(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155906
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】水処理カートリッジ、水処理装置、処理水の製造方法、及び水処理機能付き装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20060101AFI20221006BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221006BHJP
D01F 6/00 20060101ALI20221006BHJP
D01F 6/04 20060101ALI20221006BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C02F1/28 F
C02F1/28 A
C02F1/44 B
D01F6/00 B
D01F6/04 C
A47J27/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059349
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504346204
【氏名又は名称】三菱ケミカル・クリンスイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】竹田 はつ美
【テーマコード(参考)】
4B055
4D006
4D624
4L035
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA61
4B055EA03
4D006GA07
4D006KA01
4D006KB12
4D006MA01
4D006MC11
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC33
4D006MC34
4D006MC37
4D006MC39
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC54
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB06
4D006PB24
4D006PC51
4D624AA02
4D624AB11
4D624BA02
4D624BA03
4D624BA05
4D624BA07
4D624BA17
4D624BA18
4D624BB01
4D624BB02
4D624BB05
4D624BC01
4D624CA04
4D624DB05
4D624DB26
4L035DD03
4L035DD07
(57)【要約】
【課題】水を浄化するだけでなく付加価値を高めた処理水を製造できる水処理カートリッジの提供。
【解決手段】竹炭を含む充填材10を有する第1の水処理部20と、中空糸膜11を有する第2の水処理部21と、第1の水処理部20及び第2の水処理部21を収容するカートリッジ本体8とを有し、第2の水処理部21は第1の水処理部20の下流に存在し、充填材10は、カートリッジ本体8から取り出し可能な充填材容器15に収容されている、水処理カートリッジ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹炭を含む充填材を有する第1の水処理部と、
中空糸膜を有する第2の水処理部と
前記第1の水処理部及び前記第2の水処理部を収容するカートリッジ本体とを有し、
前記第2の水処理部は前記第1の水処理部の下流に存在し、
前記充填材は、前記カートリッジ本体から取り出し可能な充填材容器に収容されている、水処理カートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジ本体は前記充填材容器を取り出し可能な開口部を有し、
前記開口部を着脱自在に閉塞する蓋体を備える、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項3】
前記竹炭の粒子径が0.075mm以上3.35mm未満である、請求項1又は2に記載の水処理カートリッジ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理カートリッジを備える、水処理装置。
【請求項5】
原水貯留部と、前記水処理カートリッジと、処理水貯留部とを備え、
前記原水貯留部から前記水処理カートリッジを経て前記処理水貯留部へ、水が自然流下する、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の水処理装置を用いて処理水を製造する、処理水の製造方法。
【請求項7】
前記処理水がアルカリ水である、請求項6に記載の処理水の製造方法。
【請求項8】
前記処理水が、原水よりカリウム及びマグネシウムの一方又は両方の濃度が高いミネラル含有水である、請求項6に記載の処理水の製造方法。
