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  • 特開-版築壁およびその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155997
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】版築壁およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/00 20060101AFI20221006BHJP
   E04B 2/34 20060101ALI20221006BHJP
   E04C 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C04B28/00
E04B2/34
E04C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059481
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000156204
【氏名又は名称】株式会社淺沼組
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古東 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 順二
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA01
(57)【要約】
【課題】地震などの揺れによっても容易に崩壊することがない版築壁、およびこれを施工するための工法を提供する。
【解決手段】土を締め固めてなる立方体の版築ブロックと、等間隔で立設した芯材とからなり、前記芯材の間に前記版築ブロックを積層する。芯材は、版築ブロックの長手方向の幅の間隔で立設した。芯材は、断面コ字状の金属板のウエブ部分を背中合わせとした。版築ブロックは、短辺側に凹部を形成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を締め固めてなる立方体の版築ブロックと、等間隔で立設した芯材とからなり、前記芯材の間に前記版築ブロックを積層することを特徴とする版築壁。
【請求項2】
芯材は、版築ブロックの長手方向の幅の間隔で立設した請求項1記載の版築壁。
【請求項3】
芯材は、断面コ字状の金属板のウエブ部分を背中合わせとした請求項1または2記載の版築壁。
【請求項4】
版築ブロックは、短辺側に凹部を形成した請求項1~3のいずれか記載の版築壁。
【請求項5】
隣り合う版築ブロックの凹部の間に芯材が立設し、その空間部にはモルタルを充填した請求項1~4のいずれか記載の版築壁。
【請求項6】
断面コ字状の金属板のウエブ部分を背中合わせとして芯材とし、この芯材を版築ブロックの長手方向の幅に等間隔で立設し、この等間隔に立設した芯材の間に短辺側に凹部を形成した版築ブロックを積層したのちに、前記凹部の間に芯材が位置した状態で空間部にモルタルを充填する版築壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来から公知の工法である版築によって構築された版築壁を改良し、高さのある土塀を構築することができる施工性の高い版築壁およびその工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から土塀などを版築で行うことは広く知られており、寺社などの土塀に見られることが多い。この工法は、型枠内に土を投入して適宜な高さごとに一層ずつ締め固め、これを何層も繰り返すことによって施工するものであった。しかしながら、版築によって壁を作成する場合、壁厚が薄ければ脆弱な壁体となるのである程度の壁厚を必要とする結果、総重量が重くなることや、土を締め固めるという構造的な不安定さから高く積み上げることが困難であるといった基本的な問題があり、現在では版築を採用することは少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-087017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、例えばその図5のように、版築構造壁が記載されている。この構造壁は、予め作成した組積ブロック材を積み上げるものである。そして、各ブロック材の間には目地材を充填して壁面を構築している。しかしながら、このような構造ではブロック材を多層に積層した場合には各ブロック材は目地材によって結合しているだけなので、地震などの揺れに弱いという問題がある。
【0005】
本発明では、版築によって構成したブロックを精密に多層に積層することができ、地震などの揺れによっても容易に崩壊することがない版築壁、およびこれを施工するための工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、土を締め固めてなる立方体の版築ブロックと、等間隔で立設した芯材とからなり、前記芯材の間に前記版築ブロックを積層するという手段を用いることによって版築壁を構成した。ここで、芯材は版築ブロックの長手方向の幅の間隔で立設するという手段を用いた。また、芯材の構造としては、断面コ字状の金属板のウエブ部分を背中合わせとした。版築ブロックは、芯材に対する嵌り合いを考慮して、短辺側に凹部を形成するという手段を用いた。これによって、土を締め固めて得られた比較的強度が低く、崩れやすい版築ブロックを上方向に積層した場合であっても、版築ブロックの両側が芯材によって保持されているため、全体として強度を保証することができる。
【0007】
また、隣り合う版築ブロックの凹部の間に芯材が立設し、向かい合う凹部によって形成された空間部にモルタルを充填したすることによって、版築ブロックは立設した芯材と一体となり、壁面全体が一体化される。
【0008】
さらに、断面コ字状の金属板のウエブ部分を背中合わせとして芯材とし、この芯材を版築ブロックの長手方向の幅に等間隔で立設し、この等間隔に立設した芯材の間に短辺側に凹部を形成した版築ブロックを積層したのちに、前記凹部の間に芯材が位置した状態で空間部にモルタルを充填するという工法を採用すれば、芯材間に版築ブロックを容易に積み上げることができ、施工性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、上記のような構成を採用したので、簡単に版築ブロック壁を施工することができるとともに、崩れやすい版築ブロックであっても自重によって崩落することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】版築ブロックを通し目地で積層した状態を示す正面図
