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特開2022-155953削井方法、建築方法及び井戸構築用杭
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155953
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】削井方法、建築方法及び井戸構築用杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/22 20060101AFI20221006BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E02D7/22
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059414
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】小貫 陽平
(72)【発明者】
【氏名】西尾 聡史
(72)【発明者】
【氏名】長沼 信一
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CA05
2D041DB02
2D041FA14
2D050AA06
(57)【要約】
【課題】削井方法、建築方法及び井戸構築用杭を提供する。
【解決手段】先端が閉塞された管状の本体部10を有する管状杭の本体部10に貫通孔2を形成して井戸構築用杭1を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔2を栓部材3で封止する封止工程と、先端側から井戸構築用杭1を地盤に打ち込む打込工程と、を含む削井方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉塞された管状の本体部を有する管状杭の当該本体部に貫通孔を形成して井戸構築用杭を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔を栓部材で封止する封止工程と、
前記先端側から前記井戸構築用杭を地盤に打ち込む打込工程と、を含む削井方法。
【請求項2】
前記栓部材を円錐台形状に形成する栓形成工程を更に含む請求項1に記載の削井方法。
【請求項3】
前記栓形成工程では、
前記栓部材の最大直径を前記貫通孔よりも大きく形成し、
前記栓部材の高さを、前記最大直径の50%以上150%以下に形成する請求項2に記載の削井方法。
【請求項4】
前記栓形成工程では、前記栓部材を中空に形成する請求項2又は3に記載の削井方法。
【請求項5】
前記封止工程は、水溶性基材を用いて前記栓部材を形成して前記貫通孔を封止する請求項1から4のいずれか一項に記載の削井方法。
【請求項6】
前記水溶性基材は、PVAを含む請求項5に記載の削井方法。
【請求項7】
前記水溶性基材は、でんぷんを含む請求項5又は6に記載の削井方法。
【請求項8】
前記本体部に水を注入する水注入工程と、
前記水溶性基材を溶解させる溶解工程と、を更に含む請求項5から7のいずれか一項に記載の削井方法。
【請求項9】
前記貫通孔形成工程は、前記貫通孔を直径10mm以上20mm以下に形成する請求項1から8のいずれか一項に記載の削井方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の削井方法を用いて井戸を構築する井戸構築工程と、
建物の基礎として鋼管杭を地盤に打ち込む基礎構築工程と、を含み、
前記井戸構築工程と前記基礎構築工程とを同一敷地内で実行する建築方法。
【請求項11】
先端が閉塞された管状の本体部と、
前記本体部に形成された貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、水溶性基材で封止されている井戸構築用杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削井方法、建築方法及び井戸構築用杭に関する。
【背景技術】
【0002】
