(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155960
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】改修方法及び建物
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20221006BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E04G23/02
E04B1/00 502N
E04B1/00 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059423
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭司
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA09
2E176BB23
(57)【要約】
【課題】屋内空間での移動に伴うヒートショックのリスクを軽減可能にする、改修方法、及び、建物、を提供する。
【解決手段】本発明に係る改修方法は、玄関又は階段室と連続する第1非居室が、居室、並びに、前記玄関及び前記階段室と連続しない第2非居室、それぞれと行き来可能に接続されている階層を有する建物の改修方法であって、前記第1非居室のうち少なくとも前記居室から前記第2非居室への動線上に位置する移動領域と、前記玄関又は前記階段室と、を開閉可能な戸で区画する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄関又は階段室と連続する第1非居室が、居室、並びに、前記玄関及び前記階段室と連続しない第2非居室、それぞれと行き来可能に接続されている階層を有する建物の改修方法であって、
前記第1非居室のうち少なくとも前記居室から前記第2非居室への動線上に位置する移動領域と、前記玄関又は前記階段室と、を開閉可能な戸で区画する、改修方法。
【請求項2】
前記第1非居室の前記移動領域と、前記居室と、を連続させる、請求項1に記載の改修方法。
【請求項3】
前記第2非居室を区画する外壁の断熱改修を行う、請求項1又は2に記載の改修方法。
【請求項4】
前記居室は、リビング、ダイニング、キッチン、リビング・ダイニング、ダイニング・キッチン、又は、リビング・ダイニング・キッチンであり、
前記第1非居室、前記居室、及び、前記第2非居室が設けられている前記階層とは異なる階層に寝室が設けられている場合に、前記居室の一部を寝室に改装する、又は、前記居室と接続されている別の居室を寝室に改装する、請求項1から3のいずれか1つに記載の改修方法。
【請求項5】
玄関又は階段室から行き来可能な第1非居室と、
前記第1非居室とそれぞれ行き来可能に接続されている居室及び第2非居室と、を備え、
前記第1非居室のうち少なくとも前記居室から前記第2非居室への動線上に位置する移動領域と、前記玄関又は前記階段室と、が開閉可能な戸で区画されており、
前記第2非居室を区画する外壁の断熱性能は、その周囲の外壁の断熱性能より高い、建物。
【請求項6】
前記第1非居室の前記移動領域と、前記居室と、が連続している、請求項5に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改修方法及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、急激な温度差により血圧が大きく変動することで失神、心筋梗塞、脳梗塞などが引き起こされる、所謂ヒートショックが知られている。特許文献1には、玄関に風除け空間を設ける玄関構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような風除け空間では、屋内空間での移動に伴うヒートショックのリスクを軽減することはできない。
【0005】
本発明は、屋内空間での移動に伴うヒートショックのリスクを軽減可能にする、改修方法、及び、建物、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての改修方法は、玄関又は階段室と連続する第1非居室が、居室、並びに、前記玄関及び前記階段室と連続しない第2非居室、それぞれと行き来可能に接続されている階層を有する建物の改修方法であって、前記第1非居室のうち少なくとも前記居室から前記第2非居室への動線上に位置する移動領域と、前記玄関又は前記階段室と、を開閉可能な戸で区画する。
【0007】
本発明の1つの実施形態としての改修方法は、前記第1非居室の前記移動領域と、前記居室と、を連続させる。
【0008】
