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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155962
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】建設機械用キャブ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
E02F9/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059425
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】柴田 莉寿
(72)【発明者】
【氏名】久野 誠
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015EA01
2D015EA02
(57)【要約】
【課題】 前窓を開閉するときにキャブボックス内に張り出す寸法を小さく抑え、作業スペースの拡大、部品の移動作業の省略を図って前窓を開閉するときの作業性を向上できるようにする。
【解決手段】 キャブボックス12の前面部12Aに設けられた窓枠13に収められて前開口13Bを閉塞する前窓16を備えている。また、前窓16は、窓枠13に収められて前開口13Bを閉塞した閉窓位置とキャブボックス12の天面部12E側に格納された開窓位置との間で移動する構成としている。この上で、前窓16は、閉窓位置と開窓位置との間で移動されるときに、前窓16の下側部分16Fが窓枠13からキャブボックス12の外部に突出した状態で移動する構成としている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部、後面部、左面部、右面部および天面部からなり、内部に運転室を形成するキャブボックスと、
前記前面部に前開口を形成する窓枠と、
前記窓枠に収められて前記前開口を閉塞する前窓と、を備え、
前記前窓は、前記窓枠に収められて前記前開口を閉塞した閉窓位置と前記天面部側に格納された開窓位置との間で移動する構成としてなる建設機械用キャブにおいて、
前記前窓は、前記閉窓位置と前記開窓位置との間で移動されるときに、前記前窓の下側部分が前記窓枠から前記キャブボックスの外部に突出した状態で移動する構成としたことを特徴とする建設機械用キャブ。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械用キャブにおいて、
前記前窓は、回動支点を中心にして傾いた状態で前記閉窓位置と前記開窓位置との間を移動し、
前記前窓の前記回動支点は、前記前窓の下端部から所定寸法上側に位置する中間位置に配置されていることを特徴とする建設機械用キャブ。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械用キャブにおいて、
前記キャブボックスには、前記窓枠に沿うように上下方向に延びてガイドレールが設けられ、
前記前窓の前記回動支点には、前記ガイドレールに沿って移動するローラが設けられていることを特徴とする建設機械用キャブ。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械用キャブにおいて、
前記前窓の前記下側部分は、前記窓枠の左右方向の内幅寸法以下の外幅寸法をもって形成されていることを特徴とする建設機械用キャブ。
【請求項5】
請求項2に記載の建設機械用キャブにおいて、
前記窓枠は、前記前窓が前記閉窓位置に配置された状態で、前記前窓の上側部分の縁部が内側から当接する外側シールと、前記前窓の前記下側部分の縁部が外側から当接する内側シールと、を備えていることを特徴とする建設機械用キャブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧ショベル等に設けられ、開閉可能な前窓を有した建設機械用キャブに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械としての油圧ショベルは、自走が可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
上部旋回体の左前側には、オペレータが搭乗するキャブが設けられている。この油圧ショベル用のキャブは、前面部、後面部、左面部、右面部および天面部からなり、内部に運転室を形成するキャブボックスと、前面部に前開口を形成する窓枠と、窓枠に収められて前開口を閉塞する前窓と、を備えている。この上で、前窓は、窓枠に収められて前開口を閉塞した閉窓位置と天面部側に格納された開窓位置との間で移動することができる(特許文献1,2)。
【0004】
