(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155996
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】版築ブロック
(51)【国際特許分類】
C04B 28/10 20060101AFI20221006BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20221006BHJP
B28B 23/02 20060101ALI20221006BHJP
E04C 1/00 20060101ALI20221006BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20221006BHJP
E04B 2/02 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C04B28/10
C04B14/02 Z
B28B23/02 Z
E04C1/00 Z
E02D3/12 102
E04B2/02 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059479
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000156204
【氏名又は名称】株式会社淺沼組
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】荒木 朗
(72)【発明者】
【氏名】新田 稔
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 順二
【テーマコード(参考)】
2D040
4G058
4G112
【Fターム(参考)】
2D040AB07
2D040CA10
4G058GA01
4G058GB01
4G112PA04
(57)【要約】
【課題】突き固めた場合に確実に所望した形状に成型することができ、例えば版築壁を施工する際であっても施工中に容易に崩れることがない版築ブロックを提供する。
【解決手段】土を主とした素材を型枠内で締め固めてなる立方体の版築ブロックであって、前記素材は結合剤10~15部、砂30部、土100部、水20~35部からなる。結合剤は、マグネシウム系の固化材である。土は、粒径が15mm以下であって、当該版築ブロックを設置する現地土壌から採取した土である。版築ブロックの内部には、長手方向に水平に補強材を配する。補強材は自然素材からなる荒縄である、
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を主とした素材を型枠内で締め固めてなる立方体の版築ブロックであって、前記素材は結合剤10~15部、砂30部、土100部、水20~35部からなることを特徴とする版築ブロック。
【請求項2】
結合剤は、マグネシウム系の固化材である請求項1記載の版築ブロック。
【請求項3】
土は、粒径が15mm以下であって、当該版築ブロックを設置する現地土壌から採取した土である請求項1または2記載の版築ブロック。
【請求項4】
版築ブロックの内部には、長手方向に水平に補強材を配した請求項1~3のいずれか記載の版築ブロック。
【請求項5】
補強材は自然素材からなる荒縄である請求項4記載の版築ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来から公知の工法である版築を利用して製造され、高さのある土塀を構築することができて施工性が高い版築壁に供するとともに、土素材を再利用することができる版築ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から土塀などを版築で行うことは広く知られており、寺社などの土塀に見られることが多い。この工法は、型枠内に土を投入して適宜な高さごとに一層ずつ締め固め、これを何層も繰り返すことによって施工するものであった。しかしながら、版築によって壁を作成する場合、壁厚が薄ければ脆弱な壁体となるのである程度の壁厚を必要とする結果、総重量が重くなることや、土を締め固めるという構造的な不安定さから高く積み上げることが困難であるといった基本的な問題があり、現在では版築を採用することは少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、セメントを含まない非セメント系固化材が記載されており、これを用いた土構造物が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された発明では非セメント系固化材を土に混合してブロックを成型するものであり、ブロック自体が版築工法によって製造されているのではない。
【0005】
本発明では、ブロック自体を版築によって成型するもので、突き固めた場合に確実に所望した形状に成型することができ、例えば版築壁を施工する際であっても施工中に容易に崩れることがない版築ブロックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、土を主とした素材を型枠内で締め固めてなる立方体の版築ブロックであって、前記素材は結合剤10~15部、砂30部、土100部、水20~35部からなるものを開示した。これらの素材に用いた材料は全て基本的には自然素材であり、再利用に資することが容易である。また、結合剤としてマグネシウム系の固化材を用いるので、比較的調達が容易である。
【0007】
本発明において採用する土は、粒径が15mm以下であって、当該版築ブロックを設置する現地土壌から採取した土であるため、全国各地の地産材料が施工現地での素材として使用することになり、環境に好適であるとともに、景観上も現地の雰囲気になじむように施工することが可能である。
【0008】
さらに、版築ブロックの内部には、長手方向に水平に補強材を配することとした。この補強材の配置によって、版築ブロックを構成している素材に対する曲げ応力や引張応力に対抗することができる。補強材として荒縄を用いる手段においては、版築ブロックの素材のみならず構成要素の全てが自然素材であり、環境衛生面において好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述した構成としているので、版築ブロック自体が湿潤性、断熱性、脱臭性に優れており、室内に採用した場合には空気環境が改善されて快適な空間を提供することができる。また、高断熱性であるため、空調などの際でも電力消費を抑えることができ、省エネルギー、低炭素社会にも貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の版築ブロックを用いて施工した版築壁の正面図
