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特開2022-156075層流素子、層流型流量計、及び、層流素子の製造方法
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  • 特開-層流素子、層流型流量計、及び、層流素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156075
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】層流素子、層流型流量計、及び、層流素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/48 20060101AFI20221006BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20221006BHJP
【FI】
G01F1/48
G01F1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059588
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】結城 興仁
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 里奈
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CE11
2F030CF01
2F030CH01
(57)【要約】
【課題】層流素子の各流路の差圧-流量特性が等しくする。
【解決手段】層流素子10は、板厚方向を上下方向としたときにこの上下方向に積層された複数の板状部材20~60を備える。板状部材30、50には、流路となる流路貫通孔31、51が形成されている。板状部材40は、流路貫通孔31を流れる流体の圧力を上方に取り出す上流側取出孔43及び下流側取出孔44を備える。板状部材60は、流路貫通孔51を流れる流体の圧力を上方に取り出す上流側取出孔61及び下流側取出孔62を備える。上流側取出孔43及び61は、上下方向から見て一致するように配置されており、下流側取出孔44及び62は、上下方向から見て一致するように配置されており、流路貫通孔31及び51は、同じ形状に形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向を上下方向としたときに前記上下方向に積層された複数の板状部材を備え、内部に流体が流れる層流素子であって、
前記流体を前記層流素子内に導入する導入用貫通孔と、前記導入用貫通孔よりも下流側に位置し、前記流体を前記層流素子の外部に排出する排出用貫通孔とが形成された第1板状部材と、
前記第1板状部材の上に積層される複数の第2板状部材であり、前記導入用貫通孔により導入された前記流体の一部を前記排出用貫通孔に導く流路となる流路貫通孔を備える複数の第2板状部材と、
前記複数の第2板状部材のうちの前記上下方向において隣同士の第2板状部材の間にそれぞれ配置される1以上の第3板状部材であり、1つ上及び1つ下の前記流路貫通孔それぞれの上流部に連通し、1つ下の前記流路貫通孔に流入した前記流体の一部を1つ上の前記流路貫通孔に導く上流側貫通孔と、1つ上及び1つ下の前記流路貫通孔それぞれの前記上流部より下流の下流部に連通し、1つ上の前記流路貫通孔を流れる前記流体の一部を1つ下の前記流路貫通孔に導く下流側貫通孔と、1つ下の前記流路貫通孔を流れる前記流体の圧力を上方に取り出す、前記上流側貫通孔と前記下流側貫通孔との間に配置された上流側取出孔、及び、前記上流側取出孔よりも下流側に形成された下流側取出孔と、を備える1以上の第3板状部材と、
前記複数の第2板状部材のうち最も上に位置する第2板状部材の上に積層され、1つ下の前記流路貫通孔を流れる前記流体の圧力を上方に取り出す、上流側取出孔及び当該上流側取出孔よりも下流側に位置する下流側取出孔を備える第4板状部材と、を備え、
前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記上流側取出孔が、前記上下方向から見て前記流路貫通孔を流れる前記流体の流れ方向における同じ位置に配置されており、
前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記下流側取出孔が、前記上下方向から見て前記流れ方向における同じ位置に配置されており、
