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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155934
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両のバッテリ回転構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20221006BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20221006BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60R16/04 D
B62D25/20 C
B62D25/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059387
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 武宏
(72)【発明者】
【氏名】安在 博之
(72)【発明者】
【氏名】得田 亮司
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB16
3D203BB35
3D203CA23
3D203CA38
3D203CB19
3D203DA12
3D203DB06
(57)【要約】
【課題】前突時にバッテリ受け部を安定的に変形させて、バッテリを回転させることが可能な車両のバッテリ回転構造を提供すること。
【解決手段】エンジン搭載部品12と対峙するバッテリBと、前突時に山型に変形可能なバッテリ支持面と、バッテリ支持面の前後方向中央の両方の側部に設けられる一対のバッテリ係止片と、一対のバッテリ係止片の係止穴に係止される一対の係止ロッド41と、一対の係止ロッド41上部で連結される押さえプレート42と、を備える車両のバッテリ回転構造30である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン搭載部品と対峙するバッテリと、
前突時に山型に変形可能なバッテリ支持面と、
前記バッテリ支持面の前後方向中央の両方の側部に設けられる一対のバッテリ係止片と、
前記一対のバッテリ係止片の係止穴に係止される一対の係止ロッドと、
前記一対の係止ロッド上部で連結される押さえプレートと、を備える車両のバッテリ回転構造。
【請求項2】
前記バッテリを支持するバッテリ支持面の後部には、溝部が設けられている請求項1に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項3】
前記溝部の後方の上部バッテリ支持ブラケットには、車体側部の剛性部材に固定して屈曲部が設けられ、
前記溝部と前記屈曲部は前記エンジン搭載部品と前記バッテリ支持面を支持する取付ベースとの間に設けられる請求項2に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項4】
前記バッテリ支持面には、開口部が設けられる請求項1に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項5】
前記バッテリ支持面は、一方のバッテリ支持面と他方のバッテリ支持面とに分割されている請求項1に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項6】
前記上部バッテリ支持ブラケットは、略L字断面形状に形成されて前記エンジン搭載部品と対峙する当接面と、後部バッテリ支持面と、を有する請求項3に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項7】
前記溝部には複数の切り欠き部が設けられる請求項2に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項8】
前記上部バッテリ支持ブラケットには、フロントサイドフレームに結合する後部支持脚が結合される請求項3に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項9】
前記溝部は、傾斜部と縦壁部とによって略L字断面形状に形成されている請求項2に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項10】
前記溝部は、傾斜部と縦壁部とによって略L字断面形状に形成され、
前記縦壁部は、前記後部支持脚の前面に結合されている請求項8に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項11】
前記バッテリ支持面を支持する取付ベースには、前記一方のバッテリ支持面を補強する補強ブラケットが結合されている請求項5に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項12】