【
図3】同、版築ブロックを積層するための骨組み構造を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明の版築ブロック1を示す斜視図であって、全体の形状は直方体であり、両側短辺には凹部2・2が形成されている。この版築ブロック1は、型枠(図示せず)に土を投入して突き固めて製造する。従って、全体の形状は本実施形態に限定されず、立方体や断面台形など、型枠の形状に応じて適宜選択することができる。3は断面内部に長手方向に沿って配置された補強材であり、曲げ応力や引張応力などに対抗するためのものである。補強材はその機能面からは特に材質を限定するものではないが、本実施形態の版築ブロック1が用途を終えて廃棄する際にブロック自体の素材を砕いて土に還すことができる素材である場合には、同様に天然素材である荒縄などを採用することが好ましい。
【0012】
版築ブロック1の補強材3を除いた素材としては、一例として、コンクリート用の細骨材の砂と、版築施工を行う現地の土壌を混合し、マグネシウム系の固化材を攪拌して上下水道、地下水、工業用水、河川水などを加えたものを用いる。その配合比率としては、一例として、結合剤10~15部、砂30部、土壌から採取した土100部、水を20~35部であり、これらを混ぜ合わせて版築ブロック1の素材を作成する。なお、結合剤、砂、および土については乾燥状態における配合量である。土の粒径については特に限定しないが、好ましくは15mm以下で成分に粘土質が15%以上含まれるものを採用する。土と砂の比率を100:30としたのは、現地土壌から採取した土の使用量を確保して現地の雰囲気に合致することを目的とした。また、この比率としたのは土の固化に対して適正な粒度となるように調整するため、および土の固化に伴う寸法安定性(乾燥に伴う変形を防止する。)を高めるためである。なお、これらの素材については産業廃棄物として処理されることになるが、用途を終えたのちには粉砕して再利用が可能である。また、補強材として使用する荒縄についても通常の廃棄物として処理することが可能である。したがって、産業廃棄物の発生量を抑制することができる。
【0013】
なお、結合剤と水の配合に幅をもたせたのは、現地土壌の土の粒度、水分状態、土に含まれる成分の違いに対応するためであって、現地土壌の性質に応じて適宜決定する。この範囲において土の含水比に応じて水と結合剤の比率と量を調整することによって、土壌の違いによらず、土を固化させることができる。
【0014】
次に、版築ブロックを製造する手順としては、素材に利用する材料を電動ミキサーで均一になるまで混錬する。これを型に
図1において第1段目1aまで投入し、ハンマーなどで突き固めて成型する。そして、第1段目の上側に荒縄などの補強材3を配置し、さらに第2段目1bの素材を投入して同様に突き固めてその上側に補強材3を配置する。続いて第3段目1cの素材を投入して同様に突き固めて全体形状を整えたのちに固化させる。突き固めについては人力で行ってもよく、電動のハンマードリルなどを使用してもよい。突き固めを完了して約1時間経過し、全体が安定すれば離型し、乾燥させる。乾燥については自然乾燥であっても加温雰囲気下で送風しながら乾燥してもよいが、内部まである程度乾燥させるために適宜な時間を乾燥工程に与えることが好ましい。本実施形態では版築ブロックの製造を3段階とし、第1段目1aと第2段目1b、第2段目1bと第3段目1cの間に補強材3を設置するものとしたが、補強材3としての荒縄と素材の付着性を確保でき、かつブロック全体として十分な突き固めをすることができるのであれば、素材を投入しながら途中の工程で荒縄を配置し、最終段階で全体を突き固めることも可能である。
【0015】
本実施形態の版築ブロックを採用した版築壁の一例については、
図2に示すように、版築ブロック1を積層した状態を示す正面図であって、版築ブロック1を通し目地(芋目地)で積層して版築壁4を作成している。5・5は両側に設けられた枠体である。図では版築ブロック1を19段積層した状態を示している。本実施形態では、版築ブロック1は単に積層するのではなく、積層した状態で倒壊しないように骨組み構造を採用している。
図3は骨組み構造の一例を示した正面図であって、枠体5・5の間に複数の等間隔に芯材6を立設している。芯材6の具体的な構成は特に限定する必要はなく、版築ブロック1を積層した場合に倒壊しないことを目的としている。ただし、本実施形態で採用する芯材6としては、
図4に示すように平面視においてコ字状の金属板7のウエブ部分を背中合わせに2本一組に一体とした構成が好ましい。金属板7はアルミニウムの引き抜き成型などで得ることができる。金属板7の素材はアルミニウムに限定するものではなく、チャンネル状の鋼板であってもよい。金属板7に求められることは、骨組み構造とすることによって、版築ブロック1の積層を容易とすること、および倒壊を防止することであり、これを満たすものであれば特に問うものではない。ただし、モルタルとの付着性がよい素材が好ましい。
【0016】
続いて、版築壁4を構成するための手順を説明する。最初に
図3に示したように枠体5・5間に等間隔で芯材6を立設する。芯材6は両側には金属板7を1本だけ立設し、中間部には
図4に例示するように金属板7を2本背中合わせにした形態で立設する。次に、版築ブロック1を芯材6の間に挿通するように一列に設置し、例えば3段を一単位として積み上げる。そして
図4に示したように隣り合う版築ブロック1・1の凹部3・3によって構成される空間部にモルタル8を充填する。モルタル8は、芯材6に対して版築ブロック1を確実に位置決めする機能を行う。さらに、その上に同様の工程にて版築ブロック1を積み上げ、モルタル8を充填して予定した高さまで版築壁4のかさ上げを行う。なお、版築ブロック1は芯材6を基準として積み上げ、芯材6に対してモルタル8を介して設置されているので安定しており、上下の版築ブロックを目地材によって固定する必要は特にない。
【符号の説明】
【0017】
1 版築ブロック
2 凹部
3 補強材
4 版築壁
6 芯材
7 金属板
8 モルタル