(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155826
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、三次元計測方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20221006BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059241
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】神山 政敏
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB04
4E168CB13
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA24
4E168EA15
(57)【要約】
【課題】レーザ加工に必要な範囲に限定して、ワーク表面の三次元形状を計測することによって、その計測時間を短縮するレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、加工対象物の加工面に加工レーザ光でマーキング(印字)加工するオブジェクトを囲む範囲を、形状計測対象範囲として、印字情報に基づいて設定する範囲設定処理S10と、ガイド光が描画する測定パターンを、加工対象物の加工面の形状計測対象範囲に投影する投影処理S12と、カメラによる撮影を行うことによって、投影処理S12によって投影中の測定パターンが映し出される測定パターン画像を取得する取得処理S14と、測定パターン画像に基づいて、形状計測対象範囲における加工対象物の加工面の三次元形状を計測する形状計測処理S16と、を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト情報に基づいてオブジェクトをワーク表面にレーザ加工するためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、
前記ワーク表面に測定レーザ光を出射する測定レーザ光出射部と、
前記レーザ光及び前記測定レーザ光を前記ワーク表面で走査する走査部と、
前記ワーク表面で反射する前記測定レーザ光を撮影する撮影部と、
前記オブジェクト情報が入力される入力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記オブジェクトを囲む範囲を、形状計測対象範囲として、前記オブジェクト情報に基づいて設定する範囲設定処理と、
前記測定レーザ光出射部及び前記走査部を制御することによって、前記測定レーザ光が描画する測定パターンを、前記ワーク表面の前記形状計測対象範囲に投影する投影処理と、
前記撮影部による撮影を行うことによって、前記投影処理によって投影中の前記測定パターンが映し出される測定パターン画像を取得する取得処理と、
前記測定パターン画像に基づいて、前記形状計測対象範囲における前記ワーク表面の三次元形状を計測する形状計測処理と、を実行することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記投影処理は、前記オブジェクトの種類に応じた描画態様で前記測定パターンを描画することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記投影処理は、前記形状計測対象範囲の広さに応じた描画態様で前記測定パターンを描画することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記投影処理は、前記形状計測対象範囲の形状に応じた描画態様で前記測定パターンを描画することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記オブジェクトの種類に応じた前記測定パターンの描画態様をユーザによって指定可能な指定部を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記オブジェクト情報及び前記形状計測処理の計測結果に基づいて、前記オブジェクトを前記ワーク表面にレーザ加工する加工処理を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
報知装置を備え、
前記制御部は、
前記オブジェクト情報及び前記形状計測処理の計測結果に基づいて、前記オブジェクトを前記ワーク表面にレーザ加工することが可能かを判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果を前記報知装置を用いて報知する報知処理と、を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記形状計測対象範囲において前記ワーク表面の三次元形状が変化する領域を含む範囲を、再形状計測対象範囲として、前記形状計測処理の計測結果に基づいて設定する再範囲設定処理と、
前記測定レーザ光出射部及び前記走査部を制御することによって、前記測定パターンよりもピッチが細かい再測定パターンを前記測定レーザ光で描画し、前記再測定パターンを前記ワーク表面の前記再形状計測対象範囲に投影する再投影処理と、
前記撮影部による撮影を行うことによって、前記再投影処理によって投影中の前記再測定パターンが映し出される再測定パターン画像を取得する再取得処理と、
前記再測定パターン画像に基づいて、前記再形状計測対象範囲における前記ワーク表面の三次元形状を再計測する再形状計測処理と、を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記オブジェクト情報、前記形状計測処理の計測結果、及び前記再形状計測処理の再計測結果に基づいて、前記オブジェクトを前記ワーク表面にレーザ加工する加工処理を実行することを特徴とする請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
報知装置を備え、
前記制御部は、
前記オブジェクト情報、前記形状計測処理の計測結果、及び前記再形状計測処理の再計測結果に基づいて、前記オブジェクトを前記ワーク表面にレーザ加工することが可能かを判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果を前記報知装置を用いて報知する報知処理と、を実行することを特徴とする請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
