(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155839
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】端子モジュール及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20221006BHJP
H01R 13/15 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R13/15 B
H01R13/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059260
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 隆幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可撓導体の断線を抑制しつつ、コネクタの小型化が可能な端子モジュールを提供する。
【解決手段】一方側から他方側に向かう第1方向に沿って相対的に近づく相手コネクタ90と嵌合して、相手コネクタと電気的に接続する端子モジュール10であって、天井壁21と、天井壁から一方側に延びる一対の側壁22とを有するケース20と、天井壁から一方側に延びる弾性部材30と、弾性部材によって一方側に付勢されている状態で一対の側壁に支持され、相手コネクタにより押圧されることで、他方側に移動可能に設けられている第1端子40と、第1端子と第1方向に直交する第2方向に離れて位置し、第1方向に延びる第2端子50と、第1端子と第2端子とを電気的に接続する可撓導体60とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側から他方側に向かう第1方向に沿って相対的に近づく相手コネクタと嵌合して、前記相手コネクタと電気的に接続する端子モジュールであって、
天井壁と、前記天井壁から前記一方側に延びる一対の側壁と、を有するケースと、
前記天井壁から前記一方側に延びる弾性部材と、
前記弾性部材によって前記一方側に付勢されている状態で前記一対の側壁に支持され、前記相手コネクタにより押圧されることで、前記他方側に移動可能に設けられている第1端子と、
前記第1端子と前記第1方向に直交する第2方向に離れて位置し、前記第1方向に延びる第2端子と、
前記第1端子と前記第2端子とを電気的に接続する可撓導体と、
を備え、
前記第1端子は、
前記弾性部材の前記一方側において前記天井壁と前記第1方向に対向し、前記相手コネクタと接触可能に設けられている第1部分と、
前記第1部分のうち前記第2端子側の端部から前記一方側又は前記他方側に延びる第2部分と、を有し、
前記可撓導体は、
前記第2部分に接続される第1接合部と、
前記第2端子に接続される第2接合部と、
前記第1接合部及び前記第2接合部の間に位置し、前記一方側に凸となる中間部分と、を有する、端子モジュール。
【請求項2】
前記中間部分は、
前記嵌合前において、前記第1接合部と前記中間部分の前記一方側の頂点部とを結ぶ仮想線よりも前記第2接合部側に前記中間部分の一部が位置するように撓んでおり、
前記嵌合の際に、前記一部が前記仮想線の前記第2接合部側から前記第2接合部の反対側へ移動するように伸びる、請求項1に記載の端子モジュール。
【請求項3】
前記第1接合部は、前記第2部分のうち前記第2端子側の第1面に接続され、
前記第2接合部は、前記第2端子のうち前記第2部分側の第2面に接続されている、
請求項1又は請求項2に記載の端子モジュール。
【請求項4】
前記第1面の少なくとも一部は、前記第1方向において前記第2面と重複する位置にある、
請求項3に記載の端子モジュール。
【請求項5】
前記一対の側壁は、前記相手コネクタにより押圧されて前記他方側に移動する前記第1端子を前記第2端子に近づく方向にも移動するように案内するガイド面を備え、
前記嵌合の際の前記第1端子の前記他方側への移動量は、前記近づく方向への移動量よりも多い、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の端子モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子モジュールと、
前記端子モジュールが収容されているハウジングと、
を備える、コネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、
前記天井壁が当接する上壁と、前記上壁の前記第2端子側の端から前記一方側に延びる後壁とを有し、
前記嵌合前において、前記第2部分及び前記第1接合部の前記他方側には、前記上壁、前記後壁及び前記ケースにより囲まれた空間が形成され、
前記嵌合の際に、前記第2部分及び前記第1接合部は、前記空間に進入する、
請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記嵌合の際に、前記相手コネクタと前記可撓導体とを区画する傾斜壁を有し、
前記傾斜壁は、前記中間部分の前記一方側の頂点部よりも前記第1接合部側に位置する面であって、前記一方側から前記他方側に向かうにつれて前記第1接合部に近づく面である傾斜面を有する、
請求項6又は請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記傾斜面は、前記相手コネクタを前記コネクタから外す際に、前記一方側に移動する前記中間部分と接触することで、前記中間部分を案内する、
請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記嵌合前において、前記可撓導体が囲む前記他方側に開放された空間に位置するガイド部をさらに備え、
前記ガイド部は、前記嵌合の際に、前記中間部分と接触する、
請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子モジュール及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等において、モータとPCU(Power Control Unit)等の機器同士を接続する際に、機器のケースにそれぞれ設けられたコネクタ同士を嵌合させることで、ワイヤーハーネスを省略して省スペース化を図る技術が知られている。例えば特許文献1には、受け側であるコネクタに、差し込み側である相手コネクタを嵌合させる技術が開示されている。
【0003】
特許文献1において、コネクタは、コイルスプリングと、当該コイルスプリングの先端に設けられた電気接触部材とを含む。そして、コネクタ同士が嵌合する際に、相手コネクタに含まれる相手側接点が、電気接触部材を介してコイルスプリングを圧縮させる。これにより、電気接触部材はコイルスプリングによって相手側接点に押し付けられ、電気接触部材と相手側接点とが電気的に接続される。
【0004】