また、キャブ内には、オペレータが座る運転席が設けられている。さらに、キャブボックスには、前面部から天面部に沿って延びるガイドレールが設けられ、前窓には、ガイドレールに沿って移動するローラが設けられている。これにより、閉窓位置の前窓は、上部を後側に移動させつつ、下部を上側に移動させることにより、天面部側に格納することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-291323号公報
【特許文献2】特開2014-136943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前窓を閉窓位置と開窓位置との間で移動させる作業は、キャブ内で行われる。この前窓の開閉作業では、前窓が後側に大きく傾いてキャブボックス内に張り出すために、作業者は、傾く前窓を避けながら作業をしなくてはならず、作業性が悪いという問題がある。
【0007】
また、前窓の開閉作業時には、前窓がキャブボックス内に大きく張り出すために、前窓を開閉するときの軌道上にモニタ等の部品が配置されている場合には、これらの部品を一時的に移動できるように構成しなくてはならない。しかも、部品の移動作業は、前窓を開閉する度に行わなくてはならず、この点においても作業性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、前窓を開閉するときにキャブボックス内に張り出す寸法を小さく抑えることにより、作業スペースの拡大、部品の移動作業の省略を図って前窓を開閉するときの作業性を向上できるようにした建設機械用キャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前面部、後面部、左面部、右面部および天面部からなり、内部に運転室を形成するキャブボックスと、前記前面部に前開口を形成する窓枠と、前記窓枠に収められて前記前開口を閉塞する前窓と、を備え、前記前窓は、前記窓枠に収められて前記前開口を閉塞した閉窓位置と前記天面部側に格納された開窓位置との間で移動する構成としてなる建設機械用キャブにおいて、前記前窓は、前記閉窓位置と前記開窓位置との間で移動されるときに、前記前窓の下側部分が前記窓枠から前記キャブボックスの外部に突出した状態で移動する構成としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前窓を開閉するときにキャブボックス内に張り出す寸法を小さく抑えることにより、作業スペースの拡大、部品の移動作業の省略を図ることができ、前窓を開閉するときの作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るキャブを備えた油圧ショベルの左側面図である。
図2図1中のキャブを示す前面図である。
図3】前窓を省略したキャブを図2と同様位置から見た前面図である。
図4】前窓を省略したキャブを示す斜視図である。
図5】前窓を段階的に開閉している状態のキャブを示す斜視図である。
図6】前窓を閉窓位置に配置した状態のキャブを図2中の矢示VI-VI方向から見た断面図である。
図7】前窓を途中まで開いた状態のキャブを図6と同様位置から見た断面図である。
図8】前窓を省略したキャブの前上部を示す断面図である。
図9】前窓を閉窓位置に配置したキャブの前側部分を示す斜視図である。
図10】前窓を示す前面図である。
図11】前窓を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械用キャブとして、クローラ式の油圧ショベルに搭載されたキャブを例に挙げ、図1ないし図11に従って詳細に説明する。
【0013】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走が可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に回動可能に設けられたスイング式の作業装置4とにより構成されている。作業装置4は、土砂の掘削作業等を行う。
【0014】
建設機械用キャブとしてのキャブ11は、上部旋回体3の左前側に設けられている。キャブ11の内部には、オペレータが座る運転席、下部走行体2を操作する走行用のレバー・ペダル装置、作業装置4等を操作する作業用のレバー装置等(いずれも図示せず)が配設されている。キャブ11は、後述のキャブボックス12、窓枠13、前窓16を含んで構成されている。
【0015】
キャブボックス12は、キャブ11の外形を形成すると共に、内部に運転室を形成している。図2ないし図7に示すように、キャブボックス12は、前面部12A、後面部12B、左面部12C、右面部12Dおよび天面部12Eによりボックス状に形成されている。また、キャブボックス12は、前面部12Aと左面部12Cとの境界位置(左前角部)に上下方向に延びて設けられた左前ピラー12F、前面部12Aと右面部12Dとの境界位置(右前角部)に上下方向に延びて設けられた右前ピラー12G等を有している。さらに、キャブボックス12には、左面部12Cの前後方向の中間部から前側に位置してドア12Hが開閉可能に設けられている。
【0016】