本発明の1つの実施形態としての改修方法は、前記第2非居室を区画する外壁の断熱改修を行う。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記居室は、リビング、ダイニング、キッチン、リビング・ダイニング、ダイニング・キッチン、又は、リビング・ダイニング・キッチンであり、前記第1非居室、前記居室、及び、前記第2非居室が設けられている前記階層とは異なる階層に寝室が設けられている場合に、前記居室の一部を寝室に改装する、又は、前記居室と接続されている別の居室を寝室に改装する。
【0010】
本発明の第2の態様としての建物は、玄関又は階段室から行き来可能な第1非居室と、前記第1非居室とそれぞれ行き来可能に接続されている居室及び第2非居室と、を備え、前記第1非居室のうち少なくとも前記居室から前記第2非居室への動線上に位置する移動領域と、前記玄関又は前記階段室と、が開閉可能な戸で区画されており、前記第2非居室を区画する外壁の断熱性能は、その周囲の外壁の断熱性能より高い。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記第1非居室の前記移動領域と、前記居室と、が連続している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屋内空間での移動に伴うヒートショックのリスクを軽減可能にする、建物の改修方法、及び、建物、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態としての改修方法により改修を行う前の建物の1階平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態としての改修方法により改修を行った後の、本発明の一実施形態としての建物、の1階平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る改修方法、及び、建物の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0015】
図1は、改修前の建物100の1階平面図である。
図2は、改修前の建物100の2階平面図である。
図3は、改修後の建物100の1階平面図である。以下、説明の便宜上、改修前の建物100を「建物100A」と記載し、改修後の建物100を「建物100B」と記載する。また、建物100を改修前後で特に区別しない場合は、単に「建物100」と記載する。まず、建物100の概略について説明する。
【0016】
建物100は、例えば鉄骨造の軸組みを有する戸建て住宅としてよい。本実施形態の建物100は2階建てであるが、建物100の階層数は特に限定されない。建物100は、3階層以上を有する構成であってもよく、1階層のみを有する構成であってもよい。
【0017】
本実施形態の建物100は、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎に固定された上部構造体と、で構成される。本実施形態の上部構造体は、鉄骨造の軸組架構を有するが、例えば、木造の軸組みを有してもよく、その構造は特に限定されない。また、本実施形態の建物100の軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0018】
具体的に、本実施形態の建物100の上部構造体の軸組架構の外周部には、外壁を構成する外装材等が配置される。また、軸組架構の層間部には、床部を構成する床スラブ材等が配置される。更に、軸組架構の上部には、陸屋根を構成する屋根床スラブ材等が配置される。
【0019】
本実施形態の建物100の外壁は、例えば、外面側に防水層としての塗膜が形成された軽量気泡コンクリート(ALC)からなるパネル状の外装材が連接されて構成された外部仕上げ層を備える。また、本実施形態の建物100の外壁は、例えば、石膏ボートと石膏ボード表面に貼設された壁クロス等の仕上げ材とで構成された内部仕上げ層を備える。更に、本実施形態の建物100の外壁は、外部仕上げ層と内部仕上げ層との間に、例えばグラスウール、ロックウール、発泡樹脂系パネルなどの断熱材を備えてもよい。但し、建物100の外壁は、この構成に限定されない。
【0020】
本実施形態の建物100の床部は、床スラブ材を含む。床スラブ材は、軸組架構の梁間に架設され、梁により直接的又は間接的に支持される。床スラブ材としては、例えば、ALCパネルを用いることできるが、折板、押出成形セメント板、木質パネル材などの別の部材を用いてもよい。床部は、床スラブ材に加えて、例えば、床スラブ材に対して直接的又は間接的に取り付けられる、下階の天井面を構成する天井内装材や、床スラブ材上に積層された、上階の床面を構成するフローリング等の床内装材などを含む構成であってもよい。
