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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155911
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】接着装置
(51)【国際特許分類】
   A41H 43/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A41H43/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059355
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智行
(72)【発明者】
【氏名】皆川 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】多田 悟
(72)【発明者】
【氏名】西川 竜矢
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和俊
(72)【発明者】
【氏名】岩越 弘恭
(72)【発明者】
【氏名】柴田 到
(72)【発明者】
【氏名】増田 恭一郎
(57)【要約】
【課題】二枚のシートの接着位置のずれを接着動作中に修正することができる接着装置を提供する。
【解決手段】作業者は上布と下布を接着開始位置にセットし、踏み板を操作して接着動作を開始する。接着動作中の外乱等に因り、下布に対する上布の搬送が遅く、上布の終端が下布の終端よりも搬送方向上流側に位置する場合、作業者はトグルスイッチのレバーを上位置に倒す。トグルスイッチが第一状態を示す場合(S70:YES)、CPUは上搬送モータとポンプモータの駆動速度を加速駆動速度に設定し(S71)、上布の上搬送速度を加速する。下布に対する上布の搬送が速く、上布の終端が下布の終端よりも搬送方向下流側に位置する場合、作業者はトグルスイッチのレバーを下位置に倒す。トグルスイッチが第二状態を示す場合(S72:YES)、CPUは上搬送モータとポンプモータの駆動速度を減速駆動速度に設定し(S73)、上布の上搬送速度を減速する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を吐出するノズルと、
前記ノズルに前記接着剤を供給する供給機構と、
下シートを支持する下搬送部と、前記下搬送部との間で前記下シートと上シートを挟む上搬送部を有し、前記ノズルよりも前記下シートと前記上シートを搬送する搬送方向の下流側で、前記下搬送部と前記上搬送部の協働で前記下シートと前記上シートを圧着して搬送する搬送機構と、
前記ノズルが吐出した前記接着剤を間にして前記上シートと前記下シートを前記搬送方向の下流側に搬送しながら接着する接着動作を実行する動作制御部と
を備える接着装置において、
前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する搬送速度を変更する速度変更値を記憶する記憶部と、
前記動作制御部が前記接着動作の実行中に、前記搬送速度を変更する指示を入力する入力部と
を備え、
前記動作制御部は、前記入力部からの指示に基づいて、前記記憶部が記憶する前記速度変更値で前記搬送速度を変更し、前記接着動作を実行すること
を特徴とする接着装置。
【請求項2】
前記速度変更値は、
前記搬送速度を加速する加速変更値と、
前記搬送速度を減速する減速変更値と
を含み、
前記記憶部は、前記加速変更値と前記減速変更値との各々を記憶すること
を特徴とする請求項1に記載の接着装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記接着装置の筐体の正面に配置され、少なくとも三つ以上のいずれかの状態に切換える指示を入力可能なスイッチであり、
前記動作制御部は、前記入力部が指示する状態に応じ、前記加速変更値又は前記減速変更値で変更した前記搬送速度、或いは変更のない前記搬送速度で、前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する制御を行い、前記接着動作を実行すること
を特徴とする請求項2に記載の接着装置。
【請求項4】
前記入力部は、
レバーが起立する中立状態と、
前記中立状態から第一方向に前記レバーが倒れた第一状態と、
前記中立状態から前記第一方向とは反対の第二方向に前記レバーが倒れた第二状態と
に状態を変更可能なトグルスイッチであり、前記第一方向を上方へ向け、前記第二方向を下方へ向けて前記筐体に配置され、
前記動作制御部は、
前記入力部が前記第一状態を指示する時、前記搬送速度を前記加速変更値で変更し、
前記入力部が前記第二状態を指示する時、前記搬送速度を前記減速変更値で変更し、
前記入力部が前記中立状態を指示する時、前記搬送速度を変更せずに、
前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する制御を行い、前記接着動作を実行すること
を特徴とする請求項3に記載の接着装置。
【請求項5】
前記動作制御部が前記接着動作を開始する時、前記入力部が前記中立状態を指示するか否かを判断する判断部と、
前記入力部が前記中立状態でないと前記判断部が判断した時、前記動作制御部による前記接着動作の実行を停止し、警告を報知する報知部と
を備えることを特徴とする請求項4に記載の接着装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、
前記搬送速度に応じ、前記ノズルに前記接着剤を供給する前記供給機構の駆動量を制御する供給制御部
を有し、
前記供給制御部は、
前記入力部からの指示が前記搬送速度を加速する側に変更する指示である時、前記供給機構の駆動量を大きくする制御を行い、
前記入力部からの指示が前記搬送速度を減速する側に変更する指示である時、前記供給機構の駆動量を小さくする制御を行うこと
を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の接着装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記入力部からの指示に基づいて、前記上搬送部による前記上シートの前記搬送速度を変更し、前記接着動作を実行すること
を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の接着装置。
【請求項8】
前記入力部は、
レバーが起立する中立状態と、
前記中立状態から第一方向に前記レバーが倒れた第一状態と、
