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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155904
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】移動機構および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/06 20060101AFI20221006BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221006BHJP
   B41J 11/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41J11/06
B41J2/01 129
B41J2/01 305
B41J11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059347
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭博
(72)【発明者】
【氏名】武田 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】秋松 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西本 隆弘
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA21
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA37
2C056HA44
2C058AB07
2C058AC07
2C058AE02
2C058AE07
2C058AF31
2C058DA11
2C058DA20
2C058DC04
2C058DC09
2C058DC20
(57)【要約】
【課題】テーブルの移動にかかる負荷を軽減することができる移動機構および印刷装置を提供する。
【解決手段】右リンク部材と左リンク部材102は長尺部材をX状に連結し、上下に伸縮する。下フレーム部材103と上フレーム部材104は後端部の支持穴で、右リンク部材と左リンク部材102の後端部が保持する支持軸を回転可能に支持する。下フレーム部材103と上フレーム部材104は前端部の案内穴で、右リンク部材と左リンク部材102の前端部が保持する案内軸を前後方向に移動可能かつ回転可能に支持する。上フレーム部材104の後端部に設けられた係合部225は、駆動機構105の台形ネジ290に噛合する。駆動機構105は、下フレーム部材103に連結する。駆動モータ300の駆動により台形ネジ290が回転すると、上フレーム部材104が下フレーム部材103に対して昇降する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルを第一方向に移動可能な移動機構であって、
2つの長尺部材が互いに回動可能にX状に連結され、前記第一方向に伸縮可能な第一リンク部材と、
2つの長尺部材が互いに回動可能にX状に連結され、前記第一方向に伸縮可能であり、かつ前記第一方向に交差する第二方向において前記第一リンク部材に対向して配置される第二リンク部材と、
前記第一方向の一方側における前記第一リンク部材および前記第二リンク部材の一端側に配置され、前記第一リンク部材および前記第二リンク部材をそれぞれ支持する第一フレーム部材と、
前記第一方向の他方側において前記第一リンク部材および前記第二リンク部材の他端側に配置され、かつ前記第一方向の他方側に前記テーブルが配置される第二フレーム部材と、
ねじ山が形成された棒状の部材であって、前記第二フレーム部材に設けられる係合部に係合し、回転することによって、前記第二フレーム部材および前記テーブルを前記第一方向に移動する回転部材と
を備え、
前記第一フレーム部材は、
前記第一方向および前記第二方向に交差する第三方向の一方側に設けられ、前記第一リンク部材の一方の長尺部材の一方の端部と、前記第二リンク部材の一方の長尺部材の一方の端部とのそれぞれを回動可能に支持する第一支持部と、
前記第三方向の他方側に設けられ、前記第一リンク部材の他方の長尺部材の一方の端部と、前記第二リンク部材の他方の長尺部材の一方の端部とのそれぞれを前記第三方向に移動可能に案内する第一案内部と
を有し、
前記第二フレーム部材は、
前記第三方向の一方側に設けられ、前記第一リンク部材の前記他方の長尺部材の他方の端部と、前記第二リンク部材の前記他方の長尺部材の他方の端部とのそれぞれを回動可能に支持する第二支持部と、
前記第三方向の他方側に設けられ、前記第一リンク部材の前記一方の長尺部材の他方の端部と、前記第二リンク部材の前記一方の長尺部材の他方の端部とのそれぞれを前記第三方向に移動可能に案内する第二案内部と
を有すること
を特徴とする移動機構。
【請求項2】
前記第一リンク部材と前記第二リンク部材とがそれぞれ有する前記長尺部材は、延伸方向の中央部から両側の端部に向けて、それぞれ、幅方向において先細りする形状であることを特徴とする請求項1に記載の移動機構。
【請求項3】
前記係合部は、前記第三方向において前記第二フレーム部材の一方側に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の移動機構。
【請求項4】
前記第一方向に延びる延伸部材と、
前記第二フレーム部材の前記第三方向の一方側に設けられ、前記延伸部材を保持しつつ前記延伸部材の前記第一方向への相対的な移動を案内する案内部材と
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の移動機構。
【請求項5】
前記第一フレーム部材の前記第三方向の一方側にて前記第一フレーム部材に接続され、前記第二方向および前記第三方向に延びる板状であり、かつ前記第一方向の一方側における前記延伸部材の一端部を保持する第一板部材と、
前記第二フレーム部材の前記第三方向の一方側にて前記第二フレーム部材に接続され、前記第一方向および前記第二方向に延びる板状であり、かつ前記第一方向の他方側の部位が前記第三方向の一方側に屈曲する屈曲部を有し、前記屈曲部において前記第一方向の他方側における前記延伸部材の他端部を保持する第二板部材と、
屈曲する板状であり、前記第一板部材と前記第二板部材とを連結する第三板部材と
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の移動機構。
【請求項6】
前記第一板部材は、前記回転部材を回転可能に支持する軸受部を有することを特徴とする請求項5に記載の移動機構。
【請求項7】
前記第一板部材に設けられ、前記回転部材に駆動力を付与して前記回転部材を回転させる駆動部を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の移動機構。
【請求項8】
前記長尺部材の端部には前記第二方向に延びる軸状の軸部材が設けられ、
前記第一フレーム部材の前記第一支持部、および前記第二フレーム部材の前記第二支持部は、前記軸部材に係合する丸穴であり、
前記第一フレーム部材の前記第一案内部、および前記第二フレーム部材の前記第二案内部は、前記軸部材に係合する長穴であること