前記一方のバッテリ支持面と前記他方のバッテリ支持面とは、前方の前部支持脚に対して上下非対称に結合されている請求項5に記載の車両のバッテリ回転構造。
【請求項13】
前記前部支持脚は、前記他方のバッテリ支持面に向かって傾斜している請求項12に記載の車両のバッテリ回転構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ回転構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されたバッテリが載置されるバッテリ受け部と、バッテリ受け部を支持する支持部材と、を備えるバッテリ支持構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-14274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成によるバッテリを支持する構造では、支持部材は剛性があり、車両の前突時に、乗員の足首等の保護のためにバッテリを回転させることはできない。
本発明は、前突時にバッテリ受け部を安定的に変形させて、バッテリを回転させることが可能な車両のバッテリ回転構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明に係るバッテリ取付部支持構造(例えば、後述する車両のバッテリ回転構造30)は、エンジン搭載部品(例えば、後述するブレーキマスタシリンダ装置12)と対峙するバッテリ(例えば、後述するバッテリB)と、前突時に山型に変形可能なバッテリ支持面(例えば、後述するバッテリ支持面3110、3120、3130)と、前記バッテリ支持面の前後方向中央の両方の側部に設けられる一対のバッテリ係止片(例えば、後述するバッテリ係止片3111、3121)と、前記一対のバッテリ係止片の係止穴(例えば、後述する係止穴3112、3122)に係止される一対の係止ロッド(例えば、後述する係止ロッド41、43)と、前記一対の係止ロッド上部で連結される押さえプレート(例えば、後述する押さえプレート42)と、を備える。
【0006】
(2) (1)のバッテリ取付部支持構造において、前記バッテリを支持するバッテリ支持面の後部には、溝部(例えば、後述する溝部3114、3124)が設けられてよい。
【0007】
(3) (2)のバッテリ取付部支持構造において、前記溝部の後方の上部バッテリ支持ブラケット(例えば、後述する上部バッテリ支持ブラケット37)には、車体側部の剛性部材(例えば、後述する剛性部材15)に固定して屈曲部(例えば、後述する屈曲部376)が設けられ、前記溝部と前記屈曲部は前記エンジン搭載部品と前記バッテリ支持面を支持する取付ベース(例えば、後述する取付ベース50)との間に設けられてよい。
【0008】
(4) (1)のバッテリ取付部支持構造において、前記バッテリ支持面には、開口部(例えば、後述する開口部3101)が設けられてよい。
【0009】
(5) (1)のバッテリ取付部支持構造において、前記バッテリ支持面は、一方のバッテリ支持面(例えば、後述する左側支持板311Aの上面)と他方のバッテリ支持面(例えば、後述する右側支持板312Aの上面)とに分割されてよい。
【0010】
(6) (3)のバッテリ取付部支持構造において、前記上部バッテリ支持ブラケットは、略L字断面形状に形成されて前記エンジン搭載部品と対峙する当接面(例えば、後述する当接面372)と、後部バッテリ支持面(例えば、後述する後部バッテリ支持面371)と、を有してよい。
【0011】
(7) (2)のバッテリ取付部支持構造において、前記溝部には複数の切り欠き部(例えば、後述する切り欠き部3115、3116)が設けられてよい。
【0012】
(8) (3)のバッテリ取付部支持構造において、前記上部バッテリ支持ブラケットには、フロントサイドフレーム(例えば、後述するフロントサイドフレーム11)に結合する後部支持脚(例えば、後述する後部支持脚36)が結合されてよい。
【0013】
(9) (2)のバッテリ取付部支持構造において、前記溝部は、傾斜部(例えば、後述する傾斜部3117、3127)と縦壁部(例えば、後述する縦壁部3118、3128)とによって略L字断面形状に形成されてよい。
【0014】
(10) (8)のバッテリ取付部支持構造において、前記溝部は、傾斜部と縦壁部とによって略L字断面形状に形成され、前記縦壁部は、前記後部支持脚の前面に結合されてよい。
【0015】
(11) (5)のバッテリ取付部支持構造において、前記バッテリ支持面を支持する取付ベースには、前記一方のバッテリ支持面を補強する補強ブラケット(例えば、後述する補強ブラケット35)が結合されてよい。
【0016】
(12) (5)のバッテリ取付部支持構造において、前記一方のバッテリ支持面と前記他方のバッテリ支持面とは、前方の前部支持脚(例えば、後述する前部支持脚60A)に対して上下非対称に結合されてよい。
【0017】