前記中立状態から前記第一方向とは反対の第二方向に前記レバーが倒れた第二状態と
に状態を変更可能なトグルスイッチであり、常には前記中立状態を維持するように付勢力が付与されており、前記第一方向を上方へ向け、前記第二方向を下方へ向けて前記筐体に配置され、
前記動作制御部は、前記搬送速度が初期値である時に、
前記入力部が前記第一状態に操作された時、前記搬送速度を前記加速変更値で変更し、
前記入力部が前記第二状態に操作された時、前記搬送速度を前記減速変更値で変更し、
前記搬送速度が前記加速変更値で変更された後、前記入力部が前記第二状態に操作された時、前記搬送速度を前記初期値に変更し、
前記搬送速度が前記減速変更値で変更された後、前記入力部が前記第一状態に操作された時、前記搬送速度を前記初期値に変更し、
前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する制御を行い、前記接着動作を実行すること
を特徴とする請求項3に記載の接着装置。
【請求項9】
前記搬送速度が前記初期値から前記加速変更値で変更された状態にあるのか、前記初期値から前記減速変更値で変更された状態にあるのかを警示する警示部を備えること
を特徴とする請求項8に記載の接着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示する接着装置は、接着剤を吐出し、二枚の布を互いに接着する。接着装置はノズル、上移送ローラ、下移送ローラを備える。作業者は上布と下布を重ねて配置し、布の接着部分にノズルを挟む。作業者がペダルを踏み込むと、ノズルは下布に向け接着剤を吐出する。同時に上移送ローラは、接着剤塗布後の下布と上布を下移送ローラとの間で押圧しながら移送し、上布と下布を接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-106065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布の性質、作業者の操作等に因り、上移送ローラが移送する上布の移送量と下移送ローラが移送する下布の移送量に差が生じ、上布と下布の接着位置が、接着予定位置からずれる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、二枚のシートの接着位置のずれを接着動作中に修正することができる接着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、接着剤を吐出するノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給機構と、下シートを支持する下搬送部と、前記下搬送部との間で前記下シートと上シートを挟む上搬送部を有し、前記ノズルよりも前記下シートと前記上シートを搬送する搬送方向の下流側で、前記下搬送部と前記上搬送部の協働で前記下シートと前記上シートを圧着して搬送する搬送機構と、前記ノズルが吐出した前記接着剤を間にして前記上シートと前記下シートを前記搬送方向の下流側に搬送しながら接着する接着動作を実行する動作制御部とを備える接着装置において、前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する搬送速度を変更する速度変更値を記憶する記憶部と、前記動作制御部が前記接着動作の実行中に、前記搬送速度を変更する指示を入力する入力部とを備え、前記動作制御部は、前記入力部からの指示に基づいて、前記記憶部が記憶する前記速度変更値で前記搬送速度を変更し、前記接着動作を実行することを特徴とする接着装置が提供される。
【0007】
接着装置は、接着動作中に、シートの性質、作業者の操作等に起因して、上シートと下シートが搬送方向にずれを生ずる時がある。接着装置は、接着動作の実行中に、入力部からの指示があれば、搬送速度を変更することができる。故に作業者は、接着動作中に、上シートと下シートの接着位置にずれが生じた時、入力部に入力を行うことで、ずれを修正することができる。すなわち接着装置は、接着動作時の外乱要因によって生じ得る接着位置のずれを、作業者の操作によって、接着動作中に直ちに修正することができる。
【0008】
本態様において、前記速度変更値は、前記搬送速度を加速する加速変更値と、前記搬送速度を減速する減速変更値とを含み、前記記憶部は、前記加速変更値と前記減速変更値との各々を記憶してもよい。接着装置は、接着動作時の外乱要因によって生じ得る接着位置のずれを、接着動作中に、上シート又は下シート或いは双方の搬送速度を加速又は減速することで、修正することができる。
【0009】
本態様において、前記入力部は、前記接着装置の筐体の正面に配置され、少なくとも三つ以上のいずれかの状態に切換える指示を入力可能なスイッチであり、前記動作制御部は、前記入力部が指示する状態に応じ、前記加速変更値又は前記減速変更値で変更した前記搬送速度、或いは変更のない前記搬送速度で、前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する制御を行い、前記接着動作を実行してもよい。筐体の正面側に入力部があるので、作業者は、接着動作中に、上シートと下シートの接着位置にずれが生じた時、直ちに入力部に入力を行い、ずれを修正することができる。入力部は、少なくとも三つ以上のいずれかの状態に切換える指示が入力可能である。故に作業者は、搬送速度の加速、維持又は減速を、直感的に、入力部に入力することができる。
【0010】
本態様において、前記入力部は、レバーが起立する中立状態と、前記中立状態から第一方向に前記レバーが倒れた第一状態と、前記中立状態から前記第一方向とは反対の第二方向に前記レバーが倒れた第二状態とに状態を変更可能なトグルスイッチであり、前記第一方向を上方へ向け、前記第二方向を下方へ向けて前記筐体に配置され、前記動作制御部は、前記入力部が前記第一状態を指示する時、前記搬送速度を前記加速変更値で変更し、前記入力部が前記第二状態を指示する時、前記搬送速度を前記減速変更値で変更し、前記入力部が前記中立状態を指示する時、前記搬送速度を変更せずに、前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する制御を行い、前記接着動作を実行してもよい。動作制御部は、入力部のレバーが上方に倒れた時、搬送速度を加速し、下方に倒れた時、搬送速度を減速し、中立の時、搬送速度を変更しない。故に作業者は、搬送速度の加速、維持又は減速を、直感的に、入力部に入力することができる。
【0011】
