(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155942
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】外光利用型表示体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20221006BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20221006BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221006BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20221006BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/08 Z
G02F1/1335 520
G02F1/13357
G09F9/30 349D
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059398
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
【テーマコード(参考)】
2H042
2H291
2H391
5C094
【Fターム(参考)】
2H042BA01
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA20
2H042DA00
2H042DD01
2H042DE00
2H291FA31Z
2H291FA42X
2H291FB14
2H291JA00
2H391AA23
2H391AC03
2H391EA21
2H391EA26
2H391EA29
5C094AA01
5C094ED11
5C094ED13
5C094JA11
(57)【要約】
【課題】優れた視認性を示す外光利用型表示体を提供する。
【解決手段】光拡散制御層11と、表示層13と、反射層12とを備える外光利用型表示体1a,1bであって、光拡散制御層11が、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、反射層12が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、光線進行面を進行し且つ所定の入射角度を有する光線を、前記光線進行面と前記入射面との交線に沿って走査させながら前記入射面に照射したときに、下記式(1)または下記式(2)の条件を満たす前記光線の割合が50%以上である外光利用型表示体1a,1b。
θ
id<θ
dd-≦θ
od≦θ
dd+ …(1)
θ
dd-≦θ
id≦θ
dd+<θ
od …(2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散制御層と、表示層と、反射層とを備え、これらが前記光拡散制御層、前記表示層および前記反射層の順序で積層されているか、または、前記表示層、前記光拡散制御層および前記反射層の順序で積層されている外光利用型表示体であって、
前記光拡散制御層が、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、
前記反射層が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、当該凹凸構造の表面が反射面を構成し、
前記外光利用型表示体における前記反射層とは遠位に位置する側の面を入射面とし、当該入射面の法線と前記光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面を光線進行面とし、前記光線進行面を進行する光線と前記入射面の法線とのなす角度を表す場合に、前記光線が、前記入射面の法線を基準として、前記凹凸構造の主要な傾斜方向側から入射または当該主要な傾斜方向側に出射する場合に負の符号を付し、それとは反対の場合に正の符号を付して表すものとし、
前記凹凸面の主要な傾斜方向とは、前記光線進行面にて切断して得られる前記凹凸構造の断面について、前記凹凸構造における前記反射層の厚さ方向の位置を前記反射層の面内方向の位置で微分し、その微分値が正の値であるか負の値であるかによって前記凹凸構造における微小な表面の傾斜方向を分類した場合に、より頻度の高い傾斜方向を意味するものとした場合に、
前記光線進行面を進行し且つ所定の入射角度を有する光線を、前記光線進行面と前記入射面との交線に沿って走査させながら前記入射面に照射したときに、下記式(1)または下記式(2)の条件を満たす前記光線の割合が50%以上である
θid<θdd-≦θod≦θdd+ …(1)
θdd-≦θid≦θdd+<θod …(2)
(前記θidは、前記入射面から前記反射層に向かう前記光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味し、-35°または-25°である。)
(前記θodは、前記反射層にて反射して前記入射面に向かう前記光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味する。)
(前記θdd-およびθdd+は、それぞれ、前記光拡散制御層の拡散角度範囲の下限値および上限値の角度を、空気と前記光拡散制御層との界面で生じる屈折を考慮して前記光拡散制御層中の角度に換算したものであり、前記拡散角度範囲とは、前記光拡散制御層単体の一方の面に対し、入射角度-90°~90°の範囲で光線を順次入射し、他方の面から生じる透過光のヘイズ値を測定した場合に、前記ヘイズ値が90%以上となる前記入射角度の範囲である。)
ことを特徴とする外光利用型表示体。
【請求項2】
補助光源と、光拡散制御層と、表示層と、反射層とを備え、これらが前記補助光源、前記光拡散制御層、前記表示層および前記反射層の順序で積層されているか、または、前記補助光源、前記表示層、前記光拡散制御層および前記反射層の順序で積層されている外光利用型表示体であって、
前記補助光源が、前記表示層に対して光線を照射するものであり、
前記光拡散制御層が、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、
前記反射層が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、当該凹凸構造の表面が反射面を構成し、
前記外光利用型表示体における前記反射層とは遠位に位置する側の面を入射面とし、当該入射面の法線と前記光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面を光線進行面とし、前記光線進行面を進行する光線と前記入射面の法線とのなす角度を表す場合に、前記光線が、前記入射面の法線を基準として、前記凹凸構造の主要な傾斜方向側から入射または当該主要な傾斜方向側に出射する場合に負の符号を付し、それとは反対の場合に正の符号を付して表すものとし、
前記凹凸面の主要な傾斜方向とは、前記光線進行面にて切断して得られる前記凹凸構造の断面について、前記凹凸構造における前記反射層の厚さ方向の位置を前記反射層の面内方向の位置で微分し、その微分値が正の値であるか負の値であるかによって前記凹凸構造における微小な表面の傾斜方向を分類した場合に、より頻度の高い傾斜方向を意味するものとした場合に、