ワーク表面にレーザ光を出射するレーザ光出射部と、前記ワーク表面に測定レーザ光を出射する測定レーザ光出射部と、前記レーザ光及び前記測定レーザ光を前記ワーク表面で走査する走査部と、前記ワーク表面で反射する前記測定レーザ光を撮影する撮影部と、オブジェクト情報が入力される入力部と、を備えるレーザ加工装置が、前記オブジェクト情報に基づいて前記オブジェクトを前記ワーク表面に前記レーザ光でレーザ加工する際に、前記ワーク表面の三次元形状を前記測定レーザ光で計測する三次元計測方法であって、
前記オブジェクトを囲む範囲を、形状計測対象範囲として、前記オブジェクト情報に基づいて設定する範囲設定工程と、
前記測定レーザ光が描画する測定パターンを、前記ワーク表面の前記形状計測対象範囲に投影する投影工程と、
前記投影工程によって投影中の前記測定パターンが映し出される測定パターン画像を取得する取得工程と、
前記測定パターン画像に基づいて、前記形状計測対象範囲における前記ワーク表面の三次元形状を計測する形状計測工程と、を備えることを特徴とする三次元計測方法。
【請求項12】
オブジェクト情報に基づいてオブジェクトをワーク表面にレーザ加工するためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、前記ワーク表面に測定レーザ光を出射する測定レーザ光出射部と、前記レーザ光及び前記測定レーザ光を前記ワーク表面で走査する走査部と、前記ワーク表面で反射する前記測定レーザ光を撮影する撮影部と、前記オブジェクト情報が入力される入力部と、制御部と、を備えるレーザ加工装置に、
前記オブジェクトを囲む範囲を、形状計測対象範囲として、前記オブジェクト情報に基づいて設定する範囲設定処理と、
前記測定レーザ光出射部及び前記走査部を制御することによって、前記測定レーザ光が描画する測定パターンを、前記ワーク表面の前記形状計測対象範囲に投影する投影処理と、
前記撮影部による撮影を行うことによって、前記投影処理によって投影中の前記測定パターンが映し出される測定パターン画像を取得する取得処理と、
前記測定パターン画像に基づいて、前記形状計測対象範囲における前記ワーク表面の三次元形状を計測する形状計測処理と、を実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク表面の三次元形状を撮影により計測するレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記レーザ加工装置に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、レーザ光源を有し、該レーザ光源から射出されるレーザ光により被画像形成媒体を走査して画像を形成する画像形成手段と、前記被画像形成媒体を支持して所定方向に搬送する搬送手段と、前記被画像形成媒体の位置及び形状を検知する検知手段と、前記画像形成手段、搬送手段、及び検知手段の動作を制御する制御手段と、を備えたレーザ画像形成装置において、前記制御手段は、画像形成動作中における前記レーザ光源と前記被画像形成媒体との距離を前記検知手段の検知結果に追従して調整可能としたことを特徴とする。
【0003】
下記特許文献1の記載によれば、上記レーザ画像形成装置は、画像形成動作中における被画像形成媒体の位置及び形状を検知手段により検知して、画像形成動作中にレーザ光源と被画像形成媒体との距離を自動調整可能としたので、多様な形状の被画像形成媒体上にレーザ画像を形成することができる。
【0004】
また、検知手段としては、被画像形成媒体に赤外線や超音波を照射し、その反射により距離計測を行う方法(アクティブ方式)や、被画像形成媒体からの受光のみで行う方法(パッシブ方式)の他、CCDカメラ等で予め被画像形成媒体を撮影しておき、撮影された画像をデータ化して処理することにより被画像形成媒体の形状や位置を検知する方法を用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、撮影された画像をデータ化して処理することにより被画像形成媒体の形状や位置を検知する方法を用いる場合、被画像形成媒体の全体が検知手段で撮影されると、撮影画像のデータ化及びその処理は、レーザ画像が形成されない領域についても、レーザ画像が形成される領域と同様にして行われる。
【0007】
そこで、本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、レーザ加工に必要な範囲に限定して、ワーク表面の三次元形状を計測することによって、その計測時間を短縮するレーザ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、オブジェクト情報に基づいてオブジェクトをワーク表面にレーザ加工するためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、ワーク表面に測定レーザ光を出射する測定レーザ光出射部と、レーザ光及び測定レーザ光をワーク表面で走査する走査部と、ワーク表面で反射する測定レーザ光を撮影する撮影部と、オブジェクト情報が入力される入力部と、制御部と、を備え、制御部は、オブジェクトを囲む範囲を、形状計測対象範囲として、オブジェクト情報に基づいて設定する範囲設定処理と、測定レーザ光出射部及び走査部を制御することによって、測定レーザ光が描画する測定パターンを、ワーク表面の形状計測対象範囲に投影する投影処理と、撮影部による撮影を行うことによって、投影処理によって投影中の測定パターンが映し出される測定パターン画像を取得する取得処理と、測定パターン画像に基づいて、形状計測対象範囲におけるワーク表面の三次元形状を計測する形状計測処理と、を実行することを特徴とするレーザ加工装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、レーザ加工装置は、レーザ加工に必要な範囲に限定して、ワーク表面の三次元形状を計測することによって、その計測時間を短縮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のレーザ加工装置の概略構成が表された図である。
【
図2】同レーザ加工装置の電気的構成が表されたブロック図である。
【
図3】同レーザ加工装置が加工対象物の加工面上にマーキング(印字)加工するオブジェクトの一例が表された図である。
【
図4】測定パターン画像の一例が表された図である。
【
図5】測定パターン画像の一例が表された図である。
【
図6】再測定パターン画像の一例が表された図である。
【
図7】同レーザ加工装置が実行する各処理が表されたフローチャートである。
【
図8】同レーザ加工装置が実行する投影処理が表されたフローチャートである。
【
図9】オブジェクトの種類と測定パターンの描画態様とを関連付けたテーブルが表された図である。
【
図10】同投影処理の第1変更例が表されたフローチャートである。