を特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の移動機構。
【請求項9】
前記第二フレーム部材は、
前記第二方向に延び、前記回転部材に係合する前記係合部が設けられる第一フレーム部分と、
前記第一フレーム部分の前記第二方向の両側の端部からそれぞれ前記第三方向の他方側へ向けて延び、前記第二支持部および前記第二案内部を有する一対の第二フレーム部分と
を少なくとも有すること
を特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の移動機構。
【請求項10】
前記回転部材は、台形の前記ねじ山が形成された台形ねじであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の移動機構。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の移動機構と、
前記移動機構の前記テーブルに配置される印刷対象物に向けてインクを吐出するヘッドと
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
前記インクは、紫外線により硬化されるUVインクであり、
前記ヘッドと一体に設けられ、前記印刷対象物に向けて紫外線を照射するUV照射部を備えたことを特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルを移動可能な移動機構および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に記載のテーブル装置は、一対のリンク部材を対向配置した伸縮機構を用いてテーブルを昇降する。リンク部材は、2つの長尺部材を互いに回動可能にX状に連結した部材である。伸縮機構は、上端側にテーブルを配置し、下端側に支持部材を配置する。支持部材は、各リンク部材が有する長尺部材のうち、一方の長尺部材の下端部を、それぞれピンと丸穴とにより回動可能に支持し、他方の長尺部材の下端部を、それぞれピンと前後方向に延びる長穴とにより移動可能に支持する。支持部材の前側には駆動モータが設けられる。駆動モータは、各リンク部材の他方の長尺部材の下端部を、それぞれ前後方向に移動する。駆動モータが他方の長尺部材の下端部を後方に移動させて一方の長尺部材の下端部に近づけると、一対の長尺部材は、それぞれの延伸方向を前後方向から上下方向に起こすように互いに回動させて、テーブルを上昇させる。駆動モータが他方の長尺部材の下端部を前方に移動させて一方の長尺部材の下端部から遠ざけると、一対の長尺部材は、それぞれの延伸方向を上下方向から前後方向に倒すように互いに回動させて、テーブルを下降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-151963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1では、テーブルが最も下降した状態において、リンク部材の長尺部材は、支持部材上で、水平に近い状態で前後方向に倒れた姿勢となる。この状態からテーブルを上昇させる場合、駆動モータは、ほぼ水平に倒れた姿勢の長尺部材を起こした姿勢に回動させるため、大きな力を必要とする。このようなテーブル装置において、テーブル上に過負荷が加えられた状態でテーブルを最下降状態から上昇させる場合、駆動モータには大きな負荷がかかる可能性があった。
【0005】
本発明は、テーブルの移動にかかる負荷を軽減することができる移動機構および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る移動機構は、テーブルを第一方向に移動可能な移動機構であって、2つの長尺部材が互いに回動可能にX状に連結され、前記第一方向に伸縮可能な第一リンク部材と、2つの長尺部材が互いに回動可能にX状に連結され、前記第一方向に伸縮可能であり、かつ前記第一方向に交差する第二方向において前記第一リンク部材に対向して配置される第二リンク部材と、前記第一方向の一方側における前記第一リンク部材および前記第二リンク部材の一端側に配置され、前記第一リンク部材および前記第二リンク部材をそれぞれ支持する第一フレーム部材と、前記第一方向の他方側において前記第一リンク部材および前記第二リンク部材の他端側に配置され、かつ前記第一方向の他方側に前記テーブルが配置される第二フレーム部材と、ねじ山が形成された棒状の部材であって、前記第二フレーム部材に設けられる係合部に係合し、回転することによって、前記第二フレーム部材および前記テーブルを前記第一方向に移動する回転部材とを備え、前記第一フレーム部材は、前記第一方向および前記第二方向に交差する第三方向の一方側に設けられ、前記第一リンク部材の一方の長尺部材の一方の端部と、前記第二リンク部材の一方の長尺部材の一方の端部とのそれぞれを回動可能に支持する第一支持部と、前記第三方向の他方側に設けられ、前記第一リンク部材の他方の長尺部材の一方の端部と、前記第二リンク部材の他方の長尺部材の一方の端部とのそれぞれを前記第三方向に移動可能に案内する第一案内部とを有し、前記第二フレーム部材は、前記第三方向の一方側に設けられ、前記第一リンク部材の前記他方の長尺部材の他方の端部と、前記第二リンク部材の前記他方の長尺部材の他方の端部とのそれぞれを回動可能に支持する第二支持部と、前記第三方向の他方側に設けられ、前記第一リンク部材の前記一方の長尺部材の他方の端部と、前記第二リンク部材の前記一方の長尺部材の他方の端部とのそれぞれを前記第三方向に移動可能に案内する第二案内部とを有することを特徴とする。
【0007】
移動機構は、第一リンク部材と第二リンク部材に対して直接的に力を付与せず、回転部材の回転によって、第二フレーム部材とテーブルを移動させる。第一リンク部材および第二リンク部材は、第一フレーム部材と第二フレーム部材との位置関係に応じて従動的に伸縮し、第一フレーム部材に対して自身を介し第二フレーム部材を支える。よって移動機構は、第一リンク部材と第二リンク部材に対して直接的に力を付与して伸縮させる構成と比べ、回転部材にかかる負荷を軽減することができる。
【0008】
第一態様において、前記第一リンク部材と前記第二リンク部材とがそれぞれ有する前記長尺部材は、延伸方向の中央部から両側の端部に向けて、それぞれ、幅方向において先細りする形状であってもよい。第一リンク部材と第二リンク部材とが収縮する場合、長尺部材の両側の端部は、端部と中央部の幅が同じ形状の長尺部材と比べ、第一方向において互いにより近づくことができる。故に移動機構は、長尺部材の長さを変えずに、テーブルの移動距離を、より長くすることができる。
【0009】
第一態様の前記係合部は、前記第三方向において前記第二フレーム部材の一方側に設けられてもよい。第二支持部と係合部は、第二フレーム部材の一方側に設けられる。第二支持部は、第一支持部に対し、第一リンク部材および第二リンク部材によって第一方向に移動できるが、第二方向および第三方向への移動が規制される。また、第二フレーム部材は、回転部材によって第一方向に移動できるが、第二方向および第三方向への移動が規制される。故に移動機構は、第一リンク部材および第二リンク部材と回転部材とによって、第三方向の一方側における第二フレーム部材の剛性を確保することができる。
【0010】
