(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155937
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コネクタ及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20221006BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/52 301H
H01B7/00 301
H01B7/00 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059392
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂井 宏基
【テーマコード(参考)】
5E087
5G309
【Fターム(参考)】
5E087EE10
5E087FF02
5E087FF13
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM08
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR12
5G309AA11
5G309FA05
(57)【要約】
【課題】組立作業性を向上できるコネクタ及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】コネクタ30は、複数の電線20の端部にそれぞれ接続される複数の端子31と、複数の端子31を収容する環状のコネクタハウジング40と、コネクタハウジング40の端部に取り付けられるインナー部材90とを有する。コネクタ30は、インナー部材90に設けられるとともに、複数の電線20が個別に貫通する複数の貫通孔91Xと、複数の貫通孔91Xの内側に個別に嵌合する複数の環状のシール部材100と、インナー部材90の外側に嵌合する環状のシール部材110と、を有する。シール部材100は、電線20の外周面に密着するとともに、貫通孔91Xの内周面に密着する。シール部材110は、インナー部材90の外周面に密着するとともに、コネクタハウジング40の内周面に密着する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線の端部にそれぞれ接続される複数の端子と、
複数の前記端子を収容する環状のコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの端部に取り付けられるインナー部材と、
前記インナー部材に設けられるとともに、複数の前記電線が個別に貫通する複数の貫通孔と、
複数の前記貫通孔の内側に個別に嵌合する複数の環状の第1シール部材と、
前記インナー部材の外側に嵌合する環状の第2シール部材と、を有し、
前記第1シール部材は、前記電線の外周面に密着するとともに、前記貫通孔の内周面に密着し、
前記第2シール部材は、前記インナー部材の外周面に密着するとともに、前記コネクタハウジングの内周面に密着するコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングの端部に取り付けられるとともに、前記コネクタハウジングからの前記インナー部材及び前記第1シール部材の抜け止めを行うリテーナを更に有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記インナー部材は、前記コネクタハウジングと係合する第1係合部を有し、
前記リテーナは、前記コネクタハウジングと係合する第2係合部を有し、
前記第1係合部は、前記コネクタハウジングの周方向において前記第2係合部と異なる位置に設けられる請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記リテーナは、一対の分割体により構成されており、
一対の前記分割体の各々は、第3係合部と、第4係合部と、前記リテーナの内部に設けられる第5係合部とを有し、
一対の前記分割体のうちの一方の前記分割体の前記第3係合部は、一対の前記分割体のうちの他方の前記分割体の前記第4係合部に係合し、
一方の前記分割体の前記第5係合部は、他方の前記分割体の前記第5係合部に係合する請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
一対の前記分割体の各々は、他方の前記分割体に対向する対向面と、前記対向面から凹む凹部と、前記凹部の底面から他方の前記分割体に向かって突出する弾性変形可能な弾性片とを有し、
前記第5係合部は、前記弾性片の先端部に設けられる請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記リテーナは、複数の前記電線が個別に貫通する複数の電線貫通孔を有し、
複数の前記電線貫通孔の各々は、前記電線貫通孔の内周面から前記電線貫通孔の径方向内側に突出する突出部を有する請求項4又は請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
複数の前記電線貫通孔は、第1電線貫通孔と第2電線貫通孔とを有し、
前記第5係合部は、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔とが並ぶ方向において、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔との間に設けられており、
前記第1電線貫通孔は、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔とが並ぶ方向において、一方の前記分割体における前記第3係合部と前記第5係合部との間に設けられており、
前記第2電線貫通孔は、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔とが並ぶ方向において、一方の前記分割体における前記第4係合部と前記第5係合部との間に設けられる請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
一対の前記分割体は、互いに同じ形状を有する請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタハウジングは、
複数の前記端子を収容するインナーハウジングと、
前記インナーハウジングを収容するアウターハウジングと、を有し、
前記インナーハウジングは、前記アウターハウジングと別部品であり、
前記インナー部材は、前記アウターハウジングの端部に取り付けられるとともに、前記アウターハウジングの内部において前記インナーハウジングを支持する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記インナーハウジングは、基部と、前記基部から延びる複数の端子収容部とを有し、
複数の前記端子収容部は、複数の前記端子を個別に収容しており、
複数の前記端子収容部は、前記基部を通じて一体に形成されており、
前記インナー部材は、前記基部に接触して前記インナーハウジングを支持する請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のコネクタと、
複数の前記端子とそれぞれ接続される複数の前記電線と、を有するワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ及びワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスとしては、電線と、その電線の端部に取り付けられたコネクタとを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。コネクタは、電線の端末に接続された金属製の端子と、その端子を保持するコネクタハウジングと、コネクタハウジングの内周面と電線の外周面との間をシールするシール部材と、コネクタハウジングからのシール部材の抜け止めを行うリテーナとを有している。この種のシール部材としては、複数の電線が個別に貫通する複数の貫通孔を有する一括ゴム栓が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、各電線に流れる電流の大電流化に伴って電線が太くなると、一括ゴム栓の貫通孔に電線を挿入する作業性が悪化し、コネクタの組立作業性が悪化するという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、組立作業性を向上できるコネクタ及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、複数の電線の端部にそれぞれ接続される複数の端子と、複数の前記端子を収容する環状のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの端部に取り付けられるインナー部材と、前記インナー部材に設けられるとともに、複数の前記電線が個別に貫通する複数の貫通孔と、複数の前記貫通孔の内側に個別に嵌合する複数の環状の第1シール部材と、前記インナー部材の外側に嵌合する環状の第2シール部材と、を有し、前記第1シール部材は、前記電線の外周面に密着するとともに、前記貫通孔の内周面に密着し、前記第2シール部材は、前記インナー部材の外周面に密着するとともに、前記コネクタハウジングの内周面に密着する。
