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  • 特開-チタン酸バリウムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155998
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】チタン酸バリウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20221006BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C01G23/00 C
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059482
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和馬
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G047
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CB06
4G047CC02
4G047CD03
4G047CD08
5E001AE00
5E001AJ02
5E082BC38
5E082FG26
5E082PP05
5E082PP06
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難く、高収率でチタン酸バリウムが得られる製造方法を提供する。
【解決手段】
水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を準備した後、混合溶液を脱水し、その後、溶解していない水酸化バリウムを当該混合溶液から分離する。分離後、混合溶液のバリウム濃度が10~40重量%の状態で、当該混合溶液にチタンアルコキシドを添加する。チタンアルコキシドを添加後、水を添加する。水を添加することにより得た水和物ゲルから、ペロブスカイト構造のチタン酸バリウムを生成する。チタンアルコキシドを添加する直前の混合溶液を室温から10℃/minで昇温した場合に、50℃での混合溶液の重量が50%に減少する温度は200℃以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を準備する第一工程と、
前記混合溶液を脱水する第二工程と、
前記混合溶液から溶解していない水酸化バリウムを分離する第三工程と、
前記混合溶液のバリウム濃度が10~40重量%の状態でチタンアルコキシドを添加する第四工程と、
前記混合溶液に水を添加する第五工程と、を順に備え、
前記チタンアルコキシドを添加する直前の混合溶液を、室温から10℃/minで昇温したとき、50℃での混合溶液の重量が50%に減少する温度が200℃以上であるチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項2】
前記第二工程において、前記混合溶液を40℃以上の状態で脱水することを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BTO)は、電子部品用の誘電体材料や高屈折率で透明性に優れた光学材料等に用いられている。BTOは、高い誘電率を持つため、積層セラミックコンデンサ(MLCC)に利用されている。MLCCは電極層と誘電体層が交互に重なった構造をしている。金属Niを主成分とする電極層と、セラミックスを主成分とする誘電体層との間では、熱収縮率が異なる。そのため、MLCC作製中の焼成過程でMLCCにクラックが生じる。そこで、電極層では、Ni粒子の周りに共材としてBTOを充填している。これにより、電極層と誘電体層が均一に熱収縮し、クラックが発生し難くなる。また、MLCCの小型化に伴い電極層に用いられるNi粒子も小さくなっている。そのため、共材であるBTOの粒子径も小さいことが求められている。
【0003】
粒子径が小さいBTOを製造する方法として、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液にチタンアルコキシドを添加した後、加水分解する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような方法で得られたBTOは、溶媒やMLCC作製用のペーストに分散し易い。また、MLCCを作製する際にクラックが発生し難い。
【0004】
チタンアルコキシドを添加するとき、混合溶液の水分量を少なくすることにより、粒子径が小さくなる(25nm以下になる)ことが知られている(例えば、特許文献2を参照)。粒子径が小さいと、MLCCを小型化するのに好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-172242号公報
【特許文献2】特開2012-240904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2のBTOは、粒子径が小さく、均一なため、電極層にクラックが発生し難くなる。粒子径を小さくするために、ロータリーエバポレータを用いて水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を脱水している。しかし、特許文献1の製造方法では、混合溶液に溶解していない水酸化バリウム(未溶解の水酸化バリウム)が含まれているため、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し易い。また、特許文献2の製造方法では、未溶解の水酸化バリウムを分離してから、混合溶液を脱水している。そのため、収率が低くなり、生産効率が低くなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難く、高収率でBTOが得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を準備した後、混合溶液を脱水し、その後、未溶解の水酸化バリウムを当該混合溶液から分離することとした。分離後、混合溶液のバリウム濃度が10~40重量%の状態で、当該混合溶液にチタンアルコキシドを添加する。チタンアルコキシドを添加する直前の混合溶液を室温から10℃/minで昇温した場合に、50℃での混合溶液の重量が50%に減少する温度は200℃以上である。チタンアルコキシドの添加後、水を添加することにより、ペロブスカイト構造のチタン酸バリウムが生成する。