電気接触部材は、編組線により外部接続部材と電気的に接続される。編組線は電気接触部材の移動に伴って撓むように設けられている。編組線が撓むことで、相手側接点が電気接触部材に接続される際に、電気接触部材は、外部接続部材との電気的接続を維持しながら移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、嵌合時に部材の移動が伴うコネクタでは、移動する部分(電気接触部材)と固定された部分(外部接続部材)とを電気的に接続するために、編組線等の可撓導体が用いられる。可撓導体は比較的柔軟な電線等により構成されているため、コネクタに含まれる他の部材(例えば、ハウジング)と擦れることで、断線するおそれがある。コネクタの嵌合時における可撓導体の撓み方を完全に予測することは困難であるため、断線を防止するためには、例えばハウジングにおいて、可撓導体の可動域に対してさらにマージンを加えた空間を設ける必要があった。この結果、コネクタが大型化し、省スペース化が図れないという課題があった。
【0007】
かかる課題に鑑み、本開示は、可撓導体の断線を抑制しつつ、コネクタを小型化可能な端子モジュールを提供することを目的とする。また、本開示は、可撓導体の断線を抑制しつつ、小型化可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の端子モジュールは、一方側から他方側に向かう第1方向に沿って相対的に近づく相手コネクタと嵌合して、前記相手コネクタと電気的に接続する端子モジュールであって、天井壁と、前記天井壁から前記一方側に延びる一対の側壁と、を有するケースと、前記天井壁から前記一方側に延びる弾性部材と、前記弾性部材によって前記一方側に付勢されている状態で前記一対の側壁に支持され、前記相手コネクタにより押圧されることで、前記他方側に移動可能に設けられている第1端子と、前記第1端子と前記第1方向に直交する第2方向に離れて位置し、前記第1方向に延びる第2端子と、前記第1端子と前記第2端子とを電気的に接続する可撓導体と、を備え、前記第1端子は、前記弾性部材の前記一方側において前記天井壁と前記第1方向に対向し、前記相手コネクタと接触可能に設けられている第1部分と、前記第1部分のうち前記第2端子側の端部から前記一方側又は前記他方側に延びる第2部分と、を有し、前記可撓導体は、前記第2部分に接続される第1接合部と、前記第2端子に接続される第2接合部と、前記第1接合部及び前記第2接合部の間に位置し、前記一方側に凸となる中間部分と、を有する、端子モジュールである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、可撓導体の断線を抑制しつつ、コネクタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る未嵌合状態のコネクタ及び相手コネクタを概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る嵌合途中のコネクタ及び相手コネクタを概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る嵌合状態のコネクタ及び相手コネクタを概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る端子モジュールを左斜め上側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3の端子モジュールを前側から見た正面図である。
【
図6】
図6は、
図3の端子モジュールを左側から見た側面図である。
【
図7】
図7は、
図3の端子モジュールを上側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、
図5の矢印VIIIにて示す切断線により切断した端子モジュールの断面図である。
【
図9】
図9は、コネクタに相手コネクタが嵌合される際の可撓導体の様子を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、コネクタから相手コネクタが外される際の可撓導体の様子を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る端子モジュールを概略的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る端子モジュールを概略的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、変形例に係るコネクタを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、以下の構成が含まれる。
【0012】
(1)本開示の端子モジュールは、一方側から他方側に向かう第1方向に沿って相対的に近づく相手コネクタと嵌合して、前記相手コネクタと電気的に接続する端子モジュールであって、天井壁と、前記天井壁から前記一方側に延びる一対の側壁と、を有するケースと、前記天井壁から前記一方側に延びる弾性部材と、前記弾性部材によって前記一方側に付勢されている状態で前記一対の側壁に支持され、前記相手コネクタにより押圧されることで、前記他方側に移動可能に設けられている第1端子と、前記第1端子と前記第1方向に直交する第2方向に離れて位置し、前記第1方向に延びる第2端子と、前記第1端子と前記第2端子とを電気的に接続する可撓導体と、を備え、前記第1端子は、前記弾性部材の前記一方側において前記天井壁と前記第1方向に対向し、前記相手コネクタと接触可能に設けられている第1部分と、前記第1部分のうち前記第2端子側の端部から前記一方側又は前記他方側に延びる第2部分と、を有し、前記可撓導体は、前記第2部分に接続される第1接合部と、前記第2端子に接続される第2接合部と、前記第1接合部及び前記第2接合部の間に位置し、前記一方側に凸となる中間部分と、を有する、端子モジュールである。
【0013】
嵌合の際、第1端子は、第2端子に対して相対的に他方側に移動する。これに伴い、可撓導体の一部も他方側に移動する。可撓導体の中間部分は一方側に凸になって撓んでいる。このため、嵌合の際に可撓導体の一部が移動する方向と、可撓導体の中間部分が凸となる方向とは、逆方向となっている。その結果、可撓導体の可動域を、嵌合前において可撓導体が囲む空間内に収めることができるため、可撓導体の可動域に対して設ける空間をより小さくすることができる。これにより、可撓導体の断線を抑制しつつ、コネクタを小型化することができる。
【0014】
(2)好ましくは、前記中間部分は、前記嵌合前において、前記第1接合部と前記中間部分の前記一方側の頂点部とを結ぶ仮想線よりも前記第2接合部側に前記中間部分の一部が位置するように撓んでおり、前記嵌合の際に、前記一部が前記仮想線の前記第2接合部側から前記第2接合部の反対側へ移動するように伸びる。
【0015】
このように構成することで、中間部分は、嵌合前において一部が内側に凹むように撓んでいる。このため、嵌合前において可撓導体が収容される空間をより小さくすることができる。そして、嵌合の際には当該撓み部分が伸びるため、嵌合時における可撓導体の揺動を抑制することができ、可撓導体がハウジングに擦れることを抑制することができる。