第一態様は、前記第一方向に延びる延伸部材と、前記第二フレーム部材の前記第三方向の一方側に設けられ、前記延伸部材を保持しつつ前記延伸部材の前記第一方向への相対的な移動を案内する案内部材とを備えてもよい。第二支持部と案内部材は、第二フレーム部材の一方側に設けられる。第二支持部は、第一支持部に対し、第一リンク部材および第二リンク部材によって第一方向に移動できるが、第二方向および第三方向への移動が規制される。また、第二フレーム部材は、延伸部材によって第一方向に移動できるが、第二方向および第三方向への移動が規制される。故に移動機構は、第一リンク部材および第二リンク部材と延伸部材とによって、第三方向の一方側における第二フレーム部材の剛性を確保することができる。
【0011】
第一態様は、前記第一フレーム部材の前記第三方向の一方側にて前記第一フレーム部材に接続され、前記第二方向および前記第三方向に延びる板状であり、かつ前記第一方向の一方側における前記延伸部材の一端部を保持する第一板部材と、前記第二フレーム部材の前記第三方向の一方側にて前記第二フレーム部材に接続され、前記第一方向および前記第二方向に延びる板状であり、かつ前記第一方向の他方側の部位が前記第三方向の一方側に屈曲する屈曲部を有し、前記屈曲部において前記第一方向の他方側における前記延伸部材の他端部を保持する第二板部材と、屈曲する板状であり、前記第一板部材と前記第二板部材とを連結する第三板部材とを備えてもよい。第一板部材と第二板部材は、第三板部材によって連結され、さらに延伸部材の両端を保持することによって、それぞれが位置決めされるので、延伸部材の剛性を確保することができる。故に移動機構は、第二フレーム部材が案内部材で延伸部材を保持することによって、第三方向の一方側における第二フレーム部材の剛性を確保することができる。
【0012】
第一態様の前記第一板部材は、前記回転部材を回転可能に支持する軸受部を有してもよい。回転部材は軸受部を有する第一板部材に支持される。第一板部材は第一フレーム部材に接続する。故に移動機構は、第一フレーム部材を基準に、回転部材によって第二フレーム部材とテーブルを第一方向に移動することができる。
【0013】
第一態様は、前記第一板部材に設けられ、前記回転部材に駆動力を付与して前記回転部材を回転させる駆動部を備えてもよい。回転部材に近い位置に駆動部を設け、駆動力の伝達における損失を減らすことで、テーブル移動時に駆動部にかかる負荷を低減することができる。
【0014】
第一態様において、前記長尺部材の端部には前記第二方向に延びる軸状の軸部材が設けられ、前記第一フレーム部材の前記第一支持部、および前記第二フレーム部材の前記第二支持部は、前記軸部材に係合する丸穴であり、前記第一フレーム部材の前記第一案内部、および前記第二フレーム部材の前記第二案内部は、前記軸部材に係合する長穴であってもよい。第一フレーム部材、第二フレーム部材、第一リンク部材および第二リンク部材は、軸部材と丸穴および長穴との係合によって連結される。故に移動機構は、構成の簡易化を図り、製造コストを低減できる。
【0015】
第一態様の前記第二フレーム部材は、前記第二方向に延び、前記回転部材に係合する前記係合部が設けられる第一フレーム部分と、前記第一フレーム部分の前記第二方向の両側の端部からそれぞれ前記第三方向の他方側へ向けて延び、前記第二支持部および前記第二案内部を有する一対の第二フレーム部分とを少なくとも有してもよい。移動機構は、少なくとも第一フレーム部分と第二フレーム部分とを有する第二フレーム部材を用いることで、テーブルを支持する上で剛性を確保できる。また、移動機構は、第二フレーム部材を必要最低限の骨組みとして軽量化を図ることができるので、回転部材にかかる負荷を軽減することができる。
【0016】
第一態様の前記回転部材は、台形の前記ねじ山が形成された台形ねじであってもよい。これにより、回転部材にかかる負荷を軽減しつつ、テーブルを精確に移動することができる。
【0017】
本発明の第二態様にかかる印刷装置は、請求項1から9のいずれかに記載の移動機構と、前記移動機構の前記テーブルに配置される印刷対象物に向けてインクを吐出するヘッドとを備えたことを特徴とする。テーブルにかかる過負荷により駆動源にかかる負荷を低減でき、かつ剛性の高い移動機構を備えたことで、長寿命で、テーブル移動時に印刷対象物が位置ずれしにくい印刷装置を提供できる。
【0018】
第二態様の前記インクは、紫外線により硬化されるUVインクであり、前記ヘッドと一体に設けられ、前記印刷対象物に向けて紫外線を照射するUV照射部を備えてもよい。印刷対象物によって印刷面の高さが異なる場合が多くても、移動機構によりヘッドに対する適切な高さ位置にテーブルを移動させて印刷でき、かつテーブル移動時に印刷対象物が位置ずれしにくい印刷装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】プリンタ1の本体部2を前方右上方から見た斜視図である。
図2】プラテン5を取り付けた昇降装置100を前方右上方から見た斜視図である。
図3】昇降装置100を前方右上方から見た斜視図である。
図4】昇降装置100の右側面図である。
図5】プラテン5を取り付けた昇降装置100を後方左上方から見た斜視図である。
図6】昇降装置100の底面図である。
図7】プラテン5を最下位置に降下させた昇降装置100を前方右上方から見た斜視図である。
図8】プラテン5を最下位置に降下させた昇降装置100の背面図である。
図9】プラテン5を最下位置に降下させた昇降装置100の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照し、本発明の一実施形態に係るプリンタ1を説明する。図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、左上方が、それぞれ、プリンタ1の上方、下方、前方、後方、右方、左方である。以下の説明では、左右方向を主走査方向、前後方向を副走査方向と記載することもある。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを示す。プリンタ1は、印刷対象物に紫外線硬化型インク(以下、「UVインク」という)を吐出し、紫外線を照射して硬化させることで、印刷対象物に文字、図形、記号等の画像を印刷する装置である。
【0021】
図1を参照し、プリンタ1の概略構成を説明する。図1に示すように、プリンタ1の本体部2は、装着部17、搬送部6、昇降装置100、プラテン5を備える。なお、図1のプリンタ1は、その外装カバーを外した状態である。本体部2は、前後方向に貫通する開口部21を有する。プリンタ1は、本体部2の前面で開口部21の右側に、ユーザによるプリンタ1の各種動作に関する指示の入力を受け付ける操作部を備える。装着部17は本体部2の右側に設けられる。装着部17には、複数のカートリッジ18が前側から装着される。各カートリッジ18には、印刷に使用されるUVインクの各色液体が収容される。
【0022】
搬送部6は開口部21の下部に設けられる。搬送部6は、昇降装置100を前後方向に搬送する。搬送部6は、一対のガイドレール14A、14Bを有する。ガイドレール14A、14Bは前後方向に延びる。ガイドレール14A、14Bは、左右方向に間隔をあけて、互いに平行に配置される。ガイドレール14A、14Bは、昇降装置100を副走査方向に移動可能に支持する。本実施形態における副走査方向は、前後方向である。昇降装置100の下部には副走査モータが設けられる。昇降装置100は副走査モータの駆動に伴い、ガイドレール14A、14Bに沿って前後方向に移動する。図1は、昇降装置100が前端まで移動した状態を示す。