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、上記コネクタと、複数の前記端子とそれぞれ接続される複数の前記電線と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示のコネクタ及びワイヤハーネスによれば、組立作業性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のコネクタアセンブリを示す概略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のコネクタアセンブリを示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のコネクタを示す概略分解斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のコネクタを示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のコネクタを示す一部断面の概略分解斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のコネクタの一部を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のコネクタを示す一部断面の概略斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のコネクタの一部を示す概略分解斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のコネクタを示す概略分解斜視図である。
【
図11】
図11は、一実施形態のリテーナを示す概略分解斜視図である。
【
図12】
図12は、一実施形態のリテーナを示す概略分解斜視図である。
【
図13】
図13は、一実施形態のリテーナを示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、一実施形態のリテーナを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、複数の電線の端部にそれぞれ接続される複数の端子と、複数の前記端子を収容する環状のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの端部に取り付けられるインナー部材と、前記インナー部材に設けられるとともに、複数の前記電線が個別に貫通する複数の貫通孔と、複数の前記貫通孔の内側に個別に嵌合する複数の環状の第1シール部材と、前記インナー部材の外側に嵌合する環状の第2シール部材と、を有し、前記第1シール部材は、前記電線の外周面に密着するとともに、前記貫通孔の内周面に密着し、前記第2シール部材は、前記インナー部材の外周面に密着するとともに、前記コネクタハウジングの内周面に密着する。
【0011】
この構成によれば、コネクタハウジングの端部に取り付けられるインナー部材に、複数の電線が個別に貫通する複数の貫通孔が設けられる。また、複数の貫通孔には、複数の第1シール部材が個別に嵌合される。このため、例えば電線1本ずつに個別に第1シール部材を装着し、その第1シール部材が装着された電線をインナー部材の貫通孔に挿入することにより、電線及び第1シール部材をインナー部材に取り付けることができる。したがって、電線1本ずつに個別に第1シール部材を装着できるため、一括ゴム栓に対して複数の電線を装着する場合に比べて、電線に第1シール部材を装着する作業性を向上できる。これにより、コネクタの組立作業性を向上できる。
【0012】
ところで、従来のコネクタにおいて、電線1本ずつに単にシール部材を装着した場合には、複数の電線が並ぶ方向において隣り合うシール部材の間に隙間が生じるため、コネクタハウジングと電線との間をシールできない。これに対し、上記構成では、複数の貫通孔を有するインナー部材を設けるとともに、貫通孔の内周面と電線の外周面とに密着する第1シール部材と、インナー部材の外周面とコネクタハウジングの内周面とに密着する第2シール部材とを設けるようにした。これらインナー部材と第1シール部材と第2シール部材とにより、電線の外周面とインナー部材の内周面との間がシールされるとともに、インナー部材の外周面とコネクタハウジングの内周面との間がシールされる。これにより、コネクタハウジングの端部から水等の液体がコネクタハウジングの内部に浸入することを抑制できる。このように、複数の貫通孔を有するインナー部材を設けることにより、コネクタの組立作業性を向上できるとともに、コネクタの防水性を維持できる。
【0013】
[2]前記コネクタハウジングの端部に取り付けられるとともに、前記コネクタハウジングからの前記インナー部材及び前記第1シール部材の抜け止めを行うリテーナを更に有することが好ましい。この構成によれば、リテーナにより、インナー部材と第1シール部材とがコネクタハウジングから脱落することを抑制できる。これにより、コネクタにおける防水性を好適に維持できる。
【0014】
[3]前記インナー部材は、前記コネクタハウジングと係合する第1係合部を有し、前記リテーナは、前記コネクタハウジングと係合する第2係合部を有し、前記第1係合部は、前記コネクタハウジングの周方向において前記第2係合部と異なる位置に設けられることが好ましい。この構成によれば、インナー部材の第1係合部とリテーナの第2係合部とがコネクタハウジングの周方向において互いに異なる位置に設けられる。このため、第1係合部と第2係合部とはコネクタハウジングの径方向において重ならない位置に設けられる。したがって、第1係合部と第2係合部とがコネクタハウジングの径方向に重なる場合に比べて、コネクタハウジングの径方向においてコネクタを小型化できる。
【0015】
[4]前記リテーナは、一対の分割体により構成されており、一対の前記分割体の各々は、第3係合部と、第4係合部と、前記リテーナの内部に設けられる第5係合部とを有し、一対の前記分割体のうちの一方の前記分割体の前記第3係合部は、一対の前記分割体のうちの他方の前記分割体の前記第4係合部に係合し、一方の前記分割体の前記第5係合部は、他方の前記分割体の前記第5係合部に係合することが好ましい。この構成によれば、リテーナが一対の分割体により構成されている。このため、例えばコネクタハウジングに対して電線が挿入された後に、コネクタハウジングの端部に対してリテーナを取り付けることができる。これにより、コネクタハウジングにリテーナを取り付ける際の作業性を向上でき、コネクタの組立作業性を向上できる。また、一対の分割体を、第3係合部と第4係合部と第5係合部との3か所で係合する。このため、一対の分割体を互いに強固に係合させることができ、一対の分割体が分離することを好適に抑制できる。これにより、コネクタハウジングからリテーナが脱落することを好適に抑制できる。さらに、第5係合部はリテーナの内部に設けられるため、第5係合部はリテーナの外部に露出していない。このため、作業者が誤って第5係合部の係合を解除することを抑制できる。これにより、一対の分割体が分離することを抑制でき、コネクタハウジングからリテーナが脱落することを抑制できる。
【0016】
[5]一対の前記分割体の各々は、他方の前記分割体に対向する対向面と、前記対向面から凹む凹部と、前記凹部の底面から他方の前記分割体に向かって突出する弾性変形可能な弾性片とを有し、前記第5係合部は、前記弾性片の先端部に設けられることが好ましい。この構成によれば、先端部に第5係合部が設けられる弾性片が、対向面に設けられる凹部の底面から他方の分割体に向かって突出するように設けられる。このため、例えば凹部を有しない構成、つまり対向面に弾性片を設ける構成に比べて、弾性片が撓むことのできる空間を広く形成できるとともに、リテーナの大型化を抑制できる。ここで、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0017】
[6]前記リテーナは、複数の前記電線が個別に貫通する複数の電線貫通孔を有し、複数の前記電線貫通孔の各々は、前記電線貫通孔の内周面から前記電線貫通孔の径方向内側に突出する突出部を有することが好ましい。この構成によれば、各電線貫通孔の内周面に、電線貫通孔の内周面から電線貫通孔の径方向内側、つまり電線貫通孔に貫通する電線に向かって突出する突出部が設けられる。この突出部により、電線貫通孔に貫通する電線を好適に支持できるため、電線貫通孔の内部において電線が揺動することを好適に抑制できる。これにより、例えば電線の端部に接続される端子が相手端子に対して相対移動することを好適に抑制できる。この結果、端子と相手端子との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0018】