窓枠13は、キャブボックス12の前面部12Aに設けられている。窓枠13は、前面部12Aよりも僅かに小さな長方形状の枠体として形成されている。即ち、窓枠13は、キャブボックス12の前面部12Aの全面に亘って形成されている。
【0017】
窓枠13の内側の縁部分には、可撓性を有する材料、例えばゴム材料からなる外側シール13Aが取付けられている。外側シール13Aは、前窓16が後述の閉窓位置に配置された状態で、例えば、上下方向の中間部から上側の部分に、前窓16の上側部分16Eの縁部(枠部材16B)が内側(後側)から当接する構成となっている。外側シール13Aに囲まれた範囲は、前開口13Bとなっている。
【0018】
ここで、図2に示すように、窓枠13は、上下方向の開口寸法(高さ寸法)がF1となっている。例えば、窓枠13は、上下方向の開口寸法F1に対し、下側の3分の1程度となる寸法F2の範囲が後述の足元窓15によって閉塞されている。また、窓枠13は、中間部を含む上側の3分の2程度となる寸法F3の範囲が後述の前窓16によって閉塞されている。
【0019】
窓枠13の左右両側には、足元窓15と前窓16の境界位置となる下から3分の1程度の高さ位置から2分の1程度の高さ位置までの間に内側シール13Cが設けられている。この内側シール13Cには、前窓16が後述の閉窓位置に配置された状態で、前窓16の下側部分16Fの縁部が外側(前側)から当接する。
【0020】
図2図6図9に示すように、前窓16が閉窓位置に配置された状態で窓枠13は、外側シール13Aの上下方向の中間部から上側部分に、前窓16の上側部分16Eの縁部が押付けられる。また、前窓16が閉窓位置に配置された状態で窓枠13は、内側シール13Cに前窓16の下側部分16Fの縁部が押付けられる。これにより、前窓16を閉窓位置に配置した状態では、窓枠13と前窓16との間をシールすることができる。
【0021】
ガイドレール14は、キャブボックス12の左前ピラー12Fと右前ピラー12Gとに設けられている(右側のみ図示)。左右のガイドレール14は、左右方向に対向し、窓枠13に沿うように上下方向に延びた凹溝として形成されている。ガイドレール14は、後述する前窓16のローラ16Cを窓枠13の後側近傍位置で上下方向に案内する。
【0022】
足元窓15は、前窓16の下側に位置してキャブボックス12の前面部12Aに設けられている。足元窓15は、左右方向に長尺な長方形状のガラス板からなり、窓枠13の下側位置に収められて前開口13Bの下側位置を閉塞している。足元窓15は、運転席に座ったオペレータの足元の前側を覆うもので、窓枠13に対して脱着することができる。
【0023】
前窓16は、窓枠13に収められて前開口13Bを閉塞するものである。前窓16は、窓枠13の上下方向の中間部を含む上側の寸法F3の範囲に収められて前開口13Bの上側位置を閉塞している。前窓16は、窓枠13に収められて前開口13Bを閉塞した閉窓位置(図2図6図9に示す位置)と天面部12E側に格納された開窓位置(図5に示す最上部の前窓16の位置)との間で移動することができる。ここで、前窓16は、図5図7に示すように、閉窓位置と開窓位置との間で移動するときには、下側部分16Fを窓枠13からキャブボックス12の外部に突出させた状態で移動する構成となっている。
【0024】
図10図11に示すように、前窓16は、上下方向に長尺な長方形状のガラス板からなる窓ガラス16Aと、窓ガラス16Aの左右両側に設けられた枠部材16Bと、左右の枠部材16Bにそれぞれ設けられたローラ16Cと、窓ガラス16Aの下縁部に左右方向に延びて設けられた横シール16Dと、を含んで構成されている。
【0025】
窓ガラス16Aは、窓枠13の前開口13Bのうち、足元窓15で閉塞された下側部分を除いた中間および上側の部分を覆う大きさをもって形成されている。枠部材16Bは、窓ガラス16Aを挟んだ左右両側に上下方向に延びて設けられている。枠部材16Bの外幅寸法W1(図10参照)は、左右のガイドレール14の間隔寸法よりも小さく、窓枠13の外側シール13Aの内幅寸法W2(図3参照)よりも大きな寸法となっている。
【0026】
ローラ16Cは、左右の枠部材16Bの下部に、窓ガラス16Aと反対側に突出するように回転自在に設けられている。ローラ16Cは、前窓16が閉窓位置と開窓位置との間を移動するときの傾きの中心点、即ち、回動支点に位置している。回動支点のローラ16Cは、前窓16の上下方向の中間位置に配置されている。この場合、前窓16の回動支点となるローラ16Cの位置は、ローラ16Cの中心線を線Oとすると、前窓16の下端部となる横シール16Dから所定の寸法H2だけ上側に位置している。このローラ16Cの高さ位置を示す寸法H2は、例えば、前窓16の高さ寸法をH1とすると、この高さ寸法H1の3分の1から5分の1程度に設定されている。
【0027】
これにより、前窓16を開閉するときには、前窓16のうち、回動支点のローラ16Cから上側がキャブボックス12内に配置され、前窓16のうち、回動支点のローラ16Cよりも下側、即ち、寸法H2で示す下側部分16Fがキャブボックス12の外部に突出している。
