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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156042
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/086 20200101AFI20221006BHJP
   B62K 19/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B62J17/086
B62K19/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059537
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 宗一朗
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BH01
(57)【要約】
【課題】補強部材の接続部への応力集中の影響を低減して補強部材を設ける。
【解決手段】電動車両1は、車両の高さ方向に延び、ルーフ43を支持するピラー44と、乗員が着座するシート7の後方に配置され、ピラー44を支持する支持フレーム130と、を備え、支持フレーム130は、車幅方向に延び、ピラー44を支持する上部パイプ部131と、上部パイプ部131の車幅方向外端から下方に湾曲する湾曲パイプ部132を有する側部パイプ部133と、を備え、湾曲パイプ部132には、接続部150により補強部材140が取り付けられ、接続部150は、側部パイプ部133の車幅方向側面133C,133Dに設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の高さ方向に延び、ルーフ(43)を支持する支持柱(44)と、
乗員が着座するシート(7)の後方に配置され、前記支持柱(44)を支持する支持フレーム(130)と、を備え、
前記支持フレーム(130)は、
車幅方向に延び、前記支持柱(44)を支持する横架部(131)と、
前記横架部(131)の車幅方向外端から下方に湾曲する湾曲部(132)を有する柱部(133)と、を備え、
前記湾曲部(132)には、接続部(150)により補強部材(140)が取り付けられ、
前記接続部(150)は、前記柱部(133)の車幅方向側面(133C,133D)に設けられていることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記補強部材(140)は、前記柱部(133)の前後方向面(133A,133B)の少なくとも一部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記補強部材(140)は、
前記柱部(133)の車幅方向内側面において前記柱部(133)に沿って延びる内側辺部(141)と、
前記柱部(133)の車幅方向外側面において前記柱部(133)に沿って延びる外側辺部(142)と、を備え、
前記内側辺部(141)の下端(141b)及び前記外側辺部(142)の下端(142b)は、前記高さ方向において互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記内側辺部(141)の下端(141b)は、前記外側辺部(142)の下端(142b)よりも上方に配置され、
前記接続部(150)は、溶接部(150)であり、
前記柱部(133)の車幅方向外側面に対する前記補強部材(140)の溶接長さ合計(L2)は、前記柱部(133)の車幅方向内側面に対する前記補強部材(140)の溶接長さ合計(L1)よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記補強部材(140)は、前記内側辺部(141)の下端(141b)と前記外側辺部(142)の下端(142b)とを繋ぐ繋ぎ部(144)を更に備え、
前記繋ぎ部(144)は、前後方向から見て湾曲形状を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両。
【請求項6】
前記補強部材(140)は、
第一位置決め部(162A~162D)を有する第一部材(160)と、
第二位置決め部(172A~172D)を有する第二部材(170)と、を備え、
前記第一部材(160)及び前記第二部材(170)は、前記第一部材(160)及び前記第二部材(170)を前記柱部(133)に取り付ける際に前記第一位置決め部(162A~162D)及び前記第二位置決め部(172A~172D)が互いに当接することで位置決め可能とされていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記補強部材(140)は、前記柱部(133)に対する前記補強部材(140)の組付け時に治具を挿し込み可能な治具孔(165,175)を有し、
前記治具孔(165,175)は、前後方向から見て前記柱部(133)の中心線(K1)と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドシールドの上端部が連結されたルーフ部材の後部を支持する支柱と、支柱を支持する支持フレームと、を備えた車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の支持フレームは、車幅方向に延び且つ支柱を支持する上部パイプ部分と、上部パイプ部分の車幅方向外端から下方に湾曲する湾曲部を有する側部パイプ部分と、を備える。また、支持フレームには、前後方向に延びる板状の補強板が複数取り付けられている。特許文献1では、補強板が前後方向に延びているため、シート後方の荷台の容量に影響を与える可能性がある。また、補強板が複数取り付けられているため、補強板の取り付け工数が増加し、製造コストの増大が懸念される。
例えば、上記の解決策としては、支持フレームを補強するための手段として、支持フレームを構成するパイプ部分の外径や肉厚を増加させることが考えられる。しかし、支持フレーム全体の剛性を高めると、コスト増や重量増が問題となる。
一方、支持フレームの剛性を部分的に高めるために、支持フレームに対して部分的に補強部材を設けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-214109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、支持フレームにおいて応力が集中する部分に溶接により補強部材を取り付けた場合、補強部材の溶接部(接続部)において応力集中が発生することがある。この対策としては、複数の補強部材を設け、より強固に固定することが考えられるが、コストが増加するといった課題がある。そのため、補強部材の接続部への応力集中の影響を低減して補強部材を設ける技術が求められている。
【0005】
そこで本発明は、補強部材の接続部への応力集中の影響を低減して補強部材を設けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る車両は、車両(1)の高さ方向に延び、ルーフ(43)を支持する支持柱(44)と、乗員が着座するシート(7)の後方に配置され、前記支持柱(44)を支持する支持フレーム(130)と、を備え、前記支持フレーム(130)は、車幅方向に延び、前記支持柱(44)を支持する横架部(131)と、前記横架部(131)の車幅方向外端から下方に湾曲する湾曲部(132)を有する柱部(133)と、を備え、前記湾曲部(132)には、接続部(150)により補強部材(140)が取り付けられ、前記接続部(150)は、前記柱部(133)の車幅方向側面(133C,133D)に設けられている。