【
図11】同第1変更例の広さ取得処理を説明するための図である。
【
図12】同投影処理の第2変更例が表されたフローチャートである。
【
図13】同第2変更例の形状取得処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示のレーザ加工装置について、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる
図1及び
図2では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。尚、以下の説明において、上下方向は、
図1に示された通りである。
【0012】
[1.レーザ加工装置の概略構成]
先ず、
図1及び
図2に基づいて、本実施形態のレーザ加工装置1の概略構成について説明する。レーザ加工装置1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
【0013】
レーザ加工部3は、加工レーザ光Pを加工対象物7の加工面8上で2次元走査してマーキング(印字)加工を行うものである。レーザ加工部3は、レーザコントローラ6を備えている。
【0014】
レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字情報67、パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。
【0015】
レーザ加工部3の概略構成について説明する。レーザ加工部3は、レーザ発振ユニット12、ガイド光部15、ダイクロイックミラー101、光学系70、カメラ103、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0016】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ等で構成されており、加工レーザ光Pを出射する。尚、加工レーザ光Pの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
【0017】
ガイド光部15は、可視半導体レーザ28等で構成されている。可視半導体レーザ28は、可視可干渉光であるガイド光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。ガイド光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、更に、2次元走査されることによって、例えば、加工レーザ光Pでマーキング(印字)加工すべき印字パターンの像(以下、「オブジェクト」という。)、そのオブジェクトを取り囲んだ矩形の像、又は測定パターンの像等を、加工対象物7の加工面8上に軌跡(反射による時間残像)で描画するものである。つまり、ガイド光Qには、マーキング(印字)加工能力がない。尚、本実施形態において、測定パターンには複数の描画態様があるが、それに関する詳細な説明については、後述する。
【0018】
ガイド光Qの波長は、加工レーザ光Pの波長とは異なる。本実施形態では、例えば、加工レーザ光Pの波長は1064nmであり、ガイド光Qの波長は、650nmである。
【0019】
ダイクロイックミラー101では、入射された加工レーザ光Pのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、加工レーザ光Pが透過する略中央位置にて、ガイド光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角で加工レーザ光Pの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理がなされており、ガイド光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0020】
尚、
図1の一点鎖線は、加工レーザ光Pとガイド光Qの光軸10を示している。また、光軸10の方向は、加工レーザ光Pとガイド光Qの経路方向を示している。
【0021】
光学系70は、第1レンズ72、第2レンズ74、及び移動機構76を備えている。光学系70では、ダイクロイックミラー101を経た加工レーザ光Pとガイド光Qが、第1レンズ72に入射し通過する。その際、第1レンズ72によって、加工レーザ光Pとガイド光Qの各光径が縮小される。また、第1レンズ72を通過した加工レーザ光Pとガイド光Qは、第2レンズ74に入射し通過する。その際、第2レンズ74によって、加工レーザ光Pとガイド光Qが平行光にされる。移動機構76は、光学系モータ80と、光学系モータ80の回転運動を直線運動に変換するラック・アンド・ピニオン(不図示)等を備えており、光学系モータ80の回転制御によって、第2レンズ74を加工レーザ光Pとガイド光Qの経路方向に移動させる。
【0022】
尚、移動機構76は、第2レンズ74に代えて第1レンズ72を移動させる構成であってもよいし、第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が変わるように第1レンズ72と第2レンズ74の双方を移動させる構成であってもよい。
【0023】
ガルバノスキャナ18は、光学系70を経た加工レーザ光Pとガイド光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラー18X、18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、各走査ミラー18X、18Yを回転させることによって、加工レーザ光Pとガイド光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X方向とY方向である。
【0024】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査された加工レーザ光Pとガイド光Qとを加工対象物7の加工面8上に集光するものである。従って、加工レーザ光Pとガイド光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、加工対象物7の加工面8上でX方向とY方向に2次元走査される。
【0025】
加工レーザ光Pとガイド光Qとでは、波長が異なる。そのため、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が一定の場合、加工レーザ光Pとガイド光Qが集光する位置(以下、「焦点位置F」という。)は、上下方向で異なってしまう。そこで、加工レーザ光Pとガイド光Qの焦点位置Fは、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0026】