【請求項9】
前記処理水が炊飯用処理水である、請求項6に記載の処理水の製造方法。
【請求項10】
炊飯用処理水の製造用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項11】
処理水製造部と、前記処理水製造部で製造した処理水を使用する装置本体とを備え、
前記処理水製造部が、竹炭を含む充填材を有する第1の水処理部と、中空糸膜を有する第2の水処理部とを有し、前記第2の水処理部は前記第1の水処理部の下流に存在し、
前記充填材は、前記処理水製造部から取り出し可能な充填材容器に収容されている、水処理機能付き装置。
【請求項12】
前記装置本体が炊飯器である、請求項11に記載の水処理機能付き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理カートリッジ、前記水処理カートリッジを備える水処理装置、前記水処理装置を用いた処理水の製造方法、及び水処理機能付き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水は安全な水であるが、浄水場から自宅へと安全に水を運搬するためには遊離塩素などを添加することが望ましく、使用時に塩素臭を取り除くためには直前に浄水処理をすることが望ましい。また、嗜好や機能などそれぞれの目的に応じて、電気分解によりアルカリ性の水にしたり、各種のミネラル成分などを添加又は除去して、付加価値を高めた処理水を製造する水処理装置も知られている。
【0003】
特許文献1には、浄水器の下流側にミネラル供給部及び電解槽を順に設け、電解分解によりアルカリイオン水を製造する整水器が記載されている。
特許文献2には、浄水機能付き水栓用の水処理カートリッジとして、活性炭をバインダーで固めた活性炭成型体を備えるものが記載されている。この水処理カートリッジでは、加圧した水が、活性炭成型体の内部に形成された流路を通過することによって濾過される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-335682号公報
【特許文献2】特開2019-99408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の整水器は、電気分解のための機器が必要であり高価になりやすい。
特許文献2に記載の水処理カートリッジは、水のpHを高めてアルカリ性にしたり、ミネラルを添加する機能は考慮されていない。
本発明は、水を浄化するだけでなく付加価値を高めた処理水を製造できる水処理カートリッジ、前記水処理カートリッジを備える水処理装置、前記水処理装置を用いた処理水の製造方法、及び水処理機能付き装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 竹炭を含む充填材を有する第1の水処理部と、中空糸膜を有する第2の水処理部と、前記第1の水処理部及び前記第2の水処理部を収容するカートリッジ本体とを有し、
前記第2の水処理部は前記第1の水処理部の下流に存在し、前記充填材は、前記カートリッジ本体から取り出し可能な充填材容器に収容されている、水処理カートリッジ。
[2] 前記カートリッジ本体は前記充填材容器を取り出し可能な開口部を有し、前記開口部を着脱自在に閉塞する蓋体を備える、[1]の水処理カートリッジ。
[3] 前記竹炭の粒子径が0.075mm以上3.35mm未満である、[1]又は[2]の水処理カートリッジ。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかの水処理カートリッジを備える、水処理装置。
[5] 原水貯留部と、前記水処理カートリッジと、処理水貯留部とを備え、前記原水貯留部から前記水処理カートリッジを経て前記処理水貯留部へ、水が自然流下する、[4]の水処理装置。
[6] [4]又は[5]の水処理装置を用いて処理水を製造する、処理水の製造方法。
[7] 前記処理水がアルカリ水である、[6]の処理水の製造方法。
[8] 前記処理水が、原水よりカリウム及びマグネシウムの一方又は両方の濃度が高いミネラル含有水である、[6]の処理水の製造方法。
[9] 前記処理水が炊飯用処理水である、[6]の処理水の製造方法。
[10] 炊飯用処理水の製造用である、[1]~[3]のいずれかの水処理カートリッジ。
[11] 処理水製造部と、前記処理水製造部で製造した処理水を使用する装置本体とを備え、前記処理水製造部が、竹炭を含む充填材を有する第1の水処理部と、中空糸膜を有する第2の水処理部とを有し、前記第2の水処理部は前記第1の水処理部の下流に存在し、前記充填材は、前記処理水製造部から取り出し可能な充填材容器に収容されている、水処理機能付き装置。