前記光線進行面を進行する前記補助光源由来の光線を前記入射面に照射したときに、下記式(1)または下記式(2)の条件を満たす前記光線の割合が50%以上である
θid<θdd-≦θod≦θdd+ …(1)
θdd-≦θid≦θdd+<θod …(2)
(前記θidは、前記入射面から前記反射層に向かう前記補助光源由来の光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味する。)
(前記θodは、前記反射層にて反射して前記入射面に向かう前記補助光源由来の光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味する。)
(前記θdd-およびθdd+は、それぞれ、前記光拡散制御層の拡散角度範囲の下限値および上限値の角度を、空気と前記光拡散制御層との界面で生じる屈折を考慮して、前記光拡散制御層中の角度に換算したものであり、前記拡散角度範囲とは、前記光拡散制御層単体の一方の面に対し、入射角度-90°~90°の範囲で光線を順次入射し、他方の面から生じる透過光のヘイズ値を測定した場合に、前記ヘイズ値が90%以上となる前記入射角度の範囲である。)
ことを特徴とする外光利用型表示体。
【請求項3】
前記凹凸構造が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に、所定の傾きを有する第1の傾斜面と、前記第1の傾斜面とは異なる傾きを有する第2の傾斜面とが交互に配置されてなる鋸歯状構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の外光利用型表示体。
【請求項4】
前記反射層を平面視した場合に、前記第1の傾斜面の総面積が、前記第2の傾斜面の総面積よりも大きいものであり、
前記反射層を厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に、前記第1の傾斜面の法線の角度が、前記入射面の法線を基準として、-40°以上、-1°以下である
ことを特徴とする請求項3に記載の外光利用型表示体。
【請求項5】
前記外光利用型表示体が、前記式(1)を満たすものであり、
前記θdd-が、-25°以上、0°未満であり、
前記θdd+が、0°以上、25°以下である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の外光利用型表示体。
【請求項6】
前記外光利用型表示体が、前記式(2)を満たすものであり、
前記θdd-が、-38°以上、-13°未満であり、
前記θdd+が、-13°以上、19°以下である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の外光利用型表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入射される光を利用して、所定の表示機能を発揮する外光利用型表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射性を有する面に対して文字や画像を印刷してなる表示体や、文字や画像を印刷した透明もしくは半透明のフィルムを、反射性を有する面に貼合してなる表示体が看板や標識として用いられている。また、液晶表示装置、電子ペーパーなどといった表示体には、反射層を備えるものもある。
【0003】
このような外光利用型表示体では、室内照明や太陽等の光源や、表示体の表示面側に設けられた補助光源により表示面を照らし、これらの光源からの光を反射面や反射層によって反射させることで、表示の視認が可能となる。
【0004】
外光利用型表示体では、外部の光源を利用することに起因して、通常、光源と視認者との位置関係が一定とはならない。その結果、光源の位置に依っては視認者に十分な光が到達せず、視認性が低下したり、表示体全体を明るく照明できないという問題が生じ易い。
【0005】
上記問題を解決するために、光拡散板を表示体に組み込むことが考えられる。しかし、一般的な光拡散板を単に組み込むだけでは、良好な視認性を得るために必要な拡散性が十分に得られなかったり、広い拡散を実現しようとすると迷光や後方散乱による光損失が生じ、画像鮮明度が損なわれるという問題がある。これらの問題を解消する観点から、外光利用型表示体においては、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御層を、視認者側の表面と反射層との間に設けることが検討されている(例えば、特許文献1)。上記光拡散制御層が存在することにより、反射層にて反射された光は適度に拡散されるものとなり、光源の位置に依存した視認性の低下が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した光拡散制御層を用いることで、視認性の向上はある程度達成されるものの、さらに明るく均一な視認を達成したいというニーズが存在する。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、優れた視認性を示す外光利用型表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、光拡散制御層と、表示層と、反射層とを備え、これらが前記光拡散制御層、前記表示層および前記反射層の順序で積層されているか、または、前記表示層、前記光拡散制御層および前記反射層の順序で積層されている外光利用型表示体であって、前記光拡散制御層が、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、前記反射層が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、当該凹凸構造の表面が反射面を構成し、前記外光利用型表示体における前記反射層とは遠位に位置する側の面を入射面とし、当該入射面の法線と前記光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面を光線進行面とし、前記光線進行面を進行する光線と前記入射面の法線とのなす角度を表す場合に、前記光線が、前記入射面の法線を基準として、前記凹凸構造の主要な傾斜方向側から入射または当該主要な傾斜方向側に出射する場合に負の符号を付し、それとは反対の場合に正の符号を付して表すものとし、前記凹凸面の主要な傾斜方向とは、前記光線進行面にて切断して得られる前記凹凸構造の断面について、前記凹凸構造における前記反射層の厚さ方向の位置を前記反射層の面内方向の位置で微分し、その微分値が正の値であるか負の値であるかによって前記凹凸構造における微小な表面の傾斜方向を分類した場合に、より頻度の高い傾斜方向を意味するものとした場合に、前記光線進行面を進行し且つ所定の入射角度を有する光線を、前記光線進行面と前記入射面との交線に沿って走査させながら前記入射面に照射したときに、下記式(1)または下記式(2)の条件を満たす前記光線の割合が50%以上である
θid<θdd-≦θod≦θdd+ …(1)
θdd-≦θid≦θdd+<θod …(2)