【0016】
(3)好ましくは、前記第1接合部は、前記第2部分のうち前記第2端子側の第1面に接続され、前記第2接合部は、前記第2端子のうち前記第2部分側の第2面に接続されている。
【0017】
第2端子の一方側端部に可撓導体が擦れると、可撓導体が摩耗するおそれがある。本開示の一形態によれば、第2接合部は第2端子の第2部分側の第2面に接続されており、中間部分は第2接合部から第2部分側に設けられているため、可撓導体が第2端子の一方側端部と擦れることを抑制することができる。これにより、可撓導体の断線をより抑制することができる。
【0018】
(4)好ましくは、前記第1面の少なくとも一部は、前記第1方向において前記第2面と重複する位置にある。
【0019】
このように構成することで、第1面及び第2面に接続される可撓導体を収容するために必要な空間における第1方向の幅を小さくすることができる。
【0020】
(5)好ましくは、前記一対の側壁は、前記相手コネクタにより押圧されて前記他方側に移動する前記第1端子を前記第2端子に近づく方向にも移動するように案内するガイド面を備え、前記嵌合の際の前記第1端子の前記他方側への移動量は、前記近づく方向への移動量よりも多い。
【0021】
このように構成することで、相手コネクタの嵌合時に、可撓導体の一部は、嵌合前の可撓導体が囲む他方側に開放された空間の内側へ進入する。この結果、当該空間に可撓導体の可動域を収めることができるため、可撓導体の断線を抑制しつつ、コネクタを小型化することができる。
【0022】
(6)本開示のコネクタは、上記(1)から(5)のいずれかの端子モジュールと、前記端子モジュールが収容されているハウジングと、を備える、コネクタである。
【0023】
(7)好ましくは、前記ハウジングは、前記天井壁が当接する上壁と、前記上壁の前記第2端子側の端から前記一方側に延びる後壁とを有し、前記嵌合前において、前記第2部分及び前記第1接合部の前記他方側には、前記上壁、前記後壁及び前記ケースにより囲まれた空間が形成され、前記嵌合の際に、前記第2部分及び前記第1接合部は、前記空間に進入する。
【0024】
上壁、後壁及びケースにより囲まれた空間は、元より第1端子の可動域として設けられている空間である。本開示の一形態では、当該空間を第1端子の可動域に加え、可撓導体の可動域としても利用することができるため、コネクタの小型化を図ることができる。
【0025】
(8)好ましくは、前記ハウジングは、前記嵌合の際に、前記相手コネクタと前記可撓導体とを区画する傾斜壁を有し、前記傾斜壁は、前記中間部分の前記一方側の頂点部よりも前記第1接合部側に位置する面であって、前記一方側から前記他方側に向かうにつれて前記第1接合部に近づく面である傾斜面を有する。
【0026】
傾斜面は、中間部分が第1接合部に向かって傾く方向と同じ方向に傾斜しているため、ハウジングの内面が可撓導体と接触することを抑制することができる。また、仮に可撓導体と接触する場合であっても、傾斜面は中間部材の傾斜方向に沿う面であるため、可撓導体の接触時の摩耗を抑制することができる。
【0027】
(9)好ましくは、前記傾斜面は、前記相手コネクタを前記コネクタから外す際に、前記一方側に移動する前記中間部分と接触することで、前記中間部分を案内する。
【0028】
このように構成することで、可撓導体が意図しない形状に撓むことを抑制し、可撓導体がハウジングの意図しない部分に擦れることを抑制することができる。
【0029】
(10)好ましくは、前記嵌合前において、前記可撓導体が囲む前記他方側に開放された空間に位置するガイド部をさらに備え、前記ガイド部は、前記嵌合の際に、前記中間部分と接触する。
【0030】
このように構成することで、可撓導体は一方側に凸となる形状を維持することができる。これにより、不測の撓み変形に起因する可撓導体の断線を抑制することができる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。
【0032】
《コネクタの全体構成》
図1は、本実施形態に係る嵌合前のコネクタ80及び相手コネクタ90を概略的に示す断面図である。コネクタ80において、相手コネクタ90嵌合前の状態を「未嵌合状態」と称する。
図2は、嵌合途中のコネクタ80及び相手コネクタ90を概略的に示す断面図である。
図3は、嵌合後のコネクタ80及び相手コネクタ90を概略的に示す断面図である。コネクタ80において、相手コネクタ90嵌合後の状態を「嵌合状態」と称する。
【0033】
以下の説明において、相手コネクタ90をコネクタ80へ着脱する方向を「上下方向(本開示の第1方向)」と称し、図面中ではz方向として示す。相手コネクタ90をコネクタ80へ装着する側が「上側(z方向正側であり、本開示の他方側)」である。また、コネクタ80において、上下方向と直交し、後述の第1端子40、第2端子50及び可撓導体60が並ぶ方向を「前後方向(本開示の第2方向)」と称し、図面中ではx方向として示す。第2端子50及び可撓導体60に対し、第1端子40が位置する側が「前側(x方向正側)」である。また、上下方向及び前後方向と直交する方向を「左右方向」と称し、図面中ではy方向として示す。前側を向いた際に左側となる側が「左側(y方向正側)」である。なお、上記の方向はコネクタ80の構成等を説明するための相対的な方向であり、実際にコネクタ80が機器に装着された際の方向を意味するものではない。
【0034】
コネクタ80及び相手コネクタ90は、自動車に搭載されている機器にそれぞれ設けられている。例えば、コネクタ80はインバータ回路を含むPCU(機器の一例)に設けられ、相手コネクタ90はモータ(相手機器の一例)に設けられている。そして、相手コネクタ90が
図1から
図2に示す状態を経て
図3に示すようにコネクタ80に差し込まれることで、コネクタ80と相手コネクタ90は嵌合し、PCUとモータが電気的に接続される。コネクタ80と相手コネクタ90の嵌合については、後述する。
【0035】
コネクタ80は、端子モジュール10と、ハウジング70とを備える。以下、
図4から
図9を適宜参照して、端子モジュール10について説明し、
図1を参照して、ハウジング70について説明する。
【0036】
《端子モジュールの構成》
図4は、本実施形態に係る端子モジュール10を左斜め上側から見た斜視図である。
図5は、端子モジュール10を前側から見た正面図である。
図6は、端子モジュール10を左側から見た側面図である。
図7は、端子モジュール10を上側から見た平面図である。
図8は、
図5の矢印VIIIにて示す切断線により切断した端子モジュール10の断面図である。ここで、
図1、
図2及び
図3は、
図8と同じ断面におけるコネクタ80及び相手コネクタ90を示している。
【0037】
端子モジュール10は、相手コネクタ90に含まれる相手端子91(