なお、柱部の車幅方向側面は、柱部を車両の高さ方向と直交する平面で切断した断面視で、柱部の外周上において車幅方向内側に位置する中心角90度の弧状部分を「柱部の車幅方向内側面」とし、車幅方向外側に位置する中心角90度の弧状部分を「柱部の車幅方向外側面」としたとき、柱部の車幅方向内側面及び車幅方向外側面を含む面を意味する。
【0007】
(2)上記(1)に記載の車両では、前記補強部材(140)は、前記柱部(133)の前後方向面(133A,133B)の少なくとも一部を覆うように設けられていてもよい。
なお、柱部の前後方向面は、柱部を車両の高さ方向と直交する平面で切断した断面視で、柱部の外周上において前側に位置する中心角90度の弧状部分を「柱部の前面」とし、後側に位置する中心角90度の弧状部分を「柱部の後面」としたとき、柱部の前面及び後面を含む面を意味する。すなわち、柱部の前後方向面は、柱部の外周面のうち車幅方向側面以外の面を意味する。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)に記載の車両では、前記補強部材(140)は、前記柱部(133)の車幅方向内側面において前記柱部(133)に沿って延びる内側辺部(141)と、前記柱部(133)の車幅方向外側面において前記柱部(133)に沿って延びる外側辺部(142)と、を備え、前記内側辺部(141)の下端(141b)及び前記外側辺部(142)の下端(142b)は、前記高さ方向において互いに異なる位置に配置されていてもよい。
【0009】
(4)上記(3)に記載の車両では、前記内側辺部(141)の下端(141b)は、前記外側辺部(142)の下端(142b)よりも上方に配置され、前記接続部(150)は、溶接部(150)であり、前記柱部(133)の車幅方向外側面に対する前記補強部材(140)の溶接長さ合計(L2)は、前記柱部(133)の車幅方向内側面に対する前記補強部材(140)の溶接長さ合計(L1)よりも大きくてもよい。
【0010】
(5)上記(3)又は(4)に記載の車両では、前記補強部材(140)は、前記内側辺部(141)の下端(141b)と前記外側辺部(142)の下端(142b)とを繋ぐ繋ぎ部(144)を更に備え、前記繋ぎ部(144)は、前後方向から見て湾曲形状を有してもよい。
【0011】
(6)上記(1)から(5)の何れか一項に記載の車両では、前記補強部材(140)は、第一位置決め部(162A~162D)を有する第一部材(160)と、第二位置決め部(172A~172D)を有する第二部材(170)と、を備え、前記第一部材(160)及び前記第二部材(170)は、前記第一部材(160)及び前記第二部材(170)を前記柱部(133)に取り付ける際に前記第一位置決め部(162A~162D)及び前記第二位置決め部(172A~172D)が互いに当接することで位置決め可能とされていてもよい。
【0012】
(7)上記(1)から(6)の何れか一項に記載の車両では、前記補強部材(140)は、前記柱部(133)に対する前記補強部材(140)の組付け時に治具を挿し込み可能な治具孔(165,175)を有し、前記治具孔(165,175)は、前後方向から見て前記柱部(133)の中心線(K1)と重なる位置に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記(1)に記載の車両によれば、車両の高さ方向に延び、ルーフを支持する支持柱と、乗員が着座するシートの後方に配置され、支持柱を支持する支持フレームと、を備え、支持フレームは、車幅方向に延び、支持柱を支持する横架部と、横架部の車幅方向外端から下方に湾曲する湾曲部を有する柱部と、を備え、湾曲部には、接続部により補強部材が取り付けられ、接続部は、柱部の車幅方向側面に設けられていることで、以下の効果を奏する。
本発明者は、鋭意研究の結果、車両のルーフを、支持柱を介して支持フレームで支える構造を有する車両(いわゆる屋根付き車両)においては、支持柱を介して前後方向に振れる方向に荷重が加わり、結果として、この前後方向の荷重によって支持フレームの柱部に応力が集中することを見出した。特に、柱部の前後方向面には、柱部の車幅方向側面よりも高い応力が集中することが、本発明者の研究によって明らかになっている。
本構成によれば、接続部が柱部の車幅方向側面に設けられていることで、接続部が柱部の前後方向面に設けられた場合と比較して、接続部への応力集中の影響を低減することができる。したがって、補強部材の接続部への応力集中の影響を低減して補強部材を設けることができる。
【0014】
本発明の上記(2)に記載の車両によれば、補強部材が柱部の前後方向面の少なくとも一部を覆うように設けられていることで、以下の効果を奏する。
柱部の前後方向面において応力が発生する部分を補強部材によりしっかりと補強することができる。
【0015】
本発明の上記(3)に記載の車両によれば、補強部材は、柱部の車幅方向内側面において柱部に沿って延びる内側辺部と、柱部の車幅方向外側面において柱部に沿って延びる外側辺部と、を備え、内側辺部の下端及び外側辺部の下端は、高さ方向において互いに異なる位置に配置されていることで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、内側辺部の下端及び外側辺部の下端が、高さ方向において互いに同じ位置に配置されている場合、内側辺部の下端及び外側辺部の下端と柱部との段差部分は高さ方向において急峻になるため、前記段差部分への応力集中が増大する可能性がある。
これに対し本構成によれば、内側辺部の下端及び外側辺部の下端が、高さ方向において互いに異なる位置に配置されていることで、前記段差部分は高さ方向において緩やかになるため、前記段差部分への応力集中が増大することを抑制することができる。
【0016】
本発明の上記(4)に記載の車両によれば、内側辺部の下端は、外側辺部の下端よりも上方に配置され、接続部は、溶接部であり、柱部の車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計は、柱部の車幅方向内側面に対する補強部材の溶接長さ合計よりも大きいことで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、柱部の車幅方向内側面に柱部の車幅方向外側面よりも高い応力が集中する場合において、内側辺部の下端が外側辺部の下端よりも下方に配置され、柱部の車幅方向内側面に対する補強部材の溶接長さ合計が柱部の車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計よりも大きいと、補強部材の溶接部への応力集中が増大する可能性がある。
これに対し本構成によれば、内側辺部の下端が外側辺部の下端よりも上方に配置され、柱部の車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計が柱部の車幅方向内側面に対する補強部材の溶接長さ合計よりも大きいことで、柱部の車幅方向内側面に柱部の車幅方向外側面よりも高い応力が集中する場合であっても、補強部材の溶接部への応力集中が増大することを抑制することができる。したがって、補強部材の接続部への応力集中の影響を低減する観点から、内側辺部及び外側辺部を好適に配置するとともに、柱部の車幅方向内側面及び車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計を好適に設定することができる。
【0017】
