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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155974
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】浮体式濁水処理設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B01D23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059443
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】富貴 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玄太
(72)【発明者】
【氏名】長幡 逸佳
(72)【発明者】
【氏名】稲邊 裕司
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA07
4D116BB01
4D116BC11
4D116BC22
4D116BC47
4D116BC48
4D116BC49
4D116BC77
4D116DD04
4D116EE02
4D116EE03
4D116EE11
4D116FF02A
4D116FF05A
4D116FF05B
4D116FF12B
4D116FF14B
4D116FF17B
4D116GG01
4D116GG02
4D116GG03
4D116GG04
4D116GG08
4D116GG12
4D116GG13
4D116KK02
4D116QA24C
4D116QA24F
4D116QB11
4D116QB22
4D116UU02
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】濾過材料を用いた濁水処理設備であって、目詰まりが生じた後の定期的な交換が容易に行えるようにする。
【解決手段】通水可能な材料により収容体6を構成し、この収容体6の内部に、濾過材料7を充填するとともに、上部に浮体8を収納した濾過材2を複数用意し、濁水の流路10に対して、横断方向に前記濾過材2、2…を起立状態で並列配置し、これら濾過材2の下端に錘3を連結して各濾過材2、2…の下端を水路底部に固定し、かつ前記各濾過材2、2同士を第1ロープ4により連結するとともに、前記第1ロープ4の延長部分4aを水路岸の留め具5に固定した濁水濾過処理ユニットUを一組として、濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水可能な材料により収容体を構成し、この収容体の内部に、濾過材料を充填するとともに、上部に浮体を収納した濾過材を複数用意し、
濁水の流路に対して、横断方向に前記濾過材を起立状態で並列配置し、これら濾過材の下端に錘を連結して各濾過材の下端を水路底部に固定し、かつ前記各濾過材同士を第1ロープにより連結するとともに、前記第1ロープの延長部分を水路岸の留め具に固定した濁水濾過処理ユニットを一組として、濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置したことを特徴とする浮体式濁水処理設備。
【請求項2】
前記並列配置された各濾過材同士は、前記通水可能な材料を介して接合されている請求項1記載の浮体式濁水処理設備。
【請求項3】
前記第1ロープは、前記各濾過材の下端部又は錘連結部に対して連結されている請求項1、2いずれかに記載の浮体式濁水処理設備。
【請求項4】
前記浮体同士を第2ロープにより連結し、前記第2ロープの延長部分を水路岸の留め具に固定している請求項1~3いずれかに記載の浮体式濁水処理設備。
【請求項5】
前記濁水濾過処理ユニットの設置及び回収のために、引張り装置を別途用意してある請求項1~4いずれかに記載の浮体式濁水処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種トンネル工事、ダム工事、地盤改良工事、地中連続壁造成工事などの土木工事において、掘削時に発生する細粒分(粘土及びシルト等)が混入した濁水を無機凝集剤や高分子凝集剤を用いることなく、浄化するための浮体式濁水処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
各種トンネル工事、ダム工事、地盤改良工事、地中連続壁造成工事などの土木工事においては、含水比の高い濁水が大量に発生する。この濁水の処理は、工事種別や施工条件、周囲の環境条件等に応じて適切な処理設備が選択される。従来から最も多く採用されてきた処理設備の一例を図5に示す。
【0003】
