(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156006
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物および樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/06 20060101AFI20221006BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20221006BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20221006BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20221006BHJP
C08L 63/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08L67/06
C08L33/04
C08L71/02
C08K3/40
C08L63/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059492
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】伊地智 純平
(72)【発明者】
【氏名】尾寅 瞬
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG071
4J002CD191
4J002CF211
4J002CF221
4J002CH022
4J002DL006
4J002FD016
4J002GC00
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】優れた外観、機械的物性、および水垢に対する防汚性を有する熱硬化性樹脂組成物および樹脂成形体を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびビニルエステル樹脂からなる群より選ばれた一種以上の熱硬化性樹脂(A)、ポリアルキレングリコール(B)、およびガラスフィラー(C)を含有する。ポリアルキレングリコール(B)を構成するオキシアルキレン単位のうち、オキシエチレン単位が70~90質量%であり、炭素数3のオキシアルキレン単位が10~30質量%である。熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、ポリアルキレングリコール(B)の配合比が1~15質量部であり、ガラスフィラー(C)の配合比が200~350質量部である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびビニルエステル樹脂からなる群より選ばれた一種以上の熱硬化性樹脂(A)、ポリアルキレングリコール(B)、およびガラスフィラー(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記ポリアルキレングリコール(B)を構成するオキシアルキレン単位のうち、オキシエチレン単位が70~90質量%であり、炭素数3のオキシアルキレン単位が10~30質量%であり、
前記熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリアルキレングリコール(B)の配合比が1~15質量部であり、前記ガラスフィラー(C)の配合比が200~350質量部であることを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする、樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた外観、機械的物性および水垢に対する防汚性を有する熱硬化性樹脂組成物、および樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽、キッチンカウンター、洗面台などの水回り製品は、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂またはビニルエステル樹脂などの樹脂とラジカル重合性単量体を含む熱硬化性樹脂と、充填剤、低収縮剤、硬化剤、顔料などを配合した熱硬化性樹脂組成物を成形することで得られる。浴槽を成形する際、熱硬化性樹脂組成物には、機械的物性を向上させるために、充填剤として、ガラスフィラー、炭酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムが配合される。
【0003】
特許文献1では、水垢への防汚性を有するシリコーン化合物と熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2では、水垢への防汚性を有する含フッ素ブロック共重合体と熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-82233号公報
【特許文献2】特開2017-14481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、透明感があり、外観に優れる浴槽への要求が高まっており、外観を向上させるために、ガラスフィラーが多量に配合されている。しかし、ガラスフィラーは親水性であるため、付着した水垢汚れを容易に除去することができないという問題を抱えているため、ガラスフィラーが大量に配合された場合においては、水垢に対する防汚性が不十分であった。
【0006】
本発明の課題は、優れた外観、機械的物性、および水垢に対する防汚性を有する熱硬化性樹脂組成物、および樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のものである。
(1) 不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびビニルエステル樹脂からなる群より選ばれた一種以上の熱硬化性樹脂(A)、ポリアルキレングリコール(B)、およびガラスフィラー(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記ポリアルキレングリコール(B)を構成するオキシアルキレン単位のうち、オキシエチレン単位が70~90質量%であり、炭素数3のオキシアルキレン単位が10~30質量%であり、
前記熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリアルキレングリコール(B)の配合比が1~15質量部であり、前記ガラスフィラー(C)の配合比が200~350質量部であることを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
(2) (1)の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする、樹脂成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ガラスフィラーを配合した熱硬化性樹脂に、特定のポリアルキレングリコールを配合することで、外観、機械的物性、および水垢に対する防汚性に優れた成形体を製造し得る熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<熱硬化性樹脂(A)>
