(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155944
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/11 20200101AFI20221006BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20221006BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B47/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059400
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 美和子
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA01
3K273QA13
3K273RA02
3K273RA04
3K273RA05
3K273SA04
3K273SA06
3K273SA38
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA28
3K273TA78
3K273TA79
3K273UA17
(57)【要約】
【課題】メラノピック照度を考慮した照明器具の制御が可能な照明制御システムを提供する。
【解決手段】建物(住宅1)において区画された空間の照明を制御する照明制御システム100であって、前記空間に設けられる照明器具110と、前記空間に対して設定された目標照度及び目標メラノピック照度から、前記空間の目標色温度を算出し、前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記色温度となるように、前記照明器具110を制御する照明制御を実行する制御部130と、を具備した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物において区画された空間の照明を制御する照明制御システムであって、
前記空間に設けられる照明器具と、
前記空間に対して設定された目標照度及び目標メラノピック照度から、前記空間の目標色温度を算出し、前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記色温度となるように、前記照明器具を制御する照明制御を実行する制御部と、
を具備する照明制御システム。
【請求項2】
前記照明器具は、
前記建物に設けられた複数の前記空間のそれぞれに設けられ、
前記制御部は、
前記照明制御において、複数の前記空間ごとに設定された前記目標照度及び前記目標メラノピック照度から、複数の前記空間ごとの前記目標色温度を算出し、複数の前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記目標メラノピック照度となるように、前記照明器具を制御する、
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記空間の照度を検出可能な照度検出部と、
前記空間の色温度を検出可能な色温度検出部と、
をさらに具備し、
前記制御部は、
前記照明制御において、前記照度検出部により検出される前記空間の照度及び前記色温度検出部により検出される前記空間の色温度が、前記目標照度及び前記目標色温度となるように、前記照明器具を制御する、
請求項1又は請求項2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記目標メラノピック照度は、
人の覚醒を抑制することが可能な値に設定される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記目標照度は、
前記空間における生活行為に支障が生じない値を基準として設定される、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の照明制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記建物の利用者の就寝時刻に基づいて決定された時刻に前記照明制御を実行する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具を制御する照明制御システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、状況に応じて照明器具を制御する照明制御システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、寝室の利用者の状況(例えば、テレビを視聴している、読書している、睡眠をとっている、等)に応じて照明器具の動作(点灯及び消灯)を制御する照明制御システムが記載されている。このような照明制御システムによって、寝室の利用者のサーカディアンリズムに応じた適切な照明環境を提供することができる。