【0023】
プラテン5は、平面視長方形状の板状である。プラテン5は昇降装置100によって支持される。プラテン5は、昇降装置100とともに前後方向に移動する。プラテン5の上面には、非吸収性素材、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチックが、印刷対象物として載置される。
【0024】
本体部2は、さらに、ガイドシャフト9、ガイドレール11、キャリッジ20を備える。ガイドシャフト9とガイドレール11はそれぞれ左右方向に延びる。ガイドシャフト9は本体部2の上部前方に配置される。ガイドレール11は、ガイドシャフト9の後方に間隔をあけて、ガイドシャフト9と平行に配置される。ガイドシャフト9とガイドレール11は、それぞれキャリッジ20を主走査方向に移動可能に支持する。本実施形態における主走査方向は、左右方向である。ガイドシャフト9の右端部の右側には、主走査モータ19が設けられる。キャリッジ20は主走査モータ19の駆動に伴い、ガイドシャフト9とガイドレール11に沿って左右方向に移動する。図1は、キャリッジ20が左端まで移動した状態を示す。
【0025】
キャリッジ20は、UVインクを下方に吐出するヘッド10A,10Bと、紫外線(UV)を下方に照射するUV照射装置8A,8B含む。本実施形態において、ヘッド10A,10Bは、UVインクを加圧するための圧電素子を有する。ただし、ヘッド10A,10Bが、圧電素子の変わりに、UVインクを加熱するためのヒータを有してもよい。UV照射装置8A,8Bは、それぞれヘッド10A,10Bの右側に配置される。UV照射装置8A,8Bは、それぞれヘッド10A,10Bが印刷対象物に吐出したUVインクにUVを照射する。
【0026】
上記構成によれば、プリンタ1は、ヘッド10A,10BおよびUV照射装置8A,8Bを主走査方向に移動させる。プリンタ1は、ヘッド10A,10Bの各ノズルからプラテン5上の印刷対象物に対してUVインクを吐出するとともに、UV照射装置8A,8BからそれぞれUV光を照射してUVインクを硬化させる。プリンタ1は、プラテン5を副走査方向に移動させる。当該処理の繰り返しにより、プリンタ1はプラテン5上の印刷対象物に文字、図形、記号等の画像を印刷する。
【0027】
図2図6を参照し、昇降装置100の詳細構造を説明する。図2に示す昇降装置100は、例えば印刷時にプラテン5を上下方向に移動し、プラテン5上に載置した印刷対象物を、ヘッド10A,10Bに対して上下方向の距離が適切となる位置に配置する装置である。図3の昇降装置100は、図2に示すプラテン5を取り外した状態である。図3に示すように、昇降装置100は、右リンク部材101、左リンク部材102、下フレーム部材103、上フレーム部材104、駆動機構105を備える。
【0028】
右リンク部材101は、2つの長尺部材120,130を備える。長尺部材120,130は、長く延びる板状の鋼材である。長尺部材120,130の縁部は、厚み方向の両側に延びる。故に長尺部材120,130は、曲げに対する強度が確保される。長尺部材120は、長尺部材130と略同一形状である。長尺部材120は、長尺部材130の右側に配置される。長尺部材120と長尺部材130は、それぞれの延伸方向の中央部122,132において連結軸111に支持され、互いに回動可能な状態でX状に連結される。長尺部材120の一方の端部である後端部123は、他方の端部である前端部124よりも後方に配置され、かつ長尺部材130の他方の端部である後端部133の下方に配置される。長尺部材130の一方の端部である前端部134は、後端部133よりも前方に配置され、かつ長尺部材120の前端部124の下方に配置される。長尺部材120,130を側方から見た場合、各々の中央部122,132から前端部124,134側の部分の形状は、前端部124,134側へ向けて、幅が徐々に小さくなる形状、いわゆる先細りする形状である。同様に、各々の中央部122,132から後端部123,133側の部分の形状は、後端部123,133側へ向けて、幅が先細りする形状である。中央部122,132から前端部124,134側の部分の形状は、中央部122,132から後端部123,133側の部分の形状と略同じ形状である。すなわち、図4に示すように、長尺部材120,130は、側面視で、それぞれ平行四辺形状を表す。
【0029】
図3に示すように、左リンク部材102は、右リンク部材101と略同様の構成で一対に設けられる部材である。左リンク部材102は、右リンク部材101の左方で右リンク部材101に対向して配置される。左リンク部材102は、2つの長尺部材140,150を備える。長尺部材140,150は、長く延びる板状の鋼材である。長尺部材140,150の縁部は、厚み方向の両側に延びる。故に長尺部材140,150は、曲げに対する強度が確保される。長尺部材140は、長尺部材150と略同一形状である。長尺部材140は、長尺部材150の左側に配置される。長尺部材140と長尺部材150は、それぞれの延伸方向の中央部142,152において連結軸112に支持され、互いに回動可能な状態でX状に連結される。長尺部材140の一方の端部である後端部143は、他方の端部である前端部144よりも後方に配置され、かつ長尺部材150の他方の端部である後端部153の下方に配置される。長尺部材150の一方の端部である前端部154は、後端部153よりも前方に配置され、かつ長尺部材140の前端部144の下方に配置される。長尺部材140,150を側方から見た場合、各々の中央部142,152から前端部144,154側の部分の形状は、前端部144,154側へ向けて、幅が先細りする形状である。同様に、各々の中央部142,152から後端部143,153側の部分の形状は、後端部143,153側へ向けて、幅が先細りする形状である。中央部142,152から前端部144,154側の部分の形状は、中央部122,132から後端部143,153側の部分の形状と略同じ形状である。すなわち長尺部材140,150は、長尺部材120,130と同様に、側面視で、それぞれ平行四辺形状を表す。
【0030】
下フレーム部材103は、右リンク部材101および左リンク部材102の下側に配置される。下フレーム部材103は、右リンク部材101および左リンク部材102のそれぞれを下方から支持する部材である。下フレーム部材103は、前後方向に延び、左右方向に対向して配置される一対の右下フレーム部160と左下フレーム部170とを、前架橋部180、後架橋部182および中架橋部183でそれぞれ架橋して支持する構成である。右下フレーム部160は、板状の鋼材を折り曲げ加工により形成した部材である。右下フレーム部160は、左右方向を厚み方向とし、前後方向に延びる略矩形で板状の側板部162と、側板部162の上側および下側の縁部からそれぞれ左方へ板状に延びる上板部163および下板部164を有する。右リンク部材101の長尺部材120,130は、それぞれ側板部162の右側に配置される。左下フレーム部170は、右下フレーム部160と略同様の構成で右下フレーム部160と一対に設けられる部材である。左下フレーム部170は、右下フレーム部160の左方において右下フレーム部160に対向して配置される。左下フレーム部170は、板状の鋼材を折り曲げ加工することによって形成される。左下フレーム部170は、左右方向を厚み方向とし、前後方向に延びる略矩形で板状の側板部172と、側板部172の上側および下側の縁部からそれぞれ右方へ板状に延びる上板部173および下板部174を有する。左リンク部材102の長尺部材140,150は、側板部172の左側に配置される。