[7]複数の前記電線貫通孔は、第1電線貫通孔と第2電線貫通孔とを有し、前記第5係合部は、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔とが並ぶ方向において、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔との間に設けられており、前記第1電線貫通孔は、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔とが並ぶ方向において、一方の前記分割体における前記第3係合部と前記第5係合部との間に設けられており、前記第2電線貫通孔は、前記第1電線貫通孔と前記第2電線貫通孔とが並ぶ方向において、一方の前記分割体における前記第4係合部と前記第5係合部との間に設けられることが好ましい。この構成によれば、第1電線貫通孔が一方の分割体における第3係合部と第5係合部との間に設けられ、第2電線貫通孔が一方の分割体における第4係合部と第5係合部との間に設けられる。すなわち、第1電線貫通孔及び第2電線貫通孔は、一対の分割体における2か所の係合部分に挟まれるように設けられる。このため、例えば第1電線貫通孔及び第2電線貫通孔の近傍に1か所の係合部分のみが設けられる場合に比べて、第1電線貫通孔及び第2電線貫通孔における一対の分割体の係合を強固にできる。これにより、第1電線貫通孔及び第2電線貫通孔において一対の分割体を互いに好適に近づけることができるため、第1電線貫通孔及び第2電線貫通孔の内周面に設けられる突出部によって電線を安定して支持できる。したがって、第1電線貫通孔及び第2電線貫通孔の内部において電線が揺動することを好適に抑制できる。
【0019】
[8]一対の前記分割体は、互いに同じ形状を有することが好ましい。この構成によれば、一対の分割体が互いに同じ形状に形成されるため、部品点数、詳しくは部品の種類の増加を抑制できる。
【0020】
[9]前記コネクタハウジングは、複数の前記端子を収容するインナーハウジングと、前記インナーハウジングを収容するアウターハウジングと、を有し、前記インナーハウジングは、前記アウターハウジングと別部品であり、前記インナー部材は、前記アウターハウジングの端部に取り付けられるとともに、前記アウターハウジングの内部において前記インナーハウジングを支持することが好ましい。この構成によれば、端子を収容するインナーハウジングがアウターハウジングの内部においてインナー部材により支持される。このため、コネクタに振動が加わった場合にインナーハウジングがアウターハウジングの内部において揺動することを抑制できる。これにより、インナーハウジングに収容される端子が相手端子に対して相対移動することを抑制でき、端子と相手端子との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0021】
[10]前記インナーハウジングは、基部と、前記基部から延びる複数の端子収容部とを有し、複数の前記端子収容部は、複数の前記端子を個別に収容しており、複数の前記端子収容部は、前記基部を通じて一体に形成されており、前記インナー部材は、前記基部に接触して前記インナーハウジングを支持することが好ましい。この構成によれば、複数の端子収容部が基部を通じて一体に形成される。このため、複数の端子収容部が別部品で構成される場合に比べて、部品点数を削減できる。また、インナー部材が基部に接触することにより、複数の端子収容部を支持できる。このため、複数の端子収容部を支持するための構造を個別に設ける場合に比べて、インナー部材の構造を簡素化できる。
【0022】
[11]本開示のワイヤハーネスは、上記[1]から上記[10]のいずれか1つに記載のコネクタと、複数の前記端子とそれぞれ接続される複数の前記電線と、を有する。この構成によれば、複数の貫通孔を有するインナー部材を設けることにより、ワイヤハーネスの組立作業性を向上できるとともに、ワイヤハーネスの防水性を維持できる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタ及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個以上(本実施形態では、2個)の車載機器11,12を電気的に接続する。ワイヤハーネス10及び車載機器11,12は、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vに設けられる。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前部に設置された車載機器11と、車載機器11よりも車両Vの後方に設置された車載機器12とを電気的に接続する。車載機器11,12としては、例えば、高圧バッテリ、インバータ、モータ、リレーボックスなどを挙げることができる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、ワイヤハーネス10は、例えば、1本又は複数本(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の端部に取り付けられたコネクタアセンブリC1とを有している。
【0026】
(コネクタアセンブリC1の全体構成)
コネクタアセンブリC1は、コネクタ30と、コネクタ30と着脱可能なコネクタ200とを有している。コネクタ30は、金属製の複数(本実施形態では、2つ)の端子31を有している。コネクタ200は、金属製の複数(本実施形態では、2つ)の端子201と、複数の端子201を保持するコネクタハウジング202とを有している。コネクタ30とコネクタ200とは、組付方向D1に沿って互いに組み付けられている。コネクタ30は、例えば、組付方向D1に沿ってコネクタ200に嵌合される。
図3に示すように、コネクタ30がコネクタ200に対して正規に嵌合されると、端子31と端子201とが互いに電気的に接続される。コネクタ200は、例えば、車載機器11,12(
図1参照)のケース等の取付対象に固定されている。なお、組付方向D1は、コネクタ200に対するコネクタ30の相対的な組付方向を示しているものであって、コネクタ200を固定側として限定しているわけではない。また、各図面における上下方向は、必ずしもコネクタ30及びコネクタ200の使用時の姿勢を表すものではない。
【0027】
以下では、コネクタ30の各構成要素の位置関係を説明する際には、組付方向D1と一致する方向を第1方向X1と称し、第1方向X1の反対方向を第1反対方向X2と称する。また、第1方向X1と直交する方向のうち
図3において上方に向かう方向を第2方向Y1と称し、第2方向Y1の反対方向を第2反対方向Y2と称する。第1方向X1及び第2方向Y1の双方と直交する方向のうち
図3において左方に向かう方向を第3方向Z1と称し、第3方向Z1の反対方向を第3反対方向Z2と称する。なお、コネクタ200における方向の説明は、コネクタ30がコネクタ200に組み付けられた状態を基準として記載する。
【0028】
(コネクタ30の構成)
図4に示すように、コネクタ30は、複数の電線20の端部にそれぞれ接続された複数の端子31と、複数の端子31を収容する環状のコネクタハウジング40とを有している。コネクタハウジング40は、端子31を収容するインナーハウジング41と、インナーハウジング41を覆うアウターハウジング50とを有している。コネクタ30は、例えば、電線20に取り付けられるとともに導電性を有する1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の介在部材60と、導電性を有する1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の板ばね70とを有している。コネクタ30は、介在部材60を覆うとともに導電性を有するインナーシェル80と、インナーハウジング41を支持するインナー部材90とを有している。コネクタ30は、例えば、インナー部材90の内側に嵌合する複数(本実施形態では、2つ)のシール部材100と、インナー部材90の外側に嵌合する1つのシール部材110と、シール部材100の抜け止めを行うリテーナ120とを有している。
【0029】
(電線20の構成)
図5及び
図6に示すように、各電線20は、導電性を有する芯線21と、芯線21の外周を囲うとともに絶縁性を有するシース22とを有している。各電線20は、シース22の外周を囲うとともに導電性を有する電磁シールド部材23と、電磁シールド部材23の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆24とを有している。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線である。
【0030】
芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。また、芯線21としては、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0031】
シース22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。シース22は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
電磁シールド部材23は、例えば、シース22の外周面を周方向全周にわたって包囲している。電磁シールド部材23は、例えば、可撓性を有している。電磁シールド部材23としては、例えば、複数の金属素線が筒状に編み込まれた編組線や金属箔を用いることができる。本実施形態の電磁シールド部材23は、編組線である。電磁シールド部材23の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0032】