災害対策として、住宅などの構造物や建築物(以下、構造物等と記載する)の耐災害性能の向上が求められている。特許文献1には、杭基礎である液状化防止用鋼管杭が記載されている。この液状化防止用鋼管杭は、地盤の液状化防止に用いられる。液状化防止用鋼管杭には、複数個の排水孔が設けられている。この排水孔には、土砂流入防止用のネットが張られている。液状化防止用鋼管杭は、構造物の杭基礎として地盤に打ち込まれ埋設される。地盤内の間隙水は貫通孔2を通って液状化防止用鋼管杭内に排出される。液状化防止用鋼管杭内に排出された水は杭の下部からの水圧によって上部に押し上げられて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-10819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に近年は、住宅の耐災害性能の一環として、災害後のライフライン確保を可能とすることが求められている。特に、水の確保は重要である。そのため、災害時においても水を供給可能な設備を、容易ないし安価に構築可能な技術の提供が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、容易ないし安価に井戸を掘削する削井方法、当該削井方法を含む建築方法、及び当該削井方法に用いる井戸構築用杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る削井方法は、
先端が閉塞された管状の本体部を有する井戸構築用杭部材の当該本体部に貫通孔を形成して井戸構築用杭を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔を栓部材で封止する封止工程と、
前記先端側から前記井戸構築用杭を地盤に打ち込む打込工程と、を含む。
【0007】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記栓部材を円錐台形状に形成する栓形成工程を更に含んでもよい。
【0008】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記栓形成工程では、
前記栓部材の最大直径を前記貫通孔よりも大きく形成し、
前記栓部材の高さを、前記最大直径の50%以上150%以下に形成してもよい。
【0009】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記栓形成工程では、前記栓部材を中空に形成してもよい。
【0010】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記封止工程は、水溶性基材を用いて前記栓部材を形成して前記貫通孔を封止してもよい。
【0011】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記水溶性基材は、PVAを含んでもよい。
【0012】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記水溶性基材は、でんぷんを含んでもよい。
【0013】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記本体部に水を注入する水注入工程と、
前記水溶性基材を溶解させる溶解工程と、を更に含んでもよい。
【0014】
本発明に係る削井方法では、更に、
前記貫通孔形成工程は、前記貫通孔を直径10mm以上20mm以下に形成してもよい。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る建築方法は、
上記の削井方法を用いて井戸を構築する井戸構築工程と、
建物の基礎として鋼管杭を地盤に打ち込む基礎構築工程と、を含み、
前記井戸構築工程と前記基礎構築工程とを同一敷地内で実行する。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る井戸構築用杭は、
先端が閉塞された管状の本体部と、
前記本体部に形成された貫通孔と、を備え、
前記貫通孔は、水溶性基材で封止されている。
【発明の効果】
【0017】
容易ないし安価に井戸を掘削する削井方法、当該削井方法を含む建築方法、及び当該削井方法に用いる井戸構築用杭を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】井戸構築用杭の側面図である。
図2】井戸構築用杭を形成するために用いる管状杭の側面図である。
図3】住宅、地盤に構築された住宅の基礎、及び住宅と同一敷地内に構築された井戸の説明図である。
図4】先端側領域を平面状に展開した説明図である。
図5図1のV-V矢視断面図である。
図6図1のVI-VI矢視断面図である。
図7】栓部材を内面部側から見た平面図である。
図8図7のVIII-VIII矢視断面図である。
図9】栓部材を貫通孔にはめ込んだ状態を示す、貫通孔部分を含む本体部の管壁の一部断面図である。
図10】井戸構築用杭の打込み方法の説明図である。
図11】杭部材の溶解、除去方法の説明図である。
図12】別の栓部材を内面部側から見た平面図である。
図13図12のXIII-XIII矢視断面図である。