本発明の上記(5)に記載の車両によれば、補強部材は、内側辺部の下端と外側辺部の下端とを繋ぐ繋ぎ部を更に備え、繋ぎ部は、前後方向から見て湾曲形状を有することで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、繋ぎ部が前後方向から見て直線形状を有する場合、繋ぎ部と柱部との段差部分は高さ方向において急峻になるため、前記段差部分への応力集中が増大する可能性がある。
これに対し本構成によれば、繋ぎ部が前後方向から見て湾曲形状を有することで、前記段差部分は高さ方向において緩やかになるため、前記段差部分への応力集中の影響をより効果的に低減することができる。
【0018】
本発明の上記(6)に記載の車両によれば、補強部材は、第一位置決め部を有する第一部材と、第二位置決め部を有する第二部材と、を備え、第一部材及び第二部材は、第一部材及び第二部材を柱部に取り付ける際に第一位置決め部及び第二位置決め部が互いに当接することで位置決め可能とされていることで、以下の効果を奏する。
第一位置決め部及び第二位置決め部が互いに当接することにより、第一部材及び第二部材を一体構造物として柱部に取り付けることができるため、柱部に対する第一部材及び第二部材の取り付け精度を高めることができる。
例えば仮に、柱部に位置決め用の基準線を設け、第一位置決め部及び第二位置決め部を互いに基準線に合わせる場合、柱部の寸法バラツキ(外径の大きさ、真円度など)によっては、第一位置決め部及び第二位置決め部を互いに基準線に合わせることができない可能性がある。
これに対し本構成によれば、第一位置決め部及び第二位置決め部が互いに当接することで位置決め可能とされていることで、柱部に基準線を設けなくて済むため、柱部に対する第一部材及び第二部材の取り付け自由度が向上する。
【0019】
本発明の上記(7)に記載の車両によれば、補強部材は、柱部に対する補強部材の組付け時に治具を挿し込み可能な治具孔を有し、治具孔は、前後方向から見て柱部の中心線と重なる位置に設けられていることで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、治具孔が前後方向から見て柱部の外縁部と重なる位置に設けられている場合、柱部の外縁部への応力集中の影響が懸念される。また、治具孔に挿し込まれた治具は柱部の外縁部に当接するため、柱部に対して補強部材を組付けにくくなる可能性がある。
これに対し本構成によれば、治具孔が前後方向から見て柱部の中心線と重なる位置に設けられていることで、柱部の外縁部への応力集中の影響を低減することができる。加えて、治具孔に挿し込まれた治具は柱部の中心部に当接するため、柱部に対して補強部材を組付けやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の電動車両の左側面図である。
図2】実施形態の背凭れ部を外した状態を左前方から見た斜視図である。
図3】実施形態の支持フレームの前面図である。
図4】実施形態の支持フレームの左側の湾曲部を含む周辺の前面図である。
図5図4のV-V断面を含む、側部パイプ部の車幅方向側面の説明図である。
図6】実施形態の左側の補強部材の溶接部を左前方から見た斜視図である。
図7】実施形態の左側の補強部材の溶接部を右前方から見た斜視図である。
図8】実施形態の左側の補強部材を左前方から見た斜視図である。
図9】実施形態の支持フレームを左前方から見た斜視図であって、解析結果による応力分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、車両の一例として電動車両を挙げて説明する。以下、電動車両を単に「車両」ということがある。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また、以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車両左右中心線CLが示されている。なお、車両の高さ方向(上下方向)は、車両の直立状態において鉛直方向(重力方向)と平行な方向である。
【0022】
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態の車両は、操舵輪である一輪の前輪2を前車体3に支持するとともに、駆動輪である左右二輪の後輪4を後車体5に支持した三輪の電動車両1である。電動車両1は、左右の後輪4を接地させた後車体5に対して、前車体3を左右揺動(ローリング動)可能とした、揺動式の電動三輪車として構成されている。電動車両1は、車両前方に前進して走行可能であるとともに、車両後方に後進(後退)することも可能である。
【0023】
前車体3は、前輪操舵用のバーハンドル(ハンドル)6と、乗員が着座するシート7と、を備えている。前車体3は、バーハンドル6とシート7との間を跨ぎ空間8とし、跨ぎ空間8の下方には低床フロア9を備えている。前車体3および後車体5は、回動機構(ローリングジョイント)19を介して互いに連結されている。図1中符号C1は回動機構19における車両前後方向に延びる回動軸線を示している。
【0024】
前車体3は、前車体フレーム11を備えている。前車体フレーム11は、鉛直方向に対して後傾したヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12の後側から下方へ延びた後に後方へ湾曲する単一の前部フレーム14と、前部フレーム14の湾曲部両側から左右に分岐して後方へ延びる左右一対の下部フレーム15と、左右の下部フレーム15の後端部から斜め後上方へ湾曲して延びる左右一対の後部フレーム16と、左右の後部フレーム16の後端部から後方へ湾曲して延びる左右一対の荷台フレーム17と、を備えている。
【0025】
ヘッドパイプ12には、前輪懸架装置(例えばテレスコピック式あるいはボトムリンク式のフロントフォーク)13が操舵可能に支持されている。前輪懸架装置13の下端部には、前輪2が支持されている。前輪懸架装置13の上部には、ヘッドパイプ12を貫通するステムパイプ13aが一体に設けられている。ステムパイプ13aには、バーハンドル6が一体回動可能に固定されている。
【0026】
前車体3は、前車体カバー23で覆われている。前車体カバー23は、ヘッドパイプ12及び前部フレーム14の周辺を前方及び後方からそれぞれ覆うフロントカバー24及びインナカバー24aと、インナカバー24aの下端部の後方に連なるフロアボード25と、フロアボード25の後方で立ち上がるリヤボディカバー28と、リヤボディカバー28の上部後方で荷台フレーム17の周囲を覆う荷台カバー29と、備えている。フロアボード25と左右の下部フレーム15等とで低床フロア9が構成されている。荷台カバー29と左右の荷台フレーム17等とで荷台31が構成されている。
【0027】
後車体5は、前車体フレーム11から独立した後車体フレーム(不図示)を備えている。前車体フレーム11には、回動機構19の前部が連結されている。回動機構19における前部に対して相対回動可能な後部は、後車体フレームに連結されている。
後車体5は、左右の後輪4間に配置されるパワーユニット20を備えている。パワーユニット20は、左右両側に後輪車軸21を延出し、左右の後輪4を支持している。後車体5は、後車体カバー22に上方から覆われている。
【0028】
パワーユニット20は、電動車両1の駆動源である電気モータ(原動機)35を備えている。シート7下方かつリヤボディカバー28内には、バッテリボックス33が設けられている。バッテリボックス33には、電気モータ35の電源である高電圧バッテリ、高電圧バッテリの充放電等を管理するBMU(Battery Managing Unit)、補機電源である12Vの低電圧バッテリ等が収容されている(何れも不図示)。
【0029】