絶縁被覆24は、例えば、電磁シールド部材23の外周面を周方向全周にわたって包囲している。絶縁被覆24は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
芯線21の第2方向Y1の端部は、シース22から露出している。シース22から露出した芯線21の端部には、端子31が接続されている。電磁シールド部材23の第2方向Y1の端部は、絶縁被覆24から露出している。絶縁被覆24から露出した電磁シールド部材23の端部には、介在部材60が接続されている。
【0033】
(端子31の構成)
図4に示すように、2つの端子31は、2つの電線20のそれぞれに電気的に接続されている。各端子31は、例えば、電線20の端部と接続される電線接続部32と、端子接続部33とを有している。各端子31は、例えば、電線接続部32と端子接続部33とが一体に形成された単一部品である。各端子31の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。
【0034】
電線接続部32は、シース22から露出された芯線21の端部に接続されている。電線接続部32は、例えば、平板状に形成されている。電線接続部32は、例えば、圧着や超音波溶接などによって芯線21に接続されている。これにより、電線接続部32と芯線21とが電気的及び機械的に接続されている。
【0035】
端子接続部33は、例えば、平板状に形成されている。
図3に示すように、端子接続部33は、コネクタ200の端子201と電気的及び機械的に接続される。
(介在部材60の構成)
図4に示すように、2つの介在部材60は、2つの電線20のそれぞれに取り付けられている。
図5に示すように、各介在部材60は、絶縁被覆24から露出された電磁シールド部材23の端部の外周に取り付けられている。各介在部材60は、環状に形成されている。各介在部材60は、電線20の外周面に沿った環状に形成されている。各介在部材60の外周は、例えば、アウターハウジング50及びインナーシェル80に包囲されている。各介在部材60は、各電磁シールド部材23に接触するとともに、インナーシェル80に接触している。各介在部材60は、各電磁シールド部材23とインナーシェル80とを電気的に接続している。各介在部材60の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0036】
各介在部材60の軸方向の一端部は、例えば、固定部材61により電磁シールド部材23の外周面に接続されている。固定部材61は、介在部材60が電磁シールド部材23に接触された状態で、介在部材60を電線20の外周面に固定している。固定部材61は、電線20の外周面に沿った環状に形成されている。固定部材61は、電線20の電磁シールド部材23の外周面との間に介在部材60の軸方向の一端部を挟む態様で電線20の外側に嵌合されている。そして、固定部材61が電線20の径方向内側に締め付けられることにより、介在部材60の軸方向の一端部がかしめられて電磁シールド部材23の外周面に対して直接接触した状態で固定されている。これにより、電磁シールド部材23と介在部材60とが互いに電気的及び機械的に接続されている。固定部材61としては、例えば、カシメリングやカシメバンドを用いることができる。
【0037】
(板ばね70の構成)
図4に示すように、2つの板ばね70は、2つの電線20にそれぞれ対応して設けられている。各板ばね70の材料としては、鉄系や銅系の金属材料を用いることができる。各板ばね70は、第2方向Y1から見た平面形状がU字状に形成されている。
【0038】
(インナーハウジング41の構成)
インナーハウジング41は、例えば、基部42と、基部42から第2方向Y1に延びる端子収容部43とを有している。インナーハウジング41は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。インナーハウジング41は、例えば、アウターハウジング50と別部品である。
【0039】
図7に示すように、基部42は、インナーハウジング41の第2反対方向Y2側の端部に設けられている。基部42は、環状に形成されている。基部42は、例えば、2本の電線20が個別に貫通する2つの貫通孔42Xを有している。各貫通孔42Xは、基部42を第2方向Y1に貫通している。基部42は、2つの貫通孔42Xを仕切る仕切壁44を有している。仕切壁44は、第3方向Z1において、2つの貫通孔42Xの間に設けられている。仕切壁44は、例えば、基部42の第2方向Y1の全長にわたって延びている。
【0040】
端子収容部43は、2つの端子31を収容している。端子収容部43は、例えば、2つの端子31にそれぞれ対応して設けられている。すなわち、インナーハウジング41は、2つの端子収容部43を有している。2つの端子収容部43は、第3方向Z1において間隔を空けて設けられている。2つの端子収容部43は、1つの基部42に共通して連結されている。換言すると、2つの端子収容部43は、基部42を通じて一体に形成されている。
【0041】
各端子収容部43は、例えば、基部42から第2方向Y1に沿って延びる箱状に形成されている。換言すると、各端子収容部43は、例えば、底壁45を有する有底環状に形成されている。底壁45は、端子収容部43における第2方向Y1の周壁によって構成されている。各端子収容部43の内部空間は、基部42の各貫通孔42Xに連通している。各端子収容部43の内部空間には、端子31が収容されている。各端子収容部43は、コネクタ200の端子201(
図2参照)が挿入される挿入孔46を有している。各挿入孔46は、各端子収容部43の内部空間に連通している。
【0042】
(アウターハウジング50の構成)
図4~
図6に示すように、アウターハウジング50は、インナーハウジング41の外周を包囲している。換言すると、インナーハウジング41は、アウターハウジング50の内部に収容されている。アウターハウジング50は、例えば、底壁51を有する有底環状に形成されている。例えば、アウターハウジング50は、第2反対方向Y2に開口するとともに、第2方向Y1の開口が底壁51により閉塞された有底環状に形成されている。
図4に示すように、アウターハウジング50は、底壁51と、第1方向X1に設けられた周壁52と、第1反対方向X2に設けられた周壁53と、第3反対方向Z2に設けられた周壁54と、第3方向Z1に設けられた周壁55とを有している。
【0043】
アウターハウジング50は、端子収容部43の挿入孔46を露出する開口部50Xを有している。開口部50Xは、アウターハウジング50における第1方向X1の周壁52に設けられている。開口部50Xは、周壁52の第2方向Y1側の端部、つまり周壁52のうち底壁51側の端部に設けられている。開口部50Xは、組付方向D1と平行な第1方向X1に沿って周壁52を貫通している。開口部50Xは、アウターハウジング50の内部空間に連通している。
【0044】
アウターハウジング50の外周面は、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の係合部56と、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の係合部57と、1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の係合部58とを有している。
【0045】
係合部56は、例えば、周壁52のうち第2反対方向Y2側の端部における外面に設けられている。本実施形態では、第2反対方向Y2側の端部における周壁52の外面に2つの係合部56が設けられている。2つの係合部56は、例えば、第3方向Z1において互いに離れて設けられている。各係合部56は、例えば、周壁52の外面からアウターハウジング50の径方向外側に突出するように形成されている。
【0046】
係合部57は、例えば、周壁52のうち第2反対方向Y2側の端部における外面に設けられている。本実施形態では、第2反対方向Y2側の端部における周壁52の外面に1つの係合部57が設けられている。1つの係合部57は、第3方向Z1において、2つの係合部56とずれた位置に設けられている。1つの係合部57は、第3方向Z1において、2つの係合部56の間に設けられている。1つの係合部57は、第2方向Y1において、2つの係合部56とずれた位置に設けられている。1つの係合部57は、例えば、2つの係合部56よりも第2反対方向Y2側に設けられている。1つの係合部57は、例えば、周壁52の外面からアウターハウジング50の径方向外側に突出するように形成されている。なお、
図3に示すように、周壁53にも同様に2つの係合部56と1つの係合部57が設けられている。
【0047】
係合部58は、例えば、周壁54のうち第2反対方向Y2側の端部における外面に設けられている。本実施形態では、第2反対方向Y2側の端部における周壁54の外面に1つの係合部58が設けられている。1つの係合部58は、第2方向Y1において、2つの係合部56とずれた位置に設けられている。1つの係合部58は、例えば、2つの係合部56よりも第2反対方向Y2側に設けられている。1つの係合部58は、例えば、第2方向Y1において、1つの係合部57と同じ位置に設けられている。1つの係合部58は、例えば、周壁54の外面からアウターハウジング50の径方向外側に突出するように形成されている。なお、図示は省略するが、周壁55にも同様に1つの係合部58が設けられている。
