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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015590
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ブレーキ装置を有するモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/26 20060101AFI20220114BHJP
   F16D 55/00 20060101ALI20220114BHJP
   H02P 3/04 20060101ALI20220114BHJP
   H02P 3/06 20060101ALI20220114BHJP
   H02K 7/106 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H02P3/26 D
F16D55/00 B
H02P3/04 B
H02P3/06 B
H02K7/106
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118527
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 総
(72)【発明者】
【氏名】水上 真一
(72)【発明者】
【氏名】長幡 東悟
【テーマコード(参考)】
3J058
5H530
5H607
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA83
3J058AA88
3J058BA62
3J058CC07
3J058CC13
3J058CC72
3J058CC76
3J058FA42
5H530AA02
5H530BB25
5H530BB33
5H530CE02
5H530DD03
5H530DD13
5H530GG07
5H607BB01
5H607BB05
5H607CC01
5H607EE08
(57)【要約】
【課題】ブレーキ装置に関する配線数が少ない構造容易で低コストのモータ駆動装置を実現する。
【解決手段】モータ駆動装置1は、入力された直流電圧を交流電圧に変換し、この交流電圧をモータ3が接続されたモータ動力線13へ出力するインバータ11と、モータ動力線13に接続され、インバータ11から所定の電圧が供給されない時はモータ3をロックし、インバータ11からモータ動力線13を介して所定の電圧が供給される時はモータ3のロックを解除するブレーキ装置12とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された直流電圧を交流電圧に変換し、前記交流電圧をモータが接続されたモータ動力線へ出力するインバータと、
前記モータ動力線に接続され、前記インバータから所定の電圧が供給されない時は前記モータをロックし、前記インバータから前記モータ動力線を介して前記所定の電圧が供給される時は前記モータのロックを解除するブレーキ装置と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、バネの弾性力にてアマチュアを前記モータのシャフトが結合した摩擦板に押し付けることで前記モータをロックし、前記インバータから出力された交流電圧が前記モータ動力線を介してブレーキコイルに印加されることで発生する電磁力にて前記摩擦板から前記アマチュアを引き離すことで前記モータのロックを解除する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記インバータは、前記バネの弾性力を上回る前記電磁力を発生させる交流電流を前記ブレーキコイルに流すための交流電圧を、前記モータ動力線へ出力する、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記インバータは、ダイオードが逆並列に接続されたスイッチング素子が高電位側の上アーム及び低電位側の下アームそれぞれに設けられるブリッジ回路を有し、
前記ブレーキ装置は、バネの弾性力にてアマチュアを前記モータのシャフトが結合した摩擦板に押し付けることで前記モータをロックし、前記モータ動力線を介して前記ブレーキ装置に接続された前記上アームの前記スイッチング素子及び前記下アームの前記スイッチング素子がオンされることで生じるモータロック解除用直流電圧がブレーキコイルに印加されることで発生する電磁力にて前記摩擦板から前記アマチュアを引き離すことで前記モータのロックを解除する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記インバータは、前記バネの弾性力を上回る前記電磁力を発生させる直流電流を前記ブレーキコイルに流すための前記モータロック解除用直流電圧を前記モータ動力線へ出力し、所定時間の経過後、前記モータを駆動するための交流電圧を前記モータ動力線へ出力する、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記モータ動力線を介して前記ブレーキコイルと前記モータとが並列接続される、請求項2~5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記モータ動力線を介して前記ブレーキコイルと前記モータとが直列接続される、請求項2~5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置を有するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや工作機械内のモータを駆動するモータ駆動装置では、摩擦板をアマチュアと端板とで挟むことで摩擦力によりモータにブレーキをかける摩擦式のブレーキ装置が設けられる。このようなブレーキ装置においては、バネの弾性力にてアマチュアをモータシャフトが結合した摩擦板に押し付けることによりモータをロックし、ブレーキコイルにブレーキコイル電圧を印加することで発生する電磁力にて摩擦板からアマチュアを引き離すことでモータのロックを解除する。
【0003】
例えば、可変速巻上機を駆動する電動機と、前記電動機に電流を供給して駆動し電動機の速度を制御するインバータと、前記インバータの出力と電動機の間に直列に挿入されたブレーキ回路であって無通電時に前記電動機をロックし通電時に電動機を開放するブレーキ回路と、を備えることを特徴とする可変速巻上機。知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、直流式無励磁作動形電磁ブレーキの同時開閉式パワーモジュールにおいて、三相全波整流回路と、カットオフ形定電圧回路を備え、この組み合わせにより三相交流の通電・遮断を高速に信号として検出する検出回路が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-97399号公報
