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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156012
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両の電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20221006BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221006BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20221006BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B60L9/18 J
H02M7/48 Z
H02M7/48 M
B60L1/00 L
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059502
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小杉山 雄基
(72)【発明者】
【氏名】辻 修立
【テーマコード(参考)】
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB00
5H125BB09
5H125BC25
5H125BC29
5H125EE13
5H125FF03
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA22
5H770DA41
5H770EA01
5H770FA03
5H770HA01Z
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA17W
5H770LB07
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】エネルギ効率やコスト等を悪化させることなくバックアップ電源機能を発揮できる車両の電源システムを提供すること。
【解決手段】電源システム1は、高電圧バッテリ21が接続された高電圧回路2と、高電圧回路2と駆動モータMfとの間で電力を変換する第1インバータ23と、高電圧回路2に設けられたコンデンサ11,12と、放電開始条件が成立した場合に、第1インバータ23を操作することによってコンデンサ11,12の電荷を放電させる放電制御を実行するシステムECU8と、高電圧回路2における電力を消費することで作動する電動エアコンプレッサユニット46と、電動エアコンプレッサユニット46のコンプレッサ電源464とシステムECU8とを接続する補機電力線47と、を備える。補機電力線47は、平面視では柱状の金属構造体であるエンジンE及びトランスミッションケースと重なる衝突保護領域内に配置されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
主電源が接続された主電力回路と、
前記主電力回路と前記回転電機との間で電力を変換する主インバータと、
前記主電力回路に設けられたコンデンサと、
放電開始条件が成立した場合に、前記主インバータを操作することによって前記コンデンサの電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御装置と、を備える車両の電源システムであって、
前記主電力回路における電力を消費することによって作動する車両補機と、
前記車両補機と前記放電制御装置とを接続する電力線と、を備え、
前記電力線は、平面視では柱状の金属構造体と重なる領域内に配置されていることを特徴とする車両の電源システム。
【請求項2】
前記放電制御装置は、前記主電源よりも電圧が低い低電圧電源と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の電源システム。
【請求項3】
前記車両補機は、補機インバータを含む電気負荷と、前記補機インバータをスイッチング制御する補機制御装置と、前記主電力回路における電力を前記補機制御装置に供給する補機電源と、を備え、
前記電力線は、前記補機電源と前記放電制御装置とを接続し、
前記補機制御装置は、前記放電制御装置によって前記放電制御を実行する場合、前記補機インバータのスイッチング制御を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の電源システム。
【請求項4】
前記放電制御装置は、前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧が第1電圧閾値未満になったことに応じて前記主インバータのスイッチング制御を停止し、
前記補機制御装置は、前記コンデンサ電圧が第2電圧閾値未満になったことに応じて前記補機インバータのスイッチング制御を停止し、
前記放電制御装置は、前記補機制御装置が前記補機インバータのスイッチング制御を停止する前に前記主インバータのスイッチング制御を停止することを特徴とする請求項3に記載の車両の電源システム。
【請求項5】
前記放電制御装置は、前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧が第1電圧閾値未満になったことに応じて前記主インバータのスイッチング制御を停止し、
前記補機制御装置は、前記コンデンサ電圧が前記第1電圧閾値より低い第2電圧閾値未満になったことに応じて前記補機インバータのスイッチング制御を停止することを特徴とする請求項3に記載の車両の電源システム。
【請求項6】
回転電機と、
主電源が接続された主電力回路と、
前記主電力回路と前記回転電機との間で電力を変換する主インバータと、
前記主電力回路に設けられたコンデンサと、
放電開始条件が成立した場合に、前記主インバータを操作することによって前記コンデンサの電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御装置と、を備える車両の電源システムであって、
前記主電源よりも電圧が低い低電圧電源と、
前記主電力回路における電力を消費することによって作動する車両補機と、
前記低電圧電源と前記放電制御装置とを接続する第1電力線と、
前記車両補機と前記放電制御装置とを接続する第2電力線と、を備えることを特徴とする車両の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電源システムに関する。より詳しくは、主電源と回転電機とを接続する主電力回路に接続されたコンデンサの電荷を、所定の放電開始条件が成立した場合に放電させる放電機能を備える車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両は、電源システムを搭載しており、この電源システムから供給される電力を用いてモータを駆動することによって走行する。電源システムは、高電圧バッテリと、この高電圧バッテリの出力電圧を変換するDCDCコンバータと、DCDCコンバータの直流出力を交流に変換し、モータに供給するインバータと、を備える。またこれらDCDCコンバータやインバータ等によって構成される主回路には、複数の大容量の平滑コンデンサが設けられる。
【0003】
車両の走行中は、電源システムの直流電力を安定化させるため、上記複数の平滑コンデンサには電荷を蓄積しておく必要があるが、例えば車両が衝突した場合には、これら平滑コンデンサに蓄積されている電荷は速やかに放電することが求められている。そこで多くの車両では、衝突時には平滑コンデンサに蓄積されている電荷を何らかの負荷に放電させ、主回路の電圧を速やかに低下させる放電制御が実行される(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-107873号公報
【特許文献2】国際公開第2010/131340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような放電制御は、高電圧バッテリよりも低電圧の補機バッテリから供給される電力によって作動する制御装置を主体として実行されるが、衝突時には衝撃によって制御装置と補機バッテリとの接続が遮断される場合がある。このため特許文献1,2に示された車両には、補機バッテリと制御装置との接続が遮断された場合であっても放電制御を実行できるよう、主回路の電力を降圧して制御装置に供給するバックアップ電源が設けられている。