【0004】
ここで、近年、サーカディアンリズムに影響を与える新たな光の単位として、メラノピック照度が注目されている。メラノピック照度は、利用者の健康(例えば、睡眠の質等)に影響を与えることが分かっており、このメラノピック照度を考慮した照明の制御を行うことで、利用者の健康の増進等、種々の効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、メラノピック照度を考慮した照明器具の制御が可能な照明制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物において区画された空間の照明を制御する照明制御システムであって、前記空間に設けられる照明器具と、前記空間に対して設定された目標照度及び目標メラノピック照度から、前記空間の目標色温度を算出し、前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記色温度となるように、前記照明器具を制御する照明制御を実行する制御部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記照明器具は、前記建物に設けられた複数の前記空間のそれぞれに設けられ、前記制御部は、前記照明制御において、複数の前記空間ごとに設定された前記目標照度及び前記目標メラノピック照度から、複数の前記空間ごとの前記目標色温度を算出し、複数の前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記目標メラノピック照度となるように、前記照明器具を制御するものである。
【0010】
請求項3においては、前記空間の照度を検出可能な照度検出部と、前記空間の色温度を検出可能な色温度検出部と、をさらに具備し、前記制御部は、前記照明制御において、前記照度検出部により検出される前記空間の照度及び前記色温度検出部により検出される前記空間の色温度が、前記目標照度及び前記目標色温度となるように、前記照明器具を制御するものである。
【0011】
請求項4においては、前記目標メラノピック照度は、人の覚醒を抑制することが可能な値に設定されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記目標照度は、前記空間における生活行為に支障が生じない値を基準として設定されるものである。
【0013】
請求項6においては、前記制御部は、前記建物の利用者の就寝時刻に基づいて決定された時刻に前記照明制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、メラノピック照度を考慮した照明器具の制御が可能となる。
【0016】
請求項2においては、複数の空間において、メラノピック照度を考慮した照明器具の制御が可能となる。
【0017】
請求項3においては、照度及び色温度をより精密に制御することができる。
【0018】
請求項4においては、利用者の睡眠の質を向上させることができる。
【0019】
請求項5においては、利用者の健康を考慮した照明制御を行いながらも、生活行為を妨げるのを防止することができる。
【0020】
請求項6においては、利用者の就寝時刻に合わせたタイミングで照明制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る照明制御システムの構成を示した模式図。
【
図3】基準照度、基準色温度及び基準メラノピック照度の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る照明制御システム100について説明する。
【0023】
照明制御システム100は、建物において区画された空間(室)の照明を制御するものである。本実施形態では、建物の一例として、人が居住する住宅1を想定している。
図1には住宅1が有する室の一例として、寝室2、リビング3、廊下4及びダイニング5を模式的に示している。寝室2、リビング3、廊下4及びダイニング5は、互いに内壁によって区画され、後述する照明器具110によって個別に室内の照明を制御することができる。
【0024】
照明制御システム100は、主として照明器具110、センサ120及び制御部130等を具備する。
【0025】
照明器具110は、光で寝室2等の空間(室)を照らすものである。照明器具110は、照射する光の光色、光量、配光等を調節することができる。本実施形態における照明器具110は、特に寝室2等の空間(室)における光の照度と色温度を調節できるように構成されている。照明器具110は、照明制御システム100による照明の制御対象となる室にそれぞれ設けられる。
図1には、寝室2、リビング3、廊下4及びダイニング5のそれぞれの天井に照明器具110を設けた例を示している。
【0026】