図1)と機器に含まれる電気回路(図示省略)とを電気的に接続するためのモジュールである。端子モジュール10は、ケース20と、弾性部材30と、第1端子40と、第2端子50と、可撓導体60とを備える。以下に説明する端子モジュール10の各部構成は、未嵌合状態(すなわち、
図1の状態)のコネクタ80における構成である。
【0038】
ケース20は、天井壁21と、左右一対の側壁22、22と、前後一対の側壁23、23を有する。ケース20は金属製(例えば、ステンレス鋼)であり、板材をプレス加工することにより、天井壁21、側壁22、22及び側壁23、23が一体形成されている。天井壁21は、前後及び左右方向に沿って設けられている平板状の領域である。天井壁21の前後及び左右方向の幅は、弾性部材30の前後及び左右方向の幅よりも大きく、
図7に示すように平面視すると弾性部材30の全体は天井壁21に覆われる。
【0039】
一対の側壁22、22は、天井壁21の左右方向の縁から下側に延びる互いに平行な一対の壁である。一対の側壁22、22は、それぞれ鏡像対称となる形状を有するため、以下、左側の側壁22について代表的に説明する。
図6に示すように、側壁22は、基部22Aと、第1脚部22Bと、第2脚部22Cとを有する。
【0040】
基部22Aは、天井壁21と連なる領域である。基部22Aは、前後方向において天井壁21と同じ幅を有する。基部22Aは、右側(すなわち、左右方向の内側)に突出する凸部27を有する。凸部27の左右方向の内面は、
図5に示すように弾性部材30の左右方向の側部とわずかに隙間を空けて対向している。凸部27は、弾性部材30が圧縮又は伸張する際に、左右方向に曲がる弾性部材30を受ける機能を有する。
【0041】
第1脚部22Bは、基部22Aの前後方向中央部分において、基部22Aから下側に延びつつ、前側に傾斜する領域である。第1脚部22Bは、前後方向の傾斜幅よりも上下方向の幅の方が長い。第1脚部22Bは、前後方向において基部22Aよりも小さい幅(具体的には、基部22Aの4分の1程度の幅)を有する。
【0042】
第1脚部22Bの後側の面は、相手コネクタ90が嵌合する際に、後述の被ガイド部44を案内するガイド面22B1として機能する。ガイド面22B1は、前後方向に傾斜した状態で下方に延びるため、被ガイド部44はガイド面22B1に沿って上下方向に案内されるとともに、前後方向にも案内される。第1脚部22Bは、下端部分において前側に延びる第1受け部24を有する。第1受け部24の上面は、前後方向に沿って延びる面であり、第1端子40に含まれる後述の第1係合部43を受け止め可能となっている。
【0043】
第2脚部22Cは、基部22Aの下及び後側において、基部22Aから下方に延びる領域である。第2脚部22Cは、第1脚部22Bの後側に位置し、第1脚部22Bと第2脚部22Cは前後方向に離れている。第1端子40に含まれる後述の被ガイド部44は、第1脚部22Bと第2脚部22Cとの間に挿入される。第2脚部22Cは、前後方向において基部22Aよりも小さい幅(具体的には、基部22Aの4分の1程度の幅)を有する。第2脚部22Cは、下端部25と、下端部25よりも上側において後側に突出する第2受け部26を有する。第2受け部26の上面は、前後方向に沿って延びる面であり、第1端子40に含まれる後述の第2係合部45を受け止め可能となっている。
【0044】
一対の側壁23、23は、天井壁21の前後方向の縁から下側に延びる互いに平行な一対の壁である。一対の側壁23、23は、左右方向において天井壁21よりも小さい幅(具体的には、天井壁21の3分の1程度の幅)を有する。また、一対の側壁23、23は、上下方向において側壁22よりも小さい幅(具体的には、側壁22の2分の1程度の幅)を有する。一対の側壁23、23の前後方向の内面は、
図8に示すように弾性部材30の前後方向の側部とわずかに隙間を空けて対向している。一対の側壁23、23は、弾性部材30が圧縮又は伸張する際に、前後方向に曲がる弾性部材30を受ける機能を有する。
【0045】
弾性部材30は、金属製(例えばステンレス鋼)の線材をコイル状に巻回したコイルスプリングである。なお、弾性部材30は上下方向に伸縮し、前後方向にも傾くことが可能な部材であれば、コイルスプリング以外の部材であってもよい。例えば、弾性部材30は、他のバネ部材(例えば、板バネ)であってもよいし、ゴム部材であってもよい。
【0046】
弾性部材30は、ケース20に収容されている。すなわち、弾性部材30は、天井壁21、一対の側壁22、22及び一対の側壁23、23により囲まれる下側が開放された空間に収容されている。弾性部材30は、天井壁21と、第1端子40に含まれる後述の第1部分41とにより、上下方向に圧縮した状態で挟まれている。この状態において、弾性部材30は上下方向にさらに圧縮可能となっている。すなわち、弾性部材30は、天井壁21と第1部分41とによりバネの自由長さ未満かつ密着長さよりも長い範囲で圧縮されている。
【0047】
弾性部材30は、
図8に示すように、本体部31と、上端部32と、下端部33とを有する。上端部32は、弾性部材30の上端から1周分程度の領域であり、天井壁21と接触している。下端部33は、弾性部材30の下端から1周分程度の領域であり、第1部分41と接触している。本体部31は、上端部32及び下端部33の間に位置する領域である。
【0048】
第1端子40は、相手端子91と物理的に接触可能な端子であり、一対の側壁22、22に取り付けられている。第1端子40は、第1部分41と、第2部分42とを有する。第1端子40は、金属製(例えば、銅合金)であり、板材をプレス加工することにより、第1部分41及び第2部分42が一体形成されている。第1部分41は、天井壁21の下側に離れた状態で、天井壁21と平行に(すなわち、前後及び左右方向に沿って)設けられている。第2部分42は、第1部分41の後側の縁から上側に延びる領域である。このため、第1端子40は、
図6に示すように側面視(又は、
図8に示すように側断面視)すると、L字形状を有する。
【0049】
第1部分41の上面41Aは、弾性部材30の下端部33を受ける受け面として機能する。第1部分41の下面41Bは、相手端子91に含まれる相手接点93と接触可能な接触面として機能する。
【0050】
第1部分41は、
図4及び
図7に示すように、左右一対の第1係合部43、43と、左右一対の被ガイド部44、44と、を有する。第1係合部43は、第1部分41の前縁において左右方向の外側に突出する領域であり、第1脚部22Bの第1受け部24と上下方向に当接する。被ガイド部44は、第1部分41の前後方向の中央部分において左右方向の外側に突出する領域であり、第1脚部22Bと第2脚部22Cとの隙間に挿入されている。
【0051】
図6に示すように、第2部分42の前面42Aは、弾性部材30側に向く面であり、後側の側壁23と前後方向にわずかに隙間を空けて対向している。第2部分42の後面42B(本開示の「第1面」)は、弾性部材30の反対側を向く面であり、第2端子50に含まれる後述の前面52A(本開示の「第2面」)と前後方向に対向している。言い換えると、後面42Bの少なくとも一部は、上下方向において、前面52Aと重複する位置にある。後面42Bには、可撓導体60が接続されている。