【0006】
しかしながら従来のバックアップ電源は、衝突時に備えて通常走行中も待機状態で稼働させる必要があるため、車両のエネルギ効率を悪化させる要因となっている。またバックアップ電源を搭載すると、その分だけコスト、サイズ、及び重量も悪化してしまう。
【0007】
本発明は、エネルギ効率やコスト等を悪化させることなくバックアップ電源機能を発揮できる車両の電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る車両(例えば、後述の車両V)の電源システム(例えば、後述の電源システム1)は、回転電機(例えば、後述のフロント駆動モータMf)と、主電源(例えば、後述の高電圧バッテリ21)が接続された主電力回路(例えば、後述の高電圧回路2)と、前記主電力回路と前記回転電機との間で電力を変換する主インバータ(例えば、後述の第1インバータ23)と、前記主電力回路に設けられたコンデンサ(例えば、後述の1次側コンデンサ11、2次側コンデンサ12)と、放電開始条件が成立した場合に、前記主インバータを操作することによって前記コンデンサの電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御装置(例えば、後述のシステムECU8)と、前記主電力回路における電力を消費することによって作動する車両補機(例えば、後述の電動エアコンプレッサユニット46)と、前記車両補機と前記放電制御装置とを接続する電力線(例えば、後述の補機電力線47)と、を備え、前記電力線は、平面視では柱状の金属構造体(例えば、後述のエンジンE、トランスミッションケースTM)と重なる領域(例えば、後述の衝突保護領域2a)に配置されていることを特徴とする。
【0009】
(2)この場合、前記放電制御装置は、前記主電源よりも電圧が低い低電圧電源(例えば、後述の低電圧バッテリ31)と電気的に接続されていることが好ましい。
【0010】
(3)この場合、前記車両補機は、補機インバータを含む電気負荷(例えば、後述の電動コンプレッサ461、コンプレッサインバータ462)と、前記補機インバータをスイッチング制御する補機制御装置(例えば、後述のコンプレッサ制御装置463)と、前記主電力回路における電力を前記補機制御装置に供給する補機電源(例えば、後述のコンプレッサ電源464)と、を備え、前記電力線は、前記補機電源と前記放電制御装置とを接続し、前記補機制御装置は、前記放電制御装置によって前記放電制御を実行する場合、前記補機インバータのスイッチング制御を停止することが好ましい。
【0011】
(4)この場合、前記放電制御装置は、前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧(例えば、後述の1次側電圧V1)が第1電圧閾値(例えば、後述の第1PCU電圧閾値V1uv_pcu)未満になったことに応じて前記主インバータのスイッチング制御を停止し、前記補機制御装置は、前記コンデンサ電圧が第2電圧閾値(例えば、後述のコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp)未満になったことに応じて前記補機インバータのスイッチング制御を停止し、前記放電制御装置は、前記補機制御装置が前記補機インバータのスイッチング制御を停止する前に前記主インバータのスイッチング制御を停止することが好ましい。
【0012】
(5)この場合、前記放電制御装置は、前記コンデンサの電圧であるコンデンサ電圧(例えば、後述の1次側電圧V1)が第1電圧閾値(例えば、後述の第1PCU電圧閾値V1uv_pcu)未満になったことに応じて前記主インバータのスイッチング制御を停止し、前記補機制御装置は、前記コンデンサ電圧が前記第1電圧閾値より低い第2電圧閾値(例えば、後述のコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp)未満になったことに応じて前記補機インバータのスイッチング制御を停止することが好ましい。
【0013】
(6)本発明に係る車両(例えば、後述の車両V)の電源システム(例えば、後述の電源システム1)は、回転電機(例えば、後述のフロント駆動モータMf)と、主電源(例えば、後述の高電圧バッテリ21)が接続された主電力回路(例えば、後述の高電圧回路2)と、前記主電力回路と前記回転電機との間で電力を変換する主インバータ(例えば、後述の第1インバータ23)と、前記主電力回路に設けられたコンデンサ(例えば、後述の1次側コンデンサ11、2次側コンデンサ12)と、放電開始条件が成立した場合に、前記主インバータを操作することによって前記コンデンサの電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御装置(例えば、後述のシステムECU8)と、前記主電源よりも電圧が低い低電圧電源(例えば、後述の低電圧バッテリ31)と、前記主電力回路における電力を消費することによって作動する車両補機(例えば、後述の電動エアコンプレッサユニット46)と、前記低電圧電源と前記放電制御装置とを接続する第1電力線(例えば、後述のシステム制御電力線32)と、前記車両補機と前記放電制御装置とを接続する第2電力線(例えば、後述の補機電力線47)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明に係る電源システムは、主電源が接続された主電力回路と、この主電力回路のコンデンサの電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御装置と、この主電力回路における電力を消費することによって作動する車両補機と、これら車両補機と放電制御装置とを接続する電力線と、を備える。よって本発明によれば、放電制御装置は、車両補機から電力線を介して供給される電力を消費することによって放電制御を実行することができる。また本発明では、主電力回路から車両補機を介して供給される電力を消費して放電制御を実行することができるので、上述のように放電制御専用のバックアップ電源を設けた場合と比較して、車両のコスト、サイズ、重量、及びエネルギ効率を何れも向上することができる。また本発明では、車両補機と放電制御装置とを接続する電力線を、平面視では柱状の金属構造体と重なる領域内に配置する。これにより、車両の衝突時、放電制御装置と車両補機とを接続する電力線は堅牢な金属構造体によって保護されるので、放電制御装置は、この電力線を介して供給される電力で放電制御を実行することができる。
【0015】
(2)本発明に係る電源システムにおいて、放電制御装置は、主電源よりも電圧が低い低電圧電源と電気的に接続されている。本発明によれば、通常時、すなわち車両が衝突する前であり低電圧電源と放電制御装置との導通が確保されている間は、低電圧電源から供給される電力で放電制御装置を作動させることができる。また衝突により低電圧電源と放電制御装置との導通が断たれた場合には、放電制御装置は、車両補機から電力線を介して供給される電力で放電制御を実行することができる。これにより、通常時における車両補機の負荷を軽減することができる。
【0016】
(3)本発明に係る電源システムにおいて、車両補機の補機制御装置は、放電制御装置によって放電制御を実行する場合、補機インバータのスイッチング制御を停止する。これにより、放電制御を実行する際には、車両補機の補機電源から補機制御装置への出力を減らすことができるので、放電制御装置において放電制御を実行するために必要な電力を補機電源で確保することができる。
【0017】
(4)本発明に係る電源システムにおいて、放電制御装置及び補機制御装置は、それぞれコンデンサ電圧が所定の閾値未満になったことに応じてスイッチング制御を停止する。また放電制御装置は、補機制御装置が補機インバータのスイッチング制御を停止する前に主インバータのスイッチング制御を停止する。これにより、補機電源から主インバータのスイッチング制御及び補機インバータのスイッチング制御の両方を実行するために必要な電力が出力されてしまい、補機電源が過負荷になってしまうのを防止することができる。