前記複数の第2板状部材それぞれの前記流路貫通孔が同じ形状に形成されている、
層流素子。
【請求項2】
前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記上流側取出孔が、前記上下方向から見て一致している、
請求項1に記載の層流素子。
【請求項3】
前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記下流側取出孔が、前記上下方向から見て一致している、
請求項1又は2に記載の層流素子。
【請求項4】
前記上流側貫通孔の前記流れ方向と直交する方向の長さである幅は、前記流路貫通孔よりも広い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の層流素子。
【請求項5】
前記下流側貫通孔の前記流れ方向と直交する方向の長さである幅は、前記流路貫通孔よりも広い、
請求項1から4のいずれか1項に記載の層流素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の層流素子と、
前記層流素子が収容される凹部と、前記第1板状部材の前記導入用貫通孔に前記流体を供給する上流流路と、前記第1板状部材の前記排出用貫通孔から前記流体が流入する下流流路と、を備える流路部材と、を備え、
前記層流素子の前記第4板状部材は、上下方向から見た場合に、前記第1板状部材、前記第2板状部材、及び、前記第3板状部材よりも大きく、
前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材、及び、前記第4板状部材は、それぞれ、上下方向に隣り合う板状部材と接合されており、
前記第4板状部材の、前記第1板状部材、前記第2板状部材、及び、前記第3板状部材から張り出した周縁部が、シール部材を介して、前記流路部材の前記凹部の外縁部に固定されている、
層流型流量計。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の層流素子の製造方法であって、
前記層流素子に流す前記流体の流量に応じて、前記第2板状部材及び前記第3板状部材の数を決定し、決定した数の前記第2板状部材及び前記第3板状部材を積層して、前記層流素子を製造する、
層流素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層流素子、層流型流量計、及び、層流素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
層流型流量計は、液体又は気体などの流体が層流状態で層流素子内を流れる際に発生する圧力降下が体積流量に比例する現象を利用した流量計である。層流素子には、薄板に流路となる貫通孔をエッチングなどで形成し、その薄板の上下を別の薄板で挟み込むことで流路を形成した素子がある。このようなタイプの層流素子は、薄板の積層枚数つまり流路の数で流量レンジを容易に調整できる。このような層流素子を用いた層流型流量計として、特許文献1には、層流素子(3)が内部流路を有したボディ(1)に形成された凹部(1h)内に配置され、当該凹部を塞ぐように上流側圧力センサ(21)が設けられ、この凹部よりも下流側に下流側圧力センサ(22)が設けられた層流型流量計(括弧書きは特許文献1の参照符号を示す)が開示されている。この層流型流量計では、上下流の2つの圧力センサによって検出された各圧力の差圧に基づいて流量が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-35462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された層流型流量計では、上流側圧力センサによる圧力の検出位置が層流素子の入口の直上なので、上流側圧力センサにより検出された圧力に外部圧損が含まれてしまう。さらに、下流側圧力センサが層流素子から離れた位置に配置されているため、下流側圧力センサにより検出される圧力が層流素子での圧力降下を正しく反映していないおそれがある。このように、特許文献1に記載の層流型流量計では、上下流の2つの圧力センサでそれぞれ検出される圧力の差圧が、実際の差圧と異なってしまうことがある。従って、特許文献1に記載の層流型流量計において、仮に、流路の数(流量レンジ)を変更した複数の層流素子それぞれで発生する実際の差圧を同じとしても、上流側圧力センサと下流側圧力センサで検出された圧力の差圧は流路の数に応じて異なってしまうことになる。