【0052】
第2部分42は、
図4及び
図5に示すように、左右一対の第2係合部45、45を有する。第2係合部45は、第2部分42の上下方向の中央部分よりもやや下側において左右方向の外側に突出する領域であり、第2脚部22Cの第2受け部26と上下方向に当接する。
【0053】
第1端子40は、弾性部材30により下方に付勢されている。そして、第1係合部43が第1受け部24と当接し、第2係合部45が第2受け部26と当接することで、第1端子40は下方への移動が規制されている。すなわち、未嵌合状態において、第1端子40は、弾性部材30と一対の側壁22、22(具体的には、一対の第1受け部24、24及び一対の第2受け部26、26)とにより挟持されている。
【0054】
第2端子50は、PCUに含まれる電気回路(図示省略)と電気的に接続している平板形状の端子であり、後述のハウジング70に取り付けられている。第2端子50は、上部分51と、下部分52と、くびれ部分53と、を有する。第2端子50は、金属製(例えば、銅合金)であり、板材をプレス加工することにより上部分51、下部分52及びくびれ部分53が一体形成されている。
【0055】
図1に示すように、上部分51は、ハウジング70の外側に設けられ、電気回路(図示省略)と接続される領域である。下部分52は、上部分51から下方に延びる領域であり、ハウジング70の内側に設けられている。
図6に示すように、下部分52の前面52Aは、弾性部材30及び第2部分42側を向く面である。前面52Aには、可撓導体60が接続されている。下部分52の後面52Bは、ハウジング70(
図1)と前後方向にわずかに隙間を空けて対向している。くびれ部分53は、上部分51と下部分52との境界領域において、左右方向内側に凹む領域であり、ハウジング70に形成される後述の開口Ap2に設けられている。
【0056】
可撓導体60は、可撓性を有する導体であり、第1端子40と第2端子50とを電気的に接続する。本実施形態において、可撓導体60は、導電性を有する複数の金属素線(例えば、銅素線)が編まれた帯状の編組線である。なお、可撓導体60は、可撓性を有する導体であれば特に限定されない。例えば、可撓導体60は、筒状の編組線であってもよいし、導電性の撚線を絶縁体により被覆した被覆電線であってもよい。
【0057】
可撓導体60は、第1端子40に接続されている第1接合部61と、第2端子50に接続されている第2接合部62と、第1接合部61及び第2接合部62の間に位置する中間部分63とを有する。
【0058】
より具体的には、
図6に示すように、第1接合部61は、可撓導体60の端部60aを上側に向け、中間部分63を下側に向けた状態で、第1端子40の後面42Bに接続されている。また、第2接合部62は、可撓導体60の端部60b(端部60aの反対側の端部)を上側に向け、中間部分63を下側に向けた状態で、第2端子50の前面52Aに接続されている。第1接合部61及び第2接合部62は、後面42B及び前面52Aにそれぞれ抵抗溶接又は圧着されており、中間部分63よりも剛性が高くなっている。
【0059】
第1端子40の第2部分42と、第2端子50の下部分52とは、前後方向(すなわち、上下方向と交差する方向)に対向している。そして、第1接合部61と第2接合部62は、第2部分42及び下部分52によって前後方向に挟まれた状態で、前後方向に並んでいる。
【0060】
中間部分63は、第1接合部61と第2接合部62とを直線的に結ぶ距離よりも長く、下側を凸にした状態で(すなわち、側面視すると略U字形状となる状態で)撓んでいる。可撓導体60が描く曲線の頂点部60c(
図6において、可撓導体60が描く曲線の極小に相当する部分)は、中間部分63の途中に位置する。未嵌合状態において、可撓導体60が囲む上側に開放された空間を「空間S1」と称する。空間S1は、相手コネクタ90の嵌合時に、頂点部60cを含む可撓導体60の一部が進入する可動域として機能する。
【0061】
《ハウジングの構成》
図1を参照する。ハウジング70は、端子モジュール10を収容する樹脂製の部材である。ハウジング70は、上下に分割された部材であり、上割体71と、下割体72とを有する。上割体71は、下方が開放された筐体であり、上壁71Aと、前壁71Bと、後壁71Cと、後側上壁71Dとを有する。上割体71の各部71A~71Dは、例えば射出成形により一体形成されている。
【0062】
上壁71Aは、天井壁21と上下方向に当接している壁であり、前後及び左右方向に沿って設けられている。前壁71Bは、一対の側壁22、22と前後方向に当接している壁であり、上壁71Aの前側の縁から下側に延びる。前壁71Bの下端は、第1端子40の下面41Bよりも下側に位置する。
【0063】
後壁71Cは、上壁71Aの後側の縁から下側に延びる壁である。上壁71Aの後側の縁及び後壁71Cは、第1接合部61よりも後側に位置する。後壁71Cの下端は、上下方向において、くびれ部分53と重なる位置にある。また、後壁71Cの下端は、第2部分42の上端及び第1接合部61と上下方向においてほぼ同じ位置にある。このため、第2部分42と第1接合部61との上側には、上壁71A、後壁71C及びケース20(具体的には、後側の側壁23)により囲まれた空間S2が形成されている。
【0064】
後側上壁71Dは、後壁71Cの下端から後側に延びる壁である。後側上壁71Dの後端と、下割体72に含まれる後述の後壁72Eとにより、上下方向に空いた開口Ap2が形成されている。開口Ap2を介して、第2端子50がハウジング70に挿入されている。開口Ap2にはくびれ部分53が位置しており、上部分51及び下部分52が開口Ap2の左右方向に位置する後側上壁71Dを挟むことで、第2端子50がハウジング70に固定されている。
【0065】
下割体72は、上下方向に空いた開口Ap1が形成されている筒体であり、上割体71と組み合わされることでハウジング70を構成する。下割体72は、筒部72Aと、前壁72Bと、傾斜壁72Cと、下壁72Dと、後壁72Eとを有する。下割体72の各部72A~72Eは、例えば射出成形により一体形成されている。
【0066】
筒部72Aは、下割体72のうち下側に設けられている角筒状の領域である。筒部72Aにより、下側からの相手コネクタ90の進入を許容する開口Ap1が形成されている。筒部72Aの内寸法は、相手コネクタ90に含まれる後述の相手端子91及び嵌合部94の外寸法よりも大きく形成されており、相手端子91及び嵌合部94は筒部72Aに進入可能となっている。
【0067】
筒部72Aの上端は、第1端子40の下面41Bと当接している。このため、端子モジュール10は、上壁71Aと、筒部72Aの上端とにより上下に挟まれた状態で、ハウジング70内に保持されている。第1端子40の下面41Bは、開口Ap1を介してコネクタ80の下側に露出している。筒部72Aの前後方向の幅は第1端子40の前後方向の幅よりも大きく、筒部72Aの後端は第2部分42よりも後側に位置する。