【0018】
(5)本発明に係る電源システムにおいて、放電制御装置は、コンデンサ電圧が第1電圧閾値未満になったことに応じて主インバータのスイッチング制御を停止し、補機制御装置は、コンデンサ電圧が第1電圧閾値より低い第2電圧閾値未満になったことに応じて補機インバータのスイッチング制御を停止する。これにより、放電制御装置は、補機制御装置が補機インバータのスイッチング制御を停止する前に主インバータのスイッチング制御を停止できるので、上述のように補機電源が過負荷になってしまうのを防止することができる。
【0019】
(6)本発明に係る電源システムは、主電源が接続された主電力回路と、この主電力回路のコンデンサの電荷を放電させる放電制御を実行する放電制御装置と、この主電力回路における電力を消費することによって作動する車両補機と、主電源よりも電圧が低い低電圧電源と、低電圧電源と放電制御装置とを接続する第1電力線と、車両補機と放電制御装置とを接続する第2電力線と、を備える。よって本発明によれば、車両の衝突によって第1電力線による低電圧電源と放電制御装置との導通が断たれた場合であっても、放電制御装置は、車両補機から第2電力線を介して供給される電力を消費することによって放電制御を実行することができる。また本発明では、主電力回路から車両補機を介して供給される電力を消費して放電制御を実行することができるので、放電制御専用のバックアップ電源を設けた場合と比較して、車両のコスト、サイズ、重量、及びエネルギ効率を何れも向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明の一実施形態に係る電源システムを搭載する電動車両の構成を示す図である。
図1B】高電圧DCDCコンバータの回路構成の一例を示す図である。
図1C】1次側負荷回路の回路構成の一例を示す図である。
図2A】車両の前方側のエンジンルームを鉛直方向上方側から視た平面図である。
図2B】エンジンルームを進行方向前方側から視た正面図である。
図3】グランド線の他の配置例を示す図である。
図4】システムECUによる急速放電処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図5】コンプレッサ制御装置による電源確保処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図6】急速放電処理及び電源確保処理によって実現される1次側電圧等の時間変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1Aは、本実施形態に係る電源システム1を搭載する電動車両V(以下、単に「車両」という)の構成を示す図である。なお本実施形態では、車両Vとして、エンジンEとフロント駆動モータMfと発電機Gとを備える所謂ハイブリッド車両を例に説明するが、本発明はこれに限るものではない。本発明に係る電源システムは、ハイブリッド車両に限らず、電気自動車や燃料電池自動車等、バッテリに蓄電された電力を用いて走行する車両であれば、どのような車両にも適用可能である。
【0022】
車両Vは、電源システム1と、エンジンEと、回転電機としてのフロント駆動モータMfと、発電機Gと、前輪Wfと、を備える。フロント駆動モータMfは、主として車両Vが走行するための動力を発生する。フロント駆動モータMfの出力軸は、図示しない動力伝達機構を介して前輪Wfに連結されている。電源システム1からフロント駆動モータMfに電力を供給することにより、フロント駆動モータMfで発生させたトルクは、図示しない動力伝達機構を介して前輪Wfに伝達され、前輪Wfを回転させ、車両Vを走行させる。またフロント駆動モータMfは、車両Vの減速回生時には発電機として作用する。フロント駆動モータMfによって発電された電力は、電源システム1が備える後述の高電圧バッテリ21に充電される。
【0023】
またフロント駆動モータMfの出力軸には、出力軸の回転角度を検出するための第1レゾルバR1が取り付けられている。第1レゾルバR1は、電源システム1のシステムECU8から交流電力が供給されると励磁し、フロント駆動モータMfの出力軸の回転角度に応じた信号をシステムECU8に送信する。
【0024】
エンジンEの出力軸であるクランクシャフトは、図示しない動力伝達機構を介して発電機Gに接続されている。発電機Gは、エンジンEの動力によって駆動され、電力を発生する。発電機Gによって発電された電力は、高電圧バッテリ21に充電される。なおエンジンEは、図示しない動力伝達機構を介して前輪Wfに接続されており、エンジンEの動力を用いて前輪Wfを駆動させることも可能となっている。
【0025】
また発電機Gの出力軸には、出力軸の回転角度を検出するための第2レゾルバR2が取り付けられている。第2レゾルバR2は、電源システム1のシステムECU8から交流電力が供給されると励磁し、発電機Gの出力軸の回転角度に応じた信号をシステムECU8に送信する。
【0026】
電源システム1は、高電圧バッテリ21とフロント駆動モータMf及び発電機Gとを接続し、高電圧バッテリ21とフロント駆動モータMf及び発電機Gとの間で電力の授受を行う主電力回路としての高電圧回路2と、低電圧バッテリ31が設けられた低電圧回路3と、フロント駆動モータMf、発電機G、高電圧回路2、及び低電圧回路3等を制御するシステムECU8と、を備える。
【0027】
高電圧回路2は、主電源としての高電圧バッテリ21と、高電圧DCDCコンバータ22と、高電圧バッテリ21の正負両極と高電圧DCDCコンバータ22の低圧側の正負両極端子とを接続する1次側電力線26p,26nと、主インバータとしての第1インバータ23と、第2インバータ24と、高電圧DCDCコンバータ22の高圧側の正負両極端子と各インバータ23,24の直流入出力側とを接続する2次側電力線27p,27nと、1次側電力線26p,26nに接続された低電圧DCDCコンバータ25と、1次側電力線26p,26nに接続された1次側コンデンサ11と、2次側電力線27p,27nに接続された2次側コンデンサ12と、1次側電力線26p,26nに接続された1次側負荷回路4と、を備える。なお図1Aには、1次側電力線26p,26nにおいて互いに並列に接続されている複数のコンデンサをまとめたものを1次側コンデンサ11として図示し、2次側電力線27p,27nにおいて互いに並列に接続されている複数のコンデンサをまとめたものを2次側コンデンサ12として図示する。また以下では、1次側コンデンサ11の静電容量をC1とし、2次側コンデンサ12の静電容量をC2とする。また図1Aには、1次側負荷回路4の負荷電力線40p,40nに接続される複数の車両補機のうち、電動エアコンプレッサユニット46のみを図示する。1次側負荷回路4の詳細な構成は、後述の図1Cに示す。
【0028】
高電圧バッテリ21は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電と、及び電気エネルギを化学エネルギに変換する充電との両方が可能な二次電池である。以下では、この高電圧バッテリ21として、電極間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う所謂リチウムイオン蓄電池を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
【0029】
1次側電力線26p,26nには、それぞれ正極コンタクタ28p及び負極コンタクタ28nが設けられている。これらコンタクタ28p,28nは、外部からの指令信号が入力されていない状態では開成して高電圧バッテリ21の両電極と1次側電力線26p,26nとの導通を絶ち、指令信号が入力されている状態では閉成して高電圧バッテリ21と1次側電力線26p,26nとを接続するノーマルオープン型である。これらコンタクタ28p,28nは、後述のバッテリECU36から送信される指令信号に応じ、低電圧バッテリ31から供給される電力を用いて開閉する。なお正極コンタクタ28pは、高電圧回路2に設けられる複数のコンデンサ11,12への突入電流を緩和するためのプリチャージ抵抗を有するプリチャージコンタクタとなっている。
【0030】