【0009】
混合溶液が40℃以上の状態で脱水することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の熱重量測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を準備する第一工程と、混合溶液を脱水する第二工程と、未溶解の水酸化バリウムを混合溶液から分離する第三工程と、混合溶液のバリウム濃度が10~40重量%の状態で当該混合溶液にチタンアルコキシドを添加する第四工程と、この混合溶液に水を添加する第五工程を順に備えている。水の添加によりチタンアルコキシドが加水分解し、水酸化バリウムと縮合反応して水和物ゲルになる。この水和物ゲルからペロブスカイト構造のチタン酸バリウム(BTO)を得ることができる。
【0012】
混合溶液を脱水することにより、水酸化バリウムがアルキルセロソルブに溶解する際に発生する水分が除去される。脱水により混合溶液中の水分含有量が少なくなり、アルキルセロソルブと水酸化バリウムが相互作用し易くなる。そのため、さらに、水酸化バリウムが溶解する。すなわち、混合溶液を脱水することにより、脱水と水酸化バリウムの溶解とが同時進行し、水酸化バリウムの溶解が促進される。溶け残りが少ないと、未溶解の水酸化バリウムの量が少なくなる。すなわち、第二工程で分離される水酸化バリウムの量が少なくなるので、BTOの収率が高くなる。また、未溶解の水酸化バリウムは、BTOが生成する際にペロブスカイト構造以外の結晶となり易い。そのため、脱水後、未溶解の水酸化バリウムを分離することにより、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難くなり、且つBTOの収率が高くなる。ペロブスカイト構造以外の結晶が生成すると、MLCCにクラックが発生し易くなる。
【0013】
アルキルセロソルブは水酸化バリウムと相互作用すると、蒸発し難くなる。そのため、混合溶液を熱重量測定することにより、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの相互作用の強さを評価することができる。相互作用が強い程、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難くなる。そこで、チタンアルコキシドを添加する直前の混合溶液を室温(15~35℃)から10℃/minで昇温し、50℃での混合溶液の重量がその重量の50%に減少したときの温度(T50)を測定する。この温度が200℃以上だと、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの相互作用が強いといえる。このとき、昇温は、例えば、25℃から600℃まで行う。また、混合溶液が室温でない場合は、加温または冷却して室温にする。T50が高い程、水酸化バリウムとアルキルセロソルブとの相互作用が強い。すなわち、T50は250℃以上が好ましい。また、混合溶液のバリウム濃度が高い程、アルキルセロソルブに相互作用しているバリウムの量が多いため、T50が高くなる。
【0014】
混合溶液のバリウム濃度が40重量%以下の混合溶液にチタンアルコキシドを添加すると、ゲルが生成し難い。バリウム濃度が高い場合、混合溶液にアルキルセロソルブを添加して濃度を40重量%以下にする必要がある。一方、バリウム濃度が10重量%以上の混合溶液にチタンアルコキシドを添加することにより、生産効率が高くなる。バリウム濃度が低い場合、混合溶液を濃縮して濃度を10重量%以上にすると、BTOを効率よく生成できる。
【0015】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
<第一工程>
まず、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を準備する。BTOのバリウム源として、水酸化バリウムを用いることにより、MLCCの電極層と誘電体層を焼成する際に、対イオンが誘電体層へ拡散しない。そのため、MLCCの性能が向上する。アルキルセロソルブは水酸化バリウムと相互作用し易い。そのため、溶媒としてアルキルセロソルブを用いることにより、水酸化バリウムが溶解し易い。アルキルセロソルブの炭化水素基の炭素数は、4以下が好ましく、2以下がより好ましい。炭素数が少ないほどアルキルセロソルブと水酸化バリウムが相互作用し易くなる。すなわち、アルキルセロソルブとして、メチルセロソルブがさらに好ましい。また、混合溶液に超音波を照射することにより、水酸化バリウムが溶解し易くなる。
【0017】
<第二工程>
本工程では、混合溶液を脱水する。40℃以上の状態で脱水することが好ましい。アルキルセロソルブと水酸化バリウムが相互作用し易くなり、水酸化バリウムがアルキルセロソルブに速く溶解する。50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。温度が高い程、水酸化バリウムがアルキルセロソルブと相互作用し易くなる。一方、温度が高すぎると突沸しやすくなり、十分な安全性を確保できない。そのため、90℃以下が好ましい。
【0018】