【特許文献2】実用新案登録第3013113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、モータ駆動装置においては、モータのロックを解除するためのブレーキコイル電圧は、モータに駆動電力を供給するためのモータ動力線とは別の動力線(ブレーキ動力線)を介してブレーキ装置に供給されていた。すなわち、交流電源からモータ駆動装置に至る動力線と交流電源からブレーキ装置に至る動力線とは、別々に設けられていた。またさらに、交流電源からブレーキ装置に至る動力線には、ブレーキコイル電圧の供給の有無を制御するためのブレーキ制御部が設けられていた。このため、ブレーキ装置を有するモータ駆動装置のシステム構築に際しては、これら動力線に関する配線作業が複雑化する問題があった。例えば、一般的な多関節ロボットでは6個以上のモータを備えるが、モータごとにブレーキ装置が設けられることから動力線の数は膨大であり、配線作業はより複雑化する。したがって、ブレーキ装置に関する配線数が少ない構造容易で低コストのモータ駆動装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、モータ駆動装置は、入力された直流電圧を交流電圧に変換し、交流電圧をモータが接続されたモータ動力線へ出力するインバータと、モータ動力線に接続され、インバータから所定の電圧が供給されない時はモータをロックし、インバータからモータ動力線を介して所定の電圧が供給される時はモータのロックを解除するブレーキ装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、ブレーキ装置に関する配線数が少ない構造容易で低コストのモータ駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態)を示す図である。
図2】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態及び第2の形態)におけるブレーキ装置の構造を示す断面図であって、(A)は、モータ3をロックした状態を示し、(B)はモータ3のロックが解除された状態を示す。
図3】ブレーキコイルに流れる交流電流とコアに発生する電磁力との関係を例示する図である。
図4】ブレーキコイルに流れる交流電流の波形を例示する図である。
図5】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態)においてブレーキコイルに直流のブレーキコイル電圧を印加するためのインバータのスイッチング素子オンオフ駆動を例示する図である。
図6】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態及び第2の形態)においてブレーキコイルに直流のブレーキコイル電圧を印加する場合における動作フローを示すフローチャートである。
図7】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第2の形態)を示す図である。
図8】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第2の形態)においてブレーキコイルに直流のブレーキコイル電圧を印加するためのインバータのスイッチング素子オンオフ駆動を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、ブレーキ装置を有するモータ駆動装置について説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態)を示す図である。なお、詳細については後述するが、ブレーキ装置12は、モータ動力線13を介してモータ3に並列又は直列に接続される。ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に並列に接続される形態を第1の形態と称し、ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に直列に接続される形態を第2の形態と称する。第1の形態と第2の形態とは、ブレーキ装置12がモータ動力線13を介して、モータ3に並列に接続されるかモータ3に直列に接続されるかの点で相違する。
【0012】
一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1により、モータ3を制御する場合について示す。本実施形態においては、モータ3の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。また、交流電源2及びモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、交流電源2及びモータ3をそれぞれ三相としている。交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。モータ3が設けられる機械には、例えばロボットや工作機械などがある。
【0013】
図1に示すように、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1は、インバータ11と、ブレーキ装置12と、モータ動力線13と、コンバータ14と、コンデンサ15と、制御部16とを備える。
【0014】
コンバータ14は、交流電源2から入力された交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧をコンバータ14の直流出力側であるDCリンクへ出力する。DCリンクとは、コンバータ14の直流出力側とインバータ11の直流入力側とを電気的に接続する回路部分のことを指し、「DCリンク部」、「直流リンク」、「直流リンク部」または「直流中間回路」などとも称されることもある。コンバータ14は、交流電源2が三相交流電源である場合は三相ブリッジ回路で構成され、交流電源2が単相交流電源である場合は単相ブリッジ回路で構成される。図1に示す例では、交流電源2を三相交流電源としたので、コンバータ14は三相ブリッジ回路で構成される。コンバータ14の例としては、ダイオード整流器、120度通電方式整流器、及びPWMスイッチング制御方式整流器などがある。例えば、コンバータ14がダイオード整流器で構成される場合は、ダイオードのブリッジ回路からなる。例えば、コンバータ14が120度通電方式整流器及びPWMスイッチング制御方式整流器で構成される場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、制御部16から受信したスイッチング指令に応じて各スイッチング素子がオンオフ駆動されて交直双方向に電力変換を行う。この場合、スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、その他の半導体素子であってもよい。