【0028】
横シール16Dは、例えば、可撓性を有するゴム材料からなり、窓ガラス16Aの下縁部を覆うように左右方向に延びて設けられている。横シール16Dは、前窓16を閉窓位置に配置したときに、足元窓15との衝突を避けると共に、足元窓15との間をシールすることができる。
【0029】
ここで、前窓16の形状について説明する。前述したように、前窓16には、閉窓位置において、全体の上下方向寸法(高さ寸法)H1に対して下から3分の1から5分の1程度の高さ位置に回動支点としてのローラ16Cが設けられている。この上で、前窓16は、ローラ16Cから上側が上側部分16Eとなり、ローラ16Cから下側が下側部分16Fとなる。
【0030】
前窓16の上側部分16Eの外幅寸法は、前述したように、左右の枠部材16Bの側面間の距離寸法W1となっている。この外幅寸法W1は、左右のガイドレール14の間隔寸法(内幅寸法)よりも小さく、窓枠13の外側シール13Aの内幅寸法W2よりも大きな寸法に設定されている。
【0031】
前窓16の下側部分16Fの外幅寸法は、窓ガラス16Aの下側部分の幅寸法W3となり、窓枠13の左右方向の内幅寸法、具体的には、外側シール13Aの内幅寸法W2以下の寸法に設定されている。一方で、前窓16の下側部分16Fの幅寸法W3は、内側シール13Cの内幅寸法W4よりも大きな寸法に設定されている。また、下側部分16Fの高さ寸法は、横シール16Dからローラ16Cまでの寸法H2と同等の値に設定されている。
【0032】
これにより、前窓16を閉窓位置に配置するときには、前窓16の上側部分16Eがローラ16Cを支点として前側に回動することにより、前窓16の上側部分16Eの縁部を外側シール13Aに内側から押付けてシールすることができる。同時に、前窓16の下側部分16Fがローラ16Cを支点として後側に回動することにより、前窓16の下側部分16Fの側部を内側シール13Cに外側から押付けてシールすることができる。また、横シール16Dを足元窓15の上縁部に外側から押付けて足元窓15と前窓16との間をシールすることができる。
【0033】
左右の支持アーム17は、前窓16を左右方向で挟む位置に設けられている(右側のみ図示)。左の支持アームは、長さ方向の一端が左前ピラー12Fの上部に回動可能に取付けられ、長さ方向の他端が左側に位置する枠部材16Bの中間部に回動可能に取付けられている。一方、右の支持アーム17は、長さ方向の一端が右前ピラー12Gの上部に回動可能に取付けられ、長さ方向の他端が右側に位置する枠部材16Bの中間部に回動可能に取付けられている。これにより、左右の支持アーム17は、前窓16を開いて天面部12E側に格納したときに、前窓16を天面部12Eの下側近傍に保持することができる。
【0034】
本実施形態に適用された油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0035】
まず、オペレータは、キャブ11に搭乗して運転席に座り、走行用の操作レバー・ペダルを操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業用の操作レバー等を操作することにより、作業装置4を回動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0036】
次に、例えば、作業装置4で深穴を掘削する場合には、運転席に着座したままでは作業装置4の先端側が見えないため、オペレータは、前窓16を開き、運転席から腰を上げて上半身を前側に乗出し、下を覗き込むようにして作業装置4の操作を行う。また、周囲の作業者と言葉を交しながら作業を行う場合にも、前窓16を開いて作業を行う。
【0037】
そこで、キャブ11の前窓16を開窓位置、閉窓位置に移動する場合の手順の一例について説明する。
【0038】
まず、前窓16を開いてキャブボックス12の天面部12E側に格納する場合には、オペレータは、前窓16のロック(図示せず)を解除し、前窓16の上側部分16Eを後側(キャブ11内)に倒しながら、前窓16の下側部分16Fをガイドレール14に沿って上側に移動させる。この前窓16の開窓動作は、前窓16の下側部分16Fがキャブボックス12の外部に突出した状態で行われる。従って、キャブボックス12の内部では、前窓16の上側部分16Eだけが移動することになるから、前窓16を開くためにキャブボックス12の内部で必要となるスペースを小さくすることができる。そして、前窓16を天面部12E側の開窓位置まで移動したら、前窓16をキャブボックス12にロックする。一方、前窓16を閉じる場合には、前述した開窓動作と逆の手順で作業を行うことにより、前窓16を閉窓位置に配置することができる。
【0039】