(13) (12)のバッテリ取付部支持構造において、前記前部支持脚は、前記他方のバッテリ支持面に向かって傾斜してよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前突時にバッテリ受け部を安定的に変形させて、バッテリを回転させることが可能な車両のバッテリ回転構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造が設けられるフロントサイドフレームの周辺を示す、後方且つ上方から見た拡大斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造が設けられるフロントサイドフレームの周辺を示す、車体の右側から見た拡大側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造が設けられるフロントサイドフレームの周辺を示す、拡大平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造にバッテリが支持されている様子を示す拡大平面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造が設けられるフロントサイドフレームの周辺を示す、前方且つ上方から見た拡大斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造を示す、前方且つ上方から見た斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造に対してブレーキマスタシリンダ装置が衝突する前の状態を示す拡大側面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造に対してブレーキマスタシリンダ装置が衝突した後の状態を示す拡大側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る車両のバッテリ回転構造が設けられるフロントサイドフレームの周辺を示す、後方且つ上方から見た拡大斜視図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る車両のバッテリ回転構造が設けられるフロントサイドフレームの周辺を示す、拡大平面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る車両のバッテリ回転構造に対してブレーキマスタシリンダ装置が衝突する前の状態を示す拡大側面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る車両のバッテリ回転構造に対してブレーキマスタシリンダ装置が衝突した後の状態を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、車両のバッテリ回転構造30が設けられるフロントサイドフレーム11の周辺を示す、後方且つ上方から見た拡大斜視図である。図2は、車両のバッテリ回転構造30が設けられるフロントサイドフレーム11の周辺を示す、車体の右側から見た拡大側面図である。図3は、車両のバッテリ回転構造30が設けられるフロントサイドフレーム11の周辺を示す、拡大平面図である。図4は、車両のバッテリ回転構造30にバッテリBが支持されている様子を示す拡大平面図である。
【0021】
図5は、車両のバッテリ回転構造30が設けられるフロントサイドフレーム11の周辺を示す、前方且つ上方から見た拡大斜視図である。図6は、車両のバッテリ回転構造30を示す、前方且つ上方から見た斜視図である。図7は、車両のバッテリ回転構造30に対してブレーキマスタシリンダ装置12が衝突する前の状態を示す拡大側面図である。図8は、車両のバッテリ回転構造30に対してブレーキマスタシリンダ装置12が衝突した後の状態を示す拡大側面図である。
各図において、矢印Frは車体前方向を示し、矢印Rrは車体後方向を示し、矢印Upは車体上方向を示し、矢印Lは車幅方向左方向を示し、矢印Rは車幅方向右方向を示す。なお、各図において、説明の都合上、部品の図示を適宜省略する。
【0022】
図1に示すように、エンジンルームを有する車体前部は、左右一対のフロントサイドフレーム11等を備えている。なお、説明の便宜上、フロントサイドフレーム11については、左側のフロントサイドフレーム11のみ図示している。左右一対のフロントサイドフレーム11は、それぞれ、車体の前後方向に向けて延びるように車幅方向の左右に設けられ、互いに鏡面対称となる形状を有する。これら左右一対のフロントサイドフレーム11は、それぞれ、当該フロントサイドフレーム11における前端に設けられた図示しないバンパービームブラケットを介して、図示しないバンパービームの左右後部に接続される。
【0023】
フロントサイドフレーム11の後方には、前後方向を向くように配置されてエンジンルームと車室とを前後に区切る図示しないダッシュパネルが設けられている。ダッシュパネルの前側には、ブレーキマスタシリンダ装置12が取り付けられている。ブレーキマスタシリンダ装置12は、ダッシュパネルの前面に固定された基端を有し、当該基端から前方に突出する。