【0021】
なお、陸屋根を構成する屋根床スラブ材についても、ALCパネルを用いることができるが、ALCパネルに限られるものではない。また、屋根床スラブ材は、例えば塩化ビニル樹脂から形成されている防水シート等により覆われることにより、防水処理が施されている。また、建物の屋根は、陸屋根に限らず、スレート等の屋根外装材を用いた勾配屋根としてもよい。
【0022】
次に、
図1及び
図2を参照して、本実施形態の改修前の建物100Aの間取りについて説明する。
【0023】
図1に示すように、建物100Aの1階は、玄関11、1階廊下12、1階トイレ13、洗面室14、浴室15、リビング・ダイニング16、キッチン17、及び、客室18を備える。
【0024】
図2に示すように、建物100Aの2階は、2階廊下31、2階トイレ32、2階収納室33、バルコニー34、寝室35、第1個室36、及び、第2個室37を備える。
【0025】
図1、
図2に示すように、建物100Aの1階及び2階は、階段室41の階段41aにより連結されており、階段41aを利用して行き来可能である。階段室41の階段41aの下方には物入スペース41bが設けられている。
【0026】
以下、各階の間取りの特徴について詳細に説明する。以下の間取りの説明には、「居室」及び「非居室」という用語を用いるため、まず、これら用語について説明する。
【0027】
「居室」とは、建築基準法第2条第4号に規定に準ずるものであり、居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室を意味する。「非居室」とは、居室に該当しない室を意味する。
【0028】
本実施形態の建物100Aにおいて、1階のリビング・ダイニング16、キッチン17及び客室18は、居室に該当する。また、建物100Aにおいて、2階の寝室35、第1個室36及び第2個室37は、居室に該当する。
【0029】
これに対して、本実施形態の建物100Aにおいて、1階の玄関11、1階廊下12、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15は、非居室に該当する。また、建物100Aにおいて、2階の2階廊下31、2階トイレ32及び2階収納室33は、非居室に該当する。更に、本実施形態の建物100Aの階段室41は、非居室に該当する。
【0030】
<建物100Aの1階間取り>
図1に示すように、建物100Aの1階には、玄関11及び階段室41と連続する非居室としての1階廊下12が設けられている。1階廊下12は、居室としてのリビング・ダイニング16と行き来可能に接続されている。また、1階廊下12は、非居室としての1階トイレ13及び洗面室14それぞれと行き来可能に接続されている。
【0031】
ここで、本明細書において、屋内の隣接する空間同士、具体的には、屋内の居室同士、屋内の非居室同士、又は、屋内の居室及び非居室、が「連続」するとは、屋内の隣接する空間同士の少なくとも一部が常時連通している状態を意味する。したがって、本実施形態の建物100Aでは、玄関11及び階段室41が、1階廊下12と常時連通している。
【0032】
また、本明細書において、屋内の空間同士、具体的には、屋内の居室同士、屋内の非居室同士、又は、屋内の居室及び非居室、が「接続」されているとは、屋内の隣接する空間同士が常時連通する状態とならないように区画されている状態を意味する。具体的に、屋内の空間同士が「接続」されているとは、以下の3つのパターンに分類可能である。
(1)屋内の隣接する2つの空間同士が、連通不能な間仕切壁により区画されている。
(2)屋内の隣接する2つの空間同士が、建具が設けられた開口が形成されている間仕切壁により区画されている。
(3)屋内の隣接する2つの空間同士が、建具のみにより区画されている。
【0033】
上記(1)で特定される「連通不能な間仕切壁」は、例えば、出入口を含む任意の開口が形成されていない間仕切壁、嵌め殺し窓が形成されている間仕切壁、などが該当する。上記(2)で特定される「建具が設けられた開口が形成されている間仕切壁」とは、例えば、扉等の任意の戸が設けられた出入口が形成されている間仕切壁、などが該当する。上記(3)は、例えば、屋内の隣接する2つの空間の間に間仕切壁がなく、2つの空間の間に扉等の任意の戸が設けられた出入口のみが存在する状態である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の1階廊下12は、リビング・ダイニング16と行き来可能に接続されている。具体的に、本実施形態の1階廊下12と、リビング・ダイニング16とは、上記(2)に該当する。つまり、本実施形態の1階廊下12と、リビング・ダイニング16とは、戸としての扉51aが設けられた出入口51が形成されている間仕切壁81により区画されている。更に、本実施形態の1階廊下12と、リビング・ダイニング16とは、戸としての扉52aが設けられた出入口52が形成されている別の間仕切壁82により区画されている。したがって、本実施形態の1階廊下12と、リビング・ダイニング16とは、出入口51及び出入口52を通じて行き来可能に接続されている。