このため、計測された差圧に基づく特性である差圧-流量特性が流路の数によって異なってしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、流路の数が異なる複数の層流素子間の差圧-流量特性を等しくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る層流素子は、板厚方向を上下方向としたときに前記上下方向に積層された複数の板状部材を備え、内部に流体が流れる層流素子であって、前記流体を前記層流素子内に導入する導入用貫通孔と、前記導入用貫通孔よりも下流側に位置し、前記流体を前記層流素子の外部に排出する排出用貫通孔とが形成された第1板状部材と、前記第1板状部材の上に積層される複数の第2板状部材であり、前記導入用貫通孔により導入された前記流体の一部を前記排出用貫通孔に導く流路となる流路貫通孔を備える複数の第2板状部材と、前記複数の第2板状部材のうちの前記上下方向において隣同士の第2板状部材の間にそれぞれ配置される1以上の第3板状部材であり、1つ上及び1つ下の前記流路貫通孔それぞれの上流部に連通し、1つ下の前記流路貫通孔に流入した前記流体の一部を1つ上の前記流路貫通孔に導く上流側貫通孔と、1つ上及び1つ下の前記流路貫通孔それぞれの前記上流部より下流の下流部に連通し、1つ上の前記流路貫通孔を流れる前記流体の一部を1つ下の前記流路貫通孔に導く下流側貫通孔と、1つ下の前記流路貫通孔を流れる前記流体の圧力を上方に取り出す、前記上流側貫通孔と前記下流側貫通孔との間に配置された上流側取出孔、及び、前記上流側取出孔よりも下流側に形成された下流側取出孔と、を備える1以上の第3板状部材と、前記複数の第2板状部材のうち最も上に位置する第2板状部材の上に積層され、1つ下の前記流路貫通孔を流れる前記流体の圧力を上方に取り出す、上流側取出孔及び当該上流側取出孔よりも下流側に位置する下流側取出孔を備える第4板状部材と、を備え、前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記上流側取出孔が、前記上下方向から見て前記流路貫通孔を流れる前記流体の流れ方向における同じ位置に配置されており、前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記下流側取出孔が、前記上下方向から見て前記流れ方向における同じ位置に配置されており、前記複数の第2板状部材それぞれの前記流路貫通孔が同じ形状に形成されている。
【0007】
前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記上流側取出孔が、前記上下方向から見て一致している、ようにしてもよい。
【0008】
前記1以上の第3板状部材と前記第4板状部材とのそれぞれの前記下流側取出孔が、前記上下方向から見て一致している、ようにしてもよい。
【0009】
前記上流側貫通孔の前記流れ方向と直交する方向の長さである幅は、前記流路貫通孔よりも広い、ようにしてもよい。
【0010】
前記下流側貫通孔の前記流れ方向と直交する方向の長さである幅は、前記流路貫通孔よりも広い、ようにしてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る層流型流量計は、上記層流素子と、前記層流素子が収容される凹部と、前記第1板状部材の前記導入用貫通孔に前記流体を供給する上流流路と、前記第1板状部材の前記排出用貫通孔から前記流体が流入する下流流路と、を備える流路部材と、を備え、前記層流素子の前記第4板状部材は、上下方向から見た場合に、前記第1板状部材、前記第2板状部材、及び、前記第3板状部材よりも大きく、前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材、及び、前記第4板状部材は、それぞれ、上下方向に隣り合う板状部材と接合されており、前記第4板状部材の、前記第1板状部材、前記第2板状部材、及び、前記第3板状部材から張り出した周縁部が、シール部材を介して、前記流路部材の前記凹部の外縁部に固定されている。
【0012】
本発明の第3の観点に係る層流素子の製造方法は、上記層流素子の製造方法であって、前記層流素子に流す前記流体の流量に応じて、前記第2板状部材及び前記第3板状部材の数を決定し、決定した数の前記第2板状部材及び前記第3板状部材を積層して、前記層流素子を製造する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流路の数が異なる複数の層流素子間の差圧-流量特性を同じにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る層流素子の断面図及び層流型流量計の構成図である。