(前記θidは、前記入射面から前記反射層に向かう前記光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味し、-35°または-25°である。)
(前記θodは、前記反射層にて反射して前記入射面に向かう前記光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味する。)
(前記θdd-およびθdd+は、それぞれ、前記光拡散制御層の拡散角度範囲の下限値および上限値の角度を、空気と前記光拡散制御層との界面で生じる屈折を考慮して前記光拡散制御層中の角度に換算したものであり、前記拡散角度範囲とは、前記光拡散制御層単体の一方の面に対し、入射角度-90°~90°の範囲で光線を順次入射し、他方の面から生じる透過光のヘイズ値を測定した場合に、前記ヘイズ値が90%以上となる前記入射角度の範囲である。)
ことを特徴とする外光利用型表示体を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る外光利用型表示体は、上述した光拡散制御層と上述した反射層とが、上記式(1)または式(2)に関する条件を満たすように積層されていることにより、入射された光を、視認者に向けて良好に反射させることが可能となり、その結果、視認者が明るく均一な表示を視認することが可能となる。
【0011】
第2に本発明は、補助光源と、光拡散制御層と、表示層と、反射層とを備え、これらが前記補助光源、前記光拡散制御層、前記表示層および前記反射層の順序で積層されているか、または、前記補助光源、前記表示層、前記光拡散制御層および前記反射層の順序で積層されている外光利用型表示体であって、前記補助光源が、前記表示層に対して光線を照射するものであり、前記光拡散制御層が、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、前記反射層が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、当該凹凸構造の表面が反射面を構成し、前記外光利用型表示体における前記反射層とは遠位に位置する側の面を入射面とし、当該入射面の法線と前記光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面を光線進行面とし、前記光線進行面を進行する光線と前記入射面の法線とのなす角度を表す場合に、前記光線が、前記入射面の法線を基準として、前記凹凸構造の主要な傾斜方向側から入射または当該主要な傾斜方向側に出射する場合に負の符号を付し、それとは反対の場合に正の符号を付して表すものとし、前記凹凸面の主要な傾斜方向とは、前記光線進行面にて切断して得られる前記凹凸構造の断面について、前記凹凸構造における前記反射層の厚さ方向の位置を前記反射層の面内方向の位置で微分し、その微分値が正の値であるか負の値であるかによって前記凹凸構造における微小な表面の傾斜方向を分類した場合に、より頻度の高い傾斜方向を意味するものとした場合に、前記光線進行面を進行する前記補助光源由来の光線を前記入射面に照射したときに、下記式(1)または下記式(2)の条件を満たす前記光線の割合が50%以上である
θid<θdd-≦θod≦θdd+ …(1)
θdd-≦θid≦θdd+<θod …(2)
(前記θidは、前記入射面から前記反射層に向かう前記補助光源由来の光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味する。)
(前記θodは、前記反射層にて反射して前記入射面に向かう前記補助光源由来の光線における、前記光拡散制御層に入射した直後の、前記入射面の法線を基準とした角度を意味する。)
(前記θdd-およびθdd+は、それぞれ、前記光拡散制御層の拡散角度範囲の下限値および上限値の角度を、空気と前記光拡散制御層との界面で生じる屈折を考慮して、前記光拡散制御層中の角度に換算したものであり、前記拡散角度範囲とは、前記光拡散制御層単体の一方の面に対し、入射角度-90°~90°の範囲で光線を順次入射し、他方の面から生じる透過光のヘイズ値を測定した場合に、前記ヘイズ値が90%以上となる前記入射角度の範囲である。)
ことを特徴とする外光利用型表示体を提供する(発明2)。
【0012】
上記発明(発明2)に係る外光利用型表示体は、上述した光拡散制御層と上述した反射層とが、上記式(1)または式(2)に関する条件を満たすように積層されていることにより、補助光源からの光を、視認者に向けて良好に反射させることが可能となり、その結果、視認者が明るく均一な表示を視認することが可能となる。
【0013】
上記発明(発明1,2)において、前記凹凸構造が、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に、所定の傾きを有する第1の傾斜面と、前記第1の傾斜面とは異なる傾きを有する第2の傾斜面とが交互に配置されてなる鋸歯状構造であることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1,2)において、前記反射層を平面視した場合に、前記第1の傾斜面の総面積が、前記第2の傾斜面の総面積よりも大きいものであり、前記反射層を厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に、前記第1の傾斜面の法線の角度が、前記入射面の法線を基準として、-40°以上、-1°以下であることが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1~4)において、前記外光利用型表示体が、前記式(1)を満たすものであり、前記θdd-が、-25°以上、0°未満であり、前記θdd+が、0°以上、25°以下であることが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1~4)において、前記外光利用型表示体が、前記式(2)を満たすものであり、前記θdd-が、-38°以上、-13°未満であり、前記θdd+が、-13°以上、19°以下であることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る外光利用型表示体は、優れた視認性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外光利用型表示体の断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係る外光利用型表示体の断面図である。
【
図3】光線の角度の表示について模式的に説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態における条件を模式的に説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態における反射層の一例の断面図である。
【
図6】実施例にて使用した光拡散制御層の変角ヘイズ値を示す図である。
【
図7】実施例にて作製した外光利用型表示体サンプルの拡散光反射率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る外光利用型表示体断面図が示される。