[12] 前記装置本体が炊飯器である、[11]の水処理機能付き装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水を浄化するだけでなく付加価値を高めた処理水を製造できる水処理カートリッジ、前記水処理カートリッジを備える水処理装置、前記水処理装置を用いた処理水の製造方法、及び水処理機能付き装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である水処理カートリッジの半縦断面図である。
【
図2】
図1の水処理カートリッジにおいて、充填材容器を取り出した状態を示す半縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である水処理装置の全体構成を示す縦断面図である。
【
図4】試験例で測定した積算流量とカリウム濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本実施形態の水処理カートリッジの一例を示す半縦断面図である。
本実施形態の水処理カートリッジ5は、充填材10を有する第1の水処理部20と、中空糸膜11を有する第2の水処理部21と、第1の水処理部20及び第2の水処理部21を収容するカートリッジ本体8とを有する。
カートリッジ本体8は、開口6aを有するケース6と、開口6aを着脱自在に閉塞する蓋体7を備える。ケース6は、円筒状で、中心軸Oに沿う方向(以下、軸方向ともいう。)の一端側に開口6aを有し、他端側にケース底6bを有する。本実施形態において、ケース底6bは着脱可能であるが、一体でもよい。
【0010】
ケース6内には、ケース底6b側から順に、中空糸膜11及び充填材10が収容されている。充填材10より開口6a側に原水導入口61が存在し、中空糸膜11よりケース底6b側に処理水出口62が存在する。本実施形態において原水導入口61はケース6の周面に設けられ、処理水出口62はケース底6bに設けられている。
原水導入口61からケース6内に流入した原水は、充填材10が存在する第1の水処理部20を通過した後、中空糸膜11が存在する第2の水処理部21へ流れ、中空糸膜11で濾過された処理水が処理水出口62から流出する。すなわち、第1の水処理部20の下流に第2の水処理部21が存在する。なお、図示していないが、第1の水処理部20と第2の水処理部21との間に、水が通過できる仕切り部材を設けてもよい。
【0011】
ケース6の外周面には、水処理カートリッジ5を後述の水処理装置1に装着するための嵌合部6cが存在する。嵌合部6cは、ケース6の周方向の全周にわたって延びる溝6dと、溝6dに装着したOリング、ガスケット等の弾性体(図示省略)を有する。軸方向において、嵌合部6cは第1の水処理部20の上流側の端部に位置する。
【0012】
充填材10は竹炭を含む。後述の試験例の結果に示されるように、竹炭に水を接触させると竹炭由来成分が溶出して、水中のミネラル成分(カリウムやマグネシウム等)が増加し、水のpHが高くなる等の効果(以下、竹炭成分の付与効果ともいう。)が得られる。また、竹炭は細孔を有し、吸着による揮発性有機化合物の除去効果、遊離残留塩素の分解効果等(以下、竹炭による除去効果ともいう。)も得られる。
竹炭の粒子径は0.075mm以上3.35mm未満(ASTM E11メッシュ No.6パス、No.200オン相当)が好ましい。自重ろ過型のシステムの場合は0.250mm以上3.35mm未満、加圧ろ過型のシステムの場合は0.075mm以上0.60mm未満がより好ましい。粒子径が上記の範囲内であると、竹炭成分の付与効果と浄水効果とが充分に得られやすい。
竹炭は市販品から入手できる。例えば、エム・イー・ティー社製、山岸竹材店竹虎製を好適に用いることができる。
【0013】
充填材10は、竹炭以外の他の充填材を含んでもよい。他の充填材としては、水処理の分野において公知の粉末状吸着剤、粉末吸着剤を造粒した粒状吸着剤、繊維状吸着剤、体等を例示できる。
具体例としては、天然物系吸着剤(天然ゼオライト、銀ゼオライト、酸性白土等)、合成物系吸着剤(合成ゼオライト、細菌吸着ポリマー、ヒドロキシアパタイト、モレキュラーシーブ、シリカゲル、シリカアルミナゲル系吸着剤、多孔質ガラス、ケイ酸チタニウム等)などの無機質吸着剤;粉末状活性炭、粒状活性炭、繊維状活性炭、ブロック状活性炭、押出成形活性炭、成形活性炭、分子吸着樹脂、合成物系粒状活性炭、合成物系繊維状活性炭、イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂)、イオン交換繊維、キレート樹脂、キレート繊維、高吸収性樹脂、高吸水性繊維、吸油性樹脂、吸油剤などの有機系吸着剤等が挙げられる。これらの吸着剤は、吸着、分解反応、イオン交換等による水中成分の除去効果を発揮する。
充填材10の総体積に対して、竹炭の割合は8体積%以上が好ましく、40体積%以上がより好ましく、90体積%以上がさらに好ましい。100体積%でもよい。
【0014】
図2に示すように、充填材10は、充填材容器15に収容されている。充填材容器15は、ケース6の開口6aから取り出し可能な形状であればよい。