【0035】
更に、
図1に示すように、本実施形態の1階廊下12は、1階トイレ13と行き来可能に接続されている。具体的に、本実施形態の1階廊下12と、1階トイレ13とは、上記(2)に該当する。つまり、本実施形態の1階廊下12と、1階トイレ13とは、戸としての扉53aが設けられた出入口53が形成されている間仕切壁83により区画されている。
【0036】
また、
図1に示すように、本実施形態の1階廊下12は、洗面室14と行き来可能に接続されている。具体的に、本実施形態の1階廊下12と、洗面室14とは、上記(2)に該当する。つまり、本実施形態の1階廊下12と、洗面室14とは、戸としての引き戸54aが設けられた出入口54が形成されている間仕切壁84により区画されている。
【0037】
このように、建物100Aでは、居室としてのリビング・ダイニング16から、玄関11及び階段室41と連続する非居室としての1階廊下12を通過することで、非居室としての1階トイレ13、洗面室14、及び、この洗面室14に接続されている浴室15に行き来することができる。
【0038】
なお、本実施形態の建物100Aの1階廊下12は、上述した1階トイレ13等の他に、客室18と行き来可能に接続されている。1階廊下12と客室18とは、戸としての扉57aが設けられた出入口57が形成されている間仕切壁96により区画されている。
【0039】
本実施形態の居室は、暖房装置により暖房可能に構成されている。暖房装置は、例えば、居室それぞれに設置されていてもよい。これに対して、本実施形態の非居室は、暖房装置により暖房可能に構成されていない。本実施形態の各非居室には、暖房装置が設定されていない。したがって、冬季において、居室としてのリビング・ダイニング16は、暖房されて暖められているのに対して、玄関11及び階段室41と連続する非居室としての1階廊下12は暖房されておらず冷えた状態が発生し得る。そのため、冬季において、居住者が、リビング・ダイニング16から、1階トイレ13、洗面室14、及び、浴室15のいずれかに向かうために1階廊下12に出た際に、急激な温度差によるヒートショックの発生が懸念される。
【0040】
<建物100Bの1階間取り>
図3に示す建物100Bでは、上述したヒートショックの発生のリスクが軽減されている。以下、
図1に示す建物100Aから
図3に示す建物100Bへの改修について説明する。
【0041】
図3に示すように、建物100Bの1階では、1階廊下12のうち少なくともリビング・ダイニング16から1階トイレ13又は洗面室14への動線上に位置する移動領域12aと、玄関11及び階段室41と、が開閉可能な戸としての扉2で区画されている。つまり、建物100の改修方法では、開閉可能な扉2等の戸を新たに設置する。これにより、移動領域12aと、玄関11又は階段室41と、を開閉可能な扉2により区画することができる。そのため、扉2を閉鎖状態とすれば、冬季であっても、玄関11及び階段室41からの冷気が、移動領域12aに届き難くなる。そのため、上述したヒートショックの発生のリスクを軽減することができる。
【0042】
図1に示すように、本実施形態の建物100Aでは、玄関11及び階段室41と連続する第1非居室としての1階廊下12が、居室としてのリビング・ダイニング16、並びに、第2非居室としての1階トイレ13及び洗面室14それぞれ、と行き来可能に接続されているが、この構成に限られない。
【0043】
第1非居室は、玄関11及び階段室41の少なくともいずれか一方と連続していればよく、本実施形態の1階廊下12のように、玄関11及び階段室41の両方に連続していなくてもよい。また、第1非居室は、移動のための空間である廊下に限られない。更に、第1非居室が設けられている階層は、1階に限られない。したがって、第1非居室は、1階とは異なる階層の、廊下以外の非居室であってもよい。
【0044】
第1非居室と行き来可能に接続されている居室は、第1非居室と同一階層で第1非居室と行き来可能に接続されている構成であればよく、本実施形態のリビング・ダイニング16に限られず、他の居室であってもよい。
【0045】
第1非居室と行き来可能に接続されている第2非居室は、第1非居室と同一階層で第1非居室と行き来可能に接続され、かつ、玄関11及び階段室41と連続していない構成であればよく、本実施形態の1階トイレ13及び洗面室14に限られず、他の非居室であってもよい。