脱水時間が長いと、脱水と水酸化バリウムの溶解が同時進行する時間が長くなるため、水酸化バリウムが溶け残り難くなる。水酸化バリウムの溶け残り量を考慮して、脱水時間を調整してもよい。例えば、溶け残り量が、原料の4割未満となるように混合溶液を脱水すると、BTOの収率が6割以上となる。溶け残りは3割未満、2.5割未満となるほど、BTOの収率は高くなる。したがって、脱水時間は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。一方、脱水時間が長過ぎると、生産効率が低くなる。そのため、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
【0019】
混合溶液を脱水する方法として、(減圧)蒸留、および、シリカゲルやゼオライト等の吸着材を用いる方法が挙げられる。(減圧)蒸留は、加温、脱水、濃縮を同時に行うため、工程が少なく、生産効率が高い。混合溶液の濃度が10重量%より低い場合でも、(減圧)蒸留により、10重量%以上に濃縮することができる。濃縮後の濃度が高すぎると、ゲルが発生しやすい。ゲルの量が少ないほど、収率が高くなるため、濃度を40重量%以下に調整することが好ましい。30重量%以下がより好ましい。また、(減圧)蒸留の時間が長いほど、溶解する水酸化バリウムの量が多くなるため、30分以上が好ましい。一方、(減圧)蒸留の時間が長過ぎると、混合溶液のバリウム濃度が高くなり過ぎるため、5時間以下が好ましい。蒸留温度やバリウムの濃度、混合溶液の量等を考慮して、(減圧)蒸留の時間を調整することができる。
【0020】
脱水後の混合溶液の水分量が少ない程、水酸化バリウムとアルキルセロソルブが相互作用し易くなる。また、濃縮時やチタンアルコキシドの添加時にゲルが発生し難くなる。そのため、水分量は1重量%未満が好ましく、0.8重量%以下がより好ましく、0.55重量%以下がさらに好ましい。
【0021】
<第三工程>
本工程では、未溶解の水酸化バリウムを混合溶液から分離する。分離方法として、ろ過やデカンテーション等が挙げられる。デカンテーションの前に、混合溶液を遠心分離しても構わない。第二工程でゲルが発生していても、本工程で分離される。
【0022】
<第四工程>
次に、混合溶液にチタンアルコキシドを添加する。添加の際に、混合溶液のバリウム濃度が10~40重量%の範囲にある必要がある。本工程の前であれば、どの工程でバリウム濃度をこの範囲に調整してもよい。すなわち、第一工程から第四工程の間であれば、いつ調整してもよく、分離工程の前でも後でもよい。チタンアルコキシドを添加する際、バリウム濃度が低いほどゲルが発生し難い。そのため、濃度は30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。但し、濃度が10重量%未満だと、生産効率が悪くなる。一方、濃度が40重量%を超えると、ゲルが発生し易い。
【0023】
混合溶液に含まれるバリウムとチタンの原子比Ba/Tiが0.9~1.1になるように、チタンアルコキシドを添加することが好ましい。原子比が1に近い程、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難くなるので、0.95~1.05がより好ましい。Ti(OR)の構造を持つチタンアルコキシド(Rは炭素数1~4の炭化水素基であって互いに同一であっても異なっていてもよい)を用いることにより、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難くなる。入手のし易さから、テトライソプロポキシチタンが好ましい。
【0024】
<第五工程>
本工程では、第四工程で得られた混合溶液に水を添加し、チタンアルコキシドを加水分解する。加水分解したチタンアルコキシドは、水酸化バリウムと縮合反応して水和物ゲルになる。添加する水と混合溶液中のチタンアルコキシドのモル比(水のモル量/チタンアルコキシドのモル量)が4以上だと、ペロブスカイト構造以外の結晶が生成し難い。モル比は6以上がより好ましい。一方、BTOの粒子径を小さくするために、モル比は25以下が好ましく。18以下がより好ましい。また、アルコールと水の混合溶媒を添加することにより、加水分解速度を調整することができる。アルコールと水の重量比(アルコール/水)を0.5~5とすることにより、粒子径が小さくなる。
【0025】
水和物ゲルから、ペロブスカイト構造のBTOを得る方法として、熟成や焼成が挙げられる。熟成により、混合溶液中でペロブスカイト構造のBTOが生成できるため、混合溶液を乾燥させて、粉末を取り出す必要がない。また、MLCCを作製する際にBTOは溶媒に分散している必要がある。しかし、熟成すれば、BTOを溶媒に再分散させる必要がない。また、熟成すると、BTOの粒子径が均一になり易い。混合溶液を50~120℃で2時間以上保持することにより熟成される。温度が高いと、粒子径が均一になり易いため、60℃以上が好ましい。一方、熟成の温度が高過ぎると、生産効率が悪くなるため、120℃以下が好ましい。粒子径を均一にするために、熟成時間は5時間以上が好ましい。一方、生産効率を高くするために、熟成時間は200時間以下が好ましく。100時間以下がより好ましい。
【0026】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例0027】
[実施例1]
<第一工程>
はじめに、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を調製した。具体的には、水酸化バリウム・八水和物(富士フィルム和光純薬社製)100gと2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)630gを1Lのビーカーに入れ、混合した後、超音波を照射しながら40℃で30分間かけて水酸化バリウムの一部を溶解させた。誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)により測定した混合溶液のバリウム濃度は、6.0重量%であった。カールフィッシャー法により測定した水分含有量は、6.2重量%であった。