なお、照明器具110の照度や色温度の調節可能な範囲は、照明器具110の性能によって定まるものである。本実施形態の照明器具110は、後述するように色温度を調節することを想定しているため、色温度の調節可能な範囲は極力広いほうが望ましい。例えば本実施形態では、少なくとも1800~12000(K)の範囲で色温度を調節できる照明器具110を用いることが望ましい。
【0027】
センサ120は、寝室2等の空間(室)の光(照明)に関する情報を検出するものである。本実施形態におけるセンサ120は、特に照度、及び色温度を検出できるように構成されている。センサ120は、照明制御システム100による照明の制御対象となる室にそれぞれ設けられる。
図1には、寝室2、リビング3、廊下4及びダイニング5のぞれぞれの壁面にセンサ120を設けた例を示している。センサ120は、室内の照度や色温度を検出し易いように、床面から1200mm程度の高さに設置される。
【0028】
制御部130は、照明器具110を制御するためのものである。制御部130は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部130の記憶部には、照明制御システム100(特に、照明器具110)の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。制御部130の演算処理部は、前記プログラムを実行して前記種々の情報を用いた所定の演算処理等を行うことで、照明器具110の動作を制御することができる。制御部130は、住宅1内の適宜の場所に設けられる。
【0029】
制御部130は、各種情報を入力するための入力部(例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶モニタ、LEDランプ、タッチパネル等)を具備していてもよい。
【0030】
制御部130は、各室に設けられた照明器具110に接続され、当該照明器具110の動作を制御することができる。本実施形態では、制御部130は、照明器具110の光色、光量等を制御することで、各室における光の照度及び色温度を調節することができる。
【0031】
また制御部130は、各室に設けられたセンサ120に接続され、当該センサ120による検出結果を取得することができる。具体的には、制御部130は、各室における光の実際の照度及び色温度を取得することができる。
【0032】
このように構成された照明制御システム100において、制御部130が照明器具110の動作を制御することにより、住宅1の居住者のサーカディアンリズムを整えることができる。本実施形態では特に、居住者の睡眠前の覚醒を抑制し、居住者が質の高い睡眠を得られるように促すことができる。以下、このための制御(照明制御)について具体的に説明する。
【0033】
図2のステップS101において、制御部130は、住宅1の居住者の就寝時刻(就寝する予定の時刻)を取得する。就寝時刻の取得方法としては、例えば、予め制御部130に設定(記憶)されている就寝時刻を呼び出して取得する方法や、居住者が前記入力部等を用いて任意に設定した就寝時刻を取得する方法がある。
【0034】
なお、住宅1の居住者が複数いる場合には、制御部130は、そのうち任意の一人の居住者を選択し、その居住者の就寝時刻を取得する。居住者の選択方法は、予め制御部130に対象として設定(記憶)されている一人の居住者を選択する方法や、居住者が前記入力部等を用いて任意に選択する方法等がある。
【0035】
制御部130は、居住者の就寝時刻を取得した後、ステップS102の処理に移行する。
【0036】
図2のステップS102において、制御部130は、各室ごとの基準メラノピック照度を取得する。ここで、基準メラノピック照度とは、照明を制御する際の目標(基準)となるメラノピック照度である。またメラノピック照度とは、居住者の健康(例えば、覚醒度や安眠度等)に影響を与える指標として用いられる照度である。
【0037】
基準メラノピック照度の取得方法としては、例えば、予め制御部130に設定(記憶)されている各室ごとの基準メラノピック照度の値を呼び出して取得する方法や、居住者が前記入力部等を用いて任意に設定した各室ごとの基準メラノピック照度を取得する方法がある。
図3には、住宅1の各室ごとに設定された基準メラノピック照度の値の一例を示している。本実施形態では、居住者の睡眠前の覚醒を抑制する観点から、基準メラノピック照度として、各室において居住者の覚醒の抑制が期待できる程度に低い値が個別に設定されている。この値は、予め実験等によって決定することができる。
【0038】
例えば、リビング3やダイニング5では、メラノピック照度を10(EML)以下に抑えることで、居住者の覚醒を抑制することができると考えられるため、基準メラノピック照度が10(EML)に設定されている。またリビング3やダイニング5では、居住者が就寝前に何らかの生活行為(例えば、家族との会話、テレビの閲覧、読書等)を行うことが想定されるため、基準メラノピック照度としては、覚醒を抑制しながらも、生活活動が極端に阻害されない程度の値が設定されている。
【0039】