本発明の熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル、(メタ)アクリル共重合体およびビニルエステルからなる群より選ばれる1種以上の重合体を、ラジカル重合性単量体に溶解した樹脂である。
【0010】
(不飽和ポリエステル樹脂)
前記不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多価酸成分をエステル化させることにより得られる不飽和ポリエステルを、ラジカル重合性単量体に溶解した樹脂である。
【0011】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノールなどジアルコール類;ビスフェノールAおよびビスフェノールF、ビスフェノールSなどのプロピレンオキサイド付加物またはエチレンオキサイド付加物;2,2-ジ(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン{水素化ビスフェノールA}、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの市販の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。前記多価アルコールは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
前記不飽和多価酸成分としては、例えば、α,β-不飽和多価カルボン酸およびその反応性誘導体が挙げられる。α,β-不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。また、前記反応性誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水クロロマレイン酸などの酸無水物;前記不飽和多価カルボン酸の低級アルキルエステルなどが挙げられる。前記不飽和多価酸成分は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
また、上記のエステル化反応においては、必要に応じ、飽和多価酸成分も使用できる。飽和多価酸成分としては、例えば、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸など脂肪族多価カルボン酸;クロレンディク酸(ヘット酸)、テトラブロモフタル酸などのハロゲン化フタル酸;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水琥珀酸、無水クロレンディク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物;ジメチルオルソフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルテレフタレートなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。また、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸も使用できる。前記飽和多価酸成分は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
前記エステル化における反応の条件は、何ら限定されるものではないが、例えば、前記反応は、窒素などの不活性ガス雰囲気下、140~230℃の反応温度で、必要に応じて、反応触媒を使用して行われる。当該反応触媒としては、例えば、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛、酢酸コバルトなどが挙げられる。当該反応触媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
前記不飽和ポリエステル樹脂における前記ラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのビニルモノマー;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレートなどのアリルモノマー;フェノキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。当該ラジカル重合性単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの中でも、スチレン、ビニルトルエンなどが一般的に使用される。
【0016】
前記不飽和ポリエステル樹脂中の前記不飽和ポリエステルの割合は、樹脂成形体の機械的特性を向上させる観点から、30~90質量%であることが好ましい。
【0017】
((メタ)アクリル樹脂)
前記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル共重合体をラジカル重合性単量体に溶解した樹脂であり、アクリルシラップとも呼ばれるものである。
【0018】
前記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体をラジカル重合することにより得られる公知の(メタ)アクリル共重合体を用いることができるが、通常、メチルメタクリレートを主成分(単量体混合物中、50質量%以上が好ましい)としたメチルメタクリレート共重合体であることが好ましい。メチルメタクリレートと共重合可能な他のラジカル重合性単量体成分は、特に限定されず、メチルメタクリレート以外の前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、前記その他の単量体などが挙げられる。
【0019】
前記(メタ)アクリル樹脂における前記ラジカル重合性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルなどの多官能性の単量体が挙げられる。当該ラジカル重合性単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、当該ラジカル重合性単量体には、前記多官能性の単量体のほか、上記のメチルメタクリレート、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、前記その他の単量体なども含んでいてもよい。
【0020】
前記(メタ)アクリル樹脂中の前記(メタ)アクリル共重合体の割合は、樹脂成形体の機械的特性を向上させる観点から、10~50質量%であることが好ましい。
【0021】
(ビニルエステル樹脂)
前記ビニルエステル樹脂は、ビニルエステルをラジカル重合性単量体に溶解した樹脂であり、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸を付加反応させて得られる。
【0022】
前記1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFおよびビスフェノールSのジグリシジルエーテルならびにその高分子量同族体、フェノールノボラック型ポリグリシジルエ-テル、クレゾールノボラック型ポリグリシジルエ-テル類などが挙げられる。さらに、これらのハロゲン化誘導体も使用することができる。前記1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
前記α,β-不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、桂皮酸、アクリル酸および/またはメタクリル酸から得られる誘導体の不飽和モノカルボン酸などが挙げられる。前記α,β-不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