パワーユニット20は、電気モータ35等を収容するユニットケース37を備えている。ユニットケース37には、電気モータ35の出力を制御するPCU(Power Control Unit)36が配置されている。PCU36は、例えばPDU(Power Driver Unit)およびECU(Electric Control Unit)を一体に備える制御ユニットである。PCU36は、電動車両1の駆動システムの制御部であり、スタートスイッチ(不図示)の操作後に、アクセル操作に応じて電気モータ35を駆動制御する。
【0030】
電動車両1は、前車体3の前後に渡って設けられて運転者の前方および上方を覆うルーフユニット40を備えている。ルーフユニット40は、カウリング41、ウインドシールド42、ルーフ43および左右一対のピラー44(支持柱)を備えている。例えば、ルーフユニット40は、オプションとして前車体3に後付けで装着可能である。
【0031】
カウリング41は、前車体3の前面となるフロントカウル46と、フロントカウル46の後部に取り付けられたインナカウル47と、を備えている。図中符号51は左右一対のバックミラー、符号53はフロントカウル46からウインドシールド42に向けて上方に延びるワイパーアームをそれぞれ示す。インナカウル47は、前車体3のフロントカバー24の前面に装着されている。
【0032】
ルーフ43は、ウインドシールド42の上端部から後方へ延びている。ウインドシールド42の上端部とルーフ43の前端部とは、側面視で互いに連続するように円弧状に湾曲している。左右のピラー44は、ルーフ43の後端部を下方から支持している。左右のピラー44の下部は、シート7と荷台31との間で立ち上がる背凭れ部100を貫通して支持フレーム130(図2参照)に支持されている。
【0033】
カウリング41の下方には、前車体3のフロントカバー24から前方に突出したヘッドライト支持部91が配置されている。ヘッドライト支持部91の前部には、ヘッドライト92が支持されている。ヘッドライト支持部91の左右両側には、左右一対のフロントウインカ93が支持されている。フロントカウル46の車幅方向の中央近傍の上部には、ワイパーアーム53の揺動軸となるワイパー軸81が配置されている。
【0034】
図2に示すように、左右(車幅方向の一方側及び他方側)のピラー44は、左右に一本ずつ配置されている。ピラー44は、上下方向に沿って直線状に延びている。ピラー44が延びる方向と直交する面で切断した断面形状は、環状となっている。すなわち、ピラー44は、中空断面とされている。
【0035】
ピラー44には、ハイマウントストップランプ60(補助制動灯)が設けられている。ハイマウントストップランプ60は、左右のピラー44に跨って車幅方向に延びている。例えば、ハイマウントストップランプ60は、オプションとして左右のピラー44に後付けで装着可能である。ハイマウントストップランプ60の下方には、左右のピラー44を連結する連結部材61が設けられている。
【0036】
図1に示すように、背凭れ部100は、シート7に着座した乗員の背中をもたせかけることが可能な部分である。背凭れ部100は、シート7に着座した乗員の背中に面する前方板110と、前方板110の後方に配置された後方板120と、を備えている。前方板110及び後方板120は、互いに着脱可能に取り付けられている。例えば、後方板120は、複数のボルト(不図示)により、前方板110に対して着脱可能に固定されている。
【0037】
<支持フレーム>
図2に示すように、支持フレーム130は、上方に向かって湾曲するアーチ状に形成されている。支持フレーム130は、中空断面を有するパイプ状に形成されている。支持フレーム130は、背凭れ部100(図1参照)の内部に配置されている。支持フレーム130は、車幅方向に延び且つピラー44を支持する上部パイプ部131(横架部)と、上部パイプ部131の車幅方向両端から下方に湾曲する湾曲パイプ部132(湾曲部)を有する左右の側部パイプ部133(柱部)と、を備えている。
【0038】
側部パイプ部133は、湾曲パイプ部132の下端から下方に延びる縦パイプ部134を備えている。湾曲パイプ部132は、上部パイプ部131の車幅方向外端と縦パイプ部134の上端とを繋いでいる。湾曲パイプ部132は、図3の前面視で、車幅方向外方かつ上方に向かって湾曲する弧状に形成されている。左右の縦パイプ部134の下端部は、左右の後部フレーム16(図1参照)の後端部に連結されている。
【0039】
図2に示すように、左右のピラー44の下端部は、上部パイプ部131の車幅方向両端部に連結されている。上部パイプ部131の車幅方向両端部には、左右一対の支持ブラケット180が設けられている。支持ブラケット180は、ピラー44の下端部の前側を支持する前支持板181と、ピラー44の下端部の後側を支持する後支持板182と、を備えている。
【0040】
前支持板181の下端部は、上部パイプ部131に溶接により結合されている。前支持板181は、複数(例えば本実施形態では4本)のボルト183により後支持板182に設けられた不図示のナット(例えばウエルドナット)に固定されている。前支持板181の車幅方向中央部は、前連結板185を介して上部パイプ部131に溶接により結合されている。
【0041】
<補強部材>
図3に示すように、側部パイプ部133には、溶接部150(接続部、図4参照)により補強部材140が取り付けられている。補強部材140は、左右の側部パイプ部133のそれぞれに設けられている。左右の補強部材140は、車両左右中心線CLを対称軸として左右対称に形成されている。図4に示すように、溶接部150は、側部パイプ部133に対して補強部材140が溶接されている部分である。
【0042】
図5は、側部パイプ部133を車両の高さ方向と直交する平面で切断した断面を含む図である。図5の断面視で、環状の側部パイプ部133の外周上において前側に位置する中心角A1が90度の弧状部分133Aを「側部パイプ部133の前面133A」とする。図5の断面視で、環状の側部パイプ部133の外周上において後側に位置する中心角A2が90度の弧状部分133Bを「側部パイプ部133の後面133B」とする。図5の断面視で、環状の側部パイプ部133の外周上において車幅方向内側に位置する中心角A3が90度の弧状部分133Cを「側部パイプ部133の車幅方向内側面133C」とする。図5の断面視で、環状の側部パイプ部133の外周上において車幅方向外側に位置する中心角A4が90度の弧状部分133Dを「側部パイプ部133の車幅方向外側面133D」とする。以下、側部パイプ部133の前面133A及び後面133Bを含む面を「側部パイプ部133の前後方向面133A,133B」とし、側部パイプ部133の車幅方向内側面133C及び車幅方向外側面133Dを含む面を「側部パイプ部133の車幅方向側面133C,133D」とする。図4に示すように、溶接部150は、側部パイプ部133の車幅方向側面133C,133Dに設けられている。
【0043】
図6に示すように、補強部材140は、側部パイプ部133の前後方向面133A,133Bの少なくとも一部を覆うように設けられている。本実施形態では、補強部材140は、側部パイプ部133のうち湾曲パイプ部132の前後方向面133A,133Bを覆うように設けられている。
【0044】
図4に示すように、補強部材140は、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cにおいて側部パイプ部133に沿って延びる内側辺部141と、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dにおいて側部パイプ部133に沿って延びる外側辺部142と、を備えている。本実施形態では、内側辺部141は、前面視で湾曲パイプ部132の車幅方向内側縁に沿って弧状に延びる部分である。外側辺部142は、前面視で湾曲パイプ部132の車幅方向外側縁に沿って弧状に延びる部分である。