本態様は、前記動作制御部が前記接着動作を開始する時、前記入力部が前記中立状態を指示するか否かを判断する判断部と、前記入力部が前記中立状態でないと前記判断部が判断した時、前記動作制御部による前記接着動作の実行を停止し、警告を報知する報知部とを備えてもよい。接着装置は、接着動作の開始時に入力部が中立状態でなければ、接着動作を開始せず、警告を報知する。すなわち接着装置は、搬送速度を加速又は減速した状態で接着動作を開始することがない。故に接着装置は、入力部からの指示に基づき、確実に、搬送速度の加速、初期速度の維持又は減速を行うことができる。
【0012】
本態様において、前記動作制御部は、前記搬送速度に応じ、前記ノズルに前記接着剤を供給する前記供給機構の駆動量を制御する供給制御部を有し、前記供給制御部は、前記入力部からの指示が前記搬送速度を加速する側に変更する指示である時、前記供給機構の駆動量を大きくする制御を行い、前記入力部からの指示が前記搬送速度を減速する側に変更する指示である時、前記供給機構の駆動量を小さくする制御を行ってもよい。接着装置は、搬送速度が加速する時、供給機構の駆動量を大きくすることで、接着剤の塗布量が少なくなり、接着不良が生ずることを防止できる。接着装置は、搬送速度が減速する時、供給機構の駆動量を小さくすることで、接着剤の塗布量が多くなり、接着剤がはみ出すことを防止できる。
【0013】
本態様において、前記動作制御部は、前記入力部からの指示に基づいて、前記上搬送部による前記上シートの前記搬送速度を変更し、前記接着動作を実行してもよい。接着装置は、入力部からの指示に基づく搬送速度の変更を上シートに対して行うことができる。故に作業者は、目視で、下シートに対する上シートのずれを確認するので、ずれの有無がわかりやすい。
【0014】
本態様において、前記入力部は、レバーが起立する中立状態と、前記中立状態から第一方向に前記レバーが倒れた第一状態と、前記中立状態から前記第一方向とは反対の第二方向に前記レバーが倒れた第二状態とに状態を変更可能なトグルスイッチであり、常には前記中立状態を維持するように付勢力が付与されており、前記第一方向を上方へ向け、前記第二方向を下方へ向けて前記筐体に配置され、前記動作制御部は、前記搬送速度が初期値である時に、前記入力部が前記第一状態に操作された時、前記搬送速度を前記加速変更値で変更し、前記入力部が前記第二状態に操作された時、前記搬送速度を前記減速変更値で変更し、前記搬送速度が前記加速変更値で変更された後、前記入力部が前記第二状態に操作された時、前記搬送速度を前記初期値に変更し、前記搬送速度が前記減速変更値で変更された後、前記入力部が前記第一状態に操作された時、前記搬送速度を前記初期値に変更し、前記搬送機構が前記上シート及び前記下シートの少なくとも一方を搬送する制御を行い、前記接着動作を実行してもよい。動作制御部は、搬送速度が初期値である時において、入力部のレバーが上方に倒れた時、搬送速度を加速し、下方に倒れた時、搬送速度を減速する。動作制御部は、搬送速度が加速変更値で変更された後、入力部のレバーが下方に倒れた時、搬送速度を初期値に変更し、搬送速度が減速変更値で変更された後、入力部のレバーが上方に倒れた時、搬送速度を初期値に変更する。故に作業者は、搬送速度の加速、減速又は初期値への変更を、直感的に、入力部に入力することができる。
【0015】
本態様は、前記搬送速度が前記初期値から前記加速変更値で変更された状態にあるのか、前記初期値から前記減速変更値で変更された状態にあるのかを警示する警示部を備えてもよい。故に作業者は、搬送速度が加速状態か、減速状態か、或いは初期値の状態であるかを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】布接着装置1の左上前方視した斜視図である。
図2】布接着装置1の左上後方視した斜視図である。
図3】布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図4】上布7の終端位置に応じたトグルスイッチ9のレバー90位置を示す図である。
図5】主処理のフローチャートである。
図6】接着処理のフローチャートである。
図7図6に続く接着処理のフローチャートである。
図8】トグルスイッチ109の斜視図である。
図9図6に続く接着処理の変形例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。図1に示す布接着装置1は、二枚のシートを接着剤で接着する。二枚のシートは、例えば上布7と下布8である。上布7は下布8に上側から重なる。布接着装置1は、上布7と下布8を後方に搬送しながら、例えば上布7の左端部と下布8の右端部とを接着する。後方は搬送方向下流側、前方は搬送方向上流側である。
【0018】
図1図2を参照し、布接着装置1の構成を説明する。布接着装置1は、台座部2、脚柱部3、腕部4、頭部5、下搬送装置50を備える。台座部2は略直方体状であり、作業台(図示略)に設置する。脚柱部3は台座部2上面から上方に延びる柱状である。腕部4は脚柱部3上端部から左方に延びる。脚柱部3は前面左部に、各種スイッチを含む操作部19を配置する。頭部5は腕部4左端部から左方に突出する。台座部2は左端部に固定板2Aを備える。下搬送装置50は、固定板2Aの左面に着脱可能に固定する。固定板2A左面は、左方向に対向し且つ上下方向に平行な平面である。下搬送装置50は、後述する上搬送機構部10と協働し、上布7と下布8を重ね合わせて後方に搬送すると共に、下布8の左右方向の位置を制御する。
【0019】
下搬送装置50は、搬送方向上流側から下流側に略水平に延びる細長筒状の先端部を備える所謂「筒型」である。例えばTシャツを作成する際、二枚の布の脇合わせを行うが、生地は、最後は筒状態になる。脇合わせとは、二枚の布の隣り合う端部同士を貼り合わせて接着する作業である。下搬送装置50の先端部は細長筒状であるので、作業者は、生地を下搬送装置50の先端部で取り回すことができる。故に下搬送装置50は、二枚の布の端部同士を接着して筒状の生地を作成する際に好適である。
【0020】