【0031】
前架橋部180は丸棒形状の鋼材である。前架橋部180は、両端それぞれが、右下フレーム部160の側板部162の前端部左側面と、左下フレーム部170の側板部172の前端部右側面とにネジで固定される。後架橋部182は、厚み方向を上下方向に配置して左右方向に延びる。後架橋部182は、板状の鋼材である。後架橋部182は、右側の端部が、右下フレーム部160の後端部において下板部164の上側に配置され、下板部164にネジで固定される。同様に、後架橋部182は、左側の端部が、左下フレーム部170の後端部において下板部174の上側に配置され、下板部174にネジで固定される。中架橋部183は、平面視略矩形形状で、縁部と中間部が右下フレーム部160の側板部162の高さ相当の厚みを有する。中架橋部183は、板状の鋼材である。中架橋部183は、前後方向において、前架橋部180と後架橋部182の間に配置される。中架橋部183は、右側の縁部が、右下フレーム部160の中間部において上板部163と下板部164との間に配置され、下板部164にネジで固定される。同様に、中架橋部183は、左側の縁部が、左下フレーム部170の中間部において上板部173と下板部174との間に配置され、下板部174にネジで固定される。
【0032】
右下フレーム部160の側板部162と、左下フレーム部170の側板部172は、それぞれの後端部に、丸穴形状の支持穴165,175を有する。支持穴165,175には、それぞれ左右方向に延びる丸棒状の支持軸113が挿通される。支持軸113は、それぞれ支持穴165,175に回転可能に支持される。右リンク部材101の長尺部材120の後端部123は、支持穴165の右側で、支持軸113の右端を回動可能に保持する。左リンク部材102の長尺部材140の後端部143は、支持穴175の左側で、支持軸113の左端を回動可能に保持する。故に長尺部材120と長尺部材140は、右下フレーム部160の後端部と左下フレーム部170の後端部に対し、それぞれ回動可能に支持される。
【0033】
右下フレーム部160の側板部162と、左下フレーム部170の側板部172は、それぞれの前端部に、前後方向に延びる長穴形状の案内穴166,176を有する。案内穴166,176には、それぞれ左右方向に延びる丸棒状の案内軸114が挿通される。案内軸114は、案内穴166,176に沿って前後方向に移動可能であり、かつ案内穴166,176によって回転可能に支持される。右リンク部材101の長尺部材130の前端部134は、案内穴166の右側で、案内軸114の右端を回動可能に保持する。左リンク部材102の長尺部材150の前端部154は、案内穴176の左側で、案内軸114の左端を回動可能に保持する。故に長尺部材130と長尺部材150は、右下フレーム部160の前端部と左下フレーム部170の前端部に対し、それぞれ回動可能、かつ前後方向に移動可能に支持される。
【0034】
右下フレーム部160と左下フレーム部170は、折り曲げ加工によって形成されることで、曲げに対する剛性を確保する。前架橋部180、後架橋部182および中架橋部183は、右下フレーム部160と左下フレーム部170との間に架けられて、両端が固定されることで、右下フレーム部160と左下フレーム部170を位置決めする。中架橋部183はリブ構造によって剛性を確保する。故に下フレーム部材103は、上下方向および左右方向への曲げと、ひねりに対して十分な剛性を確保することができる。
【0035】
上フレーム部材104は、右リンク部材101および左リンク部材102の上側に配置される。上フレーム部材104は、上面に配置されるプラテン5を支持する。上フレーム部材104は、右リンク部材101および左リンク部材102によって上下方向に移動可能に支持される部材である。上フレーム部材104は、前後方向に延びる。上フレーム部材104は、左右方向に対抗して配置される一対の右上フレーム部190および左上フレーム部200の両端部を、前フレーム部210および後フレーム部220でそれぞれ接続する。これにより、上フレーム部材104は平面視で四角い枠状に形成される。上フレーム部材104は下フレーム部材103よりも大きく、枠内に、下フレーム部材103を収容可能な大きさを有する。
【0036】
右上フレーム部190は、板状の鋼材を折り曲げ加工により形成した部材である。右上フレーム部190は、左右方向を厚み方向とする。右上フレーム部190は、前後方向に延びる略矩形で板状の側板部192と、側板部192の上側および下側の縁部からそれぞれ右方へ板状に延びる上板部193および下板部194を有する。右リンク部材101の長尺部材120,130は、それぞれ側板部192の左側に配置される。右上フレーム部190は、下フレーム部材103の右下フレーム部160よりも長い。左上フレーム部200は、右上フレーム部190と略同様の構成で右上フレーム部190と一対に設けられる部材である。左上フレーム部200は、右上フレーム部190の左方において右上フレーム部190に対向して配置される。左上フレーム部200は、板状の鋼材を折り曲げ加工により形成した部材である。左上フレーム部200は、左右方向を厚み方向とする。左上フレーム部200は、前後方向に延びる略矩形で板状の側板部202と、側板部202の上側および下側の縁部からそれぞれ左方へ板状に延びる上板部203および下板部204を有する。左リンク部材102の長尺部材140,150は、それぞれ側板部202の右側に配置される。左上フレーム部200は、右上フレーム部190と同じ長さであり、下フレーム部材103の左下フレーム部170よりも長い。
【0037】
前フレーム部210は、左右方向に延びる板状の鋼材を断面L状に折り曲げて形成した部材である。前フレーム部210は、厚み方向を前後方向に配置する前板部212と、厚み方向を上下方向に配置する下板部213を有する。下板部213は前板部212の下側の縁部から後方に延びる。前フレーム部210は、下板部213の右側の端部を右上フレーム部190の前端部において下板部194の下側に配置し、下板部194にネジで固定する。同様に、前フレーム部210は、下板部213の左側の端部を左上フレーム部200の前端部において下板部204の下側に配置し、下板部204にネジで固定する。後フレーム部220は、左右方向に延びる板状の鋼材を断面L状に折り曲げて形成した部材である。後フレーム部220は、厚み方向を前後方向に配置する後板部222と、厚み方向を上下方向に配置する上板部223を有する。上板部223は後板部222の上側の縁部から前方に延びる。後フレーム部220は、上板部223の右側の端部を右上フレーム部190の後端部において上板部193の上側に配置し、上板部193にネジで固定する。同様に、後フレーム部220は、上板部223の左側の端部を左上フレーム部200の後端部において上板部203の上側に配置し、上板部203にネジで固定する。