【0048】
(インナーシェル80の構成)
図4に示すように、インナーシェル80は、例えば、第2方向Y1に延びる環状に形成されている。インナーシェル80の材料としては、例えば、銅系、アルミニウム系や鉄系の金属材料を用いることができる。
【0049】
図5及び
図6に示すように、インナーシェル80は、アウターハウジング50の内部に収容されている。インナーシェル80は、アウターハウジング50の径方向において、アウターハウジング50の内周面とインナーハウジング41の外周面及び介在部材60の外周面との間に設けられている。インナーシェル80における第2反対方向Y2の端部は、介在部材60の外周面に接触している。これにより、インナーシェル80は、介在部材60と電気的に接続されている。
【0050】
(インナー部材90の構成)
図8に示すように、インナー部材90は、アウターハウジング50の第2反対方向Y2側の端部に取り付けられている。インナー部材90は、例えば、インナーハウジング41とは別部品であり、アウターハウジング50とは別部品である。インナー部材90の一部は、アウターハウジング50の内部に収容されている。インナー部材90は、アウターハウジング50の内部において、インナーハウジング41を支持している。インナー部材90は、例えば、アウターハウジング50の内部において、インナーハウジング41を底壁51の内面に向かって押圧することにより、インナーハウジング41を支持している。
【0051】
図9に示すように、インナー部材90は、本体部91と、本体部91における第2反対方向Y2の端面から第2方向Y1に突出する突出部92と、1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の係合部93とを有している。インナー部材90は、例えば、本体部91と突出部92と係合部93とが一体に形成された単一部品である。インナー部材90は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
【0052】
本体部91は、環状に形成されている。本体部91は、全体として四角環状に形成されている。本体部91は、例えば、2本の電線20(
図5参照)が個別に貫通する2つの貫通孔91Xを有している。2つの貫通孔91Xの内側には、2つのシール部材100が個別に嵌合される。各貫通孔91Xは、本体部91を第2方向Y1に貫通している。各貫通孔91Xは、例えば、貫通孔91Xの貫通方向から見た平面形状が四角形状に形成されている。本体部91は、2つの貫通孔91Xを仕切る仕切壁94を有している。仕切壁94は、第3方向Z1において、2つの貫通孔91Xの間に設けられている。仕切壁94は、例えば、本体部91の第2方向Y1の全長にわたって延びている。
【0053】
本体部91は、各貫通孔91Xの内周面に設けられた1つ又は複数(本実施形態では、4つ)の規制壁95を有している。各規制壁95は、第2方向Y1側の端部における貫通孔91Xの内周面から貫通孔91Xの径方向内側に突出して形成されている。各規制壁95は、例えば、本体部91の第2方向Y1における中央部から本体部91の第2方向Y1の端面まで延びている。
【0054】
本体部91の外周面は、シール部材110が装着される溝部96を有している。溝部96は、第2方向Y1側の端部における本体部91の外周面に設けられている。溝部96は、本体部91の外周面から本体部91の径方向内側に凹むように形成されている。溝部96は、本体部91の周方向全周にわたって連続して形成されている。溝部96は、例えば、本体部91の第2方向Y1における中央部から本体部91の第2方向Y1の端面まで延びている。
【0055】
突出部92は、例えば、仕切壁94における第2方向Y1の端面から第2方向Y1に向かって突出している。突出部92は、例えば、第1方向X1に延びるとともに、第3方向Z1に所定の厚みを有している。
図8に示すように、突出部92は、インナー部材90がアウターハウジング50に取り付けられた場合に、基部42の仕切壁44に接触する。突出部92の先端面、つまり突出部92における第2方向Y1の端面は、仕切壁44の第2反対方向Y2の端面に接触する。突出部92は、例えば、仕切壁44に接触してインナーハウジング41を底壁51に向かって押圧することにより、アウターハウジング50の内部においてインナーハウジング41を支持している。
【0056】
図10に示すように、4つの係合部93は、アウターハウジング50の4つの係合部56に対応して設けられている。各係合部93は、例えば、本体部91の第2反対方向Y2の端部から第2方向Y1に向かって突出するように形成されている。
図9に示すように、各係合部93は、第1方向X1において、本体部91の外周面と離れて設けられている。各係合部93は、本体部91に接続された基端部を固定端とし、基端部とは第2方向Y1において反対側の先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。各係合部93は、弾性変形による第1方向X1への撓みが可能に構成されている。
図10に示すように、各係合部93は、係合部56が係合される係合孔93Xを有している。係合孔93Xは、例えば、第2方向Y1に沿って延びている。係合部93と係合部56とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。係合部93と係合部56とが互いに係合されることにより、インナー部材90がアウターハウジング50に固定される。
【0057】
(シール部材100,110の構成)
図6に示すように、2つのシール部材100は、2つの電線20のそれぞれに取り付けられている。各シール部材100は、各電線20の絶縁被覆24の外周面に取り付けられている。複数のシール部材100は、複数の貫通孔91Xの内側に個別に嵌合されている。各シール部材100は、貫通孔91Xの内周面に沿った外周面を有する環状に形成されている。各シール部材100は、各電線20が貫通する貫通孔101を有している。貫通孔101の内周面は、電線20の外周面に沿った形状に形成されている。各シール部材100は、弾性変形可能に構成されている。各シール部材100は、電線20の外周面に密着するとともに、貫通孔91Xの内周面に密着している。各シール部材100は、電線20の外周面とインナー部材90の内周面との間をシールする。なお、各シール部材100における第2方向Y1の端面は、
図9に示した規制壁95に接触している。各シール部材100が規制壁95に接触することにより、各貫通孔91Xに対する各シール部材100の挿入量が規制されている。換言すると、規制壁95は、各貫通孔91Xの内部において各シール部材100を位置決めする機能を有している。
【0058】
図6に示すように、シール部材110は、インナー部材90の外周面に取り付けられている。シール部材110は、例えば、本体部91の溝部96の底面に取り付けられている。シール部材110は、アウターハウジング50の内部に設けられている。シール部材110は、インナー部材90の周方向全周にわたって連続した環状に形成されている。シール部材110の外周面は、アウターハウジング50の内周面に沿った形状に形成されている。シール部材110の内周面は、インナー部材90の外周面に沿った形状に形成されている。シール部材110は、弾性変形可能に構成されている。シール部材110は、例えば、インナー部材90の外周面に密着するとともに、アウターハウジング50の内周面に密着している。シール部材110は、インナー部材90の外周面とアウターハウジング50の内周面との間をシールする。
【0059】
シール部材100,110は、例えば、ゴム製である。シール部材100,110の材料としては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。
【0060】
(リテーナ120の構成)
図5に示すように、リテーナ120は、アウターハウジング50の第2反対方向Y2側の端部に取り付けられている。リテーナ120は、コネクタハウジング40からのインナー部材90及びシール部材100の抜け止めを行う。リテーナ120は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。リテーナ120は、例えば、インナーハウジング41、アウターハウジング50及びインナー部材90とは別部品である。リテーナ120は、例えば、アウターハウジング50の外周の一部を覆うように設けられている。リテーナ120は、例えば、インナー部材90における第2反対方向Y2の端面に接触している。リテーナ120は、例えば、シール部材100における第2反対方向Y2の端面に接触している。なお、インナー部材90は、第2方向Y1において、アウターハウジング50とリテーナ120とによって挟まれている。
【0061】
図8に示すように、リテーナ120は、本体部121と、本体部121から第2方向Y1に突出するフード部130とを有している。本体部121は、2つの電線20が個別に貫通する2つの電線貫通孔122を有している。各電線貫通孔122は、本体部121を第2方向Y1に貫通している。フード部130は、例えば、アウターハウジング50の外周面を覆う。