【0015】
コンデンサ15は、コンバータ14の直流出力側であるDCリンクに設けられる。コンデンサ15は、「DCリンクコンデンサ」または「平滑コンデンサ」とも称されることがある。コンデンサ15は、コンバータ14の直流出力の脈動分を抑える機能及びインバータ11が交流電力を生成するために用いられる直流電力を蓄積する機能を有する。コンデンサ15の例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
【0016】
インバータ11は、コンバータ14の直流出力側にコンデンサ15を介して接続される。インバータ11は、ダイオードが逆並列に接続されたスイッチング素子が高電位側の上アーム及び低電位側の下アームそれぞれに設けられるブリッジ回路を有する。スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがあるが、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。インバータ11は、モータ3が三相交流モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、モータ3が単相交流モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。図1に示す例では、モータ3を三相交流モータとしたので、インバータ11は三相ブリッジ回路で構成される。インバータ11は、制御部16からのPWM制御方式に基づくスイッチング指令を受けてスイッチング素子をオンオフ駆動させることで、直流入力側であるDCリンクから入力された直流電圧を交流電圧に変換し、この交流電圧を交流出力側にあるモータ動力線13へ出力する。また、詳細については後述するが、インバータ11は、制御部16の制御により、モータロック解除用直流電圧をモータ動力線13へ出力することも可能である。
【0017】
制御部16は、インバータ11内のスイッチング素子のオンオフ駆動を制御するためのスイッチング指令を生成する。また、コンバータ14が120度通電方式整流器及びPWMスイッチング制御方式整流器で構成される場合は、制御部16は、コンバータ14内のスイッチング素子のオンオフ駆動を制御するためのスイッチング指令も生成する。制御部16は、アナログ回路と演算処理装置との組み合わせで構成されてもよく、あるいは演算処理装置のみで構成されてもよく、あるいはアナログ回路のみで構成されてもよい。制御部16を構成し得る演算処理装置には、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。例えば、制御部16をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、制御部16の機能を実現することができる。またあるいは、制御部16の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路または記憶媒体を構築してもよい。またあるいは、また、制御部16は、例えば、ロボットを制御するロボットコントローラ内に設けられてもよく、工作機械の数値制御装置内に設けられてもよい。
【0018】
インバータ11とモータ3とはモータ動力線13を介して接続される。インバータ11から出力された電圧は、モータ動力線13を介してモータ3の入力端子に印加される。これにより、モータ3には、インバータ11からモータ動力線13を介して交流の駆動電流が供給される。モータ3は、供給された交流の駆動電流によって回転駆動される。
【0019】
ブレーキ装置12は、モータ動力線13に接続される。特に、第1の形態では、ブレーキ装置12内のブレーキコイル及びその抵抗成分とモータ3のモータコイル及びその抵抗成分とが並列になるように、ブレーキ装置12とモータ3とがモータ動力線13を介して並列に接続される。インバータ11とブレーキ装置12との間は、モータ動力線13以外の回路構成要素は設けられない。図1に示す例では、モータ3を三相交流モータとしたので、モータ動力線13は3相分設けられるが、ブレーキ装置12の入力端子は、モータ動力線13の3相のうちのいずれか2相分に接続される。モータ3が単相交流モータである場合は、ブレーキ装置12の入力端子は、モータ動力線13の2相のそれぞれに接続される。なお、ブレーキ装置12内のブレーキコイルのインダクタンス成分及びその抵抗成分、並びにモータ3のモータコイルのインダクタンス成分及びその抵抗成分は、比較的小さい値である。
【0020】
ブレーキ装置12においてモータ3のロックを解除するためにブレーキコイルに印加するブレーキコイル電圧は、インバータ11からモータ動力線13を介して供給される。ブレーキ装置12は、ブレーキ装置12は、インバータ11からモータ動力線13を介して所定の電圧すなわちブレーキコイル電圧が供給されない時はモータ3をロックしてブレーキをかけ、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキコイル電圧が供給される時はモータのロックを解除してブレーキを解除する。
【0021】
図2は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態及び第2の形態)におけるブレーキ装置の構造を示す断面図であって、(A)は、モータ3をロックした状態を示し、(B)はモータ3のロックが解除された状態を示す。図2に示すブレーキ装置は、後述する第2の形態にも適用可能である。
【0022】