【0038】
右上フレーム部190の側板部192と、左上フレーム部200の側板部202は、それぞれの後端部に、丸穴形状の支持穴195,205を有する。支持穴195,205は、左右方向に延びる丸棒状の支持軸115の両端を、それぞれ回転可能に支持する。右リンク部材101の長尺部材130の後端部133は、支持穴195の左側において、支持軸115を回転可能に保持する。左リンク部材102の長尺部材150の後端部153は、支持穴205の右側において、支持軸115を回転可能に保持する。故に長尺部材130と長尺部材150は、右上フレーム部190の後端部と左上フレーム部200の後端部に対し、それぞれ回動可能に支持される。
【0039】
右上フレーム部190の側板部192と、左上フレーム部200の側板部202は、それぞれの前端部に、前後方向に延びる長穴形状の案内穴196,206を有する。案内穴196,206には、左右方向に延びる丸棒状の案内軸116が挿通される。案内軸116は、案内穴196,206に沿って前後方向に移動可能であり、かつ案内穴196,206によって回転可能に支持される。右リンク部材101の長尺部材120の前端部124は、案内穴196の左側において、案内軸116を回転可能に保持する。左リンク部材102の長尺部材140の前端部144は、案内穴206の右側において、案内軸116を回転可能に保持する。故に長尺部材120と長尺部材140は、右上フレーム部190の前端部と左上フレーム部200の前端部に対し、それぞれ回動可能、かつ前後方向に移動可能に支持される。
【0040】
右上フレーム部190と左上フレーム部200は、折り曲げ加工によって形成されることで、曲げに対する剛性を確保する。前フレーム部210と後フレーム部220は、左右方向において、右上フレーム部190と左上フレーム部200の両端をそれぞれ固定し、位置決めする。故に上フレーム部材104は、上下方向および左右方向への曲げに対して十分な剛性を確保することができる。
【0041】
下フレーム部材103と上フレーム部材104の相対的な位置関係は、右リンク部材101および左リンク部材102によって確保される。右リンク部材101および左リンク部材102は、それぞれの連結軸111,112によって長尺部材120,140と130,150とが連結され、かつ支持軸113,115および案内軸114,116によって各端部が位置決められることで、剛性が確保される。下フレーム部材103と上フレーム部材104は、それぞれ支持軸113,115を支持穴165,175および195,205で支持する。下フレーム部材103と上フレーム部材104は、それぞれ案内軸114,116の上下方向への移動を案内穴166,176および196,206で規制する。故に下フレーム部材103と上フレーム部材104の上下方向への曲げに対する剛性は、右リンク部材101および左リンク部材102によって確保することができる。
【0042】
図5に示すように、駆動機構105は、昇降装置100の後端部に設けられる。駆動機構105は、下板部材250、前板部材260、連結部材270、リニアシャフト280、台形ネジ290、駆動モータ300を備える。
【0043】
図5に示すように、下板部材250は、板状の鋼材を折り曲げ加工により形成した部材である。下板部材250は、上下方向を厚み方向とする。下板部材250は、左右方向に延びる板状の下支持部252と、下支持部252の前側の縁部を下方に折り曲げた形状の下方屈曲部253を有する。下板部材250の左右方向の長さは、下フレーム部材103の左右方向の長さよりも若干大きい。下支持部252は、2つの連結金具117によって、前端部の上面が、右下フレーム部160の上板部163の後端部上面、および左下フレーム部170の上板部173の後端部上面に、それぞれ連結される。図4に示すように、下方屈曲部253は、前面の下端部が、下フレーム部材103の後架橋部182の後端に当接した状態となる。
【0044】
図5に示すように、前板部材260は、板状の鋼材を折り曲げ加工により形成した部材である。前板部材260は、前後方向を厚み方向とする。前板部材260は、左右方向に延びる板状の前支持部262と、前支持部262の上側の縁部を後方に折り曲げた形状の後方屈曲部263を有する。前板部材260の左右方向の長さは、下フレーム部材103の左右方向の長さよりも若干小さい。後方屈曲部263の下面は、下支持部252の上面と対向する。後方屈曲部263の後部角部は、左右両側共に切り欠かれた形状である。
【0045】
図5に示すように、連結部材270は、板状の鋼材を折り曲げ加工により断面L状に形成した部材である。前後方向を厚み方向とし、左右方向に延びる前連結板272と、前連結板272の下側の縁部から後方に延びる下連結板273を有する。連結部材270の左右方向の長さは、前板部材260の左右方向の長さよりも小さい。前連結板272は、前板部材260の前支持部262の下端部の後側に配置され、前支持部262にネジで固定される。下連結板273は、下板部材250の下支持部252の前端部の上側に配置され、下支持部252にネジで固定される。下板部材250と前板部材260は、連結部材270を介して連結される。
【0046】
リニアシャフト280は、上フレーム部材104の上下方向への移動を案内する一対の丸棒状の鋼材である。リニアシャフト280は左右方向において、それぞれ、連結部材270の外側の位置に配置され、上下方向に延びる。リニアシャフト280の上側の端部は、それぞれ、前板部材260の後方屈曲部263にネジで固定される。リニアシャフト280の下側の端部は、それぞれ、下板部材250の下支持部252にネジで固定される。上フレーム部材104の後フレーム部220には、リニアシャフト280によって案内されるリニアガイド224が設けられる。リニアガイド224は、上板部223の下面側に組み付けられ、上フレーム部材104が上下方向に移動する場合にリニアシャフト280を保持することで、駆動機構105に対して上フレーム部材104を位置決めする。
【0047】
台形ネジ290は、ねじ山が台形に形成された上下方向に延びるねじ部材である。台形ネジ290は、上フレーム部材104が上下方向に移動する駆動力を伝達するための送りねじとして使用される。台形ネジ290は一対に設けられ、左右方向において、それぞれ、一対のリニアシャフト280の各々の外側の位置に配置される。台形ネジ290の下端部は、それぞれ、下板部材250の下支持部252に組み付けられる軸受部226に回転可能に支持される。上フレーム部材104の後フレーム部220には、台形ネジ290に噛み合う雌ねじが形成された係合部225が設けられる。係合部225は、上板部223の下面側で、左右方向において、それぞれ、一対のリニアガイド224の外側に組み付けられる。台形ネジ290が回転することで係合部225に駆動力が伝達され、上フレーム部材104が上下方向に移動する。
【0048】
駆動モータ300は、台形ネジ290に回転する駆動力を付与する駆動源である。駆動モータ300は、下板部材250の下支持部252において、連結部材270の後方に設けられる。図6に示すように、駆動モータ300の駆動軸302は、下支持部252の下方に突出し、プーリ303が設けられる。一対の台形ネジ290の下端部にも、それぞれプーリ304が設けられる。プーリ303と2つのプーリ304には、一本のベルト305が架けられる。駆動軸302の回転による駆動力は、プーリ303,304とベルト305を介し、一対の台形ネジ290のそれぞれに伝達される。