図5に示される例では、各種工事現場からの原水(濁水)が先ず原水槽50に貯留される。前記原水のSS(浮遊物質量)は概ね500~3000mg/lである。そして、所定量の原水が凝集沈降分離装置51(所謂、シックナ)に移送され、ここで、無機凝集剤と高分子凝集剤とが添加されるとともに、中和処理のために炭酸ガスが投入される。前記凝集処理によって濁水中に浮遊する多くの微細粒子群がフロックとなって沈降分離される。この凝集沈降分離工程によって、原水のSSは、概ね10~25mg/lまで低減される。前記沈殿したフロックはフィルタープレス55などの脱水装置によって脱水処理される。
前記無機凝集剤(例えば、PAC又は硫酸バンド等)は、排泥水中の浮遊物質が帯びている電荷(一般には負に帯電)に反対の電荷を与えて電気的に中性とし、粒子間相互の反発を無くして凝集させるものであり、前記高分子凝集剤(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド陰イオン変性物、ポリアクリルアミド、デンプン等)は水中に懸濁しているコロイドや微粒子の表面電荷を中和して粒子を凝集させ、吸着架橋作用により大きなフロックを形成するためのものである。これらの凝集剤は単独で使用されることもあるが、凝集沈降効果を上げるために、併用されることが多い。
次いで、前記凝集沈殿処理によって大幅にSSが低減された濁水は、次の砂濾過装置52に投入され、ここで概ね浮遊物質量SSを5mg/l以下まで低下させた後、水質管理槽53に移送され、ここで有害物質の混入量が各種基準内にあるかどうかを検査した後、放流槽54に移され、最終的に放流処理される。前記無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用し、かつ砂濾過装置52を用いる濁水処理装置としては、例えば下記特許文献1を挙げることができる。
【0004】
しかしながら、前記無機凝集剤や高分子凝集剤を用いて浄化処理を行う場合は、処理後の土砂は産業廃棄物としての扱いになるため取扱いが面倒であるとともに、特に高分子凝集剤は魚などのえらに付着し生物を窒息死させるおそれがある。また、放流された高分子凝集剤は自然界において分解することなく長期に渡り環境へ影響をもたらすおそれがあるとともに、高分子凝集剤に含まれるアクリルアミドは、発ガン性や毒性があると言われており人体への影響が懸念されており、環境衛生上の問題があった。
【0005】
そこで近年は、環境に配慮した濁水処理方法が幾つか提案されている。例えば、下記特許文献2では、土砂工事により生じる濁水を浄化するための濁水処理設備に使用される濾過材料であって、前記濾過材料は乾燥植物体が圧縮成型または収束された成形体である濁水処理設備用の濾過材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-216494号公報
【特許文献2】特開2001-269517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に係る濾過材は、具体的には図6に示されるように、乾燥植物体61としてココヤシ繊維及び/又はジュートを用いて、これを円柱状に圧縮成形して形成され、そしてその外周面を、乾燥植物体を用いて形成されたネット62により包囲した濾過材60であり、これを図7に示されるように、工事現場付近に設けた沈砂池64を横断するように、前記濾過材60、60…を横置き状態で積み重ねて配置するようにし、これら濾過材料の側方を複数の杭63、63で支持するようにして設置している。
【0008】
しかしながら、天然資源に由来した乾燥植物体61を濾過材料とした場合は、濾過材料が3~6ヶ月ほどで目詰まりしてしまい交換が必要となるが、水や粘土類を取り込んだ濾過材料はかなりの重量物となり、かなりの労力を要する作業となっているなどの問題があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、濾過材料を用いた濁水処理設備であって、目詰まりが生じた後の定期的な交換が容易に行えるようにした浮体式濁水処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、通水可能な材料により収容体を構成し、この収容体の内部に、濾過材料を充填するとともに、上部に浮体を収納した濾過材を複数用意し、
濁水の流路に対して、横断方向に前記濾過材を起立状態で並列配置し、これら濾過材の下端に錘を連結して各濾過材の下端を水路底部に固定し、かつ前記各濾過材同士を第1ロープにより連結するとともに、前記第1ロープの延長部分を水路岸の留め具に固定した濁水濾過処理ユニットを一組として、濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置したことを特徴とする浮体式濁水処理設備が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、通水可能な材料により収容体を構成し、この収容体の内部に、濾過材料を充填するとともに、上部に浮体を収納した濾過材を複数使用する。設置に当たっては、前記濾過材を、濁水の流路に対して、横断方向に前記濾過材を起立状態で並列配置し、これら濾過材の下端に錘を連結して各濾過材の下端を水路底部に固定し、かつ前記各濾過材同士を第1ロープにより連結するとともに、前記第1ロープの延長部分を水路岸の留め具に固定することにより一組の濁水濾過処理ユニットを構成し、この濁水濾過処理ユニットを濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置するようにする。