本実施形態における充填材容器15は袋状である。袋材は、水を透過し、中の充填材が外に漏れないものであればよい。例えば、不織布やメッシュ状のシートが例示できる。袋材の材質は水中で使用できるものであればよい。ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等が例示できる。特に、入手容易性及びコストの点で不織布が好ましい。
【0015】
中空糸膜11は、多孔質かつ管状の構造を有する濾過膜である。浄水処理に用いられる公知の中空糸膜を使用できる。微生物及び細菌を含む0.1μm以上の固体を濾別して除去できる分画性能を有するものが好ましい。
中空糸膜の材質としては、セルロース系、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)系、ポリビニルアルコール系、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエーテル系、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系、ポリスルフォン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ四弗化エチレン系、ポリビニリデンフロライド(PVDF)系、ポリカーボネイト系、ポリエステル系、ポリアミド系、芳香族ポリアミド系等が挙げられる。
中空糸膜の取扱性や加工特性等を考慮すると、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の中空糸膜が好ましい。
【0016】
第1の水処理部20に存在する充填材10の量、及び第2の水処理部21に存在する中空糸膜11の総膜面積は、水処理カートリッジ5に要求される濾過流量に応じて設計することが好ましい。
本実施形態において、原水導入口61から、第1の水処理部20及び第2の水処理部21を経て、処理水出口62へ自然流下させるときの流量(濾過流量)は、例えば0.05~0.5L/分が好ましく、0.08~0.4L/分がより好ましい。本明細書において自然流下とは、原水の自重を推進力として第1の水処理部20及び第2の水処理部21を通過(自重濾過)することを意味する。
充填材10の量は、例えば10~500mLが好ましく、20~200mLがより好ましい。本明細書における充填材10の量は、メスシリンダーに充填材10を充填して目盛りを読む方法で測定した体積値である。上記の範囲内であると、竹炭成分の付与効果が充分に得られやすい。竹炭の増量に伴う竹炭成分の付与効果の増大には限界があり、上記範囲の上限値以下であるとコスト抑制の点で好ましい。
中空糸膜11の総膜面積は、例えば0.05~0.5m2が好ましく、0.1~0.3m2がより好ましい。上記の範囲内であると要求される濾過流量が得られやすい。総膜面積が大きいほど濾過流量は増大する。上記範囲の上限値以下であると水処理カートリッジ5のコンパクト化及びコスト抑制の点で好ましい。
【0017】
本実施形態の水処理カートリッジ5において、原水が第1の水処理部20を通過する際に、竹炭成分の付与効果及び竹炭による除去効果が得られる。また任意に存在する他の充填材による水中成分の除去効果も得られる。さらに、第1の水処理部20を通過した水は第2の水処理部21を通過する際に、中空糸膜11で濾過され浄化(浄水処理)される。
例えば、水道水(原水)を原水導入口61からケース6に導入すると、第1の水処理部20及び第2の水処理部21をこの順に通過し、浄水であるとともに竹炭由来成分を含む処理水が処理水出口62から流出する。
処理水として、例えば原水よりpHが高いアルカリ水、原水よりミネラル成分を多く含むミネラル含有水が得られる。
アルカリ水の20℃におけるpHは8.0以上が好ましく、8.5以上がより好ましい。
充填材から原水に付与されるミネラル成分は、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、リン、亜鉛、セレン、鉄からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、カリウム及びマグネシウムの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
すなわち、原水よりカリウム及びマグネシウムの一方又は両方の濃度が高いミネラル含有水が好ましい。
【0018】
本実施形態の水処理カートリッジ5を用いて得られる処理水は、飲料用、飲料の製造用、又は食品の製造用(炊飯用、調理用等)として好適に使用できる。特に炊飯用処理水に好適である。炊飯用処理水としては、特に原水よりカリウム濃度が高いミネラル含有水が好ましい。
【0019】