【0024】
次に、車両のバッテリ回転構造30の詳細について説明する。バッテリ回転構造30は、それぞれ別個独立した部材として設けられたバッテリB(図4等参照)と、バッテリ支持面3110、3120、3130(図6等参照)及びバッテリ係止片3111、3121を有するバッテリ支持板31(図1等参照)と、係止ロッド41、43(図4等参照)と、押さえプレート42と、取付ベース50(図1等参照)と、を備えている。
【0025】
取付ベース50は、フロントサイドフレーム11の上面111にボルトにより固定されている。取付ベース50は、図1図2等に示すように、フロントサイドフレーム11の上面111に固定されている取付ベース50の基部から、上方向に向かって、前後方向の長さが短くなる山形状を有している。上下方向における取付ベース50の上端から下方向へ向かった3分の1程度の部分には、バッテリ支持板31を支持する補強ブラケット35(図2等参照)の下端部が、ボルトによって結合されて固定されている。
【0026】
取付ベース50よりも車体の後方のフロントサイドフレーム11の側面112の部分には、後部支持脚36が設けられている。後部支持脚36は、フロントサイドフレーム11の側面112から上方向に行くにつれて、車体の幅方向における車体の内側(車体の右側)へ向かうように斜め上方向に延びている。後部支持脚36の下端部は、ボルトによりフロントサイドフレーム11の側面112に結合されて固定されている。後部支持脚36の上端面361には、上部バッテリ支持ブラケット37の下端部が固定されている。また後部支持脚36の上端面よりも下側の後部支持脚36の上端部の前側には、バッテリ支持板31の後端部がボルトにより結合され固定される支持板固定面362(図5等参照)を有している。
【0027】
上部バッテリ支持ブラケット37は、図5等に示すように、上部バッテリ支持ブラケット37の長手方向に対して直交する断面が略L字状の板状の部材により構成されている。上部バッテリ支持ブラケット37の下端部における、断面が略L字状の上部バッテリ支持ブラケット37の一方面(後部バッテリ支持面371)は、後部支持脚36の上端面361に結合されて固定されている。
【0028】
上部バッテリ支持ブラケット37においては、図3に示すように、後部支持脚36の上端面に固定されている当該上部バッテリ支持ブラケット37の下端部から、上部バッテリ支持ブラケット37の上端部に向かうにつれて車体の左方向に延びてゆき、フロントサイドフレーム11の上面111の上方において車体の前方向に向かって折れ曲がる。そして、この折れ曲がった部分よりも先の屈曲部376の部分を構成する上部バッテリ支持ブラケット37の部分においては、取付ベース50の後端部の後側の位置において、ダンパハウジング14に固定され剛性を高めるための剛性部材15に、断面が略L字状の上部バッテリ支持ブラケット37の他方面(当接面372の上端部)が、ボルトによって結合され固定されている。従って、屈曲部376の部分を構成する上部バッテリ支持ブラケット37の部分は、エンジン搭載部品としてのブレーキマスタシリンダ装置12と取付ベース50との間に設けられている。
【0029】
バッテリ支持板31は、図3等に示すように、平面視でコの字形状を有する板状に形成されており、左側支持板部311と、右側支持板部312と、これらを連結する連結板部313と、を有している。従って、これらの中央である後述のバッテリ支持面3110、3120、3130の中央には、これらにより取り囲まれて上下方向にバッテリ支持板31を貫通する開口部3101が形成されている。
【0030】
左側支持板部311、右側支持板部312、及び、連結板部313の上面は、バッテリBが載置されてバッテリBを支持するバッテリ支持面3110、3120、3130を構成する。バッテリ支持面3110、3120、3130に支持されているバッテリBの後方には、ブレーキマスタシリンダ装置12が配置されており、バッテリB及び上部バッテリ支持ブラケット37の当接面372はブレーキマスタシリンダ装置12と対峙する。
【0031】
図6に示すように、左側支持板部311の長手方向である前後方向における中央部の左端縁は、上方向へ三角形状に延びるバッテリ係止片3111を有している。バッテリ係止片3111の前後には、バッテリ係止片3111から前後延びる左端縁板部3113が延びている。端縁板部3113には、複数の切り欠き部3115がバッテリ係止片3111の前後において形成されている。また、左側支持板部311の右側の端縁にも、複数の切り欠き部3116が形成されている。最後部の切り欠き部3115、切り欠き部3116は、後述の溝部3114の左右方向における両端の位置に形成されている。
【0032】
バッテリ係止片3111には、係止穴3112が形成されており、係止穴3112には、係止ロッド43(図4参照)の下部が係止される。係止ロッド43の上部は、バッテリBを上側から押さえる押さえプレート42の左端部に連結される。