【0049】
下板部材250の左右方向への曲げに対する剛性は、下板部材250の前側の縁部において下方屈曲部253が曲げ加工されることによって確保される。前板部材260も同様に、左右方向への曲げに対する剛性は、前板部材260の前側の縁部において後方屈曲部263が曲げ加工されることによって確保される。リニアシャフト280が下板部材250の下支持部252と前板部材260の後方屈曲部263を上下方向に接続することで、前板部材260の前後方向への曲げに対する剛性が確保される。
【0050】
図6図9を参照し、昇降装置100の動作を説明する。駆動モータ300はプラテン5の昇降時に駆動し、駆動軸302を回転する。プラテン5の下降時、駆動軸302に接続するプーリ303が回転すると、プーリ303,304に架かるベルト305はプーリ304を回転させ、プーリ304に接続する台形ネジ290を回転させる。台形ネジ290は、後フレーム部220の係合部225を下向きに移動させることで、上フレーム部材104を下降させる。これにより、上フレーム部材104およびプラテン5は、図7図9に示す状態となる。
【0051】
右リンク部材101および左リンク部材102は、それぞれの長尺部材120,130および長尺部材140,150を、上下方向に収縮させ、前後方向に伸張させる。長尺部材120,140の後端部123,143が保持する支持軸113は、下フレーム部材103の後端部の支持穴165,175に支持されている。長尺部材130,150の後端部133,153が保持する支持軸115は、上フレーム部材104の後端部の支持穴195,205に支持されている。一方、長尺部材120,140の前端部124,144が保持する案内軸116は、上フレーム部材104の前端部の案内穴196,206に、前後方向に移動可能な状態で支持されている。長尺部材130,150の前端部134,154が保持する案内軸114は、下フレーム部材103の前端部の案内穴166,176に、前後方向に移動可能な状態で支持されている。故に右リンク部材101および左リンク部材102は、長尺部材130,150の後端部133,153と、長尺部材120,140の前端部124,144との上下方向の位置関係を維持したまま、上下方向に収縮する。上フレーム部材104は、下フレーム部材103との前後方向および左右方向の位置関係を維持したまま、プラテン5の傾きを生じさせることなく下降することができる。
【0052】
図9に示すように、上フレーム部材104が最下位置に下降した場合、右リンク部材101は、長尺部材120,130の端部を中央部と同じ幅の部材で構成した場合と比べ、互いの端部同士を上下方向に、より近づけることができる。前述したように、右リンク部材101の長尺部材120,130は、それぞれの端部へ向けて、幅が先細りする形状である。故に、右リンク部材101は、各端部が上下方向において接近する際に、支持軸113,115および案内軸114,116と各端部とが干渉することで生ずる最接近距離の制限を、より小さくできる。左リンク部材102も同様の構成を有するので、昇降装置100は、上フレーム部材104を、従来よりも、より低い位置に下降させることができる。
【0053】
プラテン5を上昇させる場合、駆動モータ300は、駆動軸302を下降時とは逆方向に回動する。台形ネジ290は下降時とは逆向きに回転し、後フレーム部220の係合部225を上向きに移動させることで、上フレーム部材104を上昇させる。下降時と同様に、右リンク部材101および左リンク部材102は、長尺部材130,150の後端部133,153と、長尺部材120,140の前端部124,144との上下方向の位置関係を維持したまま、上下方向に伸張する。上フレーム部材104は、下フレーム部材103との前後方向および左右方向の位置関係を維持したまま、プラテン5の傾きを生じさせることなく上昇することができる。
【0054】
以上説明したように、昇降装置100は、右リンク部材101と左リンク部材102に対して直接的に力を付与せず、台形ネジ290の回転によって、上フレーム部材104とプラテン5を移動させる。右リンク部材101および左リンク部材102は、下フレーム部材103と上フレーム部材104との位置関係に応じて従動的に伸縮し、下フレーム部材103に対して自身を介し上フレーム部材104を支える。よって昇降装置100は、右リンク部材101と左リンク部材102に対して直接的に力を付与して伸縮させる構成と比べ、台形ネジ290にかかる負荷を軽減することができる。
【0055】
右リンク部材101と左リンク部材102とが収縮する場合、長尺部材120,130,140,150のそれぞれの両側の端部は、端部と中央部の幅が同じ形状の長尺部材と比べ、上下方向において互いにより近づくことができる。故に昇降装置100は、長尺部材120,130,140,150の長さを変えずに、プラテン5の移動距離を、より長くすることができる。
【0056】
支持穴195,205と係合部225は、上フレーム部材104の後側に設けられる。支持穴195,205は、支持穴165,175に対し、右リンク部材101および左リンク部材102によって上下方向に移動できるが、左右方向および前後方向への移動が規制される。また、上フレーム部材104は、台形ネジ290によって上下方向に移動できるが、左右方向および前後方向への移動が規制される。故に昇降装置100は、右リンク部材101および左リンク部材102と台形ネジ290とによって、前後方向の後側における上フレーム部材104の剛性を確保することができる。
【0057】
支持穴195,205とリニアガイド224は、上フレーム部材104の後側に設けられる。支持穴195,205は、支持穴165,175に対し、右リンク部材101および左リンク部材102によって上下方向に移動できるが、左右方向および前後方向への移動が規制される。また、上フレーム部材104は、リニアシャフト280によって上下方向に移動できるが、左右方向および前後方向への移動が規制される。故に昇降装置100は、右リンク部材101および左リンク部材102とリニアシャフト280とによって、前後方向の後側における上フレーム部材104の剛性を確保することができる。
【0058】
下板部材250と前板部材260は、連結部材270によって連結され、さらにリニアシャフト280の両端を保持することによって、それぞれが位置決めされるので、リニアシャフト280の剛性を確保することができる。故に昇降装置100は、上フレーム部材104がリニアガイド224でリニアシャフト280を保持することによって、前後方向の後側における上フレーム部材104の剛性を確保することができる。
【0059】
台形ネジ290は軸受部226を有する下板部材250に支持される。下板部材250は下フレーム部材103に接続する。故に昇降装置100は、下フレーム部材103を基準に、台形ネジ290によって上フレーム部材104とプラテン5を上下方向に移動することができる。
【0060】
台形ネジ290に近い位置に駆動モータ300を設け、駆動力の伝達における損失を減らすことで、プラテン5移動時に駆動モータ300にかかる負荷を低減することができる。