【0046】
また、
図3に示すように、本実施形態の建物100Bでは、第1非居室としての1階廊下12のうち、居室としてのリビング・ダイニング16から第2非居室としての1階トイレ13又は洗面室14への動線上に位置する移動領域12aと、1階廊下12のうち玄関11及び階段室41と連続する、移動領域12a以外の残りの領域12bと、を開閉可能な扉2を設けることで区画しているが、このような改修方法に限られない。
【0047】
戸としての扉2は、1階廊下12のうち少なくとも移動領域12aを、玄関11及び階段室41から区画できればよく、扉2は、例えば、1階廊下12と、玄関11及び階段室41の少なくとも一方と、の間を区画する位置に設置されてもよい。つまり、扉2は、
図3に示す領域12bと、玄関11及び階段室41の少なくとも一方と、の間の位置に設置されてもよい。また、本実施形態では、戸として扉2を設置しているが、例えば引き戸など、別形態の戸であってもよい。
【0048】
移動領域12aと玄関11等との間を区画する戸の構造、形成材料などは特に限定されないが、断熱性の高い構造とされること、及び、断熱性の高い形成材料で構成されることが好ましい。
【0049】
図3に示すように、建物100Bの1階では、第1非居室としての1階廊下12の移動領域12aと、居室としてのリビング・ダイニング16と、が連続している。つまり、
図1、
図3に示すように、本実施形態の建物100の改修方法では、1階廊下12の移動領域12aと、リビング・ダイニング16と、を連続させる。具体的に、
図3に示す建物100Bでは、
図1に示す間仕切壁81の出入口51に設けられている戸としての扉51aが取り外されている。これにより、1階廊下12の移動領域12aと、リビング・ダイニング16と、を出入口51を通じて常時連通させることができる。そのため、冬季において、リビング・ダイニング16内の暖気を、出入口51を通じて、移動領域12aに常時行き渡らせることができる。その結果、リビング・ダイニング16と、1階廊下12の移動領域12aと、の温度差を小さくなり、上述したヒートショックの発生のリスクを、より軽減することができる。
【0050】
なお、1階廊下12の移動領域12aと、リビング・ダイニング16と、を連続させる方法は、特に限定されない。本実施形態では、扉51aを取り外すのみであるが、例えば、間仕切壁に新たに開口を形成する等して連続させてもよい。なお、このような改修を行わずに、扉51aを常時開けた状態として、上述のヒートショック発生のリスクを軽減してもよい。
【0051】
更に、
図3に示すように、建物100Bでは、1階トイレ13を区画する外壁85は断熱改修されている(
図3の外壁85の太線部分を参照)。つまり、
図1、
図3に示すように、本実施形態の建物100の改修方法では、第2非居室としての1階トイレ13を区画する外壁85の断熱改修を行う。「外壁の断熱改修」とは、例えば、断熱材を追加する、断熱性能の高い断熱材に入れ替える、窓の断熱性能を上げる等、断熱性能を高める改修を意味する。これにより、1階トイレ13を区画する外壁85の断熱性能が向上し、冷気の流入と暖気の流出を軽減し、1階廊下12の移動領域12aと、1階トイレ13と、の温度差を小さくでき、1階廊下12の移動領域12aと、1階トイレ13と、の間での移動で発生し得るヒートショックのリスクについても軽減することができる。
【0052】
また、
図3に示すように、洗面室14を区画する外壁86についても断熱改修されている(
図3の外壁86の太線部分を参照)。つまり、
図1、
図3に示すように、本実施形態の建物100の改修方法では、第2非居室としての洗面室14を区画する外壁86の断熱改修を行う。これにより、洗面室14を区画する外壁86の断熱性能が向上し、冷気の流入と暖気の流出を軽減し、1階廊下12の移動領域12aと、洗面室14と、の温度差を小さくでき、1階廊下12の移動領域12aと、洗面室14と、の間での移動で発生し得るヒートショックのリスクについても軽減することができる。
【0053】
このように、第1非居室としての1階廊下12の移動領域12aと行き来可能に接続されている第2非居室としての1階トイレ13及び洗面室14を、屋外空間から区画する外壁85、86を断熱改修する。これにより、外気による1階トイレ13及び洗面室14の温度低下が抑制され、移動領域12aと、1階トイレ13及び洗面室14それぞれと、の間の温度差を小さくでき、相互間の移動で発生し得るヒートショックのリスクを軽減できる。
【0054】
