑制される。
【0057】
以上のように、曇り止め制御部54は、車両1が停止していることを含む第1条件が成立する場合に第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させ、車両1が走行していることを含む第2条件が成立する場合に第1ヒーター28のみを稼働させる。これにより、車両1の停止時には、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させることで、フロントウィンドウ6の曇りを効果的に抑制することができる。一方で、車両1の走行時には、第1ヒーター28のみを稼働させることで、フロントカメラ10の視野内においてフロントウィンドウ6に熱歪みが発生するのを抑制することができる。これにより、フロントカメラ10が撮影する画像に歪みが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0058】
また、第1条件(第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる条件)及び第2条件(第1ヒーター28のみを稼働させる条件)は、車外温度が基準温度よりも低いことを含んでいる。これにより、車外温度が高く、フロントウィンドウ6が曇りにくい状態で、第1ヒーター28及び/又は第2ヒーター29が稼働するのを抑制することができる。そのため、曇り止めシステムXの省エネルギー性を高めることができる。
【0059】
また、第1ヒーター28は、フロントウィンドウ6に接触している。これにより、第1ヒーター28と第2ヒーター29の両方によってフロントウィンドウ6を直接加熱することができるため、フロントウィンドウ6の昇温速度を高めることができる。これにより、フロントウィンドウ6の曇りをより効果的に抑制することができると共に、消費電力を低くすることができる。
【0060】
また、曇り止め制御部54は、車両1の走行時に、フロントカメラ10が撮影した画像の歪みを抑制している。そのため、車両1の走行時に、走行制御部53は、歪みのない画像に基づいて車両1の走行制御を実行することができる。
【0061】
<変形例>
本実施形態では、第1ヒーター28及び第2ヒーター29が電熱線31、32によって構成されている。一方で、他の実施形態では、図6図7に示されるように、第1ヒーター28及び第2ヒーター29がITOフィルム(Indium Tin Oxide Film)等の透明フィルムによって構成されていても良い。
【0062】
本実施形態では、第1ヒーター28が直接加熱型のヒーター(フロントウィンドウ6に接触するヒーター)によって構成されている。一方で、他の実施形態では、図8に示されるように、第1ヒーター28が間接加熱型のヒーター(フロントウィンドウ6と間隔を介して対向するヒーター)によって構成されていても良い。
【0063】
第1ヒーター28が間接加熱型のヒーターによって構成される場合、第1ヒーター28は、例えば、一又は複数の電熱線(図示せず)を含んでおり、ブラケット11に保持されている。このように第1ヒーター28がブラケット11に保持される場合、第1ヒーター28は、ブラケット11の一部と共に取り外し可能であっても良い。これにより、第1ヒーター28のメンテナンス性が向上する。
【0064】
なお、ブラケット11のフード部13を構成する底壁13Aの上面には、フロントカメラ10のレンズに入射する迷光(反射光)を低減するための迷光低減構造(例えば、波型構造)が形成されている場合がある。このような場合には、第1ヒーター28は、底壁13Aの下面に取り付けられると良い(図8参照)。一方で、第1ヒーター28自体に迷光低減構造が設けられている場合、第1ヒーター28は、底壁13Aの上面に取り付けられていても良い。
【0065】
(第2実施形態)
次に、図9を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。なお、曇り止め制御部54が実行する曇り止め制御以外の内容は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、第2実施形態に係る曇り止め制御のステップS11~ステップS15は、第1実施形態に係る曇り止め制御のステップS1~ステップS5と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
車両1が停止していない場合、つまり、車両1が走行している場合(ステップS14:No)、曇り止め制御部54は、車速が所定の基準速度(本実施形態では、80km/h)以上であるか否かを判定する(ステップS16)。なお、他の実施形態では、基準速度は、80km/h以外の速度に設定されていても良い。
【0067】
車速が基準速度以上である場合(ステップS16:Yes)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる(ステップS15)。一方で、車速が基準速度よりも低い場合(ステップS16:No)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28のみを稼働させる(ステップS17)。
【0068】
以上のように、第2実施形態では、第1条件(第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる条件)は、車両1が停止していることと、車両1が基準速度以上の速度で走行していることとを含み、第2条件(第1ヒーター28のみを稼働させる条件)は、車両1が基準速度よりも低い速度で走行していることを含んでいる。
【0069】