【0061】
下フレーム部材103、上フレーム部材104、右リンク部材101および左リンク部材102は、支持軸113,115と支持穴195,205の係合、および案内軸114,116と案内穴166,176の係合によって連結される。故に昇降装置100は、構成の簡易化を図り、製造コストを低減できる。
【0062】
昇降装置100は、少なくとも後フレーム部220と右上フレーム部190,左上フレーム部200とを有する上フレーム部材104を用いることで、プラテン5を支持する上で剛性を確保できる。また、昇降装置100は、上フレーム部材104を必要最低限の骨組みとして軽量化を図ることができるので、台形ネジ290にかかる負荷を軽減することができる。また、昇降装置100は、台形のねじ山が形成された台形ネジ290を用いることで、プラテン5の上下方向への移動において台形ネジ290にかかる負荷を軽減しつつ、プラテン5を精確に移動することができる。
【0063】
本実施形態のプリンタ1は、プラテン5にかかる過負荷により駆動モータ300にかかる負荷を低減でき、かつ剛性の高い昇降装置100を備えたことで、長寿命で、プラテン5移動時に印刷対象物が位置ずれしにくい。
【0064】
プリンタ1は、印刷対象物によって印刷面の高さが異なる場合が多くても、昇降装置100によりヘッド10A,10Bに対する適切な高さ位置にプラテン5を移動させて印刷でき、かつプラテン5移動時に印刷対象物が位置ずれしにくい。
【0065】
上記実施形態において、プラテン5が、本発明の「テーブル」に相当する。上下方向が、本発明の「第一方向」に相当する。昇降装置100が、本発明の「移動機構」に相当する。右リンク部材101が、本発明の「第一リンク部材」に相当する。左右方向が、本発明の「第二方向」に相当する。左リンク部材102が、本発明の「第二リンク部材」に相当する。下フレーム部材103が、本発明の「第一フレーム部材」に相当する。上フレーム部材104が、本発明の「第二フレーム部材」に相当する。台形ネジ290が、本発明の「回転部材」に相当する。前後方向が、本発明の「第三方向」に相当する。支持穴165,175が、本発明の「第一支持部」に相当する。案内穴166,176が、本発明の「第一案内部」に相当する。支持穴195,205が、本発明の「第二支持部」に相当する。案内穴196,206が、本発明の「第二案内部」に相当する。
【0066】
リニアシャフト280が、本発明の「延伸部材」に相当する。リニアガイド224が、本発明の「案内部材」に相当する。下板部材250が、本発明の「第一板部材」に相当する。後方屈曲部263が、本発明の「屈曲部」に相当する。前板部材260が、本発明の「第二板部材」に相当する。連結部材270が、本発明の「第三板部材」に相当する。駆動モータ300が、本発明の「駆動部」に相当する。支持軸113,115、案内軸114,116が、本発明の「軸部材」に相当する。後フレーム部220が、本発明の「第一フレーム部分」に相当する。右上フレーム部190、左上フレーム部200が、本発明の「第二フレーム部分」に相当する。照射装置8A,8Bが、本発明の「UV照射部」に相当する。
【0067】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限り、それぞれ組み合わせ可能である。例えば本発明は、上記実施形態のようなUVインクジェットタイプとは異なるタイプのプリンタにも適用できる。
【0068】
長尺部材120,130,140,150は、それぞれの中央部から両側の端部へ向けて先細りする形状であるが、中央部と端部の幅が同じ状態で延びる形状であってもよい。また、長尺部材120,130,140,150のうちの一部の部材は、中央部と端部の幅が同じ状態で延びる形状であってもよい。あるいは、長尺部材120,130,140,150は、中央部から一方の端部へ向けて先細りし、他方の端部へ向けては中央部と端部の幅が同じ状態で延びる形状であってもよい。
【0069】
支持軸113と115は左右方向に延び、長尺部材120,140と130,150の後端部123,143と133,153がそれぞれ保持するが、各々の後端部からピン状に突出し、各々の支持穴165,175,195,205に回転可能に支持されてもよい。同様に、案内軸114と116は左右方向に延び、長尺部材130,150と120,140の前端部134,154と124,144がそれぞれ保持するが、各々の前端部からピン状に突出し、各々の案内穴166,176,196,206に前後方向に移動可能かつ回転可能に支持されてもよい。また、案内穴の代わりに、前後方向に滑動するスライドレールとスライダを配置してもよい。この場合、前端部124,134,144,154とスライダは、ピンと軸受で回動可能に係合するとよい。
【0070】
上フレーム部材104は、前フレーム部210が無い構成とし、軽量化を図ってもよい。また、台形ネジ290と噛み合う係合部225を右上フレーム部190と左上フレーム部200の後端部に配置し、後フレーム部220が無い構成とし、更なる軽量化を図ってもよい。プラテン5は、上フレーム部材104の上面に取り外し可能に組み付けられる。これに限らず、上フレーム部材104はプラテン5と一体に形成し、軽量化を図ってもよい。下フレーム部材103は、後架橋部182を駆動機構105の下板部材250と一体に形成し、下フレーム部材103と駆動機構105とを一体に構成してもよい。台形ネジ290は、駆動機構105に2本配置したが、1本でもよいし、3本以上配置してもよい。リニアシャフト280は丸棒状のものを用いたが、断面が矩形あるいは台形のものを用いてもよい。
【0071】
駆動機構105は、プーリ303,304とベルト305を用い、駆動モータ300の駆動力を台形ネジ290に伝達したが、ラックギアとピニオンギアなど、ギアを用いて伝達してもよい。また、台形ネジ290を1本配置する構成の場合、駆動モータ300の駆動軸302を台形ネジ290に連結してもよい。この場合、プーリ303,304およびベルト305の構成を省くことで、昇降装置100は部品点数を削減してもよい。
【0072】
上記実施形態において、台形ネジ290が、本発明の「回転部材」に相当していたが、本発明の回転部材は台形ネジに限らず、三角ネジ、角ネジ、ボールネジなどでもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 プリンタ
5 プラテン
8A,8B 照射装置
10A, ヘッド
100 昇降装置
101 右リンク部材
102 左リンク部材
103 下フレーム部材
104 上フレーム部材
113,115 支持軸
114,116 案内軸
120,130,140,150 長尺部材
122,132,142,152 中央部
123,133,143,153 後端部
124,134,144,154 前端部
165,175,195,205 支持穴
166,176,196,206 案内穴
190 右上フレーム部
200 左上フレーム部
220 後フレーム部
224 リニアガイド
225 係合部
226 軸受部
250 下板部材
260 前板部材
263 後方屈曲部
270 連結部材
280 リニアシャフト
290 台形ネジ
300 駆動モータ
図1
図2
図3
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図9