更に、本実施形態の建物100では、上述した1階トイレ13及び洗面室14のみならず、浴室15についても、1階廊下12の移動領域12aを通じてのみ、リビング・ダイニング16から行き来可能な非居室である。本実施形態の建物100では、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15が、1階廊下12の移動領域12aを通じてのみ、リビング・ダイニング16から行き来可能な非居室群として、直列に接続されて配置されている。具体的に、1階廊下12の移動領域12aから直接行き来可能な第2非居室としての1階トイレ13及び洗面室14は、その間に浴室15を挟んで、直列状に接続されている。1階トイレ13と浴室15との間は間仕切壁87により区画されている。この間仕切壁87には出入口等の開口が形成されておらず、相互間で行き来できない。洗面室14と浴室15との間は間仕切壁88により区画されている。この間仕切壁88には、戸としての折れ戸55aが設けられた出入口55が形成されており、この出入口55を通じて、洗面室14と浴室15とは行き来可能である。
【0055】
より具体的に、建物100Bにおける1階トイレ13は、上述した浴室15との間の間仕切壁87、上述の外壁85、移動領域12aとの間の間仕切壁83、及び、後述する寝室19との間の間仕切壁90、により周囲から区画されている。1階トイレ13と移動領域12aとの間の間仕切壁83には、上述したように、戸としての扉53aが設けられた、1階トイレ13と移動領域12aとを行き来可能な出入口53が形成されている。また、1階トイレ13と寝室19との間の間仕切壁90には、出入口等の開口は形成されていない。
【0056】
また、建物100Bにおける洗面室14は、上述した浴室15との間の間仕切壁88、上述の外壁86、移動領域12aとの間の間仕切壁84、及び、階段室41の物入スペース41bとの間の間仕切壁91、により周囲から区画されている。洗面室14と移動領域12aとの間の間仕切壁84には、戸としての引き戸54aが設けられた、洗面室14と移動領域12aとを行き来可能な出入口54が形成されている。また、洗面室14と階段室41の物入スペース41bとの間の間仕切壁91には、出入口等の開口は形成されていない。
【0057】
更に、建物100Bにおける浴室15は、上述した1階トイレ13との間の間仕切壁87、上述した洗面室14との間の間仕切壁88、及び、二面に亘って出隅部を形成している、屋外空間との間の外壁92、により周囲から区画されている。
【0058】
図1、
図3に示すように、平面視で、本実施形態の1階トイレ13を屋外空間から区画する外壁85は、浴室15を屋外空間から区画する外壁92のうち一方側の面(
図1、
図3では左側の面)を構成する部分と、直線状に連なっている。以下、1階トイレ13を屋外空間から区画する外壁85と、浴室15を屋外空間から区画する外壁92のうち一方側の面を構成する部分と、を合わせて「一方外壁201」と記載する。
【0059】
また、
図1、
図3に示すように、平面視で、本実施形態の洗面室14を屋外空間から区画する外壁86は、浴室15を屋外空間から区画する外壁92のうち他方側の面(
図1、
図3では上側の面)を構成する部分と、直線状に連なっている。以下、洗面室14を屋外空間から区画する外壁86と、浴室15を屋外空間から区画する外壁92のうち他方側の面を構成する部分と、を合わせて「他方外壁202」と記載する。
【0060】
以上のように、本実施形態の1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群は、建物100の出隅部を形成している上述の一方外壁201及び他方外壁202により、屋外空間から区画されている。そして、本実施形態では、この一方外壁201及び他方外壁202が、断熱改修されている。そのため、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群全体の外気による温度低下を抑制できる。その結果、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群全体と、移動領域12aと、の間の温度差を小さくでき、非居室群全体と移動領域12aとの間の移動で発生し得るヒートショックのリスクを軽減できる。
【0061】
また、
図3に示すように、本実施形態の1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群は、断熱改修されて断熱性能が周囲の外壁より高められている上述の一方外壁201及び他方外壁202と、玄関11等から扉2により区画されている移動領域12aとの間を区画する間仕切壁83、84と、に加えて、後述する寝室19との間の間仕切壁90と、階段室41の物入スペース41bとの間の間仕切壁91と、により周囲から区画されている。寝室19は居室であり、暖房可能な空間である。また、本実施形態では、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群と、階段室41の物入スペース41bと、の間の間仕切壁91についても断熱改修されている(
