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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156020
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 25/08 20200101AFI20221006BHJP
   B62K 15/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B62J25/08
B62K15/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059510
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 理基
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BA02
(57)【要約】
【課題】保護部材や取っ手を最適な場所に備え、運転性を向上させる。
【解決手段】車両の側方に外方部材(72)を備え、前記外方部材(72)はハンドル(21)を転舵した際に可動する部材(30)よりも車幅方向外方に張り出すと共に、シート(17)より下方且つステップ(28)より上方且つ前記ハンドル(21)と前記シート(17)との間に配置される。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に外方部材(72)を備え、前記外方部材(72)はハンドル(21)を転舵した際に可動する部材(30)よりも車幅方向外方に張り出すと共に、シート(17)より下方且つステップ(28)より上方且つ前記ハンドル(21)と前記シート(17)との間に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ハンドル(21)が折り畳み可能であり、前記ハンドル(21)の折り畳み時に、前記外方部材(72)が車両の最外方に位置することを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記シート(17)が車両前後方向にスライド可能であり、前記シート(17)の最前方へのスライド時に、前記外方部材(72)が前記シート(17)の前端部よりも前方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記外方部材(72)は車両前後方向に延出し、上下幅が狭くなる幅狭部(70)を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記幅狭部(70)は車両中心を含む位置に設けられることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側部に保護部材を設けた鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1)。また、小型の鞍乗り型車両では、車体の移動などに用いる取っ手を車体に設けたものが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-72653号公報
【特許文献2】実登2542129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、保護部材や取っ手などの最適な配置場所は、種々に模索されており、未だ改善の余地があった。さらに、折畳みが可能な小型の鞍乗り型車両の場合、ハンドルと着座するライダーの位置とが比較的接近することから転舵時などにライダーが適切に運転できるようにする必要がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、保護部材や取っ手を最適な場所に備え、運転性を向上させた鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による鞍乗り型車両は、車両の側方に外方部材を備え、前記外方部材はハンドルを転舵した際に可動する部材よりも車幅方向外方に張り出すと共に、シートより下方且つステップより上方且つ前記ハンドルと前記シートとの間に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外方部材はハンドルを転舵した際に可動する部材よりも車幅方向外方に張り出すため、乗員が着座するシートとハンドルとが近い車両などにおいても、可動する部材との接触を防止でき、運転性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
図2】同車両の斜視図である。
図3】同車両のカバー類を外して示した側面図である。
図4】ハンドルの折り畳み手順を説明する図である。
図5】同説明する図である。
図6】鞍乗り型車両の電装系統を示す図である。
図7】乗員が足を載せるステップを示す斜視図である。
図8】同ステップの斜視図である。
図9】同ステップの斜視図である。
図10】接続部の断面図である。
図11】鞍乗り型車両に乗員が乗った状態を示す図である。
図12】グラブレールの拡大図である。
図13】鞍乗り型車両の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の各実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車両に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車両前方を示し、符号UPは車両上方を示し、符号LHは車両左方を示す。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図、図2は、同車両10の斜視図、図3は、同車両10のカバー類を外して示した側面図である。
鞍乗り型車両10は、図3に示すように、車体フレーム11と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17(図1参照)とを備える電動の車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、シートレール39に配置される。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に支持され、前輪モータ13aを備える。
乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。
スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に支持され、後輪モータ15aを備える。
【0013】
フロントフレーム19とリアフレーム20との間にクロスパイプ23が設けられる。クロスパイプ23は、前方に向けて斜め下に傾斜し、クロスパイプ23が一辺を構成する三角フレームの領域にコントローラ(制御部)24が配置される。クロスパイプ23が斜め下に傾斜するため、たわみ強度が向上する。
また、上記の領域にコントローラ24を配置したため、コントローラ24に走行風が当たり易くなり、冷却効果が高められる。クロスパイプ23の上方にはバッテリー25が配置される。
【0014】
鞍乗り型車両10は、図1図2に示すように、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。
鞍乗り型車両10の両側面は、サイドカバー29により覆われる。フロントフォーク14の上部は、フロントカバー30により覆われる。
サイドカバー29の上方には、グラブレール72が配置される。グラブレール72は、車両の左右側面に配置され、車体フレーム11に支持される。65は、ナンバープレート、67は、ディスプレイである。
【0015】
図4は、操舵用のハンドル21を示す。
操舵用のハンドル21は折り畳みが可能である。
ハンドル21は、T字状のハンドル軸60と、一対のバー部材61とを備える。ハンドル軸60の縦軸部60Aは、フロントフォーク14の上端部に、第1ロックナット62を介して固定される。ハンドル軸60の横軸部60Bは、一対の第2ロックナット63を介して一対のバー部材61に固定される。バー部材61にはグリップ64と、ブレーキレバー65とが配置される。
【0016】
ハンドル21の折り畳み手順を説明する。
第2ロックナット63を反時計方向に回し、外側にスライドさせることで、第2ロックナット63によるロックが外される。一対の第2ロックナット63によるロックが外されると、図5に示すように、節F1の部分を90°回転させて、折り畳みが可能である。図5では、第1ロックナット62、第2ロックナット63の図示を省略する。
【0017】
次いで、第1ロックナット62を左方向に回し、上側にスライドさせることで、第1ロックナット62によるロックが外される。そして、節F2の部分を矢印Aの方向に回転させて、ハンドル軸60の縦軸部60Aの折り畳みが可能とされる。折り畳まれたハンドル21は、図2において、シート17下の空間Kに格納される。なお、ハンドル21の組み立て手順は、折り畳み手順と逆の手順となる。
【0018】
図6は、鞍乗り型車両10の電装系統を示す図である。
コントローラ24には、シート17の位置を検出するシートセンサ31と、ハンドルセンサ32と、ブレーキセンサ33と、キー装置44とが接続される。
また、コントローラ24には、前輪モータ13aと、後輪モータ15aと、バッテリー25とが接続される。バッテリー25には、インバーター34が接続される。インバーター34には、灯体等の電装部品35と、充電用のコンセント36と、出力用のコンセント37とが接続される。
【0019】
充電用のコンセント36は、図2に示すように、車両の左側面で、スイングアーム16の上方に配置される。
コンセント36は蓋体73で覆われる。スイングアーム16の上辺部には、蓋体73との干渉を防止するため、窪み部74が設けられる。
出力用のコンセント37は、車両の右側面に配置される。コントローラ24の近傍に、充電用のコンセント36と、出力用のコンセント37とが配置されるため、配線を短くできる。
【0020】
ハンドルセンサ32は、図5に示す第2ロックナット63に内蔵される。第2ロックナット63が完全にロックされると、ハンドルセンサ32が検知し、車両が起動可能な状態となる。ただし、第2ロックナット63が緩んでいるとき、前輪モータ13aと後輪モータ15aの駆動を弱くしてもよい。
【0021】
図7は、乗員が足を載せるステップ28を示す図である。図8図9は、ステップ28の斜視図である。
本実施形態において、ステップ28は、図7に示すように、スタンドとして利用可能である。ステップ28は、車体フレーム11の下部に略水平に固定される固定部80と、固定部80に支持される可動部81とを備える。固定部80は、図8図9に示すように、上面視で略コの字状に形成される。
固定部80の両端には一対の支持部83、84を備える。また、可動部81は、一対の係合部93、94を備える。各係合部93、94は、車両の前後方向において、各支持部83、84の後ろ側に配置される。
【0022】
支持部83は、図10に示すように、外側が開口する凹部85を備える。 凹部85にはボルト部材86と、ワッシャー89と、コイルばね(弾性部材)87とが挿入される。ボルト部材86は、底部85Aの孔88を貫通し、可動部81の係合部93の壁部93Aに設けた雌ねじ孔93Bに螺合される。コイルばね87は、ワッシャー89と、底部85Aとの間に圧縮して介装される。
各支持部83、84および各係合部93、94は左右対称形状であるため、支持部84および係合部94の説明は省略する。
【0023】
図8に示すように、一方の支持部83と係合部93、および、他方の支持部84と係合部94は、接続部95において接続される。接続部95には、ラッチ構造96が配置される。このラッチ構造96は、可動部81を車両前後方向にスライドさせることで、接続部95を離脱可能に構成される。
接続部95を離脱させた状態で、可動部81を下方向に回動させることにより、可動部81は、図7に示すように、ステップS1からサイドスタンドS2に、サイドスタンドS2からメインスタンドS3に変化する。可動部81を、メインスタンドS3からサイドスタンドS2に、サイドスタンドS2からステップS1に戻す手順は、上記手順と逆の手順により行われる。
【0024】
図11は、鞍乗り型車両10に乗員が乗った状態を示す。