図14】別の栓部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る削井方法、当該削井方法を含む建築方法、及び当該削井方法に用いる井戸構築用杭について説明する。
【0020】
〔概略構成の説明〕
図1に示すように、本実施形態に係る井戸構築用杭1は、先端が閉塞された管状(筒状)の本体部10と、本体部に形成された貫通孔2と、を備え、貫通孔2は、栓部材3で封止されている。
【0021】
井戸構築用杭1を用いた削井方法では、まず、井戸構築用杭1を形成する。井戸構築用杭1は、図2に示すような、先端が閉塞された管状の本体部10を有する管状杭1Aに貫通孔2を形成(貫通孔形成工程の一例)し、貫通孔2を栓部材3で封止(封止工程の一例)して作成する。
【0022】
図3に示すように、井戸100を掘削する際、すなわち、削井時は、先端側から井戸構築用杭1を地盤9に打ち込む(打込工程の一例)ことで、井戸100を容易に構築できる(井戸構築工程の一例)。貫通孔2から栓部材3を除去すると、帯水層93の水が、貫通孔2から本体部10の管内に流入する。これにより、井戸100は水を供給可能となる。
【0023】
井戸100の構築は、建物(一例として住宅8)の構築と同時に行うとよい。具体的には、井戸100の構築と、住宅8の基礎81として鋼管杭82を地盤9に打ち込む基礎構築工程とは、同一敷地内で実行すると、効率的である。鋼管杭82を地盤9に打ち込む装置(以下、杭打機と称する)と同じ装置で井戸構築用杭1を地盤9に打ち込むことができるため、作業が効率化し、安価に井戸100を構築できる。
【0024】
〔各部の説明〕
図3に示すように、井戸構築用杭1は、地盤9に打ち込むという容易且つ安価な方法で井戸100の構築を実現する部材である。図1に示すように、井戸構築用杭1は一例として、先端が閉塞された管状の本体部10と、本体部10に形成された貫通孔2と、本体部10の先端側に設けられたスクリュ11と、本体部10の基端側に設けられたリブ12とを備えている。井戸構築用杭1は、後述するように、地盤9(図3参照)に打ち込む前に、貫通孔2を栓部材3で封止される。上述の通り井戸構築用杭1は、一例として、先端が閉塞された管状の本体部10を有する管状杭1A(図2参照)に貫通孔2を形成(貫通孔形成工の一例)し、貫通孔2を栓部材3で封止(封止工程の一例)して作成する。なお、一例として、いわゆる鋼管杭を管状杭1Aとして用いることができる。以下では、井戸構築用杭1を地盤9に打ち込むことを単に打込みなどと記載する。
【0025】
井戸構築用杭1は、長手方向の長さを1.5m前後に形成してよい。以下では、井戸構築用杭1及び井戸構築用杭1の各部の説明においては、井戸構築用杭1の長手方向を基準とし、スクリュ11が設けられている側を単に先端側、リブ12が設けられている側を単に基端側と称する場合がある。
【0026】
本体部10は、先端側が閉塞された有底筒状の管部材である。本体部10は、井戸構築用杭1で井戸100(図3参照)した際に、井戸100の穴を保持し、土砂で井戸100の穴が埋まってしまうことを防止する、井戸100の壁材となる。
【0027】
スクリュ11は、井戸構築用杭1を地盤9(図3参照)に打ち込む際に地盤9への回転貫入を実現する推進機構である。スクリュ11は、本体部10の先端側に設けられる。なお、井戸構築用杭1の先端側とは、井戸構築用杭1を地盤9に打ち込む際に、本体部10において、鉛直方向における下側に配置される側である。
【0028】
井戸構築用杭1は、基端側のリブ12などに杭打機の回転機構を係合されて回転されることにより、スクリュ11を地盤9に噛みこませて地盤9中へ推進されて打ち込まれる。スクリュ11は、例えば、二翼ないし三翼で形成される。スクリュ11の外径は、一例として、井戸構築用杭1の本体部10の外径の1.5~3倍である。
【0029】
貫通孔2は、地盤9(帯水層93)中の水を本体部10の管内に流入させるための流路となる穴である。貫通孔2は、一例として円形状の開口として形成してよい。
【0030】
貫通孔2は、図1に示すように、本体部10の先端側領域10Aに複数個形成される。先端側領域10Aは、スクリュ11よりも基端側に配置される。先端側領域10Aは、例えば、スクリュ11よりも基端側から本体部10の基端側に向けて、1m前後の範囲に配置されてよい。
【0031】
貫通孔2は、先端側領域10Aにおいて、本体部10の筒の周方向において、環状且つ等間隔で配置される。また、貫通孔2は、本体部10の軸方向において、直線状に等間隔で配置される。図4には、先端側領域10Aを平面状に展開した説明図を示している。図4に示すように、一例として、貫通孔2は角千鳥格子状に配列してよい。貫通孔2は、三角千鳥格子状、その他の配列でもよい。貫通孔2は、一例として、開口径D(直径の一例)が10mm以上20mm以下に形成される。