図1Bは、高電圧DCDCコンバータ22の回路構成の一例を示す図である。高電圧DCDCコンバータ22は、1次側電力線26p,26nと2次側電力線27p,27nとの間に設けられ、これら1次側電力線26p,26n及び2次側電力線27p,27nの間で電圧を変換する。高電圧DCDCコンバータ22の低圧側正極端子221及び低圧側負極端子222は、それぞれ1次側コンデンサ11の両端に接続される。高電圧DCDCコンバータ22の高圧側正極端子223及び高圧側負極端子224は、それぞれ2次側コンデンサ12の両端に接続される。
【0031】
高電圧DCDCコンバータ22は、リアクトルLと、ハイアーム素子225Hと、ローアーム素子225Lと、負母線227と、を組み合わせて構成される双方向DCDCコンバータである。
【0032】
負母線227は、低圧側負極端子222と高圧側負極端子224とを接続する配線である。リアクトルLは、その一端側が低圧側正極端子221に接続され、その他端側がハイアーム素子225Hとローアーム素子225Lとの接続ノード228に接続される。
【0033】
ハイアーム素子225Hは、IGBTやMOSFET等の既知のパワースイッチング素子と、このパワースイッチング素子に並列に接続されたダイオードと、を備える。ローアーム素子225Lは、IGBTやMOSFET等の既知のパワースイッチング素子と、このパワースイッチング素子に並列に接続されたダイオードと、を備える。これらハイアーム素子225H、及びローアーム素子225Lは、高圧側正極端子223と負極母線227との間で、直列に、この順で接続される。
【0034】
ハイアーム素子225Hのパワースイッチング素子のコレクタは高圧側正極端子223に接続され、そのエミッタはローアーム素子225Lのコレクタに接続される。ローアーム素子225Lのパワースイッチング素子のエミッタは、負母線227に接続される。ハイアーム素子225Hに設けられるダイオードの順方向は、リアクトルLから高圧側正極端子223へ向かう向きである。またローアーム素子225Lに設けられるダイオードの順方向は、負母線227からリアクトルLへ向かう向きである。
【0035】
これらハイアーム素子225H及びローアーム素子225Lは、それぞれシステムECU8が備えるゲートドライブ回路(図示せず)によって生成されるゲート駆動信号によってオン又はオフにされる。
【0036】
高電圧DCDCコンバータ22は、システムECU8のゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って上記素子225H,225Lをオン/オフ駆動することにより、昇圧機能と降圧機能を発揮する。昇圧機能とは、低圧側の端子221,222に印加される電圧を昇圧して高圧側の端子223,224に出力する機能をいい、これにより1次側電力線26p,26nから2次側電力線27p,27nへ電流が流れる。また降圧機能とは、高圧側の端子223,224に印加される電圧を降圧して低圧側の端子221,222に出力する機能をいい、これにより2次側電力線27p,27nから1次側電力線26p,26nへ電流が流れる。なお以下では、1次側電力線26p,26nの間の電位差、より具体的には1次側コンデンサ11の両端の電圧を1次側電圧V1という。また2次側電力線27p,27nの間の電位差、より具体的には2次側コンデンサ12の両端の電圧を2次側電圧V2という。
【0037】
図1Aに戻り、第1インバータ23及び第2インバータ24は、例えば、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT)をブリッジ接続して構成されるブリッジ回路を備えた、パルス幅変調によるPWMインバータであり、直流電力と交流電力とを変換する機能を備える。第1インバータ23は、その直流入出力側において2次側電力線27p,27nに接続され、交流入出力側においてフロント駆動モータMfのU相、V相、W相の各コイルに接続されており、これら2次側電力線27p,27nとフロント駆動モータMfとの間で電力を変換する。第2インバータ24は、その直流入出力側において2次側電力線27p,27nに接続され、交流入出力側において発電機GのU相、V相、W相の各コイルに接続されており、これら2次側電力線27p,27nと発電機Gとの間で電力を変換する。
【0038】
第1インバータ23は、フロント駆動モータMfのU相に接続されたハイ側U相スイッチング素子及びロー側U相スイッチング素子と、フロント駆動モータMfのV相に接続されたハイ側V相スイッチング素子及びロー側V相スイッチング素子と、フロント駆動モータMfのW相に接続されたハイ側W相スイッチング素子及びロー側W相スイッチング素子と、を相毎にブリッジ接続して構成される。
【0039】
第1インバータ23は、システムECU8のゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って上記各相のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、高電圧DCDCコンバータ22から供給される直流電力を交流電力に変換してフロント駆動モータMfに供給したり、フロント駆動モータMfから供給される交流電力を直流電力に変換して高電圧DCDCコンバータ22に供給したりする。
【0040】
第2インバータ24は、発電機GのU相に接続されたハイ側U相スイッチング素子及びロー側U相スイッチング素子と、発電機GのV相に接続されたハイ側V相スイッチング素子及びロー側V相スイッチング素子と、発電機GのW相に接続されたハイ側W相スイッチング素子及びロー側W相スイッチング素子と、を相毎にブリッジ接続して構成される。
【0041】
第2インバータ24は、システムECU8のゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って上記各相のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、高電圧DCDCコンバータ22から供給される直流電力を交流電力に変換して発電機Gに供給したり、発電機Gから供給される交流電力を直流電力に変換して高電圧DCDCコンバータ22に供給したりする。
【0042】
低電圧DCDCコンバータ25は、1次側電力線26p,26nに対し、高電圧DCDCコンバータ22と並列に接続されている。制御回路25dは、バックアップ電源5から供給される電力を用いることによって低電圧DCDCコンバータ25のスイッチング素子をオン/オフ駆動することによって、1次側電力線26p,26n間の電圧V1を降圧し、低電圧バッテリ31に供給し、低電圧バッテリ31を充電する。
【0043】
低電圧回路3は、低電圧バッテリ31と、システム制御電力線32と、衝突検知部35と、バッテリECU36と、OR回路37と、を備える。
【0044】
低電圧バッテリ31は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電と、及び電気エネルギを化学エネルギに変換する充電との両方が可能な二次電池である。本実施形態では、低電圧バッテリ31として、電極に鉛を用いた鉛バッテリを用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。また以下では、低電圧バッテリ31として、その出力電圧は高電圧バッテリ21の出力電圧よりも低いものを用いた場合について説明する。
【0045】
システム制御電力線32は、低電圧バッテリ31とシステムECU8とを接続し、低電圧バッテリ31からシステムECU8へ電力を供給する給電線である。図1Aに示すように、システム制御電力線32は、OR回路37を介してシステムECU8に接続されている。なお以下では、システム制御電力線32の電圧、すなわち低電圧バッテリ31の出力電圧をVigと表記する。なおこの低電圧バッテリ31の出力電圧Vigは、システムECU8によって常時監視されている。
【0046】
衝突検知部35は、加速度センサ(図示せず)の検出信号を用いることによって、車両Vが衝突又は横転したか否かを判定し、衝突又は横転したと判定した場合には、バッテリECU36へ衝突検知信号を送信する。衝突検知部35は、低電圧バッテリ31から供給される電力を用いて作動する。
【0047】
バッテリECU36は、コンタクタ28p,28nのオン/オフや高電圧バッテリ21及び低電圧バッテリ31の状態の監視等に関する制御を担うマイクロコンピュータである。バッテリECU36は、低電圧バッテリ31から供給される電力を用いて作動する。