また、加工対象物7の加工面8の位置が上下方向で異なる場合も、同様にして、加工レーザ光Pとガイド光Qの焦点位置Fは、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0027】
カメラ103は、加工対象物7の加工面8に向けられた状態で、fθレンズ19付近に設けられている。これにより、カメラ103は、例えば、加工対象物7の加工面8上において、ガルバノスキャナ18の2次元走査が繰り返されることによって描画されている測定パターンのガイド光Qの軌跡を撮像する。これにより、加工対象物7の加工面8が映し出された画像であって、測定パターンのガイド光Qの軌跡を含む画像が撮影される。
【0028】
次に、レーザ加工装置1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について
図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
【0029】
図2に表されるように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、光学系ドライバ78、及びカメラ103等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、及び光学系ドライバ78等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6及びカメラ103には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字情報67、レーザ加工部3に対するパラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。カメラ103は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、撮像指示情報等)を受信可能に構成され、また、撮像した画像を印字情報作成部2に送信可能に構成されている。
【0030】
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0031】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンの(XY座標)データ等を一時的に記憶させておくためのものである。
【0032】
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字情報67に基づいて印字パターンのXY座標データを算出して、加工データ44としてRAM42に記憶するプログラムや、ガイド光Qの軌跡で描く測定パターン(後述する再測定パターンを含む。以下、同じ。)のXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。尚、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、各種のディレイ値、印字情報作成部2から入力された印字情報67等に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、加工レーザ光Pのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Pを走査する速度、及びガルバノスキャナ18によるガイド光Qを走査する速度等を示す各種パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。更に、ROM43には、歪補正のためのパラメータや、ガルバノスキャナ18、レーザ加工装置1のステータス情報(エラー情報、加工回数、加工時間等)が記憶されている。
【0033】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
【0034】
CPU41は、加工データ44、ガイド光Qの軌跡で描く測定パターンのXY座標データ、ガルバノスキャナ18によるガイド光Qを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による加工レーザ光Pを走査する速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、加工データ44に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Pのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
【0035】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。
【0036】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、加工データ44、ガイド光Qの軌跡で描く測定パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、加工レーザ光Pとガイド光Qを2次元走査する。
【0037】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Pのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を駆動させる。
【0038】
光学系ドライバ78は、レーザコントローラ6から入力された情報に基づいて、光学系モータ80を駆動制御して、第2レンズ74を移動させる。
【0039】
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、及びCD-ROMドライブ58等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、及びCD-ROMドライブ58等が接続されている。
【0040】
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。また、入力操作部55においては、ユーザが、測定パターンの描画態様を指定することが可能であるが、それに関する詳細な説明については、後述する。
【0041】
CD-ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD-ROM57から読み込むものである。
【0042】
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御すると共に、後述する画像処理を公知技術で実行することが可能なものであって、CPU61、RAM62、ROM63、及びハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバス線により相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。更に、CPU61とHDD66とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