図2図2は、図1の層流素子の分解斜視図である。
図3図3は、図1の層流素子の各板状部材を上下方向から見た平面図である。
図4図4は、図1の層流素子の平面図である。
図5図5は、図1の層流素子等の断面図であり、流路を流れる流体を矢印で示す図である。
図6図6は、変形例に係る層流素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る層流型流量計1は、流路部材3と、上流側圧力センサ4と、下流側圧力センサ5と、演算回路7と、層流素子10と、を備える。層流型流量計1は、配管の途中等に配置され、配管を流れる流体(被測定流体)の流量を計測する。流体は、液体でも、気体でもよい。
【0016】
流路部材3は、内部に、流体が流れる上流流路3A及び下流流路3Bを備える。さらに、流路部材3は、層流素子10を収容する収容凹部3Cを備える。流体は、上流流路3Aから収容凹部3Cの層流素子10内に流入し、層流素子10内を流れ、その後、下流流路3Bを流れる。
【0017】
上流側圧力センサ4は、層流素子10内を流れる流体の上流側の圧力を検出する。下流側圧力センサ5は、層流素子10内を流れる流体の下流側の圧力を検出する。演算回路7は、マイクロコンピュータ等から構成され、上流側圧力センサ4が検出した圧力と、下流側圧力センサ5が検出した圧力との差圧を算出し、算出した差圧に基づいて流体の流量を算出する。算出された流量は、不図示の表示装置又は外部装置に出力される。
【0018】
図1図4に示すように、層流素子10は、板厚方向を上下方向としたときのこの上下方向に積層された金属製の板状部材20~60を備える。各板状部材20~60は、下から上に向かって、板状部材20、板状部材30、板状部材40、板状部材50、板状部材60の順に積層されている。各板状部材20~60は、長方形であり、長手方向が流体の上流から下流に向かう方向に設定されている。各板状部材20~60は、拡散接合等により互いに接合されている。
【0019】
板状部材20の長手方向の一端部には、上流流路3Aが繋がっており、流体を層流素子10内に導入する導入用貫通孔21が設けられている。板状部材20の長手方向の他端分には、下流流路3Bが繋がっており、層流素子10内を流れる流体を層流素子10の外部つまり下流流路3Bに排出する排出用貫通孔22が設けられている。
【0020】
板状部材30は、導入用貫通孔21から層流素子10内に流入した流体の一部の流路となる、長手方向に長尺な長方形の流路貫通孔31を備える。流路貫通孔31は、板状部材30の1つ下の板状部材20の主面、及び、板状部材30の1つ上の板状部材40の主面に挟まれて流路となり、導入用貫通孔21により導入された流体の一部を排出用貫通孔22に導くように構成されている。流路貫通孔31つまり流路は、流体を層流状態で流すように形成されている。なお、前記の主面は、板状部材の表面のうち面積が最も広い面であり、ここでは板状部材20の上面及び板状部材40の下面である。
【0021】
板状部材30は、板状部材50と同形状に形成されている。すなわち、板状部材50は、板状部材30の流路貫通孔31と同形状の流路貫通孔51を備える。流路貫通孔51は、板状部材50の1つ下の板状部材40の主面(上面)、及び、板状部材50の1つ上の板状部材60の主面(下面)に挟まれ流路となり、導入用貫通孔21により導入された流体の一部を排出用貫通孔22に導く。流路貫通孔51つまり流路は、流体を層流状態で流すように形成されている。流路貫通孔31及び流路貫通孔51、つまり、板状部材30及び50により形成されている各流路は、同じ形状に形成され、上下方向からみたときに一致する。
【0022】
板状部材40は、板状部材30と板状部材50との間に配置されている。板状部材40は、長手方向の上流側端部に形成された上流側貫通孔41と、下流側端部に形成された下流側貫通孔42と、を備える。上流側貫通孔41は、板状部材40の1つ下の板状部材30及び1つ上の板状部材50の流路貫通孔31及び51それぞれの上流部に連通している。上流側貫通孔41は、1つ下の流路貫通孔31に流入した流体の一部を1つ上の流路貫通孔51に導くように構成されている。下流側貫通孔42は、流路貫通孔31及び51それぞれの、前記上流部よりも下流の下流部に連通している。下流側貫通孔42は、1つ上の板状部材50の流路貫通孔51を流れる流体の一部を1つ下の板状部材30の流路貫通孔31に導くように構成されている。