【0032】
図4に示すように、貫通孔2を角千鳥格子状に配列した場合、本体部10の長手方向において隣り合う貫通孔2,2間の距離と、本体部10の周方向において隣り合う貫通孔2,2間の距離とはそれぞれ距離d1としてよい。距離d1は、一例として75mm以上125mmである。また、周方向に配列された貫通孔2の列と、本体部10の長手方向において隣り合う別の、周方向に配列された貫通孔2の列との距離d2は距離d2の二分の1としてよい。
【0033】
貫通孔2は、図5,6に示すように、一例として直胴状に本体部10の管壁を貫通する孔として形成してよい。貫通孔2は、本体部10の径方向外側から内側に向けて窄む形状とすることもできる。
【0034】
図1,5に示すように、貫通孔2は、井戸構築用杭1の打込み前(削井前)に、栓部材3で封止される(上述の封止工程)。これにより井戸構築用杭1を地盤9(図3参照)に打ち込む際に、土砂が貫通孔2から本体部10の管内に流入することを防止できる。図1,5では、複数の貫通孔2のうち、一部のみを栓部材3で封止した状態を図示しているが、これは説明の便宜であり、全ての貫通孔2は井戸構築用杭1の打込み前に栓部材3で封止される。
【0035】
栓部材3は、上述のごとく、貫通孔2を封止するための封止部材である。栓部材3は、水溶性基材を用いて(含有して)形成されることが好ましい。以下の説明では、栓部材3が水溶性基材を含んで形成される場合について説明する。水溶性基材の一例は、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂や水溶性でんぷんのような、水に溶かれることで粘性を持ち、所定の形状に形成可能な材料である。特にポリビニルアルコール(PVA)や水溶性でんぷんは、水で膨潤することにより軟化する(流動可能となる)点でも好ましい。また、栓部材3は、ある程度弾性を有する部材で形成されるとよい。
【0036】
栓部材3は一例として、図7,8に示すように円錐台形状に形成してよい(栓形成工程の一例)。栓部材3は、図5に示すように、貫通孔2にはめ込まれることで貫通孔2を封止することができる。
【0037】
図7,8に示すように、栓部材3は、貫通孔2(図5など参照)にはめ込まれた際に、本体部10の径方向における外側(井戸構築用杭1の外面側)に配置される外面部31と、外面部31よりも直径が小さく形成された内面部32と、外面部31から内面部32に向けて窄む胴部33とを有する。外面部31、内面部32及び胴部33は、一例として同軸心に形成され、これらの軸心に沿って見た軸心方向視において円形状である。
【0038】
外面部31の外径は、貫通孔2の開口径よりも大きくすることが好ましい。内面部32は、貫通孔2の開口径よりも小さくしてよい。胴部33の直径は、内面部32の直径以上、外面部31の直径以下である。
【0039】
胴部33の高さ、すなわち、外面部31と内面部32の最短距離は、栓部材3の最大直径である外面部31の直径の50%以上150%以下にするとよい。栓部材3の形状を上記のようにすることで、栓部材3が貫通孔2にしっかりとはまり、打込み時において、不用意に栓部材3が貫通孔2から抜け落ちることを防止することができる。
【0040】
栓部材3は、図8に示すように、中空に形成されてよい。栓部材3は、一例として、内面部32の側から外面部31の側に向けて凹み、外面部31まで貫通しない凹部35を形成されてよい。すなわち、凹部35は、有底筒状である。凹部35は、外面部31、内面部32ないし胴部33と同軸心の円形の断面を有する筒状の凹部に形成されてよい。
【0041】
図9は、栓部材3がはめ込まれた貫通孔2を含む本体部10の断面の一部を拡大した図である。栓部材3は、外面部31を本体部10の径方向外側に配置した状態で、胴部33を貫通孔2にはめ込まれる。貫通孔2の縁部分が胴部33に若干食い込む程度に栓部材3を貫通孔2にはめ込むと、打込み時において、不用意に栓部材3が貫通孔2から抜け落ちることを防止することができる。
【0042】
上述のごとく、スクリュ11(図5など参照)の外径は、一例として、井戸構築用杭1の本体部10の外径の1.5~3倍とされており、栓部材3がはめ込まれる貫通孔2が配置される先端側領域10Aはスクリュ11よりも基端側に配置されているため、打込み時における地盤9(図3参照)と栓部材3との摩擦が緩和されている。これにより、打込み時において、不用意に栓部材3が貫通孔2から抜け落ちることを防止することができる。
【0043】
以下では、図9を参照しつつ、井戸構築用杭1による削井方法について説明する。
【0044】