【0043】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。また、RAM62には、三次元形状データ64や、印字情報67が記憶されている。三次元形状データ64は、加工対象物7の加工面8の三次元形状を示すデータであるが、それに関する詳細な説明については、後述する。印字情報67は、入力操作部55でユーザによって入力されるが、CD-ROMドライブ58でCD-ROM57から読み込まれてもよいし、不図示の入出力インターフェースを介してレーザ加工装置1の外部から入力されてもよい。尚、印字情報67には、上述したデータに関する事項に加えて、例えば、オブジェクトの位置、内容、及び種類等が含まれている。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。更に、ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。また、ROM63には、後述する制御プログラム65及びデータテーブル68等が記憶されている。
【0044】
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。
【0045】
[2.三次元形状の計測]
レーザ加工装置1は、加工レーザ光Pで加工対象物7の加工面8上にオブジェクトをマーキング(印字)加工するために、その前において、加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測する。その際、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査されるガイド光Qの軌跡によって、測定パターンが描画される。更に、比較的長時間露光させたカメラ103で、加工対象物7の加工面8が撮影されることによって、測定パターンが映し出されている画像が取得される。レーザ加工装置1は、その取得した画像から、公知の画像処理技術を用いて、加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測する。
【0046】
但し、本実施形態において、測定パターンは、加工対象物7の加工面8上のうち、オブジェクトがマーキング(印字)加工されるエリアに対して、そのオブジェクトの種類に応じた態様で描画される。逆に、マーキング加工(印字)されないエリアにおいては、測定パターンは描画されない。
【0047】
図3に表されるように、以下の説明では、具体例として、3つの「A」の英文字からなる第1オブジェクトO1と、1次元コードの第2オブジェクトO2とが、加工対象物7の加工面8上にマーキング(印字)加工される場合について記述する。
【0048】
そのような場合、例えば、
図4に表される測定パターン画像110が取得される。測定パターン画像110では、加工対象物7の加工面8上のうち、第1オブジェクトO1がマーキング(印字)加工されるエリアを含む第1形状計測対象範囲R1において、第1オブジェクトO1の種類であるテキストに応じた描画態様の第1測定パターンMP1が映し出されている。また、測定パターン画像110では、加工対象物7の加工面8上のうち、第2オブジェクトO2がマーキング(印字)加工されるエリアを含む第2形状計測対象範囲R2において、第2オブジェクトO2の種類である1次元コードに応じた描画態様の第2測定パターンMP2が映し出されている。
【0049】
第1測定パターンMP1は、複数の直線が直交することによって複数の交点が一定ピッチで形成される格子状のパターンである。第2測定パターンMP2は、複数の直線が一定ピッチで平行に並ぶ横縞状のパターンである。尚、第2測定パターンMP2は、その各直線が1次元コードの各バーに対して直交するように描画される。
【0050】
一方、測定パターン画像110から加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測した結果、例えば、
図5に表される測定パターン画像110のように、第1形状計測対象範囲R1内において、凹凸領域112が認識される場合がある。凹凸領域112とは、測定パターン画像110において、加工対象物7の加工面8が、その平らな面(上下方向に対して傾斜する面を含む。)から突き出し又は窪んだエリアに該当する領域である。
【0051】
そのような場合、
図6に表される再測定パターン画像118が取得される。再測定パターン画像118では、凹凸領域112に該当する加工対象物7の加工面8上のエリアを含む再形状計測対象範囲114において、再測定パターン116が映し出されている。再測定パターン116は、格子状のパターンであるが、第1測定パターンMP1よりもピッチが細かい。更に、再測定パターン画像118から、加工対象物7の加工面8上のうち、再形状計測対象範囲114に該当するエリアの三次元形状が計測される。尚、加工対象物7の加工面8上のうち、再形状計測対象範囲114を除いた第1形状計測対象範囲R1に該当するエリアと、第2形状計測対象範囲R2に該当するエリアとについては、
図5に表される測定パターン画像110から、三次元形状が計測される。
【0052】
以下の説明において、第1オブジェクトO1及び第2オブジェクトO2等を区別することなくオブジェクトを総称する際はオブジェクトOと表記し、第1形状計測対象範囲R1及び第2形状計測対象範囲R2等を区別することなく形状計測対象範囲を総称する際は形状計測対象範囲Rと表記し、第1測定パターンMP1及び第2測定パターンMP2等を区別することなく測定パターンを総称する際は測定パターンMPと表記する。
【0053】
[3.制御フロー]
図7のフローチャートで表されたレーザ加工方法200のプログラムは、上記制御プログラム65であって、制御部51のROM63に記憶されており、加工レーザ光Pで加工対象物7の加工面8にマーキング(印字)加工を行う際に、制御部51のCPU61により実行される。従って、後述する処理において、制御対象がレーザ加工部3の構成要素である場合、カメラ103を除き、レーザコントローラ6を介した制御が行われる。尚、本プログラムは、CD-ROM57に保存されており、CD-ROMドライブ58によって読み込まれ、CPU61により実行されてもよい。
【0054】
レーザ加工方法200には、三次元計測方法202が含まれている。三次元計測方法202は、上述したようにして、加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測する方法である。