【0048】
バッテリECU36は、図示しないバッテリセンサユニットを備える。このバッテリセンサユニットは、高電圧バッテリ21の電圧、電流、及び温度など、高電圧バッテリ21の内部状態を推定するために必要な複数のセンサによって構成される。バッテリECU36は、このバッテリセンサユニットによる検出信号を用いることによって高電圧バッテリ21の内部状態(例えば、バッテリ温度や充電状態等)を推定する。
【0049】
バッテリECU36は、運転者によってスタートスイッチがオンにされると、低電圧バッテリ31から供給される電力の下で起動し、高電圧回路2に設けられている複数のコンデンサ11,12のプリチャージを開始する。より具体的には、バッテリECU36は、コンタクタ28p,28nをオンにし、高電圧バッテリ21を1次側電力線26p,26nに接続することによってコンデンサ11,12のプリチャージを行う。なおバッテリECU36は、コンデンサ11,12のプリチャージを行う際には、負極コンタクタ28nをオンにするとともに、正極コンタクタ28pのうちプリチャージ抵抗を有するコンタクタをオンにする。またバッテリECU36は、コンデンサ11,12のプリチャージが完了した後、正極コンタクタ28pのうちプリチャージ抵抗を有さないコンタクタをオンにする。これにより、プリチャージの実行時におけるコンデンサ11,12への突入電流を緩和することができる。
【0050】
バッテリECU36は、以上のようにしてコンタクタ28p,28nをオンにした後、運転者によって電源システム1を停止するためにスタートスイッチがオフにされた場合、又は衝突検知部35から衝突検知信号を受信した場合には、コンタクタ28p,28nをオフにし、高電圧バッテリ21を1次側電力線26p,26nから切り離す。
【0051】
またこのバッテリECU36は、システムECU8とCANバス(図示せず)を介してCAN通信を行うことが可能となっている。そこでバッテリECU36は、バッテリセンサユニットを用いることで推定した高電圧バッテリ21の内部状態に関する情報を、CAN通信を介してシステムECU8及び後述のコンプレッサ制御装置463へ送信する。またバッテリECU36は、衝突検知部35から衝突検知信号を受信した場合には、上記のようにコンタクタ28p、28nをオフにするとともに、CAN通信を介して放電指令信号をシステムECU8及びコンプレッサ制御装置463へ送信する。放電指令信号とは、後述の急速放電処理(図4参照)の実行を指令する信号である。
【0052】
図1Cは、1次側負荷回路4の回路構成の一例を示す図である。
1次側負荷回路4は、1次側電力線26p,26nと接続された負荷電力線40p,40nと、これら負荷電力線40p,40nに接続されたリア駆動モータMr、第3インバータ41、平滑コンデンサ42、双方向充電器ユニット43、電気ヒータユニット44、及び電動エアコンプレッサユニット46等を備える。図1Cに示すように、負荷電力線40p,40nは1次側電力線26p,26nに接続されているため、負荷電力線40p,40nの間の電位差、より具体的には平滑コンデンサ42の両端の電圧は、1次側電圧V1と等しい。また負荷電力線40p,40nに接続されたリア駆動モータMr、第3インバータ41、双方向充電器ユニット43、電気ヒータユニット44、及び電動エアコンプレッサユニット46等の車両補機は、1次側電力線26p,26nにおける電力を消費することによって作動する。
【0053】
リア駆動モータMrの出力軸は、図示しない動力伝達機構を介して後輪Wrに連結されている。
【0054】
第3インバータ41は、上述のインバータ23,24と同様に、例えば、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT)をブリッジ接続して構成されるブリッジ回路を備えた、パルス幅変調によるPWMインバータであり、直流電力と交流電力とを変換する機能を備える。第3インバータ41は、その直流入出力側において負荷電力線40p,40nに接続され、交流入出力側においてリア駆動モータMrのU相、V相、W相の各コイルに接続されており、これら負荷電力線40p,40nとリア駆動モータMrとの間で電力を変換する。第3インバータ41は、システムECU8のゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って各相のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、1次側電力線26p,26nにおける直流電力を交流電力に変換してリア駆動モータMrに供給したり、リア駆動モータMrから供給される交流電力を直流電力に変換して1次側電力線26p,26nに供給したりする。
【0055】
双方向充電器ユニット43は、図示しない給電ケーブルを介して外部の電力供給源から供給される交流電力を直流電力に変換し高電圧バッテリ21を充電する外部充電と、高電圧バッテリ21から供給される直流電力を交流電力に変換し図示しない給電ケーブルを介して接続された電気機器に給電する外部給電と、を実行可能なインバータを備える。
【0056】
電気ヒータユニット44は、1次側電力線26p,26nにおける電力を消費して発熱し、所定の加熱対象(例えば、高電圧バッテリ21)を加温する。
【0057】
電動エアコンプレッサユニット46は、1次側電力線26p,26nにおける電力を消費して図示しない車室内の温度を調節する。
【0058】
図1Aに戻り、電動エアコンプレッサユニット46の詳細な構成について説明する。
電動エアコンプレッサユニット46は、電動コンプレッサ461と、負荷電力線40p,40nにおける直流電力を交流電力に変換し電動コンプレッサ461に供給するコンプレッサインバータ462と、コンプレッサインバータ462をスイッチング制御するコンプレッサ制御装置463と、負荷電力線40p,40nにおける電力を降圧し、補機電力線47へ出力するコンプレッサ電源464と、を備える。
【0059】
コンプレッサ制御装置463は、補機電力線47に接続されている。コンプレッサ制御装置463は、コンプレッサ電源464から補機電力線47に供給される電力を消費することによってコンプレッサインバータ462をスイッチング制御する。
【0060】
補機電力線47は、コンプレッサ電源464と、コンプレッサ制御装置463及びシステムECU8とを接続し、コンプレッサ電源464からコンプレッサ制御装置463及びシステムECU8へ電力を供給する給電線である。補機電力線47は、正極電力線47pと、グランド線47nと、を備える。正極電力線47pは、OR回路37を介してシステムECU8に接続されている。またグランド線47nは、OR回路37を介さずにシステムECU8に接続されている。
【0061】
コンプレッサ電源464は、例えば絶縁型のDCDCコンバータであり、負荷電力線40p,40nにおける電力を降圧し、補機電力線47へ出力する。なお以下では、補機電力線47の電圧、すなわちコンプレッサ電源464の出力電圧をVccと表記する。
【0062】
OR回路37は、一端側がシステムECU8に接続され、他端側が低電圧回路3のシステム制御電力線32及び電動エアコンプレッサユニット46の正極電力線47pに接続された電力線371と、システム制御電力線32に設けられた第1ダイオード372と、正極電力線47pに設けられた第2ダイオード373と、を備える。
【0063】
第1ダイオード372の順方向は、低電圧バッテリ31からシステムECU8へ向かう向きであり、低電圧バッテリ31からシステムECU8への電流を許容する。第2ダイオード373の順方向は、コンプレッサ電源464からシステムECU8へ向かう向きであり、コンプレッサ電源464からシステムECU8への電流を許容する。
【0064】