ブレーキ装置12において、アマチュア112と端板113との間には摩擦板111が配置される。摩擦板111にはハブ122がスプライン結合され、さらにハブ122とモータ3のシャフト121とは焼き嵌めにより一体化されているので、モータ3のシャフト121の回転に連動して摩擦板111も回転する。端板113とスペーサ117とはボルト118によって結合され、アマチュア112が摩擦板111に近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能となるようにスペーサ117に結合される。コア116内にはバネ114及びブレーキコイル115が設けられる。図2(A)に示すように、インバータ11からのブレーキコイル電圧がモータ動力線13を介してブレーキコイル115に印加されていない状態においては、アマチュア112はバネ114の弾性力により摩擦板111に強く押し付けられ、摩擦板111がアマチュア112と端板113とで挟まれて回転できない。この結果、摩擦板111に結合されたシャフト121も回転できなくなり、モータ3がロックされた状態すなわちモータ3にブレーキがかかった状態となる。一方、図2(B)に示すように、インバータ11からのブレーキコイル電圧がモータ動力線13を介してブレーキコイル115に印加された状態においては、アマチュア112を摩擦板111に押し付けていたバネ114の弾性力に打ち勝つ電磁力がコア116に発生し、これによりアマチュア112がコア116に引きつけられて摩擦板111はアマチュア112及び端板113との接触から解放される。この結果、摩擦板111ひいてはシャフト121は自由に回転できるようになり、モータ3のロックが解除された状態すなわちモータ3のブレーキが解除された状態となる。
【0023】
上述したように、インバータ11は、直流入力側であるDCリンクから入力された直流電圧を交流電圧に変換し、この交流電圧を交流出力側に接続されたモータ動力線13へ出力する。インバータ11には、モータ動力線13を介してモータ3及びブレーキ装置12が接続される。インバータ11からモータ動力線13を介してモータ3に供給される交流電圧は、モータ3の駆動電圧として利用される。一方、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12に供給される電圧は、ブレーキ装置12においてモータ3のロックを解除するためにブレーキコイルに印加されるブレーキコイル電圧として利用される。
【0024】
ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に並列に接続される第1の形態によるモータ駆動装置1において、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧は、交流電圧または直流電圧のいずれであってもよい。以下、ブレーキコイル電圧が交流電圧である例と直流電圧である例について分けて説明する。
【0025】
まず、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧が交流電圧である例について説明する。
【0026】
インバータ11にはモータ動力線13を介してモータ3及びブレーキ装置12の両方が接続されているので、インバータ11からモータ動力線13に出力された交流電圧は、モータ3の駆動電圧及びブレーキ装置12によるモータ3のロックの解除(ブレーキの解除)のためのブレーキコイル電圧として利用される。すなわち、モータ3のロックが解除した状態でモータ3が駆動される際には、インバータ11から出力される交流電圧により、モータ3及びブレーキ装置12の各入力インピーダンスに応じた大きさの交流電流が、モータ動力線13を介してモータ3及びブレーキ装置12のそれぞれに流れることになる。
【0027】
モータ3のロックを解除(モータ3のブレーキを解除)するために、インバータ11は、バネ114の弾性力を上回る電磁力をコア116に発生させる交流電流をブレーキコイル115に流すための交流電圧を、ブレーキコイル電圧としてモータ動力線13へ出力する必要がある。インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキコイル電圧が供給されない時はブレーキ装置12内のアマチュア112とコア116との間には空乏があり、この空乏から磁束が漏れる。このため、ブレーキ装置12へブレーキコイル電圧を供給してアマチュア112とコア116とを接触させ摩擦板111がアマチュア112及び端板113との接触から解放されることによりモータ3のロックが解除されるためには、ブレーキコイル115に大きな交流電流を流すためのブレーキコイル電圧が必要がある。ただし、アマチュア112とコア116とが一旦接触すると、アマチュア112とコア116との間の空乏がなくなりアマチュア112とコア116とで一体化した磁性体が構成されるので、磁束漏れはほぼなくなる。したがって、アマチュア112とコア116とが接触した後は、アマチュア112とコア116とを最初に接触させるためにブレーキコイル115に流した交流電流の大きさよりも小さい交流電流がブレーキコイル115に流れても、アマチュア112とコア116との接触を維持することができる(すなわちモータ3のロックの解除を維持することができる)。
【0028】
交流電圧及び交流電流は、時間とともに周期的に大きさ及び正負が変化する。ここで、ブレーキコイル115に流れる交流電流によるモータ3のロックの解除の維持について、図3及び図4を参照してより詳細に説明する。
【0029】
図3は、ブレーキコイルに流れる交流電流とコアに発生する電磁力との関係を例示する図である。図3において、横軸はブレーキコイル115に流れる交流電流Iを示し、縦軸はコア116に発生する電磁力Fを示す。ブレーキコイル115に流れる交流電流Iとコア116に発生する電磁力Fとの関係は、図3に示すようなヒステリシス曲線で表される。バネ114の弾性力をFbで示す。コア116に発生する電磁力がバネ114の弾性力Fbを上回ればモータ3のロックを解除(モータ3のブレーキを解除)できることから、Fbは、モータ3のロックの解除に必要な力の大きさと言い換えることができる。
【0030】
図3に示すように、ブレーキコイル115に流れる交流電流が0から増加してIaになるまでは、コア116に発生する電磁力は、バネ114の弾性力(換言すればモータ3のロックの解除に必要な力)Fbよりも小さく、モータ3はロックされた状態を維持する。ブレーキコイル115に流れる交流電流がさらに増加してIaになると、ブレーキコイル115に発生する電磁力はFbに達し、モータ3のロックは解除される。ヒステリシスが存在するので、ブレーキコイル115に流れる交流電流が、Iaをさらに超えて最大値まで増加しその後減少に転じてIaより小さいIbになるまでの間は、コア116に発生する電磁力はFbよりも大きく、モータ3のロックの解除は維持される。ブレーキコイル115に流れる交流電流がさらに減少してIbになると、コア116に発生する電磁力はFbを下回るが、コア116に発生する電磁力は残存磁束により即座には消えず、ある程度の期間は保持される。本明細書では、バネ114の弾性力を上回る残存磁束に基づく電磁力をコア116が保持することができる最大時間を、「電磁力保持時間tb」と定義する。ブレーキコイル115に流れる交流電流がさらに減少して-Iaになると、コア116に発生する電磁力は-Fbに達する。したがって、ブレーキコイル115に流れる交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの間においても、コア116に発生している残存磁束に基づく電磁力がバネ114の弾性力を上回るようにすれば、モータ3のロックの解除を維持することができる。