【0055】
以下、本プログラムを、上記具体例を参照しながら説明する。先ず、ステップ(以下、単に「S」と表記する。)10の範囲設定処理が行われる。この処理では、オブジェクトOを取り囲む矩形の範囲が、形状計測対象範囲Rに設定される。この設定は、印字情報67に基づいて行われる。例えば、印字情報67に含まれるオブジェクトOの幅及び高さ情報を直接読み出して範囲設定してもよいし、オブジェクトOが文字列からなるものである場合、その文字のフォントの種類やフォントのサイズを印字情報67から特定し、それらから文字列全体を囲む矩形寸法を算出して範囲設定してもよい。
【0056】
これにより、例えば、第1オブジェクトO1を取り囲む矩形の範囲が、第1形状計測対象範囲R1に設定される。また、第2オブジェクトO2を取り囲む矩形の範囲が、第2形状計測対象範囲R2に設定される。
【0057】
投影処理S12では、加工対象物7の加工面8上において、ガイド光Qの軌跡で描画する測定パターンMPが、形状計測対象範囲Rに投影される。そのため、この処理では、
図8のフローチャートで表された各処理が行われる。
【0058】
種類取得処理S40では、オブジェクトOの種類が取得される。この取得は、印字情報67に基づいて行われる。これにより、例えば、第1オブジェクトO1については、その種類として、テキストが取得される。また、第2オブジェクトO2については、その種類として、1次元コードが取得される。
【0059】
決定処理S42では、オブジェクトOに対して、その種類に応じ、測定パターンMPの描画態様が決定される。その決定は、
図9に表されるデータテーブル68に基づいて行われる。データテーブル68では、オブジェクトOの種類と、測定パターンMPの描画態様とが、関連付けられている。具体的には、テキスト及び図形のオブジェクトOの種類には、上記格子状のパターンが、測定パターンMPの描画態様として関連付けられている。画像及び2次元コードのオブジェクトOの種類には、ドット状のパターンが、測定パターンMPの描画態様として関連付けられている。ドット状のパターンとは、複数のドットが一定ピッチで千鳥配列されるパターンである。1次元コードのオブジェクトOの種類には、上記横島状のパターンが、測定パターンMPの描画態様として関連付けられている。
【0060】
これにより、例えば、種類がテキストの第1オブジェクトO1に対しては、格子状のパターンが、測定パターンMPの描画態様として決定される。また、種類が1次元コードの第2オブジェクトO2に対しては、横縞状のパターンが、測定パターンMPの描画態様として決定される。
【0061】
描画処理S44では、ガイド光Qがガイド光部15から出射されると共に、ガルバノスキャナ18の振角が所定角度となるように、ガルバノスキャナ18の各走査ミラー18X、18Yが回転させられる。そのような回転(走査)が繰り返されると、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査中のガイド光Qの軌跡が、上記決定処理S42で決定された描画態様の測定パターンMPを描画することによって、形状計測対象範囲Rに投影される。
【0062】
これにより、例えば、加工対象物7の加工面8上では、ガイド光Qの軌跡で描画する第1測定パターンMP1が、第1形状計測対象範囲R1に投影される。第1測定パターンMP1の描画態様は、第1形状計測対象範囲R1内でマーキング(印字)加工される第1オブジェクトO1の種類(つまり、テキスト)に応じて決定された、格子状のパターンである。また、加工対象物7の加工面8上では、ガイド光Qの軌跡で描画する第2測定パターンMP2が、第2形状計測対象範囲R2に投影される。第2測定パターンMP2の描画態様は、第2形状計測対象範囲R2内でマーキング(印字)加工される第2オブジェクトO2の種類(つまり、一次元コード)に応じて決定された、横縞状のパターンである。
【0063】
上記描画処理S44が行われた後は、
図7に戻って、取得処理S14が行われる。この処理では、カメラ103が加工対象物7の加工面8を撮影することによって、描画処理S44で投影中の形状計測対象範囲Rを映し出した画像(具体的には、
図4又は
図5に表される測定パターン画像110)が取得される。その際、形状計測対象範囲R(つまり、ガイド光Qの軌跡で描画中の測定パターンMP)は、ROM63に記憶された露光時間の数値をもって、カメラ103によって撮影される。これにより、例えば、測定パターン画像110には、第1形状計測対象範囲R1(第1測定パターンMP1)及び第2形状計測対象範囲R2(第2測定パターンMP2)が映し出されている。以下、具体例は、
図5に表される測定パターン画像110を用いて説明する。
【0064】
形状計測処理S16では、取得処理S14で取得された画像に基づいて、加工対象物7の加工面8の三次元計測が行われる。従って、
図5に表される測定パターン画像110が取得された場合、その測定パターン画像110から、加工対象物7の加工面8上に映し出されている第1測定パターンMP1の位置を検出し、その検出された第1測定パターンMP1の位置に基づいて、第1形状計測対象範囲R1における加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測する。また、加工対象物7の加工面8上に映し出されている第2測定パターンMP2の位置を検出し、その検出された第2測定パターンMP2の位置に基づいて、第2形状計測対象範囲R2における加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測する。このようにして、計測された三次元形状を示すデータは、三次元形状データ64として、RAM62に記憶される。
【0065】
再範囲設定処理S18において、CPU61は、形状計測対象範囲Rにおいて、加工対象物7の加工面8が、その平らな面(上下方向に対して傾斜する面を含む。)から突き出し又は窪んだエリアを含む範囲を、再形状計測対象範囲として設定する。この設定は、上記形状計測処理S16の計測結果(つまり、三次元形状データ64)に基づいて行われる。これにより、例えば、第1形状計測対象範囲R1において、凹凸領域112を含む範囲が、再形状計測対象範囲114に設定される(
図5、
図6参照)。
【0066】
再投影処理S20では、ガイド光Qがガイド光部15から出射されると共に、ガルバノスキャナ18の振角が所定角度となるように、ガルバノスキャナ18の各走査ミラー18X、18Yが回転させられる。そのような回転(走査)が繰り返されると、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査中のガイド光Qの軌跡が、上記決定処理S42で決定された描画態様の測定パターンMPよりもピッチが細かい再測定パターンを描画することによって、再形状計測対象範囲に投影される。