図1に示される本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1bは、光拡散制御層11と、表示層13と、反射層12とを備える。本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1bにおいて、これらの層の積層の順序は、光拡散制御層11、表示層13および反射層12の順序となっているか(
図1(a))、または、表示層13、光拡散制御層11および反射層12の順序となっている(
図1(b))。なお、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1bは、これらの3層以外の任意の層を任意の位置に備えていてもよい。
【0020】
図2には、本発明の別の実施形態に係る外光利用型表示体の断面図が示される。
図2に示される本実施形態に係る外光利用型表示体2a,2bは、補助光源14と、光拡散制御層11と、表示層13と、反射層12とを備える。本実施形態に係る外光利用型表示体2a,2bにおいて、これらの層の積層の順序は、補助光源14、光拡散制御層11、表示層13および反射層12の順序となっているか(
図2(a))、または、補助光源14、表示層13、光拡散制御層11および反射層12の順序となっている(
図2(b))。なお、本実施形態に係る外光利用型表示体2a,2bは、これらの4層以外の任意の層を任意の位置に備えていてもよい。
【0021】
本実施形態に係る外光利用型表示体においては、光拡散制御層11が、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものである。また、反射層12は、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、当該凹凸構造の表面が反射面を構成するものである。さらに、補助光源14は、表示層13に対して光線を照射するものである。
【0022】
そして、
図1に示される本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1bおよび
図2に示される本実施形態に係る外光利用型表示体2a,2bは、下記式(1)または下記式(2)に関する条件を満たすよう構成されている。
θ
id<θ
dd-≦θ
od≦θ
dd+ …(1)
θ
dd-≦θ
id≦θ
dd+<θ
od …(2)
【0023】
上記式(1)および式(2)を説明するにあたり、本明細書では、外光利用型表示体1a,1b,2a,2bにおける反射層12とは遠位に位置する側の面を入射面とする。
【0024】
また、本明細書では、上記入射面の法線と光拡散制御層11の拡散中心軸とを含む面を光線進行面とする。ここで、拡散中心軸とは、それを中心にして拡散特性がほぼ対称となる軸をいい、光拡散制御層11の変角ヘイズ測定等によって把握される拡散性能に基づいて推定することができる。
【0025】
さらに、本明細書では、上記光線進行面を進行する光線と上記入射面の法線とのなす角度を、以下の規則に従って表記するものとする。すなわち、上記光線が、上記入射面の法線を基準として、上記凹凸構造の主要な傾斜方向側から入射または当該主要な傾斜方向側に出射する場合に負の符号を付し、それとは反対の場合に正の符号を付して表すものとする。
【0026】
図3(a)には、これらの光線の例(光線Aおよび光線B)が示されている。特に、光線Aは、入射面の法線を基準とした場合に、凹凸構造の主要な傾斜方向側から入射してきたものとして示されている。ここで、当該光線Aと、入射面の法線となす角度の絶対値が60°である場合には、当該角度に負の符号を付して、「-60°」と表記する。一方、光線Bは、入射面の法線を基準とした場合に、凹凸構造の主要な傾斜方向とは反対の側に出射しようとしているものとして示されている。ここで、当該光線Bと、入射面の法線となす角度の絶対値が45°である場合には、当該角度をそのまま、または正の符号を付して、「45°」または「+45°」と表記する。
【0027】
上記「凹凸面の主要な傾斜方向」とは、次のようにして定められるものとする。まず、上記光線進行面にて切断して得られる上記凹凸構造の断面を想定する。
図3(b)には、当該断面の一例が示されている。続いて、当該断面に含まれる凹凸構造121において、反射層12の厚さ方向(
図3(b)では、紙面、上下方向)の位置を反射層12の面内方向(
図3(b)では、紙面、左右方向)の位置で微分する。それにより得られる微分値は、
図3(b)に示される通り、凹凸構造121における傾斜の方向に依って、正の値または負の値(さらに、図示されていないものの、正の値と負の値との切り替わりの点としての0)となる。そして、微分値が正の値であるか負の値であるかによって凹凸構造121における微小な表面の傾斜方向を分類した場合に、より頻度の高い傾斜方向を、上記「凹凸面の主要な傾斜方向」とする。
図3(b)の場合では、正の値の方がより高い頻度となっているため、「正」と付された傾斜面の側が、「凹凸面の主要な傾斜方向」となる。
【0028】
以上を前提として、
図1に示される本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1bは、上記光線進行面を進行し且つ所定の入射角度を有する光線を、上記光線進行面と上記入射面との交線に沿って走査させながら上記入射面に照射したときに、上記式(1)または上記式(2)の条件を満たす上記光線の割合が50%以上である。
【0029】
ここで、上記式(1)および式(2)において、θ
idは、上記入射面から反射層12に向かう光線における、光拡散制御層11に入射した直後の、上記入射面の法線を基準とした角度を意味する。特に、
図1に示される外光利用型表示体1a,1bにおいては、θ
idの具体的な角度は、-35°または-25°である。すなわち、
図1に示される外光利用型表示体1a,1bは、θ
idが-35°または-25°となるように、上記入射面に対して光線を照射したときに、上述した式(1)および式(2)のいずれかの条件を満たす場合が存在するものである。特に、当該光線を、θ
id=-35°または-25°を維持しながら、上記光線進行面と上記入射面との交線に沿って走査させた場合に、照射した光線の50%以上にて、上述した式(1)および式(2)のいずれかの条件を満たすものとなっている。なお、θ
id=-35°および-25°のいずれか一方にて、50%以上という割合を達成すればよい。
【0030】
なお、本明細書において、光線の「入射した直後」の角度とは、光拡散制御層11の作用により光線の拡散が生じる前における角度を意味する。通常、光拡散制御層11に対して、空気中または光拡散制御層11に隣接する層から光線が入射した場合、光線が層間を通過した際に光の屈折が生じるとともに、光拡散制御層11内部を通過する最中に光の拡散が生じるが、「入射した直後」では、屈折のみが生じ、拡散は生じていないと考えることができる。
【0031】
また、上記θ
odは、反射層12にて反射して上記入射面に向かう光線における、光拡散制御層11に入射した直後の、上記入射面の法線を基準とした角度を意味する。端的には、上記θ
odは、所定の角度で(
図1に示される光利用型表示体1a,1bでは、上述の通りθ
id=-35°または-25°となるような角度で)上記入射面に照射された光線が、反射層12にて反射して上記入射面方向に戻っていくときの角度を、光拡散制御層11に入射した直後のものとして表したものである。