鞍乗り型車両10は、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、折り畳みが可能な操舵用のハンドル21と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17と、を備える小型電動車両である。乗員用のシート17は、車両前後方向にスライド可能である。
【0025】
図12は、グラブレール72の拡大図である。
グラブレール72は、サイドカバー29の上方において、鞍乗り型車両10の左右側面に配置される。グラブレール72の両端部は、ボルト71、71により、車体フレーム11に固定される。
グラブレール72は、車両前後方向に延出し、中央部分には、上下幅が狭くなる幅狭部70を備える。幅狭部70は、車体移動などに用いる取っ手となる。
幅狭部70は、車両中心を含む位置に設けられ、車両の重心近くにおいて幅狭部70を掴んで、車体移動が可能である。
【0026】
図13は、鞍乗り型車両10の上面図である。
グラブレール(外方部材)72は、図13に示すように、ハンドル21を転舵した際に可動するフロントカバー30の外面よりも車幅方向外方に張り出す。
また、グラブレール72は、シート17より下方、且つステップ28より上方、且つハンドル21とシート17との間に配置される。
図2に示すように、ハンドル21が折り畳まれ、且つ、図7に示すように、可動部81がメインスタンドS3とされるとき、車幅方向の最外方に張り出す部材は、フロントカバー(可動する部材)30である。
フロントカバー30は、ハンドル21を左右に転舵した際に破線示のように車幅方向外方に張り出すが、グラブレール72は、破線示したフロントカバー30の外面軌跡よりも車幅方向外方に張り出す。
【0027】
グラブレール72は、シート17が最も前方の位置にスライドしたとき、グラブレール72の前端部72Mは、シート17の前端部17Mよりも若干前方に位置する。グラブレール72の後端部72Nは、ステップ28よりも前方に位置する。
図2に示すように、ハンドル21が折り畳まれ、シート17下の空間Kに格納されたとき、グラブレール72は、図13に示すように、車両の最外方に位置する。
乗員が着座するシート17とハンドル21とが近い小型車両において、グラブレール72の前端部72Mは、ハンドル21とシート17との間に配置される。
【0028】
以上の実施形態によれば、車両の両側方にグラブレール72を備え、グラブレール72はハンドル21を転舵した際に可動するフロントカバー30よりも車幅方向外方に張り出すと共に、ハンドル21とシート17との間に配置される。
これによれば、図11に示すように、乗員が着座するシート17とハンドル21とが近い車両などにおいても、乗員が車両に跨ったとき、乗員の足がグラブレール72に接触し、乗員の足を開く方向に乗車姿勢を誘導できるため、ハンドル21を転舵した際に可動するフロントカバー30が、乗員の足に接触せず、運転性が向上する。
【0029】
グラブレール72は、ハンドル21の折り畳み時に、車両の最外方に位置する。これによれば、この鞍乗り型車両10を車のトランクなどに横向きに積む際に、グラブレール72がトランクの底部に当たり、保護部材となる。また、シート17を最前方の位置にスライドさせたとき、グラブレール72がシート17の前端部よりも前方に位置する。これによれば、シート17の位置がどの位置にあってもフロントカバー30が、乗員の足に接触しにくくすることができる。
【0030】
グラブレール72は車両前後方向に延出し、上下幅が狭くなる幅狭部70を備える。幅狭部70は車両中心を含む位置に設けられてもよい。これによれば、グラブレール72が保護部材となるだけでなく、幅狭部70を備えるため、車両移動時の取っ手にもなる。幅狭部70に指を入れて持ちやすくなる。幅狭部70が車両中心を含む位置に設けられれば、さらに持ちやすい取っ手となる。
【0031】
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0032】
(構成1)車両の側方に外方部材を備え、前記外方部材はハンドルを転舵した際に可動する部材よりも車幅方向外方に張り出すと共に、シートより下方且つステップより上方且つ前記ハンドルと前記シートとの間に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、乗員が乗ったとき、足が外方部材に接触し、がに股になるため、ハンドルを転舵した際に可動する部材が乗員の足に接触せず、運転性が向上する。
【0033】
(構成2)前記ハンドルが折り畳み可能であり、前記ハンドルの折り畳み時に、前記外方部材が車両の最外方に位置することを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、この車両を車のトランクなどに横向きに積む際に、外方部材がトランクの底部に当たり、保護部材となる。
【0034】
(構成3)前記シートが車両前後方向にスライド可能であり、前記シートの最前方へのスライド時に、前記外方部材が前記シートの前端部よりも前方に位置することを特徴とする構成1又は2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、シートを最前方の位置にスライドさせたときにも、ハンドルを転舵した際に可動する部材が乗員の足に接触しない。
【0035】
(構成4)前記外方部材は車両前後方向に延出し、上下幅が狭くなる幅狭部を備えることを特徴とする構成1乃至3の何れか一つに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、外方部材が保護部材となるだけでなく、幅狭部を備えるため、車両移動時の取っ手にもなる。幅狭部に指を入れて持ちやすくなる。
【0036】
(構成5)前記幅狭部は車両中心を含む位置に設けられることを特徴とする構成4に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、幅狭部を車両中心を含む位置に設けることにより、さらに持ちやすい取っ手となる。
【符号の説明】
【0037】
10 鞍乗り型車両
13 前輪
13a 前輪モータ
14 フロントフォーク
15 後輪
15a 後輪モータ
17 シート
21 ハンドル
29 サイドカバー
30 フロントカバー(可動する部材)
70 幅狭部
72 グラブレール(外方部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13