【0031】
ブレーキコイル115に流れる交流電流が、-Iaをさらに下回り最小値まで減少しその後増加に転じて-Iaより大きい-Ibになるまでの間は、コア116に発生する電磁力はFbよりも大きく、モータ3のロックの解除は維持される。ブレーキコイル115に流れる交流電流がさらに増加して-Ibになると、コア116に発生する電磁力は-Fbを上回るが、コア116に発生する電磁力は残存磁束により即座には消えず、少なくとも電磁力保持時間tbの間は保持される。ブレーキコイル115に流れる交流電流がさらに増加してIaになると、コア116に発生する電磁力はFbに達する。したがって、ブレーキコイル115に流れる交流電流が-IbからIaまで増加するまでの時間tsの間においても、コア116に発生している残存磁束に基づく電磁力がバネ114の弾性力を上回るようにすれば、モータ3のロックの解除を維持することができる。
【0032】
図4は、ブレーキコイルに流れる交流電流の波形を例示する図である。図4に示すように、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキコイル115に供給される交流電流は、時間とともに周期的に大きさ及び正負が変化する。図3を参照して説明したように、ブレーキコイル115に流れる交流電流がIaを超えて最大値まで増加しその後減少に転じてIbになるまでの間及び-Iaを下回り最小値まで減少しその後増加に転じて-Ibになるまでの間は、コア116に発生する電磁力の絶対値はバネ114の弾性力(換言すればモータ3のロックの解除に必要な力)の絶対値よりも大きいので、モータ3のロックの解除は確実に維持される。したがって、これ以外の期間、すなわちブレーキコイル115に流れる交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの間及び-IbからIaまで増加するまでの時間tsの間においても、残存磁束によりコア116に保持されている電磁力の絶対値がバネ114の弾性力の絶対値よりも大きくなるようにすれば、ブレーキコイル115に流れる交流電流の全ての周期にわたって、モータ3のロックの解除を維持し続けることができる。換言すれば、ブレーキコイル115に流れる交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの長さ、及び-IbからIaまで増加するまでの時間tsの長さのそれぞれが、バネ114の弾性力を上回る残存磁束に基づく電磁力をコア116が保持することができる最大時間である電磁力保持時間tbを超えないようにすれば、ブレーキコイル115に流れる交流電流の全ての周期にわたって、モータ3のロックの解除を維持し続けることができる。
【0033】
全ての周期にわたってモータ3のロックの解除を維持し続けることができるブレーキコイル115に流す交流電流がどのようなものであるかについては、図3に示すようなヒステリシス曲線とモータ3のロックの解除に必要な力Fbとに基づいて、事前に求めることができる。例えば、実験によりモータ駆動装置1内のブレーキ装置12を動作させてヒステリシス曲線を測定したり、あるいは、コア116の規格表に規定されているヒステリシス曲線を用いたり、コア116の製造業者からデータとして提供されるヒステリシス曲線を用いてもよい。モータ3のロックの解除に必要な力Fbは、バネ114の弾性力であるので、バネ114のバネ定数kとモータ3のロック解除時におけるバネ114の縮み長さxとから事前に求めることができる。ヒステリシス曲線及びモータ3のロックの解除に必要な力Fbが定まれば、Ia及びIbも定まる。
【0034】
上述したように、モータ3のロックが解除した状態でモータ3が駆動される際には、インバータ11から出力される交流電圧により、モータ3及びブレーキ装置12の各入力インピーダンスに応じた大きさの交流電流が、モータ動力線13を介してモータ3及びブレーキ装置12のそれぞれに流れることになる。例えば、実験によりモータ駆動装置1を動作させてブレーキ装置12のブレーキコイル115に流れる交流電流を測定してヒステリシス曲線を求め、このヒステリシス曲線とモータ3のロックの解除に必要な力FbとからIa及びIbを求める。「ブレーキコイル115に流れる交流電流が、コア116に発生する電磁力がバネ114の弾性力を上回るIaを超える振幅を有するものであること(第1の要件)」、「当該交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの長さが電磁力保持時間tbを超えないものであること(第2の要件)」、「-IbからIaまで増加するまでの時間tsの長さが電磁力保持時間tbを超えないものであること(第3の要件)」の3つの要件を満たす場合は、当該交流電流の全ての周期にわたってモータ3のロックの解除を維持し続けることができるので、当該交流電流をブレーキ装置12によるモータ3のロックの解除のための電流として利用することができる。
【0035】
一方、実験で測定したブレーキコイル115に流れる交流電流が、第1の要件、第2の要件及び第3の要件のいずれかを満たさないものであった場合は、全ての要件を満たすようにブレーキコイル115に流れる交流電流を調整したり、ブレーキ装置12内のバネ114やコア116を選定したりすることで、第1の要件、第2の要件及び第3の要件の全てを満たすようにすればよい。いくつか具体例を挙げると次の通りである。
【0036】
例えば、ブレーキコイル115に流れる交流電流の周波数を高くすれば、当該交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの長さ及び-IbからIaまで増加するまでの時間tsの長さが短くなるので、第2の要件及び第3の要件を満たし易くなる。
【0037】
例えば、ブレーキ装置12内のバネ114として、バネ定数kが小さいバネやモータ3のロック解除時におけるバネ114の縮み長さxが短いバネを選定すればFbが小さくなるので、Ia及びIbが小さくなり、第1の要件を満たし易くなる。また、Ia及びIbが小さくなることで、ブレーキコイル115に流れる交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの長さ及び-IbからIaまで増加するまでの時間tsの長さが短くなるので、第2の要件及び第3の要件も満たし易くなる。
【0038】
例えば、ブレーキ装置12内のコア116として、電磁力保持時間tbが長い磁性体からなるコアを選定すれば、第2の要件及び第3の要件を満たし易くなる。電磁力保持時間tbが長い磁性体としては、例えば、鉄、コバルト及びニッケルなどの強磁性体、並びに、ネオジウム及びフェライトなどの永久磁石などがある。