かくして、本実施形態によれば、キャブボックス12の前面部12Aに設けられた窓枠13に収められて前開口13Bを閉塞する前窓16を備えている。また、前窓16は、窓枠13に収められて前開口13Bを閉塞した閉窓位置とキャブボックス12の天面部12E側に格納された開窓位置との間で移動する構成としている。この上で、前窓16は、閉窓位置と開窓位置との間で移動されるときに、前窓16の下側部分16Fが窓枠13からキャブボックス12の外部に突出した状態で移動する構成としている。
【0040】
従って、前窓16を閉窓位置と開窓位置との間で移動させるときには、前窓16の上側部分16Eだけがキャブボックス12の内部で移動することになる。これにより、前窓16を開閉するためにキャブボックス12の内部で必要となるスペースを小さくすることができる。
【0041】
この結果、前窓16の開閉作業では、前窓16が後側に大きく傾いてキャブボックス12内に張り出すことがないから、作業者は、広い作業スペースによって前窓16を容易に開閉することができ、作業性を向上することができる。また、キャブボックス12内への前窓16の張り出しを小さく抑えたことで、前窓16を開閉するときにモニタ等の部品が邪魔になることがないから、開閉時に部品の移動を行う必要がなく、この点においても、
作業性を向上することができる。また、モニタ等の部品を配置するときのレイアウトの自由度を向上することができる。さらに、前窓16を開窓位置に配置した状態では、前方に突出した前窓16の下側部分16Fを庇(日除け)として利用することができる。
【0042】
前窓16は、回動支点を中心にして傾いた状態で閉窓位置と前記開窓位置との間を移動し、前窓16の回動支点は、前窓16の下端部となる横シール16Dから所定寸法H2だけ上側に配置されている。これにより、前窓16は、回動支点から下側の寸法H2で示す下側部分16Fをキャブボックス12の外部に突出させた状態で開閉することができる。
【0043】
キャブボックス12には、窓枠13に沿うように上下方向に延びてガイドレール14が設けられ、前窓16の回動支点には、ガイドレール14に沿って移動するローラ16Cが設けられている。これにより、ガイドレール14に沿ってローラ16Cを円滑に移動させることができ、前窓16の開閉操作を容易に行うことができる。
【0044】
前窓16の下側部分16Fは、窓枠13の外側シール13Aの左右方向の内幅寸法W2以下の外幅寸法W3をもって形成されている。これにより、前窓16の下側部分16Fを窓枠13から外部に突出させることができる。
【0045】
窓枠13は、前窓16が閉窓位置に配置された状態で、前窓16の上側部分16Eの縁部(枠部材16B)が内側から当接する外側シール13Aと、前窓16の下側部分16Fの縁部が外側から当接する内側シール13Cと、を備えている。従って、前窓16が閉窓位置に配置された状態では、外側シール13Aの上下方向の中間部から上側部分に、前窓16の上側部分16Eの縁部を押付けることができる。同時に、前窓16の下側部分16Fの縁部を内側シール13Cに押付けることができる。これにより、前窓16を閉窓位置に配置した状態では、窓枠13と前窓16との間をシールすることができ、風や雨水の浸入を防止することができる。
【0046】
なお、実施形態では、前窓16の上側を支持アーム17によって支持する構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ガイドレールの上側を天面部に沿って後側に延ばし、前窓の上部に設けたローラを天面部側のガイドレールに沿って移動させることで、前窓の上側を天面部側に保持する構成としてもよい。
【0047】
また、実施形態では、足元窓15と前窓16とによって窓枠13の前開口13Bを閉塞した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、前窓だけで窓枠の前開口を閉塞する構成としてもよい。
【0048】
さらに、実施形態では、建設機械用キャブとしてクローラ式の油圧ショベル1のキャブ11を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、本実施形態によるキャブ11をホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、トラクタ等の他の建設機械のキャブにも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル(建設機械)
11 キャブ(建設機械用キャブ)
12 キャブボックス
12A 前面部
12B 後面部
12C 左面部
12D 右面部
12E 天面部
13 窓枠
13A 外側シール
13B 前開口
13C 内側シール
14 ガイドレール
16 前窓
16B 枠部材(縁部)
16C ローラ(回動支点)
16D 横シール(下端部)
16E 上側部分
16F 下側部分
H2 前窓の下端部から回動支点となるローラまでの寸法
W2 窓枠の左右方向の内幅寸法
W3 前窓の下側部分の外幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11