頭部5は、上搬送機構部10、ノズルレバー揺動機構部20、装着部30を備える。上搬送機構部10は下搬送装置50と協働し、上布7と下布8を重ね合わせて後方に搬送する。ノズルレバー揺動機構部20は頭部5内部の左側に設ける。ノズルレバー揺動機構部20は支持軸21、ノズルレバー23、ノズル24、ノズルモータ45(図3参照)を備える。ノズルレバー揺動機構部20は、筒状の支持軸21を中心にノズルレバー23を前後方向に揺動する。ノズルレバー23は上下方向に腕状に延び、内部に接着剤が流通する流路を備える。流路は支持軸21内部と連通する。ノズルレバー23は、流路近傍の内部にヒータ22(図3参照)を備える。ヒータ22は流路を温めることで、接着剤の固化を防ぎ、流動性を高める。ノズルレバー23はノズル24を下端部に備える。ノズル24は左側面視略三角形の棒状であり、右方に略水平に延びる。ノズル24はノズルレバー23の流路と連通し、底部に吐出口(図示略)を備える。ノズル24は上布7が重なる前の下布8に、吐出口から接着剤を吐出する。ノズルモータ45は頭部5内部の左側に配置する。ノズルレバー23はノズルモータ45の駆動で揺動し、ノズル24を前後方向に移動する。装着部30は、接着剤を収容するカートリッジ(図示略)を着脱可能に装着する。装着部30はヒータ31(図3参照)を備える。ヒータ31は装着部30に装着したカートリッジを加熱する。接着剤はヒータ31の加熱で溶融して液化する。
【0021】
腕部4は上アーム41、上挟持ローラ(図示略)、上挟持モータ48(図3参照)、上エアシリンダ49(図3参照)、トグルスイッチ9、供給機構部35を備える。上アーム41は腕部4の下面右側部から左方に延び、更に屈曲して左斜め下方に延びる。腕部4は、下面左側部において上アーム41の右端部を回転可能に支持する。上アーム41の左端部はノズル24の搬送方向上流側に配置し、前後方向に延びる回転軸を後方に突出する。上挟持ローラは上アーム41左端部の後側に配置し、回転軸を中心に回転する。上アーム41は、内部に動力伝達機構を備える。上挟持モータ48は上アーム41右端部の後側に配置する。上挟持モータ48は上アーム41内部の動力伝達機構を介して上挟持ローラを回転し、後方へ搬送する上布7の左右方向の位置を制御する。上エアシリンダ49は上アーム41右端部の後側に配置する。上アーム41は自重により、左端部を下方へ向けて常時付勢する。上エアシリンダ49は、上アーム41の自重による付勢力に抗して、上アーム41を回動し、上アーム41の左端部を上方に移動する。トグルスイッチ9は腕部4の前面下部に配置する。トグルスイッチ9は、上位置、中位置、下位置の三つの位置に切り換え可能なレバー90を備える。上位置は、レバー90を中位置よりも上側に倒した位置である。下位置は、レバー90を中位置よりも下側に倒した位置である。踏板18は作業台下部に設け、作業者の足で操作する。作業者は踏板18を介して後述の接着の開始指示又は終了指示を入力する。踏板18は、接着の開始指示又は終了指示を示す情報をCPU101に出力する。トグルスイッチ9はレバー90の位置を示す情報を、第一状態、第二状態又は中立状態としてCPU101に出力する。
【0022】
供給機構部35は腕部4の右端側内部に設ける。供給機構部35は、ポンプモータ36とギアポンプ37を備える。ポンプモータ36は腕部4内部に設け、出力軸36Aを備える。ギアポンプ37は装着部30前側に設け、ノズルレバー23の支持軸21の右端部に接続する。出力軸36Aはギアポンプ37に連結する。ギアポンプ37は装着部30に装着したカートリッジから接着剤を吸引する。ギアポンプ37は吸引した接着剤を、支持軸21とノズルレバー23内の流路を介してノズル24に供給する。
【0023】
上搬送機構部10は、頭部5の下面後方部に設ける。上搬送機構部10は、支持腕11、上搬送ローラ12、上搬送モータ14、腕エアシリンダ15(図3参照)を備える。支持腕11は頭部5下方で後方から前斜め下方に延びる。支持腕11は頭部5にて揺動可能に支持する。支持腕11は下端部に上搬送ローラ12を備える。上搬送ローラ12は、左右方向に延びる回転軸を中心に回転する。上搬送モータ14は支持腕11の後端部に配置する。上搬送モータ14は、支持腕11内部に設けた伝達機構を介し、上搬送ローラ12に連結する。故に上搬送ローラ12は上搬送モータ14の動力で回転する。
【0024】
腕エアシリンダ15は頭部5に配置する。支持腕11は、腕エアシリンダ15の駆動で上下方向に揺動する。腕エアシリンダ15が支持腕11を揺動することで、上搬送ローラ12は接触位置と上方位置の間を移動する。接触位置に在る上搬送ローラ12は、下布8と上布7を後述する下搬送ローラ64との間で挟む。上方位置に在る上搬送ローラ12は、上布7から上方に退避する。
【0025】
下搬送装置50は、支持板51、フレーム部55、下搬送機構部60を備える。支持板51は前後方向に延び、左右方向に面方向を有する板部材である。支持板51は左面にフレーム部55を支持し、右面を台座部2の固定板2Aに着脱可能に固定する。フレーム部55は左右方向に延びる箱状の筐体である。フレーム部55は、搬送方向において台座部2、脚柱部3、腕部4、頭部5より前側にある。フレーム部55は、内部に下搬送機構部60の後述する複数のモータを収容する。フレーム部55の上面は平面状である。
【0026】
下搬送機構部60は、上搬送機構部10と協働して上布7と下布8を重ね合せて搬送し、且つ下布8の左右方向の位置を制御可能なユニットである。下搬送機構部60は前後方向に延びる筒状であり、搬送方向に沿ってフレーム部55から後側に延びる。下搬送機構部60の上面は、フレーム部55の上面と略同一平面状に配置する。下搬送機構部60の下面は、フレーム部55の下面よりも上側に配置する。フレーム部55は、下搬送機構部60の後端側を上下方向に揺動可能に支持する。
【0027】
下搬送機構部60は、下搬送ローラ64、ノズル下ローラ65、ノズル板66、下挟持ローラ(図示略)を備える。下搬送ローラ64は、下搬送機構部60の後端部の内側に回転可能に支持する。下搬送ローラ64の回転軸は左右方向に延びる。下搬送ローラ64は上搬送ローラ12直下に配置し、上搬送ローラ12に対して下方から接触可能である。ノズル下ローラ65は、下搬送機構部60後端部の内側で、下搬送ローラ64の搬送方向上流側に回転可能に支持する。ノズル下ローラ65の回転軸は左右方向に延びる。ノズル下ローラ65はノズル24底部の吐出口の下方に配置する。ノズル板66はノズル24の吐出口の直下に配置し、矩形状の開口部を設ける。ノズル下ローラ65は開口部の内側に配置し、その上部は上方に突出する。下挟持ローラは、下搬送機構部60後端部の内側で、ノズル下ローラ65の搬送方向上流側に回転可能に支持する。下挟持ローラの回転軸は前後方向に延びる。下挟持ローラは、上挟持ローラの下方に配置する。
【0028】
フレーム部55は、内部に下搬送モータ63(図3参照)、ノズル間隙調整モータ68(図3参照)、下挟持モータ72(図3参照)、下エアシリンダ71(図3参照)を配置する。下搬送モータ63は、下搬送機構部60内部に配置する搬送ベルト(図示略)を介し、下搬送ローラ64とノズル下ローラ65に駆動力を伝達する。故に下搬送モータ63が駆動すると、下搬送ローラ64とノズル下ローラ65は共に回転する。ノズル間隙調整モータ68は下搬送機構部60を揺動し、後端部側を上下方向に移動することで、ノズル間隙を調整する。ノズル間隙は、ノズル24の吐出口とノズル板66との間の隙間である。下挟持モータ72は、下搬送機構部60内部に配置する伝達機構(図示略)を介して下挟持ローラを回転し、後方へ搬送する下布8の左右方向の位置を制御する。下エアシリンダ71は下挟持ローラを上下方向に移動する。