【0039】
例えば、ブレーキ装置12内のコア116として、ブレーキコイル115に流れる交流電流Iとコア116に発生する電磁力Fとの関係におけるヒステリシス幅が大きい磁性体からなるコアを選定することでIbを小さくすれば、ブレーキコイル115に流れる交流電流がIbから-Iaまで減少するまでの時間tsの長さ及び-IbからIaまで増加するまでの時間tsの長さが短くなるので、第2の要件及び第3の要件を満たし易くなる。ヒステリシス幅が大きい磁性体としては、例えば、鉄、コバルト及びニッケルなどの強磁性体、並びに、ネオジウム及びフェライトなどの永久磁石などがある。
【0040】
また、モータ3のロックが解除した状態でモータ3が駆動される際には、インバータ11から出力される交流電圧により、モータ3及びブレーキ装置12の各入力インピーダンスに応じた大きさの交流電流が、モータ動力線13を介してモータ3及びブレーキ装置12のそれぞれに流れる。よって、第1の要件、第2の要件及び第3の要件を満たすようにモータ3及びブレーキ装置12の各入力インピーダンスを調整することもできる。
【0041】
続いて、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧が直流電圧である例について説明する。
【0042】
図5は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態)においてブレーキコイルに直流のブレーキコイル電圧を印加するためのインバータのスイッチング素子オンオフ駆動を例示する図である。図5において、交流電源2及びコンバータ14の図示は省略している。
【0043】
インバータ11の上アーム及び下アームに設けられたスイッチング素子のオンオフ駆動を適切に制御することによって、バネ114の弾性力を上回る電磁力をコア116に発生させる直流電流をブレーキコイル115に流すための直流電圧である「モータロック解除用直流電圧」を、インバータ11からモータ動力線13へ出力させることができる。
【0044】
インバータ11からモータ動力線13へ出力されるモータロック解除用直流電圧は、モータ動力線13に接続されたモータ3のモータコイル及びブレーキ装置12のブレーキコイル115の両方に印加されるが、モータ3は交流モータであるので、モータロック解除用直流電圧によってはモータ3は回転しない。一方、ブレーキ装置12においては、バネ114の弾性力を上回る電磁力をコア116に発生させるモータロック解除用直流電圧がブレーキコイル115に印加されると、アマチュア112を摩擦板111に押し付けていたバネ114の弾性力に打ち勝つ電磁力がコア116に発生し、これによりアマチュア112がコア116に引きつけられて摩擦板111はアマチュア112及び端板113との接触から解放される。この結果、摩擦板111ひいてはシャフト121は自由に回転できるようになり、モータ3のロックが解除された状態すなわちモータ3のブレーキが解除された状態となる。アマチュア112とコア116とが一旦接触すると、アマチュア112とコア116との間の空乏がなくなりアマチュア112とコア116とで一体化した磁性体が構成されるので、モータロック解除用直流電圧に代えて、モータ3を駆動するための交流電圧をブレーキコイル115に印加しても、アマチュア112とコア116との接触を維持することができる(すなわちモータ3のロックの解除を維持することができる)。なお、モータ3を駆動するための交流電圧をブレーキコイル115に印加している間においてモータ3のロックの解除を維持し続けることができるようにするために、図3及び図4を参照して説明した第1の要件、第2の要件及び第3の要件の全てを満たすことが好ましい。インバータ11から出力されたモータロック解除用直流電圧をブレーキコイル115に印加することによりアマチュア112とコア116とが最初に接触してから所定時間の経過後、制御部16の制御により、インバータ11からモータ動力線13へ出力される電圧を、モータロック解除用直流電圧からモータ3を駆動するための交流電圧へ切り替える。
【0045】
制御部16は、インバータ11からモータロック解除用直流電圧が出力され始めたタイミングから上記「所定時間」の計測を開始する。モータロック解除用直流電圧がブレーキコイル115に印加されると、すぐにアマチュア112とコア116とが接触する。上記「所定時間」は、モータロック解除用直流電圧がブレーキコイル115に印加されることによるアマチュア112とコア116との最初の接触が確保できる程度の長さに設定すればよく、例えば数ミリ秒から数秒に設定される。上記「所定時間」は、制御部16を構築するソフトウェアプログラム上に規定しておく。あるいは、上記「所定時間」の値を例えば制御部16内の記憶部(図示せず)に記憶しておき、制御部16この記憶された「所定時間」を読み込ませて計時を行わせてもよい。記憶部は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成される。なお、書き換え可能なメモリで記憶部を実現すれば、一旦「所定時間」を設定した後であっても、必要に応じて適切な値に変更することができる。
【0046】
モータロック解除用直流電圧は、制御部16の制御により、モータ動力線13を介してブレーキ装置12に接続されたインバータ11内の上アームのスイッチング素子及び下アームのスイッチング素子をオンさせるとともに、これら以外のスイッチング素子は全てオフさせることで、インバータ11から出力させることができる。図5に示す例では、ブレーキ装置12のブレーキコイル115はv相及びw相に接続されているので、制御部16の制御により、例えば、v相の上アームのスイッチング素子Sv1及びw相の下アームのスイッチング素子Sw2をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Su2、Sv2、及びSw1をオフさせることで、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させることができる。あるいは、ここでは図示していないが、制御部16の制御により、v相の下アームのスイッチング素子Sv2及びw相の上アームのスイッチング素子Sw1をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Su2、Sv1、及びSw2をオフさせることによっても、インバータ11から同様のモータロック解除用直流電圧を出力させることができる。
【0047】