また、寝室2の基準メラノピック照度は1(EML)に設定されている。リビング3やダイニング5等に比べて寝室2では上記生活行為の頻度や時間が少ないと考えられるため、寝室2の基準メラノピック照度としては、リビング3等に比べて低い値が設定されている。これによって、寝室2においては、居住者の覚醒をより効果的に抑制できるものと考えられる。
【0040】
また廊下4の基準メラノピック照度は5(EML)に設定されている。リビング3やダイニング5等に比べて廊下4では上記生活行為の頻度や時間が少ないと考えられる一方、廊下4は移動のための視界を確保する必要がある。このため、廊下4の基準メラノピック照度としては、リビング3等に比べて低い値、かつ寝室2より高い値が設定されている。
【0041】
制御部130は、基準メラノピック照度を取得した後、ステップS103の処理に移行する。
【0042】
図2のステップS103において、制御部130は、各室ごとの基準照度を取得すると共に、各室ごとの基準色温度を算出する。ここで、基準照度とは、照明を制御する際の目標(基準)となる照度である。また、基準色温度とは、照明を制御する際の目標(基準)となる色温度である。
【0043】
基準照度の取得方法としては、例えば、予め制御部130に設定(記憶)されている各室ごとの基準照度の値を呼び出して取得する方法や、居住者が前記入力部等を用いて任意に設定した各室ごとの基準照度を取得する方法がある。
図3には、住宅1の各室ごとに設定された基準照度の値の一例を示している。本実施形態では、居住者の睡眠前の覚醒を抑制しながらも、各室における生活行為に支障(不具合)が生じるのを防止する観点から、基準照度として、各室において居住者の生活行為に支障が生じず、かつ可能な限り低い値が個別に設定されている。
【0044】
この値は、例えばJIS照明基準総則(JIS Z 9110:2010)に定められている各室の用途に基づく推奨照度に基づいて決定することができる。具体的には、JIS照明基準総則に定められた推奨照度を満たしつつ、極力低い値になるように、各室の基準照度を決定することができる。
【0045】
例えば本実施形態では、上記JIS照明基準総則を参照の上、寝室2、リビング3、廊下4及びダイニング5の基準照度が、それぞれ50(lx)、10(lx)、20(lx)及び40(lx)に設定されている。
【0046】
また、基準色温度の算出方法としては、メラノピック照度を算出する数式に、ステップS102及びステップS103で設定された基準メラノピック照度及び基準照度を代入して算出する方法がある。当該数式としては、例えば下記の簡易式(数1)を用いることが可能である。
(数1)
メラノピック照度=メラノピック比×照度
【0047】
ここで、メラノピック比は下記の数式(数2)を用いて算出される。
(数2)
メラノピック比=∫{分光分布(λ)×標準比視感度(λ)}dλ/∫{分光分布(λ)×メラノプシン感度(λ)}dλ
【0048】
なお、上記数式における光の波長λの範囲は、380~780(nm)である。
また、分光分布は、どの波長の光がどの程度含まれているかを示す値であり、分光分布は色温度に応じて変化するものである。
また、標準比視感度は、標準的な人間の眼の感度特性(光に対する視覚の波長依存性)、すなわち人間の光の感じ方であり、固定値である。
また、メラノプシン感度は、人間の覚醒にかかわる器官の光の感度特性、すなわち人間の覚醒光の感じ方であり、固定値である。
【0049】
すなわち、分光分布が分かれば、上記数1及び数2を用いて基準色温度を計算することができる。分光分布は色温度に応じて変化するため、色温度ごとの分光分布を事前に把握しておく。なお分光分布は、照明器具メーカーが提供する情報に基づいて把握することができる。
【0050】
このように、基準メラノピック照度及び基準照度に基づいて、基準メラノピック照度を得るのに必要な色温度(基準色温度)を算出することができる。
図3には、住宅1の各室ごとに算出された基準色温度の値の一例を示している。
【0051】
制御部130は、各室ごとの基準照度及び基準色温度を取得・算出した後、ステップS104の処理に移行する。
【0052】
図2のステップS104において、制御部130は、ステップS101で取得した就寝時刻に基づいて決定された制御開始時刻に、各室の照明器具110を制御する。ここで、制御開始時刻は、就寝時刻から所定時間(例えば2時間)だけ遡った時刻となるように決定される。例えば、就寝時刻が11時である場合、その時刻から2時間遡った9時が制御開始時刻として決定される。
【0053】
制御部130は、制御開始時刻になると、各室に設けられた照明器具110の光量等が、予め設定されている初期値となるように(すなわち、各室の照度及び色温度が、予め設定されている初期値となるように)、各室の照明器具110を制御する。この初期値は任意の値に設定することが可能である。
【0054】