【0029】
図3を参照し、布接着装置1の電気的構成を説明する。布接着装置1は制御装置100を備える。制御装置100はCPU101、ROM102、RAM103、記憶装置104、駆動回路105、106を備える。CPU101は布接着装置1の動作を統括制御する。CPU101はROM102、RAM103、記憶装置104、表示部16、情報入力部17、スピーカ29、操作部19、踏板18、トグルスイッチ9、駆動回路105、106、ヒータ22、31と接続する。ROM102は各種処理を実行するプログラムを記憶する。RAM103は各種情報を一時的に記憶する。記憶装置104は不揮発性であり、各種設定値等を記憶する。記憶装置104は、後述する主処理で用いる上搬送速度の初期値、加速変更値、減速変更値を記憶する。上搬送速度は、接着時に上搬送ローラ12が上布7を搬送する速度である。上搬送速度の初期値は、上搬送ローラ12の上搬送速度を加減速しない、通常時の上搬送速度を設定する為の設定値である。加速変更値は、上搬送速度を一時的に速くした加速時の上搬送速度に変更する為の設定値である。加速変更値は、例えば上搬送速度に掛け合わせる倍率で表し、1より大きい値である。減速変更値は、上搬送速度を一時的に遅くした減速時の上搬送速度に変更する為の設定値である。減速変更値は、例えば上搬送速度に掛け合わせる倍率で表し、0より大きく1より小さい値である。
【0030】
表示部16、情報入力部17、スピーカ29は、作業台の上の操作盤(図示略)に設ける。表示部16はCPU101からの制御信号に応じ、各種情報を表示する。情報入力部17は各種情報を入力可能である。情報入力部17は、各種指示を示す情報をCPU101に出力する。スピーカ29は各種音声を発音する。操作部19は、各種スイッチ等を含む。各種スイッチは脚柱部3前面左部に設ける。作業者は操作部19を操作して布接着装置1に各種指示を入力する。操作部19は各種指示を示す情報をCPU101に出力する。踏板18は作業台下部に設け、作業者の足で操作する。作業者は踏板18を介して後述の接着の開始指示又は終了指示を入力する。踏板18は、接着の開始指示又は終了指示を示す情報をCPU101に出力する。トグルスイッチ9はレバー90の位置を示す情報を、第一状態、第二状態又は中立状態として、CPU101に出力する。
【0031】
CPU101は駆動回路105に制御信号を送信することで、下搬送モータ63、上搬送モータ14、ノズルモータ45、ポンプモータ36、ノズル間隙調整モータ68、下挟持モータ72、上挟持モータ48の夫々を駆動制御する。CPU101は駆動回路106に制御信号を送信することで、腕エアシリンダ15、下エアシリンダ71、上エアシリンダ49の夫々を駆動制御する。CPU101はヒータ22、31を駆動する。
【0032】
作業者が布接着装置1で行う接着動作の概要を説明する。作業者は、例えば生地の性質等に起因して、布接着装置1で接着後の上布7と下布8が搬送方向に大きくずれる時、上搬送速度の修正を行う。作業者は、接着作業前の下準備として、布接着装置1に上搬送速度の初期値を設定する。作業者は、接着時の搬送方向の長さが同じ上布7と下布8の搬送方向下流側の端部を揃え、布接着装置1で接着する。接着後、作業者は上布7と下布8の搬送方向上流側の端部である終端のずれ量に基づき、上搬送速度の初期値を変更する。上布7の終端が下布8の終端よりも搬送方向下流側に位置する時、上搬送速度が速いので、作業者は上搬送速度の初期値を遅くする修正を行う。上布7の終端が下布8の終端よりも搬送方向上流側に位置する時、上搬送速度が遅いので、作業者は上搬送速度の初期値を速くする修正を行う。作業者は、接着後の上布7と下布8のずれ量が許容範囲となるまで、下準備を繰り返す。
【0033】
作業者は、例えば作業者の操作等に起因して、布接着装置1で接着後の上布7と下布8が搬送方向にずれる時、接着動作中に、上搬送速度の修正を行う。作業者は、接着作業として、布接着装置1に、上記修正を行った上搬送速度の初期値を設定する。作業者は、接着時の搬送方向の長さが同じ上布7と下布8の搬送方向下流側の端部を揃え、布接着装置1で接着する。接着動作中、作業者は上布7と下布8の終端のずれ量に基づき、トグルスイッチ9を操作する。図4(A)に示すように、上布7の終端が下布8の終端よりも搬送方向下流側に位置する時、上搬送速度が速いので、作業者はレバー90を下位置に倒し、上搬送速度を一時的に遅くする。図4(B)に示すように、上布7の終端が下布8の終端よりも搬送方向上流側に位置する時、上搬送速度が遅いので、作業者はレバー90を上位置に倒し、上搬送速度を一時的に速くする。図4(C)に示すように、上布7の終端と下布8の終端が揃う時、作業者はレバー90を中位置にし、接着作業を進める。作業者は、接着後の上布7と下布8が揃うように、接着動作中にトグルスイッチ9を適宜操作する。
【0034】
布接着装置1の動作を説明する。図5を参照し、主処理を説明する。例えば、作業者が主処理の開始指示を情報入力部17で入力する。CPU101は、主処理を開始するプログラムをROM102から読込んで、主処理を開始する。CPU101は初期化処理を行う(S10)。初期化処理では、CPU101はヒータ22、31を駆動する。
【0035】
CPU101は、作業者による指示の入力を待機する(S11:NO、S23:NO、S11)。待機状態において作業者が情報入力部17から設定変更を行う指示を入力した場合(S11:YES)、CPU101は処理をS12に移行する。CPU101は、設定値として上搬送速度の初期値、加速変更値、減速変更値を記憶装置104からRAM103に読込み、表示部16に表示する(S12)。CPU101は、作業者による指示の入力を待機する(S13:NO、S16:NO、S18:NO、S21:NO、S13)。
【0036】