【0033】
図6に示すように、左側支持板部311の後端部は、傾斜部3117と縦壁部3118とを有している。傾斜部3117は、後方向に向かうにつれて下側へ下るように傾斜している。このため、左側支持板部311は、図6等に示すように、山形状に折れ曲がっている。縦壁部3118の下端部は、傾斜部3117の下端部に一体的に接続されており、縦壁部3118と傾斜部3117との接続部分は、略L字断面形状の溝部3114を形成している。縦壁部3118は、支持板固定面362にボルトにより結合され固定されている。
【0034】
右側支持板部312の長手方向である前後方向における中央部の右端縁には、図6に示すように、右側支持板部312とは別の部品により構成され上方向へ三角形状に延びるバッテリ係止片3121が固定されている。バッテリ係止片3121には、係止穴3122が形成されており、係止穴3122には、係止ロッド41(図4参照)の下部が係止される。係止ロッド41の上部は、バッテリBを上側から押さえる押さえプレート42の右端部に連結される。バッテリ係止片3121が固定されている右側支持板部312の部分には、左側支持板部311の方へ向かって窪んだ切り欠き部3126が形成されている。
【0035】
右側支持板部312の後端部は、傾斜部3127と縦壁部3128とを有している。傾斜部3127は、後方向に向かうにつれて下側へ下るように傾斜している。このため、右側支持板部312は、図6等に示すように、左側支持板部311ほどではないが、わずかに山形状に折れ曲がっている。縦壁部3128の下端部は、傾斜部3127の下端部に一体的に接続されており、縦壁部3128と傾斜部3127との接続部分は、略L字断面形状の溝部3124を形成している。縦壁部3128は、図6に示すように、支持板固定面362にボルトにより結合され固定されている。
【0036】
次に、車両の前突時の、車両のバッテリ回転構造における動作について説明する。図7は、車両のバッテリ回転構造30に対してブレーキマスタシリンダ装置12が衝突する前の状態を示す拡大側面図である。図8は、車両のバッテリ回転構造30に対してブレーキマスタシリンダ装置12が衝突した後の状態を示す拡大側面図である。
図7に示すように、車両の前突時より前の時点では、ブレーキマスタシリンダ装置12は、車両のバッテリ回転構造30の上部バッテリ支持ブラケット37の当接面372よりも後側において、当接面372から離間して配置されている。
【0037】
次に、車両の前突時には、フロントサイドフレーム11が後方に移動する。このため、フロントサイドフレーム11に固定された取付ベース50に、バッテリ支持板31の前部を支持する補強ブラケット35が固定されているため、バッテリ支持板31の前部と共に、バッテリ支持板31に支持されているバッテリBは、ブレーキマスタシリンダ装置12に対して後方へ相対的に移動する。
【0038】
これに伴い、側方視で山形状に折れ曲がっているバッテリ支持板31の左側支持板部311及び右側支持板部312は、山形状がより急峻となるように変形してゆく。このため、バッテリBの前端部に対してバッテリBの中央部よりも後側の部分が上に持ち上げられるように、バッテリBは変位してゆく。
【0039】
そして、当接面372がブレーキマスタシリンダ装置12に衝突すると、側方視で山形状を有するバッテリ支持板31の左側支持板部311及び右側支持板部312は、図8に示すように、更に、山形状が急峻となるように変形し、これにより、バッテリ支持板31に支持されているバッテリBにおいては、前端部が下方へ回り込み、後端部が上方へ上がり、バッテリBは、前方かつ下方へ、図8に示すように、押さえプレート42を支点として回転する。
【0040】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、車両のバッテリ回転構造30は、エンジン搭載部品としてのブレーキマスタシリンダ装置12と対峙するバッテリBと、前突時に山型に変形可能なバッテリ支持面を有するバッテリ支持板31と、バッテリ支持面の前後方向中央の両方の側部に設けられる一対のバッテリ係止片3111、3121と、一対のバッテリ係止片3111、3121の係止穴3112、3122に係止される一対の係止ロッド43、41と、一対の係止ロッド43、41の上部で連結される押さえプレート42と、を備える。
【0041】
これにより、ブレーキマスタシリンダ装置12は前突時に後方へ移動してバッテリBを後方へ押す。このときバッテリ支持面を有するバッテリ支持板31の前部がバッテリBを持ち上げる。これにより係止ロッド41、43の下部のバッテリ固定フック下部がバッテリ係止片3111、3121を変形させる。そして係止ロッド41、43の上部の押さえプレート42を支点にして、バッテリBは回転する。従って、ブレーキマスタシリンダ装置12は、車室側である後方へのバッテリBの移動を抑制して、乗員の足首等を保護できる。
【0042】