図3の間仕切壁91の太線部分を参照)。
【0062】
すなわち、本実施形態の1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群は、断熱改修されている外壁(本実施形態では一方外壁201及び他方外壁202)と、断熱改修されている間仕切壁(本実施形態では間仕切壁91)と、別の居室(本実施形態では寝室19)との間の断熱改修されていない間仕切壁(本実施形態では間仕切壁90)と、扉2により玄関11等からの寒気が遮られた移動領域12aとの間の間仕切壁(本実施形態では間仕切壁83、84)と、により周囲から区画されている。換言すれば、本実施形態の上記非居室群は、断熱改修されていない外壁や、移動領域12aとの間の間仕切壁以外で、非居室との間の断熱改修されていない間仕切壁により、周囲を区画されていない。そのため、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群が、周囲の屋外空間や非居室の影響により温度低下することを抑制できる。その結果、上記非居室群と、移動領域12aと、の間の温度差をより小さくでき、非居室群全体と移動領域12aとの間の移動で発生し得るヒートショックのリスクを、より軽減できる。
【0063】
従来、建物の断熱性能を向上させる断熱改修は、建物の一部の外壁のみを改修しても効果が小さく、建物全体の外壁を改修することが一般的であった。その一方で、建物の各種リフォームは、部分的に行うことが多く、廊下、玄関などは設備等もないことが多いため、リフォームされないことが多い。これに対して、本実施形態の建物100の外壁の断熱改修は、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群を屋外空間から区画する一部の外壁(一方外壁201及び他方外壁202)のみの改修であってもよい。これにより、非居室群全体と移動領域12aとの間の移動で発生し得るヒートショックのリスクを軽減できる。本実施形態では、一方外壁201及び他方外壁202の断熱性能が、その周囲の外壁(本実施形態では、例えば、寝室19と屋外空間との間を区画する、断熱改修されていない外壁93)の断熱性能より高い。断熱性能の高さの比較は、例えば、断熱改修の有無により判断されてもよいが、日照がない同一条件下で、外壁の外面と外壁の内面の温度を測定し、その差が大きい方を、断熱性が高いと判定することが望ましい。
【0064】
但し、建物100の外壁の断熱改修は、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15から構成される非居室群を屋外空間から区画する、一部の外壁(本実施形態では一方外壁201及び他方外壁202)のみでなくてもよい。一方外壁201の断熱改修を、この一方外壁201と平面視で直線状に連なる、寝室19と屋外空間との間を区画する外壁93まで行ってもよい。同様に、他方外壁202の断熱改修を、この他方外壁202と平面視で直線状に連なる、階段室41と屋外空間との間を区画する外壁94まで行ってもよい。
【0065】
また、本実施形態の一方外壁201及び他方外壁202の断熱改修は、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15の屋内側から行っているが、この構成に限られない。一方外壁201及び他方外壁202の断熱改修は、例えば、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15の屋外側から行ってもよい。
【0066】
なお、一方外壁201の断熱改修を屋外側から行う場合は、一方外壁201の断熱改修を、この一方外壁201と平面視で直線状に連なる、寝室19と屋外空間との間を区画する外壁93まで行ってもよい。このようにすることで、建物100の外壁の屋外側の面の目立つ位置に、断熱改修された部分と断熱改修されていない部分との間の境界の痕跡(例えば段差など)が残ることを抑制できる。他方外壁202の断熱改修を屋外側から行う場合についても、上記同様の理由により、この他方外壁202と平面視で直線状に連なる、階段室41と屋外空間との間を区画する外壁94まで行ってもよい。
【0067】
また、
図1、
図3に示すように、建物100Aの居室としての客室18は、建物100Bの居室としての寝室19に改装されている。つまり、建物100Aでは、1階廊下12、リビング・ダイニング16、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15が設けられている階層である1階とは異なる2階に、寝室35が設けられていた。そのため、就寝時に1階から2階に移動する必要があった。これに対して、建物100Bでは、居室としてのリビング・ダイニング16と接続されている別の居室としての客室18(