待機状態において作業者が情報入力部17から上搬送速度の初期値を変更する指示を入力した場合(S13:YES)、CPU101は変更後の上搬送速度を新たな初期値としてRAM103に上書き設定し(S15)、処理をS12に移行する。待機状態において作業者が情報入力部17から加速度変更値を変更する指示を入力した場合(S16:YES)、CPU101は変更後の加速度変更値を新たな加速度変更値としてRAM103に上書き設定し(S17)、処理をS12に移行する。待機状態において作業者が情報入力部17から減速変更値を変更する指示を入力した場合(S18:YES)、CPU101は変更後の減速変更値を新たな減速変更値としてRAM103に上書き設定し(S20)、処理をS12に移行する。待機状態において作業者が情報入力部17から設定変更を終了する指示を入力した場合(S21:YES)、CPU101は、RAM103に記憶する上搬送速度の初期値、加速変更値、減速変更値を新たな設定値として記憶装置104に記憶し(S22)、処理をS23に移行する。CPU101は、作業者による接着動作開始又は設定変更の指示の入力を待機する。
【0037】
待機状態において、CPU101は作業者が踏板18を足で操作したか否かにより接着開始指示の入力の有無を判断する(S23)。作業者が上布7と下布8を接着開始位置にセットし終え、踏板18を足で操作して接着開始指示を入力すると(S23:YES)、CPU101は接着処理を実行する(S25)。図6に示すように、CPU101は、接着処理を実行すると、トグルスイッチ9が出力するレバー90の位置を示す情報が、中立状態であるか否かを判断する(S50)。レバー90の位置を示す情報が第一状態又は第二状態の場合(S50:NO)、CPU101は表示部16に中立状態でないことを示す警告表示を行い(S51)、スピーカ29から警告音を発音して(S52)、エラー報知を行う。エラー報知後、CPU101は接着処理、主処理を終了する。
【0038】
接着処理を実行し、トグルスイッチ9のレバー90の位置を示す情報が中立状態の場合(S50:YES)、CPU101は、上搬送速度の初期値、加速変更値、減速変更値を記憶装置104からRAM103に読込む(S60)。CPU101は、上搬送速度の初期値に基づく通常時の上搬送速度に応じた上搬送モータ14の駆動速度(回転速度)を演算する。布接着装置1は、上布7及び下布8の搬送速度に応じて、供給機構部35がノズル24に供給する接着剤の量を調整する。布接着装置1は、搬送速度が速い時には接着剤の供給量を増やし、搬送速度が遅い時には接着剤の供給量を減らすことで、上布7と下布8の間に塗布する接着剤の量を常に均一に保つ。故にCPU101は、更に、上搬送速度の初期値に応じたポンプモータ36の駆動速度(回転速度)を演算する(S61)。CPU101は、演算した上搬送モータ14の駆動速度とポンプモータ36の駆動速度を、通常駆動速度としてRAM103に記憶する。
【0039】
CPU101は、上搬送速度の初期値に加速変更値を掛け合わせ、加速時の上搬送速度を演算する。CPU101は、加速時の上搬送速度に応じた上搬送モータ14の駆動速度(回転速度)とポンプモータ36の駆動速度(回転速度)を演算する(S62)。CPU101は、演算した上搬送モータ14の駆動速度とポンプモータ36の駆動速度を、加速駆動速度としてRAM103に記憶する。CPU101は、上搬送速度の初期値に減速変更値を掛け合わせ、減速時の上搬送速度を演算する。CPU101は、減速時の上搬送速度に応じた上搬送モータ14の駆動速度(回転速度)とポンプモータ36の駆動速度(回転速度)を演算する(S63)。CPU101は、演算した上搬送モータ14の駆動速度とポンプモータ36の駆動速度を、減速駆動速度としてRAM103に記憶する。
【0040】
CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を、S61で演算した通常駆動速度に設定する(S65)。CPU101は、上搬送モータ14と下搬送モータ63を駆動制御し、上搬送ローラ12と下搬送ローラ64の夫々の駆動を開始する(S66)。上搬送ローラ12と下搬送ローラ64は協働して下布8と上布7を後方へ搬送する。ノズル下ローラ65は下搬送ローラ64と共に回転し、下布8を補助的に後方に向けて搬送する。CPU101はポンプモータ36を駆動制御し、接着剤の吐出を開始する(S67)。供給機構部35はポンプモータ36の駆動により接着剤をノズル24に供給する。吐出口は下方に位置する下布8の右端部に向けて接着剤を吐出する。吐出口が右端部に接着剤を塗布しながら、上搬送ローラ12、下搬送ローラ64、ノズル下ローラ65は下布8と上布7を後方へ搬送する。
【0041】
図7に示すように、CPU101は、トグルスイッチ9のレバー90が上位置に在り、第一状態を示すか否か判断する(S70)。トグルスイッチ9が第一状態を示す場合(S70:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を、S62で演算した加速駆動速度に設定する(S71)。CPU101は踏板18の検出結果に基づき、接着処理の終了指示の有無を判断する(S75)。接着処理の終了指示を検出しない場合(S75:NO)、CPU101は接着動作を継続し、処理をS70に移行する。
【0042】
レバー90が下位置に在り、トグルスイッチ9が第二状態を示す場合(S70:NO、S72:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を、S63で演算した減速駆動速度に設定する(S73)。CPU101は接着処理の終了指示を検出しない場合(S75:NO)、接着動作を継続し、処理をS70に移行する。レバー90が中位置に在り、トグルスイッチ9が中立状態を示す場合(S70:NO、S72:NO)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を通常駆動速度に設定する(S74)。CPU101は接着処理の終了指示を検出しない場合(S75:NO)、接着動作を継続し、処理をS70に移行する。
【0043】
接着処理を終了する場合、作業者は、踏板18を足で操作して接着処理の終了指示を入力する。接着処理の終了指示を検出した場合(S75:YES)、CPU101は、上搬送モータ14、下搬送モータ63、ポンプモータ36、下挟持モータ72、上挟持モータ48の駆動を停止する(S76)。CPU101は接着処理を終了し、主処理を終了する。
【0044】
以上説明したように、布接着装置1は、接着動作中に、布の性質、作業者の操作等に起因して、上布7と下布8が搬送方向にずれを生ずる時がある。布接着装置1は、接着動作の実行中に、トグルスイッチ9からの指示があれば、上搬送速度を変更することができる。故に作業者は、接着動作中に、上布7と下布8の接着位置にずれが生じた時、トグルスイッチ9を操作することで、ずれを修正することができる。すなわち布接着装置1は、接着動作時の外乱要因によって生じ得る接着位置のずれを、作業者の操作によって、接着動作中に直ちに修正することができる。
【0045】