まず、井戸構築用杭1の先端を地盤9に当て、杭打機でリブ12など介して井戸構築用杭1を回転される。これにより、スクリュ11が地盤9に食い込んで、井戸構築用杭1を地盤9中に推進させる(図10の(a))。
【0045】
ある程度の深さまで井戸構築用杭1が地盤9中に打ち込まれ、地盤9の外部(以下、地上と記載する)に露出した状態の本体部10が短くなってくると、必要に応じて延長管19を本体部10の基端部に溶接などにより接続して本体部10と一体化し、井戸構築用杭1を延長してもよい(図10の(b))。なお、延長管19は二本以上接続されてもよい。また、延長管19は必要がなければ接続しなくてもよい。延長管19は、例えば、本体部10と同じ直径で、同じ肉厚の管部材を用いてよい。
【0046】
井戸構築用杭1の打込は、先端側領域10Aが帯水層93に到達するまで行う。先端側領域10Aが帯水層93に到達すると、貫通孔2から栓部材3を除去すれば、貫通孔2を介して地下水が本体部10内に流入可能となり、これにより井戸構築用杭1からの井戸水のくみ上げが可能となる(図10の(c))。
【0047】
先端側領域10Aが帯水層93に到達後、地上に残存した井戸構築用杭1の基端部ないし延長管19の基端部のうち、不要部分を切除してよい(図10の(d))
【0048】
その後、図11に示すように、本体部10の内部に水Wを注入する(水注入工程の一例)。水Wの本体部10への注入により、例えば本体部10の内部を水Wで満たす。そうすると、水Wにより、栓部材3が溶解して貫通孔2から除去される(溶解工程の一例)。
【0049】
本体部10の内部に水Wを供給した際、栓部材3は、円錐台形状に形成されているため、水Wで溶解されやすい。図11に示すように、栓部材3の胴部33と貫通孔2との隙間に水Wが流入しやすくなるためである。すなわちこれにより、栓部材3と水Wの接触する面積が増大し、栓部材3の溶解や軟化が促進される。そのため、井戸100(図3参照)の構築に要する時間を短縮して低コスト化できる。
【0050】
また、本体部10の内部に水Wを供給した際、栓部材3は、凹部35を形成されているため、水で溶解されやすい。図11に示すように、凹部35に水Wが流入することができるためである。すなわちこれにより、栓部材3と水Wの接触する面積が増大し、栓部材3の溶解や軟化が促進される。そのため、井戸100(図3参照)の構築に要する時間を短縮して低コスト化できる。
【0051】
栓部材3が水Wを吸収(例えば膨潤)などして軟化する基材で形成されている場合には、栓部材3が水Wで完全に溶解される前に本体部10内に抜け落ちさせて貫通孔2から除去することができるため更に好適である。井戸100(図3参照)の構築に要する時間を短縮して低コスト化できるためである。
【0052】
貫通孔2から栓部材3が除去されると、帯水層93の地下水が、貫通孔2を介して本体部10の筒内に流入可能となる。これにより、削井は終了、すなわち、井戸100(図3参照)が完成する。井戸100の完成後は、本体部10の筒内に流入した水を、当該筒内から逐次くみ上げ可能となる。
【0053】
なお、井戸100は、人が使用する建物に併設すると好適である。
【0054】
ここで、建物について説明する。建物とは、例えば鉄骨造の骨組みを有する複数階建ての住宅である。建物には、複数の居室が形成されてよい。建物は、例えば鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの骨組部材で構成された骨組架構と、壁や床などを形成するパネルとを有し、基礎に固定された上部構造体とで構成されてよい。骨組部材やパネルは、予め規格化(標準化)されたものとしてよい。この場合、骨組部材などを予め工場にて製造して建築現場に搬入し、建物を組み立ててよい。
【0055】
図3では、人が使用する建物の一例としての住宅8に井戸100が併設されている場合を示している。これにより、停電や地震、事故や人為的ミスにより水道が断水した場合にも、住宅8の使用者は、ライフラインとしての水を確保可能となる。
【0056】
井戸100は、住宅8の構築と同時に行い、且つ、同一敷地内において住宅8に併設すると、井戸100の構築のコスト低減を実現する点でも好適である。
【0057】
図3では、住宅8が、家屋80と、家屋80の基礎81とを含む場合を例示している。また図3には、住宅8が、表土層などの軟弱層91を表層とする地盤9上に構築されている場合を示している。住宅8において、基礎81は、鋼管杭82を含み、鋼管杭82は、軟弱層91を貫通し、頑固地盤などの支持層92まで打ち込まれている。これにより住宅8は、基礎81の鋼管杭82を介して支持層92に支持される。鋼管杭82は、一例として、管状杭1A(図2参照)を用いることができるが、これに限られない。以下では、鋼管杭82が管状杭1Aである場合を例示して説明する。