【0032】
さらに、上記θdd-およびθdd+は、それぞれ、光拡散制御層11の拡散角度範囲の下限値および上限値の角度を、空気と光拡散制御層11との界面で生じる屈折を考慮して光拡散制御層11中の角度に換算したものである。ここで、上記拡散角度範囲とは、光拡散制御層11単体(すなわち、その他の層を積層していない状態のもの)の一方の面に対し、入射角度-90°~90°の範囲で光線を順次入射し、他方の面から生じる透過光のヘイズ値を測定した場合に、当該ヘイズ値が90%以上となる入射角度の範囲である。
【0033】
一方、
図2に示される本実施形態に係る外光利用型表示体2a,2bは、上記光線進行面を進行する上記補助光源由来の光線を上記入射面に照射したときに、上述した式(1)または式(2)の条件を満たす上記光線の割合が50%以上である。
【0034】
図2に示される本実施形態に係る外光利用型表示体2a,2bにおける、θ
id、θ
od、θ
dd-およびθ
dd+の定義は、基本的に、
図1に示される外光利用型表示体1a,1bの場合と同様である。但し、θ
idは、
図2に示される外光利用型表示体2a,2bにおいては、-35°または-25°に特定されない。そのため、外光利用型表示体2a,2bは、それが備える補助光源14から照射される光線進行面を進行する光線のうち、上述した式(1)または式(2)の条件を満たす光線の割合が50%以上となるものである。
【0035】
ある外光利用型表示体が、上述した式(1)または式(2)を上述した割合で満たすか否かは、次のようにして確認することができる。まず、光拡散制御層単体について上述の通り測定される拡散角度範囲と、光拡散制御層の屈折率に基づいて、拡散角度範囲の下限値および上限値の角度を光拡散制御層中の角度に換算し(詳細は後述)、角度θdd-およびθdd+を得る。
【0036】
そして、外光利用型表示体における光拡散制御層側の面に対して、所定の入射角度で光線を照射し、出射する光線の角度を順次測定する。
【0037】
ここで、当該入射角度は、補助光源を備えていない外光利用型表示体の場合には、当該表示体を構成したときの光路にて生じる屈折を考慮して、角度θidが-35°または-25°となる入射角度とする。また、上記入射点は、外光利用型表示体を構成したときに想定される光線進行面および入射面(外光利用型表示体における反射層とは遠位に位置する側の面)を決定した上で、当該光線進行面と当該上記入射面との交線に沿って変更させる。
【0038】
一方、補助光源を備える外光利用型表示体の場合には、補助光源を点灯させて光線を照射する。
【0039】
そして、順次測定された角度について、外光利用型表示体を構成したときの光路にて生じる屈折を考慮して、光拡散制御層中の角度に換算して角度θidおよび角度θodを得る。得られた光線ごとの角度θidおよび角度θodについて、上述した式(1)または式(2)の関係を満たす割合を算出することで、上述した割合を満たすかどうか判断することができる。
【0040】
1.式(1)および式(2)の詳細
上記式(1)および式(2)について、
図4を用いて、以下により詳しく説明する。
【0041】
図4(a)には、上記式(1)の条件を満たす場合における、光拡散制御層11中の光線と拡散角度範囲(換算された範囲)との関係が示され、
図4(b)には、上記式(2)の条件を満たす場合における、光拡散制御層11中の光線と拡散角度範囲(換算された範囲)との関係が示される。なお、これらの図は、光拡散制御層11のみを抜き出して模式的に表した断面図であり、本来、当該光拡散制御層11の紙面下方向には、反射層12が直接またはその他の層を介して間接的に積層されている。
【0042】
図4(a)および(b)において、「I」で示される矢印は、入射面側から入射して光拡散制御層11中を透過する光線を表し、当該光線Iと入射面の法線とのなす角度が、θ
idとなる。また、「O」で示される矢印は、当該光線Iが、紙面下方向に本来存在する反射層12によって反射され、光拡散制御層11に戻り、光拡散制御層11中を透過する光線を表し、当該光線Oと入射面の法線とのなす角度が、θ
odとなる。さらに、「D
-」および「D
+」が付された線で囲まれた範囲(図中、斜線が付された範囲)は、光拡散制御層11の拡散角度範囲に対応するものとなっている。線D
-と入射面の法線とのなす角度がθ
dd-となり、線D
+と入射面の法線とのなす角度がθ
dd+となる。
【0043】
上記式(1)は、角度θ
idが、角度θ
dd-と角度θ
dd+との範囲外であり、角度θ
odがこれらの範囲におさまっている。すなわち、
図4(a)に示される通り、外部光源や補助光源14に由来して光拡散制御層11に入射した光線Iが、線D
-と線D
+とで囲まれた範囲の外側を通って光拡散制御層11を通過した後、反射層12で反射した光線Oが線D
-と線D
+とで囲まれた範囲内を通って光拡散制御層11から出射することを意味する。ここで、線D
-と線D
+とで囲まれた範囲は、拡散角度範囲に対応するものであるため、当該範囲を通過する光線は、出射したときのヘイズ値が90%以上となり、すなわち強く拡散透過するものとなる。そのため、光線Iは、光拡散することなく、あるいは弱い光拡散にて、光拡散制御層11を透過した後、光線Oが強く拡散透過して光拡散制御層11から出射することとなる。
【0044】
一方、上記式(2)は、角度θ
idが角度θ
dd-と角度θ
dd+との範囲におさまっており、角度θ
odがこれらの範囲外となっている。すなわち、
図4(b)に示される通り、外部光源や補助光源14に由来して光拡散制御層11に入射した光線Iが、線D
-と線D
+とで囲まれた範囲内を通って光拡散制御層11を透過した後、反射層12で反射した光線Oが線D
-と線D
+とで囲まれた範囲の外側を通って光拡散制御層11から出射されることを意味する。この場合、光線Iは光拡散制御層11を強く拡散透過した後、光線Oは、再度強く拡散されることなく、拡散された状態を維持しながら光拡散制御層11から出射することとなる。
【0045】
本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1bおよび外光利用型表示体2a,2bは、それぞれ前述した所定の割合で、上記式(1)または(2)の条件を満たすことにより、斜め方向から入射した光線を、正面方向に存在する視認者に対して、効果的に拡散させながら反射できるものとなる。その結果、視認者は、表示層13による表示内容を、十分且つ均一な明るさで視認することが可能となる。これにより、反射層12で反射する前後において光線が二重で拡散せず、光線が拡散し過ぎて、明るさが低下すること、あるいは、拡散光の均一性が損なわれることが抑制される。
【0046】
なお、光拡散制御層11の拡散角度範囲とは、前述した通り、光拡散制御層11単体に対して空気中から照射された光線のうち、所定のヘイズ値を満たす光線の入射角度から求められるものである。すなわち、拡散角度範囲とは、空気中の光線の角度に基づいて規定されるものである。一方、本実施形態における上記式(1)および式(2)は、光拡散制御層11中における角度であるθdd-およびθdd+を問題とする。そのため、当該角度θdd-およびθdd+としては、拡散角度範囲の上限および下限となる角度を、空気と光拡散制御層11との界面で生じる屈折を考慮して光拡散制御層11中の角度の範囲に換算した角度を使用する。当該換算は、具体的には、次の式