ここでコンプレッサ電源464の出力電圧Vccの設定について説明する。図1Aに示すように、車両Vの走行制御を担うシステムECU8には、電力供給源である低電圧バッテリ31及びコンプレッサ電源464がそれぞれOR回路37のダイオード372,373を介して接続されている。このためシステムECU8には、これら2つの電力供給源のうちより高電位である方から選択的に電力を供給することが可能となっている。本実施形態では、低電圧バッテリ31をシステムECU8に対する主電源とし、コンプレッサ電源464を低電圧バッテリ31に不具合が生じ(より具体的には、車両Vが衝突することにより、低電圧バッテリ31とシステムECU8との接続が消失した場合や、低電圧バッテリ31が正常でない状態になった場合等)、低電圧バッテリ31からシステムECU8への電力の供給ができなくなった場合におけるシステムECU8のバックアップ電源として用いるようにするため、コンプレッサ電源464の出力電圧Vccは、システムECU8の動作電圧範囲内でありかつ低電圧バッテリ31が正常である状態における出力電圧Vigより低くなるように設定される。ここで低電圧バッテリ31が正常でない状態とは、例えば低電圧バッテリ31の劣化が過度に進行することにより、その出力電圧が新品時よりも大きく低下した状態をいう。
【0065】
図2Aは、車両Vの前方側のエンジンルームERを鉛直方向上方側から視た平面図であり、図2Bは、エンジンルームERを進行方向前方側から視た正面図である。
【0066】
エンジンルームER内には、柱状の金属構造体であるエンジンEと、柱状の金属構造体であるトランスミッションケースTMとが車幅方向に沿って並べて配置されている。このトランスミッションケースTMは、金属製であり、その内部には、フロント駆動モータMf、発電機G、及びトランスミッション等が収められている。
【0067】
低電圧バッテリ31は、作業者によるメンテナンス性を考慮して、エンジンルームER内のうちトランスミッションケースTMの外側に設けられている。
【0068】
上述のようにエンジンE及びトランスミッションケースTMは、何れも柱状の金属構造体であるため、車両Vの衝突時における変形が少ない。このため、エンジンルームER内のうち、平面視においてエンジンE及びトランスミッションケースTMと重なる領域、すなわち図2Aにおいて破線2aで囲まれた領域は、車両Vの衝突時にこれらエンジンE及びトランスミッションケースTMによって衝撃から保護される衝突保護領域となっている。
【0069】
トランスミッションケースTMの上方側、すなわち衝突保護領域2a内には、システムECU8、インバータ23,24、高電圧DCDCコンバータ22等の電気機器を収容するPCUケース29が設けられている。
【0070】
またエンジンEの近傍、より具体的には、エンジンEの進行方向前方側かつエンジンEの鉛直方向下方側には、電動エアコンプレッサユニット46が設けられている。また図2Aに示すように、電動エアコンプレッサユニット46のコンプレッサ電源464とシステムECU8とを接続する正極電力線47p及びグランド線47nは、平面視ではエンジンE及びトランスミッションケースTMと重なる領域内に配置されている。すなわち、これら正極電力線47p及びグランド線47nは、何れも衝突保護領域2a内に配置されている。このためこれら正極電力線47p及びグランド線47nは、車両Vの衝突時、エンジンE及びトランスミッションケースTMによって保護される。
【0071】
なお本実施形態では、コンプレッサ電源464とシステムECU8とを、正極電力線47p及びグランド線47nの両方で接続した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
【0072】
上述のように金属構造体であるエンジンEをグランドとして利用する場合、図3に示すようにコンプレッサ電源464とシステムECU8とを正極電力線47pで接続し、グランド線47nはエンジンEに固定してもよい。
【0073】
図1Aに戻り、システムECU8は、車両Vの走行制御や後述の急速放電処理を実行するマイクロコンピュータや、このマイクロコンピュータから送信される指令信号に応じて高電圧DCDCコンバータ22、第1インバータ23、第2インバータ24、及び第3インバータ41等のスイッチング素子をオン/オフ駆動する複数のゲートドライブ回路等によって構成される。ここで急速放電処理とは、車両Vの衝突時に、高電圧となっている高電圧回路2のコンデンサ11,12及び1次側負荷回路4のコンデンサ42に蓄えられている電荷を放電させ、1次側電圧V1及び2次側電圧V2を所定電圧まで低下させる一連の処理をいう。
【0074】
システムECU8を構成するメインマイコンやゲートドライブ回路等は、低電圧バッテリ31又はコンプレッサ電源464から供給される電力を用いて車両Vの走行制御や急速放電処理を実行する。システムECU8は、運転者によって電源システム1を始動するためにスタートスイッチ(図示せず)がオンにされると、低電圧バッテリ31から供給される電力の下で起動し、その後は低電圧バッテリ31又はコンプレッサ電源464から供給される電力を用いて走行制御や急速放電制御を実行する。
【0075】
また高電圧回路2には、高電圧回路2の電圧を検出する1次側電圧センサ93及び2次側電圧センサ94が設けられている。1次側電圧センサ93は、1次側電圧V1を検出し、検出値に応じた信号をシステムECU8及びコンプレッサ制御装置463へ送信する。2次側電圧センサ94は、2次側電圧V2を検出し、検出値に応じた信号をシステムECU8へ送信する。
【0076】
図4は、システムECU8による急速放電処理の具体的な手順を示すフローチャートである。この急速放電処理は、車両衝突時にコンデンサ11,12,42の電荷を放電させ、1次側電圧V1及び2次側電圧V2を所定電圧まで低下させる処理であり、システムECU8において所定の放電開始条件が成立したと判定されたことに応じて、所定の制御周期で繰り返し実行される。ここで放電開始条件とは、例えば、システムECU8がCAN通信を介してバッテリECU36から放電指令信号を受信することや、システムECU8においてCAN通信が途絶しかつ低電圧バッテリ31の出力電圧Vigが正常時の電圧よりも十分に低く設定された閾値以下まで低下したと判定したことなど、車両が衝突した場合に成立し得る条件によって構成される。
【0077】
始めにステップST1では、システムECU8は、放電開始条件が成立したことに応じて、コンプレッサ制御装置463に対し後述の電源確保処理の実行を指令し、ステップST2に移る。
【0078】
ステップST2では、システムECU8は、放電開始条件が初めて成立してから所定の放電制御準備時間が経過したか否かを判定する。システムECU8は、ステップST2の判定結果がYESである場合には、ステップST3に移り、放電制御を実行し、図4の処理を終了する。より具体的には、システムECU8は、第1インバータ23、第2インバータ24、及び高電圧DCDCコンバータ22を、それぞれ予め定められたスイッチング周波数fsw1_ads,fsw2_ads,fsw3_adsの下でスイッチング制御することにより、コンデンサ11,12,42の電荷を放電させる放電制御を実行する。これら放電制御の実行時におけるスイッチング周波数fsw1_ads,fsw2_ads,fsw3_adsは、それぞれ車両Vの走行中におけるスイッチング周波数fsw1_std,fsw2_std,fsw3_stdよりも低く設定される。
【0079】
ステップST2の判定結果がNOである場合、すなわち初めて放電開始条件が成立してから放電制御準備時間が経過する前である場合には、システムECU8は、ステップST4に移る。
【0080】
ステップST4では、システムECU8は、1次側電圧V1は所定の第1PCU電圧閾値V1uv_pcu未満であるか否かを判定する。ステップST4の判定結果がNOである場合、システムECU8は、ステップST5に移る。ステップST5では、システムECU8は、低電圧バッテリ31の出力電圧Vigは所定の第2PCU電圧閾値Viguv_pcu未満であるか否かを判定する。ステップST5の判定結果がNOである場合、すなわち1次側電圧V1が第1PCU電圧閾値V1uv_pcu以上でありかつ出力電圧Vigが第2PCU電圧閾値Viguv_pcu以上である場合、システムECU8は、図4に示す処理を終了する。
【0081】
ステップST4及びステップST5の判定結果の何れかがYESである場合、すなわち1次側電圧V1が第1PCU電圧閾値V1uv_pcu未満であるか又は出力電圧Vigが第2PCU電圧閾値Viguv_pcu未満である場合、システムECU8は、ステップST6に移る。ステップST6では、システムECU8は、第1インバータ23、第2インバータ24、及び高電圧DCDCコンバータ22のスイッチング制御を一時的(より具体的には、放電制御準備時間が経過するまでの間)に停止し、図4に示す処理を終了する。