【0045】
内側辺部141の上端141a及び外側辺部142の上端142aは、車両の高さ方向において互いに異なる位置に配置されている。本実施形態では、内側辺部141の上端141aは、外側辺部142の上端142aよりも下方に配置されている。内側辺部141の上端141aは、外側辺部142の上端142aよりも車幅方向内方に配置されている。
【0046】
内側辺部141の下端141b及び外側辺部142の下端142bは、車両の高さ方向において互いに異なる位置に配置されている。本実施形態では、内側辺部141の下端141bは、外側辺部142の下端142bよりも上方に配置されている。図4の前面視で、内側辺部141の弧状部分の長さは、外側辺部142の弧状部分の長さよりも小さくなっている。
【0047】
補強部材140は、内側辺部141の上端141aと外側辺部142の上端142aとを繋ぐ上側繋ぎ部143と、内側辺部141の下端141bと外側辺部142の下端142bとを繋ぐ下側繋ぎ部144(繋ぎ部)と、を備えている。上側繋ぎ部143及び下側繋ぎ部144は、前後方向から見てそれぞれ湾曲形状を有している。本実施形態では、上側繋ぎ部143は、前面視で車幅方向外方かつ下方に向かって湾曲する弧状を有している。下側繋ぎ部144は、前面視で車幅方向外方かつ上方に向かって湾曲する弧状を有している。
【0048】
図8に示すように、補強部材140は、第一位置決め部162A~162D(図8では、第一位置決め部162C,162Dを図示)を有する第一部材160と、第二位置決め部172A~172D(図8では、第二位置決め部172C,172Dを図示)を有する第二部材170と、を備えている。第一部材160及び第二部材170は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に第一位置決め部162A~162D及び第二位置決め部172A~172Dが互いに当接することで位置決め可能とされている(図6図7参照)。
【0049】
図6に示すように、第一部材160は、側部パイプ部133のうち湾曲パイプ部132の前面を覆うように設けられている。第一部材160は、湾曲パイプ部132の前面を覆い且つ湾曲パイプ部132に沿って延びる前面覆い部161と、前面覆い部161の上下端部から延びる複数(例えば本実施形態では4つ)の第一位置決め部162A~162D(図6では、第一位置決め部162C,162Dを図示)と、を備える。
【0050】
4つの第一位置決め部162A~162Dは、図7に示すように、前面覆い部161の車幅方向内側の上端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向内側に湾曲しつつ延びる部分162A(以下「第一内側上延在部162A」ともいう。)と、前面覆い部161の車幅方向内側の下端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向内側に湾曲しつつ延びる部分162B(以下「第一内側下延在部162B」ともいう。)と、図6に示すように、前面覆い部161の車幅方向外側の上端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向外側に湾曲しつつ延びる部分162C(以下「第一外側上延在部162C」ともいう。)と、前面覆い部161の車幅方向外側の下端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向外側に湾曲しつつ延びる部分162D(以下「第一外側下延在部162D」ともいう。)と、である。第一外側上延在部162Cと第一外側下延在部162Dとの間には、前面覆い部161の車幅方向外側の中間部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向外側に膨出する前側外膨出部163が設けられている。
【0051】
第二部材170は、側部パイプ部133のうち湾曲パイプ部132の後面を覆うように設けられている。第二部材170は、前後方向から見て、第一部材160と重なる位置に設けられている。第二部材170は、湾曲パイプ部132の後面を覆い且つ湾曲パイプ部132に沿って延びる後面覆い部171と、後面覆い部171の上下端部から延びる複数(例えば本実施形態では4つ)の第二位置決め部172A~172D(図6では、第二位置決め部172C,172Dを図示)と、を備える。
【0052】
4つの第二位置決め部172A~172Dは、図7に示すように、後面覆い部171の車幅方向内側の上端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向内側に湾曲しつつ延びる部分172A(以下「第二内側上延在部172A」ともいう。)と、後面覆い部171の車幅方向内側の下端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向内側に湾曲しつつ延びる部分172B(以下「第二内側下延在部172B」ともいう。)と、図6に示すように、後面覆い部171の車幅方向外側の上端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向外側に湾曲しつつ延びる部分172C(以下「第二外側上延在部172C」ともいう。)と、後面覆い部171の車幅方向外側の下端部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向外側に湾曲しつつ延びる部分172D(以下「第二外側下延在部172D」ともいう。)と、である。第二外側上延在部172Cと第二外側下延在部172Dとの間には、後面覆い部171の車幅方向外側の中間部から湾曲パイプ部132の外周に沿って車幅方向外側に膨出する後側外膨出部173が設けられている。
【0053】
図7に示すように、第一内側上延在部162Aの後端及び第二内側上延在部172Aの前端は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に互いに当接可能とされている。第一内側下延在部162Bの後端及び第二内側下延在部172Bの前端は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に互いに当接可能とされている。
【0054】
図6に示すように、第一外側上延在部162Cの後端及び第二外側上延在部172Cの前端は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に互いに当接可能とされている。第一外側下延在部162Dの後端及び第二外側下延在部172Dの前端は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に互いに当接可能とされている。
【0055】
本実施形態では、第一部材160及び第二部材170は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に、4つの第一位置決め部162A~162D及び4つの第二位置決め部172A~172Dが互いに当接することで位置決め可能とされている。なお、前側外膨出部163の後端及び後側外膨出部173の前端は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に互いに当接せずに離間する。
【0056】