【0023】
板状部材40は、さらに、その1つ下の流路貫通孔31を流れる流体の圧力を上方に取り出す、上流側取出孔43と、上流側取出孔43よりも下流側に形成された下流側取出孔44と、を備える。各取出孔43及び44は、上流側貫通孔41と下流側貫通孔42との間に配置されている。
【0024】
上流又は下流側の貫通孔41及び42は、板状部材20の導入又は排出用の貫通孔21及び22とそれぞれ同形状で同一位置つまり互いに一致するように形成されている。貫通孔41及び42は、貫通孔21及び22とともに流体の流量を確保するため矩形形状で大きく形成されている一方、上流又は下流側の取出孔43及び44は、圧力の取り出し用なので、流量を大きく確保する必要がなく、貫通孔41及び42よりも小さく円形状に形成されている。
【0025】
上流側取出孔43の位置は上流側の貫通孔21及び41から流体の流れが層流に発達するまでの助走距離Liを取った位置に設置する事が望ましい。層流Reはレイノルズ数が2300より小さい流れとして定義され、下記の数式(1)で計算される。また、助走距離Liは下記の数式(2)で計算される。下記式中のdは流路貫通孔の代表長さ、uは流体の流速、ρは流体の密度、μは流体の粘性係数である。
【数1】
【数2】
【0026】
板状部材60は、板状部材50の上に積層され、1つ下の板状部材50の流路貫通孔51を流れる流体の圧力を上方に取り出す、上流側取出孔61と当該上流側取出孔61よりも下流側に位置する下流側取出孔62と、を備える。上下方向から見たときに、上流側取出孔61は、板状部材40の上流側取出孔43と同形状で同一位置つまり互いに一致するように形成されている。同様に、下流側取出孔62は、板状部材40の下流側取出孔44と同形状で同一位置つまり互いに一致するように形成されている。
【0027】
板状部材20~50は、同じ大きさに形成されており、積層状態の板状部材20~50は、全体として直方体形状を有する。他方、板状部材60は、板状部材20~50よりも大きく形成されている。板状部材60は、その下に接続された板状部材20~50の側面から外側に張り出した周縁部60Aを有する。周縁部60Aには、層流素子10を流路部材3に締め付け固定するボルトB1及びB2がそれぞれ通る4つの貫通孔63及び4つの貫通孔64を備える。ボルトB1は、上流側圧力センサ4を貫通して、貫通孔63を通って、流路部材3の収容凹部3Cの周辺に設けられた螺合孔と螺合する。ボルトB2は、下流側圧力センサ5を貫通して、貫通孔64を通って、流路部材3の収容凹部3Cの周辺に設けられた螺合孔と螺合する。これらにより、層流素子10は、圧力センサ4及び5とともに、流路部材3に締め付け固定される。上流側圧力センサ4は、上流側取出孔61を覆うように配置され、上流側取出孔61により取り出された圧力を検出する。下流側圧力センサ5は、下流側取出孔62を覆うように配置され、下流側取出孔62により取り出された圧力を検出する。
【0028】
図1に示すように、層流素子10と流路部材3の収容凹部3Cの底面との間には、板状部材20の導入用貫通孔21の周囲を囲むシール部材S1及び排出用貫通孔22の周囲を囲むシール部材S2が介在している。これにより、上流流路3Aと導入用貫通孔21との接続部分及び下流流路3Bと排出用貫通孔22との接続部分がシールされている。
【0029】
層流素子10と上流側圧力センサ4との間にはシール部材S3が介在しており、これにより、層流素子10の上流側取出孔61と上流側圧力センサ4の流体の流入部との接続部分がシールされている。層流素子10と下流側圧力センサ5との間にはシール部材S4が介在しており、これにより、層流素子10の下流側取出孔62と下流側圧力センサ5の流体の流入部との接続部分がシールされている。
【0030】
流路部材3と板状部材60の周縁部60Aとの間には、流路部材3の周囲を囲むシール部材S5が介在しており、これにより、層流素子10を構成する各部材の接合部のいずれかから流体がリークしても、流路部材3から流体が外部へリークすることが抑制される。
【0031】
図5の矢印に示すように、流路部材3の上流流路3Aを流れる流体は、層流素子10の板状部材20の導入用貫通孔21から層流素子10内に流入する。導入用貫通孔21から流入した流体の一部は、この導入用貫通孔21と連通している板状部材30の流路貫通孔31を流れる。導入用貫通孔21から流入した流体の残りは、板状部材40の上流側貫通孔41を介して、その1つ上の板状部材50の流路貫通孔51に流入する。流路貫通孔51を流れる流体は、下流側貫通孔42、流路貫通孔31の下流端部、及び、導入用貫通孔21を介して流路部材3の下流流路3Bに流れる。流路貫通孔31を流れる流体は、流路貫通孔51から下流流路3Bに流れる流体と合流して、導入用貫通孔21を介して流路部材3の下流流路3Bに流れる。