前記付加反応において、反応の条件は、何ら限定されるものではないが、例えば、80℃~140℃の反応温度で、必要に応じて、反応触媒を使用して行なわれる。当該反応触媒としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩;塩化リチウムなどの金属塩などが挙げられる。当該反応触媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
前記ビニルエステル樹脂における前記ラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのビニルモノマー;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレートなどのアリルモノマー;フェノキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。当該ラジカル重合性単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの中でも、スチレン、ビニルトルエンなどが一般的に使用される。
【0026】
前記ビニルエステル樹脂中の前記ビニルエステルの割合は、樹脂成形体の機械的特性を向上させる観点から、10~50質量%であることが好ましい。
【0027】
<ポリアルキレングリコール(B)>
ポリアルキレングルコールはオキシエチレン単位と、炭素数3のオキシアルキレン単位を有する。オキシエチレン単位と炭素数3のオキシアルキレン単位の配列は、ブロック状であることが好ましい。ブロック状のポリアルキレングルコールは、通常、下記一般式(1)で表される。
HO-(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)a-H・・・(1)
【0028】
ポリアルキレングルコールは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
ポリアルキレングルコール(B)の重量平均分子量は、防汚性を向上させる観点から、3,000~25,000であることが好ましく、10,000~20,000であることがより好ましい。
【0029】
ポリアルキレングルコール(B)のオキシアルキレン単位の合計比率を100質量%としたとき、オキシエチレン単位の比率は70~90質量%であり、炭素数3のオキシアルキレン単位の比率は10~30質量である。オキシエチレン単位の比率は、75~90質量%とすることが更に好ましく、炭素数3のオキシアルキレン単位の比率は10~25質量とすることが更に好ましい。
【0030】
ポリアルキレングルコール(B)の配合量は、熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、1~15質量部とするが、3~13質量部が好ましく、5~13質量部がより好ましく、7~11質量部が特に好ましい。
【0031】
<ガラスフィラー(C)>
本発明のガラスフィラー(C)は、特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物を構成する成分を混合する作業性と機械的物性を向上させる観点から、数千本のガラスファイバーを束ねたストランドを長さ3~25mmに切断したチョップドストランド、または、単繊維を長さ数十~数百μmにすりつぶしたミルドファイバーであることが好ましい。
【0032】
樹脂成形体の外観を向上させる観点から、熱硬化性樹脂に不飽和ポリエステル樹脂を使用する場合は屈折率nDが1.54~1.58であることが好ましく、熱硬化性樹脂に(メタ)アクリル樹脂を使用する場合は屈折率nDが1.48~1.52であることが好ましく、熱硬化性樹脂にビニルエステル樹脂を使用する場合は屈折率nDが1.49~1.57であることが好ましい。
【0033】
ガラスフィラー(C)の配合量は、熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、200~350質量部とするが、外観、機械的物性、防汚性すべてにおいて良好となるためには220~330質量部が好ましく、250~300質量部がより好ましい。
【0034】
<その他の添加剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、一般的に熱硬化性樹脂組成物に用いられるその他の添加剤を用いることができる。前記その他の添加剤としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、遅延剤、増粘剤、低収縮剤、内部離型剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0035】
前記硬化剤としては、例えば、ケトンペルオキシド類、ペルオキシケタール類、ヒドロペルオキシド類、ジアルキルペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカーボネート類、ペルオキシエステル類などの公知の有機過酸化物が挙げられる。なお、前記硬化剤は、通常、前記熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~5質量部程度で使用する。
【0036】
また、前記硬化剤を使用するに際し、N,N-ジブチルアニリン、トリブチルアミンなどの第三級アミン;アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピルなどのアセト酢酸エステル;ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどのコバルト塩などの硬化促進剤を使用することができる。なお、前記硬化促進剤は、通常、前記硬化剤100質量部に対し、0.01~0.5質量部程度で使用する。
【0037】
前記遅延剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン系;p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン系;カテコール、t-ブチルカテコールなどのカテコール系;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4-メトキシフェノール、クレゾールなどのフェノール系;1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オールなどのN-オキシル系などの公知の遅延剤が挙げられる。なお、前記遅延剤は、通常、前記熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.01~1質量部程度で使用する。
【0038】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。なお、前記増粘剤は、通常、前記熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.5~5質量部程度で使用する。
【0039】
前記内部離型剤としては、例えば、ワックス、ポリビニルアルコール溶液、シリコーン系離型剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。なお、前記内部離型剤は、通常、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対して、1~10質量部程度で使用する。