図2】版築ブロックを積層するための骨組み構造を示す正面図
図3】版築ブロックと芯材の関係を示す断面図
図4】版築ブロックと芯材の別の関係を示す断面図
図5】版築ブロック本体を示す斜視図
図6】版築ブロックを破れ目地で積層した状態を示す正面図
図7】破れ目地に適用する版築ブロックの一例を示す断面図
図8】同、別の版築ブロックの一例を示す断面図
図9】破れ目地で版築ブロックを積層した場合の目地材を適用した断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に従って説明する。図1は、版築ブロック1を積層した状態を示す正面図であって、版築ブロック1を通し目地(芋目地)で積層して版築壁2を作成している。3・3は両側に設けられた枠体である。図では版築ブロック1を19段積層した状態を示している。本実施形態では、版築ブロック1は単に積層するのではなく、積層した状態で倒壊しないように骨組み構造を採用している。図2は骨組み構造の一例を示した正面図であって、枠体3・3の間に複数の等間隔に芯材4を立設している。芯材4の具体的な構成は特に限定する必要はなく、版築ブロック1を積層した場合に倒壊しないことを目的としている。ただし、本実施形態で採用する芯材4としては、図3に示すように平面視においてコ字状の金属板5のウエブ部分を背中合わせに2本一組に一体とした構成が好ましい。金属板5はアルミニウムの引き抜き成型などで得ることができる。金属板5の素材はアルミニウムに限定するものではなく、チャンネル状の鋼板であってもよい。金属板5に求められることは、骨組み構造とすることによって、版築ブロック1の積層を容易とすること、および倒壊を防止することであり、これを満たすものであれば特に問うものではない。ただし、モルタルとの付着性がよい素材が好ましい。なお、芯材4の枠体3に接する両側については、図4に示すように金属板5は1本だけを採用する。
【0012】
次に、版築ブロック1の好ましい形態を説明する。図5は版築ブロック1本体を示す斜視図であって、全体として立方体であり、長手方向両側、すなわち短辺には円弧状の凹部6・6が形成されている。版築ブロック1は、型枠(図示せず)内に土を投入し、これを強く突き固めることによって得られるものであり、素材としてはセメントを使用することなく自然素材のみを使用する。したがって、完成した壁面などの設備を撤去し、版築ブロック1を回収したのちに粉砕すれば版築ブロック素材として再利用することが可能となる。
【0013】
続いて、版築壁2を構成するための手順を説明する。最初に図2に示したように枠体3・3間に等間隔で芯材4を立設する。芯材4は両側には金属板5を1本だけ立設し、中間部には金属板5を2本背中合わせにした形態で立設する。次に、版築ブロック1を芯材4の間に挿通するように一列に設置し、例えば3段を一単位として積み上げる。そして図3に示したように隣り合う版築ブロック1・1の凹部6・6によって構成される空間部にモルタル7を充填する。モルタル7は、芯材4に対して版築ブロック1を確実に位置決めする機能を行う。さらに、その上に同様の工程にて版築ブロック1を積み上げ、モルタル7を充填して予定した高さまで版築壁2のかさ上げを行う。なお、版築ブロック1は芯材4を基準として積み上げ、芯材4に対してモルタル7を介して設置されているので安定しており、上下の版築ブロックを目地材によって固定する必要は特にない。
【0014】
なお、上記実施形態では版築ブロック1は立設された芯材4の間に1個ずつ上側に向かって積層することとしているが、版築壁2の高さを低く抑える場合には隣り合う芯材4の間に2個の版築ブロック1・1を横並びにし、それぞれの版築ブロックの片側のみを芯材4で拘束することもある。
【0015】
上記実施形態は、版築ブロック1を通し目地で積層したが、破れ目地(馬目地)の版築壁を構成することも可能である。この場合には、図6に示すように、芯材4は枠体3・3に接して、あるいは近傍に最初の実施形態において採用したチャンネル状の金属板を立設し、その中間には同じ金属板5を背中合うように立設する。そして、版築ブロック1については、通し目地において採用した版築ブロック1とは異なる形態のものを採用する。本実施形態において採用する版築ブロックは、図7、および図8に示す形態である。図7の版築ブロック8は、基本的形状は図5に示した版築ブロックと同じように直方体であるが、円弧状の凹部6については片側にのみ設けられている。そして、上下方向に開口し、補強鉄筋9を貫通するための通孔10が形成されている。また、図8に示した版築ブロック11は、基本的な形状は同じく直方体であるが、円弧状の凹部は設けられておらず、通孔10が並列に2つ形成されている。
【0016】
上述した破れ目地の版築壁を施工するには、先ず枠体3・3の近傍と中間に上記説明したように芯材4を立設する。次に最下段には図7に示した版築ブロック8の凹部を芯材4に接するように配置し、芯材4に接しない部分には図8に示した版築ブロック11を並べる。次にその上段には下段の版築ブロック列と半分が重なるように千鳥に積み上げる。この場合、図6に示した実施形態では最下段の版築ブロック8は横方向について半分の大きさのものを採用する。このように、互いに上下に千鳥に版築ブロックを予定した高さに積み上げ、補強鉄筋を通孔10に対して挿通する。通孔10は、版築ブロックを積み上げた場合には上下の版築ブロックの通孔10が連通しているので、補強鉄筋は最下段まで通すことができる。なお、破れ目地で構成した版築壁では、芯材4に接していない版築ブロックは補強鉄筋9によって連結されているが、それぞれは拘束されていないため、上下に接触する版築ブロック同士の間には図9に示すように目地材12を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0017】
1 版築ブロック
2 版築壁
3 枠体
4 芯材
5 金属板
6 凹部
7 モルタル
8 版築ブロック
9 補強鉄筋
10 通孔
11 版築ブロック
12 目地材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9