例えば、側部パイプ部133の寸法バラツキ(外径の大きさ、真円度など)を考慮して、第一部材160及び第二部材170のそれぞれは、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に、4つの第一位置決め部162A~162Dのすべて及び4つの第二位置決め部172A~172Dのすべてが互いに当接するように、湾曲パイプ部132よりも大きく形成されていることが好ましい。例えば、第一部材160及び第二部材170において各位置決め部を互いに当接した状態の最小内周長さ(例えば、補強部材140の内周面の周方向の長さの寸法バラツキを考慮した最小値)は、湾曲パイプ部132の最大外周長さ(例えば、側部パイプ部133の外周面の周方向の長さの寸法バラツキを考慮した最大値)よりも大きいことが好ましい。
【0057】
図8に示すように、補強部材140は、側部パイプ部133に対する補強部材140の組付け時に治具(例えばピン)を挿し込み可能な治具孔165,175を有する。治具孔165,175は、前後方向から見て側部パイプ部133の中心線K1(図4参照)と重なる位置に設けられている。本実施形態では、治具孔165,175(図4では治具孔165を図示)は、図4の前面視で湾曲パイプ部132の上下方向中央近傍において中心線K1と重なる位置に設けられている。
【0058】
図8に示すように、治具孔165,175は、前面覆い部161及び後面覆い部171のそれぞれに設けられている。治具孔165,175は、前面視で円形状に形成されている。一方の治具孔165は、前面視で前面覆い部161の中央近傍に設けられている。他方の治具孔175は、後面視で後面覆い部171の中央近傍に設けられている。
【0059】
図4に示すように、溶接部150は、側部パイプ部133の車幅方向内側面133C及び車幅方向外側面のそれぞれに設けられている。以下、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに設けられた溶接部150を「内側溶接部151」、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに設けられた溶接部150を「外側溶接部152」とする。
【0060】
内側溶接部151は、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに対して前面視で補強部材140の内側辺部141が沿う部分のうち上下の位置決め部162A,162Bの間に設けられている。図7に示すように、内側溶接部151(図7ではドットハッチで図示)は、前面覆い部161の車幅方向内側縁、後面覆い部171の車幅方向内側縁、第一内側上延在部162Aの下端縁、第一内側下延在部162Bの上端縁、第二内側上延在部172Aの下端縁、及び第二内側下延在部172Bの上端縁によって囲まれた部分に設けられている。
【0061】
図4に示すように、外側溶接部152は、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対して前面視で補強部材140の外側辺部142が沿う部分のうち上下の位置決め部162C,162Dの間に設けられている。図6に示すように、外側溶接部152(図6ではドットハッチで図示)は、前面覆い部161の車幅方向外側縁、後面覆い部171の車幅方向外側縁、第一外側上延在部162Cの下端縁、第一外側下延在部162Dの上端縁、第二外側上延在部172Cの下端縁、及び第二外側下延在部172Dの上端縁によって囲まれた部分に設けられている。
【0062】
なお、外側溶接部152は、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対して前面視で補強部材140の外側辺部142が沿う部分のうち前側外膨出部163の後端縁と後側外膨出部173の前端縁との間の部分には設けられていない。すなわち、外側溶接部152は、前面視で補強部材140の外側辺部142が沿う部分の中央部においてカットされている。例えば、側部パイプ部133に対する補強部材140の溶接強度を確保できる範囲で、側部パイプ部133に対する補強部材140の溶接長さは短くすることが好ましい。
【0063】
本実施形態では、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L2は、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに対する補強部材140の溶接長さ合計L1よりも大きい(L2>L1)。
【0064】
ここで、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L2は、外側溶接部152のうち図4の前面視で補強部材140の外側辺部142に沿う部分(図6に示す前側外膨出部163の後端縁と後側外膨出部173の前端縁との間の部分を除く部分)の長さに相当する。すなわち、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L2は、図4の前面視で補強部材140の外側辺部142に沿う部分のうち各外膨出部を挟んで上側の溶接長さL2aと下側の溶接長さL2bと足し合わせた長さに相当する。
側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに対する補強部材140の溶接長さ合計L1は、内側溶接部151のうち図4の前面視で補強部材140の内側辺部141に沿う部分の長さに相当する。
【0065】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の電動車両1は、車両の高さ方向に延び、ルーフ43を支持するピラー44と、乗員が着座するシート7の後方に配置され、ピラー44を支持する支持フレーム130と、を備え、支持フレーム130は、車幅方向に延び、ピラー44を支持する上部パイプ部131と、上部パイプ部131の車幅方向外端から下方に湾曲する湾曲パイプ部132を有する側部パイプ部133と、を備え、湾曲パイプ部132には、接続部150により補強部材140が取り付けられ、接続部150は、側部パイプ部133の車幅方向側面133C,133Dに設けられている。
本発明者は、鋭意研究の結果、車両のルーフ43を、ピラー44を介して支持フレーム130で支える構造を有する車両(いわゆる屋根付き車両)においては、ピラー44を介して前後方向に振れる方向に荷重が加わり、結果として、この前後方向の荷重によって支持フレーム130の側部パイプ部133に応力が集中することを見出した。図9に示すように、特に、側部パイプ部133の前後方向面133A,133Bには、側部パイプ部133の車幅方向側面133C,133Dよりも高い応力が集中することが、本発明者の研究によって明らかになっている。なお、図9は、応力分布を濃淡で示しており、相対的に濃い部分(黒い部分)は高い応力が集中する部分を示している。
本構成によれば、接続部150が側部パイプ部133の車幅方向側面133C,133Dに設けられていることで、接続部150が側部パイプ部133の前後方向面133A,133Bに設けられた場合と比較して、接続部150への応力集中の影響を低減することができる。したがって、補強部材140の接続部150への応力集中の影響を低減して補強部材140を設けることができる。
【0066】
上記実施形態では、補強部材140が側部パイプ部133の前後方向面133A,133Bを覆うように設けられていることで、以下の効果を奏する。
側部パイプ部133の前後方向面133A,133Bにおいて応力が発生する部分を補強部材140によりしっかりと補強することができる。
【0067】