【0068】
前壁72Bは、筒部72Aの上下方向途中から前側に突出した後、上側に延びる壁である。前壁72Bの後側には、上割体71の前壁71Bが当接し、前壁72Bと筒部72Aとにより形成される隙間に前壁71Bの下端が挿入されている。
【0069】
傾斜壁72Cは、筒部72Aの後側の上端と接続し、前側に傾いた状態で上側に延びる壁である。傾斜壁72Cは、相手コネクタ90の嵌合の際に、相手コネクタ90が進入する空間と、可撓導体が位置する空間とを区画する機能を有する。傾斜壁72Cは、可撓導体60と対向する傾斜面73を有する。傾斜面73は、可撓導体60の頂点部60cよりも第1接合部61側に位置する面であって、上側に向かうにつれて第1接合部61に近づく面である。
【0070】
下壁72Dは、筒部72Aの上下方向途中から後側に延びる壁である。下壁72Dは、可撓導体60の頂点部60cよりも下側に位置する。下壁72Dは、第2端子50よりも後側まで延びる。後壁72Eは、下壁72Dの後端から上側に延びる壁である。後壁72Eの上端は、後側上壁71Dと上下方向に同じ位置にある。後壁72Eは、第2端子50の下部分52と前後方向にわずかに隙間を空けて対向している。後壁72Eと後側上壁71Dとにより、前述の開口Ap2が形成されている。
【0071】
《相手コネクタの構成》
相手コネクタ90は、相手端子91と、相手ハウジング92とを有する。相手端子91は、相手ハウジング92にインサート成形によって設けられている。相手端子91は、導電性の金属部材(例えば、銅合金)であり、上下方向に延びる領域と、当該領域から前側に延びる領域とを含むL字形状を有する。相手端子91は、第1端子40の下面41Bと当接する相手接点93を有する。相手接点93は、相手端子91の一部を塑性変形させることで、相手端子91の上面にビード状に設けられている。
【0072】
相手ハウジング92は、樹脂製の部材である。相手ハウジング92は、開口Ap1に進入可能な嵌合部94と、前後及び左右方向に向かって延びるフランジ部95とを有する。嵌合部94は、上側に凸な形状を有し、その上面において相手端子91を保持している。フランジ部95は、開口Ap1よりも前後及び左右方向に大きく、
図3に示す嵌合状態において、ハウジング70に含まれる筒部72Aの下端と当接することで、相手コネクタ90が既定位置を超えてコネクタ80に進入することを抑制している。
【0073】
《コネクタと相手コネクタとの嵌合》
図1から
図3を参照して、コネクタ80へ相手コネクタ90が嵌合される様子を説明する。
図1から
図2に示すように、相手コネクタ90が上側に移動してコネクタ80に近づくと、相手コネクタ90の相手端子91及び嵌合部94が開口Ap1を通ってハウジング70の内部に進入する。そして、相手端子91の相手接点93が、第1端子40の下面41Bと接触する。なお、コネクタ80に相手コネクタ90が嵌合される際、コネクタ80及び相手コネクタ90は上下方向に相対的に近づけばよく、コネクタ80が下側に移動して相手コネクタ90に近づいてもよい。
【0074】
相手接点93が下面41Bと接触した後、相手コネクタ90がさらに上側に移動すると、第1端子40は相手接点93に押圧されることで、弾性部材30を圧縮しながら上側に移動する。このとき、第1端子40の被ガイド部44が第1脚部22Bのガイド面22B1と摺接することで、矢印AR1(
図2)に示すように第1端子40は上側に移動するとともに、ガイド面22B1が前後方向に傾斜する分だけ後側にも移動する。ガイド面22B1は、前後方向に傾斜する幅よりも上下方向の幅の方が長いため、嵌合時の第1端子40の上側への移動量は、後側への移動量よりも多い。
【0075】
後側に移動する第1端子40の下面41Bは、上側に移動する相手接点93と前後方向に摺接する。これにより、下面41Bと相手接点93の間に付着した異物(例えば、下面41Bに形成された硫化物、酸化物等の皮膜)が除去される。
【0076】
そして、
図3に示すように、相手コネクタ90がさらに上側に移動すると、相手コネクタ90がコネクタ80に嵌合する。この状態において、第1端子40の第1部分41は、弾性部材30から下向きの付勢力を受け、相手接点93から上向きの押圧力を受けながら、弾性部材30と相手接点93とによって上下方向に挟持されている。このように、第1部分41が弾性部材30によって相手接点93に押し付けられることで、第1端子40は相手接点93とより確実に電気的接続することができる。
【0077】
《本実施形態の作用効果》
嵌合の際、第1端子40は、第2端子50に対して相対的に上側に移動する。これに伴い、可撓導体60の一部(具体的には、頂点部60c及び頂点部60cよりも第1接合部側の部分)も上側に移動する。可撓導体60の中間部分63は下側に凸になって撓んでいる。このため、嵌合の際に可撓導体60の一部が移動する方向(上側)と、可撓導体60の中間部分63が凸となる方向(下側)とは、逆方向となっている。
【0078】
その結果、可撓導体60の可動域を、嵌合前において可撓導体60が囲む空間S1内に収めることができる。言い換えると、嵌合時、可撓導体60は嵌合前に可撓導体60が囲む空間S1に進入するように移動する。このため、可撓導体60の可動域に対して設ける空間をより小さくすることができる。これにより、可撓導体の断線を抑制しつつ、コネクタを小型化することができる。
【0079】
図9は、嵌合前と嵌合後における可撓導体60の様子を概略的に示す図である。
図9中の(a)は嵌合前の可撓導体60を示し、
図9中の(b)は嵌合後の可撓導体60を示す。
コネクタ80と相手コネクタ90の嵌合前において、可撓導体60は撓んでおり、コネクタ80に相手コネクタ90が嵌合すると、第1端子40の移動に伴い、可撓導体60は撓みが解消されるように上側に伸びる。
【0080】
より具体的には、中間部分63は、嵌合前において、第1接合部61と頂点部60cとを結ぶ仮想線VL1よりも第2接合部62側に中間部分63の一部63aが位置するように撓んでいる。すなわち、中間部材63は、その一部63aが可撓導体60が描くU字形状の内側に凹むように撓んでいる。そして嵌合の際に、中間部分63の一部63aは、矢印AR2に示すように、仮想線VL1の第2接合部62側から第2接合部62の反対側へ移動するように伸びる。
【0081】
中間部分63は、嵌合前において一部63aがU字形状の内側に凹むように撓んでいる。このため、嵌合前において可撓導体60を収容するためのハウジング70内の空間をより小さくすることができる。そして、嵌合の際には撓んでいる一部63aが伸びるため、嵌合時における可撓導体60の揺動を抑制することができ、可撓導体60がハウジング70に擦れることを抑制することができる。
【0082】
ここで、従来技術(例えば、特許文献1)では、コネクタと相手コネクタとの嵌合前に可撓導体が伸びており、コネクタに相手コネクタを嵌合する際に可撓導体が撓み変形していた。すなわち、伸びている可撓導体が嵌合により撓んでいた。このため、相手コネクタの嵌合時において、撓み変形する可撓導体がハウジング等に擦れ、断線するおそれがあった。