図5では、ブレーキ装置12のブレーキコイル115はv相及びw相に接続される例を示した。ここでは図示しないが、ブレーキ装置12のブレーキコイル115がu相及びv相に接続される場合は、制御部16の制御により、u相の上アームのスイッチング素子Su1及びv相の下アームのスイッチング素子Sv2をオンさせるとともにスイッチング素子Su2、Sv1、Sw1、及びSw2をオフさせるか、あるいは、u相の下アームのスイッチング素子Su2及びv相の上アームのスイッチング素子Sv1をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Sv2、Sw1、及びSw2をオフさせることによって、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させる。
【0048】
また、ブレーキ装置12のブレーキコイル115がu相及びw相に接続される場合は、制御部16の制御により、u相の上アームのスイッチング素子Su1及びw相の下アームのスイッチング素子Sw2をオンさせるとともにスイッチング素子Su2、Sv1、Sv2、及びSw1をオフさせるか、あるいは、u相の下アームのスイッチング素子Su2及びw相の上アームのスイッチング素子Sw1をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Sv1、Sv2、及びSw2をオフさせることによって、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させる。
【0049】
また、モータ3が単相交流モータである場合は、ブレーキ装置12の入力端子は、モータ動力線13の2相それぞれに接続される。したがって、制御部16の制御により、一方の相の上アームのスイッチングをオンさせるとともにもう一方の相のスイッチングオフさせることによって、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させる。
【0050】
図6は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第1の形態及び第2の形態)においてブレーキコイルに直流のブレーキコイル電圧を印加する場合における動作フローを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、後述する第2の形態にも適用可能である。
【0051】
ステップS101において、インバータ11からのブレーキコイル電圧はブレーキコイル115に印加されておらず、したがって、アマチュア112はバネ114の弾性力により摩擦板111に強く押し付けられて摩擦板111がアマチュア112と端板113とで挟まれて回転できず、摩擦板111に結合されたシャフト121を有するモータ3はロックされた状態にある。
【0052】
ステップS102において、制御部16は、上位制御装置(図示せず)からモータ3のロックを解除するためのロック解除指令を受信したか否かを判定する。上位制御装置は、ロボットを制御するロボットコントローラ内に設けられてもよく、工作機械の数値制御装置内に設けられてもよい。ステップS102においてロック解除指令を受信したと判定されると、ステップS103へ進む。
【0053】
ステップS103において、インバータ11は、制御部16の制御により、ブレーキコイル電圧として、ブレーキ装置12内のバネ114の弾性力を上回る電磁力をコア116発生させる直流電流をブレーキコイル115に流すためのモータロック解除用直流電圧を、モータ動力線13へ出力する。
【0054】
ステップS104では、ブレーキ装置12のブレーキコイル115にブレーキコイル電圧であるモータロック解除用直流電圧が印加されることで、アマチュア112を摩擦板111に押し付けていたバネ114の弾性力に打ち勝つ電磁力がコア116に発生し、これによりアマチュア112がコア116に引きつけられて摩擦板111はアマチュア112及び端板113との接触から解放される。この結果、摩擦板111ひいてはシャフト121は自由に回転できるようになり、モータ3のロックが解除された状態すなわちモータ3のブレーキが解除された状態となる。
【0055】
ステップS105では、制御部16は、ステップS103においてインバータ11からモータロック解除用直流電圧が出力され始めたタイミングから所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS105において所定時間が経過したと判定された場合はステップS106へ進む。
【0056】
ステップS106では、インバータ11は、制御部16の制御により、モータ3を駆動するための交流電圧をモータ動力線13へ出力する。これにより、モータ3は回転駆動される。
【0057】
ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に並列に接続される第1の形態によるモータ駆動装置1の構成及び動作は以上説明した通りである。続いて、ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に直列に接続される第2の形態によるモータ駆動装置1について説明する。
【0058】
図7は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第2の形態)を示す図である。
【0059】
第2の形態では、ブレーキ装置12内のブレーキコイル115及びその抵抗成分とモータ3のモータコイル及びその抵抗成分とが直列になるように、ブレーキ装置12とモータ3とがモータ動力線13を介して直列に接続される。図7に示すようにモータ3が三相交流モータである場合、モータコイルの両端のうち、モータ動力線13が接続される一端とは反対側の一端は中性点が接続される。図7に示すように、モータ3の中性点と、1相分のモータコイルのモータ動力線13が接続される一端とは反対側の一端と、の間に、ブレーキ装置12のブレーキコイル115及びその抵抗成分が挿入されるように、ブレーキ装置12の入力端子とモータ3のモータコイルとが接続される。なお、ここでは図示しないが、モータ3が単相交流モータである場合、モータコイルの両端のうち、2相分のモータコイルについてモータ動力線13が接続される一端とは反対側の一端のそれぞれに、ブレーキ装置12の入力端子が接続される。ブレーキ装置12内の構成については図1を参照して説明した通りである。また、ブレーキ装置12以外の回路構成要素については図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0060】
ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に直列に接続される第2の形態によるモータ駆動装置1においても、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧は、交流電圧または直流電圧のいずれであってもよい。