【0040】
<樹脂成形体>
本発明の樹脂成形体は、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化(成形)することによって得られる。当該硬化(成形)は、前記熱硬化性樹脂組成物の単体で行うことができるほか、物品の表面や全体を被覆するように複合材料として行うことができる。
【0041】
前記熱硬化性樹脂組成物を硬化(成形)する方法としては、特に限定はないが、例えば、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、フィラメントワインディング成形法、レジンインジェクション成形法、バルクモールディングコンパウンド(BMC)プレス法、シートモールディングコンパウンド(SMC)プレス法、レジントランスファー成形(RTM)法、波板・平板の連続成形法などのFRP製品を製造するための成形法、引き抜き成形法、真空成形法、圧空成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法、注型法、スプレー法、ゲルコート、ライニング、フローコートなどが挙げられる。なお、前記硬化(成形)する温度は、70~180℃程度であり、硬化時間は、0.5~60分程度である。
【0042】
本発明の樹脂成形体は、水回り用部材に好適である。水回り用部材としては、例えば、浴槽、ユニットバス、シャワーヘッド、シャワーバー、手すり、浴室壁、浴室床、浴室扉などの浴室で用いられる部材、キッチンカウンター、洗面台などが挙げられる。
【実施例0043】
以下に実施例を示して本発明を説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
<熱硬化性樹脂組成物の製造>
表1、表2に示す各成分をそれぞれ配合するとともに、これに加えて、熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、硬化剤として2.0質量部のt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(日油株式会社製、商品名:パーブチルI-75)を、遅延剤として0.05質量部のパラベンゾキノンを、内部離型剤として5.0質量部のステアリン酸亜鉛を、増粘剤として2.0質量部の酸化マグネシウムをそれぞれ加えた。得られた各配合物を、ニーダーで15分間混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0044】
<樹脂成形物の製造>
得られた熱硬化性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルムでシート状に包み、40℃の雰囲気下に24時間放置し、予備成形体を作製した。得られた予備成形体を、100トンプレスを用い、金型温度140℃/145℃(下型/上型)、10MPaの成形圧力で4分間圧縮成形し、150mm×100mm×4mmの平板状の樹脂成形物を得た。
【0045】
各性能の評価方法は次の通りである。
<外観(光沢度)>
光沢度の評価は、上記で得られた試験片を用い、JIS K7105に準拠して、60°鏡面光沢度を測定し、以下の式にて、光沢度の変化率(%)を算出した。
光沢度の変化率(%)=
{(試験片の光沢度)/(ポリアルキレングリコール(B)を含まない試験片(ブランク相当)の光沢度)}×100
光沢性の評価結果は、90以上を合格とした。
【0046】
<機械的物性(曲げ強さ)>
JIS K 7203に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/minにて曲げ強さを測定した。曲げ強さは200MPa以上を合格とした。
【0047】
<水垢に対する防汚性>
原子吸光測定用Si標準液をSi濃度が100ppmになるように希釈し、これを上記で得られた試験片の表面に0.06g滴下して、50℃の乾燥機にて蒸発させた後、再び同じ箇所に0.06gを滴下して50℃で蒸発完固させるという操作を10回繰り返した。次に、水で濡らしたガーゼで拭き取り、この滴下箇所に10μmol/Lの濃度のメチレンブルー溶液を0.06g滴下して、水垢を青色に染色することによって、滴下の前と後の色差ΔEを測定した。色彩色差計はコニカミノルタ社製「CR-400」を使用した。
各樹脂成形体の水垢に対する防汚性について、以下の基準で評価点を算出した。水垢に対する防汚性は、4以上を合格とした。
5:ΔEが0.1未満
4:ΔEが0.1以上0.2未満
3:ΔEが0.2以上0.3未満
2:ΔEが0.3以上0.5未満
1:ΔEが0.5以上
【0048】
【0049】
【0050】
表1、表2中の各成分は、以下のものを使用した。
A-1:不飽和ポリエステル樹脂;日本ユピカ株式会社製、7579
A-2:(メタ)アクリル樹脂;日本ユピカ株式会社製、8932
A-3:ビニルエステル樹脂;日本ユピカ株式会社製、8101
B-1~B-4およびB’-1、B’-2:
式(1)のものを使用した
HO-(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)a-H・・・(1)
ただし、分子量Mwおよびオキシエチレン単位および炭素数3のオキシアルキレン単位の比率は表1、表2に示した。
C:チョップドストランド;日本板硝子製、RES03-BM5
S-1:シリコーン化合物;信越シリコーン社製、KF96
F-1:含フッ素ブロック共重合体
【0051】
<F-1の合成>
温度計、撹拌機、及び還流冷却管を備えた5リットルの4つ口フラスコに、メチルエチルケトン600gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら70℃に加熱した。その後、メタクリル酸メチル(MMA)253g、メタクリル酸ブチル(BMA)247gから成る混合液と、メチルエチルケトン400g及びポリメリックペルオキシド110gから成る混合液の両液を同時に2時間かけて仕込み、更に4時間重合反応を行った。 これにより、非フッ素セグメントを構成するMMA、BMA重合体の分散液を得た。
【0052】
続いて、メチルエチルケトン850g、フッ素単量体CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)5CF3〈FA(C6)〉317g、メタクリル酸メチル(MMA)17gの混合液を40分かけて仕込み、1.5時間重合反応を行った。更に80℃で3時間重合反応を行うことで、F-1(Mw=40000)を得た。
【0053】
表1の結果から明らかなように、実施例1~10は、いずれも外観、機械的物性、防汚性に優れていた。
【0054】
一方、表2から明らかなように、比較例1~5は、これらの性能バランスが不十分であった。
具体的には、比較例1は、ポリアルキレングリコール(B’-1)中のオキシエチレン単位の配合量が過少なため、水垢に対する防汚性に劣っていた。
比較例2は、ポリアルキレングリコール(B’-2)中のオキシエチレン単位の配合量が過剰なため、水垢に対する防汚性に劣っていた。
比較例3は、ガラスフィラー(C)の配合量が過少なため、機械的物性に劣っていた。
比較例4は、ポリアルキレングリコール(B)の代わりに、シリコーン化合物を配合したため、水垢に対する防汚性に劣っていた。
比較例5は、ポリアルキレングリコール(B)の代わりに、含フッ素ブロック共重合体を配合したため、水垢に対する防汚性が劣っていた。