【0012】
前記濾過材は、収容体の上部に浮体を収納した濾過材を用いているため、浮体の浮力によって濾過材を折れ曲がらせることなく流路内に起立状態で設置することが可能になるとともに、濾過材の交換時の作業負荷を軽減できるようになる。すなわち、濾過材には浮体による浮力が作用し重量が軽くなるため、交換時に濾過材の回収が比較的に容易に行えるようになる。
【0013】
また、収容体の上部に浮体を収納しているため、水深が変わったとしても浮体は常時水面付近に位置するようになり、濾過材はそれに合わせてその分傾斜した状態になる。従って、濾過材はその全長を均等にフィルターとして機能させることが可能になり、濾過材は均等に汚濁物質が蓄積されるようになり、寿命も長期化できるようになる。
【0014】
前記濾過材は、錘によって水路底部に固定されるとともに、各濾過材同士を第1ロープにより連結するとともに、前記第1ロープの延長部分を水路岸の留め具に固定することにより水流によって流されることが無く、所定位置に保持されるようになる。
【0015】
前記濾過材の交換に当たっては、前記第1ロープを留め具から外して、ウインチなどの引張り装置又は重機類などを使用して水路脇に引き上げることにより容易に回収が行えるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記並列配置された各濾過材同士は、前記通水可能な材料を介して接合されている請求項1記載の浮体式濁水処理設備が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明は、濾過材の設置に当たり、濾過効率を上げるために各濾過材は通水可能な材料を介して接合することにより、濾過材を通過すること無く濁水が下流側に流れるのを防止するようにしたものである。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記第1ロープは、前記各濾過材の下端部又は錘連結部に対して連結されている請求項1、2いずれかに記載の浮体式濁水処理設備が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前記第1ロープを各濾過材の下端部や錘連結部に連結することにより、濾過材の固定を図るとともに、この第1ロープを引き上げることにより全ての濾過材を一挙に回収できるようにしているものである。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記浮体同士を第2ロープにより連結し、前記第2ロープの延長部分を水路岸の留め具に固定している請求項1~3いずれかに記載の浮体式濁水処理設備が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、前記浮体同士を第2ロープに連結し、その延長部分を水路岸の留め具に固定することにより濾過材の起立状態をしっかり保持することができ、濁水が流れによって濾過材の上を溢流するのを防止することができる。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記濁水濾過処理ユニットの設置及び回収のために、引張り装置を別途用意してある請求項1~4いずれかに記載の浮体式濁水処理設備が提供される。
【0023】
上記請求項5記載の発明は、前記濁水濾過処理ユニットの設置及び回収のために、別途引張り装置を用意しておくことにより、前記第1ロープを引張り装置によって巻き上げることによって全ての濾過材を一挙に設置したり、回収したりすることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、濾過材料を用いた濁水処理設備であって、目詰まりが生じた後の定期的な交換が容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る浮体式濁水処理設備1の平面図である。
図2】その横断面図(図1のII-II線矢視図)である。
図3】(A)及び(B)は水深に応じた濾過材2の姿勢状態を示す図(図1のIII-III線矢視図)である。
図4】濾過材2の製作要領図である。
図5】従来の濁水処理設備を示すフロー図である。
図6】従来の環境配慮型の濁水処理用濾過材の斜視図である。
図7】その濾過材の沈砂池への配置要領断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