上記実施形態では、補強部材140は、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cにおいて側部パイプ部133に沿って延びる内側辺部141と、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dにおいて側部パイプ部133に沿って延びる外側辺部142と、を備え、内側辺部141の下端141b及び外側辺部142の下端142bは、高さ方向において互いに異なる位置に配置されていることで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、内側辺部141の下端141b及び外側辺部142の下端142bが、高さ方向において互いに同じ位置に配置されている場合、内側辺部141の下端141b及び外側辺部142の下端142bと側部パイプ部133との段差部分は高さ方向において急峻になるため、前記段差部分への応力集中が増大する可能性がある。
これに対し本構成によれば、内側辺部141の下端141b及び外側辺部142の下端142bが、高さ方向において互いに異なる位置に配置されていることで、前記段差部分は高さ方向において緩やかになるため、前記段差部分への応力集中が増大することを抑制することができる。
【0068】
上記実施形態では、内側辺部141の下端141bは、外側辺部142の下端142bよりも上方に配置され、接続部150は、溶接部150であり、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L2は、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに対する補強部材140の溶接長さ合計L1よりも大きいことで(L2>L1)、以下の効果を奏する。
例えば仮に、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dよりも高い応力が集中する場合において、内側辺部141の下端141bが外側辺部142の下端142bよりも下方に配置され、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに対する補強部材140の溶接長さ合計L1が側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L2よりも大きいと(L1>L2)、補強部材140の溶接部150への応力集中が増大する可能性がある。
これに対し本構成によれば、内側辺部141の下端141bが外側辺部142の下端142bよりも上方に配置され、側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L2が側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに対する補強部材140の溶接長さ合計L1よりも大きいことで(L2>L1)、側部パイプ部133の車幅方向内側面133Cに側部パイプ部133の車幅方向外側面133Dよりも高い応力が集中する場合であっても、補強部材140の溶接部150への応力集中が増大することを抑制することができる。したがって、補強部材140の接続部150への応力集中の影響を低減する観点から、内側辺部141及び外側辺部142を好適に配置するとともに、側部パイプ部133の車幅方向内側面133C及び車幅方向外側面133Dに対する補強部材140の溶接長さ合計L1,L2を好適に設定することができる。
【0069】
上記実施形態では、補強部材140は、内側辺部141の下端141bと外側辺部142の下端142bとを繋ぐ下側繋ぎ部144を備え、下側繋ぎ部144は、前後方向から見て湾曲形状を有することで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、下側繋ぎ部144が前後方向から見て直線形状を有する場合、下側繋ぎ部144と側部パイプ部133との段差部分は高さ方向において急峻になるため、前記段差部分への応力集中が増大する可能性がある。
これに対し本構成によれば、下側繋ぎ部144が前後方向から見て湾曲形状を有することで、前記段差部分は高さ方向において緩やかになるため、前記段差部分への応力集中の影響をより効果的に低減することができる。
【0070】
上記実施形態では、補強部材140は、第一位置決め部162A~162Dを有する第一部材160と、第二位置決め部172A~172Dを有する第二部材170と、を備え、第一部材160及び第二部材170は、第一部材160及び第二部材170を側部パイプ部133に取り付ける際に第一位置決め部162A~162D及び第二位置決め部172A~172Dが互いに当接することで位置決め可能とされていることで、以下の効果を奏する。
第一位置決め部162A~162D及び第二位置決め部172A~172Dが互いに当接することにより、第一部材160及び第二部材170を一体構造物として側部パイプ部133に取り付けることができるため、側部パイプ部133に対する第一部材160及び第二部材170の取り付け精度を高めることができる。
例えば仮に、側部パイプ部133に位置決め用の基準線を設け、第一位置決め部162A~162D及び第二位置決め部172A~172Dを互いに基準線に合わせる場合、側部パイプ部133の寸法バラツキ(外径の大きさ、真円度など)によっては、第一位置決め部162A~162D及び第二位置決め部172A~172Dを互いに基準線に合わせることができない可能性がある。
これに対し本構成によれば、第一位置決め部162A~162D及び第二位置決め部172A~172Dが互いに当接することで位置決め可能とされていることで、側部パイプ部133に基準線を設けなくて済むため、側部パイプ部133に対する第一部材160及び第二部材170の取り付け自由度が向上する。
【0071】
上記実施形態では、補強部材140は、側部パイプ部133に対する補強部材140の組付け時に治具を挿し込み可能な治具孔165,175を有し、治具孔165,175は、前後方向から見て側部パイプ部133の中心線K1と重なる位置に設けられていることで、以下の効果を奏する。
例えば仮に、治具孔165,175が前後方向から見て側部パイプ部133の外縁部と重なる位置に設けられている場合、側部パイプ部133の外縁部への応力集中の影響が懸念される。また、治具孔165,175に挿し込まれた治具は側部パイプ部133の外縁部に当接するため、側部パイプ部133に対して補強部材140を組付けにくくなる可能性がある。
これに対し本構成によれば、治具孔165,175が前後方向から見て側部パイプ部133の中心線K1と重なる位置に設けられていることで、側部パイプ部133の外縁部への応力集中の影響を低減することができる。加えて、治具孔165,175に挿し込まれた治具は側部パイプ部133の中心部に当接するため、側部パイプ部133に対して補強部材140を組付けやすくすることができる。
【0072】
<変形例>
なお、上記実施形態では、補強部材が側部パイプ部の前後方向面を覆うように設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、補強部材は、側部パイプ部の前面又は後面のいずれか一方を覆うように設けられていてもよい。例えば、補強部材は、側部パイプ部の前後方向面の少なくとも一部を覆うように設けられていてもよい。例えば、補強部材の設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0073】