【0058】
このような住宅8を構築する場合において、鋼管杭82を地盤9に打ち込む際には、井戸構築用杭1の打込に使用する杭打機と同じ杭打機を使用可能である。したがって、上記の削井方法を用いて井戸100を構築する井戸構築工程を、建物としての住宅8の基礎81として鋼管杭82を地盤9に打ち込む基礎構築工程と同一敷地内で実行できる場合は、杭打機を互いに流用して使用することができる。そのため、低コストで井戸100を構築することができる。すなわち、容易ないし安価に井戸100を掘削する削井方法を実行する井戸構築工程と住宅8などの建物の基礎構築工程とを同一敷地内で実行する建築方法によれば、更に安価に井戸100を構築できるとともに、建物の使用者に対し、ライフラインとしての水を確保可能とすることができる。
【0059】
このような住宅8を構築する際に鋼管杭82を地盤9に打ち込む場合は、地盤9の調査結果を流用できる点も低コスト化に有利である。住宅8を構築する際には、地盤9の層構造、すなわち、軟弱層91、支持層92、帯水層93などの存在や位置を事前に調査し、基礎81の構築計画、すなわち、鋼管杭82をどのように打ち込むか、に関する計画を立案することになる。この地盤9の調査において、帯水層93の存在や位置も把握できる。そのため、井戸100の構築のために別途の調査を要しない。これにより、井戸100を低コストで構築できるのである。
【0060】
以上のようにして、容易ないし安価に井戸を掘削する削井方法、当該削井方法を含む建築方法、及び当該削井方法に用いる井戸構築用杭を提供することができる。
【0061】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、栓部材3は、外面部31と、内面部32と、胴部33とを有し、内面部32の側から外面部31の側に向けて凹み、外面部31まで貫通しない凹部35を形成されている場合を例示して説明した。しかし、栓部材3はこのような態様に限られない。
【0062】
栓部材3は、図12,13に示すように、凹部35とは別に、更に、内面部32の側から外面部31の側に向けて凹み、外面部31まで貫通しない第二凹部39を一つ以上形成されてもよい。
【0063】
すなわち、第二凹部39は、凹部35と同様に有底筒状に形成してよい。第二凹部39は、一例として凹部35よりも小さな内径の筒状の凹部であってよい。第二凹部39は、一例として凹部35よりも、胴部33の径方向外側位置に配置されてよい。図12では、一例として第二凹部39が凹部35よりも胴部33の径方向外側位置に8つ配置されている場合を例示的に示している。体部10の内部に水Wを供給した際、栓部材3に第二凹部39が形成されていると、更に水で溶解されやすくなる。第二凹部39に水が流入することができるためである。すなわちこれにより、栓部材3と水の接触する面積が増大し、栓部材3の溶解や軟化が更に促進される。
【0064】
(2)上記実施形態では、栓部材3が円錐台形状に形成され、貫通孔2にはめ込まれることで貫通孔2を封止する場合を説明したが、栓部材3は、このような形状である場合に限られない。
【0065】
栓部材3は、図14に示すように、本体部10(以上図5など参照)の径方向における外側に配置されるつまみ部36と、貫通孔2(図5など参照)にはめ込まれる胴部37とを有するプラグ状に形成されてもよい。つまみ部36及び胴部37は、それぞれ同軸心の円筒状に形成されてよく、つまみ部36は、胴部37よりも大きな直径に形成されてよい。胴部37は、貫通孔2の内径と同じかやや大きな直径とするとよい。
【0066】
また、栓部材3は、貫通孔2の外側(本体部10の径方向外側の面)をふさぐテープ状であったり、本体部10の径方向外側を包み込む筒状のカバー状の部材であったりしてもよい。
【0067】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、削井方法、建築方法及び井戸構築用杭に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 :井戸構築用杭
1A :管状杭
2 :貫通孔
3 :栓部材
8 :住宅
9 :地盤
10 :体部
10A :先端側領域
11 :スクリュ
12 :リブ
19 :延長管
31 :外面部
32 :内面部
33 :胴部
35 :凹部
36 :部
37 :胴部
39 :第二凹部
80 :家屋
81 :基礎
82 :鋼管杭
91 :軟弱層
92 :支持層
93 :帯水層
100 :井戸
W :水
d1 :距離
d2 :距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14