本発明に係る浮体式濁水処理設備1は、図1図3に示されるように、濁水の流路(例えば、沈砂池の流路)に対して、横断方向に前記濾過材2を起立状態で並列配置し、これら濾過材2の下端に錘3を連結して各濾過材2、2の下端を水路10の底部に固定し、かつ前記各濾過材2、2同士を第1ロープ4により連結するとともに、前記第1ロープ4の延長部分4aを水路岸の留め具5、5に固定した濁水濾過処理ユニットUを一組として、濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置したものである。
【0028】
以下、図面に基づいて具体的に詳述する。
【0029】
先ず、本発明で使用する濾過材2は、図4に示されるように、通水可能な材料により収容体6を構成し、この収容体6の内部に、濾過材料7を充填するとともに、上部に浮体8を収納したものである。
【0030】
前記通水可能な材料としては、メッシュ素材の材料、織布、多孔シート材などを挙げることができる。これらの中でもメッシュ素材の材料とすることが望ましい。メッシュ素材の材料としては、例えば軟鋼線、硬鋼線、ピアノ線、溶接棒心線、ステンレス線など鋼線類や、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン・酢酸ビニル)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの合成樹脂類、ブチルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどのゴム類を使用することができ、これら材料の単一製品や、複数の材料の組合せからなる複合製品などとすることができる。
【0031】
前記通水可能な材料、例えばメッシュ素材を材料を、円柱状、角柱状、壁状などの立方体状の収容体6(袋状)に加工する。図示例は円柱状に加工した例を示している。形状寸法は、直径又は長辺寸法は概ね20~60cm、好ましくは30~50cm程度とし、縦方向長さLは50cm~2m、好ましくは50cm~1.5m程度とするのが望ましい。前記縦方向長さLは、濁水の沈砂池の最大水深Hmaxに合わせた寸法とするのが望ましい。
【0032】
前記収容体6の内部に充填する濾過材料7としては、種々の公知の濾過材料を任意かつ選択的に用いることができる。前記収容体6の構成材料として例えばメッシュ素材を用いた場合は、濾過材料7が収容体6から外部に抜け出すのを防止するため、例えば織布、不織布、麻袋などの透水性を有する材料によって作られた袋体7Aを用い、その内部に各種の浄化・吸着材料7B(濾過材料)を充填したものとすることができる。前記浄化・吸着材料7Bとしては、多孔質材料、繊維質材料などの各種のフィルター機能性材料を好適に用いることができる。
【0033】
前記多孔質材料は、ゼオライト等のケイ酸塩鉱物類、活性炭や木炭などの炭素材料、鹿沼土、珪藻土、パーライト、火山礫等の土壌系材料、多孔質セラミックなどの多孔質材料からなるものを挙げることができる。
【0034】
前記繊維質材料は、木材繊維(パルプなど)、コットンなどの種子毛繊維、ヤシなどの果実繊維、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻などの葉脈繊維、シュロ等の植物繊維、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機質繊維などの繊維質材料若しくはその加工品からなるものを挙げることができる。
【0035】
前記パルプは、主に製紙に用いるために分離した植物繊維(セルロース繊維)であり、木材・非木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート等の人工セルロースなどを挙げることができる。また、前記パルプは通常負(-)に帯電しているが、従来公知の方法で正(+)に帯電させることが好ましい。これにより、掘削時に発生する細粒分(粘土及びシルト等)が混入した濁水(負(-)に帯電)を引き寄せるため、吸着効果が高くなる。
【0036】
前記濾過材料7としては、同図に示されるように、前記繊維質材料などをマット状に加工し、これを巻き取って円柱状に成形したものを前記収容体6(袋状)内に収容するようにしてもよい。前記多孔質材料について、粒状体であるため、マット内に散布するか、織布又は不織布に担持させてシート状とし、これを一緒に巻き取るようにしてもよい。
【0037】
前記濾過材料7を収容体6の内部に充填したならば、その収容体の6の上部に、好ましくは最上部に浮体8を入れ、収容体6の上部を編み込んで閉じるようにする。収容体6の下部には錘3が連結される。前記浮体8としては、図示の浮き輪状、任意の立方体状のものなどを好適に用いることができる。材質は、プラスチック樹脂製とし内部を中空にしたものや樹脂発泡体によるものなどを好適に用いることができる。前記錘3は濾過材2の底面に対してなるべき近づけるようにすることが望ましい。図2に示されるように、前記濾過材2の下面と水路底部との空間距離Sは、濁水が処理されることなく通過する空間となるため極力少なくすることが望ましい。空間距離Sは、10~20cm、好ましくは10~15cmとするのが望ましい。
【0038】