図1参照)が、寝室19(
図3参照)に改装されている。そのため、居住者は、就寝時に別の階層に移動しなくてよい。
【0068】
特に、建物100Bでは、寝室19が、リビング・ダイニング16から、1階廊下12の移動領域12aを通じて、行き来可能に配置されている。換言すれば、本実施形態の建物100Bの寝室19は、リビング・ダイニング16から、玄関11や階段室41と連続する空間を通らずに、行き来可能である。そのため、リビング・ダイニング16と寝室19との間の移動に伴うヒートショックの発生を抑制できる。なお、
図3に示すように、改修前の建物100A(
図1参照)における、戸としての引き戸56aが設けられた出入口56は、そのまま維持することが好ましい。このようにすることで、寝室19は、出入口56により、リビング・ダイニング16と直接行き来可能に接続される。但し、このような改修に限られない。戸としての引き戸56aが設けられた出入口56は、客室18から寝室19への改装に伴い無くしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、リビング・ダイニング16と行き来可能に接続されていた客室18を寝室19に改装しているが、これに限られない。例えば、リビング・ダイニング16の一部を寝室に改装してもよい。また、寝室19に改装される前の居室は、客室18でなくてもよい。また、寝室19に改装される前の居室は、リビング・ダイニング16以外の居室に接続されていてもよい。寝室19に改装される前の居室は、例えば、リビング、ダイニング、キッチン、ダイニング・キッチン、及び、リビング・ダイニング・キッチンのいずれかの居室に接続されていてもよい。
【0070】
本実施形態では、説明の便宜上、第1非居室の一例として1階廊下12、第1非居室と行き来可能に接続されている居室の一例としてリビング・ダイニング16、第1非居室と行き来可能に接続されている第2非居室の例として1階トイレ13及び洗面室14、を例示説明したが、上述したように、第1非居室、第1非居室と行き来可能に接続されている居室、及び、第1非居室と行き来可能に接続されている第2非居室は、これらに限られるものではない。したがって、上述した1階廊下12、リビング・ダイニング16、及び、1階トイレ13(又は洗面室14)の関係が、別の用途の非居室及び居室において実現されてもよい。かかる場合であっても、上記同様、ヒートショックのリスクの軽減効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態では、建物100の1階の外壁のみを断熱改修しているが、例えば、外壁に加えて、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15の床部及び天井部の少なくとも一方を断熱改修することが好ましく、両方を断熱改修することがより好ましい。このようにすることで、上述のヒートショックのリスクを、より軽減できる。なお、1階トイレ13、洗面室14及び浴室15の床部及び天井部の断熱改修についても、例えば、断熱材を追加する、断熱性能の高い断熱材に入れ替える等、して断熱性能を高める改修であれば、改修方法は特に限定されない。
【0072】
本発明に係る改修方法及び建物は、上述した実施形態で示す具体的な方法及び構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変更・変形・組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は改修方法及び建物に関する。
【符号の説明】
【0074】
2:扉(戸の一例)
11:玄関
12:1階廊下(第1非居室の一例)
12a:移動領域
12b:1階廊下の移動領域以外の領域
13:1階トイレ(第2非居室の一例)
14:洗面室(第2非居室の一例)
15:浴室
16:リビング・ダイニング(第1非居室と行き来可能に接続されている居室の一例)
17:キッチン
18:客室
19:寝室
31:2階廊下
32:2階トイレ
33:2階収納室
34:バルコニー
35:寝室
36:第1個室
37:第2個室
41:階段室
41a:階段
41b:物入スペース
51、52、53、54、55、56、57:出入口
51a、52a、53a、57a:扉
54a、56a:引き戸
55a:折れ戸
81、82、83、84、87、88、90、91、95、96:間仕切壁
85、86、92、93、94:外壁
100:建物
100A:改修前の建物
100B:改修後の建物
201:一方外壁
202:他方外壁