【0032】
流路貫通孔31を流れる流体の上流側の圧力は、板状部材40の上流側取出孔43により取り出される。取り出された当該圧力は、板状部材50の流路貫通孔51及び板状部材60の上流側取出孔61を介して上流側圧力センサ4に伝達されて、上流側圧力センサ4により検出される。同様に、流路貫通孔31を流れる流体の下流側の圧力は、板状部材40の下流側取出孔44により取り出され、流路貫通孔51及び下流側取出孔62を介して下流側圧力センサ5により検出される。流路貫通孔51を流れる流体の上流側及び下流側の圧力は、上流側取出孔61及び下流側取出孔62により取り出され、各圧力センサ4及び5によりそれぞれ検出される。このようなことにより、上流側圧力センサ4は、流路貫通孔31及び51それぞれを流れる流体の上流位置の圧力を検出する。下流側圧力センサ5は、流路貫通孔31及び51それぞれを流れる流体の下流位置の圧力を検出する。
【0033】
図1図5に示すように、本実施の形態では、流路貫通孔31と流路貫通孔51とが同一形状で形成され、上流側取出孔43と上流側取出孔61とが上下方向から見たときに上流側貫通孔41と下流側貫通孔42との間で一致する位置及び形状に形成され、かつ、下流側取出孔44と下流側取出孔62とが上下方向から見たときに上流側貫通孔41と下流側貫通孔42との間で一致する位置及び形状に形成されている。従って、流路貫通孔31と流路貫通孔51とのそれぞれにより形成される各流路についての差圧-流量特性(圧力センサ4及び5で検出された各圧力の差圧に対する流量の特性)は同じとなる。層流素子10を流れる流体の流量を増やしたい場合、板状部材30及び40の組み合わせを層流素子10に挿入するのみで、他の流路貫通孔31及び51(流路)それぞれと同じ差圧-流量特性を有する流路貫通孔(流路)を追加できる。なお、一般に、層流素子10を流れる流体の体積流量Qはn本の流路貫通孔(流路)を通過する流量Qsの和(下記の数式(3)参照)として表され、流量Qsは、下記の数式(4)のような関係で表される。数式(4)のwは流路貫通孔の幅、hは流路貫通孔の厚み、μは流体の粘性係数、Lは流路長さ、ΔPは上流側圧力センサ4と下流側圧力センサ5とにより検出された各圧力の差圧を表す。この実施の形態では、流路貫通孔31と流路貫通孔51とが同一形状で形成されるため(差圧-流量特性が同じであるため)、数式(4)のwh/12μLは、流路貫通孔31と流路貫通孔51とで同じとなる。このため、この実施の形態では、1の流路貫通孔の流量Qsに板状部材30及び40の組み合わせの数を乗じることで、全体の流量が容易に得られる。
【数3】
【数4】
【0034】
板状部材20を第1板状部材、板状部材30及び50を第2板状部材、板状部材40を第3板状部材、板状部材60を第4板状部材として、第1板状部材の上に積層された複数の第2板状部材のうちの上下方向において隣同士の第2板状部材の間にそれぞれに1以上の第3板状部材を配置することで、上述のように各第3板状部材の流路貫通孔(流路)についての差圧-流量特性を同じにすることができる。そして、各第3板状部材の流路貫通孔(流路)についての差圧-流量特性を同じとすることで、層流素子全体での差圧-流量特性は、層流素子10を通過する全体の流量を各流路貫通孔の数で除すれば、流路貫通孔の数によらず同じとなる。このため、層流型流量計1の設計変更時に流路貫通孔の数を変更して流量レンジを変更した場合でも、流路貫通孔の数の異なる各層流型流量計1間、ないし各層流素子10間の流量-差圧特性(一流路当たりの差圧-流量特性をいう。単に層流型流量計1又は層流素子10の流量-差圧特性といった場合、この特性は、一流路当たりの差圧-流量特性をいう)は変わらないように取り扱える。層流素子10の製造方法においては、層流素子10に流す流体の流量に応じて、第2板状部材及び第3板状部材の数を決定し、決定した数の第2板状部材及び第3板状部材を積層して、層流素子を製造することで、第2板状部材及び第3板状部材の数によらず、層流素子全体の差圧-流量特性を、層流素子10を通過する全体の流量を各流路貫通孔の枚数で除すれば、同じにできる。つまり、第2板状部材及び第3板状部材の数によらず、層流素子の流量-差圧特性(一流路当たりの差圧-流量特性)を同じにできる。これにより、層流型流量計1の流量レンジの変更のたびに層流素子の差圧-流量特性を導出するなどの手間が不要となり、当該設計変更が容易となる。