水が自然流下する場合、中空糸膜11より充填材10の方が水の通過速度が速い。水処理カートリッジ5において、充填材10を有する第1の水処理部20の下流に、中空糸膜11を有する第2の水処理部21を設けることにより、充填材10と水との接触時間を長くできる。また中空糸膜11の濾過流量によって充填材10と水との接触時間を制御できる。例えば、中空糸膜11の濾過流量を小さくして、充填材10と水との接触時間を長くすることにより、竹炭成分の付与効果を向上させることができる。一方、中空糸膜11の濾過流量を大きくして、充填材10と水との接触時間を短くすることにより、竹炭に由来する成分が過剰に溶出するのを防止できる。
また、第1の水処理部20から竹炭の粉末が流出した場合でも、第2の水処理部21で濾別して処理水が黒くなるのを防止できる。
【0020】
第1の水処理部20及び第2の水処理部21を通過する水の積算流量の増大に伴って、竹炭成分の付与効果及び中空糸膜11の濾過性能は漸次低下するが、後述の試験例の結果に示されるように、竹炭成分の付与効果の方が低下しやすい。特に原水にカリウムを添加する効果は低下しやすい。すなわち、竹炭成分の付与効果が充分に得られる充填材10の寿命は、中空糸膜11の濾過性能が充分に得られる中空糸膜11の寿命より短い。
本実施形態の水処理カートリッジ5は、充填材10を充填材容器15ごとカートリッジ本体8から取り出すことができるため、充填材10のみを簡単に交換して竹炭成分の付与効果を維持することができる。
また、交換時以外でも、必要に応じて充填材10を充填材容器15ごと出し入れすることができる。例えば、新品の水処理カートリッジ5を使い始める際には、中空糸膜11の内部を水で満たす親水化工程が必要であるが、カートリッジ本体8から充填材10を取り出した状態で親水化工程を行うことができる。これにより、充填材10が必要以上に水と接触するのを防止して、充填材10の寿命を延ばすことができる。
【0021】
<水処理装置>
図3は、本実施形態の水処理カートリッジ5を備える水処理装置の一例を示す半縦断面図である。
本実施形態の水処理装置1は、外容器2と、外容器2の内部に配置される内容器3と、内容器3の底壁部3bの底部開口部3cに着脱可能に装着される水処理カートリッジ5とを備える。
内容器3の内部が原水貯留部3aであり、外容器2の内部であって内容器3の底壁部3bより下側が処理水貯留部2aである。水処理カートリッジ5と内容器3の底部開口部3cは、水処理カートリッジ5の嵌合部6cに装着された弾性体(図示省略)によって液密に嵌合している。水処理カートリッジ5は上方から着脱可能である。
内容器3の容積は、例えば200~3000mLであり、400~1500mLが好ましい。内容器3の底壁部3bより底側の外容器2の容積は、例えば200~4000mLであり、500~2000mLが好ましい。
【0022】
外容器2は、上方が開口し、取っ手41及び注ぎ口42が一体に成形されている。外容器2の開口端を塞ぐための容器蓋4が着脱自在に設けられている。容器蓋4には、外容器2の注ぎ口42を覆う部分に、容器内から注出される水圧によって容器外側に向けて開く注ぎ部4aがヒンジを中心に回動して注ぎ口42を開閉可能としている。
内容器3は、上端縁に段部(図示省略)が形成されており、前記段部を外容器2の上端開口縁に載置、係合させて外容器2内に収納される。
【0023】
本実施形態の水処理装置1を用いて処理水を製造するには、水処理カートリッジ5の第1の水処理部20より上流である内容器3の内部(原水貯留部3a)に原水を供給する。原水は、内容器3の底壁部3bに取り付けた水処理カートリッジ5の原水導入口61から水処理カートリッジ5内部へ導入される。そして自然流下により、第1の水処理部20及び第2の水処理部21を順に通過し、処理水出口62から外容器2の処理水貯留部2aへ流出する。処理水出口62から流出した処理水は、処理水貯留部2aに貯留される。処理水貯留部2a溜まった処理水を注ぎ口42から取り出して使用する。
【0024】
なお、水処理カートリッジ5及び水処理装置1の形状及び大きさは適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では水処理カートリッジ5のケース6を円筒状としたが、この形状に限定されない。例えば、断面が多角形の筒状等であってもよい。
また、上記実施形態の水処理装置1は、原水貯留部3aから水処理カートリッジ5を経て処理水貯留部2aへ水が自然流下するように構成されているが、水処理カートリッジ5内の水の流れは自然流下でなくてもよい。
例えば、図示していないが、水処理カートリッジ5を備える蛇口直結型の水処理装置であってもよい。蛇口直結型の水処理装置では、水圧によって水処理カートリッジ5内部が加圧され、加圧による推進力で、水が第1の水処理部20及び第2の水処理部21を通過する。
竹炭成分付与効果に優れる点では自然流下が好ましい。
【0025】
<水処理機能付き装置>
本実施形態の水処理機能付き装置は、処理水製造部と、処理水製造部で製造した処理水を使用する装置本体とを備える。
処理水製造部は、竹炭を含む充填材を有する第1の水処理部と、中空糸膜を有する第2の水処理部とを有し、第2の水処理部は第1の水処理部の下流に存在し、充填材は、処理水製造部から取り出し可能な充填材容器に収容されている。