【0083】
これに対し、本実施形態の可撓導体60は、コネクタ80と相手コネクタ90との嵌合前に撓んでいる。未嵌合状態のコネクタ80は、製造時の状態(すなわち、初期状態)であるため、可撓導体60をハウジング70に擦れないように撓み変形させた状態でコネクタ80に組み付けることで、可撓導体60がハウジング70に擦れることを抑制することができる。また、可撓導体60は、コネクタ80に相手コネクタ90を嵌合する際に伸びる(すなわち、撓みが減少する)。このため、相手コネクタ90の嵌合時における可撓導体60の揺動を抑制することができ、嵌合時に可撓導体60がハウジング70に擦れることを抑制することができる。
【0084】
すなわち、本実施形態によれば、未嵌合状態において撓んでいる可撓導体60が嵌合により伸びる構成であるため、可撓導体60の嵌合時の挙動が従来よりも予測しやすくなる。その結果、ハウジング70において、可撓導体60の可動域に対して設ける空間をより小さくすることができる。これにより、可撓導体60の断線を抑制しつつ、コネクタ80を小型化することができる。
【0085】
また、可撓導体60は、前後方向において、第1端子40と第2端子50との間に位置する。このため、可撓導体60がハウジング70と接触することをより確実に防止することができる。特に、第2接合部62は下部分52の前面52Aに接続されているため、可撓導体60がハウジング70の後壁72Eと接触することをより確実に防止することができる。
【0086】
ここで、下部分52の下端は角を有するため、このような場所に可撓導体60が擦れると、可撓導体60が摩耗するおそれがある。本実施形態において、第2接合部62は下部分52の前面52Aに接続されており、中間部分63は第2接合部62から前側に湾曲して設けられているため、可撓導体60が下部分52の下端と擦れることを抑制することができる。
【0087】
また、後面42Bの少なくとも一部は、上下方向において前面52Aと重複する位置にある。これにより、後面42B及び前面52Aに接続される可撓導体60を収容するために必要な空間を上下方向に小さくすることができ、ハウジング70を上下方向に小型化することができる。
【0088】
第1端子40の後面42Bと第2端子50の前面52Aは前後方向に対向している。嵌合時において、後面42Bは後側に移動して前面52Aに近づきつつ、上側に移動する。後面42Bと前面52Aとが前後方向に近づくと、可撓導体60の頂点部60cは下側に移動する。また、後面42Bが上側に移動すると、頂点部60cは上側に移動する。本実施形態において、第1端子40の上側への移動量は、後側への移動量よりも多いため、
図2から
図3に示すように、頂点部60cは嵌合により上側(すなわち下壁72Dから離れる方向)に移動する。
【0089】
このように、第1端子40の上側への移動量を後側への移動量よりも多くすることにより、嵌合時に、頂点部60cを含む可撓導体60の一部は、未嵌合状態における可撓導体60により形成されるU字状の空間S1の内側へ進入する。この結果、空間S1に可撓導体60の可動域を収めることができるため、嵌合時に可撓導体60がハウジング70と擦れることを抑制しつつ、コネクタ80を小型化することができる。
【0090】
また、嵌合状態において、第1端子40の第2部分42と可撓導体60の第1接合部61は、空間S2に進入する。空間S2は、元より第1端子40の可動域として設けられている空間である。本実施形態では、この空間S2を第1端子40の可動域に加え、可撓導体60の可動域としても利用することで、コネクタ80の小型化を図ることができる。
【0091】
本実施形態の可撓導体60は、嵌合により伸びる構成とすることで、嵌合時に可撓導体60がハウジング70と接触することを抑制する。一方で、可撓導体60は、コネクタ80から相手コネクタ90を外す際に、撓み変形する。しかしながら、従来のように端子モジュールに可撓導体を伸びた状態で組み付け、嵌合時に相手コネクタ90の進入長に応じて撓み変形する場合と比べ、本実施形態では可撓導体60が撓み変形した状態で端子モジュール10に組み付けられているため、相手コネクタ90を外す際の可撓導体60の撓み方は比較的予測しやすい。このため、ハウジング70において適切に可撓導体60の可動域を設けることができ、可撓導体60がハウジング70の意図しない部分に擦れることを抑制することができる。
【0092】
ここで、可撓導体60の摩耗を防ぐために、ハウジング70の角張った部分が可撓導体60と擦れたり、ハウジング70が可撓導体60の撓み変形を妨げるように接触することで可撓導体60に無理な力が掛かったりすることは、回避すべきである。その一方で、可撓導体60が摩耗するおそれが低いのであれば、可撓導体60を意図的にハウジング70と接触させてもよい。コネクタ80の小型化のためには、可撓導体60の可動域として確保するハウジング70内の空間をより狭くすることが好適であるため、可撓導体60の可動域ぎりぎりの位置にハウジング70を位置させ、未嵌合状態において撓み変形している可撓導体60がハウジング70とソフトに接するように構成してもよい。
【0093】
本実施形態の傾斜面73は、中間部分63が第1接合部61に向かって傾く方向と同じ方向に傾斜しているため、ハウジング70の内面が可撓導体60と接触することを抑制することができる。また、可撓導体60と傾斜面73とが接触する場合であっても、傾斜面73は中間部材63の傾斜方向に沿う面であるため、可撓導体60の接触時の摩耗を抑制することができる。
【0094】
さらに、本実施形態のハウジング70の傾斜面73は、可撓導体60が伸びた状態から撓み変形した状態に遷移する際に、可撓導体60と接触することで、可撓導体60が撓む形状を整える。
【0095】
図10は、コネクタ80から相手コネクタ90が外される際の可撓導体60の様子を模式的に示す図である。
図10中の(a)は嵌合状態における可撓導体60の様子を示しており、
図10中の(b)は相手コネクタ90が外されている途中の可撓導体60の様子を示しており、
図10中の(c)は未嵌合状態における可撓導体60の様子を示している。
図10中の(a)から(b)に示すように、相手コネクタ90が外される際、第1端子40は下斜め前側に移動し、これに伴い可撓導体60も移動する。このとき、可撓導体60は、伸びた状態の形状をある程度保ったまま移動する。すなわち、中間部分63は伸びた状態を維持しながら下降する。
【0096】
そして、
図10中の(b)から(c)に示すように、中間部分63は傾斜面73と接触することで、U字形状の内側(空間S1側)に撓むように変形する。傾斜面73は、中間部分63とほぼ平行な状態で接触するため、接触時における可撓導体60の摩耗を抑制しつつ、可撓導体60をU字形状の内側へ案内することで、可撓導体60が撓む形状を整えることができる。これにより、可撓導体60が意図しない形状に撓むことを抑制し、可撓導体60がハウジング70の意図しない部分に擦れることを抑制することができる。