【0061】
第2の形態において、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧が交流電圧である場合は、図3及び図4を参照して説明した第1の形態におけるインバータ11の動作と同様であるので、説明は省略する。
【0062】
図8は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置(第2の形態)においてブレーキコイルに直流のブレーキコイル電圧を印加するためのインバータのスイッチング素子オンオフ駆動を例示する図である。図8において、交流電源2及びコンバータ14の図示は省略している。
【0063】
第2の形態において、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧がモータロック解除用直流電圧である場合も、第1の形態と同様に、インバータ11の上アーム及び下アームに設けられたスイッチング素子のオンオフ駆動を適切に制御することによって、バネ114の弾性力を上回る電磁力をコア116に発生させる直流電流をブレーキコイル115に流すためのモータロック解除用直流電圧を、インバータ11からモータ動力線13へ出力させることができる。
【0064】
モータロック解除用直流電圧は、制御部16の制御により、モータ動力線13を介してブレーキ装置12に接続されたインバータ11内の上アームのスイッチング素子及び下アームのスイッチング素子をオンさせるとともに、これら以外のスイッチング素子は全てオフさせることで、インバータ11から出力させることができる。図8に示す例では、ブレーキ装置12のブレーキコイル115はモータコイルを介してv相及びw相に接続されているので、制御部16の制御により、例えば、v相の上アームのスイッチング素子Sv1及びw相の下アームのスイッチング素子Sw2をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Su2、Sv2、及びSw1をオフさせることで、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させることができる。あるいは、ここでは図示していないが、制御部16の制御により、v相の下アームのスイッチング素子Sv2及びw相の上アームのスイッチング素子Sw1をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Su2、Sv1、及びSw2をオフさせることによっても、インバータ11から同様のモータロック解除用直流電圧を出力させることができる。
【0065】
図8では、ブレーキ装置12のブレーキコイル115はモータコイルを介してv相及びw相に接続される例を示した。ここでは図示しないが、ブレーキ装置12のブレーキコイル115がモータコイルを介してu相及びv相に接続される場合は、制御部16の制御により、u相の上アームのスイッチング素子Su1及びv相の下アームのスイッチング素子Sv2をオンさせるとともにスイッチング素子Su2、Sv1、Sw1、及びSw2をオフさせるか、あるいは、u相の下アームのスイッチング素子Su2及びv相の上アームのスイッチング素子Sv1をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Sv2、Sw1、及びSw2をオフさせることによって、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させる。
【0066】
また、ブレーキ装置12のブレーキコイル115がモータコイルを介してu相及びw相に接続される場合は、制御部16の制御により、u相の上アームのスイッチング素子Su1及びw相の下アームのスイッチング素子Sw2をオンさせるとともにスイッチング素子Su2、Sv1、Sv2、及びSw1をオフさせるか、あるいは、u相の下アームのスイッチング素子Su2及びw相の上アームのスイッチング素子Sw1をオンさせるとともにスイッチング素子Su1、Sv1、Sv2、及びSw2をオフさせることによって、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させる。
【0067】
また、モータ3が単相交流モータである場合は、モータコイルの両端のうち、2相分のモータコイルについてモータ動力線13が接続される一端とは反対側の一端のそれぞれに、ブレーキ装置12の入力端子が接続される。したがって、制御部16の制御により、一方の相の上アームのスイッチングをオンさせるとともにもう一方の相のスイッチングオフさせることによって、インバータ11からモータロック解除用直流電圧を出力させる。
【0068】
ブレーキ装置12がモータ動力線13を介してモータ3に直列に接続される第2の形態によるモータ駆動装置1において、インバータ11からモータ動力線13を介してブレーキ装置12にブレーキコイル電圧として供給される電圧がモータロック解除用直流電圧である場合の動作フローは、図6に示した通りである。
【0069】
以上説明したように、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1によれば、インバータ11とモータ3とを接続するモータ動力線13にブレーキ装置12を接続し、インバータ11のスイッチング素子のオンオフ駆動を適切に制御することにより、ブレーキ装置12によるモータ3のロック及びロック解除を行うことができる。本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1では、従来のようにブレーキ用電源を設ける必要がないので、ブレーキ装置に関する配線数が少なく、構造容易で低コストである。また、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1では、従来のように独立したブレーキ用制御部を設ける必要はなく、インバータ11を制御する制御部16の動作によってブレーキ装置12によるモータ3のロック及びロック解除を行うことができるので、配線数が少なく、構造容易で低コストである。
【符号の説明】
【0070】
1 モータ駆動装置
2 交流電源
3 モータ
11 インバータ
12 ブレーキ装置
13 モータ動力線
14 コンバータ
15 コンデンサ
16 制御部
111 摩擦板
112 アマチュア
113 端板
114 バネ
115 ブレーキコイル
116 コア
117 スペーサ
118 ボルト
121 シャフト
122 ハブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8