【0082】
図5は、コンプレッサ制御装置463による電源確保処理の具体的な手順を示すフローチャートである。上述のようにコンプレッサ電源464は、低電圧バッテリ31に不具合が生じた場合にシステムECU8に電力を供給するバックアップ電源として機能する。この電源確保処理は、車両Vの衝突時にシステムECU8において適切に放電制御(図4のステップST3参照)を実行できるよう、コンプレッサ電源464においてシステムECU8に供給する電力を確保するための処理である。図5に示す処理は、放電開始条件が成立したことに応じて、より具体的には、システムECU8から電源確保処理の実行指令(図4のステップST1参照)を受信したことに応じて、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0083】
ステップST11では、コンプレッサ制御装置463は、1次側電圧V1は所定のコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp未満であるか否かを判定する。
【0084】
コンプレッサ制御装置463は、ステップST11の判定結果がNOである場合には、図5に示す処理を終了し、ステップST11の判定結果がYESである場合には、ステップST12に移る。ステップST12では、コンプレッサ制御装置463は、コンプレッサ電源464の負荷を軽減し、コンプレッサ電源464からシステムECU8へ供給可能な電力を確保するべく、コンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止し、図5に示す処理を終了する。
【0085】
以上のようにコンプレッサ制御装置463は、放電開始条件が成立した場合、すなわちシステムECU8が放電制御を実行する場合には、1次側電圧V1がコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp未満まで低下したことに応じて、コンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する。
【0086】
ここでコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecompは、例えば第1PCU電圧閾値V1uv_pcuよりやや低い値に設定される。これにより、システムECU8は、コンプレッサ制御装置463がコンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する前に第1インバータ23、第2インバータ24、及び高電圧DCDCコンバータ22等のスイッチング制御を停止することができる。
【0087】
図6は、以上のような急速放電処理及び電源確保処理によって実現される1次側電圧V1及び低電圧バッテリ31の出力電圧Vig等の車両衝突後の時間変化の一例を示すタイムチャートである。図6には、上段から下段に向かって順に、システムECU8における消費電力、コンプレッサ制御装置463における消費電力、1次側電圧V1、低電圧バッテリ31の出力電圧Vig、システムECU8によるスイッチング制御の状態、コンプレッサ制御装置463によるスイッチング制御の状態、及びコンプレッサ電源464の状態を示す。なお図6には、車両Vが衝突することにより、時刻t0において放電開始条件が成立し、その後時刻t4において放電制御準備時間(t4-t0)が経過したことに応じて、システムECU8が放電制御を開始した場合を示す。
【0088】
上述のようにバッテリECU36は、衝突検知信号を受信すると、コンタクタ28p,28nをオフにし、高電圧バッテリ21を1次側電力線26p,26nから切り離す。このため図6に示すように、1次側電圧V1は時刻t0以降、徐々に低下する。
【0089】
その後、時刻t1において、1次側電圧V1が第1PCU電圧閾値V1uv_pcu未満まで低下したことに応じて、システムECU8は、第1インバータ23、第2インバータ24、及び高電圧DCDCコンバータ22のスイッチング制御を停止する。このためシステムECU8における消費電力は、所定の制御電力分まで低下する。換言すれば、システムECU8における消費電力は、それまで所定のスイッチング周波数fsw1_std,fsw2_std,fsw3_stdの下で実行していたスイッチング制御にかかる分だけ低下する。以下では、システムECU8における消費電力のうち、スイッチング制御を停止することによって減少する分を通常スイッチング消費電力Psw_pcuという。なおシステムECU8は、低電圧バッテリ31の出力電圧Vigが第2PCU電圧閾値Viguv_pcu未満まで低下した場合も同様にスイッチング制御を停止する。
【0090】
その後、時刻t2において、1次側電圧V1がコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp未満まで低下したことに応じて、コンプレッサ制御装置463は、コンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する。このためコンプレッサ制御装置463における消費電力は、所定の制御電力分まで低下する。換言すれば、コンプレッサ制御装置463における消費電力は、それまで所定のスイッチング周波数の下で実行していたスイッチング制御にかかる分だけ低下する。以下では、コンプレッサ制御装置463における消費電力のうち、スイッチング制御を停止することによって減少する分をコンプレッサスイッチング消費電力Psw_ecompという。時刻t2以降では、コンプレッサ制御装置463におけるスイッチング制御を停止することにより、コンプレッサスイッチング消費電力Psw_ecompだけコンプレッサ電源464の余力を確保することができる。
【0091】
その後、時刻t3において、低電圧バッテリ31の出力電圧Vigがコンプレッサ電源464の出力電圧Vcc未満まで低下したことに応じて、システムECU8への電力供給源は、低電圧バッテリ31からコンプレッサ電源464に切り替わる。このためシステムECU8は、時刻t3以降も放電制御を実行することができる。
【0092】
その後、時刻t4では、システムECU8は、放電開始条件が成立してから放電制御準備時間が経過したことに応じて、放電制御の実行を開始する。この時刻t4以降における放電制御では、システムECU8は、上述のようにスイッチング周波数fsw1_std,fsw2_std,fsw3_stdよりも低く設定されたスイッチング周波数fsw1_ads,fsw2_ads,fsw3_adsの下で第1インバータ23、第2インバータ24、及び高電圧DCDCコンバータ22のスイッチング制御を実行することにより、コンデンサ11,12,42の電荷を放電させる。このため時刻t4以降における放電制御によってシステムECU8によって消費される電力である放電制御消費電力Psw_adsは、通常スイッチング消費電力Psw_pcuより少ない。また放電制御を実行する際におけるスイッチング周波数fsw1_ads,fsw2_ads,fsw3_adsは、放電制御消費電力Psw_adsがコンプレッサスイッチング消費電力Psw_ecomp以下になるように設定される。このためシステムECU8は、時刻t2においてコンプレッサ制御装置463のスイッチング制御を停止することによって確保したコンプレッサ電源464の余力を超えない範囲で放電制御を継続して実行することができる。