θdd-=arcsin{sin(θd-)×1/n}
θdd+=arcsin{sin(θd+)×1/n}
に基づいて行われる。これらの式中、θd-およびθd+は、それぞれ光拡散制御層11の拡散角度範囲の下限および上限の角度を意味する。nは、光拡散制御層11の屈折率を意味する。
【0047】
なお、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bでは、前述した通りに光線を照射したときに、上記式(1)または上記式(2)の条件を満たす上記光線の割合が50%以上となるものであるが、さらに優れた視認性を達成する観点からは、上記割合は、70%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。なお、上記割合の上限値については特に限定されず、100%であってもよい。
【0048】
本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bが、上記式(1)を満たす場合、角度θdd-は、-25°以上であることが好ましく、特に-22°以上であることが好ましく、さらには-19°以上であることが好ましい。また、角度θdd-は、0°未満であることが好ましく、特に-3°以下であることが好ましく、さらには-6°以下であることが好ましい。さらに、角度θdd+は、0°以上であることが好ましく、特に3°以上であることが好ましく、さらには6°以上であることが好ましい。また、角度θdd+は、25°以下であることが好ましく、特に22°以下であることが好ましく、さらには19°以下であることが好ましい。このような角度を満たすことにより、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bは、より優れた視認性を達成することが可能となる。
【0049】
一方、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bが、上記式(2)を満たす場合、角度θdd-は、-38°以上であることが好ましく、特に-37°以上であることが好ましく、さらには-35°以上であることが好ましい。また、角度θdd-は、-13°未満であることが好ましく、特に-16°以下であることが好ましく、さらには-19°以下であることが好ましい。さらに、角度θdd+は、-13°以上であることが好ましく、特に-10°以上であることが好ましく、さらには-6°以上であることが好ましい。また、角度θdd+は、19°以下であることが好ましく、特に16°以下であることが好ましく、さらには13°以下であることが好ましい。このような角度を満たすことにより、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bは、より優れた視認性を達成することが可能となる。
【0050】
2.光拡散制御層
本実施形態における光拡散制御層11は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、それに起因して前述した拡散角度範囲を示すものである限り、その内部構造や組成等は限定されない。
【0051】
上述した規則的内部構造とは、屈折率が相対的に低い領域中に、複数の屈折率が相対的に高い領域が所定の規則性をもって配置されてなる内部構造をいうものである。例えば、光拡散制御層11の表面と平行な平面で切断した光拡散制御層11の断面をみた場合に、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い領域が、上記断面内の少なくとも1方向に沿って、同程度のピッチをもって繰り返して配置されてなる内部構造を指す。そして、ここにおける規則的内部構造は、屈折率が相対的に高い領域が光拡散制御層11の厚さ方向に延在してなるものである点で、一方の相が他方の相中に明確な規則性なく存在してなる相分離構造や、海成分中にほぼ球状の島成分が存在してなる海島構造とは区別されるものである。
【0052】
上記の規則的内部構造によれば、光拡散制御層11の表面に対して、所定の入射角度範囲内で入射した入射光を、所定の開き角をもって強く拡散しながら出射させることができる。一方、上記入射角度範囲外の入射となる場合、拡散することなく透過させるか、または、入射角度範囲内の入射光の場合よりも弱い拡散にて出射させることができる。
【0053】
上述したような規則的内部構造を形成し易いという観点からは、本実施形態に係る光拡散制御層11は、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を硬化させたものであることが好ましい。高屈折率成分および低屈折率成分、ならびに光拡散制御層用組成物に含有されるその他の成分としては、従来公知のものを使用することができる。そして、従来公知の方法により、光拡散制御層11を形成することができる。
【0054】
本実施形態における光拡散制御層11の厚さは、30μm以上であることが好ましく、特に45μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。光拡散制御層11の厚さがこのような範囲であることで、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bが上述した式(1)または式(2)の条件を満たし易いものとなる。
【0055】
3.反射層
本実施形態における反射層12は、厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を見た場合に凹凸構造を備え、当該凹凸構造の表面が反射面を構成し、それに起因して、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bが、上記式(1)または式(2)を所定の割合で満たすものとなる限り、特に限定されない。本実施形態における反射層12は、上記凹凸構造を備えることにより、斜め方向から入射した光線を正面方向に反射させることが可能となる。その結果、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bが上述した式(1)または式(2)の条件を満たし易いものとなる。
【0056】
上述した凹凸構造の一例としては、
図5に示されるような鋸歯状構造が挙げられる。
図5は、鋸歯状構造を有する反射層12を厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面を表した断面図である。当該反射層12は、鋸歯状構造121と、当該鋸歯状構造121を支持する支持領域125と、当該鋸歯状構造121上に積層された透明領域124とを備える。さらに、鋸歯状構造121は、所定の傾きを有する第1の傾斜面122と、当該第1の傾斜面122とは異なる傾きを有する第2の傾斜面123とが交互に配置された構造となっている。
【0057】
このような鋸歯状構造121を備える反射層12は、鋸歯状構造121が光線に対する反射性を有しており、透明領域124の面側から斜めに入射した光線を、正面方向に対して効果的に反射することができる。なお、鋸歯状構造121を備える反射層12は、透明領域124を備えていなくてもよい。