但し、速やかに本照明制御を完了させる観点からは、各室の照度及び色温度が、ステップS103で取得・算出された基準照度及び基準色温度に近い値となるような初期値を選定することが望ましい。この場合、照明器具110の光量等の出力値と、各室の実際の照度及び色温度と、の関係を実験等により予め確認しておくことで、照明器具110の光量等を基準照度等に応じて適切に制御することが可能である。
【0055】
制御部130は、各室の照度及び色温度が初期値となるように照明器具110を制御した後、ステップS105の処理に移行する。
【0056】
図2のステップS105において、制御部130は、センサ120から、各室における光の照度及び色温度を取得する。制御部130は、各室の照度及び色温度を取得した後、ステップS106の処理に移行する。
【0057】
図2のステップS106において、制御部130は、各室の照度が、ステップS103で取得した基準照度以下であるか否かを判定する。制御部130は、照度が基準照度より大きい室がある場合、ステップS107に移行する。一方、制御部130は、各室の照度が基準照度以下である場合、ステップS108に移行する。
【0058】
図2のステップS107において、制御部130は、照度が基準照度より大きい室の照明器具110の光量の出力を調節し、照度を所定量だけ下げる。制御部130は、照明器具110の照度を所定量だけ下げた後、ステップS105の処理に移行する。制御部130は、このようなステップS105からステップS107の処理を繰り返すことで、各室の照度を基準照度以下まで下げることができる。すなわち、本実施形態においては、照明制御における照度の目標値(目標照度)は、基準照度以下の値となる。
【0059】
一方、ステップS106から移行したステップS108において、制御部130は、各室の色温度が、ステップS103で算出した基準色温度以下であるか否かを判定する。制御部130は、色温度が基準色温度より大きい室がある場合、ステップS109に移行する。一方、制御部130は、各室の色温度が基準色温度以下である場合、本照明制御を終了する。
【0060】
図2のステップS109において、制御部130は、色温度が基準色温度より大きい室の照明器具110の光色を調節し、色温度を所定量だけ下げる。制御部130は、色温度を所定量だけ下げた後、ステップS110の処理に移行する。
【0061】
図2のステップS110において、制御部130は、ステップS109で色温度を調節した照明器具110の色温度が、調節可能な範囲の下限値に達しているか否かを判定する。制御部130は、照明器具110の色温度が下限値に達していると判定した場合、本照明制御を終了する。一方、制御部130は、照明器具110の色温度がまだ下限値に達していないと判定した場合、ステップS105に移行する。制御部130は、このようなステップS108からステップS110の処理を繰り返すことで、各室の照度を基準色温度以下、若しくは下限値になるまで下げることができる。すなわち、本実施形態においては、照明制御における色温度の目標値(目標色温度)は、基準色温度以下の値、若しくは前記下限値となる。
【0062】
以上のような照明制御によって、対象となる居住者が就寝する前(例えば2時間前)に、各室のメラノピック照度を下げる(概ね、基準メラノピック照度(
図3参照)と同等の値にする)ことができる。これによって、就寝前の居住者が覚醒するのを抑制し、質の高い睡眠を得られるように促すことができる。
【0063】
特に本実施形態では、色温度を調節することによって、メラノピック照度を下げながらも、居住者の生活行為に支障がでないような照度を確保することができる。これによって、例えば対象となる居住者と同居している他の居住者の生活行為に支障がでることを防止しながら、対象となる居住者の覚醒を抑制することができる。さらに本実施形態では、各室ごとに照明を制御することで、各室における生活行為に応じて適切に照明を制御することができる。
【0064】
以上の如く、本実施形態に係る照明制御システム100は、
建物(住宅1)において区画された空間の照明を制御する照明制御システム100であって、
前記空間に設けられる照明器具110と、
前記空間に対して設定された目標照度及び目標メラノピック照度から、前記空間の目標色温度を算出し、前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記色温度となるように、前記照明器具110を制御する照明制御を実行する制御部130と、
を具備するものである。
【0065】
このように構成することにより、メラノピック照度を考慮した照明器具110の制御が可能となる。これによって、利用者(居住者)の健康(例えば、睡眠の質等)を考慮した照明器具110の制御を行うことができる。
【0066】
また、前記照明器具110は、
前記建物に設けられた複数の前記空間のそれぞれに設けられ、
前記制御部130は、
前記照明制御において、複数の前記空間ごとに設定された前記目標照度及び前記目標メラノピック照度から、複数の前記空間ごとの前記目標色温度を算出し、複数の前記空間の照度及び色温度が、当該空間の前記目標照度及び前記目標メラノピック照度となるように、前記照明器具を制御するものである。