【0093】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)電源システム1は、高電圧バッテリ21が接続された高電圧回路2と、この高電圧回路2のコンデンサ11,12の電荷を放電させる放電制御を実行するシステムECU8と、この高電圧回路2における電力を消費することによって作動する電動エアコンプレッサユニット46と、これら電動エアコンプレッサユニット46とシステムECU8とを接続する補機電力線47と、を備える。よって電源システム1によれば、システムECU8は、電動エアコンプレッサユニット46から補機電力線47を介して供給される電力を消費することによって放電制御を実行することができる。また電源システム1では、高電圧回路2から電動エアコンプレッサユニット46を介して供給される電力を消費して放電制御を実行することができるので、放電制御専用のバックアップ電源を設けた場合と比較して、車両Vのコスト、サイズ、重量、及びエネルギ効率を何れも向上することができる。また電源システム1では、電動エアコンプレッサユニット46とシステムECU8とを接続する補機電力線47を、平面視では柱状の金属構造体であるエンジンE及びトランスミッションケースTMと重なる衝突保護領域2a内に配置する。これにより、車両の衝突時、システムECU8と電動エアコンプレッサユニット46とを接続する補機電力線47は堅牢なエンジンE及びトランスミッションケースTMによって保護されるので、システムECU8は、この補機電力線47を介して供給される電力で放電制御を実行することができる。
【0094】
(2)電源システム1において、システムECU8は、高電圧バッテリ21よりも電圧が低い低電圧バッテリ31と電気的に接続されている。電源システム1によれば、通常時、すなわち車両が衝突する前であり低電圧バッテリ31とシステムECU8との導通が確保されている間は、低電圧バッテリ31から供給される電力でシステムECU8を作動させることができる。また衝突により低電圧バッテリ31とシステムECU8との導通が断たれた場合には、システムECU8は、電動エアコンプレッサユニット46から補機電力線47を介して供給される電力で放電制御を実行することができる。これにより、通常時における電動エアコンプレッサユニット46のコンプレッサ電源464の負荷を軽減することができる。
【0095】
(3)電源システム1において、電動エアコンプレッサユニット46のコンプレッサ制御装置463は、システムECU8によって放電制御を実行する場合、コンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する。これにより、放電制御を実行する際には、電動エアコンプレッサユニット46のコンプレッサ電源464からコンプレッサ制御装置463への出力を減らすことができるので、システムECU8において放電制御を実行するために必要な電力をコンプレッサ電源464で確保することができる。
【0096】
(4)電源システム1において、システムECU8及びコンプレッサ制御装置463は、それぞれ1次側電圧V1が所定の閾値未満になったことに応じてスイッチング制御を停止する。またシステムECU8は、コンプレッサ制御装置463がコンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する前に第1インバータ23や第2インバータ24等のスイッチング制御を停止する。これにより、コンプレッサ電源464から第1インバータ23や第2インバータ24等のスイッチング制御及びコンプレッサインバータ462のスイッチング制御の両方を実行するために必要な電力が出力されてしまい、コンプレッサ電源464が過負荷になってしまうのを防止することができる。
【0097】
(5)電源システム1において、システムECU8は、1次側電圧V1が第1PCU電圧閾値V1uv_pcu未満になったことに応じて第1インバータ23等のスイッチング制御を停止し、コンプレッサ制御装置463は、1次側電圧V1が第1PCU電圧閾値V1uv_pcuより低いコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp未満になったことに応じてコンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する。これにより、システムECU8は、コンプレッサ制御装置463がコンプレッサインバータ462のスイッチング制御を停止する前に第1インバータ23等のスイッチング制御を停止できるので、上述のようにコンプレッサ電源464が過負荷になってしまうのを防止することができる。
【0098】
(6)電源システム1は、高電圧バッテリ21が接続された高電圧回路2と、この高電圧回路2のコンデンサ11,12の電荷を放電させる放電制御を実行するシステムECU8と、この高電圧回路2における電力を消費することによって作動する電動エアコンプレッサユニット46と、高電圧バッテリ21よりも電圧が低い低電圧バッテリ31と、低電圧バッテリ31とシステムECU8とを接続するシステム制御電力線32と、電動エアコンプレッサユニット46とシステムECU8とを接続する補機電力線47と、を備える。よって電源システム1によれば、車両Vの衝突によってシステム制御電力線32による低電圧バッテリ31とシステムECU8との導通が断たれた場合であっても、システムECU8は、電動エアコンプレッサユニット46から補機電力線47を介して供給される電力を消費することによって放電制御を実行することができる。また電源システム1では、高電圧回路2から電動エアコンプレッサユニット46を介して供給される電力を消費して放電制御を実行することができるので、放電制御専用のバックアップ電源を設けた場合と比較して、車両Vのコスト、サイズ、重量、及びエネルギ効率を何れも向上することができる。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【0100】
例えば上記実施形態では、コンプレッサ制御装置463は、システムECU8からの指令を受信したことに応じて図5に示す電源確保処理を実行したが、本発明はこれに限らない。例えばコンプレッサ制御装置463において放電開始条件の成否を判定するとともに、コンプレッサ制御装置463において放電開始条件が成立したと判定したことに応じて、図5に示す電源確保処理を実行してもよい。
【0101】
また上記実施形態では、コンプレッサ制御装置463がスイッチング制御を停止する前にスイッチングECU8がスイッチング制御を停止できるようにするため、コンプレッサ電圧閾値V1uv_ecompを第1PCU電圧閾値V1uv_pcuより低い値に設定したが、本発明はこれに限らない。コンプレッサ電圧閾値V1uv_ecompは第1PCU電圧閾値V1uv_pcuの近傍の値又は第1PCU電圧閾値V1uv_pcuと等しい値に設定してもよい。ただしこの場合、1次側電圧V1がコンプレッサ電圧閾値V1uv_ecomp未満となってからコンプレッサ制御装置463がスイッチング制御を停止するまでにかかる時間は、1次側電圧V1が第1PCU電圧閾値V1uv_pcu未満となってからシステムECU8がスイッチング制御を停止するまでにかかる時間よりも長くなるように設定する必要がある。
【0102】
また上記実施形態では、電動エアコンプレッサユニット46のコンプレッサ電源464をシステムECU8と補機電力線47によって接続し、コンプレッサ電源464をバックアップ電源として機能させた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。バックアップ電源として機能させる電源は、電動エアコンプレッサユニット46以外の車両補機、例えば、双方向充電器ユニット43や電気ヒータユニット44の電源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0103】
V…車両
Mf…フロント駆動モータ(回転電機)
Wf…前輪
1…電源システム
11…1次側コンデンサ(コンデンサ)
12…2次側コンデンサ(コンデンサ)
2…高電圧回路2(主電力回路)
21…高電圧バッテリ(主電源)
22…高電圧DCDCコンバータ
23…第1インバータ(主インバータ)
26p,26n…1次側電力線
27p,27n…2次側電力線
28p,28n…コンタクタ
3…低電圧回路
31…低電圧バッテリ(低電圧電源)
32…システム制御電力線32(第1電力線)
4…1次側負荷回路
40p,40n…負荷電力線
45…電動エアコンプレッサユニット(車両補機)
461…電動コンプレッサ(電気負荷)
462…コンプレッサインバータ(電気負荷、補機インバータ)
463…コンプレッサ制御装置(補機制御装置)
464…コンプレッサ電源(補機電源)
47…補機電力線(電力線、第2電力線)
47p…正極電力線(電力線、第2電力線)
47n…グランド線(電力線、第2電力線)
8…システムECU(放電制御装置)
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6