【0058】
鋸歯状構造121を備える反射層12では、
図5に示されるように、第1の傾斜面122と第2の傾斜面123とが異なる大きさであることが好ましい。すなわち、当該反射層12を平面視した場合に、例えば、第1の傾斜面122の総面積が、第2の傾斜面123の総面積よりも大きいものであることが好ましい。この場合、第1の傾斜面122が主要な光源(太陽や天井に設置された室内照明、補助光源等)に向くように本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bを設置することで、当該光源からの光線を、視認者に対して、より効果的に反射させることが可能となる。
【0059】
上記の通り、第1の傾斜面122の総面積が第2の傾斜面123の総面積よりも大きい場合、反射層12を厚さ方向に切断した少なくとも1つの断面(特に、第1の傾斜面122および第2の傾斜面123が配列している方向に対して平行に切断された断面)を見た場合に、第1の傾斜面122の法線の角度(
図5中、「θ
s」で示される角度)が、反射層12における一方の面の法線(入射面の法線)を基準として、-40°以上であることが好ましく、特に-35°以上であることが好ましく、さらには-30°以上であることが好ましい。また、上記角度は、-1°以下であることが好ましく、特に-3°以下であることが好ましく、さらには-5°以下であることが好ましい。第1の傾斜面122の角度が上記範囲であることにより、視認者に対して、より効果的に反射させることが可能となる。
【0060】
鋸歯状構造121を備える反射層12の作製方法は特に限定されず、例えば、支持領域125を形成した後、当該支持領域125上に鋸歯状構造121および透明領域124を順次積層することで作製することができる。支持領域125を形成する際には、鋸歯状構造121を積層する側の表面を、当該鋸歯状構造121に対応した形状に形成することが好ましい。支持領域125の材料は特に限定されず、樹脂、金属等を使用することができる。鋸歯状構造121に対応した形状を形成し易いという観点からは樹脂が好ましく、表示素子の電極を兼ね備える場合には金属が好ましい。鋸歯状構造121の材料としては、高反射率の鏡面を形成可能であれば特に限定されず、アルミニウム、銀、ニッケル等の金属を使用することが好ましい。特に、上述の通り、鋸歯状構造121に対応した形状を形成した支持領域125の表面に対し、金属を蒸着することで鋸歯状構造121を形成することが好ましい。透明領域124の材料としては、光線の透過率が高いものであれば特に限定されず、例えば樹脂、ガラス等を使用することができる。
【0061】
以上、本実施形態における凹凸構造の例として鋸歯状構造121について詳述したものの、凹凸構造としては鋸歯状構造121に限定されず、その他の構造であってもよく、例えばランダムに形成された構造であってもよい。また、平面のみから構成されるものに限定されず、曲面のみから構成されるものであってもよく、平面と曲面との組み合わせにより構成されるものであってもよい。
【0062】
本実施形態における反射層12の厚さは、特に限定されないものの、例えば0.1μm以上であってよく、特に1μm以上であってよい。また、上記厚さは、1000μm以下であってよく、特に500μm以下であってよい。
【0063】
4.表示層
本実施形態における表示層13は、表示内容を表示することができ、光線透過性を有するものであれば特に限定されない。例えば、表示層13は、それに隣接する層に表示内容が印刷されてなる印刷層であってもよく、文字や画像を印刷した透明もしくは半透明のフィルムであってもよく、あるいは、電子的に表示する表示装置であってもよい。当該表示装置の例としては、液晶ディスプレイ、電子ペーパー、電気泳動ディスプレイ、MEMSディスプレイ、固体結晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0064】
5.補助光源
本実施形態における補助光源14は、表示層13に対して光線を照射することができるとともに、表示内容の視認を大きく妨げるものでない限り、特に限定されない。好ましい補助光源14の例としては、光源と導光部材とを備えるフロントライトが挙げられる。
【0065】
当該フロントライトにおける導光部材は、補助光源14の直下に位置する層(光拡散制御層11,表示層13等)を覆うように設けられるものであることが好ましい。また、上記光源は、補助光源14の周縁部の少なくとも一部に設けられるとともに、上記導光部材に接するように設けられることが好ましい。
【0066】
上記導光部材は、光源から照射された光線を表示層13に導くものである。導光部材の構成としては、このような作用を奏する限り限定されず、例えば、内部にプリズムを構成する凹凸が設けられたものであってもよく、あるいは、光を反射する粒子を含む反射材が塗布されたものであってもよい。
【0067】
また、上記光源の位置は、導光部材を介して表示層13に光を照射できる限り限定されず、例えば、表示面の周縁部のうち上側(視認者にとっての上側)の位置に設けてもよい。
【0068】
補助光源14は、光拡散制御層11に対して、以下の条件で光線を照射するものであることが好ましい。すなわち、補助光源14から照射された光線は、光拡散制御層11に入射した直後の光線全体の60%が、入射角度-45°以上の範囲内にあることが好ましく、特に-41°以上の範囲内にあることが好ましい。また、補助光源14から照射された光線は、光拡散制御層11に入射した直後の光線全体の60%が、-20°以下の範囲内にあることが好ましく、-25°以下の範囲内にあることがより好ましく、-30°以下の範囲内にあることが特に好ましく、-35°以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0069】
6.その他の構成要素
本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bは、上述した光拡散制御層11、反射層12、表示層13および補助光源14以外の構成部材を備えていてもよい。
【0070】
例えば、外光利用型表示体1a,1b,2a,2bは、視認者側の最表面に、表面コート層やカバーパネル等が設けられていてもよい。また、視認者とは反対側の最表面に、バックライト等が設けられていてもよい。
【0071】
また、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bは、光線の光路を偏向する偏向素子を備えていてもよい。このような偏向素子を備えている場合であっても、前述した式(1)または(2)に係る条件を満たすことにより、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bは、優れた視認性を達成することができる。
【0072】
なお、本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bの表示面の形状は特に限定されないものの、典型的には、表示面が矩形の形状を有していることが好ましい。この場合、表示面は、一対の長辺と一対の短辺とからなる長方形であってもよく、また、全ての辺の長さが等しい正方形であってもよい。その他にも、表示面の形状は、ひし形、台形、平行四辺形等の矩形以外の四角形であってもよく、三角形、五角形等の四角形以外の多角形であってもよく、正円形、楕円形等の円形であってもよく、さらにはこれら以外の不定形な形状であってもよい。