また、本実施形態では、バッテリBを支持するバッテリ支持板31のバッテリ支持面の後部には、溝部3114、溝3124が設けられている。これにより、バッテリ支持板31において溝部3114、溝3124が潰れて、より急峻な山型に変形することが可能であることから、バッテリBを容易に回転できる。
【0043】
また、本実施形態では、溝部3114、3124後方の上部バッテリ支持ブラケット37には、車体側部の剛性部材15に固定される屈曲部376が設けられ、溝部3114、溝3124と屈曲部376はブレーキマスタシリンダ装置12とバッテリ支持板31を支持する取付ベース50との間に設けられる。これにより剛体の取付ベース50とエンジン搭載部品であるブレーキマスタシリンダ装置12とによって溝部3114、溝3124と屈曲部376とを変形させることから、バッテリBを容易に回転できる。
【0044】
また、本実施形態では、バッテリ支持面としてのバッテリ支持板31の上面には、開口部3101が設けられる。これにより、バッテリ支持面を有するバッテリ支持板31の下方の取付ベース50は、エンジンもしくはミッションとの締結が容易になり作業性が向上する。
【0045】
また、本実施形態では、上部バッテリ支持ブラケット37は、略L字断面形状に形成されてブレーキマスタシリンダ装置12と対峙する当接面372と、後部バッテリ支持面371と、を有する。これにより前突時に当接面372をブレーキマスタシリンダ装置12に確実に当接させるとともに、後部バッテリ支持面371にてバッテリBを支持できる。
【0046】
また、本実施形態では、溝部3114には複数の切り欠き部3115、切り欠き部3116が設けられる。これにより、切り欠き部3115、切り欠き部3116を起点として、左側支持板部311、及び、右側支持板部312を大きく変形させて、溝部3114を大きくは変形させることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、上部バッテリ支持ブラケット37には、フロントサイドフレーム11に結合する後部支持脚36が結合される。これによりバッテリBを、上部バッテリ支持ブラケット37で車幅方向において支持できるとともに、後部支持脚36で上下方向において支持できるため、バッテリBを安定して支持できる。
【0048】
また、本実施形態では、溝部3114は、傾斜部3117と縦壁部3118とにより形成され、溝部3124は、傾斜部3127と縦壁部3128とにより形成される。これにより溝部3114、3124は、それぞれ略L字断面有しており、溝部3114、3124においてバッテリ支持板31を容易に変形できる。
【0049】
また、本実施形態では、縦壁部3118、3128は、後部支持脚36の前面である支持板固定面362に結合されている。これにより一方のバッテリ支持面を有する左側支持板部311と他方のバッテリ支持面を有する右側支持板部312とを、縦壁部3118、3128によって支持できる。
【0050】
また、本実施形態では、バッテリ支持面を有するバッテリ支持板31を支持する取付ベース50には、左側支持板部311を補強する補強ブラケット35が結合されている。これにより前突時に取付ベース50に追従する補強ブラケット35によって、左側支持板部311の前部を後方に移動できる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る車両のバッテリ回転構造30Aにおいては、前部支持脚60Aが設けられている点、及び、バッテリ支持板が、第1実施形態における左側支持板部311と同様の構成の左側支持板311Aと、第1実施形態における右側支持板部312と同様の構成の右側支持板312Aと、の2つの板状の別個独立した部材により構成されている点で、第1実施形態に係る車両のバッテリ回転構造30とは異なる。
【0052】
即ち、バッテリを支持するバッテリ支持面は、一方のバッテリ支持面を構成する左側支持板311Aの上面と、他方のバッテリ支持面を構成する右側支持板312Aの上面とに分割されている。これ以外の構成については、第1実施形態に係るバッテリパック1と同じであり、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。図9は、車両のバッテリ回転構造30Aが設けられるフロントサイドフレーム11の周辺を示す、後方且つ上方から見た拡大斜視図である。図10は、車両のバッテリ回転構造30Aが設けられるフロントサイドフレーム11の周辺を示す、拡大平面図である。
【0053】
前部支持脚60Aは、連結上板部61Aと、支持壁部62Aと、被固定部63Aと、傾斜板部64Aと、を有している。連結上板部61Aの上面には、左側支持板311Aの前端部の下面が結合されて固定されている。連結上板部61Aの下面には、右側支持板312Aの前端部の上面が結合されて固定されている。即ち、バッテリ支持面を構成する左側支持板311Aの下面と、右側支持板312Aの上面とは、前部支持脚60Aの連結上板部61Aに対して上下非対称に結合されている。
【0054】