布接着装置1は、接着動作時の外乱要因によって生じ得る接着位置のずれを、接着動作中に、上布7又は下布8或いは双方の搬送速度を加速又は減速することで、修正することができる。
【0046】
腕部4の正面側にトグルスイッチ9があるので、作業者は、接着動作中に、上布7と下布8の接着位置にずれが生じた時、直ちにトグルスイッチ9に入力を行い、ずれを修正することができる。トグルスイッチ9は、レバー90を上位置、中位置、下位置にすることができる。動作制御部は、トグルスイッチ9のレバー90が上位置の時、搬送速度を加速し、下位置の時、搬送速度を減速し、中位置の時、搬送速度を変更しない。故に作業者は、搬送速度の加速、維持又は減速を、直感的に、トグルスイッチ9に入力することができる。
【0047】
布接着装置1は、接着動作の開始時にトグルスイッチ9が中立状態でなければ、接着動作を開始せず、警告を報知する。すなわち布接着装置1は、搬送速度を加速又は減速した状態で接着動作を開始することがない。故に布接着装置1は、トグルスイッチ9からの指示に基づき、確実に、搬送速度の加速、維持又は減速を行うことができる。
【0048】
布接着装置1は、搬送速度が加速する時、供給機構部35のポンプモータ36の駆動量を大きくすることで、接着剤の塗布量が少なくなり、接着不良が生ずることを防止できる。布接着装置1は、搬送速度が減速する時、ポンプモータ36の駆動量を小さくすることで、接着剤の塗布量が多くなり、接着剤がはみ出すことを防止できる。
【0049】
布接着装置1は、トグルスイッチ9からの指示に基づく搬送速度の変更を上布7に対して行うことができる。故に作業者は、目視で、下布8に対する上布7のずれを確認するので、ずれの有無がわかりやすい。
【0050】
以上説明において、供給機構部35は本発明の供給機構の一例である。下布8は本発明の下シートの一例である。下搬送ローラ64は本発明の下搬送部の一例である。上布7は本発明の上シートの一例である。上搬送ローラ12は本発明の上搬送部の一例である。上搬送機構部10と下搬送機構部60は本発明の搬送機構の一例である。接着処理を実行するCPU101は本発明の動作制御部の一例である。記憶装置104は本発明の記憶部の一例である。トグルスイッチ9は本発明の入力部の一例である。腕部4は本発明の筐体の一例である。上方向は本発明の第一方向の一例である。下方向は本発明の第二方向の一例である。S50を実行するCPU101は本発明の判断部の一例である。S51、S52を実行するCPU101は本発明の報知部の一例である。S71、S73、S74を実行するCPU101は本発明の供給制御部の一例である。LED195、LED196は本発明の警示部の一例である。
【0051】
本発明は上記実施形態の他に種々の変更が可能である。上記実施形態は、筒型の下搬送装置50を固定した布接着装置1を例に説明したが、下布8を搬送する下搬送装置の形状、構造は、上記実施形態とは異なるものでもよい。加速変更値、減速変更値は、上搬送速度に掛け合わせる倍率で表したが、上搬送速度に対して加算又は減算する搬送速度で表してもよい。加速変更値、減速変更値は、下搬送速度に掛け合わせる倍率で表してもよいし、下搬送速度との比率で表してもよい。CPU101は、トグルスイッチ9が示す状態に基づき上搬送速度を変更したが、下搬送ローラ64が下布8を搬送する速度である下搬送速度を変更してもよい。この場合、下搬送速度の加速変更値、減速変更値は、下搬送速度に掛け合わせる倍率で表してもよいし、下搬送速度に対して加算又は減算する搬送速度で表してもよい。同様に、下搬送速度の加速変更値、減速変更値は、上搬送速度に掛け合わせる倍率で表してもよいし、上搬送速度との比率で表してもよい。
【0052】
加速変更値と減速変更値は、設定変更時に各々個別に設定したが、共通の設定値を設定してもよい。例えば、加速変更値が上搬送速度に加算する搬送速度で表す場合に、減速変更値は、上搬送速度から加速変更値と同値を減算する搬送速度で表してもよい。
【0053】
布接着装置1は、トグルスイッチ9のレバー90が示す状態に応じ、上布7の未塗布幅又は下布8の未塗布幅を変更してもよい。上布7の未塗布幅を変更する場合、CPU101は上挟持ローラの駆動量を制御すればよい。下布8の未塗布幅を変更する場合、CPU101は下挟持ローラの駆動量を制御すればよい。布接着装置1は、トグルスイッチ9のレバー90が示す状態に応じ、上搬送ローラ12が下搬送ローラ64との間で上布7と下布8を挟む押え圧を変更してもよい。この場合、CPU101は、腕エアシリンダ15の圧力を制御することで押え圧を変更する。布接着装置1は、トグルスイッチ9のレバー90が示す状態に応じ、ノズル24の吐出口とノズル板66とのノズル間隙を変更してもよい。この場合、CPU101は、ノズル間隙調整モータ68の駆動量を制御すればよい。
【0054】
トグルスイッチ9は、腕部4の正面側に配置せず、脚柱部3の操作部19に配置してもよい。布接着装置1はトグルスイッチ9の代わりに押しボタン型スイッチ、フットスイッチ、スライドスイッチ等を用いてもよい。布接着装置1は、例えばロータリースイッチを用い、上搬送速度の変更を多段階或いは無段階に行ってもよい。トグルスイッチ9はオルタネート方式に限らず、モーメンタリ方式のスイッチでもよい。例えば、図8に示すトグルスイッチ109は、操作時にはレバー190を上位置及び下位置に倒すことができ、非操作時にはレバー190が不勢力で中位置に復帰する。トグルスイッチ109は、レバー190が上位置に在る時、第一状態を示す情報を出力し、レバー190が下位置に在る時、第二状態を示す情報を出力し、中位置に在る時、情報を出力しない。トグルスイッチ109は、LED195、LED196を備え、LED195をLED196の上方に配置する。LED195は、上搬送速度が加速状態であることを示す加速警告灯であり、例えば緑色に発光する。LED196は、上搬送速度が減速状態であることを示す減速警告灯であり、例えば黄色に発光する。
【0055】
図9を参照し、布接着装置1にトグルスイッチ109を用いた場合の接着処理を説明する。CPU101は、接着処理を実行し、S66で上搬送ローラ12と下搬送ローラ64の駆動を開始した後、S67で接着剤の吐出を開始する(図7参照)。その後、処理はS77に移行する。図9に示すように、CPU101は、中立確認フラグがONであるか否かを判断する(S77)。中立確認フラグは、トグルスイッチ109のレバー190が上位置又は下位置に倒れた後、中位置に復帰したことを確認する為に用いるフラグである。中立確認フラグは、トグルスイッチ109が第一状態又は第二状態に移行した場合にOFFからONになり、中立状態に移行した場合にONからOFFになる。中立確認フラグは、初期の状態ではOFFである。中立確認フラグがOFFの場合(S77:NO)、CPU101は、トグルスイッチ109の操作の有無と、接着動作の終了指示の有無を判断しながら、接着動作を継続する(S80:NO、S90:NO、S98:NO、S77)。