図10に示すように、フード部130は、アウターハウジング50の係合部57に係合する係合部131と、アウターハウジング50の係合部58に係合する係合部132とを有している。
【0062】
図11及び
図12に示すように、リテーナ120は、複数(本実施形態では、2つ)の分割体141,142により構成されている。リテーナ120は、2つの分割体141,142が合体して構成されている。2つの分割体141,142は、例えば、互いに同じ形状を有している。
【0063】
(分割体141,142の構成)
分割体141は、分割本体部121Aと、分割フード部130Aとを有している。同様に、分割体142は、分割本体部121Aと、分割フード部130Aとを有している。各分割体141,142は、例えば、分割本体部121Aと分割フード部130Aとが一体に形成された単一部品である。リテーナ120では、分割体141の分割本体部121Aと分割体142の分割本体部121Aとが組み合わされることにより、本体部121が構成されている。リテーナ120では、分割体141の分割フード部130Aと分割体142の分割フード部130Aとが組み合わされることにより、フード部130が構成されている。以下では、2つの分割体141,142のうち分割体141の構造を詳細に説明し、分割体142の構造の詳細な説明は省略する。
【0064】
(分割体141の構成)
分割本体部121Aは、電線貫通孔122を構成する複数の分割貫通孔122Aと、係合部123と、係合部124と、係合部125とを有している。分割本体部121Aは、他方の分割体142に対向する対向面126を有している。分割体141の対向面126は、分割本体部121Aにおける第1反対方向X2の面である。
【0065】
各分割貫通孔122Aは、対向面126から第1方向X1、つまり他方の分割体142から離れる方向に向かって凹むように形成されている。各分割貫通孔122Aの内面は、円弧状に湾曲する曲面に形成されている。各分割貫通孔122Aの内面は、例えば、第2方向Y1から見た形状が半円状に形成されている。一対の分割体141,142が合体されると、分割体141の分割貫通孔122Aと分割体142の分割貫通孔122Aとにより電線貫通孔122が構成される。複数の分割貫通孔122Aは、第3方向Z1において間隔を空けて設けられている。
【0066】
各分割貫通孔122Aの内面は、分割貫通孔122Aの内面から電線貫通孔122の径方向内側に突出する1つ又は複数(本実施形態では、3つ)の突出部127を有している。複数の突出部127は、例えば、電線貫通孔122の周方向において間隔を空けて設けられている。各突出部127は、電線貫通孔122に貫通する電線20(
図10参照)を電線貫通孔122の径方向内側に向かって押圧する。各突出部127は、任意の形状に形成することができる。本実施形態の各突出部127は、半球状に形成されている。
【0067】
図11に示すように、係合部123は、分割本体部121Aの外面に設けられている。係合部123は、例えば、分割本体部121Aの幅方向の一端面に設けられている。ここで、分割本体部121Aの幅方向は、第3方向Z1に沿って延びている。本実施形態の係合部123は、分割本体部121Aにおける第3方向Z1の端面に設けられている。係合部123は、分割本体部121Aにおける第3方向Z1の面から第3方向Z1に向かって突出して形成されている。
【0068】
係合部124は、分割本体部121Aの外面に設けられている。係合部124は、例えば、分割本体部121Aの幅方向の端部のうち係合部123とは反対側の端部に設けられている。本実施形態の係合部124は、分割本体部121Aにおける第3反対方向Z2の端部に設けられている。
図12に示すように、係合部124は、例えば、分割本体部121Aの第1方向X1の中間部から第1反対方向X2に向かって突出するように形成されている。係合部124の先端部は、対向面126よりも第1反対方向X2に突出している。係合部124は、基端部を固定端とし、先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。係合部124は、弾性変形による第3方向Z1への撓みが可能に構成されている。各係合部124は、他方の分割体142の係合部123が係合される係合孔124Xを有している。係合孔124Xは、第1方向X1に沿って延びている。分割体141の係合部124と分割体142の係合部123とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。同様に、
図11に示すように、分割体141の係合部123と分割体142の係合部124とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。
【0069】
図13に示すように、係合部125は、リテーナ120の内部に設けられている。係合部125は、一対の分割体141,142が合体してリテーナ120が構成された際に、リテーナ120の内部、つまりリテーナ120の外部に露出しない位置に設けられている。係合部125は、2つの電線貫通孔122が並ぶ方向、詳しくは第3方向Z1において、2つの電線貫通孔122の間に設けられている。このため、2つの電線貫通孔122のうち一方の電線貫通孔122(第1電線貫通孔)は、第3方向Z1において、一方の分割体141の係合部123と係合部125との間に設けられている。また、2つの電線貫通孔122のうち他方の電線貫通孔122(第2電線貫通孔)は、第3方向Z1において、一方の分割体141の係合部124と係合部125との間に設けられている。
【0070】
分割本体部121Aは、対向面126に設けられる凹部128と、凹部128の底面から他方の分割体142に向かって突出する弾性変形可能な弾性片129とを有している。そして、係合部125は、弾性片129の先端部に設けられている。
【0071】
凹部128は、分割本体部121Aの幅方向のうち2つの分割貫通孔122Aの間に設けられる対向面126から第1方向X1に向かって凹むように形成されている。弾性片129は、凹部128の底面から第1反対方向X2に向かって突出している。弾性片129は、凹部128の底面に接続された基端部を固定端とし、基端部とは第1方向X1において反対側の先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。弾性片129は、弾性変形による第3方向Z1への撓みが可能に構成されている。弾性片129は、凹部128の内周面と離れて設けられている。
【0072】
図14に示すように、弾性片129は、凹部128の周方向全周にわたって凹部128の内周面と離れて設けられている。換言すると、凹部128の内周面は、弾性片129と離れた状態で弾性片129の外周を周方向全周にわたって包囲している。
図13に示すように、弾性片129の先端部は、対向面126よりも他方の分割体142に向かって突出している。
【0073】
係合部125は、例えば、対向面126よりも第1反対方向X2に突出した部分における弾性片129の先端部に設けられている。係合部125は、例えば、弾性片129における第3反対方向Z2の端面から第3反対方向Z2に向かって突出する突起状に形成されている。係合部125は、他方の分割体142の係合部125と係合可能に構成されている。一対の分割体141,142が合体されると、一対の分割体141,142の係合部125同士が互いに係合する。分割体141の係合部125と分割体142の係合部125とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。一対の分割体141,142が合体した状態では、例えば、分割体141の係合部125における第1方向X1の端面が分割体142の係合部125における第1反対方向X2の端面に係合する。このとき、分割体141の弾性片129の先端部及び係合部125は、他方の分割体142の凹部128に収容される。また、分割体142の弾性片129の先端部及び係合部125は、他方の分割体141の凹部128に収容される。これらにより、一対の係合部125同士は、リテーナ120の内部において互いに係合する。
【0074】
図12に示すように、分割フード部130Aは、分割本体部121Aにおける第2方向Y1の端面から第2方向Y1に向かって突出している。分割フード部130Aは、例えば、1つの係合部131と、1つの係合部132と、切欠部133とを有している。
【0075】
係合部131は、アウターハウジング50の係合部57(
図10参照)に対応して設けられている。係合部131は、第2方向Y1に沿って延びる平板状に形成されている。係合部131は、分割本体部121Aに接続される基端部を固定端とし、基端部とは第2方向Y1において反対側の先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。係合部131は、弾性変形による第1方向X1への撓みが可能に構成されている。
図4に示すように、係合部131は、係合部57が係合される係合孔131Xを有している。係合部131と係合部57とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。係合部131は、アウターハウジング50の周方向においてインナー部材90の係合部93と異なる位置に設けられている。このため、係合部131と係合部93とは、アウターハウジング50の径方向において重ならないように設けられている。
【0076】