前記収容体6の上部に浮体8を収納することにより、細長い柱状の収容体6を用いたとしても、浮体8の浮力によって濾過材2が途中で折れ曲がったりすることなく、水中に起立状態で設置することが可能になる。また、濾過材2の交換時に前記浮体8による浮力によって濾過材2の重量が軽減されるため回収が比較的容易に行えるようになる。
【0039】
更に、収容体6の上部に浮体8を収納しているため、図3に示されるように、水深が、図3(A)から図3(B)に示されるように、水深がH1からH2に変わったり、逆にH2からH1に変わったとしても、浮体8は常時水面付近に位置するため、濾過材2はそれに合わせてその分傾斜した状態(傾斜θ1⇔θ2)になって追随することになる。そして、常に水路10の底部から水面までの区間に亘って濾過材2が配置されることになるため、濾過材2はその全長を均等にフィルターとして機能させることが可能になり、濾過材2には全長に亘って均等に汚濁物質が蓄積されるようになるため、その分寿命も長期化できるようになる。
【0040】
これに対して、仮に前記濾過材2を直立状態で固定設置した場合は、水深が低下した場合に濾過材2の上部側は空中に露出することになり、この空中に露出した部分は濾過機能を果たさなくなるため、濾過材2の全長に亘って均等に汚濁物質が蓄積されずに、汚濁物質は濾過材2の下側に片寄って蓄積されることになるため、濾過材2の寿命がその分短くなってしまうことになる。
【0041】
〔濁水濾過処理ユニットUの設置要領〕
前記濾過材2を用いた濁水濾過処理ユニットUの設置に当たっては、沈砂池などにおいて水路の脇に作業ヤードを確保して、濁水濾過処理ユニットUの組立を行う。前記濾過材2を横置き状態で複数並べて地面に置いたならば、これら各濾過材2、2…の境界部でメッシュ素材同士を螺旋状に通した紐9又はクリップなどにより接合するようにする。また、濾過材2の下端の錘3、3同士を繋ぐように、第1ロープ4、4…で連結する。図示例のように、錘3を繋ぐ連結環3aに第1ロープ4を通すとともに、連結環3aと第1ロープ4とが相対的にずれないようにこれらをワイヤやクリップなどによって緊結するようにする。前記第1ロープ4の延長部分4aは、留め具5への固定やウインチなどへの巻き代として長めに確保しておくことが望ましい。
【0042】
以上の要領によって、濁水濾過処理ユニットUの組立が完了したならば、対岸側にウインチなどの引張り装置を設置する。そして、前記第1ロープ4の延長部分4aをドラムに固定し、第1ロープ4を巻き取るようにすると、前記濁水濾過処理ユニットUを水路10内に移動させることができる。水路10内に移動した濾過材2、2…は錘3によって各濾過材2、2…が水路底部に固定される。また、各濾過材2が浮体8を備えることによって浮体8の浮力によって水中に起立状態で設置されるようになる。前記第1ロープ4の延長部分は、水路脇に設置した杭などの留め具5に対して固定する。
【0043】
前記濁水濾過処理ユニットUは、濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置する。組数については、濁水中の浮遊物質量に応じて任意に調整することが望ましい。概ね、組数は4~10組、好ましくは5~6組程度とするのが望ましい。
【0044】
図1に示されるように、沈砂池の濁水に対して、本濁水処理ユニットUを濁水の流れ方向に間隔を空けて複数組設置することにより、濁水は浮遊物質のSS(浮遊物質量:mg/L)を大幅に低減ないし基準値5mg/l以下まで低下させることが可能になる。浮遊物質量SSが低減された濁水は、中和処理などの二次処理を経て放流されることになる。
【0045】
数ヶ月の後、前記濾過材2の交換が必要になったならば、水路脇にウインチなどの引張り装置を設置し、前記第1ロープ4の延長部分4aをドラムに固定し、第1ロープ4を巻き取ることにより、前記濁水濾過処理ユニットUを水路10から引上げ、一挙に回収することが可能になる。
【0046】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、各濾過材2、2…は下端部において第1ロープ4によって連結し、その延長部分を水路岸の留め具に固定するようにした。これ以外にも、前記浮体8同士を第2ロープによって相互に連結し、その延長部分を水路岸の留め具に固定するようにしてもよい。前記浮体8も第2ロープを介して保持することにより、水深が安定している場合は、濾過材2、2…の姿勢を安定的に保持することが可能になる。
【0047】
(2)本発明の浮体式濁水処理設備1は、従来の化学処理による浄化処理に比べて浄化効果が低くなることが懸念される。従って、浮遊物質量SSを管理基準以下まで浄化できない場合は、簡易な無機凝集剤を用いた浄化処理と組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…浮体式濁水処理設備、2…濾過材、3…錘、4…第1ロープ、5…留め具(杭)、6…収容体、7…濾過材料、7A…袋体、7B…浄化・吸着材料、8…浮体、10…沈砂池(水路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7