【0035】
また、この実施の形態では、板状部材60(第4板状部材)が、上下方向から見た場合に、板状部材20~50(第1~第3板状部材)よりも大きく形成されており、板状部材20~60からはみ出した周縁部60Aは、シール部材S5を介して、流路部材3の収容凹部3Cの外縁部に固定されている。これにより、層流素子10を流路部材3に固定するときに用いられるシール部材を少なくできる。すなわち、従来は、層流素子10の板状部材20~60が全て同じ大きさに形成され、層流素子10は、別のカバー部材によってカバーされて、流路部材3の収容凹部3Cに収容及び固定されていた。このため、従来は、層流素子10とカバー部材との間と、カバー部材と流路部材3との間との両者に別個のシール部材を使用していたが、本実施の形態では、シール部材が1つ分削減される。このように、本実施の形態では、少ないシール部材により層流型流量計1の必要箇所をシールできる。
【0036】
さらに、図4に示すように、導入用貫通孔21及び上流側貫通孔41の、流路貫通孔31及び51を流れる流体の流れ方向(上下流方向)と直交する方向の長さである幅は、流路貫通孔31及び51よりも広い。同様に、排出用貫通孔22及び下流側貫通孔42の上下流方向と直交する方向の長さである幅は、流路貫通孔31及び51よりも広い。これにより、板状部材20~50の各位置にずれが生じたとしたとしても、貫通孔同士の上下方向から見たときの重なる面積が減少しない。例えば、板状部材20の位置と板状部材30の位置とがずれたとしても、導入用貫通孔21と流路貫通孔31とが上下方向から見て重なる面積は減らないため流路貫通孔に流入する流量や流れ方が一定となる。これにより上記位置ずれによって差圧-流量特性が変化してしまうことが抑制される。
【0037】
なお、板状部材30及び50の流路貫通孔31及び51といった、複数の第2板状部材の各流路貫通孔が同形状であれば、板状部材30及び50などの各板状部材20~60の外形は異なってもよい。ただし、板状部材30及び50といった複数の第2板状部材を同形状とすることで、層流素子の構成要素を共通化でき、層流素子の製造コストを軽減することができる。同様に、板状部材40といった複数の第3板状部材を同形状とすることで、層流素子の構成要素を共通化でき、層流素子の製造コストを軽減することができる。
【0038】
上流側取出孔43及び上流側取出孔61つまり複数の上流側の取出孔は、上下方向から見て、板状部材30及び50の流路貫通孔31及び51といった、複数の第2板状部材の各流路貫通孔を流れる流体の流れ方向(上下流方向)における同じ位置に配置されていればよい。下流側取出孔44及び下流側取出孔62つまり複数の下流側の取出孔も、上下方向から見て前記流れ方向における同じ位置に配置されていればよい。例えば、図6に示すように、上流側取出孔43及び上流側取出孔61、又は、下流側取出孔44及び下流側取出孔62は、流れ方向に直交する幅方向においてずれていてもよい。上流側又は下流側取出孔を、流体の流れ方向(上下流方向)における同じ位置とすることで、各流路貫通孔についての差圧-流量特性を同じとすることができるため、流路貫通孔の数の異なる層流素子間で同じ差圧-流量特性を得る事が出来る。
【0039】
板状部材40といった第3板状部材及び板状部材60といった第4板状部材の下流側貫通孔と下流側取出孔とは同じ貫通孔としてもよい。この場合、当該貫通孔及び排出用貫通孔22は、上下方向から見たときに重なる、特に、同じ位置にあるとよい。また、当該貫通孔及び排出用貫通孔22を同じ形状にして上下方向からみたときに一致させてもよい。
【0040】
上流及び下流の圧力センサ4及び5は、1の差圧センサとして構成されてもよい。
【0041】
[本発明の範囲]
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…層流型流量計、3…流路部材、3A…上流流路、3B…下流流路、3C…収容凹部、4…上流側圧力センサ、5…下流側圧力センサ、7…演算回路、10…層流素子、20…板状部材、21…導入用貫通孔、22…排出用貫通孔、30…板状部材、31…流路貫通孔、40…板状部材、41…上流側貫通孔、42…下流側貫通孔、43…上流側取出孔、44…下流側取出孔、50…板状部材、51…流路貫通孔、60…板状部材、60A…周縁部、61…上流側取出孔、62…下流側取出孔、63,64…貫通孔、S1~S5…シール部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6