係合部132は、アウターハウジング50の係合部58に対応して設けられている。
図12に示すように、係合部132は、例えば、分割フード部130Aにおける第3反対方向Z2の端部に設けられている。係合部132は、例えば、係合部124と第2方向Y1に沿って並んで設けられている。係合部132は、分割フード部130Aにおける第1方向X1の端部から第1反対方向X2に向かって突出するように形成されている。係合部132の先端部は、対向面126よりも第1反対方向X2に突出している。係合部132は、基端部を固定端とし、先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。係合部132は、弾性変形による第3方向Z1への撓みが可能に構成されている。
図10に示すように、係合部132は、係合部58が係合される係合孔132Xを有している。係合孔132Xは、第1方向X1に沿って延びている。係合部132と係合部58とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。
【0077】
図12に示すように、切欠部133は、分割フード部130Aの第2方向Y1側の先端部から分割本体部121Aに向かって凹むように形成されている。本実施形態の切欠部133は、分割フード部130Aの第2方向Y1側の先端部から分割本体部121Aの第2方向Y1の端面まで凹むように形成されている。
図4に示すように、切欠部133は、インナー部材90の係合部93に対応して設けられている。切欠部133は、アウターハウジング50の周方向において係合部93と重なる位置に設けられている。切欠部133は、係合部93を露出するように形成されている。本実施形態の切欠部133は、第3方向Z1において係合部131の両側に設けられている。切欠部133を設けたことにより、その切欠部133内に係合部93を設けることができるため、切欠部133を有さない構成に比べてコネクタ30を小型化できる。
【0078】
次に、コネクタ30の組立方法の一例について説明する。
まず、複数の電線20に個別にシール部材100を装着する。続いて、シール部材100の装着された電線20をインナー部材90の貫通孔91Xに挿入する。これにより、複数の貫通孔91Xの内側に個別にシール部材100が嵌合される。次いで、インナー部材90の外周面にシール部材110(
図5参照)を装着した状態で、インナー部材90をアウターハウジング50の内部に挿入する。そして、インナー部材90の係合部93をアウターハウジング50の係合部56に係合することにより、アウターハウジング50の端部にインナー部材90を取り付ける。このとき、
図5に示すように、シール部材100により電線20の外周面とインナー部材90の内周面との間がシールされるとともに、シール部材110によりインナー部材90の外周面とアウターハウジング50の内周面との間がシールされる。これにより、アウターハウジング50の端部から水等の液体がアウターハウジング50の内部に浸入することを抑制できる。また、複数の電線20に対して個別にシール部材100を装着できるため、一括ゴム栓に対して複数の電線20を装着する場合に比べて、電線20にシール部材100を装着する作業性を向上できる。
【0079】
次に、
図10に示すように、アウターハウジング50の端部にリテーナ120を取り付ける。例えば、アウターハウジング50に対して第1方向X1及び第1反対方向X2から一対の分割体141,142を取り付ける。すなわち、一対の分割体141,142は、コネクタハウジング40に対する電線20の挿入方向(ここでは、第2方向Y1)と交差する方向からアウターハウジング50に取り付けられる。一対の分割体141,142は、係合部131が係合部57に係合するとともに係合部132が係合部58に係合するように、アウターハウジング50に取り付けられる。また、アウターハウジング50に対する一対の分割体141,142の取り付けと同時に、
図13に示すように一対の分割体141,142が合体される。一対の分割体141,142が合体されると、分割体141の係合部123と分割体142の係合部124とが係合し、分割体141の係合部124と分割体142の係合部123とが係合し、分割体141,142の係合部125同士が係合する。このように3か所で係合することにより、一対の分割体141,142を強固に係合できる。また、
図5に示すように、一対の分割体141,142がアウターハウジング50に取り付けられると、各分割体141,142の分割本体部121Aにおける第2方向Y1の端面がインナー部材90及びシール部材100に接触する。これにより、インナー部材90及びシール部材100がコネクタハウジング40から脱落することを抑制できる。
【0080】
次に、本実施形態の効果を説明する。
(1)複数の電線20が個別に貫通する複数の貫通孔91Xを有するインナー部材90をコネクタハウジング40の端部に取り付け、複数の貫通孔91Xに個別にシール部材100を嵌合するようにした。このため、例えば電線20の1本ずつに個別にシール部材100を装着し、そのシール部材100が装着された電線20をインナー部材90の貫通孔91Xに挿入することにより、電線20及びシール部材100をインナー部材90に取り付けることができる。したがって、電線20の1本ずつに個別にシール部材100を装着できるため、一括ゴム栓に対して複数の電線20を装着する場合に比べて、電線20にシール部材100を装着する作業性を向上できる。これにより、コネクタ30の組立作業性を向上できる。
【0081】
ところで、従来のコネクタにおいて、電線1本ずつに単にシール部材を装着した場合には、複数の電線が並ぶ方向において隣り合うシール部材の間に隙間が生じるため、コネクタハウジングと電線との間をシールできない。これに対し、本実施形態のコネクタ30では、複数の貫通孔91Xを有するインナー部材90と、複数の貫通孔91Xに個別に嵌合する複数のシール部材100と、インナー部材90の外側に嵌合するシール部材110とを設けるようにした。ここで、各シール部材100は、貫通孔91Xの内周面と電線20の外周面とに密着する。また、シール部材110は、インナー部材90の外周面とコネクタハウジング40の内周面とに密着する。これらインナー部材90とシール部材100とシール部材110とにより、電線20の外周面とインナー部材90の内周面との間がシールされるとともに、インナー部材90の外周面とコネクタハウジング40の内周面との間がシールされる。これにより、コネクタハウジング40の端部から水等の液体がコネクタハウジング40の内部に浸入することを抑制できる。このように、複数の貫通孔91Xを有するインナー部材90を設けることにより、コネクタ30の組立作業性を向上できるとともに、コネクタ30の防水性を維持できる。
【0082】
(2)コネクタハウジング40からのインナー部材90及びシール部材100の抜け止めを行うリテーナ120を設けた。このため、インナー部材90とシール部材100とがコネクタハウジング40から脱落することを抑制できる。これにより、コネクタ30における防水性を好適に維持できる。
【0083】
(3)インナー部材90の係合部93とリテーナ120の係合部131とがコネクタハウジング40の周方向において互いに異なる位置に設けられる。このため、係合部93と係合部131とはコネクタハウジング40の径方向において重ならない位置に設けられる。したがって、係合部93と係合部131とがコネクタハウジング40の径方向に重なる場合に比べて、コネクタハウジング40の径方向においてコネクタ30を小型化できる。
【0084】
(4)リテーナ120を一対の分割体141,142により構成した。このため、例えばコネクタハウジング40に対して電線20が挿入された後に、コネクタハウジング40の端部に対してリテーナ120を取り付けることができる。これにより、コネクタハウジング40にリテーナ120を取り付ける際の作業性を向上でき、コネクタ30の組立作業性を向上できる。
【0085】
(5)一対の分割体141,142を、係合部123と係合部124と係合部125との3か所で係合するようにした。このため、一対の分割体141,142を互いに強固に係合させることができる。これにより、一対の分割体141,142が分離することを好適に抑制できるため、コネクタハウジング40からリテーナ120が脱落することを好適に抑制できる。さらに、係合部125をリテーナ120の内部に設けたため、作業者が誤って係合部125の係合を解除することを抑制できる。これにより、一対の分割体141,142が分離することを好適に抑制でき、コネクタハウジング40からリテーナ120が脱落することを好適に抑制できる。
【0086】
(6)対向面126に設けられる凹部128の底面から他方の分割体142に向かって突出する弾性片129の先端部に係合部125を設けた。このため、例えば凹部128を有しない構成、つまり対向面126に弾性片129を設ける構成に比べて、弾性片129が撓むことのできる空間を広く形成できるとともに、リテーナ120の大型化を抑制できる。
【0087】