支持壁部62Aと傾斜板部64Aとは、連結上板部61Aから下方向に延びて、被固定部63Aに一体的に接続されている。より具体的には、支持壁部62Aは、連結上板部61Aの左側端部から略鉛直下方へ延びており、傾斜板部64Aは、連結上板部61Aの右側端部からフロントサイドフレーム11へ向かって、傾斜して延びている。この構成において、前部支持脚60Aの連結上板部61Aは、左側支持板311Aが固定されている部分から右側支持板312Aの上面に向かって傾斜している。被固定部63Aは、フロントサイドフレーム11の上面111に結合されて固定されている。
【0055】
次に、車両の前突時の、車両のバッテリ回転構造における動作について説明する。図11は、車両のバッテリ回転構造30Aに対してブレーキマスタシリンダ装置12が衝突する前の状態を示す拡大側面図である。図12は、車両のバッテリ回転構造30Aに対してブレーキマスタシリンダ装置12が衝突した後の状態を示す拡大側面図である。
【0056】
図11に示すように、第1実施形態と同様に、車両の前突時より前の時点では、ブレーキマスタシリンダ装置12は、車両のバッテリ回転構造30Aの上部バッテリ支持ブラケット37の当接面372よりも後側において、当接面372から離間して配置されている。
【0057】
次に、車両の前突時には、フロントサイドフレーム11が後方に移動する。これに伴い、フロントサイドフレーム11に固定された取付ベース50に、左側支持板311Aの前部を支持する補強ブラケット35が固定されているため、更に、左側支持板311Aの前端部を支持する前部支持脚60Aが、フロントサイドフレーム11に固定されているため、左側支持板311Aの前部と共に、左側支持板311Aに支持されているバッテリBは、ブレーキマスタシリンダ装置12に対して後方へ相対的に大きく移動する。
【0058】
そして、当接面372がブレーキマスタシリンダ装置12に衝突するが、側方視で山形状を有する左側支持板311A、及び、右側支持板312Aの前端部は、前部支持脚60Aにより下方向へ引っ張られて、図12に示すように、更に、山形状が急峻となるように変形し、これにより、左側支持板311A及び右側支持板312Aに支持されているバッテリBにおいては、前端部が下方へ大きく回り込み、後端部が上方へ上がり、バッテリBは、前方かつ下方へ、図12に示すように、押さえプレート42を支点として大きく回転する。
【0059】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、バッテリ支持板は、左側支持板311Aと、右側支持板312Aとに分割されて構成され、バッテリ支持面を構成するこれらの上面も分割されている。これにより、一方のバッテリ支持面を有する左側支持板311Aを取付ベース50に固定して、他方のバッテリ支持面を有する右側支持板312Aを、山型に変形できるとともに、バッテリ支持面を有するバッテリ支持板を軽量化できる。
【0060】
また、本実施形態では、一方のバッテリ支持面を有する左側支持板311Aと、他方のバッテリ支持面を有する右側支持板312Aとは、これらの前方の前部支持脚60Aに対して上下非対称に結合されている。これにより、左側支持板311Aが取付ベース50によって下方に引っ張られ、右側支持板312Aが山型に変形して上方に引っ張られることから、バッテリBと前部支持脚60Aとの乖離を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、前部支持脚60Aは、右側支持板312Aに向かって傾斜している。これにより、モーメント効果により、右側支持板312Aが山型に容易に変形できる。
【0062】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、本実施形態では、エンジン搭載部品はブレーキマスタシリンダ装置12、取付ベースはマウント部材50であったが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0063】
12…ブレーキマスタシリンダ装置(エンジン搭載部品)
15…剛性部材
30…車両のバッテリ回転構造
31…バッテリ支持板
35…補強ブラケット
36…後部支持脚
37…上部バッテリ支持ブラケット
41、43…係止ロッド
42…押さえプレート
50…マウント部材(取付ベース)
60A…前部支持脚
311A…左側支持板
312A…右側支持板
362…支持板固定面
371…後部バッテリ支持面
372…当接面
376…屈曲部
3101…開口部
3111、3121…バッテリ係止片
3112、3122…係止穴
3114、3124…溝部
3115、3116、3126…切り欠き部
3117、3127…傾斜部
3118、3128…縦壁部
B…バッテリ
図1
図2
図3
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図5
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図12