【0097】
《変形例》
以下、実施形態の変形例を説明する。変形例において、実施形態から変更のない部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0098】
《第1端子の変形例》
上記の実施形態において、第1端子40は天井壁21と平行な第1部分41と、第1部分41の後端から上側に延びる第2部分42とを有する。しかしながら、第2部分42が延びる方向はこれに限られない。
【0099】
図11は、変形例に係る端子モジュール10Aを概略的に示す断面図である。
図11では、未嵌合状態における端子モジュール10Aを実線により示している。端子モジュール10Aは、第1端子40Aの形状が実施形態に係る第1端子40と異なり、その他の点は上記の実施形態と共通する。
【0100】
第1端子40Aは、第1部分41と、第2部分46とを有する。第2部分46は、第1部分41の後端から下側に延びる領域である。可撓導体60の第1接合部61は、第2部分46の後面46Bに接続されている。後面46Bは、弾性部材30の反対側を向く面である。後面46Bは、第2端子50の前面52Aと平行な面であり、前面52Aよりも下側に位置する。すなわち、後面46Bは、前面52Aと斜向かいの状態となっている。なお、可撓導体60の第1接合部61は、第2部分46の前面46Aに接続されてもよい。
【0101】
嵌合状態における第1端子40A及び可撓導体60の位置を
図11中の二点鎖線により示している。相手コネクタ90が嵌合すると、上記の実施形態と同様に、第1端子40Aは上側及び後側に移動する。これに伴い、第1接合部61と、中間部分63のうち第1接合部61側の領域とが上側及び後側に移動する。
【0102】
そして、上記の実施形態と同様に、第1端子40の上側への移動量は、後側への移動量よりも多いため、頂点部60cは嵌合により上側に移動する。このため、
図11に示すように、嵌合状態において、頂点部60cを含む可撓導体60の一部は、未嵌合状態における可撓導体60により形成されるU字状の空間S1の内側に位置する。この結果、空間S1に可撓導体60の可動域を収めることができるため、嵌合時に可撓導体60がハウジング70と擦れることを抑制しつつ、コネクタ80を小型化することができる。
【0103】
《第2接合部の変形例》
図12は、変形例に係る端子モジュール10Bを概略的に示す断面図である。
図12では、未嵌合状態における端子モジュール10Bを示している。上記の実施形態に係る第2接合部62は、第2端子50の下部分52のうち前面52Aに接続されている。これに対し、変形例に係る第2接合部64は、第2端子50の下部分52のうち後面52Bに接続されている。
【0104】
このように構成することで、第1接合部61と第2接合部64との前後方向の距離がより長くなり、可撓導体60により形成される空間S1をより広く確保することができる。このため、嵌合の際に第1端子40の移動量がより大きい場合であっても、空間S1に可撓導体60の可動域を収めることができる。
【0105】
《可撓導体の撓み形状を規制する変形例》
図13は、変形例に係るコネクタ80Aを概略的に示す断面図である。
図13では、未嵌合状態におけるコネクタ80Aを示している。上記の実施形態では、傾斜面73を可撓導体60と接触させることで、可撓導体60の撓み形状を整える技術を説明した。本変形例では、可撓導体60の撓み形状をさらに整えるガイド部PN1を説明する。
【0106】
可撓導体60は、下側に凸となる形状を有し、頂点部60cは可撓導体60の最も下側に位置する。ここで、コネクタ80に振動が加えられる等により、可撓導体60がU字形状の内側(空間S1側)に凹むように撓み変形するおそれがある。このような不測の撓み変形により、頂点部60cが第1接合部61及び第2接合部62により前後方向に挟まれた状態で、可撓導体60が上側に凸となる形状(すなわち、W字形状)になると、例えば第1接合部61と中間部分63との間で無理な折り曲がりが生じて可撓導体60が塑性変形したり、頂点部60cがハウジング70の後側上壁71Dに接触したりすることで、可撓導体60が断線するおそれがある。そこで、変形例に係るコネクタ80Aは、可撓導体60が上記のようにW字形状になることを防止するためのガイド部PN1をさらに備える。
【0107】
ガイド部PN1は、左右方向に延びる棒状の樹脂部材であり、
図13に示すように円形状の断面を有する。ガイド部PN1は、例えば上割体71に設けられている。
図13の断面において、ガイド部PN1は、空間S1に位置する。より具体的には、ガイド部PN1は、未嵌合状態において可撓導体60の頂点部60cの上側に離れて位置し、嵌合状態において頂点部60cを含む中間部分63と接触する。これにより、可撓導体60が上側に凸となることを防止することができ、可撓導体60は下側に凸となる形状を維持することができる。また、ガイド部PN1は、円形の断面を有するため、接触時における可撓導体60の摩耗を抑制することができる。
【0108】
《その他》
上記の実施形態では、相手コネクタ90が嵌合される際に、第1端子40が上斜め後側に移動する例を説明した。しかしながら、嵌合時に第1端子40が後側に移動することは必須の構成ではなく、第1端子40は上側にのみ移動してもよい。この場合、第1脚部22Bのガイド面22B1は、下側に真っ直ぐ延びる形状を有し、被ガイド部44は上下方向にのみ案内される。
【0109】
《補記》
なお、上記の実施形態及び各種の変形例については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
10 端子モジュール
10A 端子モジュール
10B 端子モジュール
20 ケース
21 天井壁
22 側壁
22A 基部
22B 第1脚部
22B1 ガイド面
22C 第2脚部
23 側壁
24 第1受け部
25 下端部
26 第2受け部
27 凸部
30 弾性部材
31 本体部
32 上端部
33 下端部
40 第1端子
40A 第1端子
41 第1部分
41A 上面
41B 下面
42 第2部分
42A 前面
42B 後面(第1面)
43 第1係合部
44 被ガイド部
45 第2係合部
46 第2部分
46A 前面
46B 後面
50 第2端子
51 上部分
52 下部分
53 くびれ部分
52A 前面(第2面)
52B 後面
60 可撓導体
60a 端部
60b 端部
60c 頂点部
61 第1接合部
62 第2接合部
63 中間部分
63a (中間部分の)一部
64 第2接合部
70 ハウジング
71 上割体
71A 上壁
71B 前壁
71C 後壁
71D 後側上壁
72 下割体
72A 筒部
72B 前壁
72C 傾斜部
72D 下壁
72E 後壁
73 傾斜面
80 コネクタ
80A コネクタ
90 相手コネクタ
91 相手端子
92 相手ハウジング
93 相手接点
94 嵌合部
95 フランジ部
PN1 ガイド部
Ap1 開口
Ap2 開口
S1 空間
S2 空間
AR1 矢印
AR2 矢印
VL1 仮想線