(7)各電線貫通孔122の内周面に、電線貫通孔122の内周面から電線貫通孔122の径方向内側、つまり電線貫通孔122に貫通する電線20に向かって突出する突出部127を設けた。この突出部127により、電線貫通孔122に貫通する電線20を好適に支持できるため、電線貫通孔122の内部において電線20が揺動することを好適に抑制できる。これにより、例えば電線20の端部に接続される端子31が相手端子である端子201に対して相対移動することを好適に抑制できる。この結果、端子31と端子201との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0088】
(8)2つの電線貫通孔122の一方の電線貫通孔122(第1電線貫通孔)が、第3方向Z1において、一方の分割体141の係合部123と係合部125との間に設けられている。また、2つの電線貫通孔122のうち他方の電線貫通孔122(第2電線貫通孔)が、第3方向Z1において、一方の分割体141の係合部124と係合部125との間に設けられている。すなわち、2つの電線貫通孔122の各々は、一対の分割体141,142における2か所の係合部分に挟まれるように設けられる。このため、例えば各電線貫通孔122の近傍に1か所の係合部分のみが設けられる場合に比べて、各電線貫通孔122における一対の分割体141,142の係合を強固にできる。これにより、各電線貫通孔122において一対の分割体141,142を互いに好適に近づけることができるため、各電線貫通孔122の内周面に設けられる突出部127によって電線20を安定して支持できる。したがって、各電線貫通孔122の内部において電線20が揺動することを好適に抑制できる。
【0089】
(9)一対の分割体141,142が互いに同じ形状に形成されるため、部品点数、詳しくは部品の種類の増加を抑制できる。また、分割体141,142を製造するための金型を共通化できるため、金型を削減でき、リテーナ120の製造性を向上できる。ひいてはコネクタ30の製造性を向上できる。
【0090】
(10)端子31を収容するインナーハウジング41がアウターハウジング50の内部においてインナー部材90により支持される。このため、コネクタ30に振動が加わった場合にインナーハウジング41がアウターハウジング50の内部において揺動することを抑制できる。これにより、インナーハウジング41に収容される端子31が相手端子である端子201に対して相対移動することを抑制でき、端子31と端子201との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0091】
(11)複数の端子収容部43が基部42を通じて一体に形成される。このため、複数の端子収容部43が別部品で構成される場合に比べて、部品点数を削減できる。また、インナー部材90が基部42に接触することにより、複数の端子収容部43を支持できる。このため、複数の端子収容部43を支持するための構造を個別に設ける場合に比べて、インナー部材90の構造を簡素化できる。
【0092】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0093】
・上記実施形態における分割体141,142の構造を適宜変更してもよい。
・上記実施形態の分割体141,142における突出部127を省略してもよい。
・上記実施形態の分割体141,142における凹部128を省略してもよい。この場合には、例えば弾性片129を対向面126に設けてもよい。
【0094】
・上記実施形態では、係合部125を、第3方向Z1において、2つの電線貫通孔122の間に設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、係合部125を、分割本体部121Aの幅方向の一端部又は両端部に設けるようにしてもよい。
【0095】
・上記実施形態の分割体141,142における係合部125の構造を適宜変更してもよい。係合部125は、一対の分割体141,142の係合部125同士が係合可能な構造を有していれば、その他の構造は特に限定されない。
【0096】
・上記実施形態の分割体141,142における係合部123,124の構造を適宜変更してもよい。係合部123及び係合部124は、それら係合部123と係合部124とが互いに係合可能な構造を有していれば、その他の構造は特に限定されない。
【0097】
・上記実施形態の分割体141,142では、リテーナ120の外周に設けられる2つの係合部123,124と、リテーナ120の内部に設けられる1つの係合部125とを設けるようにしたが、これら係合部123,124,125の数は限定されない。例えば、リテーナ120の内部に設けられる係合部125を複数設けるようにしてもよい。
【0098】
・上記実施形態の分割体141,142における係合部125を省略してもよい。この場合の分割体141,142は、係合部123,124を有することが好ましい。
・上記実施形態の分割体141,142における係合部123,124を省略してもよい。この場合の分割体141,142は、係合部125を有することが好ましい。
【0099】
・上記実施形態の分割体141,142における切欠部133を省略してもよい。
・上記実施形態の分割体141,142における係合部131を、アウターハウジング50の径方向においてインナー部材90の係合部93と重なるように設けてもよい。
【0100】
・上記実施形態の分割体141,142における係合部131,132の構造を適宜変更してもよい。係合部131,132は、アウターハウジング50の係合部57,58にそれぞれ係合可能な構造を有していれば、その他の構造は特に限定されない。
【0101】
・上記実施形態の分割体141,142における係合部131,132の少なくとも一方を省略してもよい。
・上記実施形態では、一対の分割体141,142を互いに同じ形状に形成したが、これに限定されない。例えば、一対の分割体141,142を互いに異なる形状に形成してもよい。
【0102】
・上記実施形態では、リテーナ120を一対の分割体141,142により構成したが、これに限定されない。例えば、リテーナ120を3つ以上の分割体により構成してもよい。例えば、リテーナ120を単一部品で構成してもよい。
【0103】
・上記実施形態におけるリテーナ120を省略してもよい。
・上記実施形態におけるインナー部材90の構造を適宜変更してもよい。
・上記実施形態のインナー部材90における突出部92を省略してもよい。
【0104】
・上記実施形態のインナー部材90における係合部93の数は特に限定されない。
・上記実施形態のインナー部材90における係合部93の構造を適宜変更してもよい。係合部93は、アウターハウジング50の係合部56に係合可能な構造を有していれば、その他の構造は特に限定されない。
【0105】
・上記実施形態では、シール部材100,110をゴム製のゴムリングに具体化したが、これに限定されない。例えば、シール部材100,110として、ゴム以外の弾性体からなるリング部材を採用するようにしてもよい。
【0106】
・上記実施形態のインナーハウジング41では、複数の端子収容部43を、基部42を通じて一体に形成したが、これに限定されない。例えば、複数の端子収容部43を別部品で構成してもよい。
【0107】
・上記実施形態のコネクタハウジング40では、インナーハウジング41とアウターハウジング50とを別部品で構成したが、これに限定されない。例えば、インナーハウジング41とアウターハウジング50とを一体に形成してもよい。
【0108】
・上記実施形態では、電線20をシールド電線に具体化したが、これに限定されない。例えば、電線20を、自身に電磁シールド構造を有さないノンシールド電線に具体化してもよい。この場合には、例えば、介在部材60、固定部材61やインナーシェル80を省略してもよい。
【0109】
・上記実施形態のコネクタ30は、2つの端子31を有する構成としたが、1つや3つ以上の端子31を有する構成としてもよい。
・上記実施形態のコネクタ200は、2つの端子201を有する構成としたが、1つや3つ以上の端子201を有する構成としてもよい。
【0110】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
10 ワイヤハーネス
11,12 車載機器
20 電線
21 芯線
22 シース
23 電磁シールド部材
24 絶縁被覆
30 コネクタ
31 端子
32 電線接続部
33 端子接続部
40 コネクタハウジング
41 インナーハウジング
42 基部
42X 貫通孔
43 端子収容部
44 仕切壁
45 底壁
46 挿入孔
50 アウターハウジング
50X 開口部
51 底壁
52~55 周壁
56~58 係合部
60 介在部材
61 固定部材
70 板ばね
80 インナーシェル
90 インナー部材
91 本体部
91X 貫通孔
92 突出部
93 係合部(第1係合部)
93X 係合孔
94 仕切壁
95 規制壁
96 溝部
100 シール部材(第1シール部材)
101 貫通孔
110 シール部材(第2シール部材)
120 リテーナ
121 本体部
121A 分割本体部
122 電線貫通孔
122A 分割貫通孔
123 係合部(第3係合部)
124 係合部(第4係合部)
124X 係合孔
125 係合部(第5係合部)
126 対向面
127 突出部
128 凹部
129 弾性片
130 フード部
130A 分割フード部
131,132 係合部(第2係合部)
131X,132X 係合孔
133 切欠部
141,142 分割体
200 コネクタ
201 端子
202 コネクタハウジング
C1 コネクタアセンブリ
V 車両
D1 組付方向