【0067】
このように構成することにより、複数の空間において、メラノピック照度を考慮した照明器具110の制御が可能となる。これによって、居住者が複数の空間(室)に亘って移動したとしても、利用者の健康(例えば、睡眠の質等)を考慮した照明を得ることができる。
【0068】
また、照明制御システム100は、
前記空間の照度を検出可能なセンサ120(照度検出部)と、
前記空間の色温度を検出可能なセンサ120(色温度検出部)と、
をさらに具備し、
前記制御部130は、
前記照明制御において、前記センサ120により検出される前記空間の照度及び前記センサ120により検出される前記空間の色温度が、前記目標照度及び前記目標色温度となるように、前記照明器具を制御するものである。
【0069】
このように構成することにより、照度及び色温度をより精密に制御することができる。すなわち、センサ120による実測値に基づいて照明器具110の動作を制御(補正)することができるため、室の内装や外部光の影響を考慮した精密な制御が可能となる。これによって、利用者の健康を考慮した照明器具110の制御を効果的に行うことができる。
【0070】
また、前記目標メラノピック照度は、
人の覚醒を抑制することが可能な値に設定されるものである。
【0071】
このように構成することにより、利用者の睡眠の質を向上させることができる。すなわち、利用者の覚醒を抑制することができるため、利用者の寝つきや睡眠の深さの改善を図ることができる。
【0072】
また、前記目標照度は、
前記空間における生活行為に支障が生じない値を基準として設定されるものである。
【0073】
このように構成することにより、利用者の健康を考慮した照明制御を行いながらも、生活行為を妨げるのを防止することができる。
【0074】
また、前記制御部130は、
前記建物の利用者の就寝時刻に基づいて決定された時刻(制御開始時刻)に前記照明制御を実行するものである。
【0075】
このように構成することにより、利用者の就寝時刻に合わせたタイミングで照明制御を行うことができる。例えば、利用者の就寝前に照明制御を行うことで、利用者の睡眠の質を向上させることができる。
【0076】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、本実施形態では、照明制御システム100が適用される建物として住宅1を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、照明が設けられる種々の建物(宿泊施設、商業施設等)に適用することが可能である。
【0078】
また、本実施形態で例示した室(寝室2、リビング3、廊下4及びダイニング5)は一例であり、照明器具110を設ける室(照明制御を行う室)は任意に選択することが可能である。また、本実施形態では複数の室の照明器具110の動作を制御する例を示したが、例えば1つの室(例えば、寝室2)の照明器具110だけを制御することも可能である。
【0079】
また、本実施形態で説明した基準メラノピック照度及び基準照度の値は利用者等によって任意に変更することが可能である。また、本実施形態で説明した基準色温度の算出方法は一例であり、任意の方法で算出することが可能である。
【0080】
また、本実施形態では、ステップS101で取得した就寝時刻に基づいて決定された制御開始時刻に各室の照明器具110を制御する例(ステップS104参照)を示したが、本発明はこれに限るものではなく、任意のタイミングで照明器具110を制御することが可能である。例えば、居住者による所定の操作を契機として照明器具110の制御を開始することも可能である。
【0081】
また、本実施形態では、照度及び色温度がそれぞれ基準値以下となるように制御を行った(ステップS106からステップS109参照)。すなわち本実施形態では、照度及び色温度が上限値(基準値)以下となるような制御を行ったが、本発明はこれに限るものではない。例えば、照度及び色温度に上限値(基準値)だけでなく下限値を設けて、照度及び色温度が基準値以下かつ下限値以上となる範囲で制御を行うことも可能である。このように構成することで、照度や色温度が過度に低下して生活行為に支障が生じるのを防止することができる。
【0082】
また、本実施形態では、JIS照明基準総則に基づいて基準照度を設定した例を示したが、基準照度の決定方法はこれに限るものではない。例えば基準照度は、任意の値に設定することも可能である。
【0083】
また、本実施形態では、基準色温度の算出方法として上記数1及び数2を利用する例を示したが、基準色温度の算出方法はこれに限るものではない。例えば基準色温度は、その他の数式(例えば、適宜設定された近似式等)を用いて算出することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 住宅
100 照明制御システム
110 照明器具
120 センサ
130 制御部