【0067】
これにより、例えば、加工対象物7の加工面8上では、ガイド光Qの軌跡で描画する再測定パターン116が、再形状計測対象範囲114に投影される(
図6参照)。再測定パターン116の描画態様は、再形状計測対象範囲114を含む第1形状計測対象範囲R1を上記描画処理S44で投影していた第1測定パターンMP1と同一の格子状パターンであるが、その第1測定パターンMP1よりもピッチが細かい格子状のパターンである。
【0068】
再取得処理S22では、カメラ103が加工対象物7の加工面8を撮影することによって、再投影処理S20で投影中の再形状計測対象範囲を映し出した画像(具体的には、再測定パターン画像118)が取得される。その際、再形状計測対象範囲(つまり、ガイド光Qの軌跡で描画中の再測定パターン)は、ROM63に記憶された露光時間の数値をもって、カメラ103によって撮影される。これにより、例えば、再測定パターン画像118には、再形状計測対象範囲114(再測定パターン116)が映し出されている。
【0069】
再形状計測処理S24では、再取得処理S22で取得された画像に基づいて、加工対象物7の加工面8の三次元計測が行われる。これにより、例えば、再測定パターン画像118から、加工対象物7の加工面8上に映し出されている再測定パターン116の位置を検出し、その検出された再測定パターン116の位置に基づいて、再形状計測対象範囲114における加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測する。このようにして、計測された三次元形状を示すデータは、三次元形状データ64として、RAM62に記憶される。
【0070】
判定処理S26では、オブジェクトOを加工対象物7の加工面8上にマーキング(印字)加工することが可能であるかが判定される。この判定は、印字情報67と、上記形状計測処理S16及び上記再形状計測処理S24の計測結果である三次元形状データ64とに基づいて行われる。具体的には、加工対象物7の加工面8と照射される加工レーザ光Pとがなす角度を三次元形状データ64から算出し、その角度が所定の閾値を超える場合には、照射エネルギー不足で加工不可と判定する。これに対して、その角度が所定の閾値内にある場合には、加工可能と判定する。尚、前記閾値は、入力操作部55等により入力された加工対象物7の素材や表面粗さ等の情報に基づき、その値が設定されるのが好ましい。
【0071】
報知処理S28では、上記判定処理S26の判定結果が、液晶ディスプレイ56に表示されることによって、ユーザに報知される。尚、上記判定処理S26の判定結果は、不図示のスピーカから出力されてもよいし、不図示の入出力インターフェースを介して接続される上位コンピュータに送信されてもよい。
【0072】
更に、オブジェクトOを加工対象物7の加工面8上にマーキング(印字)加工することが可能である場合(S30:YES)、加工処理S32が行われる。この処理では、CPU61は、印字情報67等に加えて、三次元形状データ64を、レーザコントローラ6に送信する。そして、レーザ加工部3では、光学系70の第2レンズ74が三次元形状データ64に基づいて移動させられることによって、加工レーザ光Pの焦点位置Fが加工対象物7の加工面8上に合わせられると共に、加工レーザ光Pが印字パターン(つまり、加工データ44)に基づいてガルバノスキャナ18で2次元走査される。これにより、オブジェクトOが加工レーザ光Pで加工対象物7の加工面8上にマーキング(印字)加工される。その後、レーザ加工方法200は、終了する。
【0073】
これに対して、オブジェクトOを加工対象物7の加工面8上にマーキング(印字)加工することが不可能である場合(S30:NO)、加工処理S32が行われることなく、レーザ加工方法200が終了する。
【0074】
尚、レーザ加工方法200においては、S10乃至S14の各処理によって、三次元計測方法202が構成されている。
【0075】
[4.まとめ]
以上詳細に説明したように、本実施の形態のレーザ加工装置1、三次元計測方法202,及び制御プログラム65は、加工対象物7の加工面8上のうち、オブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rに限定して、測定パターンMPを描画し(S10,S12)、加工対象物7の加工面8の三次元形状を計測することによって(S14,S16)、その計測時間を短縮する。
【0076】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1は、オブジェクトOの種類に応じた描画態様で測定パターンMPが描画されるので(S12,S40,S42,S44)、加工対象物7の加工面8上のオブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rに、そのオブジェクトOに最適な描画態様で測定パターンMPが投影される。
【0077】
ちなみに、加工対象物7の加工面8は、「ワーク表面」の一例である。レーザ発振ユニット12は、「レーザ光出射部」の一例である。ガイド光部15は、「測定レーザ光出射部」の一例である。ガルバノスキャナ18は、「走査部」の一例である。入力操作部55は、「入力部」及び「指定部」の一例である。液晶ディスプレイ56は、「報知装置」の一例である。CPU61は、「制御部」の一例である。印字情報67は、「オブジェクト情報」の一例である。カメラ103は、「撮影部」の一例である。加工レーザ光Pは、「レーザ光」の一例である。ガイド光Qは、「測定レーザ光」の一例である。範囲設定処理S10は、「範囲設定工程」の一例である。投影処理S12は、「投影工程」の一例である。取得処理S14は、「取得工程」の一例である。形状計測処理S16は、「形状計測工程」の一例である。形状計測処理S16の三次元形状データ64は、「形状計測処理の計測結果」の一例である。再形状計測処理S24の三次元形状データ64は、「再形状計測処理の再計測結果」の一例である。
【0078】
[5.その他]
尚、本開示は、本実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0079】
例えば、投影処理S12では、
図10のフローチャートで表された各処理が行われてもよい。そのような第1変更例では、先ず、広さ取得処理S50が行われる。この処理では、形状計測対象範囲Rの広さが取得される。この取得は、印字情報67に基づいて行われる。具体的には、例えば、