【0028】
<第二工程>
この混合溶液を、2Lのナス型フラスコに入れ、エバポレータを用いて減圧蒸留を行った。すなわち、脱水と濃縮を同時に行った。蒸留は、70℃、及び大気圧からマイナス0.015MPaの条件で1時間行った。
【0029】
<第三工程>
次に、蒸留後の混合溶液を遠心分離して、未溶解のバリウムを沈降させた。その後、上澄み(混合溶液)をデカンテーションし、沈降物(未溶解の水酸化バリウム)を分離した。沈降物は白色であった。遠心分離の条件は、3000rpm、15分とした。ICP-OESにより測定した上澄み(チタンアルコキシドを添加する直前の混合溶液)のバリウム濃度は16.0重量%、水分含有量は0.5重量%であった。この上澄み(チタンアルコキシドを添加する直前の混合溶液)を室温から600℃まで10℃/minの速度で昇温し、熱重量測定を行った。この熱重量の測定結果を図1に示す。図示するように、50℃での混合溶液の重量が50%(半分)に減少する温度(T50)が279℃であることが分かる。以下の実施例及び比較例でも、同様にT50を測定した。
【0030】
〔第四工程〕
この上澄みにチタンアルコキシドを、原子比Ba/Tiが1.06となるように添加した。すなわち、窒素ガス雰囲気下のグローブボックス内で、上澄み170gにテトライソプロポキシチタン(マツモトファインケミカル社製オルガチックス(登録商標)TA-10;Ti濃度16.88重量%)53gを添加し、混合物を調製した。
【0031】
〔第五工程〕
混合物を25℃で撹拌しながら、水57.1gとメタノール171.3g(メタノールと水の重量比が3.0、水とチタンアルコキシドのモル比が17.0)の混合溶媒を1分間かけて添加した後、混合物を25℃で2時間撹拌した。得られた水和物ゲルを70℃に昇温し、24時間熟成することにより、BTOの分散液が得られた。この分散液20gを150℃で1時間乾燥し、BTOの粉末を得た。
【0032】
他の実施例も本実施例と同様に調製した。BTO(粉末)の収率と結晶構造を以下の方法で測定した。BTOの調製条件とともに測定結果も表1に示す。
【0033】
(収率)
蛍光X線分析装置(XRF)により得られた粉末のバリウム濃度と粉末の重量から、粉末に含まれるバリウム量を計算した。このバリウム量を原料のバリウム量で除した後、100を掛けることにより、粉末の収率〔%〕を計算した。本実施例では、収率は83%であった。
【0034】
(結晶構造)
粉末を粉砕後、X線回折測定装置(リガク社製RINT(登録商標)-Ultima)を用いて粉末の結晶構造を測定した。解析ソフトのPDXLを用いてピークサーチを行った。本実施例では、ペロブスカイト以外のピークが検出されなかったことから、粉末がペロブスカイト構造の単一相であることが確認できた。
【0035】
[実施例2]
第二工程で蒸留温度を50℃としたこと、第四工程でオルガチックスTA-10の添加量を54gとしたこと、及び第五工程で水の重量56.7g、メタノールの重量170.2gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0036】
[実施例3]
第二工程で2時間蒸留したこと、第四工程でオルガチックスTA-10を137g添加したこと、及び第五工程で水の重量135.3g、メタノールの重量405.8gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0037】
[実施例4]
第二工程で40℃で蒸留したこと、第四工程でオルガチックスTA-10を39g添加したこと、及び第五工程で水の重量40.0g、メタノールの重量119.9gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0038】
[実施例5]
第二工程で25℃で3時間蒸留したこと、第四工程でオルガチックスTA-10を37g添加したこと、及び第五工程で水の重量38.2g、メタノールの重量114.6gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0039】
[比較例1]
第四工程で蒸留後の混合溶液170gにオルガチックスTA-10を58g添加したこと、及び第五工程で水の重量60.0g、メタノールの重量179.9gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0040】
[比較例2]
本比較例では、分離(第三工程)を脱水(第二工程)の前に行った。まず、実施例1と同様にして、水酸化バリウムとアルキルセロソルブの混合溶液を調製した。この混合溶液を3000rpm、15分で遠心分離して、上澄みを得た。沈降物は白色であった。この上澄みを50℃、大気圧からマイナス0.015MPaの条件で1時間蒸留した。第四工程以降は、蒸留後の混合溶液にオルガチックスTA-10を22g添加したこと、及び水の重量21.4g、メタノールの重量64.2gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0041】
[比較例3]
水酸化バリウム・八水和物100gと2-メトキシエタノール360gの混合溶液を80℃で1時間加熱した。加熱後の混合溶液を、3000rpm、15分で遠心分離して、上澄みを得た。沈降物は白色であった。第四工程以降は、この上澄みにオルガチックスTA-10を4g添加したこと、及び水の重量3.9g、メタノールの重量11.8gの混合溶媒(メタノールと水の重量比は3.0)を用いたこと以外は実施例1と同様に調製した。
【0042】
【表1】
図1