車両1が比較的高速で走行しているときには、走行風によってフロントウィンドウ6が冷やされるため、第2ヒーター29を稼働させても、フロントカメラ10の視野内においてフロントウィンドウ6に熱歪みが発生しにくい。第2実施形態では、このような傾向を踏まえ、車両1が比較的高速で走行しているときに、第2ヒーター29の稼働が許容される。これにより、フロントウィンドウ6の曇りをより効果的に抑制することができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、図10を参照しつつ、本発明の第3実施形態について説明する。なお、曇り止め制御部54が実行する曇り止め制御以外の内容は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、第3実施形態に係る曇り止め制御のステップS21~ステップS26は、第2実施形態に係る曇り止め制御のステップS11~ステップS16と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
車速が基準速度以上である場合(ステップS26:Yes)、曇り止め制御部54は、ヒーター温度センサ45の検出結果に基づいて、第2ヒーター29の温度(以下、「ヒーター温度」と称する)を取得する(ステップS27)。
【0072】
次に、曇り止め制御部54は、ヒーター温度が所定の閾値温度(本実施形態では、80℃)以下であるか否かを判定する(ステップS28)。なお、他の実施形態では、閾値温度は、80℃以外の温度であっても良い。
【0073】
ヒーター温度が閾値温度以下である場合(ステップS28:Yes)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる(ステップS25)。一方で、ヒーター温度が閾値温度よりも高い場合(ステップS28:No)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28のみを稼働させる(ステップS29)。
【0074】
以上のように、第3実施形態では、第1条件(第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる条件)は、ヒーター温度が閾値温度以下であることを含んでいる。これにより、第2ヒーター29の温度が比較的高い状態で第2ヒーター29が稼働するのを抑制することができる。そのため、フロントカメラ10の視野内においてフロントウィンドウ6に熱歪みが発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0075】
なお、第3実施形態では、曇り止め制御部54は、車速が基準速度以上である場合に、ヒーター温度が所定の閾値温度以下であるか否かを判定している。一方で、他の実施形態では、曇り止め制御部54は、車速が基準速度以上である場合に、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させ、車速が基準速度未満である場合に、ヒーター温度が所定の閾値温度以下であるか否かを判定しても良い。
【0076】
(第4実施形態)
次に、図11を参照しつつ、本発明の第4実施形態について説明する。なお、曇り止め制御部54が実行する曇り止め制御以外の内容は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、第4実施形態に係る曇り止め制御のステップS31~ステップS36は、第2実施形態に係る曇り止め制御のステップS11~ステップS16と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
車速が基準速度以上である場合(ステップS36:Yes)、曇り止め制御部54は、窓温度センサ46の検出結果に基づいて、フロントウィンドウ6の視野内部分Qの温度(以下、「視野内温度」と称する)を取得する(ステップS37)。
【0078】
次に、曇り止め制御部54は、フロントウィンドウ6の視野内温度が所定の閾値温度(本実施形態では、80℃)以下であるか否かを判定する(ステップS38)。なお、他の実施形態では、閾値温度は、80℃以外の温度であっても良い。
【0079】
フロントウィンドウ6の視野内温度が閾値温度以下である場合(ステップS38:Yes)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる(ステップS35)。一方で、フロントウィンドウ6の視野内温度が閾値温度よりも高い場合(ステップS38:No)、曇り止め制御部54は、第1ヒーター28のみを稼働させる(ステップS39)。
【0080】
以上のように、第4実施形態では、第1条件(第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させる条件)は、フロントウィンドウ6の視野内温度が閾値温度以下であることを含んでいる。これにより、フロントウィンドウ6の視野内温度が比較的高い状態で第2ヒーター29が稼働するのを抑制することができる。そのため、フロントカメラ10の視野内においてフロントウィンドウ6に熱歪みが発生するのをより効果的に抑制することができる。
【0081】
なお、第4実施形態では、曇り止め制御部54は、車速が基準速度以上である場合に、視野内温度が所定の閾値温度以下であるか否かを判定している。一方で、他の実施形態では、曇り止め制御部54は、車速が基準速度以上である場合に、第1ヒーター28及び第2ヒーター29を稼働させ、車速が基準速度未満である場合に、視野内温度が所定の閾値温度以下であるか否かを判定しても良い。
【0082】
上記の第1~第4実施形態では、曇り止めシステムXによってフロントウィンドウ6の曇りを抑制しているが、他の実施形態では、曇り止めシステムXによってリアウィンドウ7やサイドウィンドウ9の曇りを抑制しても良い。言い換えると、上記の第1~第4実施形態では、フロントカメラ10を撮影装置の一例としているが、他の実施形態では、リアカメラやサイドカメラ(いずれも図示せず)を撮影装置の一例としても良い。
【0083】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :車両
6 :フロントウィンドウ(窓の一例)
10 :フロントカメラ(撮影装置の一例)
26 :制御装置
28 :第1ヒーター
29 :第2ヒーター
43 :車外温度センサ
44 :車速センサ
45 :ヒーター温度センサ
46 :窓温度センサ
SP1 :車内空間
SP2 :車外空間
X :曇り止めシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11