図11に表されるように、第1オブジェクトO1を取り囲む第1形状計測対象範囲R1の広さは、以下のようにして取得される。印字情報67から特定される第1オブジェクトO1の幅WO1及び高さHO1に対して、幅方向及び高さ方向で各オフセット値Nが加算されることによって、第1オブジェクトO1を取り囲む第1形状計測対象範囲R1の幅WR1及び高さHR1が算出され、その算出された幅WR1に高さHR1を乗じることによって、第1形状計測対象範囲R1の広さが取得される。尚、オフセット値Nは、ROM63に記憶されている。
【0080】
決定処理S52では、形状計測対象範囲Rに対して、その広さに応じて、測定パターンMPの描画態様が決定される。その決定は、例えば、形状計測対象範囲Rの広さと、測定パターンMPの描画態様とが、関連付けられている、不図示のデータテーブルに基づいて行われる。尚、そのようなデータテーブルは、ROM63に記憶されている。
【0081】
描画処理S54では、
図8の描画処理S44と同様な処理が行われる。これにより、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査中のガイド光Qの軌跡が、上記決定処理S52で決定された描画態様の測定パターンMPを描画することによって、形状計測対象範囲Rに投影される。
【0082】
このようにすれば、第1変更例は、形状計測対象範囲Rの広さに応じた描画態様で測定パターンMPが描画されるので(S12,S50,S52,S54)、加工対象物7の加工面8上のオブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rに、その形状計測対象範囲Rに最適な描画態様で測定パターンMPが投影される。
【0083】
また、投影処理S12では、
図12のフローチャートで表された各処理が行われてもよい。そのような第2変更例では、先ず、形状取得処理S60が行われる。この処理では、形状計測対象範囲Rの形状が取得される。この取得は、印字情報67に基づいて行われる。具体的には、例えば、
図13に表されるように、多角形状の図形である第3オブジェクトO3について、第3オブジェクトO3を取り囲む第3形状計測対象範囲R3の形状は、以下のようにして取得される。印字情報67から第3オブジェクトO3の外枠ベクトルデータが特定され、その特定された第3オブジェクトO3の外枠ベクトルデータに対して、幅方向及び高さ方向で各オフセット値Nが加算されることによって、第3形状計測対象範囲R3の形状が取得される。尚、オフセット値Nは、ROM63に記憶されている。
【0084】
決定処理S62では、形状計測対象範囲Rに対して、その形状に応じて、測定パターンMPの描画態様が決定される。その決定は、例えば、形状計測対象範囲Rの形状と、測定パターンMPの描画態様とが、関連付けられている、不図示のデータテーブルに基づいて行われる。尚、そのようなデータテーブルは、ROM63に記憶されている。
【0085】
描画処理S64では、
図8の描画処理S44と同様な処理が行われる。これにより、加工対象物7の加工面8上では、2次元走査中のガイド光Qの軌跡が、上記決定処理S62で決定された描画態様の測定パターンMPを描画することによって、形状計測対象範囲Rに投影される。
【0086】
このようにすれば、第2変更例は、形状計測対象範囲Rの形状に応じた描画態様で測定パターンMPが描画されるので(S12,S60,S62,S64)、加工対象物7の加工面8上のオブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rに、その形状計測対象範囲Rに最適な描画態様で測定パターンMPが投影される。
【0087】
ちなみに、第2変更例において、第3オブジェクトO3は、オブジェクトの一例である。第3形状計測対象範囲R3は、形状計測対象範囲の一例である。また、形状計測対象範囲Rの形状は、矩形や多角形に限定されず、オブジェクトOの形状に応じて多様に設定される。例えば、円形や星形や複数の幾何学的形状の組合せであってもよいし、オブジェクトOの外郭をそのまま反映させた形状であってもよい。
【0088】
また、
図8の決定処理S42では、ユーザが、測定パターンMPの描画態様を、入力操作部55で指定することによって決定してもよい。その際、液晶ディスプレイ56には、ユーザが指定可能な測定パターンMPの描画態様として、格子状のパターン、ドット状のパターン、及び横縞状のパターン等が表示される。そのような場合、ユーザの判断によって、測定パターンMPの描画態様が決定されることから、加工対象物7の加工面8上のオブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rに、現状に最適な描画態様で測定パターンMPを投影することが可能である。この点は、
図10の決定処理S52及び
図12の決定処理S62においても、同様である。
【0089】
また、取得処理S14において、例えば、
図4に表される測定パターン画像110が取得される場合、オブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rには、加工対象物7の加工面8が、その平らな面(上下方向に対して傾斜する面を含む。)から突き出し又は窪んだエリアが存在しないことから、再範囲設定処理S18、再投影処理S20、再取得処理S22、及び再形状計測処理S24は、省略されてもよい。
【0090】
従って、再範囲設定処理S18、再投影処理S20、再取得処理S22、及び再形状計測処理S24は、オブジェクトOがマーキング(印字)加工されるエリアを含む形状計測対象範囲Rにおいて、加工対象物7の加工面8が、その平らな面(上下方向に対して傾斜する面を含む。)から突き出し又は窪んだエリアが存在すること、つまり、測定パターン画像110において凹凸領域112が認識されることを条件として行われてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1:レーザ加工装置、7:加工対象物、8:加工対象物の加工面、12:レーザ発振ユニット、15:ガイド光部、18:ガルバノスキャナ、55:入力操作部、56:液晶ディスプレイ、61:CPU、64:三次元形状データ、65:制御プログラム、67:印字情報、103:カメラ、110:測定パターン画像、114:再形状計測対象範囲、116:再測定パターン、118:再測定パターン画像、200:レーザ加工方法、202:三次元計測方法、MP1:第1測定パターン、MP2:第2測定パターン、O1:第1オブジェクト、O2:第2オブジェクト、O3:第3オブジェクト、P:加工レーザ光、Q:ガイド光、R1:第1形状計測対象範囲、R2:第2形状計測対象範囲、R3:第3形状計測対象範囲、S10:範囲設定処理、S12:投影処理、S14:取得処理、S16:形状計測処理、S18:再範囲設定処理、S20:再投影処理、S22:再取得処理、S24:再形状計測処理、S26:判定処理、S28:報知処理、S32:加工処理。