第1の水処理部及び第2の水処理部は、例えば、水処理カートリッジ5の第1の水処理部20及び第2の水処理部21と同様の構成とすることができる。カートリッジ本体8は必ずしも必要ではなく、第1の水処理部20及び第2の水処理部21が水処理機能付き装置に内蔵されていてもよい。又は、第1の水処理部20及び第2の水処理部21を外装体に収容した処理水製造部が、装置本体と一体的に設けられていてもよい。処理水製造部は着脱可能でもよい。
第1の水処理部20及び第2の水処理部21を通過した処理水を一旦貯留する処理水貯留部を設けてもよく、第2の水処理部21から流出する処理水を、貯留せずに装置本体へ供給する流路を設けてもよい。
装置本体としては、炊飯器、コーヒーメーカー、ポット形浄水器が例示できる。特に炊飯器が好ましい。
【0026】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0027】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
以下の試験例では、
図3に示す水処理装置1に、原水として水道水を供給して処理水を製造した。内容器3の容積は900mL、内容器3の底壁部3bより底側の外容器2の容積は1500mLである。
充填材10として、竹炭(エム・イー・ディー社製品名「METAC」)を用いた。粒度分布を表1に示す。粒度0.60mm以上3.35mm未満の粒子を使用した。
充填材容器15(7.5cm×10cmの不織布製の袋)に竹炭15gを収容した収容体を2個用いた。すなわち、竹炭の使用量は30g(92mL)とした。
中空糸膜11として、三菱ケミカル社製、浄水器用ポリエチレン中空糸膜(総膜面積0.28m
2)を用いた。中空糸膜11が新品である場合は、第1の水処理部20に充填材10が無い状態で、第2の水処理部21に水道水を流して中空糸膜11の親水化工程を行い、その後、第1の水処理部20に新品の充填材10をセットして初期状態とした。
初期状態において内容器3に1Lの水道水を供給したときの濾過流量は0.09L/分であった。
【0029】
【0030】
(試験例1)
積算流量(内容器3に供給した原水の合計量、以下同様。)を1L又は10Lとし、原水及び処理水におけるクロロホルムの濃度(単位:ppb)をJIS S3201に準拠する方法で測定した。
原水のクロロホルム濃度をa1、処理水のクロロホルム濃度をa2とするとき、下記式によりクロロホルムの除去率を求めた。結果を表2に示す。
クロロホルムの除去率(%)=(a1-a2)/a1
【0031】
【0032】
(試験例2)
積算流量を1L又は10Lとし、原水及び処理水における遊離残留塩素の濃度(単位:ppm)を、JIS S3201に準拠する方法で測定した。
原水の遊離残留塩素濃度をb1、処理水の遊離残留塩素濃度をb2とするとき、下記式により遊離残留塩素の除去率を求めた。結果を表3に示す。
遊離残留塩素の除去率(%)=(b1-b2)/b1
【0033】
【0034】
(試験例3)
積算流量を1L、2L、5L又は10Lとし、原水及び処理水の20℃におけるpHを測定した。結果を表4に示す。
【0035】
【0036】
(試験例4)
積算流量を1L、2L、5L又は10Lとし、原水及び処理水におけるカリウムの濃度(単位:mg/L)を測定した。カリウム濃度はICP分析法にて測定した。
原水のカリウム濃度をc1、処理水のカリウム濃度をc2とするとき、下記式によりカリウム濃度の増加量を求めた。
カリウム濃度の増加量(mg/L)=c2-c1
結果を表5及び
図4のグラフに示す。このグラフにおいて、縦軸は処理水のカリウム濃度、横軸は積算流量である。
【0037】
【0038】
(試験例5)
試験例4において、竹炭の使用量を10g(31mL)に変更した。それ以外は試験例4と同様にして、処理水におけるカリウム濃度(単位:ppm)を測定した。結果を
図4のグラフに示す。
【0039】
(試験例6)
積算流量を1L、5L又は10Lとし、原水及び処理水におけるマグネシウムの濃度(CaCO3換算、単位ppm)を測定した。マグネシウム濃度はICP分析法にて測定した。
原水のマグネシウム濃度をd1、処理水のマグネシウム濃度をd2とするとき、下記式によりマグネシウム濃度の増加率を求めた。結果を表6に示す。
マグネシウムの増加率(%)=d2/d1
【0040】
【0041】
上記試験例の結果より、水道水が水処理カートリッジ5を通過すると、クロロホルム及び遊離残留塩素が高い除去率で除かれ、pHが高められてアルカリ性になり、カリウム及びマグネシウムが添加されることが確認できた。
カリウムの添加量は積算流量の増加に伴って低下したが、クロロホルム及び遊離残留塩素の除去率、処理水のpH、及びマグネシウムの添加量はほとんど低下しなかった。
カリウムの添加量が低下したときは、充填材10を充填材容器15ごと取り出し、新品の充填材10を収容した充填材容器15と交換することにより、カリウムの添加量を維持することができる。