【0073】
7.外光利用型表示体の製造方法
本実施形態に係る外光利用型表示体1a,1b,2a,2bの製造方法としては特に限定されず、従来の製造方法により製造することができる。例えば、光拡散制御層11、反射層12、表示層13および必要に応じて補助光源14をそれぞれ製造した後、これらを所定の積層順で積層することで外光利用型表示体1a,1b,2a,2bを得ることができる。
【実施例0074】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0075】
〔反射層の準備〕
第1の傾斜面と第2の傾斜面とが交互に配置されてなる鋸歯状構造を備える反射層を準備した。当該反射層は、
図5に示されるように、上記鋸歯状構造121と、当該鋸歯状構造121を支持する支持領域125と、当該鋸歯状構造121上に積層された透明領域124とを備えるものである。そして、当該反射層は、反射層12を平面視した場合に、第1の傾斜面122の総面積が、第2の傾斜面123の総面積よりも大きいものとなっている。
【0076】
上記反射層の寸法に関し、第1の傾斜面122の法線の角度(
図5中「θ
s」で示される角度)は-17°であり、第2の傾斜面123の法線の角度は70°となっている。さらに、鋸歯状構造を構成する歯の間隔(ピッチ)(
図5中「P」で示される長さ)は、100μmとなっており、支持領域125の厚さ(
図5中「T」で示される長さ)は、150μmとなっている。
【0077】
上記反射層の材料に関し、透明領域124は、屈折率1.4の透明樹脂材料から成っている。また、鋸歯状構造121は、支持領域125の表面にアルミニウムを蒸着することで形成されたものとなっており、全面が鏡面となっている。
【0078】
〔光拡散制御層の準備〕
光拡散制御層として、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有するものであり、それに起因して所定の光拡散特性を示すフィルムA~Cを用意した。これらのフィルムは、特開2021-032961等に開示される方法にて作製されたものである。
【0079】
フィルムA~Cは、それぞれ、
図6に示される変角ヘイズ値(%)を示す。そして、当該フィルムA~Cは、それぞれ以下の表1に示す、角度θ
dd-およびθ
dd+を示す。
【0080】
【0081】
〔実施例1〕
上述の通り準備した反射層における透明領域側の面に対し、上述の通り準備したフィルムAを積層することで、外光利用型表示体サンプルAを得た。このとき、光拡散制御層の光線進行面(光拡散制御層の片面の法線と光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面)が、反射層における、鋸歯状構造の歯の配列方向と平行となるように積層した。なお、当該サンプルAは、表示層を備えていないものの、入射された光線の光路等の光学特性は、表示層がある場合とほぼ同様のものとなる。
【0082】
当該外光利用型表示体サンプルAについて、θidが-25°の場合におけるθodを算出すると、約-6°となる。そのため、外光利用型表示体サンプルAにおいては、
θid(-25°)<θdd-(-17.9°)≦θod(-6°)≦θdd+(3.5°)
という関係式が成り立ち、すなわち、前述した式(1)を満たす。
【0083】
この関係式は、入射面と光線進行面(入射面の法線と光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面)との交線に沿って、光線の照射位置を走査させた全ての場合において満たすため、式(1)を満たす光線の割合は、100%となる。
【0084】
〔実施例2〕
フィルムAに代えてフィルムBを使用した以外、実施例1と同様にして、外光利用型表示体サンプルBを得た。当該外光利用型表示体サンプルBについて、θidが-25°の場合におけるθodを算出すると、-9.5°となる。そのため、外光利用型表示体サンプルBにおいては、
θdd-(-38.8以下)≦θid(-25°)≦θdd+(-22.1°)<θod(-9.5°)
という関係式が成り立ち、すなわち、前述した式(2)を満たす。
【0085】
この関係式は、入射面と光線進行面(入射面の法線と光拡散制御層の拡散中心軸とを含む面)との交線に沿って、光線の照射位置を走査させた全ての場合において満たすため、式(2)を満たす光線の割合は、100%となる。
【0086】
〔比較例1〕
フィルムAに代えてフィルムCを使用した以外、実施例1と同様にして、外光利用型表示体サンプルCを得た。当該外光利用型表示体サンプルCについて、θidが-25°の場合におけるθodを算出すると、-20.7°となる。フィルムCは、上記表1に示す通り、θdd-=-31.6°以下、θdd+=-9.3°であり、これらの範囲内に、θidおよびθodの両方が含まれるものとなるため、前述した式(1)および式(2)を満たさず、且つ、これらの式を満たす光線の割合が50%以上となることもない。
【0087】
〔試験例〕(拡散光反射率の測定)
実施例および比較例で得た外光利用型表示体サンプルについて、拡散輝度分布測定装置(スガ試験機社製,製品名「変角測色計VC-2」)を用いて、拡散光反射率を測定した。
【0088】
具体的には、外光利用型表示体サンプルにおける光拡散制御層側の面に対し、θid=-25°となる入射角度にて光線を照射し、外光利用型表示体サンプルにて反射して生じた拡散光の光強度を、受光器の角度を変えながら順次測定した。また、受光器の当該角度は、当該射出点(光線照射され反射光が発生している点)と受光器とを結ぶ線分と、当該サンプル表面における当該射出点を通る法線とのなす角度(受光器角度)が-20°から45°となるものとした。なお、当該角度の値は、受光器が反射層の第1の傾斜面側に傾斜している(第1の傾斜面と向き合う位置関係である)場合にマイナスにて表記し、第2の傾斜面側に傾斜している(第2の傾斜面と向き合う位置関係である)場合にプラスにて表している。なお、光源としてはC光源を使用した。
【0089】
一方、基準として、測定対象として標準白色構成板を設置し、上記受光器角度を-45°に固定した状態にて、光強度の基準値を測定した。そして、当該基準値に対する、上述の通り測定された各外光利用型表示体サンプルについての光強度の割合(上記基準値を100%とする百分率)を算出した。その結果を
図7に表す。なお、
図7は、横軸を受光器角度(光拡散制御層中の角度に換算したもの)とし、縦軸を光強度(%)として表したものである。
【0090】
図7から明らかなとおり、実施例1および実施例2に係る外光利用型表示体サンプルでは、比較例1に係る外光利用型表示体サンプルと比べ、より広い角度範囲でより大きな拡散光反射率を達成している。すなわち、実施例1および実施例2に係る外光利用型表示体サンプルは、優れた視認性を示すものであった。
本発明の外光利用型表示体は、外光を利用した表示体として使用することができ、特に、スマートウォッチ、タブレット、電子ペーパー、看板、広告、道路標識等として好適に使用することができる。