【0056】
トグルスイッチ109のレバー190が上位置に在り、第一状態を示す場合(S80:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が、通常駆動速度であるか、減速移動速度であるか、或いは加速移動速度であるか判断する(S81、S85)。上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が通常駆動速度の場合(S81:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を加速駆動速度に設定し、中立確認フラグをONにする(S82)。CPU101は加速警告灯であるLED195を点灯し、処理をS90に移行して接着動作を継続する。
【0057】
トグルスイッチ109が第一状態を示し(S80:YES)、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が減速駆動速度である場合(S81:NO、S85:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を通常駆動速度に戻す設定を行い、中立確認フラグをONにする(S86)。CPU101は点灯中の減速警告灯を消灯し、処理をS90に移行して接着動作を継続する。トグルスイッチ109が第一状態を示し(S80:YES)、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が加速駆動速度である場合(S81:NO、S85:NO)、CPU101は、既に駆動速度が加速駆動速度になっているので、処理をS90に移行して接着動作を継続する。
【0058】
トグルスイッチ109のレバー190が下位置に在り、第二状態を示す場合(S90:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が、通常駆動速度であるか、減速移動速度であるか、或いは加速移動速度であるか判断する(S91、S95)。上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が通常駆動速度の場合(S91:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を減速駆動速度に設定すし、中立確認フラグをONにする(S92)。CPU101は減速警告灯であるLED196を点灯し、処理をS98に移行して接着動作を継続する。
【0059】
トグルスイッチ109が第二状態を示し(S90:YES)、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が加速駆動速度である場合(S91:NO、S95:YES)、CPU101は、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を通常駆動速度に戻す設定を行い、中立確認フラグをONにする(S96)。CPU101は点灯中の加速警告灯を消灯し、処理をS90に移行して接着動作を継続する。トグルスイッチ109が第二状態を示し(S90:YES)、上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度が減速駆動速度である場合(S91:NO、S95:NO)、CPU101は、既に駆動速度が減速駆動速度になっているので、処理をS98に移行して接着動作を継続する。
【0060】
このように作業者がレバー190を操作し、CPU101が上搬送モータ14とポンプモータ36の駆動速度を変更した場合、中立確認フラグはONになる。中立確認フラグがONの場合(S77:YES)、CPU101はトグルスイッチ109の状態が中立状態か否かを判断する(S78)。作業者がトグルスイッチ109を操作する間、レバー190は中位置に復帰しない。レバー190が中位置に復帰せず、トグルスイッチ109が第一状態又は第二状態を示す場合(S78:NO)、CPU101は、処理をS98に移行して接着動作を継続する。レバー190が中位置に復帰し、トグルスイッチ109が第一状態及び第二状態を示さない場合(S78:YES)、CPU101は、中立確認フラグをOFFにし(S79)、処理をS80に移行して接着動作を継続する。接着処理の終了指示を検出した場合(S98:YES)、CPU101は、上搬送モータ14、下搬送モータ63、ポンプモータ36、下挟持モータ72、上挟持モータ48の駆動を停止する(S99)。CPU101は接着処理を終了し、主処理を終了する。本変形例において、LED195、LED196は本発明の警示部の一例である。
【0061】
本変形例において説明したように、CPU101は、搬送速度が通常時の搬送速度である時において、トグルスイッチ109のレバー190が上位置に倒れた時、搬送速度を加速し、下位置に倒れた時、搬送速度を減速する。CPU101は、搬送速度が加速時の搬送速度に変更された後、トグルスイッチ109のレバー190が下位置に倒れた時、搬送速度を通常時の搬送速度に変更する。CPU101は、搬送速度が減速時の搬送速度に変更された後、トグルスイッチ109のレバー190が上位置に倒れた時、搬送速度を通常時の搬送速度に変更する。故に作業者は、搬送速度の加速、減速又は初期値への変更を、直感的に、トグルスイッチ109に入力することができる。トグルスイッチ109は、LED195を加速警告灯として備え、LED196を減速警告灯として備える。故に作業者は、搬送速度が加速状態か、減速状態か、或いは初期値の状態であるかを容易に確認することができる。なお、LED195、LED196は、トグルスイッチ109に配置せず、布接着装置1の筐体に配置してもよいし、無くてもよい。また、トグルスイッチ109は、レバー190が中位置に在る時、情報を出力しない構成であるが、中立状態を示す情報を出力する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 布接着装置
4 腕部
7 上布
8 下布
9,109 トグルスイッチ
10 上搬送機構部
12 上搬送ローラ
24 ノズル
35 供給機構部
60 下搬送機構部
64 下搬送ローラ
90,190 レバー
104 記憶装置
195、196 LED
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9