上記実施形態では、補強部材は、側部パイプ部の車幅方向内側面において側部パイプ部に沿って延びる内側辺部と、側部パイプ部の車幅方向外側面において側部パイプ部に沿って延びる外側辺部と、を備え、内側辺部の下端及び外側辺部の下端は、高さ方向において互いに異なる位置に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、内側辺部の下端及び外側辺部の下端は、高さ方向において互いに同じ位置に配置されていてもよい。
【0074】
上記実施形態では、内側辺部の上端は、外側辺部の上端よりも下方に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、内側辺部の上端は、外側辺部の上端よりも上方に配置されていてもよい。例えば、内側辺部の上端及び外側辺部の上端の配置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0075】
上記実施形態では、内側辺部の下端は、外側辺部の下端よりも上方に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、内側辺部の下端は、外側辺部の下端よりも下方に配置されていてもよい。例えば、内側辺部の下端及び外側辺部の下端の配置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0076】
上記実施形態では、接続部は溶接部である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、接続部はボルト等の締結部材による締結部であってもよい。例えば、接続部の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0077】
上記実施形態では、側部パイプ部の車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計は、側部パイプ部の車幅方向内側面に対する補強部材の溶接長さ合計よりも大きい例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、側部パイプ部の車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計は、側部パイプ部の車幅方向内側面に対する補強部材の溶接長さ合計よりも小さくてもよい。例えば、補強部材の各部の溶接長さは、要求仕様に応じて変更することができる。
【0078】
上記実施形態では、補強部材は、内側辺部の上端と外側辺部の上端とを繋ぐ上側繋ぎ部を備え、上側繋ぎ部は、前後方向から見て湾曲形状を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、上側繋ぎ部は、前後方向から見て直線形状を有していてもよい。例えば、上側繋ぎ部の形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0079】
上記実施形態では、補強部材は、内側辺部の下端と外側辺部の下端とを繋ぐ下側繋ぎ部を備え、下側繋ぎ部は、前後方向から見て湾曲形状を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、下側繋ぎ部は、前後方向から見て直線形状を有していてもよい。例えば、下側繋ぎ部の形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0080】
上記実施形態では、補強部材は、第一位置決め部を有する第一部材と、第二位置決め部を有する第二部材と、を備え、第一部材及び第二部材は、第一部材及び第二部材を側部パイプ部に取り付ける際に第一位置決め部及び第二位置決め部が互いに当接することで位置決め可能とされている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、側部パイプ部に位置決め用の基準線を設け、第一位置決め部及び第二位置決め部を互いに基準線に合わせてもよい。例えば、補強部材は、第一位置決め部を有する第一部材と、第二位置決め部を有する第二部材と、を備えていなくてもよい。例えば、側部パイプ部に対する補強部材の位置決めの態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0081】
上記実施形態では、第一位置決め部及び第二位置決め部がそれぞれ4つずつ設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第一位置決め部及び第二位置決め部は、それぞれ3つ以下ずつ設けられていてもよいし、5つ以上ずつ設けられていてもよい。例えば、位置決め部の設置数は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0082】
上記実施形態では、補強部材は、側部パイプ部に対する補強部材の組付け時に治具を挿し込み可能な治具孔を有し、治具孔は、前後方向から見て側部パイプ部の中心線と重なる位置に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、治具孔は、前後方向から見て側部パイプ部の外縁部と重なる位置に設けられていてもよい。例えば、補強部材は治具孔を有していなくてもよい。例えば、治具孔の設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0083】
上記実施形態では、車両の一例として揺動式の電動三輪車(電動車両)を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車両は、二輪、三輪および四輪の各種の車両であってもよい。例えば、車両は、電動車両に限らず、エンジン車両やハイブリッド車両であってもよい。例えば、車両は、車体側にエンジンを搭載した自動二輪車であってもよいし、ユニットスイング式の自動二輪車であってもよい。例えば、車両の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0084】
上記実施形態では、ハンドルが左右一体のバーハンドルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ハンドルは、左右別体のセパレートハンドルでもよく、かつバータイプでなくてもよい。例えば、ハンドルの態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪且つ後二輪の他に、前二輪且つ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。また、本発明は、自動二輪車のみならず、自動車等の四輪の車両にも適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 電動車両(車両)
7 シート
43 ルーフ
44 ピラー(支持柱)
130 支持フレーム
131 上部パイプ部(横架部)
132 湾曲パイプ部(湾曲部)
133 側部パイプ部(柱部)
133A,133B 側部パイプ部(柱部)の前後方向面
133C,133D 側部パイプ部(柱部)の車幅方向側面
140 補強部材
141 内側辺部
141b 内側辺部の下端
142 外側辺部
142b 外側辺部の下端
144 下側繋ぎ部(繋ぎ部)
150 溶接部(接続部)
151 内側溶接部(接続部)
152 外側溶接部(接続部)
160 第一部材
162A~162D 第一位置決め部
165 治具孔
170 第二部材
172A~172D 第二位置決め部
175 治具孔
K1 中心線
L1 側部パイプ部(柱部)の車幅方向内側面に対する補強部材の溶接長さ合計
L2 側部パイプ部(柱部)の車幅方向外側面に対する補強部材の溶接長さ合計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9